説明

超音波により組み込まれた導線を有するガラスパネル

本発明は:
導線を組み込むグレージングであって、該グレージングの表面は、ポリマー材料製の基体を含み、該導線は、部分的に埋め込まれ、およびポリマー材料の表面と最大で水平であり、または該グレージングの表面は、該導線が接着剤により結合している鉱物ガラス製もしくはポリマー材料製の基体を含むことを特徴とするグレージング;
このようなグレージングを製造する方法;ならびに
輸送車両のための、建築業、ストリートファニチュア、屋内造作、電気製品または電子機器のためのこのグレージングの適用
に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇/防氷電熱線またはアンテナを構成することができ、もしくはワイパーモーター、停止灯、LED、雨センサなどを供給することができる線のいずれかの導線を含むグレージングに関する。この場合、グレージングは、特に、リアウインドウまたは自動車フロントガラスからなる。
【背景技術】
【0002】
グレージングという用語は、本質的には、世界中で施行されている種々の基準を満たす高い光学および安全性能の達成を意味するものと理解される。
【0003】
グレージングは、ポリマー、例えばポリカルボナート(PC)、アクリル、例えばポリメチルメタクリラート(PMMA)、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルアセタール、特にポリビニルブチラール(PVB)(積層体中の中間接着層として)、アイオノマー樹脂などから構成される有機物、または鉱物ガラス、例えばソーダ石灰シリカガラスから作製される。
【0004】
グレージングは、モノリシックまたは積層式、即ち、中間接着層、例えば上記PVBまたはPUにより互いに結合している数枚のシートから構成されるものである。
【0005】
グレージングは、単層または複層グレージング、即ち、乾燥ガスの絶縁ギャップを含むグレージングであり得る。
【0006】
ラインまたは他の導電パターンをグレージング上に製造する幾つかの方法が公知である。
【0007】
スクリーン印刷ラインが公知である。
【0008】
ある熱を圧力と組み合わせて適用することによる、積層グレージングのPVB中間接着層上への導線の挿入も公知である。導線は、ガラスの2枚のシート間に捕捉される。この技術は、文献EP553025およびEP613769に記載されている。
【0009】
文献WO2003/026869からは、導線が最終製品中に完全に封入され、埋設されるように、導線を第1のプラスチック材料のフィルム中に挿入し、該フィルム上に該第1のプラスチック材料と適合性であり、または同一である第2のプラスチック材料を射出成形する方法も公知である。
【0010】
これらの技術は実施が複雑であり、方法は多数の工程を含む。製造困難性は特に、極めて顕著な曲率を有し、および/または球状である、常により複雑な形状のグレージングについて、特に目標とされる高い光学性能に関して残っている。
【0011】
さらに、文献US7410267は、超音波による透明プラスチック製のヘッドライトカバー中への電熱線の挿入を記載している。しかしながら、高い光学性能は要求されない。これというのも、このようなカバーは、逆にいえば、変形せずには見通すことができない構造を用いて設計されるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第553025号明細書
【特許文献2】欧州特許第613769号明細書
【特許文献3】国際公開第2003/026869号
【特許文献4】米国特許第7410267号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明の目的は、導線および高い光学性能を有するグレージングを製造する、簡単で信頼性のある方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のため、本発明の1つの対象は、導線を組み込むグレージングであって、該グレージングの表面が、該導線が部分的に埋め込まれており、およびポリマー材料の表面と最大で水平であるポリマー材料製の基体または該導線が接着剤により結合している鉱物ガラス製もしくはポリマー材料製の基体を含むという事実により区別されるグレージングである。
【0015】
導線がポリマー材料の表面と最大で水平であるという事実により、本発明によれば、該導線が該ポリマー材料中に完全に埋設される、即ち、該ポリマー材料のある計測可能な厚さであらゆる面が被覆されることが除外される。
【0016】
実際、グレージングの表面における導線の配置、例えば突起またはこのように水平であることは、複雑なグレージング形状についてさえ完全におよび簡単に達成可能であり、高い光学性能を保証することができることが見出された。
【0017】
ポリマー材料製の基体中に部分的に埋め込まれている導線の場合、この埋め込みは、例えば線の直径の少なくとも40%、好ましくは50%であり、線の直径の大きくとも90%、好ましくは85%である。
【0018】
例として、35μmの直径を有するタングステン線は、ポリカルボナート基体から7から13μmだけ突出しており、71μmの直径を有する銅線は19から34μmだけ突出している。
【0019】
好ましくは、導線は、グレージングの表面において、少なくとも3μm、特に好ましくは5μmの余剰厚さ(overthickness)を形成する。
【0020】
第1の好ましい変形例において、導線は、大きくとも18μmである厚さを有するグレージングからの保護のためコーティングにより被覆されている。この保護コーティングは、ポリシロキサンタイプの抗スクラッチワニス製のポリマー材料基体およびこの関連するプライマー層の機械的強度を改善する層からなっていてよい。抗スクラッチワニスの厚さは3.5から12μm、特に約10μmであり得、プライマーの厚さは1.5から6μm、特に約5μmであり得る。
【0021】
従って、上記の線の直径の少なくとも10%の値を有するポリマー材料基体に対する導線の突出は、有利には、例えば同様に上記の少なくとも3μmの余剰厚さの形態である抗スクラッチワニスから構成される最終製品の表面において見出される。
【0022】
しかしながら、導線がポリマー材料の表面と水平である場合、このポリマー材料を被覆する保護コーティング/抗スクラッチワニスは、いかなる余剰厚さも有しない一方、本発明の範囲内にも留まる。
【0023】
第2の変形例において、導線は、グレージングの環境に曝露されている。導線は、特に、ポリマー材料基体中にこの基体の抗スクラッチコーティングを通り少なくとも部分的に埋め込まれていてよい。この実施形態は、導線をコーティング、例えば透明ホットメルト接着剤の残部によりコーティングすることができることを除外しない。さらに導線は、抗スクラッチコーティングの表面が余剰厚さまたは不規則性を実際に有しないように抗スクラッチコーティングの表面と水平であり得る。
【0024】
第3の変形例において、導線は、鉱物ガラス製またはポリマー材料製の基体に接着剤により結合している。最終製品において導線がグレージングの環境に実際に曝露されるように基体と接触する面のみが透明ホットメルト接着剤により最初にコーティングされる長方形またはこれと同等の横断面を有する線を想定することができる。ホットメルト接着剤により最初に完全にコーティングされた円筒状導線の場合、該接着剤の残部は最終グレージング中の線の表面の任意の点に残留し得る。
【0025】
導線を形成するため、アルミニウム、アルミニウムにより被覆された銅、高い層間剥離強度を有する線、銅−ニッケル合金、黄銅、銀、金、銅−スズ合金、アルミニウム−マグネシウム合金、別の材料により被覆された線、例えばニッケルにより被覆された銅線または黒塗装線、ステンレス鋼を使用することができる。円形断面の線または長方形断面の導体を使用することができる。
【0026】
導線についての好ましい例は:
15から150μmの直径を有するタングステン線;
25から250μmの直径を有する銅線
である。
【0027】
本発明の別の対象は、上記グレージングを製造する方法であって、導線および基体を形成する熱可塑性材料および/または導線のコーティングを超音波および圧力の組合せ作用に供することにより導線をグレージング中に組み込む方法である。導線は、ソノトロードのヘッドを使用して圧力を用いて基体に適用する。
【0028】
基体がポリカルボナートまたはこれと同等のタイプの熱可塑性材料から作製されている場合、この材料は超音波の作用を介して溶融し、線は圧力を適用することにより基体中に埋め込む。
【0029】
基体が鉱物ガラスまたはポリマー材料、特にさらにポリカルボナートタイプの熱可塑性材料から作製されている場合、線は超音波の作用下で溶融する透明ホットメルト接着剤によりコーティングすることができ、圧力の作用を介して基体に接着剤により結合させることができる。
【0030】
超音波を使用するこの方法は、複雑な表面(球状などである顕著な曲率を有する表面でさえ)上への導線の組込みに好適である。
【0031】
この目的のため、ソノトロードは、線を複雑な三次元表面上に、この表面にソノトロードにより適用される圧力を制御することにより組み込むのに好適なロボットにより運ぶことができる。
【0032】
この方法は、中間品質管理部品の仕上げに適用することができるため、収率損失は最小である。
【0033】
本方法の工程数は、他の公知の方法と比べて低減される。
【0034】
本発明の別の対象は、陸上、航空または水上輸送車両のための、特に自動車グレージング、特に防曇/防氷機能および/またはアンテナ機能を有するリアウインドウグレージングとしての、建築業、ストリートファニチュア(バス待合所、表示パネルなど)、屋内造作(家具、施釉壁、壁ライニングなど)、電気製品または電子機器のための、上記グレージングの適用である。
【0035】
本発明を、付属の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のグレージングの第1の変形例を概略的に表す断面図である。
【図2】本発明のグレージングの第1の変形例を概略的に表す断面図である。
【図3】本発明のグレージングの第2の変形例を概略的に表す断面図である。
【図4】本発明のグレージングの第2の変形例を概略的に表す断面図である。
【図5a】グレージングと組み合わせる前の導線を概略的に表す横断面図である。
【図5b】本発明のグレージングの第3の変形例を概略的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
従って、図1は、ポリカルボナート製のグレージング2中に25μmまたは46μmの深さに埋め込まれた35μmの直径を有するタングステンまたは71μmの直径を有する銅の導線1を表す。
【0038】
換言すると、タングステン線は、ポリカルボナートのシートから10μm浮き上がり、銅線は25μm浮き上がる。
【0039】
線のこの埋め込みは、超音波および圧力の適用により得られる。
【0040】
使用されるソノトロードの曲線的でアクティブな端部の曲率は、処理される基体の曲率に応じて選択される。ソノトロードは、これ自体ロボット上に取付けられるモジュールと称されるヘッド上に取付けられる。モジュールは、剛性がソノトロードにより基体に適用される圧力を決定するスプリングを含む。
【0041】
発振器は、要求に応じて適合させることができる30kHzの周波数および1000Wの出力を有し、このことはソノトロードに一定の振幅、好ましくは80μmを与える。
【0042】
次いで、5μmの厚さを有するプライマー層および10μmの厚さを有するコーティング自体を含む、ポリシロキサンからなる抗スクラッチコーティング3を適用する。
【0043】
上記線の突出の高さ(10μm、25μm)は、抗スクラッチワニスの形成後にグレージングの表面において低減させることができ;この高さはタングステン線については6μmであり、銅線については17μmである。
【0044】
図2のグレージングは、線1がポリカルボナート2の表面と水平であるという事実によってのみ、図1のグレージングと異なる。
【0045】
図3のグレージングにおいて、線1は、抗スクラッチワニス3の適用後にグレージング2中に挿入されている。
【0046】
線1は、タングステン線の場合にはグレージングから10μm、銅線の場合には25μm浮き上がる。
【0047】
図4のグレージングは、線1が抗スクラッチワニス3の表面と水平であるという事実によってのみ、図3のグレージングと異なる。
【0048】
図5aの線1には、図1に関して記載された方法と同一の方法に従ってガラス製またはポリマー材料製のグレージング2に接着剤により結合させるために透明ホットメルト接着剤コーティング4が提供されている。
【0049】
図5bに概略的に表されるグレージングが得られる。このグレージングにおいては、線は基体中に挿入されていない。
【0050】
光学的欠点の不存在が、図1、2、3、4および5bに表される5種のグレージングについて質的に観察され、白色標識の形態のシャドウグラフ技術により観察することができ、Labscan(登録商標)計測(ISRA Visionにより販売されている装置)により定量することができる伝送の光学的歪みの不存在により証明される。
【0051】
組み込まれた導線を有する5種のグレージングについての光学的欠点の不存在は、これらのグレージングに発光試験パターンをグレージングから4m離して投影し、同様に4m離れて位置するスクリーン上の影を観察することにより確認される。発光試験パターンは、導線に平行であり、次いで垂直である整列ドットおよび/またはラインを含む。これらの試験は、車両、車両への取付けおよび/または車両における使用が可能な装備および部品に係わる統一的な技術上の要件の採用ならびにこれらの要件に基づいて行われる認定の相互承認のための条件に関する協定E/ECE/324、E/ECE/TRANS/505の規則43(付録3、§9)、付則42に従って実施する。
【0052】
試験パターンは、グレージングを導通させることによっては変形しない。
【0053】
従って、導線を備え、高い光学性能を有するグレージングが簡単な方法により得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線を組み込むグレージングであって、該グレージングの表面は、ポリマー材料製の基体を含み、該導線は、部分的に埋め込まれ、およびポリマー材料の表面と最大で水平であり、または該グレージングの表面は、該導線が接着剤により結合している鉱物ガラス製もしくはポリマー材料製の基体を含むことを特徴とする、グレージング。
【請求項2】
導線が、グレージングの表面において少なくとも3μm、好ましくは5μmの余剰厚さを形成することを特徴とする、請求項1に記載のグレージング。
【請求項3】
導線が、大きくとも18μmである厚さを有する、グレージングからの保護のためのコーティングにより被覆されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のグレージング。
【請求項4】
導線が、グレージングの環境に曝露していることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載のグレージング。
【請求項5】
導線がタングステン製であり、および15から150μmの直径を有することを特徴とする、請求項1から4の一項に記載のグレージング。
【請求項6】
導線が銅製であり、および25から250μmの直径を有することを特徴とする、請求項1から5の一項に記載のグレージング。
【請求項7】
請求項1から6の一項に記載のグレージングを製造する方法であって、導線および基体を形成する熱可塑性材料および/または導線のコーティングを超音波および圧力の組合せ作用に供することにより導線をグレージング中に組み込むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
陸上、航空または水上輸送車両のための、建築業、ストリートファニチュア、屋内造作、電気製品または電子機器のための、請求項1から6の一項に記載のグレージングの適用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2013−512847(P2013−512847A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541566(P2012−541566)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052598
【国際公開番号】WO2011/067541
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】