説明

超音波センサの取付け構造

【課題】 超音波センサを取り外す際の作業性を向上できる超音波センサの取付け構造を提供する。
【解決手段】 複数組の係止部223a〜223c及び被係止部121a〜121cによって、バンパ300に固定された保持部材200に、超音波センサ100を固定する超音波センサ100の取付け構造であって、1組の係止部223c及び被係止部121cを、その係止状態によって、超音波センサ100の検出軸方向及び検出軸を中心とする回転方向における挙動を規制するとともに、押圧することにより係止状態が解除されるよう構成し、残りの係止部223a,223b及び被係止部121a,121cを、その係止状態によって、超音波センサ100の検出軸方向における挙動を規制するよう構成するとともに、超音波センサ100の回転方向において、被係止部121a,121cに連続して係止部223a,223bが通過可能な通過部122a,122bを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサの取付け構造に関するもので、特に車両のバンパに取付けられ、障害物の存在を検知するための超音波センサの取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のバンパに取付けられ、障害物の存在を検知するための超音波センサの取付け構造として、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1において、バンパには貫通孔が設けられ、バンパの内面側における開口縁部に、例えば溶着によって保持部分が取付けられている。この保持部分は、超音波センサ(モジュール)を収容可能な管状に形成されている。また、超音波センサの検出軸方向の摺動を防止するために、クリップ装置として、超音波センサには保持部分方向に突起する係止部が形成され、保持部分には係止部が係止される被係止部(溝部)が形成されている。従って、超音波センサは保持部分を介してバンパに位置決め固定される。
【特許文献1】特表2001−527480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の構成においては、被係止部を含む保持部分が弾性変形可能に形成することで、保持部分を持ち上げて係止部と被係止部との係止状態を解除し、保持部分から超音波センサを取り出し可能としている。
【0005】
しかしながら、超音波センサを安定して固定するために、クリップ装置(係止部及び被係止部)は複数形成されており、超音波センサを保持部分から取り出す際に、被係止部の形成された複数箇所の保持部分を一度に持ち上げる必要がある。また、保持部分が管状に形成されているので、被係止部の形成された複数箇所の保持部分を一度に持ち上げにくい。すなわち、超音波センサを取り外す際の作業性が悪いという問題点がある。例えば人手で作業する際に片手で作業するのは困難である。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、超音波センサを取り外す際の作業性を向上できる超音波センサの取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する為に請求項1〜10に記載の発明は、貫通孔の形成された取付け部に対し、センサ部が前記貫通孔に挿入された状態で超音波センサを固定する超音波センサの取付け構造に関するものである。
【0008】
先ず請求項1に記載のように、取付け部には、少なくとも一部が取付け部の裏面側に突出するように保持部材が設けられ、複数の係止部が、保持部材及び超音波センサの筐体の少なくとも一方に設けられ、他方に係止部に対応して被係止部が設けられ、複数組の係止部及び被係止部のうち、1組の係止部及び被係止部は、その係止状態によって、超音波センサの検出軸方向、及び当該検出軸を中心とする回転方向における挙動を規制するとともに、押圧することにより係止状態が解除されるように構成され、残りの係止部及び被係止部は、その係止状態によって、超音波センサの検出軸方向における挙動を規制するように構成されるとともに、超音波センサの回転方向において、被係止部に連続して係止部が通過可能な通過部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
このように、保持部材に超音波センサを固定する複数組の係止部及び被係止部のうち、1組の係止部及び被係止部を、押圧することにより係止状態が解除される所謂ランス構造としており、超音波センサの回転方向の挙動をこの係止部及び被係止部のみで規制するように構成している。従って、押圧することによりこの係止部及び被係止部の係止状態を解除すると、検出軸を中心とする超音波センサの回転が可能となる。
【0010】
また、超音波センサの回転方向において、残りの被係止部に連続して通過部が設けられている。すなわち、超音波センサを回転させると、係止部が通過部に配置され、残りの係止部及び被係止部の係止状態を解除できる。従って、超音波センサを保持部材(取付け部)から取り外す際に、従来のように被係止部の形成された複数箇所を一度に持ち上げる必要がないので、超音波センサを取り外す際の作業性を向上できる。特に人手で作業する場合、片手での作業も可能である。
【0011】
ここで、押圧することにより係止状態が解除される1組の係止部及び被係止部の構成としては、例えば請求項2に記載のように、係止部及び被係止部のうち、検出軸を中心として外周側に位置する一方を含む部位が、筐体又は保持部材に連結しつつ弾性変形可能な梁部によって支持され、係止部及び被係止部の一方をその先端側に有する上述の部位の後端側を押圧することにより、先端側を係止状態の位置よりも外周側に移動させ、これにより係止状態が解除されるような構成を適用することができる。
【0012】
次に、請求項3に記載のように、取付け部には、少なくとも一部が取付け部の裏面側に突出するように保持部材が設けられ、保持部材及び超音波センサの筐体の少なくとも一方に複数の係止部が設けられ、他方に係止部に対応して被係止部が設けられ、少なくとも一部の係止部は、対応する被係止部へ組み付けられる先端位置及びその逆側の後端位置から、それぞれ所定の範囲に渡って突起頂点方向に傾斜していることを特徴とする。
【0013】
このように本発明においては、複数の係止部のうち、少なくとも一部を組み付け及び分離が可能な所謂2wayスナップフィットファスナー構造とし、当該係止部と対応する被係止部との間の係止状態を、所定の荷重で引っ張ることにより解除できるように構成している。すなわち、本発明の取付け構造によっても、超音波センサを取り外す際の作業性を向上でき、人手で作業する場合、片手での作業が可能である。
【0014】
具体的には、請求項4に記載のように、全ての係止部を、対応する被係止部へ組み付けられる先端位置及びその逆側の後端位置から、それぞれ所定の範囲に渡って突起頂点方向に傾斜する2wayスナップフィットファスナー構造としても良い。また、請求項5に記載のように、複数組の係止部及び被係止部のうち、1組の係止部及び被係止部を、その係止状態によって、超音波センサの検出軸方向、及び当該検出軸を中心とする回転方向における挙動を規制するとともに、押圧することにより係止状態が解除されるように構成し、それ以外の係止部を、対応する被係止部へ組み付けられる先端位置及びその逆側の後端位置から、それぞれ所定の範囲に渡って突起頂点方向に傾斜する2wayスナップフィットファスナー構造としても良い。いずれの構成においても、超音波センサを保持部材から取り外す際に、従来のように被係止部の形成された複数箇所を一度に持ち上げる必要がないので、超音波センサを取り外す際の作業性を向上できる。特に人手で作業する場合、片手での作業も可能である。
【0015】
超音波センサとしては、例えば請求項6に記載のように、検出軸を中心としてセンサ部よりも外周側に、センサ部に対して略並行となるように筐体から突出する固定基部を備え、当該固定基部に係止部及び被係止部の少なくとも一方が設けられた構成としても良い。それ以外にも、センサ部の筐体に係止部及び被係止部の少なくとも一方が設けられた構成としても良い。
【0016】
また、保持部材としては、請求項7に記載のように、取付け部の裏面側において、貫通孔の開口縁部に固定された構成としても良い。また、請求項8に記載のように、取付け部の表面側において貫通孔の開口縁部に当接するフランジ部と、当該フランジ部に連結し、貫通孔の内壁に当接しつつ貫通して取付け部の裏面側に突出する保持部を備え、保持部に、係止部及び被係止部の少なくとも一方と、貫通孔への挿入先端から突起頂点に向けて傾斜し、フランジ部とともに取付け部を狭持する爪部が設けられた構成としても良い。いずれの構成においても、超音波センサは取付け部の裏面側から貫通孔に挿入される。
【0017】
特に後者の構成においては、請求項9に記載のように、保持部として、フランジ部から起立し、貫通孔を通して取付け部の裏面側に突出する起立部と、取付け部の裏面側にて複数の起立部を架橋する架橋部とにより構成されるアーチ状保持部を少なくとも備え、架橋部に爪部が設けられた構成が好ましい。
【0018】
例えば起立部に爪部が設けられた構成の場合、保持部を貫通孔に挿入する際に、貫通孔への爪部の押し込みにともなって応力が生じ、この応力によって起立部が変形するので起立部に折損等を生じやすい。それに対し、本発明の構成の場合、爪部と起立部との間に架橋部があるので、爪部の押し込みによって架橋部がねじれ、起立部へ伝達される応力が低減される。また、起立部が複数であるので応力が分散される。従って、保持部を貫通孔に挿入する際に起立部に生じる破損等の不具合を低減することができる。
【0019】
尚、請求項1〜9のいずれかに記載の超音波センサの取付け構造は、請求項10に記載のように、取付け部が車両のバンパである場合に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。尚、以下の実施形態においては、一例として超音波センサを車両のバンパに取り付ける例を示す。
(第1の実施形態)
超音波センサの取付け構造を説明するに当たり、先ず、超音波センサ及び当該超音波センサをバンパに固定するための保持部材について説明する。
【0021】
図1は、車両用のバックソナー又はコーナーソナーとして用いられる超音波センサの概略構成を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)の上側から見た図、(c)は、(a)の右側から見た図である。尚、以下の説明において、本実施形態の特徴である取付け構造に関係する部分について詳細に説明する。それ以外の部分については、公知の技術を適用することができる。
【0022】
図1(a)〜(c)に示すように、超音波センサ100は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる筐体101の先端側に、アルミ製のマイクロフォンが固定され、当該マイクロフォンの底面を先端面101aとして、その内面に圧電振動子102(図中の破線で囲まれた部位)を貼着してなるセンサ部110を有している。本実施形態における超音波センサ100は、先端面101aを先頭に、センサ部110の一部をバンパの貫通孔に対して内面側から挿入するように構成されており、先端面101aから少なくとも後述する保持部材に収容される範囲が略円筒形状を有している。
【0023】
圧電振動子102は、センサ部110の筐体101内において、リードを介して回路部(図示せず)と電気的に接続されており、超音波センサ100は、圧電振動子102により振動板をなす略円形状の先端面101aを振動させて、超音波を送信し、障害物にて反射された超音波を、同じ圧電振動子102により受信して、その障害物を検出するよう構成されている。尚、符号103は、ゴム製の振動吸収体であり、この振動吸収体103を介して、筐体101にマイクロフォンが固定されている。
【0024】
また、超音波センサ100は、圧電振動子102の検出軸を中心としてセンサ部110よりも外周側に、筐体101からセンサ部110の少なくとも略円筒形状部分に対して並行に突出し、その内部に後述する保持部材を収容する固定基部120を有している。そして、この固定基部120に、保持部材に設けられた係止部(後述する)を係止させる被係止部121が設けられている。
【0025】
本実施形態において、固定基部120は、筐体101と同一材料を用いて一体的に設けられており、圧電振動子102の検出軸を中心とする同心円が4つに分割されてなる(120a〜120d)。
【0026】
固定基部120a,120bは、ともにアーチ状に設けられており、筐体101からの起立部位を連結する連結部にて、保持部材の係止部を係止させるように構成されている。すなわち、連結部を被係止部121a,121bとしている。
【0027】
また、固定基部120a,120bは、保持部材の係止部の係止位置に隣接して、係止部が通過可能な通過部122a,122bを有している。通過部122a,122bは、被係止部121a,121bと一体的に設けられており、圧電振動子102の検出軸からの距離が被係止部121a,121bよりも長く設定されている。また、検出軸を中心とする超音波センサ100に回転方向において、通過部122a,122bは、対応する係止部の係止位置に対して同一の回転方向に同一距離離間して設けられている。すなわち、係止部との係止状態によって、検出軸方向における超音波センサ100の挙動を規制し、検出軸を中心として超音波センサ100を回転させることにより、係止状態を解除することができるように構成されている。尚、通過部122a,122bの構成は上記例に限定されるものではない。それ以外にも、例えば、被係止部121a,121bを一部切り欠いて、係止状態が解除されるように構成することもできる。
【0028】
固定基部120c,120dは、互いに隣接する側の端部に、圧電振動子102の検出軸に沿って先端面101aとは逆側に伸延し、弾性変形可能な片持ち梁部123a,123bが一体的に連結されている。また、片持ち梁部123a,123bの間には、両片持ち梁部123a,123bによって支持され、片持ち梁部123a,123bよりも幅が広く剛性の高い支持部124が一体的に設けられている。
【0029】
支持部124は、圧電振動子102の検出軸に沿って、片持ち梁部123a,123bの後端(固定基部120c,120dとの反連結側)から先端面101a方向に伸延し、その先端位置が、筐体101から突出する固定基部120c,120dの突出先端と略同一に設定されている。また、その先端側に貫通孔124aが設けられ、これにより、支持部124の先端を保持部材の係止部を係止させる被係止部121cとしている。尚、貫通孔124aの幅(超音波センサ100の回転方向における)は、係止状態における回転方向のがたつきを抑えるために、保持部材の係止部の幅に対して略同等か若干広め程度に設けられている。従って、被係止部121cは、係止部との係止状態によって、検出軸方向及び検出軸を中心とする回転方向における超音波センサ100の挙動を規制するように構成されている。
【0030】
また、図2に示すように、支持部124の後端側を押圧(図中の白抜き矢印方向)すると、固定基部120c,120dとの連結部位を支点として片持ち梁部123a,123bが弾性変形し、後端側が押し下げられる。そして、その反力で被係止部121cが設けられた先端側が持ち上げ(係止状態の位置よりも外周側に移動させ)られる(図中の黒矢印方向)。すなわち、被係止部121cを含む支持部124を押圧することにより、被係止部121cと、対応する保持部材の係止部との間の係止状態を解除することができるように構成されている。尚、図2は、被係止部121cにおける係止状態の解除を説明するための図であり、図1(a)に対応している。
【0031】
尚、支持部124は、組み付け時において、対応する保持部材の係止部を位置決めしつつ貫通孔124aまで導入して被係止部121cに係止させるように、先端から貫通孔124aまでの所定の範囲に渡って一部が削除されてなる位置決め部124bを有する。この位置決め部124bは、先端ほど深く、且つ、保持部材の係止部の幅に対して余裕をもって形成されており、後端側ほど、被係止部121cに位置決めしつつ導入するように、所定の傾斜をもって構成されている。これにより、対応する保持部材の係止部を支持部124に位置決めしやすい構成となっている。
【0032】
また、本実施形態においては、図1(c)に示すように、被係止部121a〜121cが、圧電振動子102の検出軸を中心として略均等に配置されている。従って、超音波センサ100を保持部材に安定的に固定することができる。尚、図中において符号125は、超音波センサ100を回転させる際の回転範囲を制限するストッパであり、符号130は、外部接続端子としてのコネクタ部である。
【0033】
次に、保持部材について、図3に基づき説明する。図3は、保持部材の概略構成を示す図であり、(a)は超音波センサ100が挿入される側から見た平面図、(b)は(a)の右側から見た図、(c)は、(a)の下側から見た図である。
【0034】
保持部材は、貫通孔の形成されたバンパに対し、少なくとも一部が裏面側(内面側)に突出し、当該突出部位に超音波センサ100を収容するように、バンパに設けられる。
【0035】
本実施形態における保持部材200は、バンパの表面側(外面側)において貫通孔の開口縁部に当接するフランジ部210と、当該フランジ部210に連結し、貫通孔の内壁に当接しつつ貫通してバンパの裏面側(内面側)に突出する筒状の保持部220とにより構成される。
【0036】
保持部220は、筒状の内部に超音波センサ100のセンサ部110の一部を収容するとともに、超音波センサ100の固定基部120に収容されるように構成されている。また、筒状の保持部220は、超音波センサ100を回転させた際に、ストッパ125に接することで、超音波センサ100の回転範囲を制限し、通過部122a,122bに対して係止部を位置決め配置するような形状に設定されている。
【0037】
また、保持部220は、当該保持部220から突起し、貫通孔への挿入先端から突起頂点に向けて傾斜する爪部221と、幅の広い広域爪部222とを有している。この爪部221及び広域爪部222とフランジ部210との間の幅はバンパの幅と略同等に設定されており、保持部材200をバンパの貫通孔に挿入し、フランジ部210を表面側の開口縁部に当接させた状態で、爪部221及び広域爪部222とフランジ部210との間でバンパを狭持し、保持部材200がバンパに固定されるように構成されている。尚、本実施形態において、広域爪部222は、保持部材200がバンパに安定して固定されるように、バンパの裏面(内面)形状に合わせた形状となっている。しかしながら、爪部221同様、貫通孔への挿入先端から突起頂点に向けて傾斜する構成としても良い。
【0038】
尚、本実施形態において、保持部220は、フランジ部210から起立し、バンパの貫通孔を通してバンパの裏面側に突出する起立部220aと、バンパの裏面側にて複数(本実施形態においては2本)の起立部220aを架橋する架橋部220bとにより構成されるアーチ状の部位を有している。そして、この架橋部220bに爪部221を設けている。従って、保持部材200をバンパに固定する際、貫通孔に爪部221を押し込むと架橋部220bがねじれ、起立部220aへ伝達される応力が低減される。また、起立部220aが複数であるのでそれぞれに応力が分散される。このような構成とすると、保持部220を貫通孔に挿入する際に起立部220aに生じる破損等の不具合を低減することができる。
【0039】
また、保持部220は、保持部220から突起し、超音波センサ100の被係止部121a〜121cに係止される係止部223a〜223cを有している。本実施形態においては、係止部223a,223bを、組み付け先端側のみから突起頂点に向けて傾斜した所謂1wayスナップフィットファスナー構造とし、係止部223cは、支持部124に傾斜を設けているため四角柱状としている。しかしながら、係止部223cの形状を係止部223a,223b同様、所謂1wayスナップフィットファスナー構造としても良い。尚、係止部223aが被係止部121aに、係止部223bが被係止部121bに、係止部223cが被係止部121cに対応している。
【0040】
尚、符号211は超音波センサ100を係止させる内部フランジであり、符号212は超音波センサ100の先端面101aが露出する開口部である。また、符号224は、バンパに対する保持部材200の固定を安定化させるために、アーチ状に設けられた保持部220に対して設けられる安定板である。
【0041】
次に、上記構成の超音波センサ100及び保持部材200による、超音波センサ100のバンパへの取付け構造について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、取付け方法を説明するための図であり、(a)はバンパへの保持部材200の固定、(b)は超音波センサ100の保持部材200への固定を示す図である。図5は超音波センサ100をバンパに取付けた状態を示す図であり、(a)は部分断面図、(b)は(a)の上側から見た図、(c)は固定部の係止状態を示す図である。
【0042】
図4(a)に示すように、先ず、バンパ300に設けられた貫通孔301に対し、バンパ300の表面側から保持部220を先頭として保持部材200を挿入する。このとき、広域爪部222を先ず貫通させ、バンパ300の裏面に当接させた状態で、図中の白抜き矢印方向に、保持部200を押し込む。それにより、図4(b)に示すように、フランジ部210と爪部221及び広域爪部222との間でバンパ300が狭持され、保持部220が貫通孔301の内壁に当接した状態で、保持部材200がバンパ300に固定される。この固定状態で、保持部材200の保持部220にセンサ部110が収容されるように、先端面101aから超音波センサ100をバンパ300の貫通孔301に挿入させる(白抜き矢印方向)。
【0043】
これにより、先端面101aは、保持部材200の外面と略同一平面に配置され、この状態で保持部材200の開口部212から露出する。また、センサ部100の一部が保持部220に収容され、保持部220の一部が超音波センサ100の固定基部120に収容される。また、それとともに、保持部材200の保持部220に設けられた係止部223a〜223cが、超音波センサ100の固定基部120に設けられた被係止部121a〜121cに係止される。この係止状態で、係止部223a,223b及び被係止部121a,121bは、超音波センサ100の検出軸方向の挙動を規制し、係止部223c及び被係止部122cは、超音波センサ100の検出軸方向の挙動とともに、検出軸を中心とする回転方向の挙動を規制している。これにより、図5(a)〜(c)に示すように、超音波センサ100が保持部材200を介してバンパ300に取付けられる。
【0044】
次に、図6及び図7を用いて、保持部材200からの超音波センサ100の取り外しについて説明する。図6は、係止部223cと被係止部121cとの係止状態の解除を説明するための図であり、(a)は部分断面図、(b)は(a)の上側から見た図である。図7は、残りの係止部223a,223bと被係止部121a,121bの係止状態の解除を説明するための図であり、(a)は超音波センサ100の回転前、(b)は超音波センサ100の回転後を示す図である。
【0045】
図5(a)〜(c)に示す取付け状態から、先ず、超音波センサ100の回転方向の挙動を規制する係止状態を解除させる。先ず、図6(a),(b)に示すように、超音波センサ100の固定基部120に設けられた支持部124の後端側を押圧(白抜き矢印方向)する。これにより、上述したように、片持ち梁部123a,123bが弾性変形して後端側が押し下げられ、被係止部121cを有する支持部124の先端側が係止状態の位置よりも持ち上げられる(黒矢印方向)。すなわち、係止部223c及び被係止部121cは、押圧することにより係止状態が解除される、所謂ランス構造として構成されている。これにより、被係止部121cと係止部223cとの間の係止状態が解除され、超音波センサ100が検出軸を中心として回転可能となる。
【0046】
係止部223c及び被係止部121cにおける係止状態を解除した状態において、残りの係止部223a,223b及び被係止部121a,121bは係止状態にある。すなわち、超音波センサ100の検出軸方向の挙動は規制された状態にある。そこで、図7(a)に示すように、係止部223c及び被係止部の係止状態を解除した状態(黒矢印)で、圧電振動子102の検出軸を中心として、固定基部120に設けられたストッパ125が、保持部材120の保持部120の所定位置に当接するまで、超音波センサ100を回転(白抜き矢印方向)させる。これにより、図7(b)に示すように、係止部223a,223bの位置に、固定基部120に設けられた通過部122a,122bが配置される。すなわち、被係止部121a,121bと係止部223a,223bとの間の係止状態が解除され、超音波センサ100が検出軸方向に移動可能となる。以上により、3箇所全ての係止状態が解除されるので、超音波センサ100を保持部材200の保持部220から引き抜いて、取り外すことができる。
【0047】
このように、本実施形態における超音波センサ100の取付け構造によると、超音波センサ100を保持部材200(バンパ300)から取り外す際に、従来のように被係止部の形成された複数箇所を一度に持ち上げる必要がないので、超音波センサ100を取り外す際の作業性を向上できる。特に人手で作業する場合、片手での作業も可能である。
【0048】
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、種々変更して実施することができる。
【0049】
本実施形態においては、超音波センサ100をバンパ300に固定するための保持部材200が、バンパ300に設けられた貫通孔301を貫通し、一端のフランジ部210がバンパ300の表面側の開口縁部に当接し、他端の保持部220が、貫通孔301を貫通して、バンパ300の裏面側に突出する構成例を示した。しかしながら、保持部材200の構成は上記例に限定されるものではない。例えば、図8に示すように、保持部材200を両端が開口する筒状の保持部220のみで構成し、保持部220の一端を、溶着、接着、ねじ締結等によってバンパ300の裏面側の開口縁部に固定しても良い。尚、図8は保持部材200の変形例を示す図であり、符号223d,223eは係止部を示している。
【0050】
また、本実施形態においては、係止部223a〜223cを全て組み付け性の良い所謂1wayスナップフィットファスナー構造とした。そして、複数組の係止部223a〜223c及び被係止部121a〜121cのうち、係止部223c及び被係止部121cのみを、押圧することにより係止状態が解除される所謂ランス構造として構成し、残りの係止部223a,223b及び被係止部121a,121bを、ランス構造の係止状態が解除された状態で超音波センサ100を回転させることにより、その係止状態が解除されるように構成した。しかしながら、上記構成以外にも、超音波センサ100を取り外す際の作業性を向上することができる。例えば、係止部223a〜223cの少なくとも一部として、図9に示すように、対応する被係止部223a〜223cへ組み付けられる先端位置及びその逆側の後端位置から、それぞれ所定の範囲に渡って突起頂点方向に傾斜する所謂2wayスナップフィットファスナー構造(図9中の符号223f)を適用しても良い。2wayスナップフィットファスナーは、組み付け性だけでなく分離性にも優れており、所定荷重で引っ張ることにより、対応する被係止部223a〜223cとの係止状態を解除させることができる。
【0051】
具体的には、上述した構成に置き換えて、回転によって係止状態が解除される係止部223a,223bを、2wayスナップフィットファスナー構造としても良い。この場合、超音波センサ100の取り外し時に、超音波センサ100の回転を不要とすることができる。
【0052】
また、全ての係止部223a〜223cを2wayスナップフィットファスナー構造としても良い。この場合、構成をもっとも簡素化することができる。しかしながら、本構成の場合、超音波センサ100の回転方向の挙動を規制することができないので、上述したように、ストッパ125や保持部120等によって、その挙動を規制するような構成とする必要がある。
【0053】
また、本実施形態においては、超音波センサ100の筐体101(固定基部120)に被係止部121a〜121cを設け、保持部材200の保持部220に係止部223a〜223cを設ける例を示した。しかしながら、複数の係止部223a〜223cが筐体101及び保持部材200のすくなくとも一方に設けられ、他方に係止部223a〜223cに対応して被係止部121a〜121cが設けられれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の取付け構造に適用される超音波センサの概略構成を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)の上面から見た図、(c)は、(a)の右側面から見た図である。
【図2】被係止部における係止状態の解除を説明するための図である。
【図3】保持部材の概略構成を示す図であり、(a)は超音波センサが挿入される側から見た平面図、(b)は(a)の右側から見た図、(c)は、(a)の下側から見た図である。
【図4】取付け方法を説明するための図であり、(a)はバンパへの保持部材の固定、(b)は超音波センサの保持部材への固定を示す図である。
【図5】超音波センサをバンパに取付けた状態を示す図であり、(a)は部分断面図、(b)は(a)の上側から見た図、(c)は固定部の係止状態を示す図である。
【図6】ランス構造を有する係止部と被係止部との係止状態の解除を説明するための図であり、(a)は部分断面図、(b)は(a)の上側から見た図である。
【図7】残りの係止部と被係止部の係止状態の解除を説明するための図であり、(a)は超音波センサの回転前、(b)は超音波センサの回転後を示す図である。
【図8】保持部材の変形例を示す図である。
【図9】係止部の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
100・・・超音波センサ
101a・・・先端面
102・・・圧電振動子
110・・・センサ部
120、120a〜120c・・・固定基部
121、121a〜121c・・・被係止部
122a,122b・・・通過部
123a,123b・・・片持ち梁部
124・・・支持部
124a・・・貫通孔
200・・・保持部材
210・・・フランジ部
220・・・保持部
221・・・爪部
223,223a〜223c・・・係止部
300・・・バンパ
301・・・貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔の形成された取付け部に対し、センサ部が前記貫通孔に挿入された状態で超音波センサを固定する超音波センサの取付け構造であって、
前記取付け部には、少なくとも一部が前記取付け部の裏面側に突出するように保持部材が設けられ、
複数の係止部が、前記保持部材及び前記超音波センサの筐体の少なくとも一方に設けられ、他方に前記係止部に対応して被係止部が設けられ、
複数組の前記係止部及び前記被係止部のうち、1組の前記係止部及び前記被係止部は、その係止状態によって、前記超音波センサの検出軸方向、及び当該検出軸を中心とする回転方向における挙動を規制するとともに、押圧することにより係止状態が解除されるように構成され、残りの前記係止部及び前記被係止部は、その係止状態によって、前記超音波センサの検出軸方向における挙動を規制するように構成されるとともに、前記超音波センサの回転方向において、前記被係止部に連続して前記係止部が通過可能な通過部が設けられていることを特徴とする超音波センサの取付け構造。
【請求項2】
押圧することにより係止状態が解除される前記係止部及び前記被係止部のうち、前記検出軸を中心として外周側に位置する一方を含む部位が、前記筐体又は前記保持部材に連結しつつ弾性変形可能な梁部によって支持され、
前記係止部及び前記被係止部の一方をその先端側に有する前記部位の後端側を押圧することにより、先端側を係止状態の位置よりも外周側に移動させ、これにより係止状態が解除されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の超音波センサの取付け構造。
【請求項3】
貫通孔の形成された取付け部に対し、センサ部が前記貫通孔に挿入された状態で超音波センサを固定する超音波センサの取付け構造であって、
前記取付け部には、少なくとも一部が前記取付け部の裏面側に突出するように保持部材が設けられ、
前記保持部材及び前記超音波センサの筐体の少なくとも一方に複数の係止部が設けられ、他方に前記係止部に対応して被係止部が設けられ、
少なくとも一部の前記係止部は、対応する前記被係止部へ組み付けられる先端位置及びその逆側の後端位置から、それぞれ所定の範囲に渡って突起頂点方向に傾斜していることを特徴とする超音波センサの取付け構造。
【請求項4】
全ての前記係止部は、対応する前記被係止部へ組み付けられる先端位置及びその逆側の後端位置から、それぞれ所定の範囲に渡って突起頂点方向に傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の超音波センサの取付け構造。
【請求項5】
複数組の前記係止部及び前記被係止部のうち、1組の前記係止部及び前記被係止部は、その係止状態によって、前記超音波センサの検出軸方向、及び当該検出軸を中心とする回転方向における挙動を規制するとともに、押圧することにより係止状態が解除されるように構成され、
それ以外の前記係止部は、対応する前記被係止部へ組み付けられる先端位置及びその逆側の後端位置から、それぞれ所定の範囲に渡って突起頂点方向に傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の超音波センサの取付け構造。
【請求項6】
前記超音波センサは、前記検出軸を中心として前記センサ部よりも外周側に、前記センサ部に対して略並行となるように前記筐体から突出する固定基部を備え、
当該固定基部に、前記係止部及び前記被係止部の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の超音波センサの取付け構造。
【請求項7】
前記保持部材は、前記取付け部の裏面側において、前記貫通孔の開口縁部に固定されていることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の超音波センサの取付け構造。
【請求項8】
前記保持部材は、前記取付け部の表面側において前記貫通孔の開口縁部に当接するフランジ部と、当該フランジ部に連結し、前記貫通孔の内壁に当接しつつ貫通して前記取付け部の裏面側に突出する保持部を備え、
前記保持部に、前記係止部及び前記被係止部の少なくとも一方と、前記貫通孔への挿入先端から突起頂点に向けて傾斜し、前記フランジ部とともに前記取付け部を狭持する爪部が設けられていることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の超音波センサの取付け構造。
【請求項9】
前記保持部として、前記フランジ部から起立し、前記貫通孔を通して前記取付け部の裏面側に突出する起立部と、前記取付け部の裏面側にて複数の前記起立部を架橋する架橋部とにより構成されるアーチ状保持部を少なくとも備え、
前記架橋部に、前記爪部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の超音波センサの取付け構造。
【請求項10】
前記取付け部は、車両のバンパであることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の超音波センサの取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−47007(P2006−47007A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225828(P2004−225828)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】