説明

超音波トランスジューサ及び超音波レベル計

【課題】液面レベルの低い場合の残響特性の影響が少なく、液体の充填等の液面変化に強く、液面の低い場合から高い場合まで、簡単な制御で安定した液面計測を可能とする。
【解決手段】超音波レベル計は、容器30の底部外壁面に取り付けられ、容器内部に収容された液体の液面に向けて超音波を送信させると共に、液面からの反射波を受信する超音波トランスジューサ10を備える。超音波トランスジューサ10は、円板状圧電素子12とリング状圧電素子13が同心円状に配置され、2つの圧電素子12,13がそれぞれ異なる振動状態(縦振動,横振動)により超音波の送受信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスジューサ及び超音波レベル計、より詳細には、超音波の伝播時間を利用して容器内の液体の液面レベルなどを計測するための超音波トランスジューサ及び該超音波トランスジューサを備えた超音波レベル計に関する。
【背景技術】
【0002】
送受信兼用の超音波トランスジューサを備えた超音波レベル計は、超音波トランスジューサから超音波を送信し、その反射波を受信するまでの時間を計測し、その時間に基づいて対象物までの距離を算出するもので、対象物までの距離を正確かつ容易に計測することができるため、各種用途で利用されている。
【0003】
貯槽内部の液面が高い位置にある場合(貯槽底面から遠距離にある場合)、液面が近い場合に比べて微弱な波であるため、従来の受信回路では、液面が高い場合であっても十分にエコーを取得するには増幅回路のゲインを高める必要があった。ところが、増幅回路を高ゲインにした場合、駆動残響が指数関数的に減衰しきるところまでの十分な時間が必要となってしまう。すなわち、高い液面まで対応させようとすると、駆動残響時間が長引くために、液面位置が低い場合に液面をとらえることができないという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、受信回路をゲイン可変増幅回路で構成し、前回の計測結果で液面位置が低い場合には、低ゲインで反射エコーを検出する方法が考えられる。しかし、この方法では、液面位置が急激に変化するような場合、あるいは計測間隔が非常に長い場合には液面変動に追従できず、安定した計測ができない。
【0005】
これに対して、特許文献1には、超音波トランスジューサの駆動タイミングを起点として時間に応じて信号の増幅率が大きくなるように制御することにより、残響により検出できない不感帯時間(距離)を調整し、常に安定した残響特性と感度特性を実現できるようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−257981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術の場合、信号の増幅率を制御することで、残響により検出できない不感帯時間を調整し、常に安定した残響特性と感度特性を両立させるには限界がある。また貯槽の板厚が大きい場合、信号の増幅率を変化させると共に、超音波トランスジューサに入力するパルス信号の発振時間を変化させることにより、ある程度の残響による不感帯時間(距離)を短く調整できるが、調整にも限界があり、温度や経時変化等を考慮すると、検出マージンが問題となる上、上記調整のタイミングなどの制御が複雑化し、消費電力の増加が余儀なくされるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、液面レベルの低い場合の残響特性の影響が少なく、液体の充填等の液面変化に強く、液面の低い場合から高い場合まで、簡単な制御で安定した液面計測を可能とする超音波トランスジューサ及び該超音波トランスジューサを備えた超音波レベル計を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、容器の底部外壁面に取り付けられ、該容器内部に収容された液体の液面に向けて超音波を送信させると共に、前記液面からの反射波を受信する超音波トランスジューサであって、2つの圧電素子が略同一箇所に配置され、該2つの圧電素子がそれぞれ異なる振動状態により超音波の送受信を行うことを特徴としたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記2つの圧電素子が同心円状に配置されていることを特徴としたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記2つの圧電素子のうち、送信用圧電素子の機械的共振周波数と、受信用圧電素子の電気的反共振周波数とが略等しいことを特徴としたものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1の発明において、前記容器の底部外壁面と前記2つの圧電素子との間に音響整合層を備え、前記音響整合層の厚みは、前記2つの圧電素子間で一致した共振周波数における音波の波長の1/2の整数倍に音響整合されていることを特徴としたものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記音響整合層は、前記2つの圧電素子のうち、一方の圧電素子が固定された第1の領域と、他方の圧電素子が固定された第2の領域とを備え、前記第1の領域と前記第2の領域との境界にスリットが形成されていることを特徴としたものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項4の発明において、前記音響整合層は、前記2つの圧電素子のうち、一方の圧電素子が固定された第1の部材と、他方の圧電素子が固定された第2の部材とにより一体的に形成され、前記第1の部材と前記第2の部材とがそれぞれ別の材質で構成されていることを特徴としたものである。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1の発明における超音波トランスジューサと、該超音波トランスジューサにより超音波を送信した時点からその反射波を受信する時点までの時間情報に基づいて前記液面の検出動作を制御する制御部とが接続されたことを特徴とする超音波レベル計である。
【0015】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記制御部は、前記液面のレベルが所定レベル以下の場合、超音波の送信時、前記2つの圧電素子のうち、厚み方向に縦振動する一方の圧電素子を駆動させ、前記液面で反射した前記超音波の受信時、前記厚み方向と直交する方向に横振動する他方の圧電素子で前記超音波を受信するように制御することを特徴としたものである。
【0016】
請求項9の発明は、請求項7の発明において、前記制御部は、前記液面のレベル及び/又は前記液面の状態に基づいて、前記2つの圧電素子の使用状態を切り換えることを特徴としたものである。
【0017】
請求項10の発明は、請求項7の発明において、前記制御部は、前記液面のレベルが所定レベルを超えている場合、前記液面で反射した超音波の受信時、前記2つの圧電素子を同時に使用して前記超音波を受信するように制御することを特徴としたものである。
【0018】
請求項11の発明は、請求項7の発明において、前記制御部は、前記液面のレベルが所定レベルを超えており且つ前記液面の揺れが発生した場合、超音波の送信時、前記2つの圧電素子を同時に駆動させ、前記液面で反射した前記超音波の受信時、前記2つの圧電素子を使用して前記超音波を受信するように制御することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、液面レベルの低い場合の残響特性の影響が少なく、液体の充填等の液面変化に強く、液面の低い場合から高い場合まで、簡単な制御で安定した液面計測を可能とし、消費電力の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の超音波トランスジューサを備えた超音波レベル計を容器に設置した状態の一例を示す図である。図中、10は超音波トランスジューサ、20はコントローラ(制御部)、30は液化ガスや灯油等を収容する貯槽又は容器(以下、容器で代表する)、31は液面を示す。超音波レベル計は、後述する2つの圧電素子を備えた超音波トランスジューサ10と、超音波トランスジューサ10により超音波を送信した時点からその反射波を受信する時点までの時間情報に基づいて液面31の検出動作を制御するコントローラ20とで構成される。超音波トランスジューサ10は、容器30の外壁底面に図示しないマグネット等により設置され、有線によりコントローラ20に接続されている。
【0021】
なお、超音波トランスジューサ10とコントローラ20との間の通信を無線を介して行うように構成してもよく、この場合、配線の損傷や第三者による故意の切断等による動作不良を回避することが可能となる。
【0022】
上記のような構成において、例えば、液体の液面31を検出しようとする際に、作業者はコントローラ20を操作して、超音波トランスジューサ10から超音波wを送信し、主に液面31で反射して戻ってきた反射エコーを受信し、この受信した反射エコーに基づいて液面位置、すなわち液面31までの液面距離を算出し、さらに算出した液面距離に基づいて容器30内の液体容量を算出することができる。
【0023】
液面31の高さを検出する際に、超音波トランスジューサ10は、容器30の底部壁に向けて上方に超音波wを送信する。送信した超音波wは、液面31で反射して戻ってくるが、液面31の高さに応じて超音波トランスジューサ10が反射波を受信するまでの遅延時間が異なる。コントローラ20は、受信した反射波の遅延時間から液面距離を算出するためのデータ、例えば温度や伝播速度(空気又は液体等)に応じた音速データ等を保持しており、このデータに基づいて液面距離を算出する。
【0024】
図2は、図1に示した超音波トランスジューサ10の詳細構成例を示す図である。図中、超音波トランスジューサ10は、振動状態(振動モード)の異なる2つの圧電素子12,13を備え、容器30と圧電素子12,13との間に設けられた音響整合層11により、圧電素子12,13が音響整合される。これら2つの圧電素子12,13は略同一箇所(本例の場合、同心円状)に配置され、容器30の底部外壁面に音響整合層11を介して取り付けられる。そして、2つの圧電素子12,13は、それぞれ異なる振動モードにより超音波の送受信を行う。
【0025】
すなわち、超音波トランスジューサ10には、それぞれ異なる振動モードを有する圧電素子12,13が備えられ、本例の場合、圧電素子12は円板状圧電素子であり、圧電素子13はリング状圧電素子である。2つの圧電素子12,13のうち、円板状圧電素子12に外部(図1に示したコントローラ20)より電圧を印加し、この電気信号により電気機械変換された振動による超音波が音響整合層11へと伝播され、容器30の壁(板厚部)を透過し、媒質中の既存のLPGなどの液体へと超音波が伝播される。その後、この媒質中を伝播し、液層と気層との境界面(図1に示した液面31)にて全反射した超音波が、再び受信側の超音波トランスジューサ10の一部であるリング状圧電素子13で受信される。
【0026】
このように、超音波トランスジューサを構成する2つの圧電素子が略同一な位置で超音波を送受信することができるため、送受信の効率が良く、実装スペースも最小限で済むため、小型コンパクトにすることができ、簡単な制御で消費電力の低減を図ることができる。
また、2つの圧電素子の振動状態の相異により、受信時の残響特性が良く、液面レベルが低い場合でも液面検出が可能となる。
【0027】
図3は、円板状圧電素子12とリング状圧電素子13の周波数インピーダンス特性の一例を示す図である。図中、41は円板状圧電素子12の周波数インピーダンスで、42はリング状圧電素子13の周波数インピーダンスである。図中の点線部において、送信時に縦振動モード(Aモード)を行う。このAモードでは円板状圧電素子12を縦(厚み)方向に機械振動させ、機械的共振周波数f3により超音波を伝播させる。また、受信時に横振動モード(Bモード)を行う。このBモードではリング状圧電素子13を円板状圧電素子12の縦振動とは直交関係となる横方向へ広がり振動させる。この際、リング状圧電素子13の電気的反共振周波数f2が、円板状圧電素子12の機械的共振周波数f3と略同一周波数(f2≒f3)となる。
【0028】
このように、送信用圧電素子(円板状圧電素子)の厚み(液面)方向への縦振動による機械的共振周波数f3が、受信用圧電素子(リング状圧電素子)の電気的反共振周波数f2とほぼ一致していることで、互いの振動が阻害されることが無く、送受信の効率が良い超音波トランスジューサを提供することができる。
【0029】
図4は、音響整合層11の厚みと2つの圧電素子12,13の共振周波数との関係を説明するための図である。ここで、図3において略一致した共振周波数f3≒f2以下の周波数で、f2近傍周波数における共振周波数f(≒f2≒f3)において、音響整合層11の厚みtは、この周波数fによる音波の波長λのおおよそ1/2の整数倍mで音響整合される。
【0030】
すなわち、音響整合層11の厚みtは下記の式(1)から求められる。
t=m・λ/2=m・{C/(2f)} …式(1)
但し、m:整数、λ:音響整合層11を伝搬する音波の波長、C:音響整合層11を伝搬する縦波音波の速度、f:2つの圧電素子間の共振周波数とする。例えば、m=1である場合、厚みt=C/(2f)の音響整合層となる。
【0031】
このように、超音波トランスジューサの音響整合層の厚みが、2つの圧電素子で一致した共振周波数における音波の波長のおおよそ1/2の整数倍に音響整合することで、2つの圧電素子の振動特性を変化させること無く、超音波振動を発生でき、使用帯域内における不要な共振の発生を低減することができる。このため、S/Nが良く、効率の良い送受信特性が確保することができる。
【0032】
図5は、本発明に係る超音波トランスジューサ10の他の構成例を示す図である。本例における音響整合層11は、2つの圧電素子12,13のうち、円板状圧電素子12が固定された第1の領域111と、リング状圧電素子13が固定された第2の領域112とを備える。そして、第1の領域111と第2の領域112との境界にスリット14が形成されている。これにより、音響整合層11は、2つの圧電素子12,13の境界で、スリット14により一定の間隔をおいて分離される。
【0033】
すなわち、円板状圧電素子12の外周縁から一定の距離だけ離れた位置に、この外周に沿う形で相似形のリング状スリット14が形成され、このスリット14の外周には、さらに一定の距離を隔てて、リング状圧電素子13が配置される。2つの圧電素子12,13は音響整合層11と接着等により結合され、このスリット14によって機械的にアイソレーションされた超音波トランスジューサ10の放射面の構造を有する。図5の構造とすることで、2つの圧電素子12,13は、機械的にアイソレーションされ、同一の音響整合層11に接着剤等で固定されていながら、互いの振動モードによる干渉が抑えられ、異なる振動モードで振動し、超音波の送受信を行うことができる。
【0034】
このように、2つの圧電素子を固定する音響整合層が、圧電素子間の境界においてスリット(溝)で分離されるため、互いに異なる振動モードによる振動位相の微妙なズレを機械的に分離することができる。これにより、残響が少なく、個々の振動を効率良く伝播できるようになるため、消費電力の低減化が図れ、液面検出におけるS/Nの向上が期待できる。また温度や経時変化、互いの圧電素子振動による機械的なストレスを低減することができる。
【0035】
図6は、本発明に係る超音波トランスジューサ10の他の構成例を示す図である。本例における音響整合層11は、2つの圧電素子12,13のうち、円板状圧電素子12が固定された第1の部材11aと、リング状圧電素子13が固定された第2の部材11bとにより一体的に形成される。そして、第1の部材11aと第2の部材11bとがそれぞれ別の材質で構成されている。
【0036】
すなわち、音響整合層11は、円板状圧電素子12の外周と、この外周に沿う形で配置された、リング状圧電素子13の内周との中心線を境界に、それぞれ材質の異なる2つの部材11a,11bが接合部15で貼り合わされた構造を有する。そして、音響整合層11の下面には振動モードが互いに異なる圧電素子12,13が接着固定され、これら互いに異なる振動モードによる振動を、互いに材質の異なる音響整合層の第1の部材11a,第2の部材11bへと伝播させ、超音波の送受信を行う。
【0037】
このように、2つの圧電素子を固定する音響整合層が、圧電素子間の境界において材質の異なる2つの部材で構成されるため、2つの圧電素子の共振周波数の差(特性差)を緩和でき、更には機械的な振動における互いの干渉が低減できるので、送受信効率がよく、消費電力の低減化が図れ、更には液面検出におけるS/Nの向上が期待できる。また温度や経時変化、互いの圧電素子振動による機械的なストレスを低減することができる。
【0038】
図7は、本発明の超音波レベル計による液面検出処理の一例を説明するための図である。本例は図1及び図2に示した超音波レベル計の構成に基づいて説明する。
超音波レベル計のコントローラ20は、液面31のレベルが所定レベル以下の場合、超音波wの送信時、2つの圧電素子12,13のうち、厚み(液面)方向に縦振動する円板状圧電素子12を駆動させ、液面31で反射した超音波wの受信時、厚み方向と直交する方向に横振動するリング状圧電素子13で超音波wを受信するように制御する。
【0039】
すなわち、図7(A)に示すように、液面レベルが規定のレベルhx以下の場合、特に近距離での残響を考慮して計測する場合、図7(B)に示すように、2つの圧電素子12,13のうち、送信用の縦振動をする円板状圧電素子12を駆動し、電気機械変換された振動音波が音響整合層11へ伝播され、これによる超音波w1が、容器30の壁を透過し、媒質中の液体(LPG等)へ送信され、この媒質中を伝播し、液層と気層との境界面(液面31)にて反射し、反射した超音波w2が再び受信側のリング状圧電素子13で受信される。
【0040】
超音波w2の受信時において、リング状圧電素子13は、送信側の円板状圧電素子12の振動方向と直交関係となる広がり振動(横方向振動)を行い、且つ、共振周波数が円板状圧電素子12の共振周波数と略一致するようにしている。
【0041】
このように、液面レベルが規定のレベル以下の場合、特に近距離での残響を考慮して計測する場合、2つの圧電素子のうち、縦振動する一方の圧電素子を駆動し、受信時には、送信側と直交関係となる広がり振動(横方向振動)し且つ上記一方の圧電素子と共振周波数が略一致した他方の圧電素子により、超音波を受信するので、送信側と振動が分離できるため、送信時の圧電素子による残響の影響が低減され、近距離検出における検出マージンを向上させることができる。さらに、送受信を別々の圧電素子にすることで、送受信効率が良く、液面検出におけるS/Nの向上を図ることができる。
【0042】
図8は、本発明の超音波レベル計による液面検出処理の他の例を説明するための図である。本例は図1及び図2に示した超音波レベル計の構成に基づいて説明する。
超音波レベル計のコントローラ20は、液面31のレベル及び/又は液面31の状態に基づいて、2つの圧電素子12,13の使用状態を切り換える制御を行う。
【0043】
すなわち、図8において、Aモード(縦振動モード)では円板状圧電素子12を動作させ、Bモード(横振動モード)ではリング状圧電素子13を動作させる。本例の場合、液面31のレベル(液面の高さ)や、液面31の状態(液面の揺れなど)に応じて、超音波の送受信モード(Aモード,Bモード)を使い分ける。
【0044】
例えば、通常時においては、送信をAモード、受信をBモードにしておき、送信時に円板状圧電素子12でのみ超音波の送信を行い、受信時にリング状圧電素子13でのみ超音波の受信を行う。この際、容器30の内部に媒質(LPG等)を充填し、液面レベルがhx以上となり且つ液面31に揺れが発生したと判断(検出能力が低下)した場合には、超音波の送受信を行う圧電素子のモード(Aモード,Bモード)を切り換えて、使い分けを行う。具体的には、送信の場合、Aモードの円板状圧電素子12に加えて、Bモードのリング状圧電素子13を駆動させ、両方の圧電素子で超音波の送信を行い、受信の場合、Bモードのリング状圧電素子13に加えて、Aモードの円板状圧電素子12でも受信し、両方の圧電素子で超音波の受信を行う。
【0045】
このように、液面のレベル及び/又は液面の状態に応じて、さらには、温度変化による残響特性、感度特性などに応じて、送受信用の2つの圧電素子の使用状態を切り換える構成とすることで、2つの圧電素子の最適な使い分けが可能となるため、全計測範囲に渡って検出マージンが高く、常に安定した液面検出が可能となる。
【0046】
図9は、本発明の超音波レベル計による液面検出処理の他の例を説明するための図である。本例は図1及び図2に示した超音波レベル計の構成に基づいて説明する。
超音波レベル計のコントローラ20は、液面31のレベルが所定レベルを超えている場合、液面31で反射した超音波wの受信時、2つの圧電素子12,13を同時に使用して超音波wを受信するように制御する。
【0047】
すなわち、図9(A)に示すように、液面31のレベルが規定のレベルhxを超えた状態で、超音波を送受信する際に、図9(B)に示すように、超音波の受信時において、振動モードの互いに異なる2つの圧電素子12,13を同時に使用する。本例の場合、送信時はAモードで一方の圧電素子のみで送信し、受信時はA+Bモードで両方の圧電素子により受信するように制御される。
【0048】
より具体的には、超音波を送信し伝播させる際には、Aモードの円板状圧電素子12を駆動し、電気機械変換された振動音波が音響整合層11へ伝播され、これによる超音波振動が、容器30の壁を透過し、媒質中の液体(LPG等)へ送信され、この媒質中を伝播し、液層と気層との境界面(液面31)にて反射し、再び受信側のリング状圧電素子13と円板状圧電素子12で受信される。
【0049】
なお、受信時には、互いに振動モードの異なる、Aモード(円板状圧電素子12の縦振動)とBモード(リング状圧電素子13の横振動)の2つの振動モードによる圧電素子により、ほぼ同時に液面境界で反射し再び戻ってくる超音波を受信する。この際、互いの圧電素子12,13の電気的反共振周波数がほぼ一致していることと、互いの振動モードが直交関係となることで、図9(B)に示すように、Aモード(円板状圧電素子12)及びBモード(リング状圧電素子13)の位相がほぼ揃って縦横に振動する。
【0050】
このように、液面のレベルが所定レベルを超えた場合、超音波を受信する際、2つの圧電素子を同時に使用し、2つの圧電素子によりほぼ同時に反射音波を受信することで、特に液面が遠い時(遠距離の液面計測時)に超音波信号の減衰による影響が少なく、効率良く超音波を受信することが可能となる。
【0051】
図10は、本発明の超音波レベル計による液面検出処理の他の例を説明するための図である。本例は図1及び図2に示した超音波レベル計の構成に基づいて説明する。
超音波レベル計のコントローラ20は、液面31のレベルが所定レベルを超えており且つ液面31の揺れが発生した場合、超音波wの送信時、2つの圧電素子12,13を同時に駆動させ、液面31で反射した超音波wの受信時、2つの圧電素子12,13を使用して超音波wを受信するように制御する。
【0052】
ずなわち、図10に示すように、液面31のレベルが規定のレベル:hxを超え、液面31の揺れが発生した場合、送信時に2つの圧電素子12,13を同時に使用(A+Bモード)し、これらを駆動し、送信パワーを増強させると同時に、受信時に、圧電素子12,13を切り換えることなく、2つの圧電素子12,13を同時に使用(A+Bモード)することで、液面31の揺れにより分散され散乱される境界面からの反射音波を効率良く取得する。
【0053】
このように、液面のレベルが所定レベルを超え、内容液の充填等により液面の揺れが発生した場合、送受信の2つの圧電素子を同時に駆動し、送信パワーを増強させ、液面の揺れ等により分散される反射波の超音波信号を、2つの圧電素子により広い範囲で、しかも効率良く受信できるので、液面に揺れがあっても安定した液面検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の超音波トランスジューサを備えた超音波レベル計を容器に設置した状態の一例を示す図である。
【図2】図1に示した超音波トランスジューサの詳細構成例を示す図である。
【図3】円板状圧電素子とリング状圧電素子の周波数インピーダンス特性の一例を示す図である。
【図4】音響整合層の厚みと2つの圧電素子の共振周波数との関係を説明するための図である。
【図5】本発明に係る超音波トランスジューサの他の構成例を示す図である。
【図6】本発明に係る超音波トランスジューサの他の構成例を示す図である。
【図7】本発明の超音波レベル計による液面検出処理の一例を説明するための図である。
【図8】本発明の超音波レベル計による液面検出処理の他の例を説明するための図である。
【図9】本発明の超音波レベル計による液面検出処理の他の例を説明するための図である。
【図10】本発明の超音波レベル計による液面検出処理の他の例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0055】
10…超音波トランスジューサ、11…音響整合層、11a…第1の部材、11b…第2の部材、12…圧電素子(円板状圧電素子)、13…圧電素子(リング状圧電素子)、14…スリット、15…接合部、20…コントローラ、30…容器、31…液面、41…円板状圧電素子の周波数インピーダンス特性、42…リング状圧電素子の周波数インピーダンス特性、111…第1の領域、112…第2の領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の底部外壁面に取り付けられ、該容器内部に収容された液体の液面に向けて超音波を送信させると共に、前記液面からの反射波を受信する超音波トランスジューサであって、
2つの圧電素子が略同一箇所に配置され、該2つの圧電素子がそれぞれ異なる振動状態により超音波の送受信を行うことを特徴とする超音波トランスジューサ。
【請求項2】
前記2つの圧電素子が同心円状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波トランスジューサ。
【請求項3】
前記2つの圧電素子のうち、送信用圧電素子の機械的共振周波数と、受信用圧電素子の電気的反共振周波数とが略等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波トランスジューサ。
【請求項4】
前記容器の底部外壁面と前記2つの圧電素子との間に音響整合層を備え、
前記音響整合層の厚みは、前記2つの圧電素子間で一致した共振周波数における音波の波長の1/2の整数倍に音響整合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波トランスジューサ。
【請求項5】
前記音響整合層は、前記2つの圧電素子のうち、一方の圧電素子が固定された第1の領域と、他方の圧電素子が固定された第2の領域とを備え、
前記第1の領域と前記第2の領域との境界にスリットが形成されていることを特徴とする請求項4に記載の超音波トランスジューサ。
【請求項6】
前記音響整合層は、前記2つの圧電素子のうち、一方の圧電素子が固定された第1の部材と、他方の圧電素子が固定された第2の部材とにより一体的に形成され、
前記第1の部材と前記第2の部材とがそれぞれ別の材質で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の超音波トランスジューサ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の超音波トランスジューサと、該超音波トランスジューサにより超音波を送信した時点からその反射波を受信する時点までの時間情報に基づいて前記液面の検出動作を制御する制御部とが接続されたことを特徴とする超音波レベル計。
【請求項8】
前記制御部は、前記液面のレベルが所定レベル以下の場合、超音波の送信時、前記2つの圧電素子のうち、厚み方向に縦振動する一方の圧電素子を駆動させ、前記液面で反射した前記超音波の受信時、前記厚み方向と直交する方向に横振動する他方の圧電素子で前記超音波を受信するように制御することを特徴とする請求項7に記載の超音波レベル計。
【請求項9】
前記制御部は、前記液面のレベル及び/又は前記液面の状態に基づいて、前記2つの圧電素子の使用状態を切り換えることを特徴とする請求項7に記載の超音波レベル計。
【請求項10】
前記制御部は、前記液面のレベルが所定レベルを超えている場合、前記液面で反射した超音波の受信時、前記2つの圧電素子を同時に使用して前記超音波を受信するように制御することを特徴とする請求項7に記載の超音波レベル計。
【請求項11】
前記制御部は、前記液面のレベルが所定レベルを超えており且つ前記液面の揺れが発生した場合、超音波の送信時、前記2つの圧電素子を同時に駆動させ、前記液面で反射した前記超音波の受信時、前記2つの圧電素子を使用して前記超音波を受信するように制御することを特徴とする請求項7に記載の超音波レベル計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−232801(P2008−232801A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72324(P2007−72324)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】