説明

超音波プローブ及び超音波診断装置

【課題】近距離音場に関する画質向上。
【解決手段】超音波プローブは、配列面に2次元状に配列された複数の振動子10を有する。複数の振動子10のうちの複数の送信専用素子は、配列面に設けられた第1環領域11に配列される。複数の振動子10のうちの複数の受信専用素子は、配列面に設けられ、第1環領域11に隣り合わせに配置され、第1環領域11と同一の同心円中心を有する第2環領域12に配列される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波プローブ及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図25に示すように、超音波診断装置は、処理装置、表示装置、ケーブル、及び超音波プローブを含んでいる。超音波プローブは、ケーブルを介して処理装置に接続されている、処理装置は、典型的には、被検体中の関心領域への超音波パルスの送信と被検体により反射された超音波エコーの受信とのために、超音波プローブ内の複数の振動子を制御する。処理装置は、関心領域に関する超音波画像の表示のような後処理のために、リアルタイムで超音波エコーを受信する。
【0003】
より詳細には、複数の振動子は、超音波信号を送受信するための複数のチャネルに接続されている。2次元撮像データを収集する場合、チャネル数は、典型的には、64から256までの範囲の数に設定されている。3次元撮像データを収集する場合、チャネル数は、典型的には、1000以上が要求されている。上記の超音波診断装置において、超音波プローブは、超音波信号の送受信のための回路や他の要素のような多数の電気部品を収容している。より詳細には、超音波プローブは、超音波パルスの発生と超音波エコーの受信とを実行するために、振動子とそれに対応する回路とを含んでいる。
【0004】
典型的には、振動子は、単一の素子で送信機能と受信機能とを実行する送受信素子として機能する。複雑な回路構成のため、送受信素子を搭載する超音波プローブは、高コストであり、電力消費量が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的は、近距離音場に関する画質向上を可能とする超音波プローブ及び超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る超音波プローブは、配列面に2次元状に配列された複数の振動子を具備する超音波プローブであって、前記複数の振動子のうちの複数の送信専用素子は、前記配列面に設けられた第1環領域に配列され、前記複数の振動子のうちの複数の受信専用素子は、前記配列面に設けられ、前記第1環領域に隣り合わせに配置され、前記第1環領域と同一の同心円中心を有する第2環領域に配列される、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図。
【図2】第1実施形態に係る超音波プローブの振動子アレイの配列パターンを模式的に示す図。
【図3】第2実施形態に係る超音波プローブの振動子アレイの配列パターンを模式的に示す図。
【図4】第3実施形態に係る超音波プローブの振動子アレイの配列パターンを模式的に示す図。
【図5】第4実施形態に係る超音波プローブの振動子アレイの配列パターンを模式的に示す図。
【図6】第5実施形態に係る超音波プローブの振動子アレイの配列パターンを模式的に示す図。
【図7】第6実施形態に係る超音波プローブの振動子アレイの配列パターンを模式的に示す図。
【図8】第7実施形態に係る超音波プローブの振動子アレイの配列パターンを模式的に示す図。
【図9】第8実施形態に係る超音波プローブの振動子アレイの配列パターンを模式的に示す図。
【図10】第9実施形態に係る超音波プローブの振動子アレイの配列パターンを模式的に示す図。
【図11A】第4実施形態に係る超音波診断装置によるダイナミックスポットスキャンを説明するための図。
【図11B】第4実施形態に係る超音波診断装置によるダイナミックスポットスキャンを説明するための他の図。
【図11C】第4実施形態に係る超音波診断装置によるダイナミックスポットスキャンを説明するための他の図。
【図12】第7実施形態に係る超音波診断装置によるダイナミックスポットスキャンを説明するための図。
【図13】第8実施形態に係る超音波診断装置によるダイナミックスポットスキャンを説明するための図。
【図14】第1実施形態に係る超音波診断装置による動作例4を説明するための図。
【図15】第2実施形態に係る超音波診断装置による動作例4を説明するための図。
【図16】第3実施形態に係る超音波診断装置による動作例4を説明するための図。
【図17A】本実施形態に係る超音波診断装置による空間コンパウンド開口技術を説明するための図。
【図17B】本実施形態に係る超音波診断装置による空間コンパウンド開口技術を説明するための他の図。
【図17C】本実施形態に係る超音波診断装置による空間コンパウンド開口技術を説明するための他の図。
【図18A】本実施形態に係る超音波診断装置による合成開口技術を説明するための図。
【図18B】本実施形態に係る超音波診断装置による合成開口技術を説明するための他の図。
【図18C】本実施形態に係る超音波診断装置による合成開口技術を説明するための他の図。
【図19A】本実施形態の変形例の動作例1に係る超音波診断装置の動作例を説明するための図。
【図19B】本実施形態の変形例の動作例1に係る超音波診断装置の動作例を説明するための他の図。
【図19C】本実施形態の変形例の動作例1に係る超音波診断装置の動作例を説明するための他の図。
【図20A】本実施形態の変形例の動作例2に係る超音波診断装置の動作例を説明するための図。
【図20B】本実施形態の変形例の動作例2に係る超音波診断装置の動作例を説明するための他の図。
【図20C】本実施形態の変形例の動作例2に係る超音波診断装置の動作例を説明するための他の図。
【図21A】本実施形態の変形例の動作例3に係る超音波診断装置によるダイナミックスポットスキャンの動作例を説明するための図。
【図21B】本実施形態の変形例の動作例3に係る超音波診断装置によるダイナミックスポットスキャンの動作例を説明するための他の図。
【図21C】本実施形態の変形例の動作例3に係る超音波診断装置によるダイナミックスポットスキャンの動作例を説明するための他の図。
【図22A】本実施形態の変形例の動作例4に係る超音波診断装置による非対称開口技術を利用したスキャンの動作例を説明するための図。
【図22B】本実施形態の変形例の動作例4に係る超音波診断装置による非対称開口技術を利用したスキャンの動作例を説明するための他の図。
【図23】本実施形態の変形例の動作例4に係る超音波診断装置による他の非対称開口技術を利用したスキャンの動作例を説明するための図。
【図24】本実施形態の変形例の動作例5に係る超音波診断装置による移動開口スキャンの動作例を説明するための図。
【図25】従来例に係る超音波診断装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる超音波プローブ及び超音波診断装置を説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送信部3、受信部4、制御部5、信号処理部6、画像発生部7、記憶部8、及び表示部9を有している。
【0010】
超音波プローブ2は、振動子配列面を有している。振動子配列面には、複数の振動子が2次元状に配列されている。すなわち、本実施形態に係る超音波プローブ2は、2次元アレイ型である。複数の振動子の集合は、振動子アレイと呼ばれている。超音波プローブ2は、典型的には、超音波送信専用の複数の振動子と超音波受信専用の複数の振動子とを含んでいる。ここで、送信機能のみを実行するための送信専用の振動子を送信専用素子と呼び、受信機能のみを実行するための受信専用の振動子を受信専用素子と呼ぶ。また、超音波プローブ2は、超音波送信と超音波受信との両方を実行するための振動子を有していても良い。ここで、送信機能と受信機能との両方を実行するための振動子を送受信素子と呼ぶ。配列面には、既定の環形状を有する複数の環領域が設けられている。環形状は、具体的には、円環形状、楕円環形状、及び多角形環形状のうちの何れか一つの形状を有している。各環領域には、複数の送信専用素子、複数の受信専用素子、及び複数の送受信素子のうちの何れか一種類の振動子が排他的に配列されている。各環領域の配置、すなわち、振動子の配列パターンは、例えば、光学回折理論の干渉パターンに従って決定されている。
【0011】
本実施形態に係る振動子は、圧電振動子、静電容量型マイクロマシン超音波振動子(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer:cMUT)、圧電型マイクロマシン超音波振動子(Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer:pMUT)、あるいは、他の適切な種類の振動子のうちのいずれの種類の振動子にも適用可能である。
【0012】
送信部3は、制御部5による制御に従って、既定のタイミングでレートパルスをチャネル毎に繰り返し発生する。送信部3は、発生された各レートパルスに対して、既定の送信方向と送信焦点とに関する超音波送信ビーム(以下、送信ビームと呼ぶ。)を形成するのに必要な遅延時間を与える。この遅延時間は、例えば、ステアリング角度と送信焦点深さとに応じてチャネル毎に決定される。そして送信部3は、各遅延されたレートパルスに基づくタイミングで駆動信号を発生する。発生された駆動信号は、超音波送信に利用する振動子、すなわち、送信専用素子または送受信素子に供給される。駆動パルスの供給を受けた各振動子は、超音波を発生する。構造的には、送信部3は、複数の送信回路を搭載している。各送信回路は、駆動信号を発生する。各送信回路は、超音波送信に利用される振動子、すなわち、送信専用素子または送受信素子にチャネルを介して接続されている。各送信回路は、発生された駆動信号を送信専用素子または送受信素子にチャネルを介して供給する。
【0013】
受信部4は、制御部5による制御に従って、超音波受信に利用する振動子、すなわち、受信専用素子または送受信素子からエコー信号を受信する。そして、受信部4は、受信されたエコー信号を信号処理し、超音波受信ビーム(以下、受信ビームと呼ぶ。)に関する受信信号を生成する。より詳細には受信部4は、受信されたエコー信号を増幅し、増幅されたエコー信号をアナログからデジタルに変換する。受信部4は、デジタルに変換されたエコー信号に、既定のステアリング角度と受信焦点深さとに応じた必要な遅延時間を与え、遅延時間が与えられたエコー信号を加算する。この遅延加算処理は、受信ビームに沿って受信焦点深さを変更しながら繰り返される。これにより、受信部4は、受信ビームに関するエコー信号(以下、受信信号と呼ぶ。)を生成する。受信信号の生成は、受信ビームの形成とも呼ばれている。生成された受信信号は、信号処理部6に供給される。構造的には、受信部4は、複数の受信回路を搭載している。各受信回路は、受信専用素子または送受信素子にチャネルを介して接続されている。各受信回路は、受信専用素子または送受信素子からチャネルを介して供給されたエコー信号に信号処理を施す。
【0014】
なお、各振動子は、隙間なく配列されても良いし、隙間を空けて配列されても良い。各振動子が隙間を空けて配列される場合、受信部4は、受信ビームプロファイルを形成することを目的として、受信専用素子または送受信素子からの受信信号に所定のアポダイゼーション関数を適用し、受信信号の重み付けを行う。このアポダイゼーション関数は、受信焦点深さに応じて変化する重み関数である。なお、送信部3により、送信ビームプロファイルを形成することを目的として、送信専用素子または送受信素子への駆動信号に所定のアポダイゼーション関数が適用されてもよい。このアポダイゼーション関数は、送信焦点深さに応じて変化する重み関数である。
【0015】
制御部5は、送信動作期間において、超音波送信に利用する振動子(送信専用素子または送受信素子)に駆動信号を供給するように送信部3を制御する。受信動作期間において、制御部5は、超音波受信に利用する振動子(受信専用素子または送受信素子)からのエコー信号を信号処理するように受信部4を制御する。例えば、制御部5は、送受信素子に対するスイッチングを制御する。送受信素子は、チャネルを介して送信回路と受信回路とにスイッチを経由して選択的に接続されている。送信動作期間において制御部5は、送受信素子と送信回路とが接続され、送受信素子と受信回路とが遮断されるようにスイッチを切替える。受信動作期間において制御部5は、送受信素子と送信回路とが遮断され、送受信素子と受信回路とが接続されるようにスイッチを切替える。なお、送信専用素子は、送信回路のみにチャネルを介して接続されている。同様に、受信専用素子は、受信回路のみにチャネルを介して接続されている。
【0016】
上述のように、本実施形態においては、超音波プローブ2に搭載される複数の振動子の中に送信専用素子と受信専用素子とが含まれている。従って、本実施形態は、超音波プローブ2に搭載されている振動子が全て送受信素子の場合に比べて、送信部3と受信部4とに係る回路構成が単純である。従って、本実施形態に係る超音波プローブ2及び超音波診断装置1は、従来に比べて、コストが低く、消費電力が低い。
【0017】
信号処理部6は、受信部4からの受信信号にBモード処理を施し、Bモード信号を生成する。また、信号処理部6は、受信部4からの受信信号にカラードプラモード処理を施し、カラードプラモード信号を生成することもできる。
【0018】
画像発生部7は、信号処理部6からのBモード信号に基づいてBモード画像を発生する。また、画像発生部7は、信号処理部6からのカラードプラモード信号に基づいてカラードプラモード画像を発生する。Bモード画像とカラードプラモード画像とは、記憶部8に記憶される。
【0019】
表示部9は、画像発生部7または記憶部8からのBモード画像を表示する。また、表示部9は、画像発生部7または記憶部8からのカラードプラモード画像を表示する。
【0020】
以上で本実施形態に係る超音波診断装置1の構成の説明を終了する。
【0021】
本実施形態に係る振動子の配列パターンは、幾つかの利点を有する。この利点としては、例えば、スイッチングと電子フォーカシングとに関連する電子部品数の削減、大開口径での近距離の撮像性能の向上、中心周波数と帯域幅との最適化のための振動子スタックアップの分離、および高調波信号周波数の増強が挙げられる。上記の利点のうちの電子部品数の削減は、製造コスト、消費電力、及び超音波プローブのサイズの削減に寄与する。送受信のための振動子スタックアップの分離は、個々の環領域についての音響整合層やPZT変化を介した振動子アレイの各部分に対して中心周波数と帯域幅とを最適化しうる。
【0022】
(超音波プローブの実施形態)
以下、本実施形態に係る超音波プローブ1の構成を複数の実施形態に分けて説明する。なお、以下の説明において、振動子配列面上の一方の方向をエレベーション方向と呼び、もう一方の方向をアジマス方向と呼ぶ。エレベーション方向とアジマス方向とは、互いに直交する。
【0023】
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係る超音波プローブにおける振動子アレイ10の配列パターンを模式的に示す図である。振動子アレイ10は、2次元状に配列された複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とを有している。
【0024】
図2に示すように、振動子アレイ10には、径方向に沿って交互に配列された第1環領域11と第2環領域12とが設けられている。ここで、径方向とは、環領域11,12の径方向である。第1環領域11と第2環領域12は、円環形状を有している。第1環領域11は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの一方を排他的に含み、第2環領域12は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの他方を排他的に含む。ここで、第1環領域11には、複数の送信専用素子が配列され、第2環領域12には、複数の受信専用素子が配列されているとする。換言すれば、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子との各々は、円環状に配列される。すなわち、第1環領域11は、円環形状に配列された複数の送信専用素子の集合であり、第2環領域12は、円環形状に配列された複数の受信専用素子の集合であるとする。第2環領域12は、第1環領域11に接するように設けられ、第1環領域11と略同一中心点を有している。
【0025】
図2に示すように、複数の第1環領域11と複数の第2環領域12とは、同心円中心を共有する同心円環領域である。各第2環領域12は、内側の第1環領域11よりも径が大きく、内側の第1環領域11の外周に接するように設けられている。
【0026】
「環領域」という用語は、略並行の外周線と内周線との対により規定される領域、あるいは、既定の中心部分またはドーナッツ状の穴部を囲む帯形状の領域を意味する。環領域は、円環リング、楕円環リング、及び多角形環リングを含むが、これら特定の形状のリングのみに限定されず、異なる形状のリングの任意の組み合わせであってもよい。例えば、多角形環リングの場合、多角形状を規定する一対の多角形状の外周である。また、環領域は、特定の形状やサイズに限定されない。さらに上記の定義は、振動子の空間的位置関係についてのものであり、送信動作期間における超音波の送信における送信専用素子の駆動パターンあるいはシーケンスに制限される必要はない。同様に、上記の定義は、受信動作期間における超音波の受信における受信専用素子の駆動パターンあるいはシーケンスに制限される必要はない。
【0027】
図2に示すように、振動子アレイ10は、さらに中心領域13とマージン領域14とを有している。中心領域13は、最内の第1環領域11の内側に設けられている。中心領域13は、複数の第1環領域11と複数の第2環領域12との同心円中心をオーバラップするように設けられている。中心領域13は、第1環領域11の内周に接するように設けられる。もしくは、中心領域13は、第1環領域11との間に隙間を空けて設けられてもよい。中心領域13には、第2環領域12に配列されている振動子と同種類の振動子が排他的に配列されている。例えば、第2環領域12に複数の受信専用素子が配列されている場合、中心領域13にも複数の受信専用素子が配列される。
【0028】
環領域11、12は、フレネル回折の原理に従う空間的位置関係を有している。内側からn番目の環領域11、12は、下記の方程式(1)で規定される半径rにオーバラップするように設けられる。なお半径rは振動子アレイ10の中心点からの距離である。
【数1】

【0029】
ここで、nは整数であり、λは超音波の波長である。fは、振動子アレイ10の中心点から送信焦点までの距離である。振動子アレイ10が距離fに比べて短い場合、半径rは、下記の近似式(2)で表される。
【数2】

【0030】
同心円中心からn番目の環領域11、12は、振動子アレイ10上の第n次のフレネルゾーン(フレネルリング)にそれぞれ一致するように設けられる。各次のフレネルゾーンには、径方向に沿って複数の送信専用振動子と複数の受信専用振動子とが交互に配列されるように、複数の送信専用振動子または複数の受信専用振動子が排他的に配列される。同一のフレネルゾーンから送信される超音波は、送信焦点において位相の正負が一致する。各フレネルゾーン(第1環領域11)は、一個おきに配列されている。従って各第1環領域11から送信される超音波は、送信焦点において1波長づつずれている。すなわち、送信部3は、第1環領域11毎に同一の駆動信号を供給することにより、送信焦点fに収束する超音波を送信することができる。この際、各第1環領域11に供給される駆動信号への送信遅延時間は、中心周波数の一周期分だけずらされる。このように、第1環領域11毎に送信遅延時間を変化させればよいので、複雑な送信遅延時間の制御が必要なくなる。また、これに伴い、同一の第1環領域11内の送信専用素子を共通接続することが可能となる。このフレネルゾーンの原理を利用することにより、送信に関する電子回路規模を大幅に削減することができる。
【0031】
また、各次のフレネルゾーン(第2環領域12)には、反射源から位相の正負が揃った超音波が到達する。隣り合うフレネルゾーンに到達する超音波の位相は、正負が反転している。受信時においては、ダイナミックフォーカスを利用するため、受信焦点の深さが変化する。中心軸上の任意点からの超音波は、各第2環領域12内の複数の受信専用素子で同時刻に受信される。受信部4は、同一の第2環領域12からのエコー信号に、受信焦点からの伝搬時間差に応じた共通の受信遅延時間を与える。従って、本実施形態によれば、受信遅延時間の制御が無くなる。また、これに伴い、同一の第2環領域12内の受信専用素子を共通接続することが可能となる。また、受信部4は、受信遅延時間を与える前に、エコー信号を加算することができる。このように、フレネルゾーンの原理を利用することにより、受信に関する電子回路規模を大幅に削減することができる。
【0032】
マージン領域14は、振動子アレイ10のうちの、最外の環領域11の外側に設けられている。マージン領域14は、送信専用素子及び受信専用素子等の振動子を含まなくても良いし、機能不能な振動子を含んでも良い。機能不能な振動子とは、例えば、送信回路との接続が遮断されている送信専用素子、受信回路との接続が遮断されている受信専用素子である。あるいは、マージン領域14には、機能可能な送信専用素子または機能可能な受信専用素子が配列されていなくてもよい。あるいは、マージン領域14は、強度を向上するために複数の送信専用素子を含んでも良いし、感度を向上するために複数の受信専用素子を含んでいても良い。
【0033】
例えば、振動子アレイ10は、10,000個の振動子を含んでいる。具体的には、アジマス方向に100個の振動子が、エレベーション方向に100個の振動子が配列される。10,000個の振動子にM個の送信専用素子、N個の受信専用素子、O個の機能不能な振動子が含まれているものとする。MとNとOとの合計は10,000である。例えば、M個は3,750個であり、N個は3,750個であり、O個は2,500個である。さらに、3,750個の送信専用素子は、任意に各第1環領域11に分配される。各第1環領域11は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。同様に、3,750個の受信専用素子は、任意に各第2環領域12に分配される。各第2環領域12は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。なお、受信専用素子は、中心領域13に配列されても良い。
【0034】
一般的に、平面波中に円形状を有する遮断領域がある場合、この遮断領域の中心軸上に強い輝点が発生する。この輝点は、アラゴスポットと呼ばれている。近距離に送信焦点を有する送信ビームを形成するためには、この送信焦点を通る軸を中心とする円形の送信開口を有する振動子群を駆動する必要がある。各振動子が送信する球面波の等位相面が1点で強め合うことにより焦点を結ぶ。ここで、円形の送信開口のうち、例えば開口中心に位置する振動子が放射する球面波(以下、中心の球面波)を考える。この中心の球面波は、ビーム送信方向に対して左右方向(走査方向)の収束にほとんど寄与しない。これは、送信焦点付近における中心の球面波の等位相面は、左右方向に大きく広がっていることからも明らかである。
【0035】
そこで、本実施形態に係る超音波診断装置1及び超音波プローブ2は、上述したような左右方向の収束に寄与しない振動子を超音波送信に利用しないようにすることで、よりビーム幅の狭いビームを形成することができる。すなわち、開口中心を超音波送信に利用しないことで、開口中心にアラゴスポットを発生させることにより、近距離でも比較的細いビームを得ることができる。本実施形態においては、中心領域13は、送信専用素子または受信専用素子を排他的に含んでいる。中心領域13が受信専用素子を排他的に含んでいる場合、中心領域13は、送信に利用されない。従って、この場合、中心領域13は、送信動作期間においてアラゴスポットとして機能する。中心領域13を送信に利用しない場合、アラゴスポットの効果により、比較的細い送信ビームを形成することができる。一方、中心領域13が送信専用素子を排他的に含んでいる場合、中心領域13は、受信に利用されない。従って、この場合、中心領域13は、受信動作期間においてアラゴスポットとして機能する。中心領域13を受信に利用しない場合、アラゴスポットの効果により、比較的細い受信ビームを形成することができる。従って、中心領域を送信と受信との両方に利用する場合に比して、本実施形態に係る超音波診断装置1及び超音波プローブ2は、画質を向上させることができる。
【0036】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係る超音波プローブにおける振動子アレイ20の配列パターンを模式的に示す図である。振動子アレイ20は、2次元状に配列された複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とを有している。
【0037】
図3に示すように、振動子アレイ20には、径方向に沿って交互に配列された第1環領域21と第2環領域22とが設けられている。ここで、径方向とは、環領域21,22の径方向である。第1環領域21と第2環領域22は、楕円環形状を有している。第1環領域21は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの一方を排他的に含み、第2環領域22は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの他方を排他的に含む。ここで、第1環領域21には、複数の送信専用素子が配列され、第2環領域22には、複数の受信専用素子が配列されているとする。換言すれば、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子との各々は、楕円環状に配列される。すなわち、第1環領域21は、楕円環形状に配列された複数の送信専用素子の集合であり、第2環領域22は、楕円環形状に配列された複数の受信専用素子の集合であるとする。第2環領域22は、第1環領域21に接するように設けられ、第1環領域21と略同一中心点を有している。
【0038】
図3に示すように、複数の第1環領域21と複数の第2環領域22とは、同心円中心を共有する楕円環領域である。各第2環領域22は、内側の第1環領域21よりも径が大きく、内側の第1環領域21の外周に接するように設けられている。
【0039】
図3に示すように、振動子アレイ20は、さらに中心領域23とマージン領域14とを有している。中心領域23は、第1環領域21の内側であって、少なくとも同心円中心を含むように配置される。中心領域23は、第1環領域21の内周に接するように設けられる。もしくは、中心領域23は、中心領域23と第1環領域21との間に隙間を空けて設けられる。中心領域23には、第2環領域22と同様に、複数の送信専用素子あるいは複数の受信専用素子が排他的に配列される。マージン領域14は、振動子アレイ20のうちの、最外の環領域21の外側に設けられる。
【0040】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態に係る超音波プローブにおける振動子アレイ30の配列パターンを模式的に示す図である。典型的には、振動子アレイ30は、2次元状に配列された複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とを有している。
【0041】
図4に示すように、振動子アレイ30には、径方向に沿って交互に配列された第1環領域31と第2環領域32とが設けられている。ここで、径方向とは、環領域31,32の径方向である。第1環領域31と第2環領域32は、多角環形状を有している。多角環形状は、円形状の近似として利用される。第1環領域31は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの一方を排他的に含み、第2環領域32は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの他方を排他的に含む。ここで、第1環領域31には、複数の送信専用素子が配列され、第2環領域32には、複数の受信専用素子が配列されているとする。換言すれば、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子との各々は、多角環状に配列される。すなわち、第1環領域31は、楕円環形状に配列された複数の送信専用素子の集合であり、第2環領域32は、多角環形状に配列された複数の受信専用素子の集合であるとする。第2環領域32は、第1環領域31に接するように設けられ、第1環領域31と略同一中心点を有している。
【0042】
図4に示すように、複数の第1環領域31と複数の第2環領域32とは、同心円中心を共有する多角環領域である。各第2環領域32は、内側の第1環領域31よりも径が大きく、内側の第1環領域31の外周に接するように設けられている。
【0043】
図4に示すように、振動子アレイ30は、さらに中心領域33とマージン領域14とを有している。中心領域33は、第1環領域31の内側であって、少なくとも同心円中心にオーバラップするように配置される。中心領域33は、第1環領域31の内周に接するように並べて設けられる。もしくは、中心領域33は、第1環領域31との間に隙間を空けて設けられてもよい。中心領域33には、第2環領域32に配列されている振動子と同種類の振動子が排他的に配列されている。マージン領域14は、振動子アレイ30のうちの、最外の環領域31の外側に設けられる。
【0044】
なお、振動子アレイ30におけるM個の送信専用素子、N個の受信専用素子、及びO個の機能不能な振動子の個数の対応関係は、第1実施形態と同様である。また、各第1環領域31は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。同様に、各第2環領域32は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。
【0045】
[第4実施形態]
図5は、第4実施形態に係る超音波プローブにおける振動子アレイ40の配列パターンを模式的に示す図である。典型的には、振動子アレイ40は、2次元状に配列された複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とを有している。
【0046】
図5に示すように、振動子アレイ40には、径方向に沿って交互に配列された第1環領域41と第2環領域42とが設けられている。ここで、径方向とは、環領域41,42の径方向である。第1環領域41と第2環領域42は、円環形状を有している。第1環領域41は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの一方を排他的に含み、第2環領域42は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの他方を排他的に含む。ここで、第1環領域41には、複数の送信専用素子が配列され、第2環領域42には、複数の受信専用素子が配列されているとする。換言すれば、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子との各々は、円環状に配列される。すなわち、第1環領域41は、円環形状に配列された複数の送信専用素子の集合であり、第2環領域42は、円環形状に配列された複数の受信専用素子の集合であるとする。第2環領域42は、第1環領域41に接するように設けられ、第1環領域11と略同一中心点を有している。
【0047】
図5に示すように、複数の第1環領域41と複数の第2環領域42とは、同心円中心を共有する同心円環領域である。各第2環領域42は、内側の第1環領域41よりも径が大きく、内側の第1環領域41の外周に接するように設けられている。
【0048】
図5に示すように、振動子アレイ40は、さらに中心領域43とマージン領域14とを有している。中心領域43は、円形状を有している。中心領域43は、第1環領域41の内側であって、少なくとも同心円中心をオーバラップするように配置される。中心領域43は、第1環領域41の内周に接するように設けられる。もしくは、中心領域43は、第1環領域41との間に隙間を空けて設けられてもよい。中心領域43には、送信専用素子と受信専用素子との両方が設けられていない。あるいは、中心領域43には、機能不能な振動子が設けられていてもよい。中心領域43に配列される振動子の個数は、他の領域に配列される振動子よりも疎に配列されてもよい。これにより、電気回路のコスト、電力消費量、及びサイズが削減される。中心領域43により、ビーム幅を改善し、エレベーション方向及びアジマス方向に沿う近距離音場の分解能を改善し、結果的に画質を向上させることができる。中心領域43は、光学回折理論におけるアラゴスポットを生起する第1フレネルゾーンの内側の不透明な光学的円盤領域に対応する。中心領域43は、アラゴスポットとして機能する。マージン領域14は、振動子アレイ40のうちの、最外の環領域42の外側に設けられる。
【0049】
環領域41、42は、フレネル回折の原理に従う所定の空間的位置関係を有している。内側からn番目の環領域41、42は、上記の方程式(1)で規定される半径rにオーバラップするように設けられる。ここで、nは整数であり、λは超音波の波長であり、fは振動子アレイ40の中心点から送信焦点までの距離である。振動子アレイ40の長さが距離fに比べて短い場合、半径rは、上記の近似式(2)で表される。
【0050】
同心円中心からn番目の環領域41、42は、振動子アレイ40上の第n次のフレネルゾーンにそれぞれ一致するように設けられる。各次のフレネルゾーンには、径方向に沿って複数の送信専用振動子と複数の受信専用振動子とが交互に配列されるように、複数の送信専用振動子または複数の受信専用振動子が排他的に配列される。各次のフレネルゾーンには、反射源から位相の正負が揃った超音波が到達する。隣り合うフレネルゾーンに到達する超音波の位相は、正負が反転している。従って、各環領域41,42を第nフレネルゾーンに一致させることにより、近距離音場の画質性能が向上する。
【0051】
例えば、振動子アレイ40は、10,000個の振動子を含んでいる。具体的には、アジマス方向に100個の振動子が、エレベーション方向に100個の振動子が配列される。10,000個の振動しにM個の送信専用素子、N個の受信専用素子、O個の機能不能な振動子が含まれているものとする。MとNとOとの合計は10,000である。例えば、M個は3,750個であり、N個は3,750個であり、O個は2,500個である。さらに、3,750個の送信専用素子は、任意に第1環領域41、41A、及び41Bに分配される。各第1環領域41は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。同様に、3,750個の受信専用素子は、任意に第2環領域42に分配される。各第2環領域42は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。
【0052】
アラゴスポットの効果により、中心領域43を送信に利用しない場合、比較的細い送信ビームを形成することができる。また、中心領域43を受信に利用しない場合、アラゴスポットの効果により、比較的細い受信ビームを形成することができる。従って、アラゴスポットがない場合に比して、第4実施形態に係る超音波プローブ2は、画質を向上させることができる。
【0053】
[第5実施形態]
図6は、第5実施形態に係る超音波プローブにおける振動子アレイ50の配列パターンを模式的に示す図である。典型的には、振動子アレイ50は、2次元状に配列された複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とを有している。
【0054】
図6に示すように、振動子アレイ50には、径方向に沿って交互に配列された第1環領域51と第2環領域52とが設けられている。ここで、径方向とは、環領域51,52の径方向である。第1環領域51と第2環領域52は、楕円環形状を有している。第1環領域51は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの一方を排他的に含み、第2環領域52は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの他方を排他的に含む。ここで、第1環領域51には、複数の送信専用素子が配列され、第2環領域52には、複数の受信専用素子が配列されているとする。換言すれば、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子との各々は、楕円環状に配列される。すなわち、第1環領域51は、楕円環形状に配列された複数の送信専用素子の集合であり、第2環領域52は、楕円環形状に配列された複数の受信専用素子の集合であるとする。第2環領域52は、第1環領域51に接するように設けられ、第1環領域51と略同一中心点を有している。
【0055】
図6に示すように、複数の第1環領域51と複数の第2環領域52とは、同心円中心を共有する楕円環領域である。各第2環領域52は、内側の第1環領域51よりも径が大きく、内側の第1環領域51の外周に接するように設けられている。
【0056】
図6に示すように、振動子アレイ50は、さらに中心領域53とマージン領域14とを有している。中心領域53は、楕円形状を有している。中心領域53は、第1環領域51の内側であって、同心円中心にオーバラップをするように配置される。中心領域53は、第1環領域51の内周に接するように設けられる。もしくは、中心領域53は、第1環領域51との間に隙間を空けて設けられてもよい。中心領域53は、アラゴスポットとして機能する。このため、中心領域53には、例えば、送信専用素子と受信専用素子との両方が配列されていない。あるいは、中心領域53には、機能不能な振動子が配列されていてもよい。あるいは、中心領域には、複数の振動子が疎に配列されていてもよい。これにより、電気回路のコスト、電力消費量、及びサイズが削減される。中心領域53により、ビーム幅を改善し、エレベーション方向及びアジマス方向に関する近距離音場の分解能を改善し、結果的に画質を向上させることができる。マージン領域14は、振動子アレイ50のうちの、最外の環領域52の外側に設けられる。
【0057】
なお、振動子アレイ50におけるM個の送信専用素子、N個の受信専用素子、及びO個の機能不能な振動子の個数の対応関係は、第1実施形態と同様である。また、各第1環領域51は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。同様に、各第2環領域52は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。
【0058】
[第6実施形態]
図7は、第6実施形態に係る超音波プローブにおける振動子アレイ60の配列パターンを模式的に示す図である。典型的には、振動子アレイ60は、2次元状に配列された複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とを有している。
【0059】
図7に示すように、振動子アレイ60には、径方向に沿って交互に配列された第1環領域61と第2環領域62とが設けられている。ここで、径方向とは、環領域61,62の径方向である。第1環領域61と第2環領域62は、多角環形状を有している。第1環領域61は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの一方を排他的に含み、第2環領域62は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの他方を排他的に含む。ここで、第1環領域61には、複数の送信専用素子が配列され、第2環領域62には、複数の受信専用素子が配列されているとする。換言すれば、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子との各々は、多角環形状に配列される。すなわち、第1環領域61は、多角環形状に配列された複数の送信専用素子の集合であり、第2環領域62は、多角環形状に配列された複数の受信専用素子の集合であるとする。第2環領域62は、第1環領域61に接するように設けられ、第1環領域61と略同一中心点を有している。
【0060】
図7に示すように、複数の第1環領域61と複数の第2環領域62とは、同心円中心を共有する多角環領域である。各第2環領域62は、内側の第1環領域61よりも径が大きく、内側の第1環領域61の外周に接するように設けられている。
【0061】
図7に示すように、振動子アレイ60は、さらに中心領域63とマージン領域14とを有している。中心領域63は、多角環形状を有している。中心領域63は、第1環領域61の内側であって、少なくとも同心円中心をオーバラップするように設けられている。中心領域63は、第1環領域61に接するように設けられる。もしくは、中心領域63は、第1環領域61との間に隙間を空けて設けられる。中心領域63は、アラゴスポットとして機能する。このため、中心領域63には、例えば、送信専用素子と受信専用素子との両方が設けられていない。あるいは、中心領域63には、機能不能の振動子が配列されていてもよい。あるいは、複数の振動子が疎に配列されてもよい。このような構成により、電気回路のコスト、電力消費量、及びサイズが削減される。中心領域63により、ビーム幅を改善し、エレベーション方向及びアジマス方向に関する近距離音場の分解能を改善し、結果的に画質を向上させることができる。マージン領域14は、振動子アレイ60のうちの、最外の環領域61の外側に設けられる。
【0062】
なお、振動子アレイ60におけるM個の送信専用素子、N個の受信専用素子、及びO個の機能不能な振動子の個数の対応関係は、第1実施形態と同様である。また、各第1環領域61は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。同様に、各第2環領域62は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。
【0063】
[第7実施形態]
図8は、第7実施形態に係る超音波プローブにおける振動子アレイ70の配列パターンを模式的に示す図である。典型的には、振動子アレイ70は、2次元状に配列された複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とを有している。
【0064】
図8に示すように、振動子アレイ70には、径方向に沿って交互に配列された第1環領域71と第2環領域72とが設けられている。ここで、径方向とは、環領域71,72の径方向である。第1環領域71と第2環領域72は、円環形状を有している。第1環領域71は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの一方を排他的に含み、第2環領域72は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの他方を排他的に含む。ここで、第1環領域71には、複数の送信専用素子が配列され、第2環領域72には、複数の受信専用素子が配列されているとする。換言すれば、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子との各々は、円環状に配列される。すなわち、第1環領域71は、円環形状に配列された複数の送信専用素子の集合であり、第2環領域72は、円環形状に配列された複数の受信専用素子の集合であるとする。第2環領域72は、第1環領域71に接するように設けられ、第1環領域71と略同一中心点を有している。
【0065】
図8に示すように、複数の第1環領域71と複数の第2環領域72とは、同心円中心を共有する同心円環領域である。各第2環領域72は、内側の第1環領域71よりも径が大きく、内側の第1環領域71の外周に接するように設けられている。
【0066】
図8に示すように、振動子アレイ70は、第1環領域71と第2環領域72との間に任意の環領域75を有している。第3環領域75には、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの一方が配列されている。第3環領域75における送信専用素子または受信専用素子は、機能不能であっても機能可能であってもどちらでもよい。あるいは、第3環領域75には、送信専用素子と受信専用素子とのいずれも配列されていなくてもよい。
【0067】
図8に示すように、振動子アレイ70は、さらに中心領域73とマージン領域14とを有している。中心領域73は、円形状を有している。中心領域73は、第1環領域71の内側であって、少なくとも同心円中心をオーバラップするように設けられる。中心領域73は、第1環領域71の内周に接するように設けられる。もしくは、中心領域73は、第1環領域71との間に隙間を空けて設けられる。中心領域73は、アラゴスポットとして機能する。このため、中心領域73には、例えば、送信専用素子と受信専用素子との両方が設けられていない。あるいは、中心領域73には、機能不能な振動子が配列されていてもよい。または、中心領域73には、複数の振動子が疎に配列されていてもよい。このような構成により、電気回路のコスト、電力消費量、及びサイズが削減される。中心領域73により、ビーム幅を改善し、エレベーション方向及びアジマス方向に沿う近距離音場の分解能を改善し、結果的に画質を向上させることができる。マージン領域14は、振動子アレイ70のうちの、最外の環領域72の外側に設けられる。
【0068】
なお、振動子アレイ70におけるM個の送信専用素子、N個の受信専用素子、及びO個の機能不能な振動子の個数の対応関係は、第1実施形態と同様である。また、各第1環領域71は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。同様に、各第2環領域72は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。
【0069】
上記の説明において、第7実施形態に係る環領域は、円環領域であるとした。しかしながら、第7実施形態に係る環領域は、楕円環領域であっても多角環領域であってもよい。楕円環領域の場合、送信専用素子と受信専用素子とは、楕円環領域の第1環領域と楕円環領域の第2環領域とに個別に配置される。また、中心領域、マージン領域、及び第5の領域はそれぞれ、楕円環領域であってもよい。同様に、多角環領域の場合、送信専用素子と受信専用素子とは、多角環領域の第1環領域と多角環領域の第2環領域とに個別に配置される。また、中心領域、マージン領域、及び第5の領域はそれぞれ、多角環領域であってもよい。なお、環領域が楕円環領域や多角環領域の場合の第7実施形態は、図示せず、図8の第7実施形態の説明とこの段落の説明とにおいて開示したこととする。
【0070】
[第8実施形態]
図9は、第8実施形態に係る超音波プローブにおける振動子アレイ80の配列パターンを模式的に示す図である。典型的には、振動子アレイ80は、2次元状に配列された複数の送受信素子と複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とを有している。
【0071】
図9に示すように、振動子アレイ80には、第1環領域81、第2環領域82、及び第4環領域86が設けられている。例えば、環領域81、第4環領域86、及び第2環領域82が径方向に沿って順番に配列される。ここで径方向とは、環領域81,82,86の径方向である。第1環領域81、第2環領域82、及び第4環領域86は、円環形状を有している。第1環領域81は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの一方を排他的に含み、第2環領域82は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの他方を排他的に含む。第4環領域86は、複数の送受信素子を含む。ここで、第1環領域81には、複数の送信専用素子が配列され、第2環領域82には、複数の受信専用素子が配列されているとする。換言すれば、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子と複数の送受信素子との各々は、円環状に配列される。すなわち、第1環領域81は、円環形状に配列された複数の送信専用素子の集合であり、第2環領域82は、円環形状に配列された複数の受信専用素子の集合であり、第4環領域86は、円環形状に配列された複数の送受信素子の集合であるとする。第4環領域86は、第1環領域81の外周に接するように設けられる。第2環領域82と第4環領域86とは、第1環領域81と略同一の同心円中心を有している。
【0072】
図9に示すように、複数の第1環領域81と複数の第2環領域82と複数の環領域86とは、同心円中心を共有する同心円環領域である。各第2環領域72は、内側の第4環領域86よりも径が大きく、内側の第4環領域86の外周に接するように設けられている。各第4環領域86は、内側の第1環領域81よりも径が大きく、内側の第1環領域81の外周に接するように設けられている。
【0073】
図9に示すように、振動子アレイ80は、さらに中心領域83とマージン領域14とを有している。中心領域83は、円形状を有している。中心領域83は、第1環領域81の内側であって、少なくとも同心円中心にオーバラップするように設けられる。中心領域83は、第1環領域81に接するように設けられる。もしくは、中心領域83は、第1環領域81との間に隙間を空けて設けられる。中心領域83には、アラゴスポットとして機能する。このため、例えば、中心領域83には、送信専用素子と受信専用素子との両方が設けられていない。あるいは、中心領域83には、機能不能な振動子が配列されていてもよい。あるいは、中心領域83には、複数の振動子が疎に配列されてもよい。このような構成により、電気回路のコスト、電力消費量、及びサイズが削減される。中心領域83により、ビーム幅を改善し、エレベーション方向及びアジマス方向に関する近距離音場の分解能を改善し、結果的に画質を向上させることができる。
【0074】
なお、振動子アレイ80におけるM個の送信専用素子、N個の受信専用素子、及びO個の機能不能な振動子の個数の対応関係は、第1実施形態と同様である。また、各第1環領域81は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。同様に、各第2環領域82は、同一のサイズであっても同一のサイズでなくてもよい。
【0075】
上記の説明において、第8実施形態に係る環領域は、円環領域であるとした。しかしながら、第8実施形態に係る環領域は、楕円環領域であっても多角環領域であってもよい。楕円環領域の場合、送信専用素子と受信専用素子とは、楕円環領域の第1環領域と楕円環領域の第2環領域とに個別に配置される。また、中心領域及びマージン領域はそれぞれ、楕円環領域であってもよい。同様に、多角環領域の場合、送信専用素子と受信専用素子とは、多角環領域の第1環領域と多角環領域の第2環領域とに個別に配置される。また、中心領域及びマージン領域はそれぞれ、多角環領域であってもよい。なお、環領域が楕円環領域や多角環領域の場合の第7実施形態は、図示せず、図9の第8実施形態の説明とこの段落の説明とにおいて開示したこととする。
【0076】
[第9実施形態]
図10は、第9実施形態に係る超音波プローブの振動子アレイ90の配列パターンを示す図である。第9実施形態に係る振動子アレイ90は、アラゴスポットが欠落した図8の第7実施形態に係る振動子アレイに対応する。振動子アレイ90は、複数のオーバラップしない環領域を有している。典型的には、振動子アレイ90は、2次元状に配列された複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とを有している。
【0077】
図10に示すように、振動子アレイ90には、径方向に沿って交互に配列された第1環領域91と第2環領域92とが設けられている。ここで、径方向とは、環領域91,92の径方向である。第1環領域91と第2環領域92は、円環形状を有している。第1環領域91は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの一方を排他的に含み、第2環領域92は、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの他方を排他的に含む。ここで、第1環領域91には、複数の送信専用素子が配列され、第2環領域92には、複数の受信専用素子が配列されているとする。換言すれば、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子との各々は、円環状に配列される。すなわち、第1環領域91は、円環形状に配列された複数の送信専用素子の集合であり、第2環領域92は、円環形状に配列された複数の受信専用素子の集合であるとする。第2環領域92は、第1環領域91に接するように設けられ、第1環領域91と略同一中心点を有している。
【0078】
図10に示すように、振動子アレイ90は、第1環領域91と第2環領域92との間に任意の環領域95を有している。環領域95には、複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちの一方が配列されている。環領域95における送信専用素子または受信専用素子は、機能不能であっても機能可能であってもどちらでもよい。あるいは、環領域95には、送信専用素子と受信専用素子とのいずれも配列されていなくてもよい。
【0079】
図10に示すように、複数の第1環領域91と複数の第2環領域92と複数の環領域95とは、同心円中心を共有する同心円環領域である。各第2環領域92は、内側の第1環領域91よりも径が大きく、内側の第1環領域91の外周に接するように設けられている。
【0080】
図10に示すように、振動子アレイ90は、さらに中心領域93とマージン領域14とを有している。中心領域93は、円形状を有している。中心領域93は、第1環領域91の内側であって、少なくとも同心円中心を含むように配置される。中心領域93は、第1環領域91に隣り合わせに並べて設けられる。もしくは、中心領域93は、第1環領域91との間に隙間を空けて設けられる。中心領域93は、第2環領域92と同一の振動子を含んでいる。マージン領域14は、振動子アレイ90のうちの、最外の環領域91の外側に設けられる。
【0081】
(超音波診断装置の動作例)
以下、第1〜第9実施形態に係る超音波診断装置1の動作を複数の動作例に分けて説明する。
【0082】
[動作例1]
動作例1に係る超音波診断装置1は、電気的に超音波ビームをステアリングさせることにより、スキャン領域を2次元的または3次元的にスキャンする。動作例1は、第1〜9実施形態に係る超音波プローブの全てに適用可能である。しかし、以下の説明を具体的に行うため、動作例1に係る超音波プローブとして、第1実施形態に係る超音波プローブを例に挙げる。なお、図2の第1環領域11は送信専用素子を含み、第2環領域12は受信専用素子を含み、中心領域13は受信専用素子を含むものとする。
【0083】
超音波スキャンの開始指示がなされたことを契機として、制御部5は、超音波スキャンを開始する。超音波スキャンにおいて制御部5は、超音波ビームをステアリングしながら超音波ビームでスキャン領域を繰り返しスキャンするように送信部3と受信部4とを制御する。なお、送信動作と受信動作とは交互に行われる。
【0084】
制御部5は、既定のスキャンシーケンスに従って、超音波送信のために送信部3を制御し、超音波受信のために受信部4を制御する。以下、送信部3と受信部4との動作についてより詳細に説明する。
【0085】
送信動作において送信部3は、超音波送信のために、第1環領域11内の送信専用素子を作動する。具体的には、送信部3は、送信ビームのステアリング角度と送信焦点深さとに応じた送信ビームを送信するための遅延時間を、各駆動信号に与える。遅延時間が与えられた駆動信号は、各送信専用素子に供給される。駆動信号の送信専用素子への供給により、送信ステアリング角度と送信焦点深さとに応じた送信ビームが超音波プローブ2から送信される。なお送信ビームのステアリング角度は、振動子配列面の中心軸から送信ビームの中心軸への角度に規定される。なお振動子配列面の中心軸は、振動子配列面に直交し、振動子配列面の中心点を通過する軸である。
【0086】
受信動作において受信部4は、超音波受信のために、第2環領域12及び中心領域13に含まれる受信専用素子を作動する。具体的には、受信専用素子は、被検体により反射された超音波を受信し、受信された超音波に応じたエコー信号を発生する。エコー信号は、受信チャネルを介して受信部4に供給される。受信部4は、各受信チャネル(すなわち、受信専用素子毎)からのエコー信号に、受信ビームのステアリング角度と受信焦点深さとに応じた受信ビームを形成するための遅延時間を与える。遅延時間が与えられたエコー信号は、受信部4により加算される。この遅延加算処理により、受信ビームのステアリング角度と受信焦点深さとに応じた受信ビームが電気的に形成される。すなわち、遅延加算処理により、受信ビームに関する受信信号が発生される。受信信号は、信号処理部6に供給される。
【0087】
このように動作例1において制御部5は、スキャンシーケンスに従って、ステアリング角度と焦点深さとを変更しながら、送信動作と受信動作とを繰り返す。これにより動作例1に係る超音波診断装置は、スキャン領域を超音波で繰り返しスキャンすることできる。なお中心領域13には送信専用素子が含まれないので、中心領域13は、送信時においてアラゴスポットとして機能する。従って、振動子アレイ10から送信される送信ビームは、中心領域12に送信専用素子が含まれる場合に比して細くなる。
【0088】
[動作例2]
動作例2に係る超音波診断装置1は、中心領域が送受信に利用されない超音波プローブ2を利用して超音波スキャンを実行する。動作例2は、第4〜8実施形態に係る超音波プローブ2により利用可能である。以下の説明を具体的に行うため、動作例2に係る超音波プローブ2として、第4実施形態に係る超音波プローブ2を例に挙げる。なお、図5の第1環領域41は送信専用素子を含み、第2環領域42は受信専用素子を含み、中心領域(アラゴスポット)43は振動子を含まないものとする。また、動作例2は、動作例1と略同一である。同一の処理内容は、必要な箇所を除いて説明を省略する。
【0089】
超音波スキャンの開始指示がなされたことを契機として、制御部5は、動作例2に係る超音波スキャンを開始する。動作例2に係る超音波スキャンにおいて制御部5は、既定のスキャン領域を超音波で繰り返しスキャンするように送信部3と受信部4とを制御する。
【0090】
送信動作において送信部3は、超音波送信のために、各第1環領域41に含まれる送信専用素子を作動する。送信専用素子の作動により、スキャンシーケンスに従うステアリング角度と送信焦点深さとに応じた送信ビームが超音波プローブ2から送信される。中心領域43には送信専用素子が含まれていないので、中心領域43からは送信ビームが送信されない。中心領域43は、アラゴスポットとして機能するので、超音波プローブ2からの送信ビームの送信焦点が近距離音場において最適化されている。従って送信ビームの指向性が向上している。
【0091】
受信動作において受信部4は、超音波受信のために、各第2環領域42に含まれる受信専用素子からのエコー信号に遅延加算処理を施す。受信部4による遅延加算処理により、受信ビームに関する受信信号が発生される。中心領域には受信専用素子が含まれていないので、中心領域43からは受信部4にエコー信号が供給されない。中心領域43は、アラゴスポットとして機能するので、受信ビームの受信焦点が近距離音場において最適されている。従って、受信ビームの指向性が向上している。
【0092】
このように動作例2に係る超音波診断装置1及び超音波プローブ2は、送信時と受信時との両方においてアラゴスポットとして機能する中心領域43を有している。従って、動作例2に係る超音波診断装置1及び超音波プローブ2は、送信ビームと受信ビームとの両方を細くすることができる。
【0093】
[動作例3]
動作例3に係る超音波診断装置1は、ダイナミックスポットスキャンを実行する。動作例3は、第4〜8実施形態に係る超音波プローブ2により利用可能である。なお以下の説明を具体的に行うため、動作例3に係る超音波プローブ2として、第4実施形態に係る超音波プローブを例に挙げる。なお以下の説明において、第4実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0094】
図11Aは、第4実施形態に係る超音波診断装置1によるダイナミックスポットスキャンを説明するための図である。ダイナミックスポットスキャンにおいては、送信動作と受信動作とが交互に繰り返される。ダイナミックスポットスキャンは、アラゴスポットのサイズを受信動作期間において動的に変化させるスキャン方式である。アラゴスポットのサイズを変化させるためには、中心領域43は、受信専用素子及び送受信素子のような受信機能を有する振動子を含んでいる必要がある。以下の説明を具体的に行うため、図5の中心領域43は、受信専用素子を含んでいるものとする。また、図5の第1環領域41は送信専用素子を含み、第2環領域42は受信専用素子を含むものとする。
【0095】
超音波スキャンの開始指示がなされたことを契機として、制御部5は、ダイナミックスポットのための超音波スキャンを開始する。送信動作について制御部5は、動作例2と同様の方法で送信部3を制御する。受信動作について制御部5は、ダイナミックスポットのためのスキャンシーケンスに従って受信部4を制御する。以下、受信動作における受信部4の動作についてより詳細に説明する。
【0096】
受信動作において受信部4は、超音波受信のために、第2環領域42及び中心領域43に含まれる受信専用素子を作動する。各第2環領域42に含まれる受信専用素子に関する受信動作は、動作例2と同一であるので、ここでの説明を省略する。ここでは、中心領域43に含まれる受信専用素子に関する受信動作について説明する。ダイナミックスポット実現のため、受信部4は、中心領域43内の受信専用素子を個別に作動させたり停止させたりすることができる。作動している受信専用素子は超音波受信に機能し、停止している受信専用素子は超音波受信に機能しない。すなわち、受信部4は、受信動作においてアラゴスポットのサイズが時間経過に伴って動的に変化するように、中心領域43内の受信専用素子を個別に作動させたり停止させたりする。具体的には、アラゴスポットのサイズを増大させる場合、受信部4は、超音波受信に機能しない受信専用素子の占有範囲を同心円中心側から外側へ向けて拡大させる。反対に、アラゴスポットのサイズを減少させる場合、受信部4は、超音波受信に機能しない受信専用素子の占有範囲を外側から同心円中心へ向けて縮小させる。受信部4は、各時点におけるアラゴスポットのサイズは、受信ビームの形成におけるステアリング角度と受信焦点深さとの組み合わせに応じて決定する。
【0097】
例えば、アラゴスポット43のサイズは、第1のサイズ43Aから第2のサイズ43Bへ、あるいは、第2のサイズ43Bから第2のサイズ43Aへ変化する。サイズは、図11Aに示す二つのサイズのみに限定されず、図11Aよりも大きくても小さくてもよい。
【0098】
受信動作において受信部4は、超音波受信に機能している受信専用素子からエコー信号が供給される。そして動作例2と同様にして受信部4は、供給されたエコー信号に遅延加算処理を施すことにより、受信ビームに関する受信信号を発生する。受信信号は、信号処理部6に供給される。受信動作が終了すると制御部5は、送信動作を開始する。
【0099】
このように動作例3において制御部5は、送信動作と受信動作とを交互に繰り返すことにより、ダイナミックスポットを実現しながらスキャン領域を超音波で繰り返しスキャンすることできる。
【0100】
なお、上記の動作説明においては、円環形状の環領域を有する実施形態4に係る超音波プローブを例に挙げて説明した。しかしながら、ダイナミックスポットスキャンは、これに限定されず、図11Bに示すような楕円環領域を有する第5実施形態に係る超音波プローブ2にも、図11Cに示すような多角環領域を有する第6実施形態に係る超音波プローブ2でも実現可能である。第5実施形態においてダイナミックスポットを実現するために受信部4は、上述の方法により、中心領域53に含まれる受信専用素子を個別に作動させたり停止させたりする。この作動と停止とにより、アラゴスポットのサイズは、図11Bに示すように、例えば、第1のサイズ53Aから第2のサイズ53Bへ、あるいは、第2のサイズ53Bから第2のサイズ53Aへ動的に変化する。同様に、第6実施形態においてダイナミックスポットを実現するために受信部4は、上述の方法により、中心領域63に含まれる受信専用素子を個別に作動させたり停止させたりする。この作動と停止とにより、アラゴスポットのサイズは、図11Cに示すように、例えば、第1のサイズ63Aから第2のサイズ63Bへ、あるいは、第2のサイズ63Bから第2のサイズ63Aへ動的に変化する。
【0101】
また、ダイナミックスポットスキャンは、図12に示すような、任意の種類の振動子を配列可能な第3環領域75を有する第7実施形態に係る超音波プローブ2でも実現可能である。第7実施形態においてダイナミックスポットを実現するために受信部4は、上述の方法により、中心領域73に含まれる受信専用素子を個別に作動させたり停止させたりする。この作動と停止とにより、アラゴスポットのサイズは、図12に示すように、例えば、第1のサイズ73Aから第2のサイズ73Bへ、あるいは、第2のサイズ73Bから第2のサイズ73Aへ動的に変化する。また、ダイナミックスポットスキャンは、図13に示すような、送受信素子を配列可能な環領域86を有する第8実施形態に係る超音波プローブ2でも実現可能である。第8実施形態においてダイナミックスポットスキャンを実現するために受信部4は、上述の方法により、中心領域83に含まれる受信専用素子を個別に作動させたり停止させたりする。この作動と停止とにより、アラゴスポットのサイズは、図13に示すように、例えば、第1のサイズ83Aから第2のサイズ83Bへ、あるいは、第2のサイズ83Bから第2のサイズ83Aへ動的に変化する。
【0102】
[動作例4]
動作例4に係る超音波診断装置1は、環領域のサイズを変化させるリングサイズ変化スキャンを実行する。環領域のサイズは、静的または動的に変化される。動作例4は、第1〜9実施形態に係る超音波プローブ2により利用可能である。なお以下の説明を具体的に行うため、動作例4に係る超音波プローブ2として、第1実施形態に係る超音波プローブ2を例に挙げる。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0103】
図14は、第1実施形態に係る超音波診断装置2による動作例4を説明するための図である。環領域11,12のサイズの動的な変化とは、時間経過に伴って連続的に変化することを意味し、静的な変化とは、所定のタイミングで離散的に変化することを意味する。以下の説明を具体的に行うため、第1環領域11は送信専用素子を含み、第2環領域12は受信専用素子を含むものとする。
【0104】
超音波スキャンの開始指示がなされたことを契機として、制御部5は、リングサイズ変化スキャンを開始する。スキャン期間において制御部5は、リングサイズ変化スキャンのためのスキャンシーケンスに従って送信部3と受信部4とを制御する。動作例4においては、送信動作と受信動作とが交互に実行される。超音波送信時おいて、送信部3は、第1環領域11のサイズを静的に変化する。超音波受信時において、受信部4は、第2環領域12のサイズを静的に変化させることもできるし、または動的に変化させこともできる。
【0105】
各環領域11,12は、スキャン期間における焦点深さに従ってサイズが変化される。例えば、送信部3は、スキャン期間における送信焦点深さ又は時間に応じた所定のシーケンスで、第1環領域11内の所定部分の送信専用素子を作動または停止することにより、第1環領域11のサイズを変化する。例えば、図14に示すように、第1環領域11の内周部分の送信専用素子を停止することにより、第1のサイズ11Lから第2のサイズ11Sに切替える。また、送信部3は、図14に示すように、第1環領域11内の外周側部分の送信専用素子を駆動することにより、第2のサイズ11Sから第1のサイズ11Lに切替える。サイズの切替えは、超音波送信の合間に行われる。サイズの切替えは、1回超音波を送信する毎に行われても良いし、所定回数超音波を送信する毎に行われても良い。サイズの変化は、上述の2つのサイズ間の変化に限定されない。有効なサイズ変化は、上述の方程式(1)により表現される条件により決定される。簡単のため、図14においては、最内の環領域11のサイズ変化のみを図示している。しかしながら、他の環領域11,12のサイズ変化も同様に行われる。
【0106】
なお、受信部4も同様の方法により第2環領域11のサイズを変化させることができる。すなわち、受信部4は、スキャン期間における受信焦点深さ又は時間に応じた所定のシーケンスで、第2環領域12内の所定部分の受信専用素子を作動または停止することにより、第2環領域12のサイズを変化する。
【0107】
サイズの変化の態様は、変化対象の環領域11,12内の振動子の種類に応じて異なる。典型的には、送信専用素子が配列されている第1環領域11の場合、送信部3は、視野深度(表示される画像の最大深さ)、焦点深さ(送信焦点位置。映像モードやユーザにより任意に選択可能である)、及び映像モードに応じて第1環領域11のサイズを変化する。受信専用素子が配列されている第2環領域12の場合、受信部4は、視野深度、焦点深さ、及び映像モードに応じて第2環領域12のサイズを変化する。また、受信部4は、アラゴスポットのように、スキャン期間において第2環領域12のサイズを動的に変化させることもできる。端的には、第1環領域11の場合、ビームラインのためにリングトポロジーが静的に変化し、第2環領域12の場合、ビームライン内においてリングトポロジーが動的に変化する。
【0108】
例えば、第1環領域11と第2環領域12とは、ユーザによる視野深度または異なる映像モードの選択に応じた焦点深さの変化に応じてサイズが変化する。さらに第2環領域12は、ユーザによる画像深さ又は異なる映像モードの選択に応じた焦点深さだけでなく、受信動作期間における同一受信ビームについての受信焦点深さの変化に応じてサイズが動的に変化する。動的変化に関して、第1環領域11において、受信専用素子は、既定の同心円中心からの相対的な位置又はリングの厚さを変化させる。
【0109】
リングサイズ変化スキャンにおいて、送信部3は、送信ビームをステアリングさせても、ステアリングさせなくてもよい。ステアリングさせない場合、送信ビームは、既定の一方方向に送信され続ける。この場合、送信部3は、第1環領域のサイズを切り替えことにより、送信焦点深さを切替えながら、送信ビームを送信することができる。すなわち、一定方向に送信ビームを送信しながら送信焦点深さを変化させることができる。同様に受信部4は、第2環領域のサイズを切り替えことにより、受信焦点深さを切替えながら、受信ビームを形成することができる。従って、超音波診断装置1は、画質の良い一方方向の超音波スキャンを実行することができる。ユーザにより超音波プローブ2が動かされることにより、超音波診断装置1は、任意の2次元状または3次元状のスキャン領域をスキャンすることができる。
【0110】
なお、上記の動作説明においては、円環形状の環領域を有する実施形態4に係る超音波プローブを例に挙げて説明した。しかしながら、環領域のサイズの変化は、これに限定されず、図15に示すような楕円環領域を有する第2実施形態に係る超音波プローブ2にも、図16に示すような多角環領域を有する第3実施形態に係る超音波プローブ2でも同様に実現可能である。第2実施形態の場合、例えば、受信部4は、受信焦点深さ又は時間に応じた所定のシーケンスで、第2環領域22内の所定部分の受信専用素子を作動または停止するこの作動または停止により、図15に示すように、第2環領域22のサイズは、第1のサイズ21Lから第2のサイズ21Sへ、または、第2のサイズ21Sから第1のサイズ21Lへ切替えられる。また、第3実施形態の場合、例えば、送信部3は、送信焦点深さ又は時間に応じた所定のシーケンスで、第1環領域31内の所定部分の送信専用素子を作動または停止する。この作動または停止により、図16に示すように、第1環領域31のサイズは、第1のサイズ31Lから第2のサイズ31Sへ、または、第2のサイズ31Sから第1のサイズ31Lへ切替えられる。
【0111】
[動作例5]
動作例5においては、空間コンパウンド開口(spatial compounding aperture)技術について説明する。空間コンパウンド開口技術は、第1〜9実施形態に係る超音波プローブ2の全てについて適用可能である。しかしながら、以下の説明を具体的に行うため、空間コンパウンド開口技術を第2実施形態に係る超音波プローブ2を具体例に挙げて説明する。なお以下の説明において、第2実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0112】
空間コンパウンド開口技術は、単一の送信ビーム方向の超音波送信に対して、複数の受信ビーム方向で超音波受信を行い、画質を向上させる技術である。空間コンパウンド開口技術を利用したスキャンにおいて制御部5は、空間コンパウンド開口技術のためのスキャンシーケンスに従って送信部3と受信部4とを制御する。空間コンパウンド開口技術においても、送信動作と受信動作とが交互に繰り返される。送信動作においては、単一の送信ビーム方向の超音波送信が送信動作期間毎に繰り返し行われる。受信動作においては、異なる受信ビーム方向に関する超音波受信が受信動作期間毎に順番に行われる。このように受信ビームのステアリング角度は、受信動作期間毎に既定の角度に送信部3により変化される。以下の詳細な説明においては、説明の簡単のため、受信ビーム方向が2方向であるとする。なお、受信ビーム方向の数は、2方向に限定されず、2方向以上であっても良い。
【0113】
送信動作において送信部3は、既定のステアリング角度(送信ビーム方向)で送信ビームを送信するように送信専用素子を作動する。図17Aは、送信動作期間における送信開口と送信ビームのビーム方向とを示している。図17Aに示すように、送信動作期間において、既定のステアリング角度(送信ビーム方向)だけステアリングされた送信ビームが送信される。送信動作期間が終了すると、制御部5は、第1の受信動作を開始する。
【0114】
第1の受信動作期間において受信部4は、第1のステアリング角度(受信ビーム方向)で受信ビームを形成する。より詳細には、受信専用素子からのエコー信号に基づいて、受信部4は、第1のステアリング角度だけステアリングされた受信ビームに関する受信信号を生成する。図17Bは、第1の受信動作期間における受信開口と受信ビームのビーム方向とを示している。この受信ビーム方向は、一回目の送信動作における送信ビーム方向から反時計回りに30度だけ回転させた方向である。図17Bに示すように、第1の受信動作期間において、第1のステアリング角度だけステアリングされた受信ビームが形成される。第1の受信動作期間が終了すると、制御部5は、送信動作を開始する。
【0115】
次の送信動作は、前回の送信動作と同様に行われる。すなわち、前回の送信ビーム方向と同一の送信ビーム方向に送信ビームが送信される。送信動作期間が終了すると制御部5は、第2の受信動作を開始する。
【0116】
第2の受信動作において受信部4は、第2のステアリング角度(受信ビーム方向)で受信ビームを形成する。より詳細には、受信専用素子からのエコー信号に基づいて、受信部4は、第2のステアリング角度だけステアリングされた受信ビームに関する受信信号を生成する。図17Cは、第2の受信動作期間における受信開口と受信ビームのビーム方向とを示している。この受信ビーム方向は、二回目の送信動作におけるビーム方向から時計回りに30度だけ回転させた方向である。図17Cに示すように、第2の受信動作期間において、第2のステアリング角度だけステアリングされた受信ビームに関する第2の受信信号が生成される。第2の受信動作期間が終了すると、制御部5は、送信動作を開始する。
【0117】
このように、送信動作、第1の受信動作、送信動作、及び第2の受信動作が順番に繰り返される。一回の超音波送信に対して全ての超音波受信が行われると、送信ビーム方向を変更して再び上述の送受信動作が制御部5により繰り返される。このようにして制御部5は、空間コンパウンド開口技術を利用したスキャンにより、スキャン領域を超音波でスキャンすることができる。
【0118】
[動作例6]
動作例6においては、合成開口(synthetic aperture)技術について説明する。合成開口技術は、第1〜9実施形態に係る超音波プローブ2の全てについて適用可能である。しかしながら、以下の説明を具体的に行うため、合成開口技術を第2実施形態に係る超音波プローブを具体例に挙げて説明する。なお以下の説明において、第2実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0119】
動作例6において制御部5は、合成開口技術を利用したスキャンのためのスキャンシーケンスに従って送信部3と受信部4とを制御する。受信部4は、受信動作期間毎に、第2環領域22及び中心領域23内の受信専用素子の一部分を合成開口を生成するために作動し、残りの受信専用素子を停止する。
【0120】
図18Aは、送信動作における送信開口を示す図である。略同一の送信動作が既定の回数だけ繰り返される。図18Bは、第1の受信動作における受信開口を示す図である。振動子アレイに含まれる受信専用素子のうちの左半分の受信専用素子が、第1の送信動作により送信された送信ビームに対応する超音波を受信するために使用される。図18Cは、第2の受信動作における受信開口を示す図である。振動子アレイに含まれる受信専用素子のうちの右半分の受信専用素子が、第2の送信動作により送信された送信ビームに対応する超音波を受信するために使用される。
【0121】
上述のように、送信専用素子の活性化パターンは、特定のシーケンスのみに限定されない。合成開口技術の他の例は、図示しないが、以下に例示する。
【0122】
1.第1の送信動作において、振動子アレイの第1の半分領域(例えば、左半分)に配列された送信専用素子(t1)が、超音波を送信するために作動される。第1の送信動作と同時に、第1の半分領域に配列された受信専用素子(r1)が、超音波を受信するために作動される。
【0123】
2.第2の送信動作において、第1の半分領域に配列された送信専用素子(t1)が、超音波を送信するために作動される。第2の送信動作と同時に、振動子アレイの第2の半分領域(例えば、右半分)に配列された受信専用素子(r2)が、超音波を受信するために作動される。
【0124】
3.第3の送信動作において、第2の半分領域に配列された送信専用素子(t2)が、超音波を送信するために作動される。第3の送信動作と同時に、振動子アレイの第1の半分領域に配列された受信専用素子(r1)が、超音波を受信するために作動される。
【0125】
4.第4の送信動作において、第2の半分領域に配列された送信専用素子(t2)が、超音波を送信するために作動される。第4の送信動作と同時に、振動子アレイの第2の半分領域に配列された受信専用素子(r2)が、超音波を受信するために作動される。
【0126】
(本実施形態の効果)
上述の通り、本実施形態に係る超音波プローブ2は、送信専用素子と受信専用素子とを備えている。また、超音波プローブ2は、アラゴスポットを有していても良い。従って、送受信素子のみを備える従来の超音波プローブに比べて、送受信のための回路構成が単純である。また、送信専用素子と受信専用素子とは、光学回折理論に従う配列パターンで配列されている。送信動作や受信動作に関して、ビーム幅は、近距離音場に最適化され、最適化されたビーム幅は、結果的に画質を向上させる。サイドローブは、近距離音場に最適化され、最適化されたサイドローブは、結果的に画像のノイズを低減させる。従って、本実施形態に係る近距離音場の性能は、従来に比して近距離音場の性能が向上する。これに伴い、受信ビーム形成のための回路構成をハイスペックにする必要がなくなるため、本実施形態に係る超音波プローブ2及び超音波診断装置1は、近距離音場における画質向上や、コスト低減、消費電力の削減を実現することができる。
【0127】
(変形例)
上述の第1〜9実施形態に係る超音波プローブは、送信専用素子と受信専用素子とを有しているとした。しかしながら、本実施形態に係る超音波プローブは、これに限定されない。変形例に係る超音波プローブは、送受信素子のみを有している。以下、変形例に係る超音波プローブ及び超音波診断装置について説明する。なお以下の説明において、第1〜第9実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0128】
変形例に係る制御部5は、第1〜9実施形態に係る配列パターンに従って複数の送受信素子の各々について送信機能と受信機能とを個別に割り付ける。すなわち、第1〜9実施形態に係る配列パターンにおいて送信専用素子が設けられている場合、その位置に対応する変形例1に係る送受信素子には送信機能が割り付けられ、受信専用素子が設けられている場合、その位置に対応する変形例1に係る送受信素子には受信機能が割り付けられる。なお、第1〜9実施形態に係る配列パターンにおいて送受信素子が設けられている場合、その位置に対応する変形例に係る送受信素子にはスキャンシーケンスに従って送信機能と受信機能とが割り付けられる。また、振動子が設けられていない場合、その位置に対応する変形例に係る送受信素子には、送信機能と受信機能との両方を解除する。
【0129】
なお送信機能を割り付けることは、送受信素子に駆動信号を供給可能とすること同義である。具体的には、送信機能を割り付けることは、送受信素子と送信回路とを接続すること、あるいは、電気的制御により送信回路から送受信素子への駆動信号の供給を可能とすることである。逆に送信機能を解除することは、送受信素子に駆動信号を供給不能とすること同義である。具体的には、送信機能を解除することは、送受信素子と送信回路との接続を遮断すること、あるいは、電気的制御により送信回路から送受信素子への駆動信号の供給を不可能とすることである。受信機能を割り付けることは、送受信素子からのエコー信号を処理可能とすること同義である。具体的には、受信機能を割り付けることは、送受信素子と受信回路とを接続すること、あるいは、送受信素子からのエコー信号を受信回路が処理可能とすることである。逆に、受信機能を解除することは、送受信素子からのエコー信号を処理不能とすること同義である。具体的には、受信機能を解除することは、送受信素子と受信回路との接続を遮断すること、あるいは、送受信素子からのエコー信号を受信回路等により消去することである。
【0130】
このように各送受信素子に送信機能や受信機能が割り付けられることにより、送受信素子のみが搭載された超音波プローブ2であっても、上記の第1〜9実施形態と同様の動作を実行することができる。すなわち、変形例に係る超音波診断装置1は、上記の本実施形態の動作例1〜5を実行することが可能である。
【0131】
従って変形例に係る超音波診断装置1は、アラゴスポットの効果により、中心領域を送信に利用しない場合、送信ビームを細くすることができ、中心領域を受信に利用しない場合、受信ビームを細くすることができる。従って、変形例に係る超音波診断装置1は、近距離音場における画質を向上することができる。
【0132】
次に変形例に係る超音波診断装置に特有の動作について複数の動作例に分けて説明する。
【0133】
[変形例の動作例1]
変形例の動作例1に係る制御部5は、ステアリング角度と焦点深さとの組み合わせに応じて、送信機能が割り付けられた送受信素子の占有領域と受信機能が割り付けられた送受信素子の占有領域との形状を動的に変化させる。以下、図19A、19B、及び19Cを参照しながら、変形例の動作例1に係る超音波診断装置1の動作を説明する。
【0134】
図19Aは、変形例の動作例1に係る送受信機能の第1の割付けパターンを示す図である。変形例の動作例1に係る超音波プローブ2の振動子配列面109には、複数の送受信素子が2次元状に配列されている。複数の送受信素子が振動子アレイ100を構成している。振動子アレイ100は、複数の第1環領域101と複数の第2環領域102とを有している。第1環領域101と第2環領域102とは、径方向に沿って交互に配列されている。複数の第1環領域101と複数の第2環領域102とは、同一の同心円中心を有している。第1環領域101と第2環領域102とは、互いに接している。第1環領域101に配列されている送受信素子には、送信機能と受信機能とのうちの一方が割り付けられる。第2領域102に配列されている送受信素子には、送信機能と受信機能とのうちの他方が割り付けられる。振動子アレイ100は、最内の第1環領域101の内側に中心領域103を有している。中心領域103には、第2領域102に配列されている送受信素子に割り付けられている機能と同一の機能が割り付けられる。ここで、第1環領域101内の送受信素子に送信機能が割り付けられ、第2環領域102内の送受信素子に受信機能が割り付けられ、中心領域103内の送受信素子に受信機能が割り付けられるとする。また、振動子アレイ100は、最外の環領域(図19Aにおいては最外の第1環領域101)の外側にマージン領域104を有している。マージン領域104に配列されている送受信素子には、送信機能と受信機能との両方が割り付けられていない。
【0135】
以下、必要に応じて、送信機能が割り付けられた送受信素子の占有領域である第1環領域102を送信領域101と呼び、受信機能が割り付けられた送受信素子の占有領域である第2環領域102と中心領域103とをまとめて受信領域102,103と呼ぶ。
【0136】
各受信動作期間において制御部5は、超音波送信に関するステアリング角度と受信焦点深さとに基づいて、受信領域102,103の形状を決定する。決定された形状に基づいて制御部5は、振動子アレイ100に占める受信領域102,103の存在範囲を決定する。また、制御部5は、受信領域102,103の存在範囲に基づいて、送信領域101の存在範囲を決定する。送信領域101の存在範囲は、例えば、中心領域103と最内の第2環領域102との間の領域、第2環領域102間の領域、第2環領域とマージン領域104との間の領域に決定される。なお、振動子アレイ100のうちの受信領域102,103の存在範囲と送信領域101の存在範囲と以外の残りは、マージン領域104の存在範囲に決定される。
【0137】
各領域101,102,103,104の存在範囲が決定されると制御部5は、決定された存在範囲に応じて送受信素子の送受信機能の割付と解除とが個別に実行される。具体的には、制御部5は、決定された受信領域102,103の存在範囲内の送受信素子に受信機能を割り付け、決定された送信領域101の存在範囲内の送受信素子に送信機能を割り付ける。また、制御部5は、決定されたマージン領域104の存在範囲内の送受信素子に送信機能と受信機能との両方を割り付けない。すなわち、送受信素子に送信機能が割り付けられていた場合、送信機能が解除され、送受信素子に受信機能が割り付けられていた場合、受信機能が解除される。
【0138】
典型的には、ステアリング角度に応じて各領域101,102,103の形状が変化する。すなわち、ステアリング角度が0度から大きくなるにつれて、各領域101,102,103が傾き方向に伸張される。ここで、送信ビームの中心軸に直交し、同心円環形状の配列パターンが描写された仮想的な平面を考える。仮想的な平面に描出された配列パターンを、ステアリングされた送信ビームの中心軸に沿って振動子アレイ100上に投影する。振動子アレイ100の各領域101,102,103の形状は、投影により生成される環形状と同一の形状に変化される。例えば、図19Aに示すように、第1環領域101、第2環領域102、及び中心領域103は、円形状を有している。図19Aに示す割付パターンは、0度のステアリング角度(振動子アレイ100の直交軸からの傾き角度)に対応する。図19Bは、変形例2に係る送受信機能の第2の割付けパターンを示す図である。図19Bに示される第1環領域101、第2環領域102、及び中心領域103は、楕円形状を有している。図19Bに示す割付パターンは、エレベーション方向に関して0度且つアジマス方向に関して30度に対応する。図19Cは、変形例2に係る送受信機能の第3の割付けパターンを示す図である。図19Cに示される第1環領域101、第2環領域102、及び中心領域103は、楕円形状を有している。図19Cに示す割付パターンは、エレベーション方向に関して30度且つアジマス方向に関して30度に対応する。
【0139】
送受信機能の割付が行われると、超音波の送受信が行われる。すなわち、送信領域101から超音波が発生され、受信領域102,103により超音波が受信される。
【0140】
このようにして制御部5は、受信動作期間毎にステアリング角度と焦点深さとに応じて、送信領域101と受信領域102,103との形状を変化させることができる。
【0141】
[変形例の動作例2]
変形例の動作例2に係る超音波プローブは、送信時と受信時との両方においてアラゴスポットとして機能する中心領域を有している。以下、図20A、20B、及び20Cを参照しながら、変形例の動作例2に係る超音波診断装置1の動作例を説明する。なお、以下の説明において、変形例の動作例1と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0142】
図20Aは、変形例の動作例2に係る送受信機能の第1の割付けパターンを示す図である。変形例の動作例2に係る超音波プローブの振動子アレイ100は、アラゴスポットとして機能する中心領域105を有している。中心領域105に配列されている送受信素子には、送信機能と受信機能との両方が割り付けられていない。中心領域105は、最内の第2環領域102の内周の内側に設けられている。
【0143】
各受信動作期間において制御部5は、超音波受信に関するステアリング角度と受信焦点深さとの組み合わせに基づいて、中心領域105の形状と大きさとを決定する。決定された形状に基づいて制御部5は、振動子アレイ100に占める中心領域105の存在範囲を決定する。そして、制御部5は、中心領域105の形状(あるいは存在範囲)に基づいて、送信領域101の存在範囲と受信領域102の存在範囲とを決定する。例えば、送信領域101の存在範囲と受信領域102の存在範囲とは、送信領域101と受信領域102とが中心領域105を取り囲むように決定される。この際、送信領域101と受信領域102との各々の動径方向の長さが一定となるように決定されるとよい。また、制御部5は、変形例の動作例1と同様の方法により、マージン領域104の存在範囲を決定する。
【0144】
あるいは、制御部5は、まず初めに、超音波受信に関するステアリング角度と受信焦点深さとに基づいて、受信領域102の形状を決定してもよい。この場合、決定された形状に基づいて、振動子アレイ100に占める受信領域102の存在範囲を決定する。そして制御部5は、決定された中心領域105の存在範囲に基づいて、送信領域101の存在範囲、マージン領域104、及び中心領域105の存在範囲を決定する。中心領域の存在範囲は、最内の送信領域101の内周の内側に決定される。初めに決定される存在範囲の種類は、任意に選択可能である。
【0145】
各領域101,102,104,105の存在範囲が決定されると制御部5は、決定された存在範囲に応じて送受信素子の送受信機能の割付と解除とを個別に実行する。具体的には、制御部5は、決定された受信領域102の存在範囲内の送受信素子に受信機能を割り付け、決定された送信領域101の存在範囲内の送受信素子に送信機能を割り付け、決定されたマージン領域104の存在範囲内の送受信素子には送信機能と受信機能との両方を割り付けない。また、制御部5は、決定された中心領域105の存在範囲内の送受信素子にも送信機能と受信機能との両方を割り付けない。
【0146】
典型的には、ステアリング角度に応じて各領域101,102,105の形状が変化する。すなわち、ステアリング角度が0度から大きくなるにつれて、中心領域105がステアリング角度の傾き方向に伸張される。受信焦点深さが浅くなる(受信焦点が振動子アレイ100に接近する)につれて、各中心領域105の大きさが小さくなる。例えば、図20Aに示すように、第1環領域101、第2環領域102、及び中心領域105は、円形状を有している。図20Aに示す割付パターンは、0度のステアリング角度に対応する。図20Bは、変変形例の動作例2に係る送受信機能の第2の割付けパターンを示す図である。図20Bに示される第1環領域101、第2環領域102、及び中心領域105は、楕円形状を有している。図20Bに示す割付パターンは、エレベーション方向に関して0度且つアジマス方向に関して30度に対応する。図20Cは、変形例の動作例2に係る送受信機能の第3の割付けパターンを示す図である。図20Cに示される第1環領域101、第2環領域102、及び中心領域105は、楕円形状を有している。図20Cに示す割付パターンは、エレベーション方向に関して30度且つアジマス方向に関して30度に対応する。
【0147】
[変形例の動作例3]
変形例の動作例3に係る超音波診断装置は、ダイナミックスポットスキャンを実行する。以下、図21A、21B、及び21Cを参照しながら、変形例の動作例3に係る超音波プローブ及び超音波診断装置の動作例を説明する。なお、以下の説明において、変形例の動作例2と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0148】
図21Aは、変形例の動作例3に係る送受信機能の第1の割付けパターンを示す図である。変形例の動作例3に係る超音波プローブの振動子アレイ100は、アラゴスポットとして機能する中心領域105を有している。
【0149】
各受信動作期間において制御部5は、ダイナミックスポット実現のため、中心領域105内の送受信素子を個別に作動させたり停止させたりする。具体的には、制御部5は、受信動作期間において、中心領域105のサイズが時間経過に伴って動的に変化するように、中心領域105に含まれる送受信素子に受信機能を割り付けたり解除したりする。中心領域105(アラゴスポット)のサイズを減少させる場合、制御部5は、中心領域105の外縁側から中心に向けて、中心領域105内の送受信素子に受信機能を割り付ける。反対に、中心領域105(アラゴスポット)のサイズを増大させる場合、制御部5は、最内の第2環領域102の内周側から外周側に向けて、最内の第2環領域102内の送受信素子の受信機能を解除する。各時点における中心領域105(アラゴスポット)のサイズは、受信ビームの形成におけるステアリング角度と受信焦点深さとの組み合わせに応じて決定される。
【0150】
例えば、中心領域105(アラゴスポット)のサイズは、第1のサイズ105Aから第2のサイズ105Bへ、あるいは、第2のサイズ105Bから第2のサイズ105Aへ変化する。サイズは、図21Aに示す二つのサイズのみに限定されない。
【0151】
このようにして各受信動作期間において、中心領域105(アラゴスポット)の大きさが時間経過に伴って動的に変化させることができる。従って変形例4に係る超音波診断装置1は、ダイナミックスポットスキャンを実行することができる。
【0152】
[変形例の動作例4]
変形例の動作例4に係る超音波診断装置1は、非対称開口技術を利用したスキャンを実行する。非対称開口技術は、第1〜9実施形態に係る配列パターンの全てについて適用可能である。しかしながら、以下の説明を具体的に行うため、非対称開口技術を第2実施形態に係る配列パターンを具体例に挙げて説明する。なお以下の説明において、変形例の動作例1と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0153】
図22Aは、ビームが振られずに中央に位置する場合における対称開口の一例を示す図である。図22Bは、スキャン範囲の増大のための仮想尖点モード(virtual apex mode)における非対称開口の一例を示す図である。この場合、ビームの起点は、振動子アレイにおける、3次元音場内のステアリング角度に基づく異なる位置に交差する。それに加え、図22Bは、送信動作期間と受信動作期間とにおける非対称開口の一例を示す図である。ビームが振動子アレイの中心から離反し且つ走査面の端部にステアリングされた場合、開口は、振動子アレイの端部から離反し、結果的に非対称開口を生成する。
【0154】
次に図23を参照しながら、楕円配置の振動子アレイにおける他の非対称開口技術について説明する。図23における振動子アレイは、楕円環領域を含み、図3の第2実施形態の振動子アレイと同様の構造を有している。なお、非対称開口技術は、第2実施形態だけでなく第1〜第9実施形態の全ての実施形態に適用可能である。
【0155】
図23(a)は、ビームが図23(a)の矢印のようにステアリングされた場合における対称開口の一例を示す図である。楕円配置の中心またはビームの起点は、図23(b)及び(c)に伸びる点線により示される。近距離音場においてビームが振られた場合、開口のうちの焦点に近い端部は、大きくなる。典型的には、音場のより深い部分から超音波を受信すると、アポダイゼーション関数の中心は、図23(b)及び(c)に示すように、よりビームの起点に近づく。
【0156】
図23(b)は、音場の第1深さ位置における楕円配置の非対称開口の一例を示す図である。第1の深さ位置において、開口は、点線で示すように、ビームの起点の中心から離反し、各振動子にアポダイゼーション重み付けが適用された後において非対称開口を生成する。対照的に、図23(c)は、音場の第2深さ位置における楕円配置の非対称開口の一例を示す図である。第1の深さ位置において、開口は、点線で示すように、ビームの起点の中心からより離反し、各振動子にアポダイゼーション重み付けが適用された後においてより対照的な開口を生成する。結果的に、深さ位置が変化するにつれ、その効果は、各振動子にアポダイゼーション重み付けが適用された後の効果的な対称性を歪める。
【0157】
[変形例の動作例5]
変形例の動作例5に係る超音波診断装置1は、移動開口(walking aperture)技術を利用した超音波スキャン(以下、移動開口スキャンと呼ぶ。)を実行する。以下、図24を参照しながら、変形例の動作例5に係る超音波診断装置1の動作例を説明する。
【0158】
図24に示すように、変形例の動作例5に係る超音波プローブ2は、振動子アレイ240を有している。振動子アレイ240は、2次元状に配列された複数の送受信素子を有している。振動子アレイ240には、送受信素子のみが配列されている。振動子アレイ240は、少なくとも一方方向に沿って比較的大きな開口サイズを有している。例えば、振動子アレイ240は、図24に例示しているように、アジマス方向に関して比較的大きな開口サイズを有している。振動子アレイ240の水平方向に関する幅は、アジマス方向に関する最大開口幅に対応する。
【0159】
図24に示されるように、変形例の動作例5に係る制御部5は、変形例1と同様にして、第1〜9実施形態に係る、同心円環形状を有する配列パターン250を割り付ける。すなわち、制御部5は、第1〜9実施形態に係る配列パターンに従って、振動子アレイ240の局所部分内の複数の送受信素子の各々に送信機能と受信機能とを個別に割り付ける。これにより局所部分に配列パターン250が構築される。換言すれば、振動子アレイ240は、配列パターン250よりも十分大きな開口サイズを有している。なお、振動子アレイ240のちの配列パターン250以外の領域に含まれる送受信素子には、送信機能と受信機能との両方の機能が割り付けられていない。局所部分の位置は、移動開口スキャンに関するスキャンシーケンスに従って決定される。ここで、以下の説明を具体的に行うため、配列パターン250は、第1実施形態に係る配列パターンであるとする。
【0160】
図24の(a)おいて、振動子アレイ240の第1の局所部分には、第1のビームBEAM1を送受信するための配列パターン250が構成される。図24の(b)おいて、振動子アレイ240の第2の局所部分には、第2のビームBEAM2を送受信するための既定の配列パターン250が構成される。図24の(c)おいて、振動子アレイ240の第3の局所部分には、第3のビームBEAM3を送受信するための既定の配列パターン250が構成される。これら第1の局所部分、第2の局所部分、及び第3の局所部分は、既定の時間シーケンスにおいて対応するビームを受信するために連続的に構築される。図24においては、3つの局所部分における配列パターン250が例示されているが、一連の付加的な部分がこれに対応するビームを送受信するために任意に構築される。
【0161】
次に、制御部5による制御のもとに行われる、移動開口スキャンにおける動作の流れについて説明する。移動開口スキャンの開始指示がなされたことを契機として、制御部5は、移動開口スキャンを開始する。移動開口スキャンにおいて制御部5は、図24に示すように、配列パターン250が振動子アレイ240を既定の方向に沿って移動するように、送信部3と受信部4とを制御する。配列パターン250の移動方向は、配列パターン250が移動可能な長さを有する方向に設定される。配列パターン250は、2次元スキャンのために一次元状に移動されても、3次元スキャンのために2次元状に移動されてもよい。図24において、移動方向は、アジマス方向である。制御部5は、送受信期間毎に配列パターン250が超音波を送受信するように送信部3と受信部4とを制御する。送受信方法は、上述の変形例1〜5の全てが適用可能である。以下、移動開口スキャンの具体例を説明する。
【0162】
典型的には、制御部5は、配列パターン250に、振動子アレイ240のアジマス方向に関する一端部と他端部との間を往復移動させる。配列パターン250は、時間経過に伴って連続的に移動しても、所定の送受信回数毎に一定距離だけ移動してもどちらでもよい。所定の送受信回数は、1回でも良いし、複数回であっても良い。各位置における送受信回数は、任意に設定可能である。送信ビームの送信方向は、移動開口スキャン全体に亘って一定であるとする。送信方向は、例えば、振動子アレイ240の配列面の直交方向、すなわち、ステアリング角度0度に設定される。
【0163】
例えば、制御部5は、送受信期間毎に配列パターン250をアジマス方向に沿って一定量だけ移動させる。配列パターン250の移動後において、制御部5は、超音波を送受信するように送信部3と受信部4とを制御する。送信動作期間において送信部3は、送信領域101から送信ビームを送信する。上述のように、第1環領域101と第2環領域102とは、フレネルゾーン(フレネルリング)の原理に従って配列されている。従って、送信部3は、第1環領域101毎に同一の駆動信号を供給することにより、送信焦点fに収束する超音波を送信することができる。この際、各第1環領域101に供給される駆動信号への送信遅延時間は、中心周波数の一周期分だけずらされる。このように、第1環領域101毎に送信遅延時間を変化させればよいので、複雑な送信遅延時間の制御が必要なくなる。また、これに伴い、同一の第1環領域101内の送受信素子を共通接続することが可能となる。このフレネルゾーンの原理を利用することにより、送信に関する電子回路規模を大幅に削減することができる。
【0164】
受信動作期間において受信部4は、受信領域102からのエコー信号に基づいて受信ビームを形成する。上述のように、中心軸上の任意点からの超音波は、各第2環領域102内の複数の送受信素子で同時刻に受信される。受信部4は、同一の第2環領域102からのエコー信号に、受信焦点からの伝搬時間差に応じた共通の受信遅延時間を与える。従って、同一の第2環領域102内の送受信素子に対する受信遅延時間の制御を無くすことができる。また、これに伴い、同一の第2環領域102内の受信専用素子を共通接続することが可能となる。また、受信部4は、受信遅延時間を与える前に、エコー信号を加算することができる。このように、フレネルゾーンの原理を利用することにより、受信に関する電子回路規模を大幅に削減することができる。
【0165】
送信動作と受信動作とが完了すると、制御部5は、配列パターン250をアジマス方向に沿って一定量だけ移動させる。配列パターン250の移動は、送受信素子への送受信機能の割付と解除とにより行われる。より詳細には、制御部5は、配列パターン250の現在位置と移動量とに従って、振動子アレイ240上における移動後の配列パターン250の存在範囲を特定する。そして制御部5は、配列パターン250に従って、特定された存在範囲内の各送受信素子に対して送信機能と受信機能との少なくとも一方を割り付ける。また、特定された存在範囲外の各送受信素子に送信機能または受信機能が割り付けられている場合、制御部5は、その送信機能または受信機能を解除する。これにより配列パターン250の移動が行われる。
【0166】
このように、移動開口スキャンにおいて制御部5は、移動方向に沿って配列パターン250を移動させながら超音波の送受信を行うように送信部3と受信部4とを制御する。従って、変形例の動作例5に係る超音波診断装置1は、送信ビームを一方方向に固定してスキャンを行う場合であっても、超音波プローブ2を移動させなくても、2次元状あるいは3次元状のスキャン領域をスキャンすることができる。
【0167】
(変形例の効果)
上述の通り、変形例に係る超音波プローブ2は、送受信素子のみを備えている。しかしながら、変形例に係る超音波診断装置は、第1〜9実施形態における光学回折理論に従う配列パターンに従って、送受信素子の送信機能と受信機能とを個別に切替えることができる。従って、変形例に係る超音波診断装置1は、第1〜9実施形態と同様に、近距離音場に最適化された超音波送受信を実行することができる。
【0168】
かくして、本実施形態によれば、近距離音場に関する画質向上を可能とする超音波プローブ及び超音波診断装置を提供することが可能となる。
【0169】
なお、説明の簡単のため、本実施形態に係る動作例1〜6と変形例の動作例1〜5とを個別に説明したが、本実施形態に係る超音波診断装置1は、本実施形態に係る動作例1〜6と変形例の動作例1〜5との各々を適宜組み合わせて実行可能である。
【0170】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0171】
1…超音波診断装置、2…超音波プローブ、3…送信部、4…受信部、5…制御部、6…信号処理部、7…画像発生部、8…記憶部、9…表示部、10…振動子アレイ、11…第1環領域、12…第2環領域、13…中心領域、14…マージン領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列面に2次元状に配列された複数の振動子を具備する超音波プローブであって、
前記複数の振動子のうちの複数の送信専用素子は、前記配列面に設けられた第1環領域に配列され、
前記複数の振動子のうちの複数の受信専用素子は、前記配列面に設けられ、前記第1環領域に隣り合わせに配置され、前記第1環領域と同一の同心円中心を有する第2環領域に配列される、
ことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記第1環領域が前記第2環領域の内側に設けられている場合、前記複数の振動子のうちの複数の受信専用素子は、さらに、前記配列面に設けられ前記同心円中心にオーバラップする中心領域に配列され、
前記第1環領域が前記第2環領域の外側に設けられている場合、前記複数の振動子のうちの複数の送信専用素子は、さらに、前記中心領域に配列される、
請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記配列面には、前記同心円中心にオーバラップし、アラゴスポットとして機能する中心領域が設けられる、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記中心領域に前記複数の振動子のうちの複数の受信専用素子が配列されている場合、前記中心領域のサイズは、焦点深さとステアリング角度との組み合わせに応じて動的に変化する、請求項3記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記配列面には、前記同心円中心にオーバラップし、前記複数の送信専用素子と前記複数の受信専用素子とのうちのいずれも配列されず、アラゴスポットとして機能する中心領域が設けられる、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記配列面には、前記第1環領域及び前記第2環領域の外側に設けられた第4の環領域が設けられ、前記第4の環領域には、前記複数の振動子のうちの複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちのいずれか一方が配列される、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記第4の環領域に配列された複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちのいずれか一方は、機能しない、請求項6記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記配列面には、前記第1環領域及び前記第2環領域の外側に設けられた第4の環領域が設けられ、前記第4の環領域には、前記複数の振動子のうちの複数の送信専用素子と複数の受信専用素子とのうちのいずれも配列されていない、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項9】
前記第1環領域と前記第2環領域とは、径方向に沿って繰り返し設けられる、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項10】
前記第1環領域と前記第2環領域との両方は、円環形状を有し、
前記第1環領域と前記第2環領域との各々は、nが整数であり、λが超音波の波長であり、fが前記配列面の中心から焦点までの距離である場合において、
【数1】

により規定される半径rを有する、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項11】
前記第1環領域と前記第2環領域との少なくとも一方においては、前記複数の振動子は互いに間隔を空けて配列されている、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項12】
前記複数の送信専用素子への駆動信号または前記複数の受信専用素子からの受信信号は、既定のアポダイゼーション関数により近似されている、請求項11記載の超音波プローブ。
【請求項13】
前記アポダイゼーション関数は、焦点深さに応じて変化する、請求項12記載の超音波プローブ。
【請求項14】
前記第1環領域と前記第2環領域との何れか一方は、前記複数の受信専用素子が配列されている場合、ステアリング角度に応じて動的に変化する、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項15】
前記ステアリング角度は、空間コンパウンド開口についての複数の受信動作期間の各々において、既定の角度に変化する、請求項14記載の超音波プローブ。
【請求項16】
前記第1環領域と前記第2環領域との何れか一方に前記複数の受信専用素子が配列され、前記複数の受信専用素子のうちの一部分は、合成開口を生成するための複数の受信動作期間の各々において駆動される、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項17】
前記配列面には、前記第1環領域及び前記第2環領域の内側に設けられ、前記同心円中心にオーバラップし、アラゴスポットとして機能する中心領域が設けられる、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項18】
前記配列面には、前記第1環領域及び前記第2環領域の内側に設けられ、前記同心円中心にオーバラップする中心領域が設けられ、前記複数の振動子のうちの複数の受信専用素子は、前記中心領域に配列され、前記中心領域は、アラゴスポットとして機能する、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項19】
前記配列面には、前記第1環領域及び前記第2環領域の内側に設けられ、前記同心円中心にオーバラップする中心領域が設けられ、前記複数の振動子のうちの複数の送信専用素子と複数の受信専用素子との何れか一方は、前記中心領域に配列される、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項20】
前記第1環領域と前記第2環領域との両方に関するサイズは、焦点深さとステアリング角度とに応じて変化する、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項21】
配列面に2次元状に配列された複数の送受信素子と、
前記複数の送受信素子に超音波送信のための駆動信号を供給する送信部と、
前記複数の送受信素子からのエコー信号を超音波受信のために信号処理する受信部と、
前記複数の送受信素子のうちの一部分から構成される振動子パターンが送受信動作期間毎に前記配列面を一方向に沿って既定量だけ移動するように前記送信部と前記受信部とを制御する制御部とを具備する超音波診断装置であって、
前記振動子パターンは、前記複数の送受信振動子のうちの超音波送信に利用される複数の送信専用素子が配列された第1環領域と、
前記第1環領域に隣り合わせに配置され、前記第1環領域と同一の同心円中心を有し、前記複数の送受信振動子のうちの超音波受信に利用される複数の受信専用素子が配列される第2環領域と、を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項22】
前記制御部は、前記複数の送信専用素子に駆動信号を供給するように前記送信部を制御し、前記複数の受信専用素子からのエコー信号を信号処理するように前記受信部を制御する、ことを特徴とする請求項21記載の超音波診断装置。
【請求項23】
前記制御部は、前記配列面に搭載される前記複数の送受信素子のうちの前記振動子パターンを構成する送受信素子以外の送受信素子を超音波送信と超音波受信との両方に利用しないように前記送信部と前記受信部とを制御する、ことを特徴とする請求項21記載の超音波診断装置。
【請求項24】
前記第1環領域と前記第2環領域との両方のサイズは、焦点深さとステアリング角度との両方に応じて動的に変化する、ことを特徴とする請求項21記載の超音波診断装置。
【請求項25】
前記振動子パターンは、前記第1環領域及び前記第2環領域の内側に設けられ、前記同心円中心にオーバラップする中心領域を有し、
前記制御部は、前記第1環領域が前記第2環領域の内側に設けられている場合、前記中心領域に含まれる複数の送受信素子を複数の受信専用素子に割り当て、前記第1環領域が前記第2環領域の外側に設けられている場合、前記中心領域に含まれる複数の送受信素子を複数の送信専用素子に割り当てる、
ことを特徴とする請求項21記載の超音波診断装置。
【請求項26】
前記振動子パターンは、前記第1環領域及び前記第2環領域の内側に設けられ、前記同心円中心にオーバラップする中心領域を有し、
前記制御部は、前記中心領域をアラゴスポットとして利用するために、前記中心領域に含まれる複数の送受信素子を送信専用素子と受信専用素子との両方に割り当てない、
ことを特徴とする請求項21記載の超音波診断装置。
【請求項27】
前記振動子パターンは、前記第1環領域及び前記第2環領域の外側に設けられた第4の環領域を有し、
前記制御部は、前記中心領域に含まれる複数の送受信素子を送信専用素子と受信専用素子との両方に割り当てない、
ことを特徴とする請求項21記載の超音波診断装置。
【請求項28】
前記第1環領域と前記第2環領域とは、径方向に沿って繰り返し設けられる、ことを特徴とする請求項21記載の超音波診断装置。
【請求項29】
前記第1環領域と前記第2環領域との両方は、円環形状を有し、
前記第1環領域と前記第2環領域との各々は、nが整数であり、λが超音波の波長であり、fが前記振動子パターンの中心から焦点までの距離である場合において、
【数2】

により規定される半径rを有する、
ことを特徴とする請求項21記載の超音波診断装置。
【請求項30】
前記制御部は、前記第2環領域に含まれる前記複数の受信専用素子のうちの一部分を、合成開口を生成するために、複数の受信動作期間の各々において駆動する、請求項21記載の超音波診断装置。
【請求項31】
2次元状に配列された複数の振動子と、
前記複数の振動子のうちの第1の環領域に配列された振動子に送信機能を割り付け、前記複数の振動子のうちの第2の環領域に配列された振動子に受信機能を割り付ける制御部であって、前記第2の環領域は、前記第1環領域に隣り合わせに配置され、前記第1環領域と同一の同心円中心を有する制御部と、
前記複数の振動子のうちの送信機能が割り付けられた振動子に駆動信号を供給する送信部と、
前記複数の振動子のうちの受信機能が割り付けられた振動子からのエコー信号に基づいて受信信号を生成する受信部と、
を具備する超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−66078(P2012−66078A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200008(P2011−200008)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】