超音波モータの駆動方法
【課題】超音波モータの安定かつ効率の良い駆動方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる超音波モータの駆動方法は、第1周波数の交流電圧をアクチュエータ部に印加して前記超音波モータを始動する工程と、前記第1周波数から前記超音波モータが停止する第2周波数まで駆動周波数を下げながら、該アクチュエータ部に生じる電圧を検出する電圧検出工程と、第3周波数で前記超音波モータを始動する始動工程と、前記駆動周波数を運転周波数範囲内の値となるように、前記第3周波数から低周波数側に変化させる駆動工程と、を有し、前記運転周波数範囲は、前記電圧検出工程において最大電圧が検出される際の前記駆動周波数の値よりも高周波数側の範囲である。
【解決手段】本発明にかかる超音波モータの駆動方法は、第1周波数の交流電圧をアクチュエータ部に印加して前記超音波モータを始動する工程と、前記第1周波数から前記超音波モータが停止する第2周波数まで駆動周波数を下げながら、該アクチュエータ部に生じる電圧を検出する電圧検出工程と、第3周波数で前記超音波モータを始動する始動工程と、前記駆動周波数を運転周波数範囲内の値となるように、前記第3周波数から低周波数側に変化させる駆動工程と、を有し、前記運転周波数範囲は、前記電圧検出工程において最大電圧が検出される際の前記駆動周波数の値よりも高周波数側の範囲である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波モータは、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する素子の一つである。超音波モータの一例としては、モータの動作軸である回転体の側面に圧電アクチュエータの先端を押しつけたものが挙げられる。このような超音波モータは、圧電アクチュエータの先端をモータの軸に垂直な面内で楕円状に振動させることにより、回転体の側面が圧電アクチュエータの先端によって突かれて回転体にモーメントを生じる状態となり、軸を中心にした回転運動が生じるものである。こういった超音波モータは、例えば、特開2004−166324号公報に開示されている。
【0003】
超音波モータにおいては、一般に、圧電アクチュエータの振動の周波数が圧電アクチュエータの共振周波数に近いとモータ回転速度が速くなる。このような点から、各部材の形状や配置、圧電アクチュエータの先端の振動の仕方などに工夫がなされてきた。
【特許文献1】特開2004−166324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧電アクチュエータの共振周波数付近では、その先端がロータに押しつけられている等の理由から、圧電アクチュエータを一定の周波数以上で振動させないと始動しなかったり、始動してもわずかに共振周波数を下回ると不意に回転が停止してしまったりすることがある。また共振周波数は、環境やモータ本体の温度変化にも影響される。これらの現象によって、超音波モータを安定に駆動することは課題の一つとなっている。
【0005】
本発明にかかる目的の一つは、超音波モータの安定かつ効率の良い駆動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法は、
第1周波数の交流電圧をアクチュエータ部に印加して前記超音波モータを始動する工程と、
前記第1周波数から前記超音波モータが停止する第2周波数まで駆動周波数を下げながら、該アクチュエータ部に生じる電圧を検出する電圧検出工程と、
第3周波数で前記超音波モータを始動する始動工程と、
前記駆動周波数を運転周波数範囲内の値となるように、前記第3周波数から低周波数側に変化させる駆動工程と、
を有し、
前記運転周波数範囲は、前記電圧検出工程において最大電圧が検出される際の前記駆動周波数の値よりも高周波数側の範囲である。
【0007】
このようにすれば、超音波モータを安定かつ効率良く駆動することができる。
【0008】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記運転周波数範囲は、始動不可能範囲内であることができる。
【0009】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記駆動工程では、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が前記最大電圧に係数を乗じて得られるしきい値電圧以下となるように、前記駆動周波数を変化させることができる。
【0010】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記駆動工程では、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が、前記しきい値電圧より大きい場合は、前記駆動周波数を高周波数側に変化させ、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が、前記しきい値電圧より小さい場合は、前記駆動周波数を低周波数側に変化させることができる。
【0011】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記駆動工程では、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が、前記最大電圧に係数を乗じて得られるしきい値電圧が前記電圧検出工程において検出される際の前記駆動周波数の値以上となるように、該駆動周波数を変化させることができる。
【0012】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記係数は、0.5ないし0.95であることができる。
【0013】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記駆動工程では、
前記駆動周波数を段階的に変化させ、かつ、該駆動周波数の変化の間隔は、100Hzないし1000Hzであることができる。
【0014】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記超音波モータが停止した状態から、前記超音波モータが始動するまで前記駆動周波数を上げる、始動周波数検出工程を含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例として説明するものである。
【0016】
1.超音波モータ400の構成
まず、本実施形態にかかる超音波モータの構成の一例について図面を参照しながら説明する。以下には、超音波モータ400がロータ部100とアクチュエータ部200を含んで構成される場合の例を説明するが、本発明にかかる超音波モータの駆動方法は、このような構成の超音波モータの駆動方法のみには限定されない。本実施形態の駆動方法を適用できる超音波モータとしては、以下の例示の他に、例えば、複数のアクチュエータ素子が円形状に配置された超音波モータなどを挙げることができる。
【0017】
図1は、本実施形態にかかる超音波モータ400を模式的に示す平面図である。図2は、本実施形態にかかる超音波モータ400を模式的に示す断面図である。図1のA−A線に沿った断面が図2に相当する。
【0018】
超音波モータ400は、ロータ部100と、アクチュエータ部200と、アクチュエータ支持部300と、を有する。
【0019】
ロータ部100は、その外周面が、アクチュエータ部200と当接するように設けられる。ロータ部100は、回転の中心軸110を中心として回転自在に設けられる。ロータ部100は、外周面がアクチュエータ部200の先端の振動によって蹴られることによって中心軸周りにモーメントを生じて回転駆動される。ロータ部100は、円柱状の形状であっても良いし、図示の例のように軸の直径を大きくした輪軸状の形状であってもよい。アクチュエータ部200の振動等についての詳細は後述する。ロータ部100の回転が、超音波モータの機械的な出力となる。ロータ部100には、回転検出手段としてエンコーダなどを設けることもできる。ロータ部100の材質は、摩耗しにくいものであることが好ましい。
【0020】
アクチュエータ部200は、たとえば振動板210と、2つの圧電体層と、2つの縦振動用電極と、8つの屈曲振動用電極と、4つの検出用電極と、を有する。アクチュエータ部200は、振動板210の中心面を鏡面として、上下に対称な構成であることができる。したがって、以下では、振動板210から上側の構成について詳細に説明し、振動板210より下側の構成については、詳細な説明を省略する。
【0021】
振動板210は、略長方形の板状部材である。図1および図2では、左右方向に長手方向を有するように描いてある。振動板210は、突起部212を有する。突起部212は、振動板210と一体的に形成されていてもよいし、別部材として振動板210に設けられていてもよい。振動板210の厚さは、たとえば0.1μmないし200μmとすることができる。振動板210は、突起部212を介して、ロータ部100の外周面に当接するように設けられる。振動板210は、上下の圧電体の伸縮によって伸縮および屈曲運動が可能で、突起部212の先端付近の軌跡が楕円状となるように振動することができる。この振動により、突起部212に当接しているロータ部100の外周面が突き動かされ、ロータ部100の軸周りに回転運動が生じる。振動板210は、その上下に形成される圧電体層に電力を供給するように導電性を有する物質で構成されてもよい。また振動板210は、導電性を有さない物質で構成されてもよい。この場合は、振動板210の上下に圧電体層に電力を供給するための電極を別途設けることができる。振動板210の材質としては、たとえば、ステンレス鋼を好ましく用いることができる。また、振動板210と突起部212は、同一の材質であっても良いし、異なる材質としてもよい。突起部212の材質は、摩耗しにくいものであることが好ましい。
【0022】
圧電体層220は、振動板210の上に設けられる。圧電体層220は、電圧が印加されることにより伸縮することができる。圧電体層220の伸縮の方向は、印加する電圧の極性や、圧電体層220を分極させる方向により任意に設計することができる。圧電体層220の厚さは、たとえば0.1μmないし200μmとすることができる。図1および図2の例では、4つの屈曲振動用電極241〜244を配しているため、圧電体層220は、単層で一方向に分極処理されている。この例では、各電極に印加する電圧の極性によってそれぞれの電極に対応する部位の圧電体の伸縮を行うことになる。また、圧電体層220は、伸縮が生じると振動板210および検出電極251,252の間に電圧を発生することができ、この電圧(検出電圧)によって、振動板210の動作を検知することができる。圧電体層220は、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O3などの圧電材料から形成されることができる。
【0023】
縦振動用電極230は、圧電体層220の上に設けられる。縦振動用電極230は、振動板210すなわちアクチュエータ部200を長手方向に伸縮するための電力を供給するために設けられる。
【0024】
屈曲振動用電極241〜244は、圧電体層220の上に設けられる。屈曲振動用電極241〜244は、縦振動用電極230と電気的に絶縁されている。屈曲振動用電極241〜244は、振動板210すなわちアクチュエータ部200を長手方向に垂直な方向に屈曲振動させるための電力を供給するために設けられる。このような振動は、たとえば、図の符号を参照して、屈曲振動用電極241と屈曲振動用電極242に互いに極性が反対になるような電圧を印加することによって可能である。このようにすれば一方の電極の下の圧電体がアクチュエータ部200の長手方向に伸張したときに、他方の電極の下の圧電体が同方向に収縮するため、収縮する側を内側としてアクチュエータ部200が屈曲するような動作が可能となる。このような電圧の組み合わせを交番して印加することで、アクチュエータ部200は、長手方向に垂直な方向の屈曲振動が可能となる。図示の例では屈曲振動用電極241〜244が4つ配置されているが、以上のような機能を有する限り、当該電極の数、配置および形状は任意に設計できる。また、この例では、電極の配置によって屈曲および伸縮を生じさせるが、そのほかに、圧電体層220の分極の配置を利用して屈曲および伸縮を生じさせる方法もある。
【0025】
検出用電極251,252は、圧電体層220の上に設けられる。検出用電極251,252は、縦振動用電極230および屈曲振動用電極241〜244と電気的に絶縁されている。検出用電極251,252は、振動板210すなわちアクチュエータ部200の振動の状態を検出するために設けられる。このような振動の検出は、たとえば、検出用電極251と検出用電極252の下の圧電体に発生した電圧をそれぞれ検出することによって可能である。これらの電圧は、アクチュエータ部200の変位を反映したものであり、アクチュエータ部200の変位を示す量として使用することができる。図示の例では検出用電極251,252が2つ配置されているが、以上のような機能を有する限り、当該電極の数、配置および形状は任意に設計できる。
【0026】
縦振動用電極230、屈曲振動用電極241〜244、および検出用電極251,252は、たとえば白金などの金属材料やランタンとニッケルの複合酸化物(LaNiO3)などの導電性酸化物からなることができ単層でも多層構造でもよい。これらの電極の厚さは、十分に低い電気抵抗値が得られる厚さであれば良く、たとえば10nmないし5μmとすることができる。
【0027】
アクチュエータ支持部300は、アクチュエータ部200を支持するとともにロータ部100にアクチュエータ部200を押しつけるように保持するために設けられる。アクチュエータ支持部300は、たとえば、アクチュエータ部200の振動板210と一体的に形成されていてもよい。また、図2の例のようにアクチュエータ部を下から支持するように設けられてもよい。なお、この例では、アクチュエータ部200の下部の電極群と、アクチュエータ支持部300は、電気的に絶縁されている。アクチュエータ支持部300の材質としては、たとえば、ステンレス鋼が好ましい。また、アクチュエータ支持部300と振動板210は、同一の材質であっても良いし、異なる材質としてもよい。
【0028】
2.超音波モータ400の動作
図3は、アクチュエータ部200が屈曲振動しているとき、瞬間的に採りうる形状を模式的に示す平面図である。図4は、ロータ部100が突起部212に突き動かされて回転する様子を描いた模式図である。
【0029】
図3に示すように、アクチュエータ部200は、各電極から印加される電圧の極性に従って、屈曲および伸縮することができる。図3は、説明のために屈曲を誇張して示している。この図の場合、屈曲振動用電極241および屈曲振動用電極244と、屈曲振動用電極242および屈曲振動用電極243に印加される電圧の極性が逆になっている。すなわち、屈曲振動用電極241および屈曲振動用電極244には、圧電体層220を伸張させる電圧が、屈曲振動用電極242および屈曲振動用電極243には、圧電体層220を収縮させる電圧が印加されている。そのため、アクチュエータ部200は、ある瞬間には図3に示すように、うねったような形状となっている。そして、各電極に印加する電圧の極性を特定の周波数で交番させるため、別の瞬間にはうねりの状態が逆になるような形状となる。このような理由から、この交番電圧の周期でアクチュエータ部200は屈曲振動することとなる。そして、このとき同時に縦振動用電極230にも交流電圧を印加することができるため、アクチュエータ部200には、屈曲振動と伸縮振動(縦振動)とを同時に発生させることができる。このような振動の組み合わせにより、突起部212の軌跡を楕円状にすることができる。さらにこの楕円状の振動は、印加する交流の周波数、電圧および位相などを選ぶことで、所望の態様を得ることができる。
【0030】
このようなアクチュエータ部200の運動は、突起部212を運動させる。図4に破線で示すように、突起部212は、アクチュエータ部200(振動板210)の動きに伴って、その先端が楕円状の軌跡を描くように振動することができる。そして、この振動によって、ロータ部100の側面は図4の矢印の方向に突き動かされ、ロータ部100が回転軸110の周りに回転する。ロータ部100の回転方向および回転速度は、上述したようにアクチュエータ部200に入力する交流電圧の周波数、電圧および位相などを変化させることで調節することができる。なお、以上の説明は、振動板210よりも上側の電極についてのみ説明したが、下側にも同様の機能を有する部材が設けられており、適宜協働させて上記の動作を行うことができる。
【0031】
3.超音波モータ400の制御構成
図5は、本実施形態の超音波モータ400の制御構成を示す図である。
【0032】
アクチュエータ部200の各電極は、図5に例示するように、駆動回路260および検出制御回路270に電気的に接続されている。図5の例では、駆動回路260がアクチュエータ部200を駆動し、アクチュエータ部200の駆動を検出制御回路270によって検出し、信号を駆動回路260に帰還する構成となっている。本実施形態の駆動構成には、図示しないが、周波数や電圧を記憶する記憶手段を備えることができる。以下このような構成について具体的に説明する。
【0033】
アクチュエータ部200の屈曲振動用電極241〜244および縦振動用電極230は、駆動回路260に接続される。駆動回路260は、アクチュエータ部200を振動させる。駆動回路260には、例えば、電力増幅回路262、発振源264などの回路を含んで構成することができる。駆動回路260は、各電極を別個に駆動する構成を有してもよいし、図のように屈曲振動用電極241〜244と縦振動用電極230とを分けた構成としてもよい。図示の例では、屈曲振動用電極241,244および屈曲振動用電極242,243に印加する電圧の位相を制御するためにインバータ280を含んで構成されている。
【0034】
検出制御回路270は、検出用電極251,252に接続されている。検出制御回路270は、検出用電極251,252に発生した電圧から、アクチュエータ部200の変位や動作を検出する。検出制御回路270は、検出したアクチュエータ部200の状態に応じた信号を駆動回路260に送出する。駆動回路260は、検出制御回路270からの信号に基づいて、アクチュエータ部200の振動動作を制御できるように構成される。
【0035】
4.超音波モータ400の駆動特性
図6は、本実施形態にかかる超音波モータ400を駆動した結果の一例を示す。以下に図6を用いて超音波モータの駆動特性について説明する。
【0036】
図6の縦軸は、検出用電極230に発生する電圧を規格化したものである。横軸は、入力する交流電圧の周波数である。図6のデータは、始めに駆動周波数115kHzで超音波モータ400を始動し、ステップ周波数を100Hzとして段階的に周波数を低下させたときに得られたものである。
【0037】
図6の縦軸のアクチュエータ部200の変位は、検出電極251等に生じた電圧を測定した結果に対応している。図6の縦軸は、上述したように超音波モータ400の回転速度と対応関係がある。すなわち、ここで観測されているアクチュエータ部200の変位が大きいほど、超音波モータ400の回転速度が大きい。図6の横軸は、駆動周波数を表している。図中には、説明の便宜上、実用的な意味の異なる領域を分け、それぞれ範囲1〜範囲3として描いてある。
【0038】
超音波モータ400は、停止した状態で交流電圧を印加する場合、当該交流電圧が一定の周波数以上でないと、始動しないことが分かっている。このような始動可能な周波数の範囲は、個々の超音波モータ400の個体ごとに異なり、環境の温度等にも影響される。図6においては、アクチュエータ部200に範囲3の周波数の交流電圧を印加するとアクチュエータ部200の変位が生じ、超音波モータが始動する。超音波モータ400の始動が範囲3でしか起こらない理由は、アクチュエータ部200がロータ部100に押しつけられているためであると考えられている。したがって、範囲1や範囲2の周波数の交流電圧を、停止しているアクチュエータ部に印加しても超音波モータは始動しない。以下では、この範囲1および範囲2は、超音波モータ400を始動することができない始動不可能範囲と称する。
【0039】
図6中の範囲2の領域では、超音波モータ400は、始動できない。ところが、図6の実験結果から明らかなように、範囲3から徐々に周波数を変化させて範囲2の周波数にすると、アクチュエータ部200の変位は次第に大きくなる。この周波数の変化の態様は、例えば、連続的に周波数を変化させてもよいし、段階的に変化させてもよい。段階的に変化させる場合は、その変化の間隔が大きすぎないようにする。この変化の間隔が大きすぎると、超音波モータ400の回転が停止してしまうことがある。範囲2の周波数では、超音波モータ400を始動はできないが、範囲3の周波数による運転よりも回転速度を高くして運転できることがわかる。
【0040】
一方、範囲2において、周波数が低くなり範囲1との境界に近づくとアクチュエータ部200の変位は、最大となった後に急激に減少する。すなわち、範囲2の周波数での超音波モータ400の駆動は、範囲3のそれと比べて回転速度が大きく効率がよい反面、範囲2から範囲1に周波数が低くなると突然停止してしまうという不安定さを有している。範囲2の周波数においては、超音波モータ400が停止してしまうと、その周波数では始動ができないため、再び始動するためには、範囲3の周波数を印加する必要がある。
【0041】
図6中の範囲1の周波数では、たとえ駆動周波数を高い周波数から徐々に低下させて範囲1の周波数としたとしても、超音波モータ400は回転しない。また、範囲1の周波数の交流電圧を停止している超音波モータ400に印加しても始動することはない。
【0042】
5.超音波モータ400の駆動方法
図7は、超音波モータ400の駆動特性を模式的に示す概略図である。図8ないし図15は、本実施形態の超音波モータ400の駆動方法における処理のフローチャートである。本実施形態の駆動方法を以下に図7ないし図15を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の説明において駆動周波数とは、図5の駆動回路260の発振源264に設定される周波数のことであり、この周波数でアクチュエータ部200が駆動される。一方、第1〜第4周波数、および始動周波数とは、検出制御回路270の内部で保持している周波数値のことであり、これを発振源264にセットすることによってはじめて、アクチュエータが当該周波数の値で駆動されるものとする。
【0043】
本実施形態の超音波モータ400の駆動方法は、検出工程(S1)と、稼働工程(S2)からなる。検出工程は、図8a)に示すように、超音波モータ400の始動周波数検出工程(S10)と、電圧検出工程(S20)からなり、また、稼働工程は図8b)に示すように、超音波モータ400の始動工程(S30)と、駆動工程(S40)からなる。
【0044】
本実施形態の超音波モータ400の駆動方法は、モータが駆動していない状態から実行される。
【0045】
検出工程S1の始動周波数検出工程(S10)は、図9に示すように、まず、アクチュエータ部200の駆動周波数と第1周波数とを初期化する(ステップS11)。それぞれの周波数は、図6における範囲1の周波数領域に属する値を適宜選択して設定される。アクチュエータ部200の駆動を開始し(ステップS12)、駆動周波数を第1周波数に設定する(ステップS13)。アクチュエータ部200の検出用電極251等から電圧を検出して(ステップS14)超音波モータ400が始動したかどうかを判定する(ステップS15)。始動の確認は、ロータ部100に設けた図示せぬエンコーダ等の回転検出手段を用いて行ってもよい。このとき、超音波モータ400が始動していなければ(ステップS15でN)、第1周波数を大きくし(ステップS16)、再度駆動周波数を第1周波数にする(ステップS13)。そして、超音波モータ400が始動していれば(ステップS15でY)、その時の第1周波数を始動周波数として記録し(ステップS17)、超音波モータ400の始動周波数検出工程(S10)は、終了する。始動周波数検出工程(S10)において、超音波モータ400を始動することのできる駆動周波数があらかじめ分かっていれば、すなわち、第1周波数の初期値を、図7の範囲3の周波数に設定できるのであれば、始動したかどうかの判定(ステップS15)および第1周波数を大きくする工程(ステップS16)は省略することができる。図9に示した工程は、超音波モータ400が停止した状態から、超音波モータ400が始動するまで駆動周波数を上げていくことによって、始動不可能範囲を求めることができる。この工程を有すれば、図7の範囲2と範囲3の境界の周波数fstartが未知の場合であっても、始動可能範囲を求めることができ、これに基づき容易に超音波モータ400を始動することができる。また、本工程は、始動不可能範囲を求める工程である。なお、ここでは、範囲2と範囲3の境界の周波数fstartでは、超音波モータ400を始動することができるものとする。
【0046】
次に、始動周波数検出工程(S10)を経て、超音波モータ400が第1周波数で始動した状態で、駆動周波数を下げながら、アクチュエータ部200に生じる電圧を検出する電圧検出工程(S20)を行う。図10に示すように、この工程では第2周波数の初期値を始動周波数検出工程(S10)で求めた始動周波数とし(ステップS21)、アクチュエータの駆動周波数を第2周波数にする(ステップS22)。次に、第2周波数の交流電圧を印加した状態で、検出用電極251の電圧等を参照して(ステップS23)、超音波モータ400が停止したかどうかを判定する(ステップS24)。このとき、超音波モータ400が停止していなければ(ステップS24でN)、第2周波数をより低い値に変更して(ステップS25)、再度アクチュエータの駆動周波数を第2周波数に設定する(ステップS22)。なお、この工程において、超音波モータ400が停止する駆動周波数、検出電圧の最大値およびその時の駆動周波数があらかじめ分かっていれば、停止したかどうかの判定(ステップS24)および第2周波数をより低い周波数に設定する工程(ステップS25)は省略することができる。
【0047】
次に超音波モータ400の停止が検出用電極251の電圧等で検出された場合は(ステップS24でY)、アクチュエータ部200の駆動を停止する(ステップS26)。次いで検出用電極251等に生じる電圧の測定結果に基づいて、アクチュエータ部200に生じた最大電圧を求め、記録する(ステップS27)。このステップは、後述の駆動工程(S40)において、検出電圧による制御を行わない場合には、省略することができる。次に、検出用電極251等に生じる電圧の測定結果に基づいて、アクチュエータ部200に最大電圧が生じた周波数を求め、記録する(ステップS28)。このステップは、後述の駆動工程(S40)において、周波数による制御を行わない場合には、省略することができる。電圧検出工程(S20)が終了すると、超音波モータ400は、停止した状態にある。電圧検出工程(S20)は、図7を用いて説明すれば、範囲3から範囲2を通過して範囲1に入るように周波数を変化させ、その間に検出用電極251等に生じる電圧を測定し、電圧の最大値や最大の電圧を発生させる周波数を求める工程である。
【0048】
次に稼働工程S2について説明する。稼働工程S2では、まず、図11に示すような、始動工程(S30)を行う。本工程では、駆動周波数と第3周波数の初期値を始動周波数検出工程(S10)で求めた始動周波数(第1周波数)とする(ステップS31)。次にアクチュエータ部200の駆動を開始し(ステップS32)、アクチュエータ部200の駆動周波数を、第3周波数にする(ステップS33)。次いで、検出用電極251等の電圧を参照して、超音波モータ400が始動したかどうかを判定する(ステップS34)。このとき、超音波モータ400が始動していなければ(ステップS34でN)、第3周波数をより高い値に変更して(ステップS35)、再度アクチュエータ部200の駆動周波数を、第3周波数に設定する(ステップS33)。そして、超音波モータ400が始動していれば(ステップS34でY)、超音波モータ400を始動する工程(S30)は、終了する。なお、ここでは、上述した始動不可能範囲を求める工程を含んでいるが、これを省略することができる。すなわち、この工程において、超音波モータ400を始動することのできる駆動周波数があらかじめ分かっていれば始動したかどうかを判定するステップ(ステップS34)および第3周波数を高く設定するステップ(ステップS35)は、省略することができる。例えば、予め使用条件を想定した実験等で始動が確認されている周波数をROM等に記録しておき、第3周波数の初期値として使用する事も可能である。
【0049】
始動工程S30に引き続き、駆動工程S40を行う。図12は、駆動工程の例を示す。本工程は超音波モータの実運転動作を行うフローである。まず、駆動周波数と第4周波数とを初期化する(ステップS41)。駆動工程S40は始動工程S30の直後に行われるので、駆動周波数と第4周波数の初期値は、始動工程S30の第3周波数の最終値をそのまま設定すれば良い。また、アクチュエータ部の駆動は始動工程S30で既に開始されている。
【0050】
次に運転周波数範囲を決定する(ステップS42)。運転周波数範囲は、上述の第3周波数よりも低い周波数であって、かつ、電圧検出工程(S20)で求めたアクチュエータ部200に生じる電圧が最大になる周波数よりも高い周波数側の範囲とする。この運転周波数範囲は、図7に説明を付したように、電圧検出工程(S20)で求めたアクチュエータ部200に生じる電圧が最大になる周波数fpeakと、第3周波数f3との間の周波数の範囲である。以下に記述する第4周波数は第3周波数よりも低い周波数となる。
【0051】
ここで、不図示の制御手段から行われる駆動継続の指示をチェックする(ステップS43)。駆動継続であれば(ステップS43でY)アクチュエータの駆動周波数を第4周波数に設定し(ステップS44)、第4周波数が運転周波数範囲内かどうかを判定する(ステップS45)。第4周波数が運転周波数範囲内でなければ(ステップS45でN)、第4周波数を変化させ(ステップS46)、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。第4周波数が運転周波数範囲内であれば(ステップS43でY)、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。ここで、不図示の制御手段から駆動打ち切りの指示があれば(ステップS43でN)アクチュエータの駆動を停止し(ステップS47)、工程は終了する。第4周波数を変化させるステップ(ステップS46)では、第4周波数は、段階的に変化させ、その変化の間隔は、100Hzないし1000Hzとするのが好ましい。
【0052】
このような駆動方法によれば、運転周波数範囲で超音波モータ400を駆動することができる。この範囲で超音波モータ400を駆動すると、始動周波数(第3周波数)(図7のf3)で駆動する場合よりも、アクチュエータ部200に発生する電圧が高い状態となる。すなわち、上記駆動方法によれば、超音波モータ400は、始動周波数で駆動するよりも回転速度を高くすることができる。その上、運転周波数範囲で超音波モータ400を駆動すると、駆動周波数が超音波モータ400の停止してしまう周波数(図7の範囲1)となることが制限される。すなわち、上記駆動方法によれば、超音波モータ400は、突然に停止してしまうことが抑制される。したがって、このような駆動方法によれば、超音波モータ400を効率よく安定に動作させることができる。
【0053】
一方、上記の運転周波数範囲は、次のように設定することもできる。たとえば、運転周波数範囲は、図7に「第2運転周波数範囲」として記したように、超音波モータ400を始動不可能な周波数の範囲であって、かつ、電圧検出工程(S20)で求めたアクチュエータ部200に生じる電圧が最大になる周波数よりも高い周波数側の範囲とすることができる。この第2運転周波数範囲は、図7に符号を付したように、電圧検出工程(S20)で求めたアクチュエータ部200に生じる電圧が最大になる周波数fpeakと、始動不可能範囲の上限である周波数fstartよりも低い周波数の範囲である。なおfstartの周波数では、始動することが可能である。
【0054】
このように第2運転周波数範囲を設定して超音波モータ400を駆動すると、始動可能範囲の周波数(図7の範囲3)で駆動する場合よりも、アクチュエータ部200に発生する電圧が高い状態となる。すなわち、上記駆動方法によれば、超音波モータ400は、始動可能な範囲の周波数で駆動するよりも回転速度を高くすることができる。その上、運転周波数範囲で超音波モータ400を駆動すると、入力周波数駆動周波数が超音波モータ400の停止してしまう周波数(図7の範囲1)となることが制限される。すなわち、上記駆動方法によれば、超音波モータ400は、突然に停止してしまうことが抑制される。したがって、このような駆動方法によれば、超音波モータ400は、効率よく安定に動作させることができる。
【0055】
駆動工程(S40)は、図13ないし図15に示すような変形が可能である。
【0056】
図13は、駆動工程(S40)の変形例フローチャートである。この例では、前述したと同様に、駆動周波数と第4周波数を始動工程S30の第3周波数の最終値で初期化する(ステップS41)し、運転周波数範囲を決定する(ステップS42)。そして、電圧検出工程(S20)のステップS25で求めたアクチュエータ部200から検出される電圧の最大値に、1より小さい係数を乗じてしきい値電圧を求める(ステップS48)。この係数は、超音波モータ400が停止することをより確実に抑制する働きがある。図7には、しきい値電圧Vthrと、電圧検出工程(S20)において、しきい値電圧Vthrが検出された周波数であるしきい値周波数fthrを示した。しきい値周波数fthrは、電圧検出工程(S20)で求めたアクチュエータ部200に生じる電圧が最大になる周波数fpeakよりも高周波数側を選ぶようにする。
【0057】
駆動周波数がfpeakを下回ると超音波モータ400が非常に停止しやすいが、上記の係数を駆動工程(S40)に導入することで、周波数がfpeak未満となってしまうまでの余裕を、駆動周波数を変化させる際に持たせることができる。この係数は、超音波モータ400の特性や用途に応じて設定でき、例えば、0.5ないし0.95とすることができる。
【0058】
図13に示す変形例では、運転周波数範囲を決定(ステップS42)した後、しきい値電圧Vthrを求め(ステップS48)、しきい値電圧Vthrが電圧工程(S20)において検出される際の駆動周波数の値(fthr)を求める(ステップS49)。ここで、不図示の制御手段から行われる駆動継続の指示をチェックする(ステップS43)。駆動継続であれば(ステップS43でY)アクチュエータの駆動周波数を第4周波数に設定し(ステップS44)、第4周波数が運転周波数範囲内かどうかを判定する(ステップS45)。第4周波数が運転周波数範囲内でなければ(ステップS45でN)、第4周波数を変化させ(ステップS46)、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。一方、運転周波数範囲内であった場合は(ステップS45でY)、第4周波数がしきい値電圧を発生する周波数の値よりも大きいかどうかを判定する(ステップS50)。第4周波数がしきい値周波数よりも大きかった場合は(ステップS50でY)、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。第4周波数がしきい値周波数よりも小さかった場合は(ステップS50でN)、第4周波数を変化させ(ステップS46)、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。ここで、不図示の制御手段から駆動打ち切りの指示があれば(ステップS43でN)アクチュエータの駆動を停止し(ステップS47)、工程は終了する。
【0059】
図14は、駆動工程(S40)の他の変形例を示すフローチャートである。本変形例では、前述の例と同様に、駆動周波数と第4周波数を始動工程S30の第3周波数の最終値で初期化する(ステップS41)し、運転周波数範囲を決定する(ステップS42)。そして、電圧検出工程(S20)のステップS25で求めたアクチュエータ部200から検出される電圧の最大値に、1より小さい係数を乗じてしきい値電圧を求める(ステップS48)。ここで、不図示の制御手段から行われる駆動継続の指示をチェックする(ステップS43)。駆動継続であれば(ステップS43でY)アクチュエータの駆動周波数を第4周波数に設定し(ステップS44)、アクチュエータ部200の検出用電極251等から検出電圧を求める(ステップS51)。第4周波数が運転周波数範囲内かどうかを判定し(ステップS45)、運転周波数範囲内であれば(ステップS45のY)、検出電圧がしきい値電圧Vthr以下であるかどうかを判定する(ステップS52)。検出電圧がしきい値電圧以下ならば(ステップS52のY)そのまま駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。第4周波数が運転周波数の範囲外の場合(ステップS45のN)や、検出電圧がしきい値以上であった場合(ステップS52のY)は、第4周波数を変化させた(ステップS46)後、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。ここで、不図示の制御手段から駆動打ち切りの指示があれば(ステップS43でN)アクチュエータの駆動を停止し(ステップS47)、工程は終了する。
【0060】
変形例の駆動方法によれば、しきい値電圧Vthrをアクチュエータ部200に生じる最大電圧Vpeakよりも係数分低く設定することで駆動周波数の変動に余裕を持たせることができる。そのため、運転周波数範囲を第2運転周波数範囲に設定した場合、超音波モータ400を始動可能範囲の周波数(図7の範囲3)で駆動する場合よりも、アクチュエータ部200に発生する電圧が高い状態となる。その上、超音波モータ400の温度や環境の温度が変化して、超音波モータ400の特性が変動しても停止しにくくすることができる。したがって、このような駆動方法によれば、超音波モータ400は、効率よく一層安定に動作させることができる。
【0061】
図15は、駆動工程(S40)の他の変形例を示すフローチャートである。本変形例では、前述したと同様に、駆動周波数と第4周波数を始動工程S30の第3周波数の最終値で初期化する(ステップS41)し、電圧検出工程(S20)のステップS25で求めたアクチュエータ部200から検出される電圧の最大値に、1より小さい係数を乗じてしきい値電圧を求める(ステップS48)。ここで、不図示の制御手段から行われる駆動継続の指示をチェックする(ステップS43)。駆動継続であれば(ステップS43でY)アクチュエータの駆動周波数を第4周波数に設定し(ステップS44)、不図示の制御手段から行われる周波数調整継続の指示をチェックする(ステップS53)。周波数調整継続でなければ(ステップS53でN)、そのまま駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。周波数調整継続であれば(ステップS53でY)、アクチュエータ部200の検出用電極251等から検出電圧を求める(ステップS51)。次に検出電圧としきい値電圧Vthrを比較し(ステップS54)、検出電圧がしきい値電圧より大きければ(ステップS54で検出電圧>しきい値電圧)第4周波数を大きく、検出電圧がしきい値電圧より小さければ(ステップS54で検出電圧<しきい値電圧)第4周波数を小さく、検出電圧としきい値電圧が等しければ(ステップS54で検出電圧=しきい値電圧)第4周波数は変化させないで、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。ここで、不図示の制御手段から駆動打ち切りの指示があれば(ステップS43でN)アクチュエータの駆動を停止し(ステップS47)、工程は終了する。
【0062】
このフローによれば、駆動周波数を調節するステップによって、駆動周波数は、しきい値周波数fthrに近づいてゆく。周波数調節を継続するかどうかの判断は、たとえば、周波数の目標値をあらかじめ定めて、駆動周波数が目標値に達したかどうかに基づいて行うことができる。また、周波数調節は、常に継続するように設定しておくこともできる。また、人為的に外部から信号を与えて、適宜継続の切替をすることもできる。
【0063】
このような駆動方法によれば、超音波モータ400は、しきい値周波数fthr付近の周波数で駆動され、しかも停止しにくい。すなわち、本変形例では、周波数の調節を継続して行うことができるため、温度変化などの外乱が生じてしきい値周波数fthrが変動しても、これに追従して駆動周波数を調節することができる。かつ、しきい値電圧Vthrをアクチュエータ部200に生じる最大電圧Vpeakよりも係数分低く設定することで、駆動周波数の変動に余裕を持たせることができる。したがって、このような駆動方法によれば、超音波モータ400は、始動可能な範囲の周波数で駆動するよりも回転速度を高く駆動されることができ、かつ、超音波モータ400の温度や環境の温度が変化してもこれに対応して停止しにくく駆動されることができる。
【0064】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態にかかる超音波モータ400を模式的に示す平面図。
【図2】本実施形態にかかる超音波モータ400を模式的に示す断面図。
【図3】アクチュエータ部の動作を模式的に示す平面図。
【図4】超音波モータの動作機構を説明する模式図。
【図5】本実施形態にかかる超音波モータの回路構成の一例を示す模式図。
【図6】本実施形態にかかる超音波モータの動作特性の説明図。
【図7】本実施形態にかかる超音波モータの動作特性の実験結果の一例。
【図8】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図9】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図10】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図11】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図12】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図13】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図14】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図15】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0066】
100 ロータ部、110 中心軸、200 アクチュエータ部、210 振動板、
212 突起部、220,222 圧電体層、230,232 縦振動用電極、
241〜244 屈曲振動用電極、251,252 検出用電極、
260 駆動回路、262 電力増幅回路、264 発振源、270 検出制御回路、
280 インバータ、300 アクチュエータ支持部、400 超音波モータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波モータは、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する素子の一つである。超音波モータの一例としては、モータの動作軸である回転体の側面に圧電アクチュエータの先端を押しつけたものが挙げられる。このような超音波モータは、圧電アクチュエータの先端をモータの軸に垂直な面内で楕円状に振動させることにより、回転体の側面が圧電アクチュエータの先端によって突かれて回転体にモーメントを生じる状態となり、軸を中心にした回転運動が生じるものである。こういった超音波モータは、例えば、特開2004−166324号公報に開示されている。
【0003】
超音波モータにおいては、一般に、圧電アクチュエータの振動の周波数が圧電アクチュエータの共振周波数に近いとモータ回転速度が速くなる。このような点から、各部材の形状や配置、圧電アクチュエータの先端の振動の仕方などに工夫がなされてきた。
【特許文献1】特開2004−166324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧電アクチュエータの共振周波数付近では、その先端がロータに押しつけられている等の理由から、圧電アクチュエータを一定の周波数以上で振動させないと始動しなかったり、始動してもわずかに共振周波数を下回ると不意に回転が停止してしまったりすることがある。また共振周波数は、環境やモータ本体の温度変化にも影響される。これらの現象によって、超音波モータを安定に駆動することは課題の一つとなっている。
【0005】
本発明にかかる目的の一つは、超音波モータの安定かつ効率の良い駆動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法は、
第1周波数の交流電圧をアクチュエータ部に印加して前記超音波モータを始動する工程と、
前記第1周波数から前記超音波モータが停止する第2周波数まで駆動周波数を下げながら、該アクチュエータ部に生じる電圧を検出する電圧検出工程と、
第3周波数で前記超音波モータを始動する始動工程と、
前記駆動周波数を運転周波数範囲内の値となるように、前記第3周波数から低周波数側に変化させる駆動工程と、
を有し、
前記運転周波数範囲は、前記電圧検出工程において最大電圧が検出される際の前記駆動周波数の値よりも高周波数側の範囲である。
【0007】
このようにすれば、超音波モータを安定かつ効率良く駆動することができる。
【0008】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記運転周波数範囲は、始動不可能範囲内であることができる。
【0009】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記駆動工程では、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が前記最大電圧に係数を乗じて得られるしきい値電圧以下となるように、前記駆動周波数を変化させることができる。
【0010】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記駆動工程では、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が、前記しきい値電圧より大きい場合は、前記駆動周波数を高周波数側に変化させ、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が、前記しきい値電圧より小さい場合は、前記駆動周波数を低周波数側に変化させることができる。
【0011】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記駆動工程では、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が、前記最大電圧に係数を乗じて得られるしきい値電圧が前記電圧検出工程において検出される際の前記駆動周波数の値以上となるように、該駆動周波数を変化させることができる。
【0012】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記係数は、0.5ないし0.95であることができる。
【0013】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記駆動工程では、
前記駆動周波数を段階的に変化させ、かつ、該駆動周波数の変化の間隔は、100Hzないし1000Hzであることができる。
【0014】
本発明にかかる超音波モータの駆動方法において、
前記超音波モータが停止した状態から、前記超音波モータが始動するまで前記駆動周波数を上げる、始動周波数検出工程を含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例として説明するものである。
【0016】
1.超音波モータ400の構成
まず、本実施形態にかかる超音波モータの構成の一例について図面を参照しながら説明する。以下には、超音波モータ400がロータ部100とアクチュエータ部200を含んで構成される場合の例を説明するが、本発明にかかる超音波モータの駆動方法は、このような構成の超音波モータの駆動方法のみには限定されない。本実施形態の駆動方法を適用できる超音波モータとしては、以下の例示の他に、例えば、複数のアクチュエータ素子が円形状に配置された超音波モータなどを挙げることができる。
【0017】
図1は、本実施形態にかかる超音波モータ400を模式的に示す平面図である。図2は、本実施形態にかかる超音波モータ400を模式的に示す断面図である。図1のA−A線に沿った断面が図2に相当する。
【0018】
超音波モータ400は、ロータ部100と、アクチュエータ部200と、アクチュエータ支持部300と、を有する。
【0019】
ロータ部100は、その外周面が、アクチュエータ部200と当接するように設けられる。ロータ部100は、回転の中心軸110を中心として回転自在に設けられる。ロータ部100は、外周面がアクチュエータ部200の先端の振動によって蹴られることによって中心軸周りにモーメントを生じて回転駆動される。ロータ部100は、円柱状の形状であっても良いし、図示の例のように軸の直径を大きくした輪軸状の形状であってもよい。アクチュエータ部200の振動等についての詳細は後述する。ロータ部100の回転が、超音波モータの機械的な出力となる。ロータ部100には、回転検出手段としてエンコーダなどを設けることもできる。ロータ部100の材質は、摩耗しにくいものであることが好ましい。
【0020】
アクチュエータ部200は、たとえば振動板210と、2つの圧電体層と、2つの縦振動用電極と、8つの屈曲振動用電極と、4つの検出用電極と、を有する。アクチュエータ部200は、振動板210の中心面を鏡面として、上下に対称な構成であることができる。したがって、以下では、振動板210から上側の構成について詳細に説明し、振動板210より下側の構成については、詳細な説明を省略する。
【0021】
振動板210は、略長方形の板状部材である。図1および図2では、左右方向に長手方向を有するように描いてある。振動板210は、突起部212を有する。突起部212は、振動板210と一体的に形成されていてもよいし、別部材として振動板210に設けられていてもよい。振動板210の厚さは、たとえば0.1μmないし200μmとすることができる。振動板210は、突起部212を介して、ロータ部100の外周面に当接するように設けられる。振動板210は、上下の圧電体の伸縮によって伸縮および屈曲運動が可能で、突起部212の先端付近の軌跡が楕円状となるように振動することができる。この振動により、突起部212に当接しているロータ部100の外周面が突き動かされ、ロータ部100の軸周りに回転運動が生じる。振動板210は、その上下に形成される圧電体層に電力を供給するように導電性を有する物質で構成されてもよい。また振動板210は、導電性を有さない物質で構成されてもよい。この場合は、振動板210の上下に圧電体層に電力を供給するための電極を別途設けることができる。振動板210の材質としては、たとえば、ステンレス鋼を好ましく用いることができる。また、振動板210と突起部212は、同一の材質であっても良いし、異なる材質としてもよい。突起部212の材質は、摩耗しにくいものであることが好ましい。
【0022】
圧電体層220は、振動板210の上に設けられる。圧電体層220は、電圧が印加されることにより伸縮することができる。圧電体層220の伸縮の方向は、印加する電圧の極性や、圧電体層220を分極させる方向により任意に設計することができる。圧電体層220の厚さは、たとえば0.1μmないし200μmとすることができる。図1および図2の例では、4つの屈曲振動用電極241〜244を配しているため、圧電体層220は、単層で一方向に分極処理されている。この例では、各電極に印加する電圧の極性によってそれぞれの電極に対応する部位の圧電体の伸縮を行うことになる。また、圧電体層220は、伸縮が生じると振動板210および検出電極251,252の間に電圧を発生することができ、この電圧(検出電圧)によって、振動板210の動作を検知することができる。圧電体層220は、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O3などの圧電材料から形成されることができる。
【0023】
縦振動用電極230は、圧電体層220の上に設けられる。縦振動用電極230は、振動板210すなわちアクチュエータ部200を長手方向に伸縮するための電力を供給するために設けられる。
【0024】
屈曲振動用電極241〜244は、圧電体層220の上に設けられる。屈曲振動用電極241〜244は、縦振動用電極230と電気的に絶縁されている。屈曲振動用電極241〜244は、振動板210すなわちアクチュエータ部200を長手方向に垂直な方向に屈曲振動させるための電力を供給するために設けられる。このような振動は、たとえば、図の符号を参照して、屈曲振動用電極241と屈曲振動用電極242に互いに極性が反対になるような電圧を印加することによって可能である。このようにすれば一方の電極の下の圧電体がアクチュエータ部200の長手方向に伸張したときに、他方の電極の下の圧電体が同方向に収縮するため、収縮する側を内側としてアクチュエータ部200が屈曲するような動作が可能となる。このような電圧の組み合わせを交番して印加することで、アクチュエータ部200は、長手方向に垂直な方向の屈曲振動が可能となる。図示の例では屈曲振動用電極241〜244が4つ配置されているが、以上のような機能を有する限り、当該電極の数、配置および形状は任意に設計できる。また、この例では、電極の配置によって屈曲および伸縮を生じさせるが、そのほかに、圧電体層220の分極の配置を利用して屈曲および伸縮を生じさせる方法もある。
【0025】
検出用電極251,252は、圧電体層220の上に設けられる。検出用電極251,252は、縦振動用電極230および屈曲振動用電極241〜244と電気的に絶縁されている。検出用電極251,252は、振動板210すなわちアクチュエータ部200の振動の状態を検出するために設けられる。このような振動の検出は、たとえば、検出用電極251と検出用電極252の下の圧電体に発生した電圧をそれぞれ検出することによって可能である。これらの電圧は、アクチュエータ部200の変位を反映したものであり、アクチュエータ部200の変位を示す量として使用することができる。図示の例では検出用電極251,252が2つ配置されているが、以上のような機能を有する限り、当該電極の数、配置および形状は任意に設計できる。
【0026】
縦振動用電極230、屈曲振動用電極241〜244、および検出用電極251,252は、たとえば白金などの金属材料やランタンとニッケルの複合酸化物(LaNiO3)などの導電性酸化物からなることができ単層でも多層構造でもよい。これらの電極の厚さは、十分に低い電気抵抗値が得られる厚さであれば良く、たとえば10nmないし5μmとすることができる。
【0027】
アクチュエータ支持部300は、アクチュエータ部200を支持するとともにロータ部100にアクチュエータ部200を押しつけるように保持するために設けられる。アクチュエータ支持部300は、たとえば、アクチュエータ部200の振動板210と一体的に形成されていてもよい。また、図2の例のようにアクチュエータ部を下から支持するように設けられてもよい。なお、この例では、アクチュエータ部200の下部の電極群と、アクチュエータ支持部300は、電気的に絶縁されている。アクチュエータ支持部300の材質としては、たとえば、ステンレス鋼が好ましい。また、アクチュエータ支持部300と振動板210は、同一の材質であっても良いし、異なる材質としてもよい。
【0028】
2.超音波モータ400の動作
図3は、アクチュエータ部200が屈曲振動しているとき、瞬間的に採りうる形状を模式的に示す平面図である。図4は、ロータ部100が突起部212に突き動かされて回転する様子を描いた模式図である。
【0029】
図3に示すように、アクチュエータ部200は、各電極から印加される電圧の極性に従って、屈曲および伸縮することができる。図3は、説明のために屈曲を誇張して示している。この図の場合、屈曲振動用電極241および屈曲振動用電極244と、屈曲振動用電極242および屈曲振動用電極243に印加される電圧の極性が逆になっている。すなわち、屈曲振動用電極241および屈曲振動用電極244には、圧電体層220を伸張させる電圧が、屈曲振動用電極242および屈曲振動用電極243には、圧電体層220を収縮させる電圧が印加されている。そのため、アクチュエータ部200は、ある瞬間には図3に示すように、うねったような形状となっている。そして、各電極に印加する電圧の極性を特定の周波数で交番させるため、別の瞬間にはうねりの状態が逆になるような形状となる。このような理由から、この交番電圧の周期でアクチュエータ部200は屈曲振動することとなる。そして、このとき同時に縦振動用電極230にも交流電圧を印加することができるため、アクチュエータ部200には、屈曲振動と伸縮振動(縦振動)とを同時に発生させることができる。このような振動の組み合わせにより、突起部212の軌跡を楕円状にすることができる。さらにこの楕円状の振動は、印加する交流の周波数、電圧および位相などを選ぶことで、所望の態様を得ることができる。
【0030】
このようなアクチュエータ部200の運動は、突起部212を運動させる。図4に破線で示すように、突起部212は、アクチュエータ部200(振動板210)の動きに伴って、その先端が楕円状の軌跡を描くように振動することができる。そして、この振動によって、ロータ部100の側面は図4の矢印の方向に突き動かされ、ロータ部100が回転軸110の周りに回転する。ロータ部100の回転方向および回転速度は、上述したようにアクチュエータ部200に入力する交流電圧の周波数、電圧および位相などを変化させることで調節することができる。なお、以上の説明は、振動板210よりも上側の電極についてのみ説明したが、下側にも同様の機能を有する部材が設けられており、適宜協働させて上記の動作を行うことができる。
【0031】
3.超音波モータ400の制御構成
図5は、本実施形態の超音波モータ400の制御構成を示す図である。
【0032】
アクチュエータ部200の各電極は、図5に例示するように、駆動回路260および検出制御回路270に電気的に接続されている。図5の例では、駆動回路260がアクチュエータ部200を駆動し、アクチュエータ部200の駆動を検出制御回路270によって検出し、信号を駆動回路260に帰還する構成となっている。本実施形態の駆動構成には、図示しないが、周波数や電圧を記憶する記憶手段を備えることができる。以下このような構成について具体的に説明する。
【0033】
アクチュエータ部200の屈曲振動用電極241〜244および縦振動用電極230は、駆動回路260に接続される。駆動回路260は、アクチュエータ部200を振動させる。駆動回路260には、例えば、電力増幅回路262、発振源264などの回路を含んで構成することができる。駆動回路260は、各電極を別個に駆動する構成を有してもよいし、図のように屈曲振動用電極241〜244と縦振動用電極230とを分けた構成としてもよい。図示の例では、屈曲振動用電極241,244および屈曲振動用電極242,243に印加する電圧の位相を制御するためにインバータ280を含んで構成されている。
【0034】
検出制御回路270は、検出用電極251,252に接続されている。検出制御回路270は、検出用電極251,252に発生した電圧から、アクチュエータ部200の変位や動作を検出する。検出制御回路270は、検出したアクチュエータ部200の状態に応じた信号を駆動回路260に送出する。駆動回路260は、検出制御回路270からの信号に基づいて、アクチュエータ部200の振動動作を制御できるように構成される。
【0035】
4.超音波モータ400の駆動特性
図6は、本実施形態にかかる超音波モータ400を駆動した結果の一例を示す。以下に図6を用いて超音波モータの駆動特性について説明する。
【0036】
図6の縦軸は、検出用電極230に発生する電圧を規格化したものである。横軸は、入力する交流電圧の周波数である。図6のデータは、始めに駆動周波数115kHzで超音波モータ400を始動し、ステップ周波数を100Hzとして段階的に周波数を低下させたときに得られたものである。
【0037】
図6の縦軸のアクチュエータ部200の変位は、検出電極251等に生じた電圧を測定した結果に対応している。図6の縦軸は、上述したように超音波モータ400の回転速度と対応関係がある。すなわち、ここで観測されているアクチュエータ部200の変位が大きいほど、超音波モータ400の回転速度が大きい。図6の横軸は、駆動周波数を表している。図中には、説明の便宜上、実用的な意味の異なる領域を分け、それぞれ範囲1〜範囲3として描いてある。
【0038】
超音波モータ400は、停止した状態で交流電圧を印加する場合、当該交流電圧が一定の周波数以上でないと、始動しないことが分かっている。このような始動可能な周波数の範囲は、個々の超音波モータ400の個体ごとに異なり、環境の温度等にも影響される。図6においては、アクチュエータ部200に範囲3の周波数の交流電圧を印加するとアクチュエータ部200の変位が生じ、超音波モータが始動する。超音波モータ400の始動が範囲3でしか起こらない理由は、アクチュエータ部200がロータ部100に押しつけられているためであると考えられている。したがって、範囲1や範囲2の周波数の交流電圧を、停止しているアクチュエータ部に印加しても超音波モータは始動しない。以下では、この範囲1および範囲2は、超音波モータ400を始動することができない始動不可能範囲と称する。
【0039】
図6中の範囲2の領域では、超音波モータ400は、始動できない。ところが、図6の実験結果から明らかなように、範囲3から徐々に周波数を変化させて範囲2の周波数にすると、アクチュエータ部200の変位は次第に大きくなる。この周波数の変化の態様は、例えば、連続的に周波数を変化させてもよいし、段階的に変化させてもよい。段階的に変化させる場合は、その変化の間隔が大きすぎないようにする。この変化の間隔が大きすぎると、超音波モータ400の回転が停止してしまうことがある。範囲2の周波数では、超音波モータ400を始動はできないが、範囲3の周波数による運転よりも回転速度を高くして運転できることがわかる。
【0040】
一方、範囲2において、周波数が低くなり範囲1との境界に近づくとアクチュエータ部200の変位は、最大となった後に急激に減少する。すなわち、範囲2の周波数での超音波モータ400の駆動は、範囲3のそれと比べて回転速度が大きく効率がよい反面、範囲2から範囲1に周波数が低くなると突然停止してしまうという不安定さを有している。範囲2の周波数においては、超音波モータ400が停止してしまうと、その周波数では始動ができないため、再び始動するためには、範囲3の周波数を印加する必要がある。
【0041】
図6中の範囲1の周波数では、たとえ駆動周波数を高い周波数から徐々に低下させて範囲1の周波数としたとしても、超音波モータ400は回転しない。また、範囲1の周波数の交流電圧を停止している超音波モータ400に印加しても始動することはない。
【0042】
5.超音波モータ400の駆動方法
図7は、超音波モータ400の駆動特性を模式的に示す概略図である。図8ないし図15は、本実施形態の超音波モータ400の駆動方法における処理のフローチャートである。本実施形態の駆動方法を以下に図7ないし図15を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の説明において駆動周波数とは、図5の駆動回路260の発振源264に設定される周波数のことであり、この周波数でアクチュエータ部200が駆動される。一方、第1〜第4周波数、および始動周波数とは、検出制御回路270の内部で保持している周波数値のことであり、これを発振源264にセットすることによってはじめて、アクチュエータが当該周波数の値で駆動されるものとする。
【0043】
本実施形態の超音波モータ400の駆動方法は、検出工程(S1)と、稼働工程(S2)からなる。検出工程は、図8a)に示すように、超音波モータ400の始動周波数検出工程(S10)と、電圧検出工程(S20)からなり、また、稼働工程は図8b)に示すように、超音波モータ400の始動工程(S30)と、駆動工程(S40)からなる。
【0044】
本実施形態の超音波モータ400の駆動方法は、モータが駆動していない状態から実行される。
【0045】
検出工程S1の始動周波数検出工程(S10)は、図9に示すように、まず、アクチュエータ部200の駆動周波数と第1周波数とを初期化する(ステップS11)。それぞれの周波数は、図6における範囲1の周波数領域に属する値を適宜選択して設定される。アクチュエータ部200の駆動を開始し(ステップS12)、駆動周波数を第1周波数に設定する(ステップS13)。アクチュエータ部200の検出用電極251等から電圧を検出して(ステップS14)超音波モータ400が始動したかどうかを判定する(ステップS15)。始動の確認は、ロータ部100に設けた図示せぬエンコーダ等の回転検出手段を用いて行ってもよい。このとき、超音波モータ400が始動していなければ(ステップS15でN)、第1周波数を大きくし(ステップS16)、再度駆動周波数を第1周波数にする(ステップS13)。そして、超音波モータ400が始動していれば(ステップS15でY)、その時の第1周波数を始動周波数として記録し(ステップS17)、超音波モータ400の始動周波数検出工程(S10)は、終了する。始動周波数検出工程(S10)において、超音波モータ400を始動することのできる駆動周波数があらかじめ分かっていれば、すなわち、第1周波数の初期値を、図7の範囲3の周波数に設定できるのであれば、始動したかどうかの判定(ステップS15)および第1周波数を大きくする工程(ステップS16)は省略することができる。図9に示した工程は、超音波モータ400が停止した状態から、超音波モータ400が始動するまで駆動周波数を上げていくことによって、始動不可能範囲を求めることができる。この工程を有すれば、図7の範囲2と範囲3の境界の周波数fstartが未知の場合であっても、始動可能範囲を求めることができ、これに基づき容易に超音波モータ400を始動することができる。また、本工程は、始動不可能範囲を求める工程である。なお、ここでは、範囲2と範囲3の境界の周波数fstartでは、超音波モータ400を始動することができるものとする。
【0046】
次に、始動周波数検出工程(S10)を経て、超音波モータ400が第1周波数で始動した状態で、駆動周波数を下げながら、アクチュエータ部200に生じる電圧を検出する電圧検出工程(S20)を行う。図10に示すように、この工程では第2周波数の初期値を始動周波数検出工程(S10)で求めた始動周波数とし(ステップS21)、アクチュエータの駆動周波数を第2周波数にする(ステップS22)。次に、第2周波数の交流電圧を印加した状態で、検出用電極251の電圧等を参照して(ステップS23)、超音波モータ400が停止したかどうかを判定する(ステップS24)。このとき、超音波モータ400が停止していなければ(ステップS24でN)、第2周波数をより低い値に変更して(ステップS25)、再度アクチュエータの駆動周波数を第2周波数に設定する(ステップS22)。なお、この工程において、超音波モータ400が停止する駆動周波数、検出電圧の最大値およびその時の駆動周波数があらかじめ分かっていれば、停止したかどうかの判定(ステップS24)および第2周波数をより低い周波数に設定する工程(ステップS25)は省略することができる。
【0047】
次に超音波モータ400の停止が検出用電極251の電圧等で検出された場合は(ステップS24でY)、アクチュエータ部200の駆動を停止する(ステップS26)。次いで検出用電極251等に生じる電圧の測定結果に基づいて、アクチュエータ部200に生じた最大電圧を求め、記録する(ステップS27)。このステップは、後述の駆動工程(S40)において、検出電圧による制御を行わない場合には、省略することができる。次に、検出用電極251等に生じる電圧の測定結果に基づいて、アクチュエータ部200に最大電圧が生じた周波数を求め、記録する(ステップS28)。このステップは、後述の駆動工程(S40)において、周波数による制御を行わない場合には、省略することができる。電圧検出工程(S20)が終了すると、超音波モータ400は、停止した状態にある。電圧検出工程(S20)は、図7を用いて説明すれば、範囲3から範囲2を通過して範囲1に入るように周波数を変化させ、その間に検出用電極251等に生じる電圧を測定し、電圧の最大値や最大の電圧を発生させる周波数を求める工程である。
【0048】
次に稼働工程S2について説明する。稼働工程S2では、まず、図11に示すような、始動工程(S30)を行う。本工程では、駆動周波数と第3周波数の初期値を始動周波数検出工程(S10)で求めた始動周波数(第1周波数)とする(ステップS31)。次にアクチュエータ部200の駆動を開始し(ステップS32)、アクチュエータ部200の駆動周波数を、第3周波数にする(ステップS33)。次いで、検出用電極251等の電圧を参照して、超音波モータ400が始動したかどうかを判定する(ステップS34)。このとき、超音波モータ400が始動していなければ(ステップS34でN)、第3周波数をより高い値に変更して(ステップS35)、再度アクチュエータ部200の駆動周波数を、第3周波数に設定する(ステップS33)。そして、超音波モータ400が始動していれば(ステップS34でY)、超音波モータ400を始動する工程(S30)は、終了する。なお、ここでは、上述した始動不可能範囲を求める工程を含んでいるが、これを省略することができる。すなわち、この工程において、超音波モータ400を始動することのできる駆動周波数があらかじめ分かっていれば始動したかどうかを判定するステップ(ステップS34)および第3周波数を高く設定するステップ(ステップS35)は、省略することができる。例えば、予め使用条件を想定した実験等で始動が確認されている周波数をROM等に記録しておき、第3周波数の初期値として使用する事も可能である。
【0049】
始動工程S30に引き続き、駆動工程S40を行う。図12は、駆動工程の例を示す。本工程は超音波モータの実運転動作を行うフローである。まず、駆動周波数と第4周波数とを初期化する(ステップS41)。駆動工程S40は始動工程S30の直後に行われるので、駆動周波数と第4周波数の初期値は、始動工程S30の第3周波数の最終値をそのまま設定すれば良い。また、アクチュエータ部の駆動は始動工程S30で既に開始されている。
【0050】
次に運転周波数範囲を決定する(ステップS42)。運転周波数範囲は、上述の第3周波数よりも低い周波数であって、かつ、電圧検出工程(S20)で求めたアクチュエータ部200に生じる電圧が最大になる周波数よりも高い周波数側の範囲とする。この運転周波数範囲は、図7に説明を付したように、電圧検出工程(S20)で求めたアクチュエータ部200に生じる電圧が最大になる周波数fpeakと、第3周波数f3との間の周波数の範囲である。以下に記述する第4周波数は第3周波数よりも低い周波数となる。
【0051】
ここで、不図示の制御手段から行われる駆動継続の指示をチェックする(ステップS43)。駆動継続であれば(ステップS43でY)アクチュエータの駆動周波数を第4周波数に設定し(ステップS44)、第4周波数が運転周波数範囲内かどうかを判定する(ステップS45)。第4周波数が運転周波数範囲内でなければ(ステップS45でN)、第4周波数を変化させ(ステップS46)、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。第4周波数が運転周波数範囲内であれば(ステップS43でY)、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。ここで、不図示の制御手段から駆動打ち切りの指示があれば(ステップS43でN)アクチュエータの駆動を停止し(ステップS47)、工程は終了する。第4周波数を変化させるステップ(ステップS46)では、第4周波数は、段階的に変化させ、その変化の間隔は、100Hzないし1000Hzとするのが好ましい。
【0052】
このような駆動方法によれば、運転周波数範囲で超音波モータ400を駆動することができる。この範囲で超音波モータ400を駆動すると、始動周波数(第3周波数)(図7のf3)で駆動する場合よりも、アクチュエータ部200に発生する電圧が高い状態となる。すなわち、上記駆動方法によれば、超音波モータ400は、始動周波数で駆動するよりも回転速度を高くすることができる。その上、運転周波数範囲で超音波モータ400を駆動すると、駆動周波数が超音波モータ400の停止してしまう周波数(図7の範囲1)となることが制限される。すなわち、上記駆動方法によれば、超音波モータ400は、突然に停止してしまうことが抑制される。したがって、このような駆動方法によれば、超音波モータ400を効率よく安定に動作させることができる。
【0053】
一方、上記の運転周波数範囲は、次のように設定することもできる。たとえば、運転周波数範囲は、図7に「第2運転周波数範囲」として記したように、超音波モータ400を始動不可能な周波数の範囲であって、かつ、電圧検出工程(S20)で求めたアクチュエータ部200に生じる電圧が最大になる周波数よりも高い周波数側の範囲とすることができる。この第2運転周波数範囲は、図7に符号を付したように、電圧検出工程(S20)で求めたアクチュエータ部200に生じる電圧が最大になる周波数fpeakと、始動不可能範囲の上限である周波数fstartよりも低い周波数の範囲である。なおfstartの周波数では、始動することが可能である。
【0054】
このように第2運転周波数範囲を設定して超音波モータ400を駆動すると、始動可能範囲の周波数(図7の範囲3)で駆動する場合よりも、アクチュエータ部200に発生する電圧が高い状態となる。すなわち、上記駆動方法によれば、超音波モータ400は、始動可能な範囲の周波数で駆動するよりも回転速度を高くすることができる。その上、運転周波数範囲で超音波モータ400を駆動すると、入力周波数駆動周波数が超音波モータ400の停止してしまう周波数(図7の範囲1)となることが制限される。すなわち、上記駆動方法によれば、超音波モータ400は、突然に停止してしまうことが抑制される。したがって、このような駆動方法によれば、超音波モータ400は、効率よく安定に動作させることができる。
【0055】
駆動工程(S40)は、図13ないし図15に示すような変形が可能である。
【0056】
図13は、駆動工程(S40)の変形例フローチャートである。この例では、前述したと同様に、駆動周波数と第4周波数を始動工程S30の第3周波数の最終値で初期化する(ステップS41)し、運転周波数範囲を決定する(ステップS42)。そして、電圧検出工程(S20)のステップS25で求めたアクチュエータ部200から検出される電圧の最大値に、1より小さい係数を乗じてしきい値電圧を求める(ステップS48)。この係数は、超音波モータ400が停止することをより確実に抑制する働きがある。図7には、しきい値電圧Vthrと、電圧検出工程(S20)において、しきい値電圧Vthrが検出された周波数であるしきい値周波数fthrを示した。しきい値周波数fthrは、電圧検出工程(S20)で求めたアクチュエータ部200に生じる電圧が最大になる周波数fpeakよりも高周波数側を選ぶようにする。
【0057】
駆動周波数がfpeakを下回ると超音波モータ400が非常に停止しやすいが、上記の係数を駆動工程(S40)に導入することで、周波数がfpeak未満となってしまうまでの余裕を、駆動周波数を変化させる際に持たせることができる。この係数は、超音波モータ400の特性や用途に応じて設定でき、例えば、0.5ないし0.95とすることができる。
【0058】
図13に示す変形例では、運転周波数範囲を決定(ステップS42)した後、しきい値電圧Vthrを求め(ステップS48)、しきい値電圧Vthrが電圧工程(S20)において検出される際の駆動周波数の値(fthr)を求める(ステップS49)。ここで、不図示の制御手段から行われる駆動継続の指示をチェックする(ステップS43)。駆動継続であれば(ステップS43でY)アクチュエータの駆動周波数を第4周波数に設定し(ステップS44)、第4周波数が運転周波数範囲内かどうかを判定する(ステップS45)。第4周波数が運転周波数範囲内でなければ(ステップS45でN)、第4周波数を変化させ(ステップS46)、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。一方、運転周波数範囲内であった場合は(ステップS45でY)、第4周波数がしきい値電圧を発生する周波数の値よりも大きいかどうかを判定する(ステップS50)。第4周波数がしきい値周波数よりも大きかった場合は(ステップS50でY)、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。第4周波数がしきい値周波数よりも小さかった場合は(ステップS50でN)、第4周波数を変化させ(ステップS46)、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。ここで、不図示の制御手段から駆動打ち切りの指示があれば(ステップS43でN)アクチュエータの駆動を停止し(ステップS47)、工程は終了する。
【0059】
図14は、駆動工程(S40)の他の変形例を示すフローチャートである。本変形例では、前述の例と同様に、駆動周波数と第4周波数を始動工程S30の第3周波数の最終値で初期化する(ステップS41)し、運転周波数範囲を決定する(ステップS42)。そして、電圧検出工程(S20)のステップS25で求めたアクチュエータ部200から検出される電圧の最大値に、1より小さい係数を乗じてしきい値電圧を求める(ステップS48)。ここで、不図示の制御手段から行われる駆動継続の指示をチェックする(ステップS43)。駆動継続であれば(ステップS43でY)アクチュエータの駆動周波数を第4周波数に設定し(ステップS44)、アクチュエータ部200の検出用電極251等から検出電圧を求める(ステップS51)。第4周波数が運転周波数範囲内かどうかを判定し(ステップS45)、運転周波数範囲内であれば(ステップS45のY)、検出電圧がしきい値電圧Vthr以下であるかどうかを判定する(ステップS52)。検出電圧がしきい値電圧以下ならば(ステップS52のY)そのまま駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。第4周波数が運転周波数の範囲外の場合(ステップS45のN)や、検出電圧がしきい値以上であった場合(ステップS52のY)は、第4周波数を変化させた(ステップS46)後、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。ここで、不図示の制御手段から駆動打ち切りの指示があれば(ステップS43でN)アクチュエータの駆動を停止し(ステップS47)、工程は終了する。
【0060】
変形例の駆動方法によれば、しきい値電圧Vthrをアクチュエータ部200に生じる最大電圧Vpeakよりも係数分低く設定することで駆動周波数の変動に余裕を持たせることができる。そのため、運転周波数範囲を第2運転周波数範囲に設定した場合、超音波モータ400を始動可能範囲の周波数(図7の範囲3)で駆動する場合よりも、アクチュエータ部200に発生する電圧が高い状態となる。その上、超音波モータ400の温度や環境の温度が変化して、超音波モータ400の特性が変動しても停止しにくくすることができる。したがって、このような駆動方法によれば、超音波モータ400は、効率よく一層安定に動作させることができる。
【0061】
図15は、駆動工程(S40)の他の変形例を示すフローチャートである。本変形例では、前述したと同様に、駆動周波数と第4周波数を始動工程S30の第3周波数の最終値で初期化する(ステップS41)し、電圧検出工程(S20)のステップS25で求めたアクチュエータ部200から検出される電圧の最大値に、1より小さい係数を乗じてしきい値電圧を求める(ステップS48)。ここで、不図示の制御手段から行われる駆動継続の指示をチェックする(ステップS43)。駆動継続であれば(ステップS43でY)アクチュエータの駆動周波数を第4周波数に設定し(ステップS44)、不図示の制御手段から行われる周波数調整継続の指示をチェックする(ステップS53)。周波数調整継続でなければ(ステップS53でN)、そのまま駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。周波数調整継続であれば(ステップS53でY)、アクチュエータ部200の検出用電極251等から検出電圧を求める(ステップS51)。次に検出電圧としきい値電圧Vthrを比較し(ステップS54)、検出電圧がしきい値電圧より大きければ(ステップS54で検出電圧>しきい値電圧)第4周波数を大きく、検出電圧がしきい値電圧より小さければ(ステップS54で検出電圧<しきい値電圧)第4周波数を小さく、検出電圧としきい値電圧が等しければ(ステップS54で検出電圧=しきい値電圧)第4周波数は変化させないで、駆動継続の指示のチェックに戻る(ステップS43)。ここで、不図示の制御手段から駆動打ち切りの指示があれば(ステップS43でN)アクチュエータの駆動を停止し(ステップS47)、工程は終了する。
【0062】
このフローによれば、駆動周波数を調節するステップによって、駆動周波数は、しきい値周波数fthrに近づいてゆく。周波数調節を継続するかどうかの判断は、たとえば、周波数の目標値をあらかじめ定めて、駆動周波数が目標値に達したかどうかに基づいて行うことができる。また、周波数調節は、常に継続するように設定しておくこともできる。また、人為的に外部から信号を与えて、適宜継続の切替をすることもできる。
【0063】
このような駆動方法によれば、超音波モータ400は、しきい値周波数fthr付近の周波数で駆動され、しかも停止しにくい。すなわち、本変形例では、周波数の調節を継続して行うことができるため、温度変化などの外乱が生じてしきい値周波数fthrが変動しても、これに追従して駆動周波数を調節することができる。かつ、しきい値電圧Vthrをアクチュエータ部200に生じる最大電圧Vpeakよりも係数分低く設定することで、駆動周波数の変動に余裕を持たせることができる。したがって、このような駆動方法によれば、超音波モータ400は、始動可能な範囲の周波数で駆動するよりも回転速度を高く駆動されることができ、かつ、超音波モータ400の温度や環境の温度が変化してもこれに対応して停止しにくく駆動されることができる。
【0064】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態にかかる超音波モータ400を模式的に示す平面図。
【図2】本実施形態にかかる超音波モータ400を模式的に示す断面図。
【図3】アクチュエータ部の動作を模式的に示す平面図。
【図4】超音波モータの動作機構を説明する模式図。
【図5】本実施形態にかかる超音波モータの回路構成の一例を示す模式図。
【図6】本実施形態にかかる超音波モータの動作特性の説明図。
【図7】本実施形態にかかる超音波モータの動作特性の実験結果の一例。
【図8】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図9】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図10】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図11】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図12】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図13】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図14】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【図15】本実施形態にかかる超音波モータの駆動方法の例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0066】
100 ロータ部、110 中心軸、200 アクチュエータ部、210 振動板、
212 突起部、220,222 圧電体層、230,232 縦振動用電極、
241〜244 屈曲振動用電極、251,252 検出用電極、
260 駆動回路、262 電力増幅回路、264 発振源、270 検出制御回路、
280 インバータ、300 アクチュエータ支持部、400 超音波モータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波モータの駆動方法において、
第1周波数の交流電圧をアクチュエータ部に印加して前記超音波モータを始動する工程と、
前記第1周波数から前記超音波モータが停止する第2周波数まで駆動周波数を下げながら、該アクチュエータ部に生じる電圧を検出する電圧検出工程と、
第3周波数で前記超音波モータを始動する始動工程と、
前記駆動周波数を運転周波数範囲内の値となるように、前記第3周波数から低周波数側に変化させる駆動工程と、
を有し、
前記運転周波数範囲は、前記電圧検出工程において最大電圧が検出される際の前記駆動周波数の値よりも高周波数側の範囲である、超音波モータの駆動方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記運転周波数範囲は、始動不可能範囲内である、超音波モータの駆動方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記駆動工程では、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が前記最大電圧に係数を乗じて得られるしきい値電圧以下となるように、前記駆動周波数を変化させる、超音波モータの駆動方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記駆動工程では、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が、前記しきい値電圧より大きい場合は、前記駆動周波数を高周波数側に変化させ、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が、前記しきい値電圧より小さい場合は、前記駆動周波数を低周波数側に変化させる、超音波モータの駆動方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、
前記駆動工程では、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が、前記最大電圧に係数を乗じて得られるしきい値電圧が前記電圧検出工程において検出される際の前記駆動周波数の値以上となるように、該駆動周波数を変化させる、超音波モータの駆動方法。
【請求項6】
請求項3ないし請求項5のいずれかにおいて、
前記係数は、0.5ないし0.95である、超音波モータの駆動方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかにおいて、
前記駆動工程では、
前記駆動周波数を段階的に変化させ、かつ、該駆動周波数の変化の間隔は、100Hzないし1000Hzである、超音波モータの駆動方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかにおいて、
前記超音波モータが停止した状態から、前記超音波モータが始動するまで前記駆動周波数を上げる、始動周波数検出工程を含む、超音波モータの駆動方法。
【請求項1】
超音波モータの駆動方法において、
第1周波数の交流電圧をアクチュエータ部に印加して前記超音波モータを始動する工程と、
前記第1周波数から前記超音波モータが停止する第2周波数まで駆動周波数を下げながら、該アクチュエータ部に生じる電圧を検出する電圧検出工程と、
第3周波数で前記超音波モータを始動する始動工程と、
前記駆動周波数を運転周波数範囲内の値となるように、前記第3周波数から低周波数側に変化させる駆動工程と、
を有し、
前記運転周波数範囲は、前記電圧検出工程において最大電圧が検出される際の前記駆動周波数の値よりも高周波数側の範囲である、超音波モータの駆動方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記運転周波数範囲は、始動不可能範囲内である、超音波モータの駆動方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記駆動工程では、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が前記最大電圧に係数を乗じて得られるしきい値電圧以下となるように、前記駆動周波数を変化させる、超音波モータの駆動方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記駆動工程では、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が、前記しきい値電圧より大きい場合は、前記駆動周波数を高周波数側に変化させ、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が、前記しきい値電圧より小さい場合は、前記駆動周波数を低周波数側に変化させる、超音波モータの駆動方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、
前記駆動工程では、
前記アクチュエータ部から検出される電圧が、前記最大電圧に係数を乗じて得られるしきい値電圧が前記電圧検出工程において検出される際の前記駆動周波数の値以上となるように、該駆動周波数を変化させる、超音波モータの駆動方法。
【請求項6】
請求項3ないし請求項5のいずれかにおいて、
前記係数は、0.5ないし0.95である、超音波モータの駆動方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかにおいて、
前記駆動工程では、
前記駆動周波数を段階的に変化させ、かつ、該駆動周波数の変化の間隔は、100Hzないし1000Hzである、超音波モータの駆動方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかにおいて、
前記超音波モータが停止した状態から、前記超音波モータが始動するまで前記駆動周波数を上げる、始動周波数検出工程を含む、超音波モータの駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−17636(P2009−17636A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174396(P2007−174396)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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