説明

超音波内視鏡

【課題】複数の処置具の突出方向を、同時に、かつ同じ角度で変化させることができ、施術者の負担を軽減して、複雑な処置を効率よく安全に行うことができる超音波内視鏡を提供すること。
【解決手段】本発明の超音波内視鏡は、挿入部可撓管2の先端部に超音波を発受信する超音波プローブ22を有するとともに、挿入部可撓管の内部に、複数の処置具挿通用チャンネル27、28が配設されており、これらの各チャンネル27、28の先端側開口部が、それぞれ各処置具挿通用チャンネル27、28に挿通された複数の処置具11、12が突出する処置具突出口25、26となされている。また、処置具突出口25、26から突出した各処置具11、12を、同時にかつ同じ角度で起上操作する処置具起上手段を有する。この処置具起上手段は、複数の処置具11、12が挿通される複数の挿通用孔411、412を有する処置具起上片41を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療の分野では、消化管等の検査や診断に、内視鏡が使用されている。
このような内視鏡として、管腔内に挿入される挿入部可撓管を有し、この挿入部可撓管の先端部に、被検部に向けて超音波を発信し、かつ、被検部から反射してきた超音波を受信する超音波プローブを有するとともに、挿入部可撓管の内部に、処置具が挿通される処置具挿通用チャンネルを有する超音波内視鏡が知られている。
【0003】
この超音波内視鏡では、管腔内に挿入した超音波プローブを、患部(被検部)付近の粘膜表面に当接させ、超音波を発受信させることによって、患部の像を含む超音波断層像を得る。そして、この超音波断層像を観察しながら、処置具挿通用チャンネルの先端から処置具を突出させ、この処置具の先端が目的の患部に届くように突出方向を調整して処置を行う。
【0004】
ここで、このような処置具の突出方向の調整は、処置具挿通用チャンネルの処置具突出口近傍に、処置具と当接し得るように処置具起上片を設け、この処置具起上片を、施術者が操作レバーを用いて遠隔操作することによって行われる。
【0005】
このような超音波内視鏡では、被検部の断層像が得られるので、光学的内視鏡では観察し難い消化管壁内や臓器の影になっている部位を観察することができ、これらの部位に処置(例えば、胃の影になっているリンパ節の切除等)を行う手段として期待される。
【0006】
ところで、例えば、臓器の陰になっている部位への処置は、鉗子によって臓器を持ち上げながら、適当な処置具によって目的の部位に処置を行うというように、複数の処置具を使用することで、より要領よく行うことができる。
【0007】
そこで、複数の処置具が装着できるように、複数の処置具挿通用チャンネルを設けた超音波内視鏡が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
ここで、このように複数の処置具挿通用チャンネルを有する超音波内視鏡では、起上操作する処置具が複数である場合、各処置具毎に、それぞれ別々の処置具起上片が設けられ、これらが別々の操作レバーで遠隔操作される構成とされる。
【0009】
しかし、このように各処置具毎に別々の処置具起上片が設けられる構成では、複数の処置具の突出方向を同時に同じ方向に変化させるような場合でも、複数の処置具によって患部に処置を行いながら、複数の操作レバーを操作しなければならず、操作が非常に複雑になる。
【0010】
また、複数の操作レバーを、全く同じように操作するのは困難であり、どうしても処置具同士で操作される角度に差が生じ、処置具の先端部同士の距離が変動してしまう。
【0011】
ここで、例えば、鉗子によって臓器を持ち上げながら、この臓器の影になっている部位を切開する処置を、鉗子および電気メスを起上操作しながら行う場合に、鉗子と電気メスの距離が変動してしまうと、臓器が上下動して、切開すべき部位が見え隠れしてしまったり、電気メスによって切開される位置がずれたりするといった不都合が生じる。
【0012】
また、超音波内視鏡に装着される電気メスの構成として、作用電極と対向電極を有し、これら作用電極および対向電極が第1の処置具および第2の処置具として超音波内視鏡に装着される方式のものが考えられる。このような構成の電気メスは、一方の電極を体表面に装着する方式の電気メスに比べて、電極間に高電圧を印加することができ、大きな熱量を得ることができる。
【0013】
しかし、このような電気メスによって、起上操作を行いながら切開を行っている場合に、電極同士の距離が変動してしまうと、電極間に発生する熱量が変動し、切開を安定に行うことができなかったり、電極同士が接触して短絡してしまうことが懸念される。
【0014】
【特許文献1】特開2004−154300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、複数の処置具の突出方向を、同時に、かつ同じ角度で変化させることができ、施術者の負担を軽減して、複雑な処置を効率よく安全に行うことができる超音波内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
(1) 管腔内に挿入される挿入部可撓管と、
該挿入部可撓管の先端部に設けられ、超音波を発受信する超音波プローブと、
前記挿入部可撓管に沿ってその内部に設けられ、前記管腔内の被検部に処置を施す複数の処置具をそれぞれ挿通可能な複数の処置具挿通用チャンネルとを有する超音波内視鏡であって、
前記複数の処置具挿通用チャンネルの先端側開口部から突出する前記複数の処置具の突出方向を、同時に、かつ同じ角度で変化させる処置具起上手段を有することを特徴とする超音波内視鏡。
【0017】
これにより、前記複数の処置具の突出方向を、同時に、かつ同じ角度で変化させることができ、施術者の負担を軽減して、複雑な処置を効率よく安全に行うことができる超音波内視鏡が得られる。
【0018】
(2) 前記処置具起上手段は、前記先端側開口部から突出する前記複数の処置具をそれぞれ挿通可能な複数の挿通部を備えた処置具起上片を有し、
該処置具起上片を回動させることにより、前記先端側開口部から突出する前記複数の処置具の突出方向を変化させるものである上記(1)に記載の超音波内視鏡。
【0019】
これにより、前記複数の処置具の突出方向を、同時に、かつ同じ角度で容易に変化させることができ、また、所望の角度に調整可能となる。
【0020】
(3) 前記複数の挿通部のうちの少なくとも1つは、前記処置具を挿通可能な孔である上記(2)に記載の超音波内視鏡。
【0021】
これにより、前記孔によって前記処置具の突出方向を上下左右の全方向にわたって確実に規制することができるので、前記処置具を目的の位置に確実に到達させることができる。
【0022】
(4) 前記複数の挿通部のうちの少なくとも1つは、前記処置具を挿通可能な溝である上記(2)または(3)に記載の超音波内視鏡。
【0023】
これにより、超音波内視鏡を洗浄した際に、前記溝に洗浄液を効率よく行き渡らせることができるので、前記溝を確実に洗浄することができる。
【0024】
(5) 各前記挿通部は、前記処置具起上片の回動中心からの距離がそれぞれ異なる上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の超音波内視鏡。
【0025】
これにより、前記処置具起上片の回動方向に沿って前記複数の処置具を突出させることができるので、前記複数の処置具を用いて行う処置をより効率よく行うことができる。
【0026】
(6) 前記処置具起上片を遠隔操作する操作レバーと、該操作レバーの動きを前記処置具起上片に伝達するワイヤとを有する上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の超音波内視鏡。
これにより、施術者が、処置具起上片の回動操作を容易かつ確実に行うことができる。
【0027】
(7) 前記複数の処置具挿通用チャンネルから突出する複数の処置具は、いずれも、その軸が、前記超音波プローブの超音波を走査する面内に位置するよう配設されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の超音波内視鏡。
【0028】
これにより、前記複数の処置具を、それぞれ超音波断層像上に確実に表示させることができる。これにより、施術者は、超音波断層像上で、前記複数の処置具の動作の様子を確実に視認することができる。その結果、被検部に対して確実な処置を行うことができる。
【0029】
(8) 前記処置具起上手段は、前記先端側開口部から突出する複数の処置具の突出方向を、前記超音波プローブの超音波を走査する面に沿って変化させるよう構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の超音波内視鏡。
【0030】
これにより、前記複数の処置具の突出方向を変化させる過程を、超音波断層像上において確実に視認することができる。
【0031】
(9) 前記複数の処置具のうちの少なくとも2つは、一対の電極を構成しており、
これら一対の電極間に電圧を印加することにより、該2つの処置具が電気メスとして機能する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の超音波内視鏡。
【0032】
これにより、前記電極間の離間距離が一定に保たれることで前記電極間に発生する熱を一定に保つことができるので、被検部を一定の深さで切開することができるとともに、各前記処置具同士が接触して短絡が発生するのを防止することができる。
【0033】
(10) 前記管腔内を電子内視鏡画像として観察する撮像部品を有する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の超音波内視鏡。
【0034】
これにより、超音波診断像と電子内視鏡画像とを切り替えて表示させることができ、施術者が、管腔内における患部の位置を容易に認識することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、複数の処置具を装着することができるので、これら複数の処置具を使用して、目的の患部(被検部)に対する複雑な処置を要領よく行うことができる。
【0036】
また、処置具突出口から突出された複数の処置具の突出方向を、正確に同じ角度でかつ同時に変化させることができるので、施術者の負担を軽減して効率よく安全に処置を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の超音波内視鏡を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0038】
<第1実施形態>
まず、本発明の超音波内視鏡の第1実施形態について説明する。
【0039】
図1は、本発明の超音波内視鏡の第1実施形態を示す全体図、図2は、図1に示す超音波内視鏡が備える湾曲部の先端部を示す平面図、図3は、図2に示す先端部のV−V線断面図、図4は、図2に示す湾曲部の先端部から突出された処置具が起上操作される様子を示す模式図(縦断面図)、図5は、処置具起上片の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「基端」、下側を「先端」と言い、図3〜図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0040】
図1に示す超音波内視鏡1は、可撓性(柔軟性)を有する長尺物の挿入部可撓管2と、挿入部可撓管2の基端部に接続され、施術者が把持して超音波内視鏡1全体を操作する操作部6と、操作部6に接続された第1の接続部可撓管7と、第1の接続部可撓管7を介して操作部6に接続された光源差込部(接続部)8と、操作部6に接続された第2の接続部可撓管9と、第2の接続部可撓管9を介して操作部6に接続された超音波コネクタ10を有している。
【0041】
挿入部可撓管2は、管腔内に挿入して使用される。図1に示すように、挿入部可撓管2は、手元(基端)側から可撓管部20と、可撓管部20の先端部に設けられ、湾曲可能な湾曲部21とを有している。
【0042】
湾曲部21は、操作部6の側面に設置された操作ノブ61、62の操作によって4方向に湾曲し、その方向を変えることができる。
【0043】
図3、4に示すように、湾曲部21の先端面には、患部(被検部)に向けて超音波を発信するとともに、患部から反射してきた超音波を受信する超音波プローブ22が取り付けられている。
【0044】
この超音波プローブ22は、いわゆる電子コンベックス方式の超音波振動子であって、その形状は、側面視で略円弧状をなしている。そして、この超音波プローブ22が超音波を走査する面(以下、超音波走査範囲と言う。)Uは、前記略円弧状部分の外側に拡がっていて、湾曲部21の軸線に沿う平面内にある。図2中の一点鎖線Aは、前記平面の位置を示している。以下、図2中の一点鎖線Aで示されたこの平面を「平面A」と言う。
【0045】
超音波プローブ22は、挿入部可撓管2内、操作部6内および第2の接続部可撓管9内に連続して配設された超音波信号ケーブル(図示せず)により、超音波コネクタ10に接続されている。
【0046】
この超音波コネクタ10は、図示しない超音波診断装置(周辺機器)の接続部に挿入される。
【0047】
超音波プローブ22から発信され、患部から反射してきた超音波(反射波)は、超音波プローブ22で受信して電気信号に変換され、超音波信号ケーブルと超音波コネクタ10とを介して、超音波診断装置に伝達される。そして、超音波診断装置内で所定の解析がなされ、図示しないモニタ装置等に、患部の超音波断層像が表示される。
【0048】
なお、この超音波プローブ22の周囲には、挿入部可撓管2を管腔内に挿入する前に、患部の部位等に応じて適宜、図3に示すようなバルーン16を装着してもよい。この状態で、挿入部可撓管2を管腔内に挿入するとともに、このバルーン16中に後述するようにして脱気水を供給し、バルーン16を膨張させた状態で観察することにより、特に食道のような脱気水を貯留し難い部位を観察する際に、より鮮明な超音波断層像を得ることができる。
【0049】
湾曲部21の先端部には、送水口(図示せず)および排水口(図示せず)が設けられている。
【0050】
この送水口および排水口には、それぞれ、挿入部可撓管2内、操作部6内、第1の接続部可撓管7内および光源差込部8内に連続して形成された送水チャンネル(図示せず)および排水チャンネル(図示せず)の各先端側の端部が開放している。また、この送水チャンネルおよび排水チャンネルの各基端側の端部は、光源差込部8に設けられた給排水口83において開放している。この給排水口83は、送排水管84を介して脱気水を供給・吸引するタンク17に接続されている。
【0051】
超音波プローブ22にバルーン16が装着された状態で、タンク17から脱気水を供給すると、タンク17から供給される脱気水は、送排水管84および送水チャンネルを通過して、送水口からバルーン16内に供給される。これにより、バルーン16の内面と超音波プローブ22の隙間に脱気水が貯留され、バルーン16が膨張することとなる。一方、バルーン16から脱気水を排出する場合、バルーン16内の脱気水は、排水口、排水チャンネルおよび送排水管84を介してタンク17側に吸引され、これにより、バルーン16が収縮する。
【0052】
また、湾曲部21の先端部には、先端側に向かって傾斜した傾斜面211を有している。
【0053】
図2に示すように、この傾斜面211には、超音波走査範囲Uの方向を電子内視鏡画像として観察するための観察窓23と、その観察範囲を照明するための照明窓24が並設されている。
【0054】
観察窓23の裏面(湾曲部の内側に臨む面)側には、対物光学系(図示せず)が配設されており、この対物光学系による被写体の投影位置に対応して、被写体像を撮影する図示しない撮像素子(撮像部品)が配設されている。
【0055】
この撮像素子は、挿入部可撓管2内、操作部6内および第1の接続部可撓管7内に連続して配設された画像信号ケーブル(図示せず)により、光源差込部8に設けられた画像信号用コネクタ82に接続されている。
【0056】
また、照明窓24の湾曲部21の先端部内側には、挿入部可撓管2内、操作部6内、第1の接続部可撓管7内および光源差込部8内に連続して配設されたライトガイドの先端が配設されている。このライトガイドは、例えば、石英ガラス、多成分ガラス、樹脂材料等により構成される光ファイバーが複数本束ねられて構成されている。
【0057】
光源差込部8の先端部には、ライトガイドに接続された光源用コネクタ81が画像信号用コネクタ82と併設され、光源用コネクタ81および画像信号用コネクタ82を、図示しない光源プロセッサ装置(周辺機器)の接続部に挿入することにより、光源差込部8が光源プロセッサ装置に接続される。この光源プロセッサ装置には、ケーブルを介してモニタ装置(図示せず)が接続されている。
【0058】
光源プロセッサ装置から発せられた光は、光源用コネクタ81およびライトガイドを通り、湾曲部21(挿入部可撓管2)の先端部より観察部位に照射され、管腔内を照明する。
【0059】
前記照明光により照明された観察部位からの反射光(被写体像)は、撮像素子で撮像される。撮像素子では、撮像された被写体像に応じた画像信号が出力される。この画像信号は、画像信号ケーブルを介して光源差込部8に伝達される。
【0060】
そして、光源差込部8内および光源プロセッサ装置内で所定の処理(例えば、信号処理、画像処理等)がなされ、その後、モニタ装置に入力される。モニタ装置では、撮像素子で撮像された光学内視鏡画像(電子画像)、すなわち動画の内視鏡モニタ画像が表示される。
【0061】
このような光源プロセッサ装置、モニタ装置および前述の超音波診断装置等の周辺機器の諸動作(例えば、電子画像の動画と静止画との切り替え、電子画像のファイリングシステムや撮影装置の作動および/または停止、電子画像の記録装置の作動および/または停止等)は、操作部6の周面に設けられた各制御ボタンを押圧操作することにより遠隔操作することができる。
【0062】
また、超音波内視鏡1は、超音波プローブ22と、撮像素子等の撮像部品とを備えているので、管腔内に挿入部可撓管2を挿入した状態で、超音波断層像と電子画像とを切り替えて表示させることができる。これにより、電子画像により管腔内の表面の状態を視認するとともに、超音波断層像により管腔の断面を観察することができる。すなわち、これらの画像を切り替えて表示させることにより、施術者が、管腔内における患部の位置を容易に認識し得る。
【0063】
また、傾斜面211には、凹部212が形成されており、この凹部212内に、第1の処置具突出口25および第2の処置具突出口26が設けられている。
【0064】
第1の処置具突出口25および第2の処置具突出口26には、挿入部可撓管2内にそれぞれ連続して形成された第1の処置具挿通用チャンネル27と第2の処置具挿通用チャンネル28の先端が開放している。
【0065】
また、第1の処置具挿通用チャンネル27および第2の処置具挿通用チャンネル28の各基端側開口部は、それぞれ、挿入部可撓管2の基端部に設けられた第1の処置具挿通用孔29および第2の処置具挿通用孔30と連通している。すなわち、この超音波内視鏡1では、第1の処置具11および第2の処置具12が、第1の処置具挿通用孔29および第2の処置具挿通用孔30からそれぞれ挿入され、第1の処置具挿通用チャンネル27および第2の処置具挿通用チャンネル28に挿通される。そして、各処置具挿通用チャンネル27、28に挿通された第1の処置具11および第2の処置具12は、その先端部が、第1の処置具突出口25および第2の処置具突出口26から平面Aに沿って超音波操作範囲Uに突出される。
【0066】
第1の処置具挿通用チャンネル27および第2の処置具挿通用チャンネル28に挿通される第1の処置具11および第2の処置具12としては、鉗子、鋏鉗子、電気メス、注射・穿刺針、カテーテル等が挙げられる。第1の処置具11および第2の処置具12は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0067】
このように、この超音波内視鏡1では、複数の処置具挿通用チャンネル27、28を有しているので、複数の処置具11、12を同時に装着することができる。したがって、これら複数の処置具11、12を使用して、目的の患部に複数の処置を行ったりするような複雑な処置を、要領よく行うことができる。
【0068】
また、凹部212内には、処置具起上手段4が設けられている。
この処置具起上手段4は、処置具起上片41と、支軸42と、操作ワイヤ43を有している。
【0069】
支軸42は、凹部212内の側面213に、その軸方向が平面Aとほぼ直交するように、かつ、第1の処置具突出口25から第1の処置具11を真っ直ぐに突出させたときに、この突出した第1の処置具11よりも下方となるように取り付けられている。この支軸42としては、金属製のピン等が用いられる。
【0070】
処置具起上片41は、凹部212内に、十分な隙間を持って収容し得る大きさの小片状に形成されている。本実施形態では、この処置具起上片41は、縦断面形状が三角形をなした小片であるが、処置具起上片41の形状はこれに限るものではない。
【0071】
この処置具起上片41は、その一つの側面が、凹部212内の下面214に対向するように配設されている。以下、処置具起上片41において、この下面214側に対向する側面を基準面410と言う。
【0072】
この処置具起上片41には、支軸42が挿通される支軸孔44が、平面Aとほぼ直交するように、かつ、後述する第1の突出部挿通用孔411よりも下方となるように貫通している。処置具起上片41は、この支軸孔44に支軸42が挿通され、支軸42が前述のように凹部212内の側面213に取り付けられることによって、湾曲部21に対して回動可能に支持されている。
【0073】
このような処置具起上片41には、図3に示すように、その基準面410と凹部212内の下面214とが所定の角度θ(θ>0°)をなした状態(以下、「初期状態」と言う。)で、第1の処置具挿通用チャンネル27の軸方向とその延伸方向とが一致するように形成された第1の突出部挿通用孔411と、第2の処置具挿通用チャンネル28の軸方向とその延伸方向とが一致するように形成された第2の突出部挿通用孔412とが、それぞれ処置具起上片41を貫通するように設けられている。
【0074】
処置具起上片41を初期状態として、第1の処置具突出口25から第1の処置具11を突出させると、突出した第1の処置具11の先端部は、第1の突出部挿通用孔411の基端側開口部に挿入されるとともに、先端側開口部から突出する。また、第2の処置具突出口26から第2の処置具12を突出させると、突出した第2の処置具12の先端部は、第2の突出部挿通用孔412の基端側開口部に挿入されるとともに、先端側開口部から突出する。
【0075】
第1の処置具11および第2の処置具12を、それぞれ第1の突出部挿通用孔411および第2の突出部挿通用孔412から突出した状態で、処置具起上片41を回転させることにより、第1の処置具11の突出方向と第2の処置具12の突出方向とを、同時に、かつ同じ角度で容易に変化させることができる。また、処置具起上片41の回動角度に応じて、第1の処置具11の突出方向と第2の処置具12の突出方向とを変化させることができるので、各処置具11、12の突出方向を所望の角度に調整可能であるという利点も有する。
【0076】
また、第1の突出部挿通用孔411から突出させた第1の処置具11と、第2の突出部挿通用孔412から突出させた第2の処置具12とは、いずれも、その軸が図2の平面A内に位置するよう配設されている。これにより、第1の処置具11と第2の処置具12とを、超音波走査範囲Uに含めることができ、これらの各処置具11、12を、それぞれ超音波断層像上に表示させることができる。これにより、施術者は、超音波断層像上で、第1の処置具11と第2の処置具12の動作の様子を確実に視認することができる。その結果、患部に対して確実な処置を行うことができる。
【0077】
さらに、処置具起上片41は、第1の処置具11の突出方向と第2の処置具12の突出方向を、図2の平面Aに沿って変化させるよう構成されている。これにより、各処置具11、12の突出方向を変化させる過程をも、超音波断層像上において確実に視認することができる。
【0078】
なお、これらの第1の突出部挿通用孔411および第2の突出部挿通用孔412は、図3に示すように、処置具起上片41の回動中心となる支軸42からの距離がそれぞれ異なっている。これにより、処置具起上片41の回動方向に沿って各処置具11、12を突出させることができ、2つの処置具11、12を用いて行う処置をより効率よく行うことができる。
【0079】
また、超音波内視鏡1は、第1の処置具11の突出方向と第2の処置具12の突出方向をそれぞれ処置具起上片41により変化させる際に、両処置具11、12の先端部の位置がずれないように、両処置具11、12のうちの少なくとも一方を引っ張ったり繰り出したりする処置具進退機構を備えていてもよい。これにより、両処置具11、12の先端部の位置が常時揃った状態となるので、複数の処置具11、12を用いた複雑な処置をより効率よく行うことができる。
【0080】
このような第1の突出部挿通用孔411および第2の突出部挿通用孔412の断面形状は、例えば、長方形、正方形、菱形等の四角形、三角形、六角形、八角形、円形、楕円形等のいかなるものであってもよいが、各処置具11、12の断面形状と相似形であって、処置具11、12の断面積よりもわずかに広い断面積であるのが好ましい。これにより、処置具11、12を、突出部挿通用孔411、412に容易かつ安定に挿通させることができる。
【0081】
また、この処置具起上片41には、支軸42より先端側の部分に、湾曲部21の軸方向に進退する操作ワイヤ43が連結されている。処置具起上片41は、この操作ワイヤ43が操作されることによって、支軸42を中心に回動する。操作ワイヤ43の操作は、操作部6の周面に設けられ、操作ワイヤ43を牽引する操作レバー(図示せず)を回転操作することにより行われる。すなわち、操作レバーの動きを操作ワイヤ43を介して処置具起上片41に伝達することにより、処置具起上片41を遠隔操作することができる。これにより、施術者が、処置具起上片41の回動操作を容易かつ確実に行うことができる。
【0082】
以上のような処置具起上手段4によって、第1の処置具11および第2の処置具12が起上操作される様子を、図3および図4を参照しながら説明する。なお、図4中、点線で示す第1の処置具11および第2の処置具12は、処置具起上手段4によって起上操作される前の状態であり、実線で示す第1の処置具11および第2の処置具12は、処置具起上手段4によって起上操作された後の状態である。
【0083】
まず、操作レバーを操作することによって、図3に示すように、処置具起上片41を初期状態とする。
【0084】
そして、第1の処置具11を、第1の処置具挿通用孔29から挿入し、第1の処置具挿通用チャンネル27を挿通させ、第1の処置具突出口25から突出させる。第1の処置具突出口25から突出された第1の処置具11は、処置具起上片41の第1の突出部挿通用孔411に進入する。そして、図4の点線で示すように、第1の処置具11の先端部が、この第1の突出部挿通用孔411の先端側から突出する。
【0085】
また、第2の処置具12を、第2の処置具挿通用孔30から挿入し、第2の処置具挿通用チャンネル28を挿通させ、第2の処置具突出口26から突出させる。第2の処置具突出口26から突出された第2の処置具12は、処置具起上片41の第2の突出部挿通用孔412に進入する。そして、図4の点線で示すように、第2の処置具12の先端部が、この第2の突出部挿通用孔412の先端側から突出する。
【0086】
このようにして第1の処置具11および第2の処置具12を、それぞれ、処置具起上片41の各突出部挿通用孔411、412に挿通させた状態で、操作ワイヤ43を退行方向に操作する。これにより、処置具起上片41は右回りに回動する。その結果、第1の処置具11は、第1の突出部挿通用孔411の内壁面に押圧されて上方に屈曲するとともに、第2の処置具12は、第2の突出部挿通用孔412の内壁面に押圧されて上方に屈曲し、各処置具11、12は、それぞれ平面Aに沿って、図4中の点線で示す位置から実線で示す位置に移動することとなる。
【0087】
次に、操作ワイヤ43を進行方向に操作すると、処置具起上片41は左回りに回動する。これにより、第1の処置具11および第2の処置具が平面Aに沿って下降し、それぞれ、図4中の実線で示す位置から点線で示す位置に移動する。
【0088】
このように処置具起上片41を回動操作することによって、第1の処置具11および第2の処置具12の突出方向を、平面Aに沿って任意に変化させることができる。
【0089】
ここで、本実施形態では、1つの処置具起上片41によって、第1の処置具突出口25から突出された第1の処置具11および第2の処置具突出口26から突出された第2の処置具12が、それぞれ同時に起上操作されるので、第1の処置具11と第2の処置具12の突出方向を同時に同じ角度で変化させることができる。したがって、第1の処置具11と第2の処置具12との先端部同士の離間距離を、操作の過程で、正確に一定に保つことができる。
【0090】
このため、例えば、鉗子によって臓器を持ち上げ、この臓器の影になっている部位を切開するような複雑な処置を、鉗子(第1の処置具11)および電気メス(第2の処置具12)を処置具起上片41により起上操作しながら行う場合には、起上操作の過程で、切開すべき部位が臓器によって見え隠れしてしまったり、電気メスによって切開される位置がずれたりといった不具合の発生が防止され、所定の位置を確実に切開することができる。
【0091】
また、例えば、第1の処置具11および第2の処置具12として装着される作用電極および対向電極によって構成された電気メスを起上操作しながら、患部を切開している場合には、起上操作の過程で、電極間に発生する熱を一定に保つことができるので、患部を一定の深さで切開することができるとともに、各処置具11、12同士が接触して短絡が発生するのを防止することができる。
【0092】
また、この処置具起上片41は、1つの操作レバーを操作することによって同時に回動操作することができ、これにより、複数の処置具11、12を起上操作するので、単純なレバー操作で、複数の処置具11、12の突出方向を変化させることができ、施術者の手技を簡易化して効率よく安全に処置を行うことができる。
【0093】
次に、超音波内視鏡1の使用方法(作用)について、図4を参照しながら説明する。ここでは、第1の処置具11および第2の処置具12として装着される作用電極および対向電極によって構成された電気メスによって、図4に示す位置aから位置bに至る部分を切開する場合を例に説明する。
【0094】
まず、必要に応じて、超音波プローブ22に、ゴム製バルーン16を被せる。そして、バルーン16の口元を、Oリングにより超音波プローブ22の基端部に固定する。
【0095】
また、操作レバーを操作することによって、処置具起上片41を図3に示す初期状態にしておく。
【0096】
次に、光源プロセッサ装置に接続されたモニタ装置の画像を確認しつつ、挿入部可撓管2を管腔内に挿入し、超音波プローブ22を粘膜100の表面に接近させる。
【0097】
次いで、バルーン16を取り付けた場合は、バルーン16内に脱気水を供給する操作を行う。これにより、湾曲部21の送水口から、バルーン16の内面と超音波プローブ22の隙間に脱気水が供給され、バルーン16が膨張する。この状態で、バルーン16の外面(または、超音波プローブ22の外面)を粘膜100の表面に接触させ、超音波プローブ22から超音波を発受信させ、超音波診断装置の画面に超音波断層像を表示させる。
【0098】
次に、第1の処置具挿通用チャンネル27および第2の処置具挿通用チャンネル28に、それぞれ作用電極(第1の処置具)11および対向電極(第2の処置具)12を挿通し、超音波診断装置の超音波断層像を確認しつつ、作用電極11および対向電極12を第1の処置具突出口25および第2の処置具突出口26から突出させる。そして、第1の処置具突出口25および第2の処置具突出口26から突出された作用電極11および対向電極12を、それぞれ、処置具起上片41の第1の突出部挿通用孔411および第2の突出部挿通用孔412に挿入するとともに、その先端を患部101の位置aに導く。
【0099】
そして、これら作用電極11と対向電極12との間に所定の電圧を印加することによって熱を発生させ、患部101の切開を開始する。それとともに操作レバーを操作することによって、処置具起上片41を、右回りに回動させ、作用電極11および対向電極12を、患部101の位置bに到達するまで、平面Aに沿って起上させる。
【0100】
続いて、作用電極11と対向電極12との間に電圧を印加しつつ、処置具起上片41よりこれらの電極11、12を起上操作すると、電極間に発生した熱によって操作された部分が焼き切られ、患部101の位置aから位置bに至る部分が切開される。
【0101】
ここで、この実施形態では、同一の処置具起上片41によって、作用電極11および対向電極12が同時に起上操作されるので、この操作の過程で、各電極11、12同士の離間距離が一定に保たれる。したがって、領域aから領域bに至る部分に均一な熱量を加えることができ、均一な深さで切開を行うことができる。
【0102】
また、この処置具起上片41は、1つの操作レバーを操作することによって回動操作することができ、これにより、複数の処置具11、12を起上操作するので、単純なレバー操作で、複数の処置具11、12の突出方向を変化させることができ、施術者の手技を簡易化して効率よく安全に処置を行うことができる。
【0103】
また、図5に示す処置具起上片41は、ブロック状の部材に、第1の突出部挿通用孔411および第2の突出部挿通用孔412が形成されてなる。かかる各突出部挿通用孔411、412に、それぞれ各処置具11、12を挿通すると、各処置具11、12の突出方向を上下左右の全方向にわたって確実に規制することができるので、各処置具11、12を目的の位置に確実に到達させるとともに、その位置で確実に保持することができる。
【0104】
さらに、図5に示す処置具起上片41は、ブロック状の部材に2つの孔部が設けられただけの比較的単純な形状をなしていることから、製造が容易であるという利点もある。
【0105】
<第2実施形態>
次に、本発明の超音波内視鏡の第2実施形態について説明する。
【0106】
図6は、第2実施形態の超音波内視鏡が備える処置具起上片を示す縦断面図である。以下、図6中、上側を「上」、下側を「下」として説明する。
【0107】
以下、第2実施形態の超音波内視鏡1について説明するが、前記第1実施形態の超音波内視鏡1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0108】
第2実施形態の超音波内視鏡1では、処置具起上片41の構成が異なること以外は、前記第1実施形態の超音波内視鏡と同様である。
【0109】
図6に示す処置具起上片41は、凹部212内に、十分な隙間を持って収容し得る大きさの小片状をなしている。
【0110】
この処置具起上片41は、第1の溝形成部413と、第2の溝形成部414と、これら溝形成部413、414の一方の側部と一体に形成され、これら各溝形成部413、414を上下に連結する連結部415とを有している。
【0111】
図6に示す第1の溝形成部413および第2の溝形成部414は、それぞれ、その上面に、第1の突出部挿通用溝416および第2の突出部挿通用溝417を有している。この第1の突出部挿通用溝416および第2の突出部挿通用溝417は、それぞれ、挿入部可撓管2の軸線に直交する方向における断面形状が略V字形状をなしている溝である。
【0112】
また、第1の溝形成部413における第1の突出部挿通用溝416と反対側の面は、凹部212内の下面214と対向するように配設されている。以下、処置具起上片41において、この下面214と対向する面を基準面410と言う。
【0113】
この処置具起上片41の第1の溝形成部413には、支軸42が挿通される支軸孔44(図3参照)が、平面Aとほぼ直交するように設けられている。この支軸孔44に支軸42が挿通され、支軸42が前述のように凹部212内の側面213に取り付けられることによって、処置具起上片41が湾曲部21に対して回動可能に支持される。
【0114】
また、第1の溝形成部413に形成された第1の突出部挿通用溝416は、基準面410と凹部212内の下面214とが所定の角度θ(θ>0°)をなした状態(以下、「初期状態」と言う。)で、第1の処置具挿通用チャンネル27の軸方向とその延伸方向とが一致するようになっている。
【0115】
また、第2の溝形成部414に形成された第2の突出部挿通用溝417は、基準面410と凹部212内の下面214とが所定の角度θ(θ>0°)をなした状態(初期状態)で、第2の処置具挿通用チャンネル28の軸方向とその延伸方向とが一致するようになっている。
【0116】
処置具起上片41を初期状態として、第1の処置具突出口25から第1の処置具11を突出させると、突出した第1の処置具11の先端部は、第1の突出部挿通用溝416の基端側端部から挿入されるとともに、この挿通用溝416に挿通され、先端側端部から突出する。また、第2の処置具突出口26から第2の処置具12を突出させると、突出した第2の処置具12の先端部は、第2の突出部挿通用溝417の基端側端部から挿入されるとともに、この挿通用溝417に挿通され、先端側端部から突出する。
【0117】
この第1の突出部挿通用溝416および第2の突出部挿通用溝417の断面形状は、例えば、長方形、正方形、菱形等の四角形、三角形、六角形、八角形、半円形、半楕円形等のいかなるものであってもよいが、各処置具11、12と接する部分の断面形状が、この部分に収容される各処置具11、12の断面形状の相似形であって、その断面積よりもわずかに広い断面積であるのが好ましい。これにより、各処置具11、12を、突出部挿通用溝416、417に容易かつ安定に挿通させることができる。
【0118】
また、この処置具起上片41には、支軸42より先端側の部分に、湾曲部21の軸方向に進退する操作ワイヤ43が連結されている。処置具起上片41は、この操作ワイヤ43を操作することによって、支軸42を中心に回動する。操作ワイヤ43の操作は、操作部6の周面に設けられ、操作ワイヤ43を牽引する操作レバーを回転操作することにより、遠隔操作することができる。
【0119】
この処置具起上手段4による第1の処置具11および第2の処置具12の起上操作は、第1の突出部挿通用孔411および第2の突出部挿通用孔412の代わりに、第1の突出部挿通用溝416および第2の突出部挿通用溝417内に第1の処置具11および第2の処置具12が挿通されること以外は、前記第1実施形態と同様に行われる。
【0120】
また、この第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0121】
また、図6に示す処置具起上片41は、第1の突出部挿通用溝416および第2の突出部挿通用溝417が形成されてなる。かかる各突出部挿通用溝416、417は、前記第1実施形態の各突出部挿通用孔411、412に比べてその周囲が開放されている。このため、超音波内視鏡1を洗浄する際に、洗浄液を各突出部挿通用溝416、417に効率よく行き渡らせることができ、確実に洗浄を行うことができる。
【0122】
また、各突出部挿通用溝416、417は、多様な形状および太さの各処置具11、12を挿通することができるので、各処置具11、12の種類や寸法等の選択の幅を拡大することができる。
【0123】
<第3実施形態>
次に、本発明の超音波内視鏡の第3実施形態について説明する。
【0124】
図7は、第3実施形態の超音波内視鏡が備える処置具起上片を示す縦断面図である。以下、図7中、上側を「上」、下側を「下」として説明する。
【0125】
以下、第3実施形態の超音波内視鏡1について説明するが、前記第1実施形態の超音波内視鏡1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0126】
第3実施形態の超音波内視鏡1では、処置具起上片41の構成が異なること以外は、前記第1実施形態の超音波内視鏡1と同様である。
【0127】
図7に示す処置具起上片41は、凹部212内に、十分な隙間を持って収容し得る大きさの小片状をなしている。
【0128】
この処置具起上片41は、1つの側面213が凹部212内の下面214と対向するように配設されている。以下、処置具起上片41において、この凹部212内の下面214と対向する面を基準面410と言う。
【0129】
この処置具起上片41には、支軸42が挿通される支軸孔44(図3参照)が、平面Aとほぼ直交するように、かつ、後述する第1の突出部挿通用孔418よりも下方となるように設けられている。処置具起上片41は、この支軸孔44に支軸42が挿通され、支軸42が前述のように凹部212内の側面213に取り付けられることによって、湾曲部21に回動可能に支持される。
【0130】
また、処置具起上片41には、その基準面410と凹部212内の下面214とが所定の角度θ(θ>0°)をなした状態(以下、「初期状態」と言う。)で、第1の処置具挿通用チャンネル27の軸方向とその延伸方向とが一致するように第1の突出部挿通用孔418が形成されている。
【0131】
また、処置具起上片41の基準面410と反対側の面(上面)には、第2の処置具挿通用チャンネル28の軸方向とその延在方向とが一致するように第2の突出部挿通用溝419が形成されている。
【0132】
処置具起上片41を初期状態として、第1の処置具突出口25から第1の処置具11を突出させると、突出した第1の処置具11の先端部は、第1の突出部挿通用孔418の基端側開口部に挿入されるとともに、先端側開口部から突出する。また、第2の処置具突出口26から第2の処置具12を突出させると、突出した第2の処置具12の先端部は、第2の突出部挿通用溝419の基端側端部から挿入されるとともに、この挿通用溝419に挿通され、先端側端部から突出する。
【0133】
この第1の突出部挿通用孔418の断面形状は、例えば、長方形、正方形、菱形等の四角形、三角形、六角形、八角形、円形、楕円形等のいかなるものであってもよいが、第1の処置具11の断面形状と相似形であって、第1の処置具11の断面積よりもわずかに広い断面積であるのが好ましい。これにより、第1の処置具11を、突出部挿通用孔418に容易かつ安定に挿通させることができる。
【0134】
また、第2の突出部挿通用溝419の断面形状も、例えば、長方形、正方形、菱形等の四角形、三角形、六角形、八角形、円形、楕円形等のいかなるものであってもよいが、処置具11、12と接する部分の断面形状が、この部分に収容される処置具の断面形状の相似形であって、その断面積よりもわずかに広い断面積であるのが好ましい。これにより、第2の処置具12を、第2の突出部挿通用溝419に容易かつ安定に挿通させることができる。
【0135】
また、この処置具起上片41には、支軸42より先端側の部分に、湾曲部21の軸方向に進退する操作ワイヤ43が連結されている。処置具起上片41は、この操作ワイヤ43を操作することによって、支軸42を中心に回動する。操作ワイヤ43の操作は、操作部6の周面に設けられ、操作ワイヤ43を牽引する操作レバーを回転操作することにより、遠隔操作することができる。
【0136】
この処置具起上手段4による第1の処置具11および第2の処置具12の起上操作は、第1の突出部挿通用孔411および第2の突出部挿通用孔412の代わりに、第1の突出部挿通用孔418および第2の突出部挿通用溝419内に第1の処置具11および第2の処置具12が挿通されること以外は、前記第1実施形態と同様に行われる。
【0137】
また、この第3実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0138】
また、第3実施形態の超音波内視鏡1は、前記第1実施形態と前記第2実施形態とを組み合わせた構成とされているので、両実施形態の効果を奏するものとなる。
【0139】
以上、本発明の超音波内視鏡を図示の各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、同様の機能を発揮する任意の構成のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
【0140】
例えば、前記実施形態では、2つの処置具挿通用チャンネルを配設しているが、処置具挿通用チャンネルは3つ以上配設されていてもよい。
【0141】
また、処置具起上片には、2つの挿通部(挿通用孔または挿通用溝)が設けられているが、挿通部を3つ以上設けるようにしてもよい。
【0142】
また、本実施形態の超音波内視鏡は、管腔内を、電子画像として観察するように構成されているが、光学画像として観察するように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の超音波内視鏡の第1実施形態を示す全体図である。
【図2】図1に示す超音波内視鏡が備える湾曲部の先端部を示す平面図である。
【図3】図2に示す先端部のV−V線断面図である。
【図4】図2に示す湾曲部の先端部から突出された処置具が起上操作される様子を示す模式図(縦断面図)である。
【図5】図1に示す超音波内視鏡が備える処置具起上片の一例を示す縦断面図である。
【図6】第2実施形態の超音波内視鏡が備える処置具起上片を示す縦断面図である。
【図7】第3実施形態の超音波内視鏡が備える処置具起上片を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0144】
1 超音波内視鏡
2 挿入部可撓管
20 可撓管部
21 湾曲部
211 傾斜面
212 凹部
213 側面
214 下面
22 超音波プローブ
23 観察窓
24 照明窓
25 第1の処置具突出口
26 第2の処置具突出口
27 第1の処置具挿通用チャンネル
28 第2の処置具挿通用チャンネル
29 第1の処置具挿通用孔
30 第2の処置具挿通用孔
4 処置具起上手段
41 処置具起上片
410 基準面
411 第1の突出部挿通用孔
412 第2の突出部挿通用孔
413 第1の溝形成部
414 第2の溝形成部
415 連結部
416 第1の突出部挿通用溝
417 第2の突出部挿通用溝
418 第1の突出部挿通用孔
419 第2の突出部挿通用溝
42 支軸
43 操作ワイヤ
44 支軸孔
6 操作部
61、62 操作ノブ
7 第1の接続部可撓管
8 光源差込部
81 光源用コネクタ
82 画像信号用コネクタ
83 給排水口
84 送排水管
9 第2の接続部可撓管
10 超音波コネクタ
11 第1の処置具
12 第2の処置具
16 バルーン
17 タンク
100 粘膜
101 患部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔内に挿入される挿入部可撓管と、
該挿入部可撓管の先端部に設けられ、超音波を発受信する超音波プローブと、
前記挿入部可撓管に沿ってその内部に設けられ、前記管腔内の被検部に処置を施す複数の処置具をそれぞれ挿通可能な複数の処置具挿通用チャンネルとを有する超音波内視鏡であって、
前記複数の処置具挿通用チャンネルの先端側開口部から突出する前記複数の処置具の突出方向を、同時に、かつ同じ角度で変化させる処置具起上手段を有することを特徴とする超音波内視鏡。
【請求項2】
前記処置具起上手段は、前記先端側開口部から突出する前記複数の処置具をそれぞれ挿通可能な複数の挿通部を備えた処置具起上片を有し、
該処置具起上片を回動させることにより、前記先端側開口部から突出する前記複数の処置具の突出方向を変化させるものである請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項3】
前記複数の挿通部のうちの少なくとも1つは、前記処置具を挿通可能な孔である請求項2に記載の超音波内視鏡。
【請求項4】
前記複数の挿通部のうちの少なくとも1つは、前記処置具を挿通可能な溝である請求項2または3に記載の超音波内視鏡。
【請求項5】
各前記挿通部は、前記処置具起上片の回動中心からの距離がそれぞれ異なる請求項2ないし4のいずれかに記載の超音波内視鏡。
【請求項6】
前記処置具起上片を遠隔操作する操作レバーと、該操作レバーの動きを前記処置具起上片に伝達するワイヤとを有する請求項2ないし5のいずれかに記載の超音波内視鏡。
【請求項7】
前記複数の処置具挿通用チャンネルから突出する複数の処置具は、いずれも、その軸が、前記超音波プローブの超音波を走査する面内に位置するよう配設されている請求項1ないし6のいずれかに記載の超音波内視鏡。
【請求項8】
前記処置具起上手段は、前記先端側開口部から突出する複数の処置具の突出方向を、前記超音波プローブの超音波を走査する面に沿って変化させるよう構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の超音波内視鏡。
【請求項9】
前記複数の処置具のうちの少なくとも2つは、一対の電極を構成しており、
これら一対の電極間に電圧を印加することにより、該2つの処置具が電気メスとして機能する請求項1ないし8のいずれかに記載の超音波内視鏡。
【請求項10】
前記管腔内を電子内視鏡画像として観察する撮像部品を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の超音波内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−43616(P2008−43616A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223660(P2006−223660)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】