説明

超音波容積測定データセットの運動補正のための方法およびシステム

【課題】容積測定データセット内の運動アーチファクトを補正する。
【解決手段】この方法(1200)は、物体(312)に関する空間および時間情報を含む容積測定データセットを得る(1202)ことを含む。この容積測定データセットは、少なくとも2つの隣接するデータスライス(502、504、602、604、626)が物体(312)内の異なる時点の共通の物理的なスライス(304)を表すようにデータスライス(502、504、602、604、626)に編成される(1204)。容積測定データセットのスライスに対して、隣接するデータスライス(502、504、602、604、626)間の相対運動が決定され(1206)、この相対運動を使用して、前記隣接するスライス(502、504、602、604、626)間の相対運動が補正される(1220)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は診断用超音波の運動補正(motion correction)に関する。特に本発明は、超音波データを取得し処理して、超音波画像の運動アーチファクトを低減させるための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
知られている少なくともいくつかの超音波システムは、所与の標的の複数の超音波画像を空間的に合成して合成画像にする能力を有する。全体を通じて使用される用語「合成する」は、それぞれが1つの画像フレームを定義する複数のデータセットを非コヒーレントに(non−coherently)組み合わせて新しい単一のデータセットを生み出すことを意味する。これらのデータセットは異なる位置で得られたものであってもよく、かつ/またはそれぞれ異なる時刻に得られたものであってもよい。合成画像標的内のそれぞれの点からの対応するデータを組み合わせることによって、これらのデータセットまたはフレームは組み合わせられて単一の合成画像を生成する。リアルタイム空間合成画像化は、実質的に独立した位置から部分的に重なり合う一連の構成画像フレームを取得することによって実行することができる。位置の変化を推定し、推定された変化を補正し、続いて加算、平均化、ピーク検出または他の組合せ手段により組み合わせることによって、これらの構成フレームは合成画像に組み合わせられる。合成された画像はより幅の広い視野を示す可能性がある。
【0003】
リアルタイム空間合成画像化では、それぞれの新しい合成画像フレームを生み出すためにいくつかの画像フレームが必要である。合成画像を構築する際に使用される最初のフレームの取得とこの合成画像で使用される最後のフレームの取得との間には時間差が存在する。これらのフレーム取得間の時間差のため、かなりの画像ミスレジストレーション(misregistration)が存在する可能性がある。合成画像を構築するために多数の画像フレームが使用される場合には、この画像ミスレジストレーションによって合成画像のぼけ(blurring)が生じる可能性がある。画像を構築するために相対的に少ない数の画像フレームが使用される場合には、相対的にぼけが小さくなる可能性がある。多数の画像フレームを取得することが一般に望ましいが、この多数の画像フレームは取得により長い時間を必要とし、その間に、望ましくないレベルまでぼけが増す可能性がある。
【0004】
あるタイプの画像標的の運動、例えば鼓動している心臓の運動は重要である。しかし望ましくない運動も存在する。望ましくない運動の原因の例は、スキャン中の患者の呼吸、画像標的の望まれていない運動を引き起こす患者の体内の胎児の運動、および操作者による超音波スキャナの望ましくない運動である。
【特許文献1】米国特許第6527717号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
容積測定(volumetric)データセットの運動補正のための改良された方法およびシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、容積測定データセット内の運動アーチファクトを補正するための方法が提供される。この方法は、物体に関する空間および時間情報を含む容積測定データセットを得ることを含む。この容積測定データセットは、少なくとも2つの隣接するデータスライスが物体内の異なる時点の共通の物理的なスライスを表すようにデータスライスに編成される。容積測定データセットのスライスに対して、隣接するデータスライス間の相対運動が決定され、この相対運動を使用して、隣接するスライスの相対位置が補正される。
【0007】
他の実施形態では、容積測定データセット内の運動アーチファクトを補正する超音波システムが提供される。このシステムは、物体に関する空間および時間情報を含む容積測定データセットを記憶するためのメモリを含む。この容積測定データセットは、それによって少なくとも2つの隣接するデータスライスが物体内の異なる時点の共通の物理的なスライスを表すデータスライスに編成される。容積測定データセット内の隣接するデータスライス間の相対運動を決定するために処理ユニットが含まれる。処理ユニットは、隣接する第1および第2のスライス間の相対運動を補正する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に従って形成された超音波システム100のブロック図である。超音波システム100は、アレイトランスデューサ106の中の複数のトランスデューサ要素104を駆動して、パルス超音波信号を体内に発射させる送信器102を含む。さまざまな幾何学的配置を使用することができる。発射された超音波信号は、血球、筋肉組織のような体内の密度界面および/または構造から後方散乱されて、トランスデューサ要素104に戻るエコーを生み出す。受信器108はこのエコーを受け取る。受け取られたエコーはビーム成形器110に通され、ビーム成形器110はビーム成形を実行しRF信号を出力する。このRF信号は次いでRFプロセッサ112を通過する。あるいはRFプロセッサ112は、このRF信号を復調してエコー信号を表すIQデータ対を形成する複雑な復調器(図示せず)を含む。次いでこのRFまたはIQ信号データを、一時記憶用のRF/IQバッファ114に直接に送ることができる。
【0009】
超音波システム100はさらに、取得された超音波情報(すなわちRF信号データまたはIQデータ対)を処理し、表示システム118に表示するための超音波情報フレームを準備する信号プロセッサ116を含む。信号プロセッサ116は、選択可能な複数の超音波様式(modality)に基づく1つまたは複数の処理操作を、取得された超音波情報に対して実行するように適合されている。この例示的な実施形態では、スキャニングセッションの間、エコー信号が受け取られたときに、取得された超音波情報がリアルタイムで処理される。代替実施形態では、スキャニングセッションの間、超音波情報がRF/IQバッファ114に一時的に記憶され、この超音波情報が、リアルタイムとは言えないライブまたはオフライン操作で処理される。
【0010】
超音波システム100は、ほぼヒトの眼の認知速度である毎秒50フレームを超えるフレームレートで超音波情報を連続的に取得することができる。取得された超音波情報は、より遅いフレームレートで表示システム118上に表示することもできる。すぐに表示する予定のない取得された超音波情報の処理されたフレームを記憶するために画像バッファ122が含まれる。この例示的な実施形態では、画像バッファ122が、少なくとも数秒分の超音波情報フレームを記憶するのに十分な容量を有するバッファである。これらの超音波情報フレームは、その取得順序または取得時刻に従って容易に取り出せる方法で記憶される。画像バッファ122は、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の周知のデータ記憶媒体などの少なくとも1つのメモリデバイスを含むことができる。ただしこれらに限定されるわけではない。
【0011】
図2は、本発明の一実施形態に従って形成された超音波システム200を示す。システム200は、送信器204および受信器206に接続されたプローブ202を含む。プローブ202は超音波パルスを送り、スキャンされた超音波容積208の内側の構造からエコーを受け取る。メモリ212は、スキャンされた超音波容積208に由来する受信器206からの超音波データを記憶する。容積208は、さまざまな技法によって得ることができる(例えば3Dスキャニング、リアルタイム3D画像化、容積スキャニング、位置決めセンサを有するトランスデューサを用いた2Dスキャニング、ボクセル(Voxel)相関技法を使用したフリーハンドスキャニング、2Dまたはマトリックスアレイトランスデューサなど)。
【0012】
直線経路、円弧状経路などに沿ってプローブ202を動かし、その間に関心領域(region of interest:ROI)をスキャンする。それぞれの直線または円弧位置で、プローブ202はスキャン平面210を得る。スキャン平面210はメモリ212に記憶され、次いで空間/時間画像相関(spatial and temporal image correlation:STIC)解析器/変換器214に渡される。いくつかの実施形態では、プローブ202がスキャン平面210の代わりにラインを取得し、メモリ212は、スキャン平面210ではなしに、プローブ202によって得られたラインを記憶する。データ出力は、メモリ212から、運動推定器/補正器216を通してSTIC解析器/変換器214に渡される。STIC解析器/変換器214は容積メモリ218にデータを記憶し、このデータは、容積表示プロセッサ220によってアクセスされる。容積表示プロセッサ220は、容積レンダリングおよび/または他の画像処理技法をデータに対して実行する。容積表示プロセッサ220の出力はビデオプロセッサ222に渡され、ビデオプロセッサ222から表示装置224に渡される。
【0013】
それぞれのエコー信号サンプル(ボクセル)の位置は、幾何学的な正確さ(すなわち1つのボクセルから次のボクセルまでの距離)、超音波応答、および超音波応答から得られた値に関して定義することができる。適当な超音波応答には例えばBモード、グレースケール値、カラーフロー値、および血管ドップラー(angio−Doppler)またはパワードップラー情報が含まれる。
【0014】
図3において、アレイトランスデューサ106(図1)は、物体312を含む容積300をゆっくりと、例えば7から15秒以内に物体312の容積測定スイープ(sweep)(例えば10〜30度スイープ)を1回の速度で、スキャンすることができる。容積測定スイープは、容積300のスライス304に沿って超音波302を発射し、次いでこの超音波スキャンの高さ306を変更することで次のスライス304を得ることによって、生み出すことができる。例えば、ボクセル308は1つの容積測定スライス304にあり、別のボクセル310は異なる容積測定スライス304にある。鼓動している心臓などの物体312の運動のため、このスイープの間に物体312が形状を変える可能性がある。アレイトランスデューサ106の運動のために、望ましくない運動アーチファクトが、スイープの容積測定データセットに含まれる可能性もある。先に論じた他の原因だけでなく、例えばスキャンされた患者による呼吸がアレイトランスデューサ106の運動を引き起こす可能性もある。
【0015】
図4は、システム100(図1)によって収集されたスキャンデータの強度402を、時間/空間(T/S)軸404に対して示した例示的なグラフ400である。容積測定データセット(volumetric data set:VDS)内の運動アーチファクトを補正する方法の第1の部分は、物体312(図3)に関する空間および時間情報を含むVDSを得ることを含む。強度402は、スキャンライン点の容積測定データからのものとすることができる。ある方法(例えば高速フーリエ変換)を強度402に適用して、周波数スペクトル406を生み出すことができる。物体312が心臓の場合、生み出される周波数スペクトル406は、心拍動の運動と重ね合せられた組織信号の周波数スペクトルを含む。心拍動に関係した運動だけでなく、周波数スペクトル406はさらに、重ね合せられた望ましくない運動を含む可能性がある。望ましくない運動は、2つの隣接するVDSスライス間の差をもたらすより大きな影響を有する可能性がある。例えば、2つの隣接するスライス間の心臓の形状の変化は非常に小さなものである可能性があるが、望ましくない運動が存在する場合、それは、画像ミスレジストレーションの支配的な誘因となる可能性がある。隣接するスライスを互いに動かして(平行移動および回転)、これらのスライスを例えばこれらのスライスの強度に関してマッチングさせることを試みることができる。隣接するスライスの最良のマッチングのために必要な運動を、1つのスライスのもう一方のスライスに対する相対運動(平行移動および回転変化)として記録することができる。
【0016】
図5は、隣接するデータスライス502および504がデカルト座標系内で互いから平行移動された容積測定データセットの部分500を示す。データスライス502および504がx−y平面内で互いに対して動かされまたは変位されている。データスライス504内の点514は、データスライス502内の対応する点506からx方向右へ1単位およびy方向上方ヘ2単位変位されている。同様に、データスライス504内の点516、518および520は、隣接するデータスライス502内の対応する点508、510および512からxおよびy方向に対応する量だけ変位されている。xおよびy座標上の相対変化すなわちデルタ(Δ)、例えばΔx=−1およびΔy=−2を、データスライス504の任意の点に加えることによって、その点は、データスライス502内の対応する/相関された点まで動かされる。例えば、座標(4,5)を有する点518に相対変化Δx=−1およびΔy=−2を加えた場合、データスライス502の対応する点510の座標(4−1=3,5−2=3)すなわち(3,3)が得られる。
【0017】
図6は、隣接するデータスライス602および604が互いから回転され平行移動されたVDSの部分600を示す。図6の例では、データスライス604の点618と620をつなぐ線分がx−y平面内で角度θだけ回転されている。したがって、データスライス626を回転させ、その結果得られるデータスライス604を平行移動させてデータスライス602を得ることによって、データスライス626からデータスライス602を得ることができる。あるいは、データスライス626を回転させ、次いで(例えばx方向に)平行移動させ、再び回転させ、再び(例えばy方向に)平行移動させて、データスライス602の最終結果を得ることもできる。あるいは、最初にデータスライス626を平行移動させ、次いでこの結果を回転させてデータスライス602を得ることによって、データスライス626からデータスライス602を得ることもできる。回転および平行移動操作の順序は変更することができる。図5および6の例は、1つの画像、例えばデータスライス602を別の画像、例えばデータスライス626から得るためのレジストレーションとしても知られる画像マッチングを実行する方法を示している。
【0018】
さまざまなレジストレーションアルゴリズムを使用して画像相関を実行することができ、例えば、点、線、表面などの画像の幾何学的特徴を利用するレジストレーションアルゴリズムは、両方のフレームに見られる同じ物理的な実体に対応する像点のセットなどの特徴を識別することによって画像変換を決定する。レジストレーションアルゴリズムは画像強度値に基づき、それぞれのスライス間の類似性尺度を最適化する画像変換を決定するものでもよい。レジストレーションアルゴリズムは、探索空間での探索の量(例えば他のデータセットに対する最良のマッチングを得るために1つのデータセットに対して実行する平行移動および回転の組合せの数)を低減させることもできる。
【0019】
物体に関する空間および時間情報を含む容積測定データセットは超音波スキャンからリアルタイムで収集される。未処理の容積測定データはデータスライスに編成され、メモリ、例えば図2のシステム200のメモリ212に記憶される。任意の2つの隣接するスライスは、スキャンされた物体内の異なる時点の共通の物理的なスライスを表す。VDSが得られた後、隣接するデータスライス間の位置(平行移動)および方向(回転)の差が計算され、本明細書ではこの差を隣接するスライスの相対運動と呼ぶ。処理ユニット、例えば図2のスキャン変換器214を使用してこの計算を実行することことができる。この相対運動計算は、連続した隣接するスライス間、例えば第1のスライスと第2のスライスの間、第2のスライスと第3のスライスの間、第3のスライスと第4のスライスの間などで実行される。この相対運動計算は、図5および6で論じた操作に比較される。相対運動計算を実行する前に、VDSを、取得されたVDSの取得座標系、例えば極座標系から、直交座標系、例えばデカルト座標系にマップすることができる。全ての隣接するスライスについて隣接するスライス間の相対運動が記録されれば、次いで,一連の操作を通して未処理の容積測定データをこの相対運動に関して補正することができる。隣接するスライス間の相対運動計算は、変化表記法、例えばx軸方向の変化であるΔx、y軸方向の変化であるΔy、x−y内の回転角であるΔθで記録することができる。したがって、(Δx(21),Δy(21),Δθ(21))は、スライス1に関するスライス2と1の間の変化を表すことができ、(Δx(32),Δy(32),Δθ(32))は、スライス2に関するスライス3と2の間の変化を表すことができ、以下同様に表すことができる。
【0020】
隣接するスライス間の相対運動に関して未処理の容積測定データを補正することは、後に詳細に説明される以下の操作を含む。計算された相対運動を使用して、基準座標系(referance coordinate system:RCS)、例えば第1のスライスが変化しないRCSに関して、それぞれのデータスライスの累積絶対運動を計算する。第1のスライスに対する基準座標系(RCS)は、例えば極座標系である取得座標系のスライス座標からデカルト座標への単純な変換から得ることができる。このRCSに関するデータスライスの絶対運動に基づいて、より最適なまたはより正確なRCS(correct RCS:CRCS)を定義する。たとえRCSがデカルト座標系であっても、その結果得られるCRCSがそうとは限らない。CRCSを定義した後、サンプリングセクタ(sector)またはスライス、例えば識別されたサンプリング点を有するサンプリングスキャンラインを、RCSから新しいCRCSに移動させ/マップする。
【0021】
補間法によって、新しいCRCSのサンプリング点の密度を増大させる(例えばサンプリングスキャンラインのライン密度を2倍または3倍にする)。生成されたこの密度を使用して、CRCSのサンプリング点の密度をRCSの相関されたVDS点に探索し、見つけ出し/抽出する(例えば逆マップする)。RCSからの相関されたVDS点をCRCSのサンプリング点の対応する密度にマップする平行移動/回転運動を識別する。識別された平行移動/回転を取得座標システムの全てのVDSデータスライスに適用する。図2の運動推定器/補正器216は、例えば上記の操作を実行することができ、次いで平行移動され/回転された未処理の容積測定データをスライスメモリ210に記憶する。先に説明した操作を完了させた後、次いでこの未処理の運動補正された容積測定データを処理して、超音波画像を形成することができる。
【0022】
あるいは、相対運動の計算および運動に関するデータスライスの調整を、未処理のデータのいくつかの処理(合成)の後に実行することもできるが、現行のリアルタイム計算の性能では、画像合成を含む代替の順序での記載の方法の操作の実行が妨げられる可能性がある。
【0023】
図7は、計算されたVDSスライスの累積/絶対運動を含む累積表700を示す。基準座標系(RCS)に関するデータセットスライスの累積絶対運動は、累積表700に示すように、基準スライス/基準系に関して、隣接するスライスの相対運動を累積的に加算することによって決定することができる。一例として、第1のスライスS1が変化しないRCSではΔx=0、Δy=0およびΔθ=0である。第2のスライスS2は、スライス2と1の間の相対運動変化、例えば相対運動変化(Δx(21),Δy(21),Δθ(21))に等しい絶対運動変化を有する。この表記は、スライス1に関するスライス2の相対的なxの変化、スライス1に関するスライス2の相対的なyの変化、およびスライス1に関するスライス2の相対的な回転θの変化と読むことができる。第3のスライスS3に対する絶対運動変化は、スライス2に関するスライス3の決定された相対運動変化に、スライス2の回転された絶対運動変化を加算することによって決定することができる。例えば、S3の絶対運動変化は、(Δx(32)+cos(Δθ(21))×Δx(21)+sin(Δθ(21))×Δy(21),Δy(32)−sin(Δθ(21))×Δx(21)+cos(Δθ(21))×Δy(21),Δθ(21)+Δθ(32))である。同様の方法で後続のスライスの絶対運動変化を計算することができる。絶対運動の計算では、全ての容積測定データスライスの運動が分かっている必要があり、それに比べて相対運動計算では隣接する2つのデータスライスが分かっていればよい。
【0024】
図8はCRCS800を示す。RCS802に対するデータセットスライスの絶対運動、例えば表700に例示された絶対運動に基づいて、データの容積測定スライスの中心がよりCRCS800の原点804の周囲にくるように、補正された基準座標系CRCS800が決定される。CRCS800は、CRCS800内でスライスが動かされ/位置決めされた場合にそれぞれのデータスライスが最小限しか動かない容積測定データの最良のオーバラップの一部を提供する原点804を有するように選択することができる。CRCSの原点804は例えば、平行移動/回転の最小および最大シフトを平均することによって、または平行移動/回転シフトの中点値を仮定することによって、または容積測定データのシフトの終りを消去し、何らかのデータ・リダクションを適用することによって決定することができる。RCS802からCRCS800まで動かされる場合に容積測定データスライスが中心にくるCRCS800を選択することによって、高品質画像を得るための容積測定データの量が少なくてすむ。最適に選択されたCRCSは、データ範囲の他端からよりもデータ範囲の一端からデータをカットする(データを除去する)ことを防ぐのに役立つ可能性がある。図8のCRCS800は直交またはデカルト座標系ではないかもしれないが、RCS802は直交またはデカルト座標系である可能性がある。さらに、RCS802は、隣接するスライス間の相対的な平行移動/回転を決定するために、初めの容積測定データを極座標からデカルト座標系に変換した結果であることがある。極座標系変換によって得られるデカルトRCS802は、相対運動推定を決定するのには十分に正確である可能性があるが、画像解像度に関しては十分に正確とは言えない可能性がある。したがって、運動アーチファクトのためには初めの取得座標系(例えば極座標系)のデータスライスを運動補正したほうが望ましい可能性がある。
【0025】
図9は、RCS802からCRCS800へのスキャンラインデータサンプルのマッピング900の一例を示す。スキャンライン902のサンプリング点906および910が、スキャンライン904の対応するサンプリング点908および912にマップされる。RCS802からCRCS800を決定するために適用される平行移動/回転が、スキャンライン902をスキャンライン904にマップするために適用される。
【0026】
図10は、図9のマッピングに対してサンプリング点の数を増やす一例を示す。さまざまな技法、例えば補間によって、スキャンライン904に沿ったサンプリング点の密度を増大させる(例えば最初にマップされたサンプル点を2倍または3倍にする)ことができる。スキャンライン904に沿ったサンプリング点の数の増大、例えばサンプリング点914、916、918および920の追加を使用して、RCS802のサンプリング点、例えばサンプリング点906および910の再位置決めをよりよく決定することができる。CRCS800のスキャンライン904のサンプリング点(例えばサンプリング点908、912、914、916、918および920)の密度を増大させた後、サンプリング点のこのより大きな密度を、RCS802のマッチングVDSデータに逆マップし/相関させることができる。CRCS800のサンプリング点(例えば908、912、914、916、918および920)の実際の容積測定データ内のマッチングサンプリング点への相関は、相関されたRCS802サンプリング点をCRCS800のサンプリング点にマップするために適用することができる相対運動(平行移動/回転)を識別する。
【0027】
図11は、VDSデータスライスに対する運動補正1100を示す。運動補正1100は、RCS802のサンプリング点をマップする識別された相対運動を、CRCS800の相関されたサンプリング点に適用することによって達成することができる。識別された相対運動を、取得基準座標系内に位置するVDSの全てのデータ点/スライス1102に適用して、運動補正されたスライス1104を生み出すことができる。したがって識別された相対運動は、VDSデータに適用する前に取得基準座標系、例えば極座標系に適用するために最初に調整することができる。取得座標系の全てのVDSデータスライス1102に識別された相対運動を適用すると、運動アーチファクトに対して調整されたVDS、例えば運動補正されたスライス1104が得られる。このように、運動アーチファクトによる超音波画像のぼけをVDSデータから除去することができる。
【0028】
図12は、超音波スキャンデータの運動を補正する例示的な方法の流れ図1200である。空間および時間情報を含むかもしれない容積測定スキャンデータ(VDS)が、例えば図2の超音波システム200によって収集される1202。VDS内の隣接するスライスが識別され1204、極座標からデカルト座標に変換される1204。次いで、隣接するスライス間の相対運動(シフト/平行移動(例えばΔx、Δy)および回転(例えばΔθ))を得るために、2つの隣接するスライス間の相対運動が計算される1206。例えば、図6の隣接するデータスライス602と604の間の平行移動および回転が計算される。あるいはステップ1204と1206を1つのステップにまとめることもできる。相対運動を計算する追加の隣接するスライスが存在するかどうかについての判定が実施される1208。存在する場合には、それらの追加の隣接するスライスに対して、隣接するスライスの識別1204および変換1204、ならびに相対運動の追加の計算1206が実行される。全ての隣接するスライスに対して相対運動計算が実行された後、選択された基準座標系(RCS)のそれぞれのスライスの累積/絶対運動が計算される1210。結果として生じる計算は、例えば図7に示された累積表700に記憶することができる。それぞれのスライスに対して累積/絶対運動が使用可能になると、VDSデータがより中央に置かれるCRCSが定義される1212。例えば、図8に示されたデータスライス806は、RCS原点808に対するデータスライス810の位置に比べて、中心がよりCRCS原点804の周囲に置かれているように見える。RCS内に定義されたサンプリング点/スライスは、CRCS基準内の位置ににマップされる1214。例えば図9は、RCSからCRCSの対応する点908および912にマップされたサンプル点906および910を示す。マップされたサンプリング点から、CRCS基準内により大きなサンプリング点密度が生成される1216。図10は例えば、サンプリング点912から点914および916の生成、およびサンプリング点908から点918および920の生成を示す。生成されたサンプリング点の密度、例えばサンプリング点908、912、914、916、918および920の密度は、RCS基準のVDSデータ内のマッチングデータ点に逆マップ/相関される1218。RCSのサンプリング点をCRCSの相関されたサンプリング点にマップするのに必要な相対運動を識別した後、VDSデータ内の運動アーチファクトを補正するために、識別された相対運動が取得座標系のVDSデータスライスに適用される1220。図11は、運動補正されたスライス1104を得るために、識別された相対運動がVDSデータのスライス1102に適用される一例を示す。
【0029】
以上に診断用超音波システムの例示的な実施形態を詳細に説明した。これらのシステムは、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されず、それぞれのシステムの構成要素は、本明細書に記載された他の構成要素から独立にかつ別個に利用することができる。それぞれのシステム構成要素を他のシステム構成要素と組み合わせて使用することもできる。
【0030】
具体的なさまざまな実施形態に関して本発明を説明してきたが、本発明は、請求項の趣旨および範囲に含まれる変更を加えて実施することができることを当業者は認識されたい。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に従って形成された超音波システムのブロック図である。
【図2】超音波画像を取得し処理するために使用される本発明の一実施形態に従って形成された超音波システムのブロック図である。
【図3】図1に示した超音波システムによって取得された物体の例示的なスキャンを示す図である。
【図4】図1の超音波システムによって収集されたスキャンデータの時間/空間(T/S)軸に対する強度の例示的なグラフである。
【図5】デカルト座標系において、互いに対して平行移動した2つの画像をマッチングさせるための一例である。
【図6】デカルト座標系において、互いに対して平行移動し回転した2つの画像をマッチングさせるための一例である。
【図7】図1の超音波システムによって収集されたVDSデータに対して記録された累積/絶対運動を含む累積表の一例である。
【図8】初めの基準座標系から補正された基準座標系(CRCS)へVDSデータがマップされる方法の一例である。
【図9】図1の超音波システムによって収集されたスキャンデータの、基準座標系(RCS)から補正されたRCS(CRCS)にマップされたスキャンラインデータサンプルの一例である。
【図10】図9のマッピング操作のサンプリング点の数を増やす方法の一例である。
【図11】図1の超音波システムによって収集されたVDSデータスライスの運動補正の一例である。
【図12】超音波スキャンデータの運動を補正するための例示的な方法の流れ図である。
【符号の説明】
【0032】
100 超音波システム
102 送信器
104 トランスデューサ要素
106 アレイトランスデューサ
108 受信器
110 ビーム成形器
112 RFプロセッサ
114 RF/IQバッファ
116 信号プロセッサ
118 表示システム
122 画像バッファ
200 超音波システム
202 プローブ
204 送信器
206 受信器
208 超音波容積
210 スキャン平面
212 メモリ
214 空間/時間画像相関(STIC)解析器/変換器
216 運動推定器/補正器
218 容積メモリ
220 容積表示プロセッサ
222 ビデオプロセッサ
224 表示装置
300 容積
302 超音波
304 容積測定スライス
306 超音波スキャンの高さ
308 ボクセル
310 ボクセル
312 物体
400 グラフ
402 強度
404 時間/空間(T/S)軸
406 周波数スペクトル
500 容積測定データセットの部分
502 データスライス
504 データスライス
506 データスライス内の点
508 データスライス内の点
510 データスライス内の点
512 データスライス内の点
514 データスライス内の点
516 データスライス内の点
518 データスライス内の点
520 データスライス内の点
600 容積測定データセットの部分
602 データスライス
604 データスライス
618 データスライス内の点
620 データスライス内の点
626 データスライス
700 累積表
800 CRCS
802 RCS
804 CRCSの原点
806 データスライス
808 RCSの原点
810 データスライス
900 データサンプルのマッピング
902 スキャンライン
904 スキャンライン
906 サンプリング点
908 サンプリング点
910 サンプリング点
912 サンプリング点
914 サンプリング点
916 サンプリング点
918 サンプリング点
920 サンプリング点
1100 運動補正
1102 取得座標系のスライス
1104 運動補正されたスライス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積測定データセット内の運動アーチファクトを補正するためのシステム(100)であって、
物体(312)に関する空間および時間情報を含む容積測定データセットを記憶するメモリ(212)を含み、前記容積測定データセットがデータスライス(502、504、602、604、626)に編成されており、少なくとも2つの隣接する前記データスライス(502、504、602、604、626)が異なる時点の共通の物体(312)を表し、
前記容積測定データセット内の隣接する第1および第2のデータスライス(502、504、602、604、626)間の相対運動を決定する(1206)処理ユニット(116)をさらに含み、前記処理ユニット(116)が、前記隣接する第1および第2のスライス(502、504、602、604、626)間の前記相対運動を補正する(1220)、システム(100)。
【請求項2】
前記処理ユニット(116)が、前記第1および第2のデータスライス(502、504、602、604、626)間の位置および方向の差を前記相対運動として計算する(1206)、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記処理ユニット(116)が、前記容積測定データセット内の全ての前記データスライス(502、504、602、604、626)に対して前記決定(1206)および補正(1220)操作を繰り返す、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記処理ユニット(116)が、前記容積測定データセットの基準座標系(802)に関して、前記第1および第2のデータスライス(502、504、602、604、626)の累積運動を決定する(1210)、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記処理ユニット(116)が、前記第1および第2のデータスライス(502、504、602、604、626)に対して、前記容積測定データセットの座標系とは異なる補正された基準座標系(800)を決定する(1212)、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記処理ユニット(116)が、前記第1および第2のデータスライス(502、504、602、604、626)間の前記相対運動に基づいて基準座標系を計算する、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記処理ユニット(116)が、前記第1および第2のデータスライス(502、504、602、604、626)を新しい座標基準系にマップし、前記新しい座標基準系にマップされるときに、前記第1および第2のデータスライス(502、504、602、604、626)が、前記相対運動に基づいて互いにシフトされる、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記処理ユニット(116)が、前記相対運動を補正するときに、前記第1および第2のデータスライス(502、504、602、604、626)のうちの少なくとも1つを回転させ、平行移動させる、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記容積測定データセットが、超音波、X線、CT、MRおよび核医学データのうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記容積測定データセットとして前記物体(312)から超音波データを、スキャン期間の全体を通じて連続的に取得する(1202)プローブ(202)をさらに含み、前記物体(312)が、前記スキャン期間中の少なくとも2周期の繰返しパターンの間、動いている、請求項1記載のシステム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−61694(P2006−61694A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243680(P2005−243680)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】