説明

超音波探傷装置

【課題】探触子を取り付ける支持体と検査対象との間に、確実に接触媒質を介在させて、支持体と検査対象との間で確実に超音波を伝播できる超音波探傷装置を提供すること。
【解決手段】超音波探傷装置1は、検査対象Tに向けて超音波を発信する探触子2と、超音波が検査対象Tへ入射するときの角度を調整するための支持体3と、支持体3の検査対象T側に設けられて、検査対象Tと支持体3との間隔を一定に保持するボールプランジャ10と、を含む。ボールプランジャ10は、支持体3に複数取り付けられる。また、ロータリーエンコーダ5の入力軸に取り付けられるホイール6は磁石であり、検査対象Tが磁性体であれば、検査対象Tに吸着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波で構造物内の傷を探知する超音波探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探傷は、超音波を利用して構造物の健全性を探知する技術である。例えば、特許文献1には、蒸気タービンの高温部品の検査に超音波探傷を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−279181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波探傷においては、シューと呼ばれる支持体に超音波を発信する探触子を取り付けて、検査対象に超音波を導入する。このとき、シューと検査対象との間に液体の接触媒質を介在させる。特許文献1に記載された超音波探傷装置は、接触媒質をシューの外部から供給するが、装置が複雑になるという問題がある。このため、検査対象の表面に接触媒質を塗布した状態でシューを検査対象に接触させて超音波探傷を行う方法がある。しかし、特許文献1に記載された超音波探傷装置は、シューの超音波が通過する部分と検査対象との間に隙間がないため、検査対象の表面を移動させると、検査対象に塗布された接触媒質が前記隙間に入り込まず、接触媒質が前記隙間に十分に介在しないおそれがある。また、シューの移動により、前記隙間に介在する接触媒質が減少し、接触媒質が前記隙間に十分に介在しなくなるおそれもある。
【0005】
本発明は、探触子を取り付ける支持体と検査対象との間に、確実に接触媒質を介在させて、支持体と検査対象との間で確実に超音波を伝播できる超音波探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、検査対象に向けて超音波を発信する探触子と、前記超音波が前記検査対象へ入射するときの角度を調整するための支持体と、前記支持体の前記検査対象側に設けられて、前記検査対象と前記支持体との間隔を一定に保持する隙間形成手段と、を含むことを特徴とする超音波探傷装置である。
【0007】
この超音波探傷装置は、隙間形成手段により、探触子が取り付けられる支持体と検査対象との間の隙間を常に一定に保持する。このため、超音波探傷装置を移動させても、前記隙間には確実に接触媒質を導入できるので、支持体と検査対象との間に、確実に接触媒質を介在させて、支持体と検査対象との間で確実に超音波を伝播できる。この超音波探傷装置は、検査対象の表面に塗布された接触媒質を前記隙間へ確実に導入できるので、接触媒質を外部から供給する手段は不要である。このため、この超音波探傷装置は、検査対象が複雑な形状であったり、検査対象に狭隘な部分が存在したりする結果、接触媒質の供給手段の取り回しが困難で前記供給手段を用いることが困難であるような場合でも、超音波探傷を行うことができるという利点もある。
【0008】
本発明において、前記支持体が前記検査対象へ向かう力を発生させる押付力付与手段を有することが好ましい。このように、押付力付与手段が支持体を検査対象へ押し付けるため、押付力のばらつきを低減できる。その結果、支持体と検査対象との間の隙間をより一定に保つことができるので、接触媒質をより確実に前記隙間に保持できる。
【0009】
本発明において、前記押付力付与手段は、前記支持体の前記検査対象側に取り付けられた磁石であることが好ましい。このように、磁力を利用して支持体を検査対象に押し付けるので、検査対象が磁性体である場合には、支持体を検査対象に押し付ける必要がなくなる。
【0010】
本発明において、前記隙間形成手段は、前記支持体に取り付けられる外筒と、前記外筒の前記支持体とは反対側に回転可能に保持される、磁力を発生するボールと、を含むことが好ましい。このように、磁力を利用して支持体を検査対象に吸着させるので、検査対象が磁性体である場合には、支持体を検査対象に押し付ける必要がなくなる。
【0011】
本発明において、前記支持体とともに移動して前記超音波探傷装置の移動距離を計測するロータリーエンコーダと、前記ロータリーエンコーダの入力軸に取り付けられるとともに、磁力を発生する外周部が前記検査対象と接触するホイールと、を含むことが好ましい。このような構造により、検査対象の表面に接触媒質が塗布されている状態であっても、ホイールと検査対象との滑りを低減できる。その結果、ロータリーエンコーダは、超音波探傷装置の移動距離の計測誤差を低減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、探触子を取り付ける支持体と検査対象との間に、確実に接触媒質を介在させて、支持体と検査対象との間で確実に超音波を伝播できる超音波探傷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施形態1に係る超音波探傷装置を示す概略図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る超音波探傷装置を底面から見た状態を示す平面図である。
【図3】図3は、ボールプランジャの断面図である。
【図4】図4は、ボールプランジャの断面図である。
【図5】図5は、隙間形成手段の変形例を示す図である。
【図6】図6は、実施形態2に係る超音波探傷装置を示す概略図である。
【図7】図7は、実施形態2に係る超音波探傷装置を底面から見た状態を示す平面図である。
【図8】図8は、実施形態3に係る超音波探傷装置を示す説明図である。
【図9】図9は、実施形態3に係る超音波探傷装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る超音波探傷装置を示す概略図である。図2は、実施形態1に係る超音波探傷装置を底面から見た状態を示す平面図である。超音波探傷装置1は、検査対象Tの内部に超音波を発信し、検査対象Tの内部で反射して戻ってきた超音波を受信することにより、検査対象T内の傷等を検出するものである。超音波探傷装置1の検査対象Tは、例えば、発電プラント又は化学プラント等が有する配管等である。本実施形態において、検査対象Tは配管である。超音波探傷装置1は、検査対象Tの周方向における所定の位置から超音波を発信し、反射してきた超音波を受信する。超音波探傷装置1は、検査対象Tの周方向に向かって移動し、前記周方向の異なる位置で超音波の発信及び受信を繰り返しながら、検査対象Tの内部又は溶接部等に存在する傷等を検出する。
【0016】
超音波探傷装置1は、探触子2と、支持体3と、隙間形成手段としてのボールプランジャ10と、を含む。この超音波探傷装置1は、さらに、ロータリーエンコーダ5と、ホイール6とを有している。本実施形態において、超音波探傷装置1は、ロータリーエンコーダ5及びホイール6を必ずしも備える必要はない。探触子2は、検査対象Tに向けて超音波を発信する。探触子2は、超音波の発信及び受信が可能なトランスデューサである。探触子2は、超音波の送信又は受信のいずれか一方が可能であればよく、トランスデューサに限定されるものではない。
【0017】
支持体3は、探触子2が発信した超音波が検査対象Tへ入射するときの角度を調整するための部材である。この他に、支持体3は、探触子2が発信した超音波を検査対象Tに導入したり、検査対象Tからの超音波を探触子2に導入したりする。支持体3は、例えば、ポリエーテルイミド、アクリル等の樹脂又は金属等で作られる。支持体3の材料は、検査対象Tの材料に応じて適切な材料が選択されて用いられる。
【0018】
図2に示すように、支持体3は、平面視において略長方形形状の部材である。探触子2は、支持体3が検査対象Tと対向する面(底面)3Bとは反対側から支持体3に取り付けられる。支持体3の底面3Bは、検査対象Tの表面TPと平行になっている。本実施形態において、検査対象Tは配管であるので、底面3Bは、検査対象Tの外周面に沿った曲面になっている。超音波探傷装置1が超音波探傷を行う際には、検査対象Tの表面TPと支持体3の底面3Bとの間に所定の間隔を有する隙間を設け、この隙間にカプラントと呼ばれる液体の接触媒質(例えば、グリセリン又は水等)Lgを介在させて、探触子2と検査対象Tとの間で超音波を伝達させる。前記隙間の大きさをS、検査対象の外径をDとすると、底面3Bの曲率半径は、S+D/2となる。
【0019】
ボールプランジャ10は、支持体3の検査対象T側に設けられて、検査対象Tと支持体3との間隔を一定に保持する。支持体3の検査対象T側は、支持体3の検査対象Tと対向する面、すなわち底面3Bである。ボールプランジャ10は、支持体3の底面3Bに設けられる。支持体3は、底面3Bも平面視が長方形形状であり、本実施形態において、ボールプランジャ10は底面3Bの四隅に設けられる。ボールプランジャ10の数は4個に限定されるものではないが、少なくとも3個は必要である。
【0020】
図3、図4は、ボールプランジャの断面図である。ボールプランジャ10は、外筒15と、ボール11と、弾性体14と、を含む。外筒15は、円筒形状かつ底付の容器であり、支持体3に取り付けられる。ボール11は、外筒15の支持体3とは反対側に回転可能に保持される。本実施形態において、ボール11は、ボール受け12を解して外筒15に支持される。ボール受け12は、円筒形状かつ底付の容器であり、開口側にボール11が回転可能に支持される。ボール受け12は、内部に複数のサブボール13を有しており、これらがボール11と接触する。このような構造により、ボール受け12に支持されたボール11は、ボール受け12に支持されながら滑らかに回転できるようになっている。
【0021】
ボール受け12は、外筒15の支持体3とは反対側の開口に取り付けられる。ボール受け12の外径は、外筒15の内径よりも小さいので、ボール受け12は、外筒15の内部を往復することができる(図3の矢印Nで示す方向)。弾性体14は、ボール11と外筒15の支持体3側の端部との間に設けられて、ボール11に支持体3とは反対側に向かう力を与える。本実施形態において、弾性体14としてコイルスプリングが用いられる。弾性体14は、ボール11が外筒15の内部に向かって移動すると圧縮されて、反発力を発生する。この反発力が、支持体3とは反対側に向かう力をボール11に与える。
【0022】
図3に示すように、ボールプランジャ10は、ボール11側における外筒15の端部(ボール側端部)15Tが支持体3の底面3Bから突出している。超音波探傷装置1を検査対象Tの表面TPで移動させる場合、超音波探傷装置1を検査対象Tに向かって押し付ける。すると、ボール11が外筒15の内部に向かって、すなわち、支持体3に向かって移動する。図4に示すように、ボール11の移動により弾性体14が押し縮められ、外筒15のボール側端部15Tが検査対象Tの表面TPに接触する。このとき、ボール側端部15Tと底面3Bとの距離tが、支持体3の底面3Bと検査対象Tとの隙間の間隔になる。この状態になると、超音波探傷装置1は、これ以上検査対象Tに接近しない。このような構造により、超音波探傷装置1が検査対象Tに向かって押し付けられた場合、支持体3の底面3Bと検査対象Tとの間には、距離tの間隔が確保される。
【0023】
外筒15は、例えば、外周面に雄ねじを有しており、支持体3に設けられた前記雄ねじと嵌り合う雌ねじにねじ込まれる。このような構造により、外筒15が支持体3に取り付けられるので、ボールプランジャ10は支持体3に取り付けられる。また、このような構造によれば、外筒15の支持体3へのねじ込み量を調整することにより、外筒15のボール側端部15Tが支持体3の底面3Bから突出する量を調整することができる。このようにすれば、支持体3の底面3Bと検査対象Tとの隙間の間隔を調整することができる。
【0024】
上述したように、超音波探傷においては、探触子2からの超音波を検査対象Tに入射させる等のため、検査対象Tの表面TPに接触媒質Lgを塗布する必要がある。しかし、超音波探傷において、探触子2を取り付けた支持体3を検査対象Tの表面TPで移動させると、接触媒質Lgが支持体3の底面3Bと検査対象Tの表面TPとの間から外に吐き出されることがある。すると、支持体3と検査対象Tとの間に接触媒質Lgが介在しないことになり、超音波が検査対象Tに入射しなくなることがある。すなわち、支持体3と検査対象Tとの間で、超音波の伝播が行われないことがある。
【0025】
これを回避するため、超音波探傷装置1が移動のために検査対象Tに押し付けられた場合には、上述したように、ボールプランジャ10が支持体3の底面3Bと検査対象Tとの隙間の間隔を一定(距離t)に保つ。このようにすることで、超音波探傷装置1を検査対象Tに押し付けて移動させた場合でも、支持体3と検査対象Tとの隙間が確保されるので、前記隙間の間からの接触媒質Lgの吐き出しが抑制されるとともに、前記隙間に接触媒質Lgが安定して入る。その結果、前記隙間に接触媒質Lgが介在し、支持体3と検査対象Tとの間で安定した超音波の伝播を実現できるので、確実に超音波探傷を行うことができる。その結果、超音波探傷のやり直し回数を低減できる。
【0026】
次に、ロータリーエンコーダ5について説明する。ロータリーエンコーダ5は、支持体3とともに移動して支持体3の移動距離を計測する。ロータリーエンコーダ5は、腕7を介して超音波探傷装置1の支持体3に連結される。支持体3にはブラケット8が設けられている。腕7は、ピン9によってブラケット8に回動可能に取り付けられる。このような構造により、ロータリーエンコーダ5は、ピン9の位置を中心として、回動可能に支持体3に連結される。なお、ロータリーエンコーダ5と支持体3との連結構造は、このようなものに限定されるものではない。
【0027】
ロータリーエンコーダ5は、入力軸5Sにホイール6が取り付けられる。ホイール6は、外周部6Eが磁力を発生する構造である。例えば、外周部に環状の磁石(金属磁石、焼結磁石、ボンド磁石等)を取り付けたり、ホイール6自体を磁石で製造したりする。このようにすることで、ホイール6は、外周部6Eが磁力を発生する。ホイール6の外周部6Eは、検査対象Tと接触する。そして、超音波探傷装置1の移動にしたがって回転する。ロータリーエンコーダ5は、ホイール6の回転数を検出し、その検出結果に基づき、超音波探傷装置1の移動距離を計測する。
【0028】
検査対象Tの表面TPには、液体の接触媒質Lgが付着しているので、ホイール6が滑り、超音波探傷装置1の正確な移動距離を計測できないことがある。本実施形態では、ロータリーエンコーダ5の入力軸に取り付けられたホイール6の外周部6Eが磁力を発生する。このため、検査対象Tが鉄等の磁性体である場合、ホイール6の磁力によりホイール6が検査対象Tに吸着するので、ホイール6の滑りが抑制される。その結果、超音波探傷のやり直しが発生する回数を低減できる。
【0029】
(変形例)
図5は、隙間形成手段の変形例を示す図である。この変形例に係る隙間形成手段としてのボールプランジャ10aは、図3、図4に示すボールプランジャ10の弾性体14に代えて移動規制部材14Fを設けるとともに、ボール11に代えて磁力を発生する磁性ボール11Mを用いる。移動規制部材14Fは、磁性ボール11Mが外筒15の内部に向かって移動することを規制する部材である。磁性ボール11Mは磁石であり、検査対象Tが鉄等の磁性体である場合には、磁力により検査対象Tに吸着する。
【0030】
検査対象Tが磁性体である場合に、ボールプランジャ10aを備える超音波探傷装置1を用いることにより、磁性ボール11Mの磁力によって超音波探傷装置1を検査対象Tに吸着させることができる。その結果、超音波探傷装置1の支持体3の底面3Bと検査対象Tの表面TPとの間には、常に距離taの一定の隙間が形成される。
【0031】
磁性ボール11Mによって超音波探傷装置1が検査対象Tに吸引されているので、超音波探傷装置1を移動させる場合は、超音波探傷装置1を検査対象Tに押し付ける必要はない。超音波探傷装置1が検査対象Tに吸引された状態で超音波探傷装置1を移動させると、支持体3と検査対象Tとの隙間が確保されるので、前記隙間の間からの接触媒質Lgの吐き出しが抑制されるとともに、前記隙間に接触媒質Lgが安定して入る。その結果、前記隙間に接触媒質Lgが介在し、安定した超音波の入射が確保されるので、超音波探傷のやり直し回数を低減できる。また、超音波探傷を行う際には、超音波探傷装置1を検査対象Tに向かって押し付けなくても、前記隙間は距離taで一定に保たれる。このため、前記隙間の大きさが変化することによる影響を低減できるので、安定して超音波探傷を行うことができる。その結果、安定した超音波の入射が確保されるので、超音波探傷のやり直し回数を低減できる。
【0032】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る超音波探傷装置を示す概略図である。図7は、実施形態2に係る超音波探傷装置を底面から見た状態を示す平面図である。実施形態2に係る超音波探傷装置1aは、実施形態1に係る超音波探傷装置1と略同様であるが、支持体3が検査対象Tへ向かう力を発生させる押付力付与手段を有する点が異なる。超音波探傷装置1aの他の構成は、超音波探傷装置1と同様である。
【0033】
超音波探傷装置1aは、押付力付与手段としての磁石4を有する。磁石4は、支持体3が検査対象Tと対向する部分、より具体的には、支持体3の底面3B側に複数個取り付けられる。本実施形態においては、図7に示すように、支持体3は、平面視において、探触子2と重ならない位置に複数(本実施形態では4個)の磁石4を有している。すなわち、複数の磁石4は、探触子2から発信される超音波と干渉しない位置に配置される。このようにすることで、超音波が異なる媒体を通過することによる屈折の影響を排除することができる。
【0034】
検査対象Tが磁性体である場合に、超音波探傷装置1aを用いることにより、磁石4の磁力によって超音波探傷装置1aは検査対象Tに吸着する。磁石4の磁力により、超音波探傷装置1aが検査対象Tに接近することにより、ボールプランジャ10の弾性体14は図4に示すように縮むので、外筒15のボール側端部15Tが検査対象Tの表面TPに接触する。その結果、図4に示すように、超音波探傷装置1aの支持体3の底面3Bと検査対象Tの表面TPとの間には、常に距離taの一定の隙間が形成される。この隙間は、超音波探傷装置1aに対して検査対象Tへ向かう力を付与しなくても同じ大きさで形成される。このため、超音波探傷を行う際には、作業者の押し付け力の相違による前記隙間の変化の影響を低減することができる。その結果、安定した超音波の入射が確保されるので、超音波探傷のやり直し回数を低減できる。
【0035】
複数の磁石4によって超音波探傷装置1aが検査対象Tに吸引されているので、超音波探傷装置1aを移動させる場合は、超音波探傷装置1aを検査対象Tに押し付ける必要はない。超音波探傷装置1aが検査対象Tに吸引された状態で超音波探傷装置1aを移動させると、支持体3と検査対象Tとの隙間が確保されるので、前記隙間の間からの接触媒質Lgの吐き出しが抑制されるとともに、前記隙間に接触媒質Lgが安定して入る。その結果、前記隙間に接触媒質Lgが介在し、安定した超音波の入射が確保されるので、超音波探傷のやり直し回数を低減できる。
【0036】
なお、支持体3に磁石4を取り付ける代わりに、支持体3を磁石で製造してもよい。このようにすると、磁力を大きくすることができるので、より確実に超音波探傷装置1aを検査対象Tに吸引させることができる。そして、支持体3と検査対象Tとの隙間を一定に確保しやすくなる。
【0037】
(実施形態3)
図8、図9は、実施形態3に係る超音波探傷装置を示す説明図である。実施形態3に係る超音波探傷装置1bは、実施形態1に係る超音波探傷装置1と同様であるが、さらに、押付力付与手段として、複数のプランジャ30を有している。図9に示すように、プランジャ30は、ローラー31と、ローラー31を回転可能に支持するブラケット32と、ブラケット32に取り付けられたピストンロッド33と、ピストンロッド33が内部を往復運動するシリンダ34とを有する。シリンダ34の内部には、例えば、窒素ガスが充填されており、ピストンロッド33がシリンダ34から突出する方向(図9の矢印Uで示す方向)の力をピストンロッド33に付与している。
【0038】
この超音波探傷装置1bで超音波探傷を行う場合、検査対象Tの外周と一定の間隔を設けて環状のガイドレール21を配置する。ガイドレール21は、複数のガイドレール支持装置22によって検査対象Tの表面TPに取り付けられる。ガイドレール支持装置22は、ガイドレール21と連結される連結部22Rと、連結部22Rを検査対象Tの表面TPに固定する台座22Bとを含む。台座22Bは、例えば、磁力又は真空吸着等により吸引力を発生させるものである。
【0039】
超音波探傷装置1bは、ガイドレール21と検査対象Tとの間に設置される。このとき、プランジャ30のローラー31がガイドレール21と接触するようにする。また、プランジャ30のピストンロッド33は、シリンダ34内にある程度押し込まれた状態とする。このようにすることで、プランジャ30がローラー31をガイドレール21に押し付けるので、その反力によって超音波探傷装置1bは検査対象Tに押し付けられる。
【0040】
このようにすることで、作業者が超音波探傷装置1bを押し付けなくても、超音波探傷装置1bの支持体3の底面3Bと検査対象Tの表面TPとの間には、常に一定大きさの隙間が形成される。このため、超音波探傷を行う際には、作業者の押し付け力の相違による前記隙間の変化の影響を低減することができる。その結果、安定した超音波の入射が確保されるので、超音波探傷のやり直し回数を低減できる。
【0041】
プランジャ30とガイドレール21とによって超音波探傷装置1bは検査対象Tに押し付けられるので、超音波探傷装置1bを移動させる場合は、超音波探傷装置1bを作業者が検査対象Tに押し付ける必要はない。超音波探傷装置1bが検査対象Tに押し付けられた状態で超音波探傷装置1bを移動させると、支持体3と検査対象Tとの隙間が確保されるので、前記隙間の間からの接触媒質Lgの吐き出しが抑制されるとともに、前記隙間に接触媒質Lgが安定して入る。その結果、前記隙間に接触媒質Lgが介在し、安定した超音波の入射が確保されるので、超音波探傷のやり直し回数を低減できる。
【符号の説明】
【0042】
1、1a、1b 超音波探傷装置
2 探触子
3 支持体
3B 底面
4 磁石
5 ロータリーエンコーダ
6 ホイール
6E 外周部
10、10a ボールプランジャ
11 ボール
11M 磁性ボール
13 サブボール
14 弾性体
14F 移動規制部材
15 外筒
15T ボール側端部
21 ガイドレール
22 ガイドレール支持装置
30 プランジャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象に向けて超音波を発信する探触子と、
前記超音波が前記検査対象へ入射するときの角度を調整するための支持体と、
前記支持体の前記検査対象側に設けられて、前記検査対象と前記支持体との間隔を一定に保持する隙間形成手段と、
を含むことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項2】
前記支持体が前記検査対象へ向かう力を発生させる押付力付与手段を有する請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項3】
前記押付力付与手段は、前記支持体の前記検査対象側に取り付けられた磁石である請求項2に記載の超音波探傷装置。
【請求項4】
前記隙間形成手段は、
前記支持体に取り付けられる外筒と、
前記外筒の前記支持体とは反対側に回転可能に保持される、磁力を発生するボールと、
を含む請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項5】
前記支持体とともに移動して前記超音波探傷装置の移動距離を計測するロータリーエンコーダと、
前記ロータリーエンコーダの入力軸に取り付けられるとともに、磁力を発生する外周部が前記検査対象と接触するホイールと、
を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−173068(P2012−173068A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33914(P2011−33914)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】