説明

超音波探触子の製造方法

【課題】本発明の目的は、従来2種以上のモノマーがかかわっていた蒸着重合について、オリゴマーを用いる蒸着重合を考慮することにより、組成の変動がなく、物性を高め、圧電性能に優れた、高感度の、有機圧電素子を製造管理がし易く製造品質が安定に、高収率、安価、容易に、製造できる超音波探触子の製造方法を提供することにある。
【解決手段】圧電性を付与する高分子の前駆体を加熱蒸発させ基体上に衝突させながら重合させ有機圧電素子を製造することを特徴とする超音波探触子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用診断に使用される超音波探触子を高感度にする技術又はその製造方法に関し、詳しくは、医用診断に使用される高感度の超音波探触子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は超音波パルス反射法により、体表から生体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線などの被爆がなく安全性が高い、ドップラー効果を応用して血流イメージングが可能等の特長を有し、循環器系(心臓の冠動脈)、消化器系(胃腸)、内科系(肝臓、膵臓、脾臓)、泌尿科系(腎臓、膀胱)、及び産婦人科系などで広く利用されている。このような医療用超音波診断装置に使用される超音波探触子には、高感度、高解像度の超音波の送受信を行うために、無機圧電素子の圧電効果が一般的に利用される。
【0003】
さらに、超音波送受信素子を感度向上するために圧電無機素子を積層化し(特許文献1参照)、見かけ上のインピーダンスを低下させ駆動回路との電気的な整合条件を良好にし、素子にかかる電界強度を大きくして大きな歪を発生させ送信感度を向上させることが行われている。しかしながら、積層構造では送信感度が積層数に応じて増大するものの、受信感度は積層数に反比例するため、高調波画像形成には不利となっている。
【0004】
そこで、弗化ビニリデンを主成分とする広帯域の有機の圧電素子が注目されたが(特許文献1参照)、しかし、高分子樹脂となるモノマー溶液に開始剤を使用して重合せしめた樹脂を更にその後1軸又は2軸延伸し、分極処理を施して圧電性能を得るというプロセスが必要であり設備コストが掛かっていた。そこで、モノマーを真空中で蒸着させて重合させる方法が提案された(特許文献2参照)。しかしながら、2種以上のモノマーを蒸発させ、或いはそのモノマーの蒸気圧が異なる場合、それぞれの適した温度に設定して蒸発させないと所望のモノマー組成の高分子が得られないという欠点を有していた。また、蒸着しても重合が進まず、重合を進ませるための技術が必要であった。重合を進ませる技術としてプラズマ処理をするという技術が提案されたが(特許文献3参照)、設備コストが高くなるという欠点があった。
【特許文献1】特開平7−74407号公報
【特許文献2】特開2001−261867号公報
【特許文献3】特開2002−275266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、従来2種以上のモノマーがかかわっていた蒸着重合について、オリゴマーを用いる蒸着重合を考慮することにより、組成の変動がなく、物性を高め、圧電性能に優れた、高感度の、有機圧電素子を製造管理がし易く製造品質が安定に、高収率、安価、容易に、製造できる超音波探触子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0007】
1.圧電性を付与する高分子の前駆体を加熱蒸発させ基体上に衝突させながら重合させ有機圧電素子を製造することを特徴とする超音波探触子の製造方法。
【0008】
2.前記重合が熱重合、光重合、又は電子線重合であることを特徴とする1に記載の超音波探触子の製造方法。
【0009】
3.前記高分子の前駆体が弗化ビニリデン又は尿素化合物のオリゴマーであることを特徴とする1または2に記載の超音波探触子の製造方法。
【0010】
4.前記基体上で重合と同時に分極処理しながら圧電性を付与させるたことを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載の超音波探触子の製造方法。
【0011】
5.前記分極処理がコロナ放電処理であることを特徴とする4に記載の超音波探触子の製造方法。
【0012】
6.前記分極処理において、コロナ放電面に剥離可能な誘電体を被覆することを特徴とする5に記載の超音波探触子の製造方法。
【0013】
7.前記基体の材料が、PZT、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸タンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O3]、チタン酸バリウム(BaTiO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、又はチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)であることを特徴とする1〜6のいずれか1項に記載の超音波探触子の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来2種以上のモノマーがかかわっていた蒸着重合について、オリゴマーを用いる蒸着重合を考慮することにより、組成の変動がなく、物性を高め、圧電性能に優れた、高感度の、有機圧電素子を製造管理がし易く製造品質が安定に、高収率、安価、容易に、製造できる超音波探触子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0016】
本発明は以下の態様により達成することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図5を用いて説明する。
【0018】
(実施の形態)
図1は従来の2種モノマーを使用する蒸着重合方法を示す概念図である。
【0019】
加熱板6,7の上においたそれぞれのモノマー容器2,3中のモノマー溶液4,5を加熱し、真空ポンプ9で系内を真空にして圧電膜1を形成させる。圧電膜の温度を制御する加熱板8の温度を蒸着重合によい温度に設定をして、蒸着を開始する。開始に際して、モノマー種の蒸気圧が異なる場合には、目的の組成になるように温度制御する。この制御は、2種のモノマーの蒸気圧曲線を予め調べて目的の組成になるように加熱板6,7の温度を別々に設定をする必要がある。
【0020】
本発明のオリゴマーを使用する方法を以下図2を用いて説明する。
【0021】
図2は予め使用するモノマーからオリゴマーを形成させておいて、これを加熱板6で蒸発させて基板上に蒸着させる。従って、供給モノマーの容器数は2個から1個へ減じることができる。また、モノマーを2種共重合させたものを2種使用すると2つの蒸発容器で4種のモノマー種の重合を進めることができる。オリゴマーは2種から8種までが可能である。8種以上になると分子量が増大して蒸発しにくくなり、蒸着が困難となる。通常は2種から5種の共重合体である。
【0022】
弗化ビニリデンの系では、弗化ビニリデンと3弗化エチレンの75:25のモル比の高分子の重合比が重んじられる。この重合比のオリゴマーを得るには、2分子の弗化ビニリデンに1分子の3弗化ビニリデンを化学結合させたオリゴマーを用いることが適している。特に2:1の場合には、2分子の弗化ビニリデンと1分子からなる3分子体の正数倍であるオリゴマーが適している。ここで、同種の分子の数が2個から多くても20個程度からなり、比較的に分子量の低い重合体であるというオリゴマーの定義を広げて、同種でなくても異種でもよいとし、また、分子の数において、異種の分子からなる場合には、分子の総和が20個程度を越えないことと本発明においては定義する。2:1からなる異分子のオリゴマーの最大分子の数は弗化ビニリデンが12個で3弗化エチレンが6個程度ということになる。そこで、弗化ビニリデンを主成分とし、パーフロオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロペン、テトラフロオロエチレンなどと組み合わせる場合も同様に定義される。オリゴマーの作製には、米国特許第3,193,539号や米国特許第3,475,396号を参照することができる。連鎖移動溶媒であるアセトンやアルコール類を使用し、モノマー濃度を下げ、開始剤の濃度を上げることによって、分子量の低いオリゴマーを作製することができる。また、特開平07−196735号に記載の1,1,1−トリフルオロ−2,2−ジクロロエタン(HCFC−123)を使用して連鎖移動の効率を上げて合成することもできる。この場合モノマーの全量に対して、0.1〜8.0質量%、好ましくは0.3〜4.0質量%の量のHCFC−123を使用するのがよい。この範囲より少ないと連鎖移動しにくいし、これより多いと重合が妨げられるからである。重合反応は、−60℃〜160℃、好ましくは−20℃〜130℃の温度下で一般的に行うことができる。反応圧力は一般的に20〜100バール、好ましくは30〜80バールに変化させることができる。重合後には、非極性溶媒に転送して沈降させてもよいし、反応溶媒を減圧引きして除いてもよい。
【0023】
尿素樹脂のオリゴマーの作製は、ジイソシアナートとジアミンの分子量の合計が20以下である付加物を合成することにある。原料とする好ましいジアミン化合物として以下の化合物を挙げることができる。
【0024】
1級アミノ基の範中であるジアミン化合物として、例えば、ビス−(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス−(3−アミノプロポキシ)−2,2−ジメチルプロパン、ビス−(3−アミノプロピル)−ジエチレングリコールエーテル、ビス−(3−アミノプロピル)−ジプロピレングリコールエーテル等の脂肪族ジアミン;ビスアミノプロピルポリエチレングリコールエーテル、ビスアミノプロピルポリプロピレングリコールエーテル、ビスアミノプロピルポリテトラメチレングリコールエーテル、ジアミノポリエチレングリコール、ジアミノポリプロピレングリコール、ジアミノポリテトラメチレングリコール、ポリアミノポリエチレングリコール、ポリアミノポリプロピレングリコール、ポリアミノポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレンポリエーテルジアミン;ジアミノジフェニルエーテル;等を挙げることができる。また、脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミンもしくは、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。脂環式ジアミンとしては、例えば、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソプロピリデンビス−4−シクロヘキシルジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が挙げられる。複素環式ジアミンとしては、例えば、ピペラジン、メチルピペラジン、アミノエチルピペラジン等が挙げられる。
【0025】
イソシアナート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネート−1−1−メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、テトラメチレンジイソシアネート、o−、m−もしくはp−キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、m−もしくはp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートカーボジイミド変性ジフェニルメタジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、フェニルエーテルジイソシアネート等のイソシアネートモノマー類、等が挙げられる。
【0026】
オリゴマ合成に際しての有機溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸(イソ)プロピル、酢酸(イソ)ブチル、エチレングリコールジエチルエステル如きエステル系溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、メトキシブタノール、3−メチルー3−メトキシブタノール、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルグリコールアセテート、酢酸セロソルブ、ブチルグリコールアセテート、酢酸メトキシプロピル、酢酸メトキシブチル、酢酸カルビトール、酢酸ブチルカルビトール、ソルフィットアセテート等のグリコールエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、エチルアミルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n(イソ)−プロパノール、n(イソ)−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶剤;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンもしくはデカン等のパラフィン系炭化水素溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン等のナフテン系炭化水素溶剤、等が挙げられる。
【0027】
尿素樹脂のオリゴマーを得るには、オリゴマー化するそれぞれのモノマー濃度を低くすることとオリゴマー化反応温度を下げること、オリゴマー化時間を短くすること、ジイソシアナート基の一方を脱離し易いアミンの保護基などで予め付加しておくこと、等で達成することができる。精密なオリゴマー化は、それぞれのモノマーの反応基の一方を保護基化したモノマー種を反応させて、反応終了後脱保護基処理をすることによって得られる。蒸着して熱重合で脱離する保護ならば、保護基を付けたまま使用してもよい。
【0028】
温度としては−60℃〜20℃、モノマー濃度としては、0.01質量%〜10質量%、好ましくは、0.1質量%〜4質量%である。この範囲より小さいと重合が進まないし、この範囲を超えると重合度が高くなってしまう。
【0029】
斯くして得られたオリゴマー又は低分子体を蒸発容器に入れて加熱して蒸着を開始する。容器の加熱は30℃〜260℃、好ましくは40℃〜230℃である。蒸着時間は製膜する厚さにもよるが、1μm当たり0.1分〜100分が好ましい。この範囲以下の速度であると製造時間が掛かるし、この範囲以上であると形成される膜が緻密でなくなる。
【0030】
真空容器の真空度は1×10-6Pa〜1×105Paの任意に選択することができる。
【0031】
有機圧電素子は単層で使用してもよいし、複層で使用してもよい。複層の場合、送信用圧電素子に無機の圧電素子、受信用の圧電素子に有機の圧電素子を使用しもよい。この場合いは、蒸着重合に使用する基板を最初から無機の圧電素子にしておくことができる。
【0032】
蒸着後、加熱恒温槽内で所定の温度に設定して重合を終了させつつ分極処理をすることができる。図4は断熱容器内でコロナ放電処理する図であり、図5はコロナ放電処理と同時に光重合として紫外線照射、電子線照射等の線源を使用して重合を加速する処理方法を示す。
【0033】
紫外線照射は、キセノンランプは水銀ランプ、高圧水銀ランプ等を使用して、1mJ〜1MJ/cm2、好ましくは100mJ〜1kJ/cm2の照射を、電子線の場合には、1mGy〜1MGy、好ましくは100mGy〜1kGyの線量が好ましい。何れの処理においても温度は40℃〜290℃、好ましくは60℃230℃である。この温度範囲を超えると樹脂が分解する可能性が高くなることやこの温度範囲以下であると重合が進まなくなるので望ましくない。
【0034】
分極処理は、直流、交流、これらのパルス電圧処理の他にコロナ放電処理も可能である。
【0035】
直流や交流の電圧は、1V〜1GV/mの範囲で適宜選択することができる。コロナ放電処理は、1W〜1kW/m2/秒の放電密度で処理することができる。
【0036】
コロナ放電処理の際には、誘電破壊が生じ易いので、有機薄膜上の保護として、誘電体薄膜を密着させてコロナ放電処理することが好ましい。図3〜図5の14はこの誘電体薄膜を示す。誘電体薄膜としては、電気絶縁性であって耐熱性・耐電圧性に優れた薄膜が用いられ、例示すれば、ポリエチレン、ポリプロピレンやα−ポリオレフィンなどのオレフィン系樹脂のシート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリカーボネート、四弗化エチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの合成樹脂のシート、それらの2種類以上の共重合体やブレンド成形物や無極性ガラス板などが挙げられる。
【0037】
有機圧電膜を製造するに際して、蒸着モノマを堆積させる支持体(基板)としては、硝子、樹脂、シリコンウエハー等任意であるが、低温薄膜形成には、ポリエチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、アルキレート樹脂、シクロオレフィン樹脂等を支持体(基板)として適宜選択できる。しかし、基体に無機圧電材料を使用すると有機無機複層構造の圧電素子形成に便利である。そのような無機材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸タンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O3]、チタン酸バリウム(BaTiO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)を挙げることができる。
【0038】
上記に示した超音波探触子を使用することによって、加工の品質安定性性を確保して、しかもコストを抑えて高感度な医療用超音波診断装置を実現することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0040】
実施例1
《オリゴマーの作製》
〈G1の作製〉
P(VDF−PFA)(組成モル比:VDF/パーフロオロアルキルビニルエーテル=75/25)のオリゴマーを作製した。
【0041】
溶媒であると同時に連鎖移動剤であるアセトン溶液にVDFとPFAを質量比2:1で濃度が1質量%となるように溶解し、開始剤ジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)を使用した。開始剤の濃度は0.01質量%濃度になるようにした。
【0042】
溶媒はトルエンを5倍量注入して混合溶媒で沈殿させた後、真空引きで目的物を得た。GPC分析で3量体であった。
【0043】
〈G2の作製〉
P(VDF−PFA)(組成モル比:VDF/パーフロオロアルキルビニルエーテル=75/25)のオリゴマーを作製した。
【0044】
G1の作製においてと同様にして、但し、ここでは、開始剤としてジ−i−プロピルペルオキシジカーボネート(IPP)を使用し、溶媒としてイソプロピルアルコールを使用した。溶媒はトルエンを6倍量注入後、真空引きで除去し、目的物を得た。GPC分析で3量体であった。
【0045】
〈G3の作製〉
P(VDF−HFP)(組成モル比:VDF/HFP(ヘキサフルオロプロペン)=75/25)を作製した。
【0046】
G1の作製においてと同様にして、但し、ここでは、PFAの代わりにHFPを使用し、開始剤としてジ−i−プロピルペルオキシジカーボネート(IPP)を使用し、溶媒としてイソプロピルアルコールを使用した。溶媒はトルエンを6倍量注入後、真空引きで除去し、目的物を得た。GPC分析で平均分子量からは9量体であった。
【0047】
〈G4の作製〉
P(VDF−TrF)(組成モル比:VDF/トリフルオロエチレン=75/25)のオリゴマーを作製した。
【0048】
溶媒であると同時に連鎖移動剤であるアセトン溶液にVDFとTrFを質量比2:1で濃度が1質量%となるように溶解し、開始剤ジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)を使用した。開始剤の濃度は0.01質量%濃度になるようにした。
【0049】
溶媒はトルエンを5倍量注入後、真空引きで除去した。GPC分析で平均分子量からは6量体であった。
【0050】
〈G5の作製〉
ジフェニルメタンジイソシアナートのオリゴマーを作製した。
【0051】
20℃の恒温槽に4,4′−ジフェニルメタンイソシアナートの一方のイソシアナート基をt−ブタノールアミンで保護したものと4,4′−ジフェニルメタンジアミンをそれぞれアセトンに5質量%濃度に溶解して添加し、10分間混合し、10倍量のn−ヘキサンに注入し、沈殿残査を真空引きをし、目的物を得た。GPC分析で2量体を確認した。
【0052】
《(基体の作製:無機圧電素子膜の作製)》
〈基体S1:基体として鉛を含まないチタン酸系圧電素子の作製〉
成分原料であるCaCO3、La23、Bi23およびTiO2、および副成分原料であるMnOを準備し、成分原料については、成分の最終組成が(Ca0.97La0.03)Bi4.01Ti415となるように秤量した。次に、純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて8時間混合し、十分に乾燥を行い、混合粉体を得た。得られた混合粉体を、仮成形し、空気中、800℃で2時間仮焼を行い仮焼物を作製した。次に、得られた仮焼物に純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて微粉砕を行い、乾燥することにより圧電セラミックス原料粉末を作製した。微粉砕においては、微粉砕を行う時間および粉砕条件を変えることにより、それぞれ粒子径100nmの圧電セラミックス原料粉末を得た。それぞれ粒子径の異なる各圧電セラミックス原料粉末にバインダーとして純水を6質量%添加し、プレス成形して、厚み100μmの板状仮成形体とし、この板状仮成形体を真空パックした後、235MPaの圧力でプレスにより成形した。次に、上記の成形体を焼成した。最終焼結体の厚さは520μmの焼結体を得た。なお、焼成温度は、それぞれ1100℃であった。1.5×Ec(MV/m)以上の電界を1分間印加して分極処理を施した。
【0053】
〈基体S2:基体として圧電素子PZTの作製〉
PZTとは、鉛、ジルコニウム、チタンの成分がPb(Zr1−xTix)O3(0.47≦x≦1)の式の範囲以内ものであり、ここでは、x=0.2のPZTを調製した。それぞれの酸化物を秤量して純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて8時間混合し、十分に乾燥を行い、混合粉体を得た。得られた混合粉体を、仮成形し、空気中、800℃で2時間仮焼を行い仮焼物を作製した。次に、得られた仮焼物に純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて微粉砕を行い、乾燥することにより圧電セラミックス原料粉末を作製した。それぞれ粒子径の異なる各圧電セラミックス原料粉末にバインダーとして純水を6質量%添加し、プレス成形して、厚み530μmの板状仮成形体とし、この板状仮成形体を真空パックした後、235MPaの圧力でプレスにより成形した。次に、上記の成形体を焼成して最終焼結体の厚さ41μmの焼結体を得た。なお、焼成温度は、それぞれ780℃であった。1.5×Ec(MV/m)以上の電界を1分間印加して分極処理を施した。
【0054】
上記基体(無機圧電素子)の上に、上記オリゴマーの蒸着重合により200μm厚の有機圧電素子(本発明)を表1に記載の如くに作製した。蒸着温度は予めオリゴマーの蒸発速度を温度を変化させて測定してその温度で実施した。
【0055】
また、上記基体(無機圧電素子)の上に、上記オリゴマーの原料モノマー(2種のモノマー)を蒸着重合により200μm厚の有機圧電素子(比較)を表1に記載の如くに作製した。蒸着温度は予めオリゴマーの原料モノマー(2種モノマー)の蒸発速度を温度変化させて測定してその温度で実施した。
【0056】
オリゴマー及びオリゴマーの原料モノマー(2種モノマー)の蒸着重合後には、分極処理として、直流、交流、これらのパルス電圧処理、コロナ放電処理のうち、表1記載のようにしてコロナ放電処理を実施した。分極処理時には、加熱、紫外線、電子線照射処理のうち、加熱処理を実施して有機無機複合型の圧電素子試料を作製した。
【0057】
後、耐久性の試験を実施した。
【0058】
耐久性は40℃、湿度45%の部屋で連続12時間送受信した後の性能(相対感度)を測定した。試験方法は圧電素子試料各々について超音波探触子試料を各々試作し、7.5MHzの基本周波数f1を発信させ、受信高調波f2として15MHzの受信相対感度(受信相対感度:入力電圧に対する出力電圧の比に定数を掛けたものを受信相対感度とした。)を求めた。受信相対感度は、ソノーラメディカルシステム社(Sonora Medical System,Inc:2021Miller Drive Longmont,Colorado(0501 USA))の音響強度測定システムModel805(1〜50MHz)測定システムを使用した。
【0059】
以上の結果を、表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1から、本発明の場合、良好な相対感度が得られ、オリゴマーを使用してもモノマーを使用した場合と同等の優れた感度が得られることがわかる。
【0062】
そして、本発明の場合、即ち、高分子圧電製膜の作製において、特に、オリゴマーを蒸着重合させる場合(即ち、本発明の場合)には、蒸着種の違いによる共重合比の制御が不要であり、モノマー種ごとに温度変化する必要がなくなり、製造管理がし易く製造品質が安定になることがわかった。
【0063】
本発明により、従来2種以上のモノマーがかかわっていた蒸着重合について、オリゴマーを用いる蒸着重合を考慮することにより、組成の変動がなく、物性を高め、圧電性能に優れた、高感度の、有機圧電素子を製造できる超音波探触子の製造方法を提供することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】共蒸着重合の説明図。
【図2】オリゴマー蒸着重合の説明図。
【図3】コロナ放電分極処理方法の説明図。
【図4】加熱オリゴマー蒸着重合の説明図。
【図5】重合の放射線源のあるコロナ放電処理の説明図。
【符号の説明】
【0065】
1 圧電膜(オリゴマー蒸着層)
2,3 モノマー容器
4,5 モノマー溶液
6,7,8 加熱板
9 真空ポンプ
10 オリゴマー溶液
11 無機圧電層
12 有機圧電層
13 電極
14 誘電体薄膜
15 コロナ放電電極櫛形部
16 コロナ放電電極対
17 恒温箱
18 光源、電子線源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性を付与する高分子の前駆体を加熱蒸発させ基体上に衝突させながら重合させ有機圧電素子を製造することを特徴とする超音波探触子の製造方法。
【請求項2】
前記重合が熱重合、光重合、又は電子線重合であることを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子の製造方法。
【請求項3】
前記高分子の前駆体が弗化ビニリデン又は尿素化合物のオリゴマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波探触子の製造方法。
【請求項4】
前記基体上で重合と同時に分極処理しながら圧電性を付与させるたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波探触子の製造方法。
【請求項5】
前記分極処理がコロナ放電処理であることを特徴とする請求項4に記載の超音波探触子の製造方法。
【請求項6】
前記分極処理において、コロナ放電面に剥離可能な誘電体を被覆することを特徴とする請求項5に記載の超音波探触子の製造方法。
【請求項7】
前記基体の材料が、PZT、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸タンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O3]、チタン酸バリウム(BaTiO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、又はチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の超音波探触子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−42611(P2008−42611A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215513(P2006−215513)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】