説明

超音波洗浄方法及びその装置

【課題】貯水槽の壁面を移動しながら洗浄する超音波洗浄装置において、移動させるための特別な機構及び装置、或いは特別な動力機構などを必要としない、設置スペースの少ない超音波洗浄装置を提供する。
【解決手段】超音波輻射面3を有する超音波振動子装置5と、超音波振動子装置5に浮力を与える専用フロート7と、超音波振動子装置5を吊り下げるワイヤー21の巻取り機15と、超音波輻射面3と洗浄対象壁面との間隔を規制する位置決めステー23とにより超音波振動子ユニット1を構成し、複数の超音波振動子ユニット1を、巻取り機15のワイヤー21で吊り下げながら水面に浮かべて、直列状に連結して一体にした超音波洗浄装置を用いて、貯水槽の洗浄対象壁面を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を貯留する水槽及び容器等の内側の接水壁面、或いは液体中に存在する構造物などの接水壁面等に、化学的或いは生物学的に発生し付着した汚れを、超音波の物理的作用を用いて効果的且つ効率的に洗浄する、超音波洗浄方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所では、原子炉に燃料交換用プール様ステンレス水槽(キャビテー)が設けられており、燃料交換の際には当該キャビテー内に水を充填し、燃料を水中搬送している。そして、燃料交換後キャビテー内の水を抜き出して処理しているが、キャビテーの内壁面には放射性物質が付着して汚染されているので、当該内壁を掃除して前記放射性物質を除去しなければならない。
【0003】
そこで、上記問題を解決するため、原子力発電所においては、燃料交換用プール様ステンレス水槽に燃料交換用水の水張り前において、粘着性を持った専用シートなどを直接ステンレス面に貼り付け、それによって燃料交換時に発生した放射性浮遊物がステンレス表面に付着することを防止する方法が行われている。
【0004】
この方法は、水抜き後の水槽洗浄時において貼り付けた粘着シートを剥がすことによって汚れが直接付着することを防止するものであるが、この粘着シートを剥がす際に粘着面の糊が壁面に残る可能性があり、原子力発電所運転時において残留糊の影響による応力腐食割れが発生するなどの悪影響が発生する懸念が高い。
【0005】
又、前記粘着シートの施工と従来から用いられている回転ブラシなどで構成されている壁面洗浄の専用洗浄装置の併用によっても壁面の洗浄が実施されているが、回転ブラシによる洗浄装置は洗浄用の清水が必要であり、装置自体が大型であることから天井クレーンなどで吊り上げながら作業を行う必要があり、壁面に沿ったクレーン操作の難しさや同時進行が必要な重量物の移動が困難である。
【0006】
更に、粘着シートを剥がす際の作業は水抜き後の作業であり、十数メートルの高所で危険作業となることや、水抜き後に放射性浮遊物が付着して乾燥した粘着シートを剥がす際に、その振動で付着した汚染物が空気中に散逸して空気汚染を引き起こす原因となるため、厳重な防護装備が必要とされ、作業環境の悪化及び作業の安全性などに関する問題点があった。
【0007】
現在、超音波を利用した洗浄では、超音波振動子が内蔵されている、固定式又は可動式の超音波洗浄装置が用いられている。
固定式超音波洗浄装置:
現在の超音波洗浄装置の多くは、比較的小規模な液体の貯留槽の内面或いは底部の外面に、超音波振動子を予め固定してセットした、いわゆる振動子を固定して利用する洗浄槽として提供されている。
【0008】
可動式超音波洗浄装置:
超音波振動子を移動させる方法では、例えば、原子力発電所における原子炉の燃料交換用貯水槽などのプール様貯水槽において、浮体を備えた超音波振動子を動力装置により貯水槽の上に設置されたレール上を水平に移動させ、更に振動子と動力装置を固定装置に固定して水槽の水抜きに合わせてジグザグ状に壁面を洗浄する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】特公昭56−12838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来例の固定式超音波洗浄装置では、貯水槽として機能する水槽内に洗浄目的物を入れ、当該洗浄目的物のみを洗浄する場合のものであり、大規模水槽内壁面或いは液体中に浸漬された構造物の外壁面に付着した汚れを洗浄対象とする要求については、超音波振動子を水槽に固定して用いる方法では困難であった。
【0011】
また、前記特許文献1の可動式超音波洗浄装置では、該装置を安定且つ確実に移動させるための固定装置、及び移動させるためのレールや動力装置などの特別な付属機構の設置が必要であり、実際にはこれらの固定装置や移動のためのレールなど特別な付属機構の設置スペースの確保が困難であった。
【0012】
更に、近年原子力発電所においては、発電期間を長くして発電コストを削減する目的から、原子炉を停止して行う定期検査の期間を短縮して実施するなどの対応が図られているため、既設のクレーン移動用レールなどを利用した場合にあっても、洗浄中は常に装置の移動用の駆動装置がプール上部を往復移動するため、当該レール上は危険であり立ち入りを規制しなければならず、期間を短縮して安全作業を実施するという要求条件を満たすことは困難であった。
【0013】
また、その洗浄方法が水槽の水抜きに合わせてジグザグに走査しながら行わなければならないことから、除去した汚れの洗浄面への再付着を防止するための洗浄用清水供給ホースなど専用ホースの設置が必要とされ、これらの設置についても同様に複数の別の作業工程との工程干渉が発生し、実現化を困難とする問題であった。
【0014】
この発明は、上記事情に鑑み、例えば前述した原子力発電所における燃料交換用プール様貯水槽のステンレス壁面の洗浄を行う場合において、超音波振動子装置を設置して対象とする垂直壁面を洗浄しながら移動させる際に、移動のための特別な機構や動力装置、或いは装置自体を安定に固定するための固定機構やレールなどを必要とせず、少ない設置スペースで設置できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、超音波輻射面を有する超音波振動子装置と、該超音波振動子装置に浮力を与える専用フロートと、該超音波振動子装置を吊り下げるワイヤーの巻取り機と、前記超音波輻射面と洗浄対象壁面との間隔を規制する位置決めステーと、を備えていることを特徴とする。
【0016】
この発明は、超音波輻射面を有する超音波振動子装置と、該超音波振動子装置に浮力を与える専用フロートと、該超音波振動子装置を吊り下げるワイヤーの巻取り機と、前記超音波輻射面と洗浄対象壁面との間隔を規制する位置決めステーと、を備えた超音波振動子ユニットが、複数直列状に配設されるとともに、該超音波振動子ユニットを連結して一体にしたことを特徴とする。
【0017】
この発明の超音波振動子ユニットが、連結手段を介してエンドレス状、又は、1本の線状に連結されていることを特徴とする。この発明の超音波振動子装置に、圧力水を排出する推進力発生手段が設けられていることを特徴とする。
【0018】
この発明は、専用フロートの付いた超音波振動子装置を備えた超音波洗浄装置により、液体の入っている貯水槽の洗浄対象壁面を洗浄する超音波洗浄方法であって;前記超音波洗浄装置を巻取り機のワイヤーで吊り下げながら水面に浮かべ、前記超音波振動子装置の超音波輻射面を位置決めステーを介して洗浄対象壁面に対向させる行程と、前記超音波洗浄装置を駆動させるとともに、前記貯水槽の水抜きを開始する行程と、前記貯水槽の水抜きの開始後、水位の降下に合わせて前記ワイヤーを緩め、前記洗浄対象壁面に位置決めステーを当接させながら前記超音波洗浄装置を垂直方向に降下せしめる行程と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
この発明は、専用フロートの付いた複数の超音波振動子ユニットを、直列状に連結して一体にした超音波洗浄装置を用いて、液体の入っている貯水槽の洗浄対象壁面を洗浄する超音波洗浄方法であって;前記各超音波振動子ユニットを巻取り機のワイヤーで吊り下げながら水面に浮かべ、前記各超音波振動子ユニットの超音波輻射面を位置決めステーを介して洗浄対象壁面に対向させる行程と、前記超音波洗浄装置を駆動させるとともに、前記貯水槽の水抜きを開始する行程と、前記貯水槽の水抜き開始後、水位の降下に合わせて前記ワイヤーを緩め、前記各超音波振動子ユニットを垂直方向に降下せしめる行程と、を備えていることを特徴とする。
【0020】
この発明の複数の超音波振動子ユニットが、洗浄対象壁面の平面視形状に対応してエンドレス状、又は、1本の線状に連結されていることを特徴とする。この発明は、洗浄対象壁面に沿って降下させる際において、超音波振動装置の形状及び重量などに応じて当該壁面近傍からの離隔を防止するための補助具とする、推進力発生手段から圧力水を排出し、超音波洗浄装置の位置調整を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の超音波洗浄装置は、水などの液体の貯留水槽上部に超音波発生装置及び貯水槽内に設置した超音波洗浄装置を吊り下げるための小型の巻取り機を設置するだけの簡単な取り付け方法によって設置することができる。そのため、より少ない設置スペースで設置できる利点があり、作業場所の安全性や作業場所の効率的な利用を図ることができる。
【0022】
更に、水中の超音波振動子ユニットは、当該巻取り機から排出される吊り下げワイヤーにより係留状態で設置されているため、例えば水抜き時においてその位置から水抜き速度に合わせて、該装置自体の自重により鉛直方向に壁面を一度に洗浄を行うことができる。
【0023】
本発明の超音波洗浄方法では、超音波洗浄装置を壁面に沿って移動させるための特別な動力装置の設置が不要であり、この吊り下げ方法によって前記洗浄装置の水中重量、ワイヤーの取り付け位置、及び下方への吊り下げ距離によって壁面方向に対する力が決定されるため、前記装置を壁面近傍に常に近づけておく特別な装置を必要としない。そのため、前記装置の機構そのものを簡素化することができ、メンテナンスの向上、或いは前記装置の設置のための複雑な手順を必要とせず作業自体の効率化に効果的である。
【0024】
本発明の超音波洗浄装置は、単位ユニットと呼ばれる個々に独立した超音波振動子装置をチェーン状(エンドレス状)に連結して利用する装置であることから、洗浄対象壁面の水平線上の方向を全てカバーすることで、それを壁面に沿わせて降下させて移動させることによって目的の洗浄面を一度に洗浄することができ、洗浄時間が大幅に短縮できる利点がある。
【0025】
本発明は、超音波振動子ユニットを洗浄対象壁面の平面線上の距離を、複数の超音波振動子ユニットを多重に連結して使用する構造である。そのため、連結する超音波振動子ユニットの数を適切に調節することにより、他の様々な平面形状を持つ貯水槽などへの適合性が高く、大型貯留タンク内壁面の洗浄、水泳用プールなどの内壁面の洗浄、或いは船舶の船体外壁面の洗浄なども利用範囲として考えることができ、作業の安全性及び効率性の向上が図れるなど産業上の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明を実施するための最良の形態は、連結する個々の超音波振動子ユニットが、水槽などの洗浄対象壁面の平面形状(曲面或いは平面)をトレースした総延長距離を適当な長さに区分した適当な長さ、及び洗浄対象壁面及び貯留される液体種類や性質に応じた適切な形状と浮力を持つ専用フロートを有し、且つ目的とする洗浄対象壁面の平面形状の総延長距離等に相当する距離を洗浄できるように連結させて設置する。また、それらは個々に水槽上部に設置した、適当な力で巻き取ることができる機能を有する巻取り機から排出されるワイヤーによって、鉛直下方に吊り下げるように係留状態で取り付ける。
【0027】
上記のように設置した装置を、例えば水槽の水抜きを行う際において、水抜き速度に合わせて同時に降下させて壁面の洗浄を行う。或いは、錘などによって浮力を調節して壁面近傍を潜行させながら降下させて壁面等の洗浄を行う。
【実施例】
【0028】
この発明の実施例を図1〜図4により説明する。
超音波洗浄装置30は、超音波振動子ユニット1を備えている。この超音波振動子ユニット1は、超音波輻射面3を有する超音波振動子装置5と、該超音波振動子装置5の上面側に連結された専用フロート7と、を備えている。
【0029】
専用フロート7の上面7aには、ワイヤー固定部11と、電源ケーブル防水接続部13とが設けられている。前記ワイヤー固定部11には、巻取り機15の吊り下げ用専用ワイヤー17が固定されている。
【0030】
前記接続部13には、超音波発信機19の電源ケーブル21の先端部が固定され、前記超音波発信機19は前記電源ケーブル21を介して超音波振動子装置5に接続されている。専用フロート7の左右の側面7bには、位置決めステー23、連結装置用止め具25,及び連結部材27が設けられている。
【0031】
位置決めステー23は、専用フロート7の前面7c側に設けられ、基部23aと回転ローラ状の当接部23bとから構成されている。前記当接部23bは、側面7bの延長面方向に、所定長さ、例えば、数cm〜数十cm、突出しているが、この突出量は必要に応じて適宜選択される。
【0032】
連結装置用止め具25は、側面7bのほぼ中央部に設けられ、該止め具25には連結装置12が固定されている。連結部材27は、前記位置決めステー23側と前記留め具25側にそれぞれ設けられており、この連結部材27により専用フロート7は超音波振動子装置5に連結されている。又、この連結部材27により、超音波振動装置5の超音波輻射面の洗浄対象壁面13aに対する角度を調整し、決定する。
【0033】
専用フロート7は、長方形状に形成され、その浮力は超音波振動子装置5の上面が水面WLよりわずか下の一定水位の点に水平に位置して浮かぶ様に調整されているが、その形状、厚さ、浮力の大きさ等は必要に応じて適宜選択される。
【0034】
推進力発生手段としての小型ポンプ9は、超音波振動子装置5に内蔵若しくは接続されており、その給水口9aは超音波輻射面3側にある。この小型ポンプ9は前記給水口9aから矢印WJ方向に圧力水を排出させ、超音波振動子ユニット1の位置調整を補助するものであるが、必ずしも設ける必要はない。
【0035】
次に、この超音波洗浄装置30の使用方法について説明する。
小型貯水槽の内壁面の様に、洗浄対象壁面が狭い場合には1個の超音波振動子ユニット1からなる超音波洗浄装置を用いるが、大型貯水槽の内壁面の様に、洗浄対象壁面が広い場合には、複数の超音波振動子ユニット1を連結して一体にした超音波洗浄装置を用いられるが、ここでは、後者の場合について説明する。なお、貯水槽とは、液体を貯留する容器を指称するものあり、この液体は水に限定されるものではない。
【0036】
複数の超音波振動子ユニット1を、連結装置12を介して直列状に連結し、洗浄対象壁面13aの平面視形状に対応するチェーン状(エンドレス状)の超音波洗浄装置30を形成する。この超音波洗浄装置30の長さは、大型貯水槽、例えば、原子炉Gの燃料交換用プール様貯水槽(キャビテー)28の洗浄対象壁面13aの水平方向長さ、即ち、該貯水槽28の内周長さ、に対応しているが、その長さは必要に応じて適宜選択される。
【0037】
なお、超音波洗浄装置30は、必ずしもエンドレス状にする必要はなく、例えば、複数の超音波振動子ユニット1を直列状に並べて連結し、一本の線状(直線又は曲線)にしても良い。
図2,図3に示すように、超音波洗浄装置30の超音波輻射面3を洗浄対象壁面13aに対向させ、巻取り機15のワイヤー17を緩めながら、前記超音波洗浄装置30を水wの充填されているキャビテー28内に入れ、水面WLに浮かべる。
【0038】
この時、各超音波振動子ユニット1の位置決めステー23の当接部23bは、洗浄対象壁面13aに当接しているので、前記各超振動子ユニット1は同一距離だけ、例えば、30cm、洗浄対象壁面13aから離れている。従って、超音波洗浄装置30は、全体として洗浄対象壁面13aの平面視形状、即ち、貯水槽28の内壁形状、とほぼ相似形の状態で係留される。
【0039】
超音波発信機19を始動させて超音波洗浄装置30を駆動し、洗浄対象壁面13aの洗浄を開始するとともに、キャビテー28内の水抜きを開始する。そうすると、水面WLが下降するので、その下降速度に併せてワイヤー17を緩めると、各超音波振動子ユニット1は、位置決めステー23で洗浄対象壁面13aを押圧しながら垂直方向に降下する。そのため、水抜き速度に合わせて同一水平面上の洗浄対象壁面13a全周を同時に洗浄することができる。
【0040】
前述の様に、前記各超音波振動子ユニット1の位置決めステー23によって洗浄対象壁面13aと超音波輻射面3との適切な距離を維持し、又、前記ユニット1を巻取り機15から排出されるワイヤー17で吊り下げるようすることによって、当該超音波振動子装置5が洗浄対象壁面13aから離れずに降下するために水中での重量と吊り上げる力の合力を、超音波振動子ユニット1が洗浄対象壁面13a方向に押す力として有効に利用することができ、キャビテー28の水抜き時に超音波洗浄装置30を洗浄対象壁面13aに沿って降下させながら超音波の作用を利用した洗浄を行うことができる。
【0041】
前記洗浄対象壁面13aへの合力は、位置決めステー23の長さ、水中の超音波振動子ユニット1の重量、巻取り機15から排出される専用ワイヤー17と超音波振動子ユニット1の取付位置及び専用ワイヤー17によって上方に吊り上げる力によって、超音波振動子装置5の洗浄対象壁面13a方向の力が決定される。当該超音波振動子ユニット1から輻射された超音波の振動圧によって、超音波振動子ユニット1が洗浄対象壁面13aから離れる場合には、小型ポンプ9を駆動して、給水口9aから矢印WJ方向に圧力水を排出させ、洗浄対象壁面13a側への推進力を得ることによって、洗浄対象壁面13aへの補助的な力を発生させ、超音波振動子ユニット1の位置を適正な位置に止めることができる。
【0042】
この様に、超音波洗浄装置30は、原子力発電所の燃料交換用プール様貯水槽28の水抜き時などにおける清掃洗浄の際において、その清掃作業水抜き工程に合わせて一度に行うことが出来る。また、洗浄作業終了時は、最下部まで到達した超音波洗浄装置30は、水洗して専用のケースに収納して吊り上げを行うため、洗浄中は運転状況の確認のみで人手を必要としない。
【0043】
また、設置においても各超音波振動子ユニット1への電源ケーブル21及び超音波発信機19の設置など簡単な作業を要するのみである。更に、水槽上部装置設置場所については、省スペース化を図ることができ、他作業と並行した作業工程であっても作業干渉を最小限にすることができる。
【0044】
この超音波洗浄装置では、洗浄実施中においても、燃料交換用プール用貯水槽の上部などにおいて同時進行で行う他の作業工程に干渉を与えないような、単純で簡単な機構によって容易に取り付けが可能である。又、超音波の物理的作用を利用して作業環境を悪化させず、且つ高所作業となる危険作業を排除できる効果的な洗浄が確実に行え、当該超音波洗浄装置(除染装置)によって経済的効果が発揮される。
【0045】
更に、この超音波洗浄装置は、原子力発電所以外の大型貯水槽の壁面、或いは水中に存在する船体外壁面や構造物などの外壁面の洗浄にも同様に有効に利用することができる。
又、この超音波洗浄装置は、取り扱いやメンテナンス性が良く、必要時以外の収納性及び経済性の面からも様々な洗浄面の水平方向の形状に対応できる汎用性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、主に大型貯水槽などの垂直壁面などの接水面を超音波の作用を効果的に利用するもので、それぞれの超音波振動子ユニットは、目的容器の平面上の外周距離、貯留液の液性などに応じて設計を行うことで、あらゆる形状にも対応して洗浄作業の著しい効率化を図ることが可能である。
【0047】
又、本発明は、それらの超音波振動子ユニットを多重に連結させて水槽の水平断面の形状に連結させた一連の装置として設置し、洗浄作業時の水抜きに合わせて垂直に吊り下げて水面の低下に合わせて目的とする壁面を一度に洗浄できるが、この際当該装置の水槽上部への取り付け、及び設置スペースにおいても特別な機構や装置を有しないため簡単に設置することができ、原子力発電所の燃料交換用プール様貯水槽の洗浄をはじめ設置スペースが無いタンク状貯水槽やなど大型水槽の接水壁面の洗浄に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であり、超音波振動子ユニットの斜視図である。
【図2】超音波振動子ユニットの使用状態を示す縦断面図である。
【図3】超音波振動子ユニットを複数連結した、超音波洗浄装置の使用状態を示す平面図である。
【図4】図2の平面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 超音波振動子ユニット
3 超音波輻射面
5 超音波振動子装置
7 専用フロート
12 連結装置
15 巻取り機
19 超音波発信機
23 位置決めステー
25 連結装置用留め具
30 超音波洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波輻射面を有する超音波振動子装置と、該超音波振動子装置に浮力を与える専用フロートと、該超音波振動子装置を吊り下げるワイヤーの巻取り機と、前記超音波輻射面と洗浄対象壁面との間隔を規制する位置決めステーと、を備えていることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
超音波輻射面を有する超音波振動子装置と、該超音波振動子装置に浮力を与える専用フロートと、該超音波振動子装置を吊り下げるワイヤーの巻取り機と、前記超音波輻射面と洗浄対象壁面との間隔を規制する位置決めステーと、を備えた超音波振動子ユニットが、直列状に複数配設されるとともに、該超音波振動子ユニットを連結して一体にしたことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項3】
超音波振動子ユニットが、連結手段を介してエンドレス状、又は、1本の線状に連結されていることを特徴とする請求項2記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
超音波振動子装置に、圧力水を排出する推進力発生手段が設けられていることを特徴とする請求項1、2、又は、3記載の超音波洗浄装置。
【請求項5】
専用フロートの付いた超音波振動子装置を備えた超音波洗浄装置により、液体の入っている貯水槽の洗浄対象壁面を洗浄する超音波洗浄方法であって;
前記超音波洗浄装置を巻取り機のワイヤーで吊り下げながら水面に浮かべ、前記超音波振動子装置の超音波輻射面を位置決めステーを介して洗浄対象壁面に対向させる行程と、
前記超音波洗浄装置を駆動させるとともに、前記貯水槽の水抜きを開始する行程と、
前記貯水槽の水抜きの開始後、水位の降下に合わせて前記ワイヤーを緩め、前記洗浄対象壁面に位置決めステーを当接させながら前記超音波洗浄装置を垂直方向に降下せしめる行程と、
を備えていることを特徴とする超音波洗浄方法。
【請求項6】
専用フロートの付いた複数の超音波振動子ユニットを、直列状に連結して一体にした超音波洗浄装置を用いて、液体の入っている貯水槽の洗浄対象壁面を洗浄する超音波洗浄方法であって;
前記各超音波振動子ユニットを巻取り機のワイヤーで吊り下げながら水面に浮かべ、前記各超音波振動子ユニットの超音波輻射面を位置決めステーを介して洗浄対象壁面に対向させる行程と、
前記超音波洗浄装置を駆動させるとともに、前記貯水槽の水抜きを開始する行程と、
前記貯水槽の水抜き開始後、水位の降下に合わせて前記ワイヤーを緩め、前記各超音波振動子ユニットを垂直方向に降下せしめる行程と、
を備えていることを特徴とする超音波洗浄方法。
【請求項7】
複数の超音波振動子ユニットが、洗浄対象壁面の平面視形状に対応してチェーン状、又は、一本の線状に形成されていることを特徴とする請求項6記載の超音波洗浄方法。
【請求項8】
推進力発生手段から圧力水を排出し、超音波洗浄装置の位置調整を行うことを特徴とする請求項5、又は、6記載の超音波洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−320826(P2006−320826A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145565(P2005−145565)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)
【出願人】(500054329)原電事業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】