超音波流量計及び流量計測方法
【課題】流路内部に仕切部材などを介在させること無く、流速分布が流量域で変化しても、流速分布状態のパターンを正確に推定し、その流速分布パターンに基づいて被測定流体の流量を算出することができる超音波流量計を提供する。
【解決手段】超音波流量計は、一対の超音波トランスジューサ10,20により送受信される超音波の伝播時間に基づいて被測定流体の流量を算出する流量算出部13を備える。一対の超音波トランスジューサ10,20は、2以上の異なる周波数帯域の超音波ビームパターンを送受信するための複数の圧電素子12,13,22,23を積層して備え、2以上の超音波ビームパターンにより流路30の幅方向を複数の検出エリアに分割する。流量算出部14は、2以上の超音波ビームパターンが複数の検出エリアを伝播して得られた伝播時間情報に基づいて、被測定流体の流速分布を推定し、推定した流速分布から被測定流体の流量を算出する。
【解決手段】超音波流量計は、一対の超音波トランスジューサ10,20により送受信される超音波の伝播時間に基づいて被測定流体の流量を算出する流量算出部13を備える。一対の超音波トランスジューサ10,20は、2以上の異なる周波数帯域の超音波ビームパターンを送受信するための複数の圧電素子12,13,22,23を積層して備え、2以上の超音波ビームパターンにより流路30の幅方向を複数の検出エリアに分割する。流量算出部14は、2以上の超音波ビームパターンが複数の検出エリアを伝播して得られた伝播時間情報に基づいて、被測定流体の流速分布を推定し、推定した流速分布から被測定流体の流量を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計及び流量計測方法、より詳細には、主にガスなどの流体の流速や流量を計測する超音波流量計及び該超音波流量計による流量計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流路を流れる流体の流速を計測する際に、流路を流れる流体には、その流量によって流速分布が異なることは流体力学的に一般に知られている。すなわち、流れが遅い時には、流路幅方向で層流と呼ばれる放物線形状の流速分布を示し、ピークの流速と、平均流速とが異なる分布状態となる。逆に流れが速くなると、徐々にその分布は崩れ、乱流域と呼ばれる流域となり、その時の流速分布は、ピーク流速が平均流速と等しい形状となるバスタブ形状と呼ばれる流速分布となり、流速分布は流路幅方向で一様に等しい分布状態となる。
【0003】
また、層流域では、放物線形状の流速分布形状に若干の相異が発生し、幅方向での流速差は一定では無い。更に層流域では、ガス種や、流路形状寸法等により、流速分布が異なることが一般に知られている。
【0004】
このように流量域、流体の種類、流路形状寸法等により、流路幅方向での流速分布に差が存在すると以下の問題が生じる。
すなわち、超音波トランスジューサにより流速分布を横切るように超音波を送受信させ、流路を流れる流体を計測する際に、流量域によって、計測される平均流速は分布の影響を受け、この分布の影響により計測した値には誤差が含まれるため、正確な流量を算出できないことになる。
仮にこの誤差の影響を補正するにしても、計測している流速分布そのものが把握出来ないので、流量域による流速分布を平均流速として補正することは極めて困難である。
【0005】
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、この分布の影響を低減し、どの流量域でも平均化された流速分布が得られるように、流路内部の幅方向を複数のエリアに分割し、特に層流域で発生する放物線形状の流速分布を平滑化するように、流路内部に仕切部材を配置する構成が記載されている。これによれば、層流域でも乱流域と同様に平均化された流速分布を計測し扱えるようになるため、正確な流速を算出でき、高精度に流量を算出することができる。
【特許文献1】特開2005−257363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明の場合、仕切部材を流路内部に挿入することで、流れに対して抵抗を発生させることになり、圧力損失が顕著化してしまうという問題がある。仮にこの圧力損失を一定レベルに抑えることができたとしても、製品の固体差、仕切部材の組み込み精度、バラツキ、温度因子等による影響を考慮すると、製品の安定性、歩留り等にも影響する可能性がある。さらに、仕切部材を追加することで、部品点数が増加し、これに伴いコスト高となってしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、流路内部に仕切部材などを介在させること無く、流速分布が流量域で変化しても、流速分布状態のパターンを正確に推定し、その流速分布パターンに基づいて被測定流体の流量を算出することができる超音波流量計及び該超音波流量計による流量計測方法を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、被測定流体が流れる流路を挟んで対向する位置に配置された一対の超音波トランスジューサと、該一対の超音波トランスジューサにより送受信される超音波の伝播時間に基づいて前記被測定流体の流量を算出する流量算出手段とを備えた超音波流量計であって、前記一対の超音波トランスジューサは、2以上の異なる周波数帯域の超音波ビームパターンを送受信するための複数の圧電素子を積層して備え、前記流量算出手段は、前記2以上の超音波ビームパターンの伝播時間情報に基づいて、前記被測定流体の流速分布を推定し、該推定した流速分布から前記被測定流体の流量を算出することを特徴としたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記複数の圧電素子は、第1の圧電素子と、該第1の圧電素子に積層された第2の圧電素子とで構成され、前記第1の圧電素子により高周波数側の超音波ビームパターンを送受信し、前記第1の圧電素子及び前記第2の圧電素子により低周波数側の超音波ビームパターンを送受信することを特徴としたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記2以上の超音波ビームパターンは、前記一対の超音波トランスジューサの高周波数側に対応して前記流路の幅よりも狭いビーム幅を持つ第1の超音波ビームパターンと、前記一対の超音波トランスジューサの低周波数側に対応して前記流路の幅以上のビーム幅をもつ第2の超音波ビームパターンとを含むことを特徴としたものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1の発明において、前記2以上の超音波ビームパターンの互いに異なる周波数は、前記一対の超音波トランスジューサの高周波数帯域内の周波数と低周波数帯域内の周波数であることを特徴としたものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれか1の発明において、前記2以上の超音波ビームパターンの互いに異なる周波数は、前記一対の超音波トランスジューサの各周波数帯域内の上限周波数と下限周波数であることを特徴としたものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1の発明において、前記一対の超音波トランスジューサは、厚み方向に縦振動する圧電素子を2種類以上積層し、該2種類以上の圧電素子の各共振周波数における超音波の波長の約1/4の奇数倍に音響整合されていることを特徴としたものである。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記一対の超音波トランスジューサそれぞれは前記2種類以上の圧電素子が積層方向に分割され、該分割された前記2種類以上の圧電素子はそれぞれ独立した超音波トランスジューサとして機能することを特徴としたものである。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1の発明において、前記流量算出手段は、前記2以上の超音波ビームパターンによる伝播時間の比の値あるいは該伝播時間から算出される流速の比の値に基づいて、前記流路の幅方向における流速分布を推定し、該推定した流速分布から前記被測定流体の流量を算出することを特徴としたものである。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか1の発明において、前記流量算出手段は、前記2以上の超音波ビームパターンより得られた伝播時間あるいは該伝播時間から算出される流速から、前記被測定流体の流量域が乱流域と判断された場合、前記2以上の超音波ビームパターンのうち、低周波数帯域側の共振特性を示す圧電素子の共振周波数近傍における超音波ビームパターンを用いて前記被測定流体の流量を算出することを特徴としたものである。
【0017】
請求項10の発明は、請求項8の発明において、前記流量算出手段は、前記推定した流速分布に応じて、流速分布補正係数を付与し、前記被測定流体の流量を算出することを特徴としたものである。
【0018】
請求項11の発明は、請求項8の発明において、前記流量算出手段は、流体の種類、流路寸法、流量レンジの少なくとも1つに基づいて、補正係数を付与し、前記被測定流体の流量を算出することを特徴としたものである。
【0019】
請求項12の発明は、被測定流体が流れる流路を挟んで対向する位置に配置された一対の超音波トランスジューサと、該一対の超音波トランスジューサにより送受信される超音波の伝播時間に基づいて前記被測定流体の流量を算出する流量算出手段とを備えた超音波流量計による流量計測方法であって、前記一対の超音波トランスジューサが積層して備える複数の圧電素子が、2以上の異なる周波数帯域の超音波ビームパターンを送受信し、前記流量算出手段が、前記2以上の超音波ビームパターンの伝播時間情報に基づいて、前記被測定流体の流速分布を推定し、該推定した流速分布から前記被測定流体の流量を算出することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、流路内部に仕切部材などを介在させること無く、流速分布が流量域で変化しても、流速分布状態のパターンを正確に推定し、その流速分布パターンに基づいて被測定流体の流量を算出することができるため、高精度な流量計測を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の超音波流量計が備える超音波トランスジューサの配置例を示す図である。図1(A),(B)は一対の超音波トランスジューサを側面から見たときの配置例を示す。本発明の超音波流量計は、被測定流体が流れる流路30を挟んで対向する位置に配置された一対の超音波トランスジューサ10,20と、一対の超音波トランスジューサ10,20により送受信される超音波の伝播時間に基づいて流路30を流れる被測定流体の流量を算出する流量算出手段に相当する流量算出部14とを備える。
【0022】
超音波トランスジューサ10は、音響整合層11、圧電素子12,13を備える。また、超音波トランスジューサ10と対となる超音波トランスジューサ20は、同様に、音響整合層21、圧電素子22,23を備える。一対の超音波トランスジューサ10,20は、流れ方向に対して角度θだけ傾いて設置され、両者の放射面間の距離はL(伝播長)となる。なお、本例の場合、流路30の中を、被測定流体が図の矢印の方向に向かって流速Vで流れているものとする。
【0023】
図1(A),(B)に例示するように、流路30の幅方向に対して、複数の圧電素子を積層する構造を有する超音波トランスジューサ10,20が、流路30の上流側及び下流側であって、流路流れ方向に対して斜めに対向する位置に配置される。すなわち、被測定流体が流れる流路30の上流側及び下流側に、流れを横切るように1対の超音波トランスジューサ10,20を対向させて配置させ、上流側の超音波トランスジューサ10から下流側の超音波トランスジューサ20へと、また下流側の超音波トランスジューサ20から上流側の超音波トランスジューサ10へと超音波を伝播させる。
【0024】
一対の超音波トランスジューサ10,20は2種類以上の異なる共振特性を有する。このための構成として、超音波トランスジューサ10,20それぞれは、2以上の異なる周波数帯域(高周波数側と低周波数側)の超音波ビームパターンを送受信するための複数種類の圧電素子(PZT)を積層して備え、これら2以上の超音波ビームパターンにより流路30の幅方向を複数の検出エリアに分割する。
そして、流量算出部14は、2以上の超音波ビームパターンが複数の検出エリアを伝播して得られた伝播時間情報に基づいて、被測定流体の流速分布を推定し、さらに、この流速分布から平均流速を算出することにより被測定流体の流量を算出する。
【0025】
超音波トランスジューサ10において、複数の圧電素子は、第1の圧電素子12と、第1の圧電素子12に積層された第2の圧電素子13とで構成される。第1の圧電素子12を用いて高周波数側の超音波ビームパターンを送受信し、第1の圧電素子12及び第2の圧電素子13を同時に用いて低周波数側の超音波ビームパターンを送受信する。これらの超音波ビームパターンは、同一放射面から放射され、2種類の異なる周波数により互いに指向性が異なっている。なお、超音波トランスジューサ20についても上記と同様に構成される。
【0026】
ここで、2以上の超音波ビームパターンは、図1(A)に示すように、一対の超音波トランスジューサ10,20の高周波数側に対応して流路30の幅よりも狭いビーム幅をもつ第1の超音波ビームパターンと、図1(B)に示すように、一対の超音波トランスジューサ10,20の低周波数側に対応して流路30の幅以上のビーム幅をもつ第2の超音波ビームパターンとから構成される。
【0027】
なお、2以上の超音波ビームパターンの互いに異なる周波数は、比較的周波数が離れていることが望ましく、一対の超音波トランスジューサ10,20の周波数帯域における高周波数帯域内の周波数と低周波数帯域内の周波数としてもよく、あるいは、一対の超音波トランスジューサ10,20の各周波数帯域内の上限周波数と下限周波数としてもよい。
【0028】
このように、少なくとも2種類以上の圧電素子を積層し、2種類以上の周波数帯域を有する超音波トランスジューサにおいて、図1(A)に示すように、高周波数側であって、その指向性X(=θ1/2)が流路幅よりも狭く流路幅方向のほぼ中央部を伝播する第1の超音波ビームパターンと、図1(B)に示すように、低周波数側であって、その指向性Y(=θ1/2)が流路幅ほぼ全域に広がる第2の超音波ビームパターンとを送受信させる。すなわち、異なる2種類以上の周波数帯域内で、指向性が互いに異なる超音波ビームパターンを送受信させて、流路幅方向を2つ以上の検出エリアに分割することにより、各検出エリアにおける流路幅方向で発生する流速分布パターンを正確に推定する。
【0029】
例えば、中心周波数(≒共振周波数)を500kHzとし、上限周波数約650kHz、下限周波数約400kHzの高周波数となる第1の圧電素子と、この第1の圧電素子に積層された第2の圧電素子とで構成した場合について想定する。第1及び第2の圧電素子により、中心周波数(≒共振周波数)を300kHzとし、上限周波数約450kHz、下限周波数約250kHzの低周波数となる合成の圧電素子が構成される。まず高周波数による第1の圧電素子による第1の周波数を固定し、例えば中心の500kHzで超音波トランスジューサを駆動し、この際得られた伝播時間Tjc1を記憶する。
その後、低周波数の合成された第1及び第2の圧電素子による、例えば中心周波数300kHzで駆動し得られた伝播時間Tjw1とを比較し、この時間が等しければ、さらに駆動する周波数を徐々に下げていき、例えば駆動周波数が下限値250kHzとなっても、伝播時間が等しく変化がなければ、流速分布は乱流域と推定される。一方、伝播時間に変化があり、Tjc1(中心を伝播する時間)>Tjw1(幅方向全域を伝播する時間)、であれば、流速分布は層流域と推定されるため、その比の値に応じて流速分布補正係数を付与すればよい。
このように、超音波トランスジューサの周波数による伝播時間の比較により、周波数を徐々に変化させ、両者(Tjc1とTjw1)を比較することで流量域を推定することができる。
【0030】
図2は、周波数帯域の異なる超音波ビームパターンの一例を示す図である。ここでは上流側の超音波トランスジューサ10の記載を省略する(以下、後述の各図面において同様とする)。図1に示したように、被測定流体(ここでは都市ガス(13A))が流れる流路30の上流側及び下流側に、流れを横切るように一対の超音波トランスジューサ10,20を対向させて配置させ、上流側の超音波トランスジューサ10から下流側の超音波トランスジューサ20へ(順方向の直接伝播)、また下流側の超音波トランスジューサ20から上流側の超音波トランスジューサ10へ(逆方向の直接伝播)と超音波ビームを伝播させる。
【0031】
図2(A),(B)の左図には、超音波ビームパターンと共に、流速分布の相異を示している。図中、(3)の2点鎖線は流れが速いときの乱流域の流速分布、(1)の1点鎖線,(2)の実線は流れが遅いときの層流域の流速分布を示す。なお、後述の図3、図4、図5(B),(C)、図7、図10、図11、図12(A)、図13(A)においても同様とする。
【0032】
図2(A)は、計測媒質を都市ガス(13A)、超音波トランスジューサの放射面の直径Dを約12mm、高周波数側の第1の周波数f1を500KHzとしたときの、超音波ビームパターン(図中左側)と、計算結果(図中右側)とを示す。また、図2(B)は、計測媒質を都市ガス(13A)、超音波トランスジューサの放射面の直径Dを約12mm、低周波数側の第2の周波数f2を300KHzとしたときの、超音波ビームパターン(図中左側)と、計算結果(図中右側)とを示す。
この例の場合、計算結果から、図2(A)に示す高周波数側の第1の周波数f1での指向性が約3.0°、図2(B)に示す低周波数側の第2の周波数f2での指向性が約5.0°となる。従って、両者において約1.7倍異なる指向性を利用し、流体の流速分布を推定し、平均流速を算出することができる。
【0033】
図3は、周波数帯域の異なる超音波ビームパターンの他の例を示す図である。
図3(A)は、計測媒質を都市ガス(13A)、超音波トランスジューサの放射面の直径Dを約15mm、高周波数側の第1の周波数f1を600KHzとしたときの、超音波ビームパターン(図中左側)と、計算結果(図中右側)とを示す。また、図3(B)は、計測媒質を都市ガス(13A)、超音波トランスジューサの放射面の直径Dを約15mm、低周波数側の第2の周波数f2を200KHzとしたときの、超音波ビームパターン(図中左側)と、計算結果(図中右側)とを示す。
この例の場合、計算結果から、図3(A)に示す高周波数側の第1の周波数f1での指向性が約2.0°、図3(B)に示す低周波数側の第2の周波数f2での指向性が約6.0°となる。従って、両者において約3倍異なる指向性を利用し、流体の流速分布を推定し、平均流速を算出することができる。
【0034】
このように、互いに異なる2種類以上の周波数により指向性の異なる超音波ビームパターンを発生させ、幅方向で発生する流速分布を、ほぼ2つの検出エリアに分割し計測することができる。このため、流量による流速分布の相異である流速分布パターンを把握し、平均流速を算出し、流量演算を行うことができる。これらの流量計測は流量算出部14が行うものとする。
【0035】
流路を流れる被測定流体は、流量により幅方向での流速分布に差ができる。特に、流速が遅い範囲では、幅方向での流速分布は放物線形状であり、流速が速い範囲には、バスタブ形状となることが一般的に知られている。そこで、前述したように、互いに指向性が異なる2種類以上の超音波ビームにより、流路幅方向を、幅方向全体をほぼ一様に伝播するエリアと、中心部に集中し伝播するエリアとに分割する。すなわち、超音波トランスジューサから放射される超音波ビームが、周波数が低い時には広がり、逆に高い時には狭くなる効果を利用し、この超音波トランスジューサの高い周波数(第1の周波数)による超音波ビームとして、ビーム幅が流路幅よりも狭くなる指向性を持つビームパターンを伝播させ、逆に低い周波数(第2の周波数)による超音波ビームとしては、ビーム幅が流路幅方向にほぼ一様に広がる指向性を持つビームパターンを伝播させる。このそれぞれ異なるエリアを有する最低2種類の超音波ビームパターンにより、それぞれ独立に超音波を送受信できる構成とすることで、幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な相異が識別でき、流量による流速分布の相異による計測誤差を著しく低減することができる。
【0036】
また、流路内部に流速の分布を制御するための仕切板、整流板等の付加部材を使用しなくても、同等な精度が確保出来るため、製造コストの低減を図ることができる。
また、複数の幅方向に分割した超音波ビームのパターンによる伝播時間の相異から、直接流速分布状態が把握できるので、流路寸法、仕切板の配置精度、寸法精度等の固体差による影響を受けることがなく、さらには、温度による影響も少ないため、安定性が良く高精度な流速計測を実現可能とする。
【0037】
図4は、高周波数帯域側及び低周波数帯域側の各周波数における超音波ビームパターンとその流速分布の状態を示す図で、図4(A)は高周波数側を示し、図4(B)は低周波数側を示す。
図4(B)に示すように、図4(A)に示すように、超音波トランスジューサの高周波数側の周波数による第1の超音波ビームパターンは、流路幅よりも狭い指向性X(=θ1/2)を満足し、一方、低周波数側の周波数による第2の超音波ビームパターンは、流路幅方向ほぼ全域に広がる指向性Y(=θ1/2)を満足する。
【0038】
このように互いに異なる2種類の周波数における指向特性の関係が、X<Yの関係を満足し、これら2種類の超音波ビームパターンにより伝播時間を計測する。まず、高周波数側の周波数における第1の超音波ビームパターンによる伝播時間を計測する。すなわち、超音波トランスジューサ10から放射される超音波ビームが、下流側の超音波トランスジューサ20で受信されるまでに直接伝播する時間計測値(高周波数側の第1の周波数f1による順方向伝播時間)を“Tj1”とし、これとは逆に、下流側の超音波トランスジューサ20から放射される超音波が、上流側の超音波トランスジューサ10で受信されるまでに直接伝播する時間計測値(高周波数側の第1の周波数f1による逆方向直接伝播時間)を“Tg1”とする。
【0039】
同様に、低周波数側の周波数における第2の超音波ビームパターンにより伝播時間を計測する。すなわち、超音波トランスジューサ10から放射される超音波が、下流側の超音波トランスジューサ20で受信されるまでに直接伝播する時間計測値(低周波数側の第2の周波数f2による順方向直接伝播時間)を“Tj2”とし、これとは逆に、下流側の超音波トランスジューサ20から放射される超音波が、上流側の超音波トランスジューサ10で受信されるまでに直接伝播する時間計測値(低周波数側の第2の周波数f2による逆方向直接伝播時間)を“Tg2”とする。これら異なる2種類の周波数による4つの伝播時間計測結果及び伝播時間より算出した流速結果に基づいて、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な流速分布の相異を識別し、流量による流速を算出し流量を演算する。
【0040】
このように、超音波トランスジューサの周波数帯域内で、高周波数による指向性が流路幅よりも狭く流路の中心部エリアを伝播する超音波ビームのパターンと、低周波数による指向性が流路幅方向全体のエリアへ拡散し伝播する音波ビームのパターンとを利用する。すなわち、少なくとも2種類の異なる周波数によって指向性を異ならせた超音波ビームを利用することで、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な平均流速の相異を識別できるので、流量による流速分布の相異による計測誤差を著しく低減することが可能となる。
【0041】
また、互いに異なる2種類の指向性を持つ超音波ビームのパターンにより計測された伝播時間計測結果あるいはこの伝播時間計測結果から演算し算出した流速結果から、流路幅方向を最低2つに区分けされた各エリアによる流速が算出できるので、各超音波パターンによる最低2種類のエリアから算出された流速より流量を演算し、算出することが可能となる。
【0042】
図5は、超音波トランスジューサの周波数帯域内の低周波数側近傍及び高周波数側近傍の超音波ビーム及びその超音波ビームによる検出エリアの状態を示す図である。図5(A)に示すように、低周波数と高周波数の指向性の比は、例えば倍程度異なる範囲であり、比較的離れた2種類の周波数による超音波ビームパターンにより流路幅方向を2つのエリアに分割する。図中、15は周波数帯域内の低周波数側の周波数による超音波ビームとその指向性、16は周波数帯域内の高周波数側の周波数による超音波ビームとその指向性を示す。
【0043】
また、図5(B)は流路幅方向全域に広がる指向性を持つ低周波の超音波ビームによる検出エリアの様子を示し、図5(C)は流路幅方向の幅よりも狭い指向性を持つ高周波の超音波ビームによる検出エリアの様子を示す。
【0044】
図5に示すように、超音波トランスジューサで送受信される2種類以上の異なる超音波ビームは、高周波数側の周波数(近傍)における超音波ビームと、低周波数側の周波数における超音波ビームとなる。あるいは、同一の周波数帯域内(例えば、高周波数帯域内あるいは低周波数帯域内)で比較的離れた周波数(例えば、帯域内の上下限周波数)における超音波ビームとしてもよい。このように、高周波数側の指向性が流路幅より狭い第1の超音波ビームパターンと、低周波数側の指向性が流路幅以上となる第2の超音波ビームパターンとを利用する。これら2つの異なる超音波ビームにより、流路幅方向を2つの異なるエリアに分割し、それぞれのエリアで伝播時間を計測する。
【0045】
具体的には、前述したように、高周波数側の周波数における第1の超音波ビームパターンによる伝播時間計測として、上流側の超音波トランスジューサ10から放射される超音波が、下流側の超音波トランスジューサ20で受信されるまでの直接伝播による時間計測値Tj1と、これとは逆に、下流側の超音波トランスジューサ20から放射される超音波が、上流側の超音波トランスジューサ10で受信されるまでの直接伝播による時間計測値Tg1とを計測する。
【0046】
更に、低周波数側の周波数における第2の超音波ビームパターンによる伝播時間計測として、上流側の超音波トランスジューサ10から放射される超音波が、下流側の超音波トランスジューサ20で受信されるまでの直接伝播による時間計測値Tj2と、これとは逆に、下流側の超音波トランスジューサ20から放射される超音波が、上流側の超音波トランスジューサ10で受信されるまでの直接伝播による時間計測値Tg2とを計測する。これら2種類の伝播時間計測結果及び伝播時間より算出した流速結果に基づいて、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な流速分布の相異を識別し、流量による流速を算出し流量を演算することができる。
【0047】
このように、超音波トランスジューサの帯域内の異なる2種類の周波数を適宜変更して利用することが可能なため、ある程度の媒質の変更や、流路寸法に伴う流速分布の変化があっても、また幅方向での指向性エリアに差があっても、基準となる媒質での異なる2種類の周波数を上下限以外の任意の周波数として選定し計測させることができる。このため、適応範囲が広く汎用性が高い。また計測精度がそれほど必要でない場合には、更に適応範囲が拡大できる。
更に、同一のトランスジューサにおいて、上下限周波数以外の異なる2種類の周波数を選定し、異なる2種類の指向性を利用できるので、温度による指向特性の微妙な差にも対応可能となる。
【0048】
図6は、複数の圧電素子を積層して構成される超音波トランスジューサの構成例を示す図である。このように超音波トランスジューサは、圧電素子を複数枚積層した構造であり、図6(A),(B)の例の場合には2枚の圧電素子22,23を互いに分極方向である厚さ方向に積層され、圧電素子22による共振特性と、圧電素子22と圧電素子23を積層した時の共振特性との2種類の共振周波数を利用する。そして、2種類の共振周波数によるいずれかの超音波の波長に対して音響整合された厚みの音響整合層21を、高い周波数となる圧電素子22側に張り合わせている。
【0049】
音響整合層21の圧電素子22が張り合わされた側とは反対側の放射面より、異なる2種類の超音波を放射し、異なる2種類の指向性パターンにより、流路幅方向を2種類のエリアに分割し、流速分布を推定する。
具体的な超音波トランスジューサとして、下記の関係式で音響的に整合された同一の音響整合層から、互いの共振周波数の異なる圧電素子による超音波ビームを放射することができる。なお、m1,m2は整数、λ1,λ2は互いに異なる共振周波数による超音波の波長、Cは音響整合層を伝播する縦波の速度、f1,f2は圧電素子による互いに異なる共振周波数を示す。
(2m1+1)・{λ1/4}=(2m2+1)・{λ2/4} …式(1)
(2m1+1)・{C/(4・f1)}=(2m2+1)・{C/(4・f2)}…式(2)
すなわち、超音波トランスジューサは、2種類以上の圧電素子の各共振周波数における超音波の波長の約1/4の奇数倍に音響整合される。
【0050】
上記式(2)において、例えば、異なる周波数の関係を3倍としたい場合、(2m1+1)=3でm1=1、(2m2+1)=1でm2=0(m1,m2は整数)とし、f1=600KHz、f2=200KHz、C=2000m/sとすれば、音響整合層の厚みt=2.5mmとなり、互いに異なる共振周波数における超音波を、同一の放射面から効率良く媒質中へ送受信することが可能となる。このときの超音波ビームパターンについて図6(A)に示す。
更に、異なる周波数の関係を5/3倍としたい場合、(2m1+1)=5でm1=2、(2m2+1)=3でm2=1とし、f1=500KHz、f2=300KHz、C=2000m/sとすれば、音響整合層の厚みt=5mmとなり、上記と同様に、互いに異なる共振周波数における超音波を、同一の放射面から効率良く媒質中へと送受信が可能となる。このときの超音波ビームパターンについて図6(B)に示す。
【0051】
無論、図6(C)に示すように、3種類の異なる周波数が必要な場合には、以下の式を満足するように音響整合される。
(2m1+1)・{C/(4・f1)}=(2m2+1)・{C/(4・f2)}=(2m3+1)・{C/(4・f3)} …式(3)
例えば、(2m1+1)=5でm1=2、(2m2+1)=3でm2=1、(2m3+1)=1でm3=0として、f1、f2、f3を考えれば良い。
【0052】
このように、少なくとも異なる2種類の共振特性を示す圧電素子の何れにも音響的に整合された厚みとなるように、音響整合層を個々の共振周波数による超音波の波長の約1/4の奇数倍とすることで、何れの共振特性も損ねず、超音波の送受信効率を高くすることができるため、使用する帯域内周波数における送受信感度を十分に確保することができる。また帯域内感度を充分に確保できるので、この帯域内での互いに周波数が異なる超音波ビームを流路内に伝播し、異なる2種類のエリアによる検出が可能となる。
【0053】
図7は、本発明の超音波流量計による流量計測方法の一例を説明するための図である。図7(A)は指向性Xを持つ第1の超音波ビームパターンによるビームエリアの状態を示し、図7(B)は指向性Yを持つ第2の超音波ビームパターンによるビームエリアの状態を示す。
このように、流路幅方向を2つの異なる超音波ビームにより、2つのエリアに分割し、それぞれのエリアにおいて、順方向直接伝播時間Tj1、逆方向直接伝播時間Tg1、順方向直接伝播時間Tj2、逆方向直接伝播時間Tg2を計測する。
【0054】
第1の超音波ビームパターンによる指向性X(=θ1/2)と、第2の超音波ビームパターンによる指向性Y(=θ1/2)とにより、互いのビームパターンにおける各伝播時間の比は、
Tj1/Tj2=α、Tg1/Tg2=β …式(4)
となる。この比α,βの値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測し、被測定流体の流量を算出することができる。
【0055】
また、2種類の超音波ビームパターンにおける各伝播時間の計測結果から算出した2種類の流速値をV1、V2とすると、
V1={L/(2・COSθ)}・(1/Tj1−1/Tg1) …式(5)
V2={L/(2・COSθ)}・(1/Tj2−1/Tg2) …式(6)
より算出される。なお、Lは超音波トランスジューサの放射面間の距離、θは流れ方向とのなす角度である。これらの流速結果から、2種類の超音波ビームパターンによる流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測し、被測定流体の流量を算出することができる。
【0056】
図7(C)は図7(A)に示す第1の超音波ビームパターンの流量域による流速分布の差を示し、図7(D)は図7(B)に示す第2の超音波ビームパターンの流量域による流速分布の差を示す。図中、流速パターン(1)は層流域であり、層流域(1)によるα及びβをα1及びβ1とし、また、流速パターン(2)は層流域であり、層流域(2)によるα及びβをα2及びβ2とし、更に、流速パターン(3)は乱流域であり、乱流域(3)によるα及びβをα3及びβ3とする。なお、前述したように、層流域とは流れが遅いときの流速パターンを示し、乱流域とは流れが速いときの流速パターンを示す。
【0057】
この場合、その大小関係は、
α1(β1)>α2(β2)>α3(β3)≒1 …式(7)
の関係となり、それぞれの比の値により、流量域による妥当な流速分布パターンを推定し、この推定した流速分布から被測定流体の流量を算出することができる。
【0058】
もちろん流量域の把握は、2種類のビームパターンより計測されたそれぞれの伝播時間から算出した流速値としてもよく、その流速の大小関係から流量域を予測しても良い。
すなわち、図7(C)に示す各流速分布パターン、すなわち層流域(1),(2)、乱流域(3)において、図7(A)に示す第1の超音波ビームパターンによる流速をVc、図7(B)に示す第2の超音波ビームパターンによる流速をVwとすると、その大小関係により流量域を予測し、妥当な流速を決定するようにしても良い。
【0059】
ここで、Vc>Vwの場合は層流域と推定され、その時の比(Vc/Vw)の値により妥当な流速を決定する。また、Vc/Vw≒1の場合は乱流域と推定され、これにより妥当な流速を決定する。層流域(1)の分布パターンにおける流速比をVc1/Vw1とし、層流域(2)の分布パターンにおける流速比をVc2/Vw2とし、乱流域(3)の分布パターンにおける流速比をVc3/Vw3とする。この場合、
(Vc1/Vw1)>(Vc2/Vw2)>(Vc3/Vw3)≒1 …式(8)
の関係となり、流速比のオーダーにより測定時の流量域を推定することができ、測定時点で妥当な流速を算出できる。なお、流量域の推定は、予め記憶されたデータと比較し、データの範囲に適合した値に応じた流量域を判定し、流量域で妥当な流速分布補正係数を割り振ることで、流速を算出し流量を演算する。媒質を都市ガス(13A)としたときの流量Qと流速分布の比ζ(=Vc/Vw)の関係を図8に示す。
【0060】
このように、超音波トランスジューサの周波数帯域内で、指向性が異なる2種類の超音波ビームパターンを送受信させ、流路幅方向を少なくとも2種類の異なるエリアに分割できるため、流路幅方向で異なる流速分布に応じた伝播時間結果が得られ、その伝播時間の結果から、2種類の超音波ビームによる伝播時間の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、妥当な流量域を予測し、被測定流体の流量を算出することができる。
また、時間計測情報から演算し算出した流速結果から、2種類の超音波ビームによる流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測し、被測定流体の流量を算出することができる。
この結果、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な相異が識別できるので、流量域による流速分布の相異があっても計測誤差を著しく低減し高精度な流量計測が実現できる。
【0061】
前述したように、超音波トランスジューサの周波数帯域内で、異なる2種類の周波数による超音波ビームパターンによる伝播時間を計測し、各伝播時間より算出した流速比の値に応じて流量域を把握し、流速比の値に応じて妥当な流速分布補正係数を割り振り、平均流速を演算し流量を算出するようにしてもよい。異なる2種類の周波数が上下限以外で互いに離れた周波数の場合、各超音波ビームにより流路幅方向を2種類に区分し、計測された流速をVc,Vwとすれば、流速Vcは第1の超音波ビームパターン(ビーム幅の狭い高周波数による伝播時間計測)に対応し、流速Vwは第2の超音波ビームパターン(ビーム幅がほぼ流路幅全域に広がる低周波数による伝播時間計測)に対応する。これらの流速Vc,Vwは、前述の式(5),(6)と同様であるが、
Vc={L/(2・COSθ)}・(1/Tj1−1/Tg1) …式(9)
Vw={L/(2・COSθ)}・(1/Tj2−1/Tg2) …式(10)
と表記できる。なお、Lは超音波トランスジューサの放射面間の距離、θは流れ方向とのなす角度である。
【0062】
このように、各伝播時間より算出された流速Vc,Vwの大小関係と、この流速比(Vc/Vw)の値により流量域を予測し、妥当な流速を決定する。
すなわち、Vc>Vwの場合には層流域と推定され、Vc/Vwの値により、妥当な流速分布補正係数を決定し、平均流速を算出することで、被測定流体の流量を算出できる。また、Vc≒Vwの場合には乱流域と推定できるため、係数無しに平均流速を決定することができる。乱流に関する速度分布はピーク速度が平均速度となるため、基本的には流速分布補正係数を用いないが、比の値に応じて乱流域に切替わるまで妥当な流速分布補正係数を割り振ることで、流量域に関わらず、平均流速を算出し流量を演算し算出することが可能となる。
【0063】
図9は、流路幅方向における流速分布パターン(層流域)の様子を説明するための図である。
図9(A)に示すように、幅方向の流速分布に応じて、例えば、実線のような中心が最大で、中心から対称な速度分布パターン、すなわち図7(C)に示した層流域での流速分布パターン(1)の場合、指向性Xが流路幅より狭い第1の超音波ビームパターンによって算出された流速Vcと、指向性Yが流路幅とほぼ等しい第2の超音波ビームパターンによって算出された流速Vwとの比(Vc/Vw)の値を“ζ1”とする。
【0064】
また、図9(B)に示すように、点線のような流速分布パターン、すなわち図7(C)に示した層流域での流速分布パターン(2)の場合、流速VcとVwとの比(Vc/Vw)の値を“ζ2”とした場合、比の値ζ1、ζ2の大きさに比例した流速分布補正係数をそれぞれφ1、φ2とすれば、図9(A),(B)に示すV1(実線),V2(点線)の各流速パターンにおける平均流速は、
V1=φ1・(Vc+Vw)/2 …式(11)
V2=φ2・(Vc+Vw)/2 …式(12)
として算出できる。
【0065】
あるいは、
V1=φ1′・Vc …式(13)
V2=φ2′・Vc …式(14)
として算出することもできる。但し、φ1′、φ2′はζ1、ζ2に比例した別の補正係数である。無論、別の補正係数を用いて、Vwに対する補正として流速を算出するようにしても良い。
流路幅方向で互いに指向性が異なる2種類の超音波ビームパターンによる、流速比のオーダーに応じて、分布パターンを推定し、流速分布パターンに応じて妥当な流速分布補正係数を割り振ることにより、平均流速を算出し、被測定流体の流量を算出できる。
【0066】
このように、流路幅方向を少なくとも2種類の周波数による指向性が異なる超音波ビームパターンを送受信させ、流路幅方向を少なくとも2種類の異なるエリアに分割することで、流路幅方向で異なる流速分布に応じた伝播時間結果が得られる。この伝播時間の結果から、少なくとも2種類の超音波ビームによる伝播時間の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測すると同時に、その比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、流路断面を横切る平均流速を演算し算出することができる。このため流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
【0067】
また、時間計測情報から演算し算出した流速結果から、流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測すると同時に、その比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、流路断面を横切る平均流速を演算し算出することができる。このため流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
【0068】
図7及び図9に示すように、高周波数による第1の超音波ビームパターンでの順方向直接伝播時間Tj1、逆方向直接伝播時間Tg1、さらに、低周波数による第2の超音波ビームパターンでの順方向直接伝播時間Tj2、逆方向直接伝播時間結果:Tg2とすると、その比は、Tj1/Tj2=αで、αがα3≒1、Tg1/Tg2=βで、βがβ3≒1となる。この場合、2種類の異なる周波数による各伝播時間の比がほぼ等しく“1”となることでその流速分布パターンは乱流域(3)であると推定される。
【0069】
また、指向性が流路幅より狭い第1の超音波ビームパターンによって算出された流速Vcと、指向性が流路幅とほぼ等しい第2の超音波ビームパターンによって算出された流速Vwとの比の値がVc/Vw≒1として乱流域(3)の流速分布パターンであると推定された場合、低周波数帯域側の共振特性を示す圧電素子の共振周波数近傍における超音波ビームパターンを用いて被測定流体の流量を演算すればよい。
このように乱流域と判定された場合には、超音波の伝播による減衰が少なく音圧が高い低周波数側(共振周波数近傍)の周波数による超音波ビームを利用することで、乱流による超音波ビームの送受信効率の低下による影響を低減することができるため、安定した計測が実現でき、正確な流速を演算し流量を算出することができる。
【0070】
また、図9(A),(B)に示すように、各流速パターン(第1,第2の超音波ビームパターン)における平均流速V1,V2は、式(11)〜式(14)に基づいて算出することができる。
【0071】
同様に、図9(A),(B)において、ガス種が都市ガス13Aの場合、ζ1,ζ2の大きさに比例した補正係数をそれぞれφ5,φ6とすれば、V1(実線),V2(点線)の各流速パターンにおける平均流速は、
V1=φ5・(Vc+Vw)/2 …式(15)
V2=φ6・(Vc+Vw)/2 …式(16)
として算出できる。
【0072】
あるいは、
V1=φ5′・Vc …式(18)
V2=φ6′・Vc …式(19)
として算出することも可能である。但し、φ5′、φ6′はζ1、ζ2に比例した別の補正係数である。無論、別の補正係数を用いて、Vwに対する補正として流速を算出するようにしても良い。
ガスの種類で変化する微妙な流速分布の相異に応じて、妥当な補正係数となるよう補正係数を変化させる事で、流速分布に関わらず平均流速を算出し流量を演算し算出できる。
【0073】
ここで、被測定流体の種類によって、流体の粘性や、密度などに相異があるため、ガス種(媒質)を伝播する超音波の縦波流速が異なり、超音波ビームの指向特性に差が発生する。また流路形状、寸法などにより、最適な超音波ビームのエリアによる差に対して補正係数の値は微妙に異なり、異なる指向特性を示す2種類の超音波ビームによる計測が、流量域における流速分布パターンの差に対して、充分な相異を識別出来ないことも起こり得る。
【0074】
図10は被測定流体の種類及び流路径による第1の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図で、図11は被測定流体の種類及び流路径による第2の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図である。
図10(A)はLPGの場合における第1の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、LPG中の帯域上限の高周波数による第1の超音波ビームパターンの指向性をX(=θ1/2)とする。図10(B)は都市ガス(13A)の場合における第1の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、同一の圧電素子を有する超音波トランスジューサから放射される直接伝播波による指向特性をX′(=θ1/2)とする。同様に、図11(A)はLPGの場合における第2の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、LPG中の帯域下限の低周波数による第2の超音波ビームパターンの指向性をY(=θ1/2)とする。図11(B)は都市ガス(13A)の場合における第2の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、同一の圧電素子を有する超音波トランスジューサから放射される直接伝播波による指向特性をY′(=θ1/2)とする。
【0075】
上記において、LPGの縦波による伝播速度は、都市ガス(13A)に比べて遅いため、同一の圧電素子を有する超音波トランスジューサから放射される直接伝播波による指向性X′(=θ1/2)、指向性Y′(=θ1/2)の何れも都市ガス(13A)の方が広くなる。すなわち、X′>X、Y′>Yの関係となる。従って、同一の圧電素子を有する超音波トランスジューサでは、速度に大きな差があるガス種(媒質)による流速分布パターンを計測する場合、ガス種(媒質)によって広がりの異なる超音波ビームが、区分けされた流速分布パターンを横切る際、ビームエリアによる検出エリアの相異により、計測される伝播時間には微妙なズレが発生し、補正係数が微妙に異なってしまうことになる。無論その伝播時間から算出した流速結果にも微妙なズレが発生することになる。
【0076】
更に、流路径(流路寸法)が異なる場合、LPG計測時と同じ超音波トランスジューサによる2種類の指向性ビームで都市ガス(13A)を計測すると、流路幅が狭い場合は媒質による指向性の拡大により、帯域上限の高周波数による超音波ビームを流路幅より狭く出来ないため、指向性の差を識別することができず、流速分布パターンの推定が困難となる。またこれとは反対に、媒質の変化で指向性が拡大するよりも、流路幅の拡大のほうが大きい場合、帯域下限の低周波数による指向性が流路幅と同等以上に広がる効果が期待できず、2種類の指向性は流速分布の中央部エリアに集中し、流速分布の識別分解能が充分に得られないことがある。
【0077】
そこで、ガス種に応じて、また流路寸法に応じて、超音波トランスジューサを構成する圧電素子の寸法と、その寸法によって変化する共振周波数と、音響整合層の寸法を調整し最適化することで、流路幅方向を中央部エリアと、全幅エリアとの2つに分割したエリアに、異なる2種類の超音波ビームパターンを伝播させ、ガス種の変化や、流路寸法に最適な指向特性を満足できる超音波ビームをそれぞれ送受信させる。これにより、幅方向の区分けされたそれぞれのエリアで、流路幅方向で異なる流速分布に応じた超音波送受信による伝播時間結果が得られ、その伝播時間の結果から、伝播時間の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、妥当な流量域を推測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、平均流速を演算し算出することができ、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず安定した高精度な計測が実現できる。
【0078】
または、超音波送受信による時間計測結果から演算し算出した流速結果から、流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振るようにしてもよい。この場合も同様に、平均流速を演算し算出することができ、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず安定した高精度な計測が実現できる。
【0079】
流路形状・寸法や、計測レンジ、計測分解能に伴って変化する流速分布パターンの変化や、流速の偏り度合を判断するのに必要な異なる2種類の超音波ビームを得るために、超音波トランスジューサから放射される超音波ビームを送受信する位置と、ビーム数を変化させ、最適な超音波エリアを満足させるようにしてもよい。
【0080】
図12は流路幅の拡大による第1の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図で、図13は流路幅の拡大による第2の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図である。
図12(A)は高周波数による第1の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、図12(B)は流路幅を拡大した場合における第1の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、図13(A)は低周波数による第2の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、図13(B)は流路幅を拡大した場合における第2の超音波ビームパターンの流速分布の例を示す。
【0081】
このように、流量レンジの拡大(流量計測範囲の拡大)に伴い、流路幅方向の拡大が顕著化すると、1つの圧電素子を有する超音波トランスジューサによる超音波ビームでは、流速分布を充分に推定するのに必要な有効な検出エリアが確保できない。これは、圧電素子の寸法と、それによって変化する共振周波数、音響整合層の寸法により指向特性が変化し、流路幅の中央部と流路幅全域へと充分広がる2種類の超音波ビームパターンを1つの超音波トランスジューサにより最適化するのは困難であるためである。
【0082】
圧電素子の共振周波数を下げて、指向性を広げることにより、最適な指向性を確保出来るが、計測分解能を得るため、周波数を下げるにも限界がある。このため、複数の圧電素子を有する超音波トランスジューサで、計測分解能を満足しつつ、流速分布を識別するのに必要な指向性を満足するのは不可能に近い。特に、流速分布が流路幅の中央で対称でなく、且つ、流路幅が広い場合には、必要となる検出エリアに流速分布を把握するのに充分な、異なる2種類の指向性を有する超音波ビームを送受信することが困難となってしまう。
【0083】
このような問題に対して、図12(B)及び図13(B)に示すように、例えば、圧電素子を2つに分割し、それぞれ独立に動作できる構成の超音波トランスジューサ20′を備えるようにしてもよい。超音波トランスジューサ20′は、音響整合層21′と、2つに分割された圧電素子22′,23′とで構成される。なお、超音波トランスジューサ20′と対となる相手方の超音波トランスジューサも同様の構成とする。
【0084】
図12(B)において、流路幅の中央を境界として、中央と上下の境界のエリアに対して、直接伝播波はこの中央と上下の境界の中央部を伝播する超音波ビームエリア(a),(b)となる超音波を伝播させる。また、図13(B)において、超音波ビームは、流路幅の中央部と上下の境界であって流路幅の半分の超音波ビームエリア(c),(d)を満足する超音波を伝播させる。各圧電素子中央部から音響整合層を介して送受信される、2種類の超音波ビームによる伝播時間の計測結果から、流路幅方向の流速分布パターンを推定し、伝播時間の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、妥当な流量域を推測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで平均流速を演算し算出する。これにより、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず安定した高精度な計測が実現できる。
【0085】
また、超音波の送受信による時間計測結果から演算し算出した流速結果から、流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで平均流速を演算し算出するようにしてもよい。これにより、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず安定した高精度な計測が実現できる。無論、計測分解能がそれほど必要でない場合では、周波数により超音波ビームを最適化しても良い。
【0086】
また、同一の流体での流量による流速分布の補正係数の妥当な値は、流体の種類や、流路寸法に応じて微妙に変動する。従って、流体の種類や、流路寸法、流量レンジの少なくとも1つに基づいて、流速分布補正係数とは異なる別の補正係数を付与することで、流路幅方向に流体の粘性や密度の相異で微妙に変化する流速分布の影響を考慮した最適な補正係数を割り振ることができる。
【0087】
このように、流路幅方向の流速分布が流体の種類や、流路寸法に影響を受け無いよう、流体の種類や、流路寸法、流量レンジの少なくとも1つに基づいて、流速分布補正係数とは異なる別の補正係数を付与することで、補正係数を最適化させることができるので、流量域による幅方向の流速分布の影響を気にせず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
すなわち、時間計測情報から演算し算出した流速結果から、各流速値における比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適化された流速分布補正係数を変更し、さらには、流体の種類や、流路寸法、流量レンジの少なくとも1つに基づいて、流速分布補正係数とは異なる別の補正係数を付与することで、流量域による幅方向の流速分布が流体の種類や流路寸法に関わらず、全流量域に渡って安定した高精度な計測が実現できる。
【0088】
超音波トランスジューサを構成する圧電素子の寸法と、それに伴う共振周波数、また音響整合層の寸法を、流路を流れる流体の種類や、流路形状・寸法に応じて変化させることで、流体の種類によって異なる粘性、密度の相異に伴う流速値の相異により、流体を伝播する超音波の指向性に差があっても、また流路形状・寸法によるビームエリアに差があっても、流路幅方向を少なくとも2つのエリアに分割し、最適な超音波ビームをそれぞれ送受信させることができる。
【0089】
このように、流路幅方向を少なくとも2つのエリアに分割し、最適な超音波ビームをそれぞれ送受信させることができるため、幅方向の区分けされたそれぞれのエリアで、流路幅方向で異なる流速分布に応じた超音波送受信による伝播時間を得ることができ、その伝播時間の結果から、伝播時間の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、流路断面を横切る平均流速を演算し算出することができる。このため、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
【0090】
また、超音波の送受信による時間計測結果に基づいて演算し算出した流速結果から、流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、流路断面を横切る平均流速を演算し算出することができる。このため、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
【0091】
超音波トランスジューサから放射される超音波のビーム数を、流路を流れる流体の種類や、計測する流量レンジに伴う計測音場の相異に応じて変化させることで、流体の種類によって異なる粘性、密度による流速分布の差があっても、また計測すべき流量レンジによる流速分布に差があっても、2種類の超音波ビームパターン、すなわち、流路幅よりも狭い高周波数の超音波ビームパターンと、流路幅と略等しい低周波数の超音波ビームパターンとを送受信させることができる。
【0092】
これにより、流路幅方向を区分けされたそれぞれのエリアで、流路幅方向で異なる流速分布に応じた超音波送受信による伝播時間結果が得られるので、その伝播時間の結果から、伝播時間の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、流路断面を横切る平均流速を演算し算出することができる。このため、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
【0093】
また、超音波の送受信による時間計測結果から演算し算出した流速結果から、流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、流路断面を横切る平均流速を演算し算出することができる。このため、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の超音波流量計が備える超音波トランスジューサの配置例を示す図である。
【図2】周波数帯域の異なる超音波ビームパターンの一例を示す図である。
【図3】周波数帯域の異なる超音波ビームパターンの他の例を示す図である。
【図4】高周波数帯域側及び低周波数帯域側の各周波数における超音波ビームパターンとその流速分布の状態を示す図である。
【図5】超音波トランスジューサの周波数帯域内の低周波数側近傍及び高周波数側近傍の超音波ビーム及びその超音波ビームによる検出エリアの状態を示す図である。
【図6】複数の圧電素子を積層して構成される超音波トランスジューサの構成例を示す図である。
【図7】本発明の超音波流量計による流量計測方法の一例を説明するための図である。
【図8】媒質を都市ガス(13A)としたときの流量と流速分布の比の関係を示した図である。
【図9】流路幅方向における流速分布パターン(層流域)の様子を説明するための図である。
【図10】被測定流体の種類及び流路径による第1の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図である。
【図11】被測定流体の種類及び流路径による第2の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図である。
【図12】流路幅の拡大による第1の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図である。
【図13】流路幅の拡大による第2の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図である。
【符号の説明】
【0095】
10,20…超音波トランスジューサ、11,21…音響整合層、12,13,22,23…圧電素子、14…流量算出部、30…流路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計及び流量計測方法、より詳細には、主にガスなどの流体の流速や流量を計測する超音波流量計及び該超音波流量計による流量計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流路を流れる流体の流速を計測する際に、流路を流れる流体には、その流量によって流速分布が異なることは流体力学的に一般に知られている。すなわち、流れが遅い時には、流路幅方向で層流と呼ばれる放物線形状の流速分布を示し、ピークの流速と、平均流速とが異なる分布状態となる。逆に流れが速くなると、徐々にその分布は崩れ、乱流域と呼ばれる流域となり、その時の流速分布は、ピーク流速が平均流速と等しい形状となるバスタブ形状と呼ばれる流速分布となり、流速分布は流路幅方向で一様に等しい分布状態となる。
【0003】
また、層流域では、放物線形状の流速分布形状に若干の相異が発生し、幅方向での流速差は一定では無い。更に層流域では、ガス種や、流路形状寸法等により、流速分布が異なることが一般に知られている。
【0004】
このように流量域、流体の種類、流路形状寸法等により、流路幅方向での流速分布に差が存在すると以下の問題が生じる。
すなわち、超音波トランスジューサにより流速分布を横切るように超音波を送受信させ、流路を流れる流体を計測する際に、流量域によって、計測される平均流速は分布の影響を受け、この分布の影響により計測した値には誤差が含まれるため、正確な流量を算出できないことになる。
仮にこの誤差の影響を補正するにしても、計測している流速分布そのものが把握出来ないので、流量域による流速分布を平均流速として補正することは極めて困難である。
【0005】
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、この分布の影響を低減し、どの流量域でも平均化された流速分布が得られるように、流路内部の幅方向を複数のエリアに分割し、特に層流域で発生する放物線形状の流速分布を平滑化するように、流路内部に仕切部材を配置する構成が記載されている。これによれば、層流域でも乱流域と同様に平均化された流速分布を計測し扱えるようになるため、正確な流速を算出でき、高精度に流量を算出することができる。
【特許文献1】特開2005−257363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明の場合、仕切部材を流路内部に挿入することで、流れに対して抵抗を発生させることになり、圧力損失が顕著化してしまうという問題がある。仮にこの圧力損失を一定レベルに抑えることができたとしても、製品の固体差、仕切部材の組み込み精度、バラツキ、温度因子等による影響を考慮すると、製品の安定性、歩留り等にも影響する可能性がある。さらに、仕切部材を追加することで、部品点数が増加し、これに伴いコスト高となってしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、流路内部に仕切部材などを介在させること無く、流速分布が流量域で変化しても、流速分布状態のパターンを正確に推定し、その流速分布パターンに基づいて被測定流体の流量を算出することができる超音波流量計及び該超音波流量計による流量計測方法を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、被測定流体が流れる流路を挟んで対向する位置に配置された一対の超音波トランスジューサと、該一対の超音波トランスジューサにより送受信される超音波の伝播時間に基づいて前記被測定流体の流量を算出する流量算出手段とを備えた超音波流量計であって、前記一対の超音波トランスジューサは、2以上の異なる周波数帯域の超音波ビームパターンを送受信するための複数の圧電素子を積層して備え、前記流量算出手段は、前記2以上の超音波ビームパターンの伝播時間情報に基づいて、前記被測定流体の流速分布を推定し、該推定した流速分布から前記被測定流体の流量を算出することを特徴としたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記複数の圧電素子は、第1の圧電素子と、該第1の圧電素子に積層された第2の圧電素子とで構成され、前記第1の圧電素子により高周波数側の超音波ビームパターンを送受信し、前記第1の圧電素子及び前記第2の圧電素子により低周波数側の超音波ビームパターンを送受信することを特徴としたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記2以上の超音波ビームパターンは、前記一対の超音波トランスジューサの高周波数側に対応して前記流路の幅よりも狭いビーム幅を持つ第1の超音波ビームパターンと、前記一対の超音波トランスジューサの低周波数側に対応して前記流路の幅以上のビーム幅をもつ第2の超音波ビームパターンとを含むことを特徴としたものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1の発明において、前記2以上の超音波ビームパターンの互いに異なる周波数は、前記一対の超音波トランスジューサの高周波数帯域内の周波数と低周波数帯域内の周波数であることを特徴としたものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれか1の発明において、前記2以上の超音波ビームパターンの互いに異なる周波数は、前記一対の超音波トランスジューサの各周波数帯域内の上限周波数と下限周波数であることを特徴としたものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1の発明において、前記一対の超音波トランスジューサは、厚み方向に縦振動する圧電素子を2種類以上積層し、該2種類以上の圧電素子の各共振周波数における超音波の波長の約1/4の奇数倍に音響整合されていることを特徴としたものである。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記一対の超音波トランスジューサそれぞれは前記2種類以上の圧電素子が積層方向に分割され、該分割された前記2種類以上の圧電素子はそれぞれ独立した超音波トランスジューサとして機能することを特徴としたものである。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1の発明において、前記流量算出手段は、前記2以上の超音波ビームパターンによる伝播時間の比の値あるいは該伝播時間から算出される流速の比の値に基づいて、前記流路の幅方向における流速分布を推定し、該推定した流速分布から前記被測定流体の流量を算出することを特徴としたものである。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか1の発明において、前記流量算出手段は、前記2以上の超音波ビームパターンより得られた伝播時間あるいは該伝播時間から算出される流速から、前記被測定流体の流量域が乱流域と判断された場合、前記2以上の超音波ビームパターンのうち、低周波数帯域側の共振特性を示す圧電素子の共振周波数近傍における超音波ビームパターンを用いて前記被測定流体の流量を算出することを特徴としたものである。
【0017】
請求項10の発明は、請求項8の発明において、前記流量算出手段は、前記推定した流速分布に応じて、流速分布補正係数を付与し、前記被測定流体の流量を算出することを特徴としたものである。
【0018】
請求項11の発明は、請求項8の発明において、前記流量算出手段は、流体の種類、流路寸法、流量レンジの少なくとも1つに基づいて、補正係数を付与し、前記被測定流体の流量を算出することを特徴としたものである。
【0019】
請求項12の発明は、被測定流体が流れる流路を挟んで対向する位置に配置された一対の超音波トランスジューサと、該一対の超音波トランスジューサにより送受信される超音波の伝播時間に基づいて前記被測定流体の流量を算出する流量算出手段とを備えた超音波流量計による流量計測方法であって、前記一対の超音波トランスジューサが積層して備える複数の圧電素子が、2以上の異なる周波数帯域の超音波ビームパターンを送受信し、前記流量算出手段が、前記2以上の超音波ビームパターンの伝播時間情報に基づいて、前記被測定流体の流速分布を推定し、該推定した流速分布から前記被測定流体の流量を算出することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、流路内部に仕切部材などを介在させること無く、流速分布が流量域で変化しても、流速分布状態のパターンを正確に推定し、その流速分布パターンに基づいて被測定流体の流量を算出することができるため、高精度な流量計測を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の超音波流量計が備える超音波トランスジューサの配置例を示す図である。図1(A),(B)は一対の超音波トランスジューサを側面から見たときの配置例を示す。本発明の超音波流量計は、被測定流体が流れる流路30を挟んで対向する位置に配置された一対の超音波トランスジューサ10,20と、一対の超音波トランスジューサ10,20により送受信される超音波の伝播時間に基づいて流路30を流れる被測定流体の流量を算出する流量算出手段に相当する流量算出部14とを備える。
【0022】
超音波トランスジューサ10は、音響整合層11、圧電素子12,13を備える。また、超音波トランスジューサ10と対となる超音波トランスジューサ20は、同様に、音響整合層21、圧電素子22,23を備える。一対の超音波トランスジューサ10,20は、流れ方向に対して角度θだけ傾いて設置され、両者の放射面間の距離はL(伝播長)となる。なお、本例の場合、流路30の中を、被測定流体が図の矢印の方向に向かって流速Vで流れているものとする。
【0023】
図1(A),(B)に例示するように、流路30の幅方向に対して、複数の圧電素子を積層する構造を有する超音波トランスジューサ10,20が、流路30の上流側及び下流側であって、流路流れ方向に対して斜めに対向する位置に配置される。すなわち、被測定流体が流れる流路30の上流側及び下流側に、流れを横切るように1対の超音波トランスジューサ10,20を対向させて配置させ、上流側の超音波トランスジューサ10から下流側の超音波トランスジューサ20へと、また下流側の超音波トランスジューサ20から上流側の超音波トランスジューサ10へと超音波を伝播させる。
【0024】
一対の超音波トランスジューサ10,20は2種類以上の異なる共振特性を有する。このための構成として、超音波トランスジューサ10,20それぞれは、2以上の異なる周波数帯域(高周波数側と低周波数側)の超音波ビームパターンを送受信するための複数種類の圧電素子(PZT)を積層して備え、これら2以上の超音波ビームパターンにより流路30の幅方向を複数の検出エリアに分割する。
そして、流量算出部14は、2以上の超音波ビームパターンが複数の検出エリアを伝播して得られた伝播時間情報に基づいて、被測定流体の流速分布を推定し、さらに、この流速分布から平均流速を算出することにより被測定流体の流量を算出する。
【0025】
超音波トランスジューサ10において、複数の圧電素子は、第1の圧電素子12と、第1の圧電素子12に積層された第2の圧電素子13とで構成される。第1の圧電素子12を用いて高周波数側の超音波ビームパターンを送受信し、第1の圧電素子12及び第2の圧電素子13を同時に用いて低周波数側の超音波ビームパターンを送受信する。これらの超音波ビームパターンは、同一放射面から放射され、2種類の異なる周波数により互いに指向性が異なっている。なお、超音波トランスジューサ20についても上記と同様に構成される。
【0026】
ここで、2以上の超音波ビームパターンは、図1(A)に示すように、一対の超音波トランスジューサ10,20の高周波数側に対応して流路30の幅よりも狭いビーム幅をもつ第1の超音波ビームパターンと、図1(B)に示すように、一対の超音波トランスジューサ10,20の低周波数側に対応して流路30の幅以上のビーム幅をもつ第2の超音波ビームパターンとから構成される。
【0027】
なお、2以上の超音波ビームパターンの互いに異なる周波数は、比較的周波数が離れていることが望ましく、一対の超音波トランスジューサ10,20の周波数帯域における高周波数帯域内の周波数と低周波数帯域内の周波数としてもよく、あるいは、一対の超音波トランスジューサ10,20の各周波数帯域内の上限周波数と下限周波数としてもよい。
【0028】
このように、少なくとも2種類以上の圧電素子を積層し、2種類以上の周波数帯域を有する超音波トランスジューサにおいて、図1(A)に示すように、高周波数側であって、その指向性X(=θ1/2)が流路幅よりも狭く流路幅方向のほぼ中央部を伝播する第1の超音波ビームパターンと、図1(B)に示すように、低周波数側であって、その指向性Y(=θ1/2)が流路幅ほぼ全域に広がる第2の超音波ビームパターンとを送受信させる。すなわち、異なる2種類以上の周波数帯域内で、指向性が互いに異なる超音波ビームパターンを送受信させて、流路幅方向を2つ以上の検出エリアに分割することにより、各検出エリアにおける流路幅方向で発生する流速分布パターンを正確に推定する。
【0029】
例えば、中心周波数(≒共振周波数)を500kHzとし、上限周波数約650kHz、下限周波数約400kHzの高周波数となる第1の圧電素子と、この第1の圧電素子に積層された第2の圧電素子とで構成した場合について想定する。第1及び第2の圧電素子により、中心周波数(≒共振周波数)を300kHzとし、上限周波数約450kHz、下限周波数約250kHzの低周波数となる合成の圧電素子が構成される。まず高周波数による第1の圧電素子による第1の周波数を固定し、例えば中心の500kHzで超音波トランスジューサを駆動し、この際得られた伝播時間Tjc1を記憶する。
その後、低周波数の合成された第1及び第2の圧電素子による、例えば中心周波数300kHzで駆動し得られた伝播時間Tjw1とを比較し、この時間が等しければ、さらに駆動する周波数を徐々に下げていき、例えば駆動周波数が下限値250kHzとなっても、伝播時間が等しく変化がなければ、流速分布は乱流域と推定される。一方、伝播時間に変化があり、Tjc1(中心を伝播する時間)>Tjw1(幅方向全域を伝播する時間)、であれば、流速分布は層流域と推定されるため、その比の値に応じて流速分布補正係数を付与すればよい。
このように、超音波トランスジューサの周波数による伝播時間の比較により、周波数を徐々に変化させ、両者(Tjc1とTjw1)を比較することで流量域を推定することができる。
【0030】
図2は、周波数帯域の異なる超音波ビームパターンの一例を示す図である。ここでは上流側の超音波トランスジューサ10の記載を省略する(以下、後述の各図面において同様とする)。図1に示したように、被測定流体(ここでは都市ガス(13A))が流れる流路30の上流側及び下流側に、流れを横切るように一対の超音波トランスジューサ10,20を対向させて配置させ、上流側の超音波トランスジューサ10から下流側の超音波トランスジューサ20へ(順方向の直接伝播)、また下流側の超音波トランスジューサ20から上流側の超音波トランスジューサ10へ(逆方向の直接伝播)と超音波ビームを伝播させる。
【0031】
図2(A),(B)の左図には、超音波ビームパターンと共に、流速分布の相異を示している。図中、(3)の2点鎖線は流れが速いときの乱流域の流速分布、(1)の1点鎖線,(2)の実線は流れが遅いときの層流域の流速分布を示す。なお、後述の図3、図4、図5(B),(C)、図7、図10、図11、図12(A)、図13(A)においても同様とする。
【0032】
図2(A)は、計測媒質を都市ガス(13A)、超音波トランスジューサの放射面の直径Dを約12mm、高周波数側の第1の周波数f1を500KHzとしたときの、超音波ビームパターン(図中左側)と、計算結果(図中右側)とを示す。また、図2(B)は、計測媒質を都市ガス(13A)、超音波トランスジューサの放射面の直径Dを約12mm、低周波数側の第2の周波数f2を300KHzとしたときの、超音波ビームパターン(図中左側)と、計算結果(図中右側)とを示す。
この例の場合、計算結果から、図2(A)に示す高周波数側の第1の周波数f1での指向性が約3.0°、図2(B)に示す低周波数側の第2の周波数f2での指向性が約5.0°となる。従って、両者において約1.7倍異なる指向性を利用し、流体の流速分布を推定し、平均流速を算出することができる。
【0033】
図3は、周波数帯域の異なる超音波ビームパターンの他の例を示す図である。
図3(A)は、計測媒質を都市ガス(13A)、超音波トランスジューサの放射面の直径Dを約15mm、高周波数側の第1の周波数f1を600KHzとしたときの、超音波ビームパターン(図中左側)と、計算結果(図中右側)とを示す。また、図3(B)は、計測媒質を都市ガス(13A)、超音波トランスジューサの放射面の直径Dを約15mm、低周波数側の第2の周波数f2を200KHzとしたときの、超音波ビームパターン(図中左側)と、計算結果(図中右側)とを示す。
この例の場合、計算結果から、図3(A)に示す高周波数側の第1の周波数f1での指向性が約2.0°、図3(B)に示す低周波数側の第2の周波数f2での指向性が約6.0°となる。従って、両者において約3倍異なる指向性を利用し、流体の流速分布を推定し、平均流速を算出することができる。
【0034】
このように、互いに異なる2種類以上の周波数により指向性の異なる超音波ビームパターンを発生させ、幅方向で発生する流速分布を、ほぼ2つの検出エリアに分割し計測することができる。このため、流量による流速分布の相異である流速分布パターンを把握し、平均流速を算出し、流量演算を行うことができる。これらの流量計測は流量算出部14が行うものとする。
【0035】
流路を流れる被測定流体は、流量により幅方向での流速分布に差ができる。特に、流速が遅い範囲では、幅方向での流速分布は放物線形状であり、流速が速い範囲には、バスタブ形状となることが一般的に知られている。そこで、前述したように、互いに指向性が異なる2種類以上の超音波ビームにより、流路幅方向を、幅方向全体をほぼ一様に伝播するエリアと、中心部に集中し伝播するエリアとに分割する。すなわち、超音波トランスジューサから放射される超音波ビームが、周波数が低い時には広がり、逆に高い時には狭くなる効果を利用し、この超音波トランスジューサの高い周波数(第1の周波数)による超音波ビームとして、ビーム幅が流路幅よりも狭くなる指向性を持つビームパターンを伝播させ、逆に低い周波数(第2の周波数)による超音波ビームとしては、ビーム幅が流路幅方向にほぼ一様に広がる指向性を持つビームパターンを伝播させる。このそれぞれ異なるエリアを有する最低2種類の超音波ビームパターンにより、それぞれ独立に超音波を送受信できる構成とすることで、幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な相異が識別でき、流量による流速分布の相異による計測誤差を著しく低減することができる。
【0036】
また、流路内部に流速の分布を制御するための仕切板、整流板等の付加部材を使用しなくても、同等な精度が確保出来るため、製造コストの低減を図ることができる。
また、複数の幅方向に分割した超音波ビームのパターンによる伝播時間の相異から、直接流速分布状態が把握できるので、流路寸法、仕切板の配置精度、寸法精度等の固体差による影響を受けることがなく、さらには、温度による影響も少ないため、安定性が良く高精度な流速計測を実現可能とする。
【0037】
図4は、高周波数帯域側及び低周波数帯域側の各周波数における超音波ビームパターンとその流速分布の状態を示す図で、図4(A)は高周波数側を示し、図4(B)は低周波数側を示す。
図4(B)に示すように、図4(A)に示すように、超音波トランスジューサの高周波数側の周波数による第1の超音波ビームパターンは、流路幅よりも狭い指向性X(=θ1/2)を満足し、一方、低周波数側の周波数による第2の超音波ビームパターンは、流路幅方向ほぼ全域に広がる指向性Y(=θ1/2)を満足する。
【0038】
このように互いに異なる2種類の周波数における指向特性の関係が、X<Yの関係を満足し、これら2種類の超音波ビームパターンにより伝播時間を計測する。まず、高周波数側の周波数における第1の超音波ビームパターンによる伝播時間を計測する。すなわち、超音波トランスジューサ10から放射される超音波ビームが、下流側の超音波トランスジューサ20で受信されるまでに直接伝播する時間計測値(高周波数側の第1の周波数f1による順方向伝播時間)を“Tj1”とし、これとは逆に、下流側の超音波トランスジューサ20から放射される超音波が、上流側の超音波トランスジューサ10で受信されるまでに直接伝播する時間計測値(高周波数側の第1の周波数f1による逆方向直接伝播時間)を“Tg1”とする。
【0039】
同様に、低周波数側の周波数における第2の超音波ビームパターンにより伝播時間を計測する。すなわち、超音波トランスジューサ10から放射される超音波が、下流側の超音波トランスジューサ20で受信されるまでに直接伝播する時間計測値(低周波数側の第2の周波数f2による順方向直接伝播時間)を“Tj2”とし、これとは逆に、下流側の超音波トランスジューサ20から放射される超音波が、上流側の超音波トランスジューサ10で受信されるまでに直接伝播する時間計測値(低周波数側の第2の周波数f2による逆方向直接伝播時間)を“Tg2”とする。これら異なる2種類の周波数による4つの伝播時間計測結果及び伝播時間より算出した流速結果に基づいて、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な流速分布の相異を識別し、流量による流速を算出し流量を演算する。
【0040】
このように、超音波トランスジューサの周波数帯域内で、高周波数による指向性が流路幅よりも狭く流路の中心部エリアを伝播する超音波ビームのパターンと、低周波数による指向性が流路幅方向全体のエリアへ拡散し伝播する音波ビームのパターンとを利用する。すなわち、少なくとも2種類の異なる周波数によって指向性を異ならせた超音波ビームを利用することで、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な平均流速の相異を識別できるので、流量による流速分布の相異による計測誤差を著しく低減することが可能となる。
【0041】
また、互いに異なる2種類の指向性を持つ超音波ビームのパターンにより計測された伝播時間計測結果あるいはこの伝播時間計測結果から演算し算出した流速結果から、流路幅方向を最低2つに区分けされた各エリアによる流速が算出できるので、各超音波パターンによる最低2種類のエリアから算出された流速より流量を演算し、算出することが可能となる。
【0042】
図5は、超音波トランスジューサの周波数帯域内の低周波数側近傍及び高周波数側近傍の超音波ビーム及びその超音波ビームによる検出エリアの状態を示す図である。図5(A)に示すように、低周波数と高周波数の指向性の比は、例えば倍程度異なる範囲であり、比較的離れた2種類の周波数による超音波ビームパターンにより流路幅方向を2つのエリアに分割する。図中、15は周波数帯域内の低周波数側の周波数による超音波ビームとその指向性、16は周波数帯域内の高周波数側の周波数による超音波ビームとその指向性を示す。
【0043】
また、図5(B)は流路幅方向全域に広がる指向性を持つ低周波の超音波ビームによる検出エリアの様子を示し、図5(C)は流路幅方向の幅よりも狭い指向性を持つ高周波の超音波ビームによる検出エリアの様子を示す。
【0044】
図5に示すように、超音波トランスジューサで送受信される2種類以上の異なる超音波ビームは、高周波数側の周波数(近傍)における超音波ビームと、低周波数側の周波数における超音波ビームとなる。あるいは、同一の周波数帯域内(例えば、高周波数帯域内あるいは低周波数帯域内)で比較的離れた周波数(例えば、帯域内の上下限周波数)における超音波ビームとしてもよい。このように、高周波数側の指向性が流路幅より狭い第1の超音波ビームパターンと、低周波数側の指向性が流路幅以上となる第2の超音波ビームパターンとを利用する。これら2つの異なる超音波ビームにより、流路幅方向を2つの異なるエリアに分割し、それぞれのエリアで伝播時間を計測する。
【0045】
具体的には、前述したように、高周波数側の周波数における第1の超音波ビームパターンによる伝播時間計測として、上流側の超音波トランスジューサ10から放射される超音波が、下流側の超音波トランスジューサ20で受信されるまでの直接伝播による時間計測値Tj1と、これとは逆に、下流側の超音波トランスジューサ20から放射される超音波が、上流側の超音波トランスジューサ10で受信されるまでの直接伝播による時間計測値Tg1とを計測する。
【0046】
更に、低周波数側の周波数における第2の超音波ビームパターンによる伝播時間計測として、上流側の超音波トランスジューサ10から放射される超音波が、下流側の超音波トランスジューサ20で受信されるまでの直接伝播による時間計測値Tj2と、これとは逆に、下流側の超音波トランスジューサ20から放射される超音波が、上流側の超音波トランスジューサ10で受信されるまでの直接伝播による時間計測値Tg2とを計測する。これら2種類の伝播時間計測結果及び伝播時間より算出した流速結果に基づいて、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な流速分布の相異を識別し、流量による流速を算出し流量を演算することができる。
【0047】
このように、超音波トランスジューサの帯域内の異なる2種類の周波数を適宜変更して利用することが可能なため、ある程度の媒質の変更や、流路寸法に伴う流速分布の変化があっても、また幅方向での指向性エリアに差があっても、基準となる媒質での異なる2種類の周波数を上下限以外の任意の周波数として選定し計測させることができる。このため、適応範囲が広く汎用性が高い。また計測精度がそれほど必要でない場合には、更に適応範囲が拡大できる。
更に、同一のトランスジューサにおいて、上下限周波数以外の異なる2種類の周波数を選定し、異なる2種類の指向性を利用できるので、温度による指向特性の微妙な差にも対応可能となる。
【0048】
図6は、複数の圧電素子を積層して構成される超音波トランスジューサの構成例を示す図である。このように超音波トランスジューサは、圧電素子を複数枚積層した構造であり、図6(A),(B)の例の場合には2枚の圧電素子22,23を互いに分極方向である厚さ方向に積層され、圧電素子22による共振特性と、圧電素子22と圧電素子23を積層した時の共振特性との2種類の共振周波数を利用する。そして、2種類の共振周波数によるいずれかの超音波の波長に対して音響整合された厚みの音響整合層21を、高い周波数となる圧電素子22側に張り合わせている。
【0049】
音響整合層21の圧電素子22が張り合わされた側とは反対側の放射面より、異なる2種類の超音波を放射し、異なる2種類の指向性パターンにより、流路幅方向を2種類のエリアに分割し、流速分布を推定する。
具体的な超音波トランスジューサとして、下記の関係式で音響的に整合された同一の音響整合層から、互いの共振周波数の異なる圧電素子による超音波ビームを放射することができる。なお、m1,m2は整数、λ1,λ2は互いに異なる共振周波数による超音波の波長、Cは音響整合層を伝播する縦波の速度、f1,f2は圧電素子による互いに異なる共振周波数を示す。
(2m1+1)・{λ1/4}=(2m2+1)・{λ2/4} …式(1)
(2m1+1)・{C/(4・f1)}=(2m2+1)・{C/(4・f2)}…式(2)
すなわち、超音波トランスジューサは、2種類以上の圧電素子の各共振周波数における超音波の波長の約1/4の奇数倍に音響整合される。
【0050】
上記式(2)において、例えば、異なる周波数の関係を3倍としたい場合、(2m1+1)=3でm1=1、(2m2+1)=1でm2=0(m1,m2は整数)とし、f1=600KHz、f2=200KHz、C=2000m/sとすれば、音響整合層の厚みt=2.5mmとなり、互いに異なる共振周波数における超音波を、同一の放射面から効率良く媒質中へ送受信することが可能となる。このときの超音波ビームパターンについて図6(A)に示す。
更に、異なる周波数の関係を5/3倍としたい場合、(2m1+1)=5でm1=2、(2m2+1)=3でm2=1とし、f1=500KHz、f2=300KHz、C=2000m/sとすれば、音響整合層の厚みt=5mmとなり、上記と同様に、互いに異なる共振周波数における超音波を、同一の放射面から効率良く媒質中へと送受信が可能となる。このときの超音波ビームパターンについて図6(B)に示す。
【0051】
無論、図6(C)に示すように、3種類の異なる周波数が必要な場合には、以下の式を満足するように音響整合される。
(2m1+1)・{C/(4・f1)}=(2m2+1)・{C/(4・f2)}=(2m3+1)・{C/(4・f3)} …式(3)
例えば、(2m1+1)=5でm1=2、(2m2+1)=3でm2=1、(2m3+1)=1でm3=0として、f1、f2、f3を考えれば良い。
【0052】
このように、少なくとも異なる2種類の共振特性を示す圧電素子の何れにも音響的に整合された厚みとなるように、音響整合層を個々の共振周波数による超音波の波長の約1/4の奇数倍とすることで、何れの共振特性も損ねず、超音波の送受信効率を高くすることができるため、使用する帯域内周波数における送受信感度を十分に確保することができる。また帯域内感度を充分に確保できるので、この帯域内での互いに周波数が異なる超音波ビームを流路内に伝播し、異なる2種類のエリアによる検出が可能となる。
【0053】
図7は、本発明の超音波流量計による流量計測方法の一例を説明するための図である。図7(A)は指向性Xを持つ第1の超音波ビームパターンによるビームエリアの状態を示し、図7(B)は指向性Yを持つ第2の超音波ビームパターンによるビームエリアの状態を示す。
このように、流路幅方向を2つの異なる超音波ビームにより、2つのエリアに分割し、それぞれのエリアにおいて、順方向直接伝播時間Tj1、逆方向直接伝播時間Tg1、順方向直接伝播時間Tj2、逆方向直接伝播時間Tg2を計測する。
【0054】
第1の超音波ビームパターンによる指向性X(=θ1/2)と、第2の超音波ビームパターンによる指向性Y(=θ1/2)とにより、互いのビームパターンにおける各伝播時間の比は、
Tj1/Tj2=α、Tg1/Tg2=β …式(4)
となる。この比α,βの値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測し、被測定流体の流量を算出することができる。
【0055】
また、2種類の超音波ビームパターンにおける各伝播時間の計測結果から算出した2種類の流速値をV1、V2とすると、
V1={L/(2・COSθ)}・(1/Tj1−1/Tg1) …式(5)
V2={L/(2・COSθ)}・(1/Tj2−1/Tg2) …式(6)
より算出される。なお、Lは超音波トランスジューサの放射面間の距離、θは流れ方向とのなす角度である。これらの流速結果から、2種類の超音波ビームパターンによる流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測し、被測定流体の流量を算出することができる。
【0056】
図7(C)は図7(A)に示す第1の超音波ビームパターンの流量域による流速分布の差を示し、図7(D)は図7(B)に示す第2の超音波ビームパターンの流量域による流速分布の差を示す。図中、流速パターン(1)は層流域であり、層流域(1)によるα及びβをα1及びβ1とし、また、流速パターン(2)は層流域であり、層流域(2)によるα及びβをα2及びβ2とし、更に、流速パターン(3)は乱流域であり、乱流域(3)によるα及びβをα3及びβ3とする。なお、前述したように、層流域とは流れが遅いときの流速パターンを示し、乱流域とは流れが速いときの流速パターンを示す。
【0057】
この場合、その大小関係は、
α1(β1)>α2(β2)>α3(β3)≒1 …式(7)
の関係となり、それぞれの比の値により、流量域による妥当な流速分布パターンを推定し、この推定した流速分布から被測定流体の流量を算出することができる。
【0058】
もちろん流量域の把握は、2種類のビームパターンより計測されたそれぞれの伝播時間から算出した流速値としてもよく、その流速の大小関係から流量域を予測しても良い。
すなわち、図7(C)に示す各流速分布パターン、すなわち層流域(1),(2)、乱流域(3)において、図7(A)に示す第1の超音波ビームパターンによる流速をVc、図7(B)に示す第2の超音波ビームパターンによる流速をVwとすると、その大小関係により流量域を予測し、妥当な流速を決定するようにしても良い。
【0059】
ここで、Vc>Vwの場合は層流域と推定され、その時の比(Vc/Vw)の値により妥当な流速を決定する。また、Vc/Vw≒1の場合は乱流域と推定され、これにより妥当な流速を決定する。層流域(1)の分布パターンにおける流速比をVc1/Vw1とし、層流域(2)の分布パターンにおける流速比をVc2/Vw2とし、乱流域(3)の分布パターンにおける流速比をVc3/Vw3とする。この場合、
(Vc1/Vw1)>(Vc2/Vw2)>(Vc3/Vw3)≒1 …式(8)
の関係となり、流速比のオーダーにより測定時の流量域を推定することができ、測定時点で妥当な流速を算出できる。なお、流量域の推定は、予め記憶されたデータと比較し、データの範囲に適合した値に応じた流量域を判定し、流量域で妥当な流速分布補正係数を割り振ることで、流速を算出し流量を演算する。媒質を都市ガス(13A)としたときの流量Qと流速分布の比ζ(=Vc/Vw)の関係を図8に示す。
【0060】
このように、超音波トランスジューサの周波数帯域内で、指向性が異なる2種類の超音波ビームパターンを送受信させ、流路幅方向を少なくとも2種類の異なるエリアに分割できるため、流路幅方向で異なる流速分布に応じた伝播時間結果が得られ、その伝播時間の結果から、2種類の超音波ビームによる伝播時間の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、妥当な流量域を予測し、被測定流体の流量を算出することができる。
また、時間計測情報から演算し算出した流速結果から、2種類の超音波ビームによる流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測し、被測定流体の流量を算出することができる。
この結果、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な相異が識別できるので、流量域による流速分布の相異があっても計測誤差を著しく低減し高精度な流量計測が実現できる。
【0061】
前述したように、超音波トランスジューサの周波数帯域内で、異なる2種類の周波数による超音波ビームパターンによる伝播時間を計測し、各伝播時間より算出した流速比の値に応じて流量域を把握し、流速比の値に応じて妥当な流速分布補正係数を割り振り、平均流速を演算し流量を算出するようにしてもよい。異なる2種類の周波数が上下限以外で互いに離れた周波数の場合、各超音波ビームにより流路幅方向を2種類に区分し、計測された流速をVc,Vwとすれば、流速Vcは第1の超音波ビームパターン(ビーム幅の狭い高周波数による伝播時間計測)に対応し、流速Vwは第2の超音波ビームパターン(ビーム幅がほぼ流路幅全域に広がる低周波数による伝播時間計測)に対応する。これらの流速Vc,Vwは、前述の式(5),(6)と同様であるが、
Vc={L/(2・COSθ)}・(1/Tj1−1/Tg1) …式(9)
Vw={L/(2・COSθ)}・(1/Tj2−1/Tg2) …式(10)
と表記できる。なお、Lは超音波トランスジューサの放射面間の距離、θは流れ方向とのなす角度である。
【0062】
このように、各伝播時間より算出された流速Vc,Vwの大小関係と、この流速比(Vc/Vw)の値により流量域を予測し、妥当な流速を決定する。
すなわち、Vc>Vwの場合には層流域と推定され、Vc/Vwの値により、妥当な流速分布補正係数を決定し、平均流速を算出することで、被測定流体の流量を算出できる。また、Vc≒Vwの場合には乱流域と推定できるため、係数無しに平均流速を決定することができる。乱流に関する速度分布はピーク速度が平均速度となるため、基本的には流速分布補正係数を用いないが、比の値に応じて乱流域に切替わるまで妥当な流速分布補正係数を割り振ることで、流量域に関わらず、平均流速を算出し流量を演算し算出することが可能となる。
【0063】
図9は、流路幅方向における流速分布パターン(層流域)の様子を説明するための図である。
図9(A)に示すように、幅方向の流速分布に応じて、例えば、実線のような中心が最大で、中心から対称な速度分布パターン、すなわち図7(C)に示した層流域での流速分布パターン(1)の場合、指向性Xが流路幅より狭い第1の超音波ビームパターンによって算出された流速Vcと、指向性Yが流路幅とほぼ等しい第2の超音波ビームパターンによって算出された流速Vwとの比(Vc/Vw)の値を“ζ1”とする。
【0064】
また、図9(B)に示すように、点線のような流速分布パターン、すなわち図7(C)に示した層流域での流速分布パターン(2)の場合、流速VcとVwとの比(Vc/Vw)の値を“ζ2”とした場合、比の値ζ1、ζ2の大きさに比例した流速分布補正係数をそれぞれφ1、φ2とすれば、図9(A),(B)に示すV1(実線),V2(点線)の各流速パターンにおける平均流速は、
V1=φ1・(Vc+Vw)/2 …式(11)
V2=φ2・(Vc+Vw)/2 …式(12)
として算出できる。
【0065】
あるいは、
V1=φ1′・Vc …式(13)
V2=φ2′・Vc …式(14)
として算出することもできる。但し、φ1′、φ2′はζ1、ζ2に比例した別の補正係数である。無論、別の補正係数を用いて、Vwに対する補正として流速を算出するようにしても良い。
流路幅方向で互いに指向性が異なる2種類の超音波ビームパターンによる、流速比のオーダーに応じて、分布パターンを推定し、流速分布パターンに応じて妥当な流速分布補正係数を割り振ることにより、平均流速を算出し、被測定流体の流量を算出できる。
【0066】
このように、流路幅方向を少なくとも2種類の周波数による指向性が異なる超音波ビームパターンを送受信させ、流路幅方向を少なくとも2種類の異なるエリアに分割することで、流路幅方向で異なる流速分布に応じた伝播時間結果が得られる。この伝播時間の結果から、少なくとも2種類の超音波ビームによる伝播時間の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測すると同時に、その比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、流路断面を横切る平均流速を演算し算出することができる。このため流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
【0067】
また、時間計測情報から演算し算出した流速結果から、流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測すると同時に、その比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、流路断面を横切る平均流速を演算し算出することができる。このため流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
【0068】
図7及び図9に示すように、高周波数による第1の超音波ビームパターンでの順方向直接伝播時間Tj1、逆方向直接伝播時間Tg1、さらに、低周波数による第2の超音波ビームパターンでの順方向直接伝播時間Tj2、逆方向直接伝播時間結果:Tg2とすると、その比は、Tj1/Tj2=αで、αがα3≒1、Tg1/Tg2=βで、βがβ3≒1となる。この場合、2種類の異なる周波数による各伝播時間の比がほぼ等しく“1”となることでその流速分布パターンは乱流域(3)であると推定される。
【0069】
また、指向性が流路幅より狭い第1の超音波ビームパターンによって算出された流速Vcと、指向性が流路幅とほぼ等しい第2の超音波ビームパターンによって算出された流速Vwとの比の値がVc/Vw≒1として乱流域(3)の流速分布パターンであると推定された場合、低周波数帯域側の共振特性を示す圧電素子の共振周波数近傍における超音波ビームパターンを用いて被測定流体の流量を演算すればよい。
このように乱流域と判定された場合には、超音波の伝播による減衰が少なく音圧が高い低周波数側(共振周波数近傍)の周波数による超音波ビームを利用することで、乱流による超音波ビームの送受信効率の低下による影響を低減することができるため、安定した計測が実現でき、正確な流速を演算し流量を算出することができる。
【0070】
また、図9(A),(B)に示すように、各流速パターン(第1,第2の超音波ビームパターン)における平均流速V1,V2は、式(11)〜式(14)に基づいて算出することができる。
【0071】
同様に、図9(A),(B)において、ガス種が都市ガス13Aの場合、ζ1,ζ2の大きさに比例した補正係数をそれぞれφ5,φ6とすれば、V1(実線),V2(点線)の各流速パターンにおける平均流速は、
V1=φ5・(Vc+Vw)/2 …式(15)
V2=φ6・(Vc+Vw)/2 …式(16)
として算出できる。
【0072】
あるいは、
V1=φ5′・Vc …式(18)
V2=φ6′・Vc …式(19)
として算出することも可能である。但し、φ5′、φ6′はζ1、ζ2に比例した別の補正係数である。無論、別の補正係数を用いて、Vwに対する補正として流速を算出するようにしても良い。
ガスの種類で変化する微妙な流速分布の相異に応じて、妥当な補正係数となるよう補正係数を変化させる事で、流速分布に関わらず平均流速を算出し流量を演算し算出できる。
【0073】
ここで、被測定流体の種類によって、流体の粘性や、密度などに相異があるため、ガス種(媒質)を伝播する超音波の縦波流速が異なり、超音波ビームの指向特性に差が発生する。また流路形状、寸法などにより、最適な超音波ビームのエリアによる差に対して補正係数の値は微妙に異なり、異なる指向特性を示す2種類の超音波ビームによる計測が、流量域における流速分布パターンの差に対して、充分な相異を識別出来ないことも起こり得る。
【0074】
図10は被測定流体の種類及び流路径による第1の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図で、図11は被測定流体の種類及び流路径による第2の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図である。
図10(A)はLPGの場合における第1の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、LPG中の帯域上限の高周波数による第1の超音波ビームパターンの指向性をX(=θ1/2)とする。図10(B)は都市ガス(13A)の場合における第1の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、同一の圧電素子を有する超音波トランスジューサから放射される直接伝播波による指向特性をX′(=θ1/2)とする。同様に、図11(A)はLPGの場合における第2の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、LPG中の帯域下限の低周波数による第2の超音波ビームパターンの指向性をY(=θ1/2)とする。図11(B)は都市ガス(13A)の場合における第2の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、同一の圧電素子を有する超音波トランスジューサから放射される直接伝播波による指向特性をY′(=θ1/2)とする。
【0075】
上記において、LPGの縦波による伝播速度は、都市ガス(13A)に比べて遅いため、同一の圧電素子を有する超音波トランスジューサから放射される直接伝播波による指向性X′(=θ1/2)、指向性Y′(=θ1/2)の何れも都市ガス(13A)の方が広くなる。すなわち、X′>X、Y′>Yの関係となる。従って、同一の圧電素子を有する超音波トランスジューサでは、速度に大きな差があるガス種(媒質)による流速分布パターンを計測する場合、ガス種(媒質)によって広がりの異なる超音波ビームが、区分けされた流速分布パターンを横切る際、ビームエリアによる検出エリアの相異により、計測される伝播時間には微妙なズレが発生し、補正係数が微妙に異なってしまうことになる。無論その伝播時間から算出した流速結果にも微妙なズレが発生することになる。
【0076】
更に、流路径(流路寸法)が異なる場合、LPG計測時と同じ超音波トランスジューサによる2種類の指向性ビームで都市ガス(13A)を計測すると、流路幅が狭い場合は媒質による指向性の拡大により、帯域上限の高周波数による超音波ビームを流路幅より狭く出来ないため、指向性の差を識別することができず、流速分布パターンの推定が困難となる。またこれとは反対に、媒質の変化で指向性が拡大するよりも、流路幅の拡大のほうが大きい場合、帯域下限の低周波数による指向性が流路幅と同等以上に広がる効果が期待できず、2種類の指向性は流速分布の中央部エリアに集中し、流速分布の識別分解能が充分に得られないことがある。
【0077】
そこで、ガス種に応じて、また流路寸法に応じて、超音波トランスジューサを構成する圧電素子の寸法と、その寸法によって変化する共振周波数と、音響整合層の寸法を調整し最適化することで、流路幅方向を中央部エリアと、全幅エリアとの2つに分割したエリアに、異なる2種類の超音波ビームパターンを伝播させ、ガス種の変化や、流路寸法に最適な指向特性を満足できる超音波ビームをそれぞれ送受信させる。これにより、幅方向の区分けされたそれぞれのエリアで、流路幅方向で異なる流速分布に応じた超音波送受信による伝播時間結果が得られ、その伝播時間の結果から、伝播時間の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、妥当な流量域を推測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、平均流速を演算し算出することができ、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず安定した高精度な計測が実現できる。
【0078】
または、超音波送受信による時間計測結果から演算し算出した流速結果から、流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振るようにしてもよい。この場合も同様に、平均流速を演算し算出することができ、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず安定した高精度な計測が実現できる。
【0079】
流路形状・寸法や、計測レンジ、計測分解能に伴って変化する流速分布パターンの変化や、流速の偏り度合を判断するのに必要な異なる2種類の超音波ビームを得るために、超音波トランスジューサから放射される超音波ビームを送受信する位置と、ビーム数を変化させ、最適な超音波エリアを満足させるようにしてもよい。
【0080】
図12は流路幅の拡大による第1の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図で、図13は流路幅の拡大による第2の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図である。
図12(A)は高周波数による第1の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、図12(B)は流路幅を拡大した場合における第1の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、図13(A)は低周波数による第2の超音波ビームパターンの流速分布の例を示し、図13(B)は流路幅を拡大した場合における第2の超音波ビームパターンの流速分布の例を示す。
【0081】
このように、流量レンジの拡大(流量計測範囲の拡大)に伴い、流路幅方向の拡大が顕著化すると、1つの圧電素子を有する超音波トランスジューサによる超音波ビームでは、流速分布を充分に推定するのに必要な有効な検出エリアが確保できない。これは、圧電素子の寸法と、それによって変化する共振周波数、音響整合層の寸法により指向特性が変化し、流路幅の中央部と流路幅全域へと充分広がる2種類の超音波ビームパターンを1つの超音波トランスジューサにより最適化するのは困難であるためである。
【0082】
圧電素子の共振周波数を下げて、指向性を広げることにより、最適な指向性を確保出来るが、計測分解能を得るため、周波数を下げるにも限界がある。このため、複数の圧電素子を有する超音波トランスジューサで、計測分解能を満足しつつ、流速分布を識別するのに必要な指向性を満足するのは不可能に近い。特に、流速分布が流路幅の中央で対称でなく、且つ、流路幅が広い場合には、必要となる検出エリアに流速分布を把握するのに充分な、異なる2種類の指向性を有する超音波ビームを送受信することが困難となってしまう。
【0083】
このような問題に対して、図12(B)及び図13(B)に示すように、例えば、圧電素子を2つに分割し、それぞれ独立に動作できる構成の超音波トランスジューサ20′を備えるようにしてもよい。超音波トランスジューサ20′は、音響整合層21′と、2つに分割された圧電素子22′,23′とで構成される。なお、超音波トランスジューサ20′と対となる相手方の超音波トランスジューサも同様の構成とする。
【0084】
図12(B)において、流路幅の中央を境界として、中央と上下の境界のエリアに対して、直接伝播波はこの中央と上下の境界の中央部を伝播する超音波ビームエリア(a),(b)となる超音波を伝播させる。また、図13(B)において、超音波ビームは、流路幅の中央部と上下の境界であって流路幅の半分の超音波ビームエリア(c),(d)を満足する超音波を伝播させる。各圧電素子中央部から音響整合層を介して送受信される、2種類の超音波ビームによる伝播時間の計測結果から、流路幅方向の流速分布パターンを推定し、伝播時間の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、妥当な流量域を推測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで平均流速を演算し算出する。これにより、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず安定した高精度な計測が実現できる。
【0085】
また、超音波の送受信による時間計測結果から演算し算出した流速結果から、流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで平均流速を演算し算出するようにしてもよい。これにより、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず安定した高精度な計測が実現できる。無論、計測分解能がそれほど必要でない場合では、周波数により超音波ビームを最適化しても良い。
【0086】
また、同一の流体での流量による流速分布の補正係数の妥当な値は、流体の種類や、流路寸法に応じて微妙に変動する。従って、流体の種類や、流路寸法、流量レンジの少なくとも1つに基づいて、流速分布補正係数とは異なる別の補正係数を付与することで、流路幅方向に流体の粘性や密度の相異で微妙に変化する流速分布の影響を考慮した最適な補正係数を割り振ることができる。
【0087】
このように、流路幅方向の流速分布が流体の種類や、流路寸法に影響を受け無いよう、流体の種類や、流路寸法、流量レンジの少なくとも1つに基づいて、流速分布補正係数とは異なる別の補正係数を付与することで、補正係数を最適化させることができるので、流量域による幅方向の流速分布の影響を気にせず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
すなわち、時間計測情報から演算し算出した流速結果から、各流速値における比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適化された流速分布補正係数を変更し、さらには、流体の種類や、流路寸法、流量レンジの少なくとも1つに基づいて、流速分布補正係数とは異なる別の補正係数を付与することで、流量域による幅方向の流速分布が流体の種類や流路寸法に関わらず、全流量域に渡って安定した高精度な計測が実現できる。
【0088】
超音波トランスジューサを構成する圧電素子の寸法と、それに伴う共振周波数、また音響整合層の寸法を、流路を流れる流体の種類や、流路形状・寸法に応じて変化させることで、流体の種類によって異なる粘性、密度の相異に伴う流速値の相異により、流体を伝播する超音波の指向性に差があっても、また流路形状・寸法によるビームエリアに差があっても、流路幅方向を少なくとも2つのエリアに分割し、最適な超音波ビームをそれぞれ送受信させることができる。
【0089】
このように、流路幅方向を少なくとも2つのエリアに分割し、最適な超音波ビームをそれぞれ送受信させることができるため、幅方向の区分けされたそれぞれのエリアで、流路幅方向で異なる流速分布に応じた超音波送受信による伝播時間を得ることができ、その伝播時間の結果から、伝播時間の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、流路断面を横切る平均流速を演算し算出することができる。このため、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
【0090】
また、超音波の送受信による時間計測結果に基づいて演算し算出した流速結果から、流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、流路断面を横切る平均流速を演算し算出することができる。このため、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
【0091】
超音波トランスジューサから放射される超音波のビーム数を、流路を流れる流体の種類や、計測する流量レンジに伴う計測音場の相異に応じて変化させることで、流体の種類によって異なる粘性、密度による流速分布の差があっても、また計測すべき流量レンジによる流速分布に差があっても、2種類の超音波ビームパターン、すなわち、流路幅よりも狭い高周波数の超音波ビームパターンと、流路幅と略等しい低周波数の超音波ビームパターンとを送受信させることができる。
【0092】
これにより、流路幅方向を区分けされたそれぞれのエリアで、流路幅方向で異なる流速分布に応じた超音波送受信による伝播時間結果が得られるので、その伝播時間の結果から、伝播時間の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し、妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、流路断面を横切る平均流速を演算し算出することができる。このため、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
【0093】
また、超音波の送受信による時間計測結果から演算し算出した流速結果から、流速の比の値を比較し、その大小関係に基づいて、流路幅方向における流速分布のパターンを推定し妥当な流量域を予測すると同時に、比の値に応じて最適な流速分布補正係数を割り振ることで、流路断面を横切る平均流速を演算し算出することができる。このため、流量域による幅方向の流速分布の影響を受けず、全流量域に渡って安定し高精度な計測が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の超音波流量計が備える超音波トランスジューサの配置例を示す図である。
【図2】周波数帯域の異なる超音波ビームパターンの一例を示す図である。
【図3】周波数帯域の異なる超音波ビームパターンの他の例を示す図である。
【図4】高周波数帯域側及び低周波数帯域側の各周波数における超音波ビームパターンとその流速分布の状態を示す図である。
【図5】超音波トランスジューサの周波数帯域内の低周波数側近傍及び高周波数側近傍の超音波ビーム及びその超音波ビームによる検出エリアの状態を示す図である。
【図6】複数の圧電素子を積層して構成される超音波トランスジューサの構成例を示す図である。
【図7】本発明の超音波流量計による流量計測方法の一例を説明するための図である。
【図8】媒質を都市ガス(13A)としたときの流量と流速分布の比の関係を示した図である。
【図9】流路幅方向における流速分布パターン(層流域)の様子を説明するための図である。
【図10】被測定流体の種類及び流路径による第1の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図である。
【図11】被測定流体の種類及び流路径による第2の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図である。
【図12】流路幅の拡大による第1の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図である。
【図13】流路幅の拡大による第2の超音波ビームパターンの流速分布の相異を説明するための図である。
【符号の説明】
【0095】
10,20…超音波トランスジューサ、11,21…音響整合層、12,13,22,23…圧電素子、14…流量算出部、30…流路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体が流れる流路を挟んで対向する位置に配置された一対の超音波トランスジューサと、該一対の超音波トランスジューサにより送受信される超音波の伝播時間に基づいて前記被測定流体の流量を算出する流量算出手段とを備えた超音波流量計であって、
前記一対の超音波トランスジューサは、2以上の異なる周波数帯域の超音波ビームパターンを送受信するための複数の圧電素子を積層して備え、
前記流量算出手段は、前記2以上の超音波ビームパターンの伝播時間情報に基づいて、前記被測定流体の流速分布を推定し、該推定した流速分布から前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波流量計において、前記複数の圧電素子は、第1の圧電素子と、該第1の圧電素子に積層された第2の圧電素子とで構成され、前記第1の圧電素子により高周波数側の超音波ビームパターンを送受信し、前記第1の圧電素子及び前記第2の圧電素子により低周波数側の超音波ビームパターンを送受信することを特徴とする超音波流量計。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の超音波流量計において、前記2以上の超音波ビームパターンは、前記一対の超音波トランスジューサの高周波数側に対応して前記流路の幅よりも狭いビーム幅を持つ第1の超音波ビームパターンと、前記一対の超音波トランスジューサの低周波数側に対応して前記流路の幅以上のビーム幅をもつ第2の超音波ビームパターンとを含むことを特徴とする超音波流量計。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波流量計において、前記2以上の超音波ビームパターンの互いに異なる周波数は、前記一対の超音波トランスジューサの高周波数帯域内の周波数と低周波数帯域内の周波数であることを特徴とする超音波流量計。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波流量計において、前記2以上の超音波ビームパターンの互いに異なる周波数は、前記一対の超音波トランスジューサの各周波数帯域内の上限周波数と下限周波数であることを特徴とする超音波流量計。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波流量計において、前記一対の超音波トランスジューサは、厚み方向に縦振動する圧電素子を2種類以上積層し、該2種類以上の圧電素子の各共振周波数における超音波の波長の約1/4の奇数倍に音響整合されていることを特徴とする超音波流量計。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波流量計において、前記一対の超音波トランスジューサそれぞれは前記2種類以上の圧電素子が積層方向に分割され、該分割された前記2種類以上の圧電素子はそれぞれ独立した超音波トランスジューサとして機能することを特徴とする超音波流量計。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の超音波流量計において、前記流量算出手段は、前記2以上の超音波ビームパターンによる伝播時間の比の値あるいは該伝播時間から算出される流速の比の値に基づいて、前記流路の幅方向における流速分布を推定し、該推定した流速分布から前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする超音波流量計。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の超音波流量計において、前記流量算出手段は、前記2以上の超音波ビームパターンより得られた伝播時間あるいは該伝播時間から算出される流速から、前記被測定流体の流量域が乱流域と判断された場合、前記2以上の超音波ビームパターンのうち、低周波数帯域側の共振特性を示す圧電素子の共振周波数近傍における超音波ビームパターンを用いて前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする超音波流量計。
【請求項10】
請求項8に記載の超音波流量計において、前記流量算出手段は、前記推定した流速分布に応じて、流速分布補正係数を付与し、前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする超音波流量計。
【請求項11】
請求項8に記載の超音波流量計において、前記流量算出手段は、流体の種類、流路寸法、流量レンジの少なくとも1つに基づいて、補正係数を付与し、前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする超音波流量計。
【請求項12】
被測定流体が流れる流路を挟んで対向する位置に配置された一対の超音波トランスジューサと、該一対の超音波トランスジューサにより送受信される超音波の伝播時間に基づいて前記被測定流体の流量を算出する流量算出手段とを備えた超音波流量計による流量計測方法であって、
前記一対の超音波トランスジューサが積層して備える複数の圧電素子が、2以上の異なる周波数帯域の超音波ビームパターンを送受信し、
前記流量算出手段が、前記2以上の超音波ビームパターンの伝播時間情報に基づいて、前記被測定流体の流速分布を推定し、該推定した流速分布から前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする流量計測方法。
【請求項1】
被測定流体が流れる流路を挟んで対向する位置に配置された一対の超音波トランスジューサと、該一対の超音波トランスジューサにより送受信される超音波の伝播時間に基づいて前記被測定流体の流量を算出する流量算出手段とを備えた超音波流量計であって、
前記一対の超音波トランスジューサは、2以上の異なる周波数帯域の超音波ビームパターンを送受信するための複数の圧電素子を積層して備え、
前記流量算出手段は、前記2以上の超音波ビームパターンの伝播時間情報に基づいて、前記被測定流体の流速分布を推定し、該推定した流速分布から前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波流量計において、前記複数の圧電素子は、第1の圧電素子と、該第1の圧電素子に積層された第2の圧電素子とで構成され、前記第1の圧電素子により高周波数側の超音波ビームパターンを送受信し、前記第1の圧電素子及び前記第2の圧電素子により低周波数側の超音波ビームパターンを送受信することを特徴とする超音波流量計。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の超音波流量計において、前記2以上の超音波ビームパターンは、前記一対の超音波トランスジューサの高周波数側に対応して前記流路の幅よりも狭いビーム幅を持つ第1の超音波ビームパターンと、前記一対の超音波トランスジューサの低周波数側に対応して前記流路の幅以上のビーム幅をもつ第2の超音波ビームパターンとを含むことを特徴とする超音波流量計。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波流量計において、前記2以上の超音波ビームパターンの互いに異なる周波数は、前記一対の超音波トランスジューサの高周波数帯域内の周波数と低周波数帯域内の周波数であることを特徴とする超音波流量計。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波流量計において、前記2以上の超音波ビームパターンの互いに異なる周波数は、前記一対の超音波トランスジューサの各周波数帯域内の上限周波数と下限周波数であることを特徴とする超音波流量計。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波流量計において、前記一対の超音波トランスジューサは、厚み方向に縦振動する圧電素子を2種類以上積層し、該2種類以上の圧電素子の各共振周波数における超音波の波長の約1/4の奇数倍に音響整合されていることを特徴とする超音波流量計。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波流量計において、前記一対の超音波トランスジューサそれぞれは前記2種類以上の圧電素子が積層方向に分割され、該分割された前記2種類以上の圧電素子はそれぞれ独立した超音波トランスジューサとして機能することを特徴とする超音波流量計。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の超音波流量計において、前記流量算出手段は、前記2以上の超音波ビームパターンによる伝播時間の比の値あるいは該伝播時間から算出される流速の比の値に基づいて、前記流路の幅方向における流速分布を推定し、該推定した流速分布から前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする超音波流量計。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の超音波流量計において、前記流量算出手段は、前記2以上の超音波ビームパターンより得られた伝播時間あるいは該伝播時間から算出される流速から、前記被測定流体の流量域が乱流域と判断された場合、前記2以上の超音波ビームパターンのうち、低周波数帯域側の共振特性を示す圧電素子の共振周波数近傍における超音波ビームパターンを用いて前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする超音波流量計。
【請求項10】
請求項8に記載の超音波流量計において、前記流量算出手段は、前記推定した流速分布に応じて、流速分布補正係数を付与し、前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする超音波流量計。
【請求項11】
請求項8に記載の超音波流量計において、前記流量算出手段は、流体の種類、流路寸法、流量レンジの少なくとも1つに基づいて、補正係数を付与し、前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする超音波流量計。
【請求項12】
被測定流体が流れる流路を挟んで対向する位置に配置された一対の超音波トランスジューサと、該一対の超音波トランスジューサにより送受信される超音波の伝播時間に基づいて前記被測定流体の流量を算出する流量算出手段とを備えた超音波流量計による流量計測方法であって、
前記一対の超音波トランスジューサが積層して備える複数の圧電素子が、2以上の異なる周波数帯域の超音波ビームパターンを送受信し、
前記流量算出手段が、前記2以上の超音波ビームパターンの伝播時間情報に基づいて、前記被測定流体の流速分布を推定し、該推定した流速分布から前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする流量計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−74949(P2009−74949A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244633(P2007−244633)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】
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