説明

超音波画像診断方法および超音波画像診断装置

いくつかの実施形態は、カラードプラデータの取得と、前記カラードプラデータの一つ以上の遷移部について、その各遷移部が、第1方向の流速に対応した第1領域と、前記第1方向ではない流速に対応した第2領域との間に位置する一つ以上の遷移部の検出とを含む。前記一つ以上の遷移部のうちの一つ以上を隔てた正規化エネルギ関数を算出し、前記カラードプラデータ内のフロー領域の構成を特定し、更に、前記正規化エネルギ関数と前記フロー領域の構成とに基づいて、前記カラードプラデータに対するエイリアシング補正を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフロー画像を形成する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願)本願は、2009年8月11日に出願された「Method and Apparatus for Ultrasound Imaging(超音波画像診断方法および超音波画像診断装置)」という名称の米国仮特許出願第61/232,862号の優先権を主張するものであり、前記出願は、その開示内容全体を本願明細書の一部として援用する。
【0003】
本明細書に記載するシステムおよび方法は、概して超音波画像診断の分野に関する。より詳細には、下記に記載する実施形態は、カラーフロー画像を形成する方法およびシステムに関する。
【0004】
超音波は、特に限定するものではないが、心臓、肝臓、胎児、血管を含む各種の内部構造体の画像化に利用されている。心臓血管疾患の診断では、通常、カラードプラ(カラーフロー)画像形成を利用して、心臓や血管の中の血流を可視化する。異常状態は、正常状態と比べて、血流速度を上昇させることが多い。この上昇した速度は、対応するカラードプラ画像内にエイリアシングを引き起こす場合がある。カラードプラ法は、その空間サンプリング機能にパルス超音波技術を利用しているため、エイリアシングを生じずに検出できる最高速度に限界がある。サンプリング周波数でもあるパルス繰り返し周波数(Pulse Repetition Frequency,PRF)によって、最高周波数限界が設定される。そして、この限界が、エイリアシングを提示せずに測定できる血流最高速度を制限する。この制限は、心臓病の場合に特に問題になり得る。例えば、PRFは、かなり深い画像処理深度において生じる異常に速い血液速度、例えば、心臓弁を通る逆流ジェットなどの血液速度を測定する十分な高さに設定することができない。したがって、異常な心臓状態において、カラードプラ法はエイリアシングを生じることが多いため、血流画像に基づく診断の信頼性を低下させている。したがって、このエイリアシングの問題に対処する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/232,862号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、エイリアシングの問題に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態は、カラードプラデータを取得し、そのカラードプラデータの一つ以上の遷移部であって、各遷移部が第1方向の流速に対応した第1領域と前記第1方向ではない流速に対応した第2領域との間にある一つ以上の各遷移部を検出することを含む。前記一つ以上の遷移部のうちの一つ以上を隔てた正規化エネルギ関数を算出し、カラードプラデータ内のフロー領域の構成を特定し、前記正規化エネルギ関数および前記フロー領域の構成に基づいてカラードプラデータに対するエイリアシング補正処理を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】カラードプラ画像を示す図である。
【図1B】2つのフロー領域を持つカラードプラ画像を示す図である。
【図2A】2つのフロー領域を持つカラードプラ画像を示す図である。
【図2B】3つのフロー領域を持つカラードプラ画像を示す図である。
【図3】超音波診断画像処理システム(従来技術)の図である。
【図4】いくつかの実施形態に係る、ラインデータを用いる超音波診断画像処理システムの図である。
【図5】いくつかの実施形態に係る、走査変換画像を用いる超音波診断画像処理システムの図である。
【図6A】カラーフローライン表現の図である。
【図6B】走査変換されたカラーフロー画像表現の図である。
【図7A】Bモードライン表現の図である。
【図7B】走査変換されたBモード画像表現の図である。
【図8A】ベースラインシフトを行っていないドプラ偏移周波数(速度)スケールを示す図である。
【図8B】fPRF/4のベースラインシフトを行ったドプラ偏移周波数(速度)スケールを示す図である。
【図8C】-fPRF/4のベースラインシフトを行ったドプラ偏移周波数(速度)スケールを示す図である。
【図9A】エイリアシングを有する血管内のカラードプラ速度分布を示す図である。
【図9B】エイリアシング補正を行った血管内のカラードプラ速度分布を示す図である。
【図10】3つのフロー領域が存在するカラードプラ画像を示す図である。
【図11】正の速度方向における速度エイリアシングの各種の度合いを示す図である。
【図12】負の速度方向における速度エイリアシングの各種の度合いを示す図である。
【図13】いくつかの実施形態に係るエイリアシング補正を行うプロセスの流れ図である。
【図14】2つのフロー領域を含むカラードプラ画像を示す図である。
【図15】単一封入部を含むカラードプラ画像を示す図である。
【図16】二重封入部を含むカラードプラ画像を示す図である。
【図17】三重封入部を含むカラードプラ画像を示す図である。
【図18】2つのフロー領域を含むカラードプラ画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
付属の図面の図を参照しながら実施形態について説明する。図面全体を通して、同様の番号は同様の要素を表す。実施形態について詳細に説明する前に、これらの実施形態は、下記の説明に記載した例、または図に示した例の詳細内容に用途が限定されるものではないことを理解されたい。他の実施形態も、各種の用途において、または各種の方式で実施または実践することができる。また、本明細書で用いる表現および用語は、説明のためのものであり、限定するものと見なされるべきはないことを理解されたい。本明細書において、「含む」、「包含する」、または「有する」という用語、およびその変化形は、その後に列挙する項目およびその等価物と共に、追加の項目も包含することを意味する。「取り付け」、「接続」、および「結合」という用語は、広い意味に用いられており、直接的と間接的の両方の方式での取り付け、接続、および結合を含む。また、「接続される」、および「連結される」ことは、接続または結合が物理的または機械的なものであることに限定されない。
【0010】
尚、実施形態は、記載されているか、または図に示唆されているいずれか特定のソフトウェア言語に限定されるものではない。各種の代替のソフトウェア言語を利用して一部の実施形態を実施できることは、当業者であれば理解されるであろう。また、いくつかの構成要素および項目は、この分野において慣習となっているとおり、ハードウェア要素であるように図示および説明されることも理解されたい。ただし、当業者であれば、この詳細な説明を読むことで、本方法および本システムの構成要素は、少なくとも一つの実施形態においてソフトウェアまたはハードウェアに実装できることを理解されるであろう。
【0011】
超音波振動子は、人体内部に超可聴音(すなわち、超音波)を送信して、特に限定するものではないが、血管、胎児、および心臓を始めとする各種の内部構造体を画像化する。組織内の散乱体が超音波を散乱し、その散乱超音波が振動子に送り返される。受信ビームフォーマが超音波ビームを生成する一方で、後処理装置は、戻された超音波信号の振幅から、組織の画像をBモード画像として生成する。
【0012】
血管や心臓は、患者の心血管状態を示すため、画像化されることが多い。血流情報は、通常、カラードプラ技術およびスペクトルドプラ技術を用いて取得される。
【0013】
カラードプラ法は、血流内に超音波を送信し、移動中の赤血球から散乱超音波を検出することによって血流を画像化する処理に広く利用される二次元画像形成技術である。この画像は、Bモード画像と同様の多数のビームで構成される。カラードプラ技術の説明を続けるが、実施形態は、本明細書の特定の詳細内容に限定されるものではない。
【0014】
流速を検出するために、超音波振動子は、動きを検出する位置毎に複数回、超音波信号を送信する。二次元のフロー画像を生成するには、ミリメートル未満、または、ほぼ超音波の波長のオーダで送信位置を移動する。この送信位置の移動を100回ほど繰り返して数センチメートルを網羅し、直線状の凸型形式で二次元のフロー画像を生成する。位相配列振動子または扇形画像形式では、僅かな角度、例えば、約0.5〜1.0度だけ送信方向を変化させる。これを100回ほど繰り返して、約90度の扇形画像にする。各送信位置または各送信方向に数回、超音波を送信する。受信したビーム成形RF超音波信号は、直交復調されて、複素ドプラI−Q信号になる。
【0015】
カラードプラ技術において、超音波は、パルス繰り返し周波数(PRF)で送信され、血流速度は、受信した超音波信号内の周波数の偏移(ドプラ偏移周波数)として検出される。受信した超音波は、送信超音波周波数と同じ周波数の同相(0度)直交(90度)基準信号と混合される。高周波成分(例えば、第二高調波)をローパスフィルタにかけると、ベースバンド信号のみが得られる。このベースバンド信号にウォールフィルタ(すなわち、ハイパスフィルタ)を適用して、組織、および血管壁などのゆっくりと移動する組織からの強いクラッタノイズを除去すると、複素I−Qドプラ信号が得られる。ウォールフィルタ処理を実行するのは、ドプラI−Q信号が、血流信号成分と共に静止組織信号成分を含む場合があるためである。静止成分は、通常、血流成分よりも30〜40dB大きい。したがって、血流を精度よく検出するためには、静止信号成分を抑制または除去することが望ましい。
【0016】
通常は、ウォールフィルタ処理された複素I−Q信号を用いてドプラ偏移周波数を導出するが、これは、ドプラ偏移周波数と血液速度には次の関係があることに因る。
【数1】

上式において、Δfはドプラ偏移周波数、f1は送信周波数、vは血液速度、θは超音波ビーム方向と速度ベクトルの間の角度、cは音速である。したがって、ドプラ偏移周波数は、速度方向と超音波ビーム方向の間の角度によって異なり、超音波カラードプラシステムが取得できる測定値である。ドプラ偏移周波数から導出した速度(流速、カラー速度、カラーフロー速度、カラードプラ速度などとも呼ばれる)は、通常、超音波ビーム方向の速度成分(すなわち、vcosθ)、または、角度が判明していないか、もしくは測定されて適宜補正されていない場合は、真の流速vの超音波ビーム方向への投影値である。
【0017】
カラードプラの場合は、サンプリング信号の数を10に限定することができる。したがって、通常は、自己相関技法を利用して、ウォールフィルタ処理したI−Q信号の位相差を特定し、その後で、ドプラ偏移周波数および血流速度を下記のように特定する。カラードプラのI−Q信号z(n)=x(n)+jy(n)を用いて、次式に示すように「自己相関」Rを算出する。次式において、z(n)はウォールフィルタ処理した複素I−Qドプラ信号、x(n)は同相(実)信号、y(n)は直交位相(虚数)信号で、nは信号番号を示し、jは虚数単位、*は共役複素数である。
【数2】

【0018】
Rの実数部(Real(R))および虚数部(Imag(R))を用いて、次式に示す ように位相φを取得する。
【数3】

【0019】
tan−1は、通常、−0.5πから0.5πまでしか提供しないため、複素座標における複素数値Rの位置も利用することで、−πからπの範囲のφを導出することができる。この後、次式に示すように、位相(すなわち、カラードプラ位相)φをドプラ偏移周波数に相関させる。
【数4】

【0020】
数式(4)に示すように、2πのカラードプラ位相は、パルス繰り返し周波数fPRFのドプラ偏移周波数に相当する。また、πのカラードプラ位相は、fPRF/2のドプラ偏移周波数に相当し、−πのカラードプラ位相は、-fPRF/2のドプラ偏移周波数に相当する。正の方向の流速(カラーフロー速度)は、正のドプラ偏移周波数および正のカラードプラ位相に相当し、負の方向の流速(カラーフロー速度)は、負のドプラ偏移周波数および負のカラードプラ位相に相当する。位相、ドプラ偏移周波数および血流速度を得るために他の技法を用いることもできる。ドプラ偏移周波数は血流速度を表す。また、ハイパスフィルタ処理したドプラI−Q信号のべき数は血流の存在を表し、データの不一致は乱流を示す。
【0021】
カラードプラ信号はパルス超音技術(サンプリング技術を含む)によって取得されるため、最大周波数限界はサンプリング理論によって決定される。最大周波数は、一般に、パルス繰り返し周波数(PRF)、すなわちfPRFの半分である。自己相関は複素I−Qドプラ信号に対して実行されるため、負の方向の血流速度は、負の周波数領域に現れる。したがって、カラードプラ周波数は、負の速度(すなわち、超音波振動子から離れる方向の速度)に対応する負の周波数を含む。例えば、ドプラ偏移周波数は、通常-fPRF/2からfPRF/2の範囲であり、この範囲は、負の最高速度と正の最高速度(すなわち、超音波振動子に近づく方向の速度)の間の範囲に相当する。
【0022】
いくつかの実施形態では、他のドプラ偏移周波数範囲を採用している。例えば、この範囲に、範囲の中心周波数がゼロと等しくならない「ベースラインシフト」を組み込むことができる。一部の実施形態において、ベースラインシフトは-fPRF/2とfPRF/2の間の周波数範囲から選択されてよい。図8Cに示す具体例において、-fPRF/4から3fPRF/4のドプラ偏移周波数範囲には、-fPRF/4のベースラインシフトが反映されている。このドプラ周波数範囲は、-fPRF/4に相当する負の最高速度、および3fPRF/4に相当する正の最高速度に対応付けられる。同様に、-3fPRF/4からfPRF/4までのドプラ偏移周波数範囲には、図8Bに示すように、fPRF/4のベースラインシフトが反映されている。このドプラ周波数範囲は、-3fPRF/4に相当する負の最高速度、およびfPRF/4に相当する正の最高速度に対応付けられる。
【0023】
図8Aにおいて、ベースライン(すなわち、0Hz)は、ドプラ偏移周波数(速度)スケールの中心にある。このベースラインが、例えば図8Bに示すようにfPRF/4だけシフトされると、正の最大周波数がfPRF/4になり、負の最大周波数が-3fPRF/4になる。ベースラインシフトが-fPRF/4であれば、図8Cに示すように、正の最大周波数は3fPRF/4になり、負の最大周波数は-fPRF/4まで減少する。すなわち、正の最大周波数はベースラインシフトによって減少するのに対し、負の最大周波数の絶対量はベースラインシフトによって増加する。
【0024】
他の適用例でも同様であるが、多くは心臓血管への適用例において、血液速度は前述の最高速度を超えることがあり、その結果、エイリアシングを生じ得る。カラードプラ画像生成では、カラーコーディング法を用いて血液速度(または、対応するドプラ偏移周波数)をカラー表示する。図1Aを参照して説明すると、正の速度を赤の諧調で表示して、より速い正の速度を明るい赤、より遅い正の速度を暗い赤で表わすことができ、負の速度を青の諧調で表示して、より速い負の速度を明るい青、より遅い負の速度を暗い青で表すことができる。このことは、図1Aの左側のカラードーディングバーに示されている。正の最高速度は明るい赤色102で表示される一方、負の最高速度は明るい青色110で表示される。正の最低速度は暗い赤色104で表示される一方、負の最低速度は暗い青色108で表示される。黒106は、ゼロ速度を表す。他のカラーコーディング法を用いて血流速度を表すこともできる。
【0025】
図1Aの右側のカラーフロー画像は、中心部に明るい赤116、上部と下部に暗い赤114,118を有する赤の諧調を含むが、このカラーフロー画像にエイリアシングが生じていないことは明らかである。
【0026】
エイリアシングが発生すると、カラーフロー画像は、正の最大周波数に対応する速度に「折り返し」が生じて、正の最大周波数を超える周波数に対応する速度が、負の速度に対応付けられた色(例えば、青の諧調)で表示される。逆に、エイリアシングによって、負の最大周波数を(絶対値で)超える周波数に対応する速度が、正の速度に対応付けられた色(例えば、赤の諧調)で表示されることもある。このため、エイリアシングは、血液速度画像を複雑にし、その画像に基づいた診断を困難なものにする。図1Bに、例えば、最もエイリアシングを呈し易いカラーフロー画像を示す。中央の領域は、青の諧調166で色分けされて、赤の諧調164の領域に取り囲まれ、更に赤の諧調164の領域が黒の領域162に囲まれている。この場合、中央の青の諧調166のフロー領域は、エイリアシングである可能性が極めて高い。
【0027】
流速は、速度限界(最高速度の大きさ)において、逆の速度方向の最高速度と最低速度を超えて、2回以上の「折り返し」を生じ得る。図11および図12に、このような「二重エイリアシング」、「三重エイリアシング」、「四重エイリアシング」と共に、前述した「単一エイリアシング」を示す。例えば、正の速度は、正の最高速度1175を超えて、点線の矢印1120で示されるように負の最高速度1190まで折り返し得る。速度範囲1110は、真の速度範囲1110を示す。エイリアシングが生じると、速度範囲は、図11に示すように「単一エイリアシングされた」速度範囲1130になる。そして、この速度範囲は、ゼロ速度1195(または負の最低速度1185)を更に超えて再び速度方向を変え、正の速度になり得る。この状態を「二重エイリアシングされた」速度1140と呼ぶことができる。また、速度は、点線の矢印1150で示すように、再び正の最高速度1175を更に超えて負の最高速度1190まで折り返し得る。この後、速度は、更に、「三重エイリアシングされた」速度範囲1160に上昇し得る。速度は更に上昇して、ゼロ速度1195を超えて速度方向を変え、正の速度になり得る。この状態を「四重エイリアシングされた」速度1170と呼ぶことができる。上記の「単一エイリアシング」、「二重エイリアシング」、「三重エイリアシング」、および「四重エイリアシング」というエイリアシングの説明は、図12に示すように逆方向にも適用することができる。
【0028】
このようなエイリアシングに対するエイリアシング補正は、「二重エイリアシングされた」速度が正である場合に、「二重エイリアシングされた」フロー領域の速度にVPRFを加えることを含んでよい。二重エイリアシングされた速度が負である場合は、速度からVPRFを減じる。同様に、「三重エイリアシングされた」フロー領域については、速度が正であれば三重エイリアシングされた速度から2VPRFを減じ、速度が負であれば三重エイリアシングされた速度に2VPRFを加える。「四重エイリアシングされた」フロー領域については、速度が正である場合に速度に2VPRFを加算し、速度が負である場合に速度から2VPRFを減算する。
【0029】
フローすなわち血流は、必ず流動物理学または流体力学の法則に従う。例えば、流速は、空間方向にあまり速く変化できない。つまり、速度勾配または速度差はそれほど大きくなり得ない。図9Aに、カラードプラ技術で測定された速度905の例を示す。水平軸は空間座標910(例えば、管径)で、垂直軸はカラードプラ速度を表す。速度905は、左の空間点において実質的にゼロ(0)であるが、その後、空間点が右に移るにつれて徐々に上昇し、速度905が0.5VPRFに達した時点で、唐突に−0.5VPRFに変化している。そして、速度915は、−0.5VPRFから約−0.2VPRFまで上昇し、その後で下降して−0.5VPRFに戻っている。この速度915は、−0.5VPRFに達したときに、急に跳ね上がって0.5VPRFに戻っている。
【0030】
したがって、図9Aはエイリアシングの典型的な例を示したものである。0.5VPRFから−0.5VPRF、および−0.5VPRFから0.5VPRFへの遷移部920,925では、速度差が非常に大きい。速度が空間的に連続してサンプリングされている場合、遷移部における速度差はVPRFである。図9Aの負の速度915は全てエイリアシングされている。このエイリアシングを補正すると、図9Bに示されるような正しい速度分布(プロファイル)955が得られる。旧遷移部の速度差は、エイリアシング補正後に極めて小さく、ゼロに近くなり得る。図9Aおよび図9Bでは、簡単にするため速度分布を一次元で示している。
【0031】
図13は、いくつかの実施形態に係るプロセス1300の流れ図である。プロセス1300は、既に知られているか、または今後知られるようになるハードウェアおよびソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせで実行することができる。例えば、プロセス1300は、一時的でない媒体(例えば、デジタルビデオディスク、コンピュータハードドライブ、ランダムアクセスメモリなど)に格納された、プロセッサで実行可能なプログラムコードに埋め込むことができる。
【0032】
まず、1305において、カラーフローラインまたはカラードプラ画像を含むカラードプラデータを取得する。次に、1310において、カラードプラデータ内の一つ以上の遷移部を検出する。一つ以上の遷移部は、正の流速領域と負の流速領域の間の遷移部、負の流速領域とゼロ流速領域の間の遷移部、および正の流速領域と負の流速領域の間の遷移部のうちの少なくともいずれかを含み得る。
【0033】
次に、1315において、前述の一つ以上の遷移部のうちの一つ以上を隔てた(一つ以上と交差する)正規化エネルギ関数を算出する。後で詳述するように、正規化エネルギ関数は、遷移部の両側に位置する流速(またはカラードプラ値、すなわち、ドプラ偏移周波数もしくはカラードプラ位相)ペアの一つ以上に基づくものであってよい。
【0034】
いくつかの実施形態に係る正規化エネルギ関数は次のとおりである。
【数5】

上式において、nは遷移部を跨ぐ速度ペアの数であり、例えば図2Aに示されるように、V1iは、遷移部の一方側の速度を表し、V2iは、遷移部の他方側の速度を表す。
【0035】
正規化エネルギ関数(5)によって遷移部を跨ぐ速度差の絶対平均が得られ、この絶対平均は、遷移量の測定値であると考えることができる。速度差の平均を標準値と比較することで、遷移部がエイリアシングに関わるものであるかどうかを判定することができる。例えば、正規化エネルギ関数が閾値よりも大きい場合、その遷移部はエイリアシングに関わると想定し得る。いくつかの実施形態において、閾値は0.5VPRFに等しい。
【0036】
図2Aを参照して説明すると、流速(例えば、V11,V12,・・・)を、カラードプラによって、赤の諧調(正の速度)214から青の諧調216(負の速度)への遷移部218の近くで取得する。V11,V12,・・・V1iは、遷移部の青色側において等しい空間距離でサンプリングされるのに対し、V21,V22,・・・V2iは、遷移部の赤色側において等しい空間距離でサンプリングされる。V1iおよびV2iは、遷移部218を跨いで互いに極めて近接していてよく、iは1からnまでの間であってよい。いくつかの実施形態において、速度は、等しくない空間距離においてサンプリングされる。
【0037】
次に、遷移部を隔てた正規化エネルギ関数(5)を計算する。1315についての一部の実施形態では、正規化べき関数(6)に基づいて、または速度差の絶対値のp乗の正規化合計(7)に基づいて、正規化エネルギ関数を算出する。
【数6】

【数7】

【0038】
赤色(正の速度)から黒(ゼロ速度)への遷移部の近くで流速(すなわち、V31,V32,・・・V3i)も取得する。黒領域に対応する速度はゼロであるため、正規化エネルギ関数は次のように得られる。
【数8】

上式において、n2は速度サンプルの数である。
【0039】
より複雑な事例を図2Bに示した。この例において、中央の領域は、正の速度を表す赤の諧調268を含み、この赤の諧調268は、青の諧調266の環状領域に囲まれ、この青の諧調266は、更に、黒領域262に囲まれた他の環状領域である赤の諧調264によって囲まれている。したがって、図2Bには、3つの遷移部270,272,274が示されている。第1遷移部270の一方側の速度は、V11,V12,・・・,V1iの符号で示され、第1遷移部270の他方側の対応する速度は、V21,V22,・・・,V2iの符号で示されている。第1遷移部270を隔てた正規化エネルギ関数は、1315において次のように取得される。
【数9】

上式において、nは速度サンプルの数である。
【0040】
第2遷移部272の青諧調側の速度は、V31,V32,・・・,V3iの符号で示されるのに対し、第2遷移部272の赤諧調側の対応する速度は、V41,V42,・・・,V4iの符号で示されている。第2遷移部272を隔てた正規化エネルギ関数は、次のように取得される。
【数10】

上式において、n2は速度サンプルの数である。
【0041】
第3遷移部274の赤諧調側の速度は、V51,V52,・・・,V5iの符号で示されているのに対し、黒領域262はゼロ速度を表している。したがって、第3遷移部274に対応する正規化エネルギ関数は、次のように取得される。
【数11】

上式において、n3は速度サンプルの数である。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、遷移部の両側で流速の数は同じである必要はない。このため、正規化エネルギ関数において、遷移部の片側の同一流速は、一つ以上の流速ペアのうちの2つ以上に属していてもよい。例えば、図2Bを参照して説明すると、1315における正規化エネルギ関数の計算は、流速ペア(V31,V41)の間の絶対値の差、および流速ペア(V31,V42)の間の絶対値の差を求めることを含んでよい。
【0043】
図10に、フロー領域が赤諧調1012、青諧調1014、赤諧調1016の3つの領域に分割されているカラーフロー画像を示す。この画像は、黒領域1036(すなわちゼロ速度)と最も左側の赤諧調領域1012との間の第1遷移部1020を含む。この遷移部に隣接する速度は、V11,V12,・・・,V1iの符号で示されるが、黒領域1036は、ゼロ速度を持ち得る。この遷移部1020については、正規化エネルギ関数を次のように求めることができる。
【数12】

上式において、nは速度サンプルの数である。
【0044】
第2遷移部1022は、最も左側の赤諧調領域1012と青諧調領域1014との間である。遷移部1022の赤諧調側の速度は、V21,V22,・・・,V2iの符号で示されるのに対し、遷移部1022の青諧調側の対応する速度は、V31,V32,・・・,V3iの符号で示されている。この遷移部1022については、正規化エネルギ関数を次のように求めることができる。
【数13】

上式において、n2は速度サンプルの数である。
【0045】
第3遷移部1024は、青諧調領域1014と、カラーフロー画像の上部の黒領域1018との間に存在する。遷移部1024の青諧調側の速度は、V41,V42,・・・,V4iの符号で示されるが、黒領域はゼロ速度であり得る。この遷移部1024については、正規化エネルギ関数を次のように求めることができる。
【数14】

上式において、n3は速度サンプルの数である。
【0046】
第4遷移部1026は、青諧調領域1014と、カラーフロー画像の下部の黒領域1032との間である。遷移部1026の青諧調側の速度は、V51,V52,・・・,V5iの符号で示されるが、黒領域1032はゼロ速度であり得る。この遷移部1026については、正規化エネルギ関数を次のように求めることができる。
【数15】

上式において、n4は速度サンプルの数である。
【0047】
第5遷移部1028は、青諧調領域1014と最も右側の赤諧調領域1016との間に存在する。この遷移部1028の青諧調側の速度は、V61,V62,・・・,V6iの符号で示されるのに対し、遷移部1028の赤諧調側の速度は、V71,V72,・・・,V7iの符号で示される。この遷移部1028については、正規化エネルギ関数を次のように求めることができる。
【数16】

上式において、n5は速度サンプルの数である。
【0048】
第6遷移部1030は、最も右側の赤諧調領域1016と、黒領域1034との間である。遷移部1030の赤諧調側の速度は、V81,V82,・・・,V8iの符号で示されるが、黒領域1034はゼロ速度であり得る。この遷移部1030については、1315において、正規化エネルギ関数を次のように求めることができる。
【数17】

上式において、n6は速度サンプルの数である。
【0049】
プロセス1300に戻ると、1320において、カラードプラデータ内のフロー領域の構成が特定される。この構成は、カラードプラデータ内の各種のフロー領域の間の物理(幾何形状?)関係を表すものである。したがって、1320は、各フロー領域について、そのフロー領域がゼロ速度領域と接しているかどうか、およびそのフロー領域が、逆の速度方向のフロー領域に接しつつその逆のフロー領域に囲まれているかどうかを特定することを含み得る。
【0050】
例えば、図18には、第1フロー方向のフロー領域1810、第2フロー方向のフロー領域1820、およびフロー領域1810と1820との間の遷移部1830が示されている。フロー領域1810,1820は、いずれもゼロ速度領域1840に囲まれている。
【0051】
図15に示す封入部は、通常、逆の速度方向のフロー領域に接しつつその逆のフロー領域に囲まれたフロー領域である。図15において、第1フロー方向の第1フロー領域1510は、ゼロ速度の領域1530に接している第2(かつ逆向きの)フロー方向の第2フロー領域1520によって囲まれている。遷移部1540は、第1フロー領域1510と第2フロー領域1520の間に存在する。
【0052】
フロー領域1510は単一封入部であると考えられるが、これは、フロー領域1520が逆の速度方向のフロー領域に接し、かつ、その逆のフロー領域に囲まれているのではないことに因る。これと対照して、図16および図17に、二重および三重の封入部をそれぞれ示す。
【0053】
図16に示す第1フロー方向の第1(二重封入)フロー領域1610は、第2(かつ逆の)フロー方向の第2(単一封入)フロー領域1620に接しつつその領域1620に囲まれ、前述の第2フロー領域1620は、更に、第1フロー方向の第3フロー領域1630に接し、かつその領域1630と接している。フロー領域1630は、ゼロ速度の領域1640に接し、かつその領域1640に囲まれている。遷移部1650は、第1フロー領域1610と第2フロー領域1620の間に存在する。他の遷移部1660は、第2フロー領域1620と第3フロー領域1630の間に存在する。
【0054】
図17を参照すると、第1フロー方向の第1(三重封入)フロー領域1710は、第2(かつ逆の)フロー方向の第2(二重封入)フロー領域1720に囲まれ、この第2フロー領域1720は、第1フロー方向の第3フロー領域1730に接しつつその領域1730に囲まれ、第3フロー領域1730は、更に、第2フロー方向の第4フロー領域1740に接しつつその領域1740に囲まれている。フロー領域1740は、ゼロ速度の領域1780に接しつつその領域1780に囲まれている。第1遷移部1750は、第1フロー領域1710と第2フロー領域1720の間に存在する。第2遷移部1760は、第2フロー領域1720と第3フロー領域1730の間に存在する。第3遷移部1770は、第3フロー領域1730と第4フロー領域1740の間に存在する。
【0055】
フロー領域の構成を特定した後、1325において、カラードプラデータに対するエイリアシング補正を決定する。このエイリアシング補正の決定は、正規化エネルギ関数およびフロー領域の構成に基づく。
【0056】
いくつかの実施形態では、下記の一般原則の一つ以上を採用して、1325においてエイリアシング補正を決定する際の指針とすることができる。
a)各遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が閾値(例えば、VPRF)に満たない場合は、エイリアシングが存在しないことを最初に想定できる。
b)遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が閾値(例えば、VPRF)を超える場合は、単一エイリアシングを最初に想定できる。
c)フロー領域がゼロ速度領域と接触している場合は、エイリアシングが存在しないことを最初に想定できる。ただし、フロー領域が、閾値を越える正規化エネルギ関数を持つ遷移部にも隣接している場合は、総エネルギ関数を算出して、遷移部のいずれの側が単一エイリアシングされているのかを判定することができる。総エネルギ関数は、全ての遷移部の非正規化エネルギ関数の単純総和である。
d)速度方向が逆のフロー領域に囲まれ、その逆のフロー領域が更にゼロ速度領域に接している封入部(例えば、図2A)の場合、その封入部は単一エイリアシングされていると考えることができる。この想定は、封入部を囲む遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が閾値を超える場合に裏付けされる。
e)逆の速度方向(方向A)のフロー領域に接しつつその逆の領域に囲まれた二重封入部において、前述の逆のフロー領域が、更に、逆方向(方向B)の他のフロー領域に接しつつその他の領域に囲まれている場合、その二重封入部は、二重エイリアシングされていると考えることができる。この想定は、二重封入部に隣接する遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が閾値に満たない場合に更に裏付けられる。正規化エネルギ関数が閾値を超えている場合、その二重封入領域はエイリアシングされていないと考えることができる。ただし、二重封入部に隣接するフロー領域は単一エイリアシングされていると考えられる。
f)三重封入部の場合は、その三重封入部を囲む全ての遷移部について正規化エネルギ関数を算出し、各遷移部がいずれの度合いのエイリアシングに対応するエイリアシング遷移部の条件を満たすのかを判定することができる。単一エイリアシング遷移部の場合、正規化エネルギ関数は閾値を越え得る。二重エイリアシング遷移部は、閾値に満たない正規化エネルギ関数と対応し得る。三重エイリアシング遷移部は、閾値を越える正規化エネルギ関数と対応し得る。
【0057】
また、遷移部の位置は、エイリアシングの度合いを決定し得る。すなわち、各遷移部の正規化エネルギ関数が上記の条件を満たす場合に、二重エイリアシング遷移部は、単一エイリアシング遷移部の中に配置され、三重エイリアシング遷移部は、二重エイリアシング遷移部の中に配置され得る。二重エイリアシング遷移部の中の遷移部の正規化エネルギ関数が三重エイリアシング遷移部の条件を満たさない場合、その遷移部は単一エイリアシングされていると考えることができ、中央のフロー領域の速度は、単一エイリアシングされていると考えられる。
【0058】
次に、各種のエイリアシング補正を決定する例を示す。これらの例によれば、カラードプラデータに一つ以上のエイリアシング補正を決定することができる。
【0059】
図18を参照して説明すると、一つ以上の遷移部(1830,1850,1860)の正規化エネルギ関数がプリセット閾値(事前に設定された閾値)に満たない場合は、フロー領域1810,1820にエイリアシング補正を決定する必要はない。プリセット閾値は、パルス繰り返し周波数の半分のドプラ偏移周波数に対応する速度であってよい。いくつかの実施形態において、ゼロ速度領域1840に接している各フロー領域(1810または1820)についてはエイリアシングを判定する必要はない。
【0060】
いくつかの実施形態において、遷移部1830を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を超える場合に、遷移部1830に接する一つのフロー領域1820または1830に単一エイリアシング補正を決定してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、フロー領域1820については、その領域がゼロフロー領域1840に接すること、および正の流速領域1810との遷移部1830を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を超えることを理由として、単一エイリアシング補正を決定することができる。プリセット閾値を超える正規化エネルギ関数に対応している、遷移部1830の小さい方のフロー領域1820については、そのフロー領域1820の面積がフロー領域1810よりも小さいこと、および小さい方のフロー領域1820にエイリアシングが生じる可能性は、大きい方のフロー領域1810よりも高いことから、単一エイリアシング補正を決定する。
【0062】
これに代えて、フロー領域(1810または1820)の一方のみに単一エイリアシング補正を適用する場合の総エネルギ関数を算出し、かつ、フロー領域(1810または1820)の一方のみに単一エイリアシング補正を適用し、他方のフロー領域1810にはエイリアシング補正を行わない場合に算出される総エネルギ関数が、フロー領域(1810,1820)の一方1810のみに単一エイリアシング補正を適用し、フロー領域1820にはエイリアシング補正を行わない場合に算出される総エネルギ関数よりも小さいことを確認した後で、フロー領域に単一エイリアシング補正を実行してもよい。
【0063】
総エネルギ関数を利用するより具体的な例については、図14に、2つのカラーフロー領域、大きい青のフロー領域1414と小さい赤のフロー領域1416とを含むカラーフロー画像の例を示した。両方のカラーフロー領域1414,1416は、ゼロの速度を表す黒の領域1412に隣接している。一般に、ゼロ速度に接しているフロー領域については、まず、エイリアシングされていないと想定できる。ただし、青のフロー領域1414および赤のフロー領域1416の間の遷移部1418の正規化エネルギ関数を次のように算出してもよい。
【数18】

上式において、n2は速度サンプルの数である。正規化エネルギ関数が閾値(例えば、VPRF)を超える場合には、エイリアシング(例えば、単一エイリアシング)が想定され得る。すなわち、2つのフロー領域1416,1416の一方の速度は、単一エイリアシングされていると想定することができる。赤のフロー領域1416は青のフロー領域1414よりもかなり小さく、下記の総エネルギ関数(27)が小さいため、赤のフロー領域1416がエイリアシングされている(かつ青のフロー領域はエイリアシングされていない)と想定される場合、赤のフロー領域1416は、単一エイリアシングであると想定できる。
【数19】

上式において、n、n2、およびn3は、3つの遷移部における速度サンプルの数である。
【0064】
いくつかの実施形態において、速度は等距離においてサンプリングされるため、その数は、遷移部の長さを表す。このため、より長い遷移部は、短い遷移部よりも重み度が大きい。すなわち、青のフロー領域1414は、小さい赤の領域1416よりも、エイリアシングされていない確率が高くなり得る。赤のフロー領域内の速度に単一エイリアシング補正を適用する場合、総エネルギ関数は、次に示すように式(27)よりも小さくなる。
【数20】

式(28)は式(27)よりも小さくなり、かつ、下記の総エネルギ関数(29)よりも小さくなるため、上記の重み度により、青のフロー領域は、エイリアシングされていると想定する。
【数21】

【0065】
したがって、図14のカラードプラデータに対するエイリアシング補正を決定するためには、正規化エネルギ関数(26)を算出するだけでよい。総エネルギ関数(29)の算出は不要であり、総エネルギ関数(28)を算出して総エネルギ関数(27)と比較することで、正規化エネルギ関数(26)によって得られた結論を確認することができる。この場合、青のフロー領域と赤のフロー領域の間の遷移部は、赤の領域と黒の領域の間の遷移部よりも長いため、赤のフロー領域に単一エイリアシングを想定する総エネルギ関数(28)は、いずれのフロー領域にもエイリアシングを想定しない総エネルギ関数(27)よりも小さくなり得る。したがって、これらの実施形態は、迅速で効率的なエイリアシング補正を提供することができる。
【0066】
次に、図15を参照して説明すると、いくつかの実施形態では、前述した一般原則に基づいて、第1フロー領域(単一封入部)1510に単一エイリアシング補正を決定し、第2フロー領域1520には、エイリアシング補正を行わないことを決定できる。いくつかの実施形態において、遷移部1540の正規化エネルギ関数がプリセット閾値を超える場合に、第1フロー(単一封入)領域1520に単一エイリアシング補正を決定し、第2フロー領域1520にはエイリアシング補正を行わないことを決定できる。
【0067】
図16では、上記の原理d)およびe)に基づいて、第1(二重封入)フロー領域1610に二重エイリアシング補正を決定し、第2フロー領域1620に単一エイリアシング補正を決定し、更に、第3フロー領域1630にはエイリアシング補正を行わないことを決定できる。
【0068】
いくつかの実施形態では、二重封入の遷移部1650を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を下回り、かつ、単一封入の遷移部1660を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を超える場合にのみ、第1(二重封入)フロー領域1610に二重エイリアシング補正を決定し、第2(単一封入)フロー領域に単一エイリアシング補正を決定し、更に、第3フロー領域にはエイリアシング補正を行わないことを決定してよい。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、二重封入の遷移部1650を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を超え、かつ、単一封入の遷移部1660を隔てた正規化エネルギ関数が前記プリセット閾値を超える場合に、第1フロー(二重封入)領域1610にエイリアシング補正を行わないことを決定し、第2(単一封入)フロー領域1620に単一エイリアシング補正を決定し、更に、第3フロー領域1630にはエイリアシング補正を行わないことを決定してよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、単一封入の遷移部1660を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を超える場合に、第2フロー(単一封入)領域1620に単一エイリアシング補正を決定し、更に、第3フロー領域1630にはエイリアシング補正を行わないことを決定してよい。
【0071】
図17などの三重封入の場合は、エイリアシング補正の決定に更に多くの代替方式を提供し得る。例えば、第1(三重封入)フロー領域1710に三重エイリアシング補正を決定し、第2(二重封入)フロー領域1720に二重エイリアシング補正を決定し、第3(単一封入)フロー領域1730に単一エイリアシング補正を決定し、更に、第4フロー領域1740にはエイリアシング補正を行わないことを決定できる。
【0072】
いくつかの実施形態では、第1(三重封入の)遷移部1750を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を越え、第2(二重封入の)遷移部1760を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を下回り、かつ、第3(単一封入の)遷移部1770を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を越える場合に、第1(三重封入)フロー領域1710に三重エイリアシング補正を決定し、第2(二重封入)フロー領域1720に二重エイリアシング補正を決定し、第3(単一封入)フロー領域1730に単一エイリアシング補正を決定し、更に、第4領域1740にはエイリアシング補正を行わないことを決定してよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、第1(三重封入の)遷移部1750を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を下回り、第2(二重封入の)遷移部1760を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を下回り、かつ、第3(単一封入の)遷移部1770を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を越える場合に、第1(三重封入)フロー領域1710に単一エイリアシング補正を決定し、第2(二重封入)フロー領域1720に二重エイリアシング補正を決定し、第3(単一封入)フロー領域1730に単一エイリアシング補正を決定し、更に、第4フロー領域1740にはエイリアシング補正を行わないことを決定してよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、第2(二重封入の)遷移部1760の正規化エネルギ関数がプリセット閾値を下回り、かつ、第3(単一封入の)遷移部1770の正規化エネルギ関数がプリセット閾値を越える場合に、第2(二重封入)フロー領域1720に二重エイリアシング補正を決定し、第3(単一封入)フロー領域1730に単一エイリアシング補正を決定し、更に、第4フロー領域1740にはエイリアシング補正を行わないことを決定してよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、第2(二重封入の)遷移部1760を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を越え、かつ、第3(単一封入の)遷移部1770を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を越える場合に、第2(二重封入)フロー領域1720にエイリアシング補正を行わないことを決定し、第3(単一封入)フロー領域1730に単一エイリアシング補正を決定し、更に、第4フロー領域1740にはエイリアシング補正を行わないことを決定してよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、第3(単一封入の)遷移部1770を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を越える場合に、第3(単一封入)フロー領域1730に単一エイリアシング補正を決定し、更に、第4フロー領域1740にはエイリアシング補正を行わないことを決定してよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、第3(単一封入の)遷移部1770を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を下回る場合に、第3(単一封入)フロー領域1730にエイリアシング補正を行わないことを決定してよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、ゼロ速度領域1780に囲まれた第4フロー領域1740に、エイリアシング補正を行わないことを決定してよい。
【0079】
プロセス1300の実行後に、いくつかの実施形態では、カラードプラデータのフロー領域に、決定されたエイリアシング補正を適用する(エイリアシング補正が決定された場合)。同じ速度方向の連続した同一のフロー領域の速度は、全て同じ方式で補正される。すなわち、フロー領域の速度にVPRFが加算される場合は、その同じフロー領域内の他の全ての速度にVPRFが加算される。
【0080】
前述したように、本方法は、いくつかの実施形態によれば、カラーフローラインデータまたはカラードプラ画像データに適用することができる。図6Aに、走査変換前のカラーフローライン600を示したが、図に例示されているのは11ラインのみである。カラーフローラインは、そのラインに沿った多数のカラーフローデータサンプルで構成される。カラーフローライン600はカラービームデータから生成されたもので、正確な空間寸法を示したものではない。走査変換は、カラーフローラインを補間することによって、カラーフローラインをラスタビデオ画像に変換する技術である。図6Bに示される走査変換画像620(例えば、扇形走査)において、カラーフロー画像は、図6Aに示されるカラーフローライン600とは異なり、正確な長さ関係(垂直寸法と水平寸法)を持つ直交(x−y)座標のカラーフロー画像ピクセルで構成される。Bモード画像生成も、走査変換技術を利用して、Bモードラインデータ700を補間することによって、図7Aに示されるようなBモードライン700を図7Bに示されるようなMモード画像720に変換する。
【0081】
図3に、B−モード画像生成、ドプラスペクトル、およびカラードプラ画像法を用いる従来の超音波画像診断システム(例えば、米国特許第4573477号、米国特許第4622977号、米国特許第4641668号、米国特許第4651742号、米国特許第4651745号、米国特許第4759375号、米国特許第4766905号、米国特許第4768515号、米国特許第4771789号、米国特許第4780837号、米国特許第4799490号、および米国特許第4961427号を参照)の図を示す。このシステムは、他の画像生成モード、例えば、弾性画像生成、三次元画像生成、リアルタイム三次元画像生成、組織ドプラ画像生成、組織高調波画像生成、コントラスト画像生成などを含むことができる。超音波信号は、送受信スイッチ320を介して送信機310によって駆動される超音波プローブ330から送信される。プローブ320は、振動子素子の配列で構成されてよく、その各素子が、異なる時間遅延で送信機によって個別に駆動されることで、送信される超音波ビームが集束および誘導される。ビームフォーマ340は、スイッチ320を介してプローブ330からの受信超音波信号を受け取って、その信号325を処理する。ビームフォーマは、信号に遅延と位相の少なくともいずれかを適用し、その結果得られる信号が追加されることで、受信超音波ビームの集束および誘導を行う。ビームフォーマは、アポディゼーション、増幅、およびフィルタリングを適用することもできる。
【0082】
処理された信号435は、ドプラスペクトルプロセッサ350、カラードプラプロセッサ360、およびBモード画像プロセッサ370に接続される。ドプラスペクトルプロセッサ350は、ドプラ信号プロセッサおよびスペクトル分析器を含み、ドプラ流速信号を処理し、ドプラスペクトル355を算出して出力する。カラードプラプロセッサ360は、受け取った信号345を処理し、速度、電力、および変動量の信号365を算出して出力する。Bモード画像プロセッサ370は、受け取った信号345を処理し、Bモード画像375、または振幅検出部による信号の振幅を算出して出力する。
【0083】
ドプラスペクトル信号355、カラードプラプロセッサ信号(速度、電力、および変化量)365、およびBモードプロセッサ信号375は、信号を走査変換信号に変換するスキャンコンバータ380に結合される。スキャンコンバータ380の出力は、超音波画像を表示するディスプレイモニタ390に結合される。
【0084】
図4に、いくつかの実施形態に係るカラードプラエイリアシング補正プロセッサ464を含む超音波画像生成システムの図を示す。エイリアシング補正プロセッサ464は、前述したように、カラーフローラインデータについて既に説明したエイリアシング補正方法を実行することができる。エイリアシング補正プロセッサ464は、カラードプラプロセッサ460から出力465を受け取る。出力465は、走査変換されたカラードプラ画像ではなく、カラーフローラインデータを含む。エイリアシング補正プロセッサ464は、エイリアシング補正後の補正カラードプラデータを出力する。図5に、カラードプラエイリアシングの補正処理が、既に説明したラインデータ領域ではなく、走査変換画像領域において実行される実施形態の図を示す。Bモード画像およびカラードプラ画像は、エイリアシング補正プロセッサ564での処理が実行される前に走査変換される。
【0085】
エイリアシング補正プロセッサ464,564は、汎用中央処理装置(Central Processing Unit,CPU)、デジタル信号処理装置(Digital Signal Processor,DSP)、フィールドプログラマブルアレイ(Field Programmable Array,FPGA)、図形処理装置(Graphic Processing Unit,GPU)、およびディスクリート(discreet)電子機器のうちの少なくともいずれかで構成されてよい。
【0086】
上記の説明では、速度、速度エイリアシング、および速度エイリアシング補正を参照した。ただし、上記の説明は、数式(1)、(3)、および(4)を介して周波数領域または位相領域に同様に適用可能である。実際には数式(1)に示されるように、超音波ビーム方向の速度成分vcosθである超音波ビーム速度またはカラー速度は、数式(1)によりドプラ偏移周波数に変換できる。この後、ドプラ偏移周波数は、数式(4)により位相またはカラードプラ位相に更に変換することができる。速度エイリアシングは、周波数エイリアシングまたは位相エイリアシングに変換することができる。エイリアシング補正は、周波数領域におけるドプラ偏移周波数値、位相領域におけるカラードプラ位相値に適用することができる。
【0087】
本明細書で説明したカラー速度、カラー流速、カラードプラ速度、流速、または速度は、数式(1)によりドプラ偏移周波数に直接関連付けられ、実際にはcosθによって示されるとおり、超音波ビーム方向の流速成分、またはエイリアシングが存在しないことを前提として超音波ビーム方向に真の流速を投影したものである。
【0088】
正の速度または正の速度方向は、振動子から遠ざかるのではなく、超音波ビームの中心軸から±90度の範囲で超音波振動子に近付く方向の流れを意味する。負の速度または負の速度方向は、超音波ビームの中心軸から±90度の範囲で超音波振動子から離れる方向の流れを意味する。
【0089】
一つ以上の実施形態を記載したが、各種の変形物は同業者にとっては明瞭であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラードプラデータを取得し、
前記カラードプラデータの一つ以上の遷移部であって、各遷移部が、第1方向の流速に対応した第1領域と、前記第1方向とは異なる流速に対応した第2領域との間にある、一つ以上の遷移部を検出し、
前記一つ以上の遷移部のうちの一つ以上を隔てた正規化エネルギ関数を算出し、
前記カラードプラデータ内のフロー領域の構成を特定し、
前記正規化エネルギ関数と、前記フロー領域の構成とに基づいて、前記カラードプラデータに対するエイリアシング補正を決定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
遷移部を隔てた前記正規化エネルギ関数を算出することは、
前記遷移部の両側に位置するカラードプラ値ペアの一つ以上について、その各ペアの絶対差の合計を算出し、
前記絶対差の合計を、前記一つ以上のカラードプラ値ペアの数で除算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フロー領域の構成を特定することは、
前記カラードプラデータが、単一封入部、二重封入部、または三重封入部のいずれかを有するかどうかを特定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エイリアシング補正を決定することは、
一つ以上の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値に満たない場合に前記カラードプラデータにエイリアシング補正を行わないように決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プリセット閾値は、前記カラードプラデータに対応付けられたパルス繰り返し周波数の半分のドプラ偏移周波数に対応する速度である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記エイリアシング補正を決定することは、
遷移部に接しているフロー領域の前記カラードプラデータに対して、前記遷移部を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を超える場合に、単一エイリアシング補正を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記エイリアシング補正を決定することは、
ゼロ速度領域に接しているフロー領域の前記カラードプラデータに対して、エイリアシング補正を行わないように決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エイリアシング補正を決定することは、
ゼロフロー領域に接し、かつ、逆向きの流速領域との遷移部に接しているフロー領域の前記カラードプラデータに対して、前記遷移部を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を超える場合に単一エイリアシング補正を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
単一エイリアシング補正が決定される前記フロー領域は、前記逆向きの流速領域よりも小さい、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
単一エイリアシング補正を決定することは、
前記2つのフロー領域のうちの一方(領域A)に単一エイリアシング補正を適用する一方で、前記2つのフロー領域のうちの他方(領域B)にエイリアシング補正を適用しないことに基づいて、前記カラードプラデータの第1の総エネルギ関数を算出し、
領域Bに単一エイリアシング補正を適用する一方で、領域Aにエイリアシング補正を適用しないことに基づいて、前記カラードプラデータの第2の総エネルギ関数を算出し、
前記第1および第2の総エネルギ関数のうちの小さい方を特定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記エイリアシング補正を決定することは、
ゼロ速度領域に接している、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に囲まれた、第1方向の流速に対応したフロー領域の前記カラードプラデータに単一エイリアシング補正を決定し、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わないように決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記エイリアシング補正を決定することは、
ゼロ速度領域に接している、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に囲まれた、第1方向の流速に対応した第1フロー領域の前記カラードプラデータに単一エイリアシング補正を決定し、
前記第1フロー領域と前記第2フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を超える場合に、前記第2フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わないように決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記エイリアシング補正を決定することは、
第1方向の流速に対応した第1フロー領域が、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に接しつつその第2フロー領域に囲まれており、前記第2フロー領域が、更に、前記第1方向の流速に対応した第3フロー領域に接しつつその第3フロー領域に囲まれており、前記第3フロー領域が、ゼロ速度領域に接しつつそのゼロ領域に囲まれている構成において、
前記第1フロー領域の前記カラードプラデータに二重エイリアシング補正を決定し、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータに単一エイリアシング補正を決定し、
前記第3フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わないように決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記エイリアシング補正を決定することは、
第1方向の流速に対応した第1フロー領域が、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に接しつつその第2フロー領域に囲まれており、前記第2フロー領域が、更に、前記第1方向の流速に対応した第3フロー領域に接しつつその第3フロー領域に囲まれており、前記第3フロー領域が、ゼロ速度領域に接しつつそのゼロ領域に囲まれている構成において、
前記第1フロー領域と前記第2フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第1のプリセット閾値を下回り、かつ、前記第2フロー領域と前記第3フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第2のプリセット閾値を超える場合に、
前記第1フロー領域の前記カラードプラデータに二重エイリアシング補正を決定し、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータに単一エイリアシング補正を決定し、
前記第3フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わないように決定する、
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記エイリアシング補正を決定することは、
第1方向の流速に対応した第1フロー領域が、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に接しつつその第2フロー領域に囲まれており、前記第2フロー領域が、前記第1方向の流速に対応した第3フロー領域に接しつつその第3領域に囲まれており、前記第3フロー領域が、ゼロ速度領域に接しつつそのゼロ速度領域に囲まれている構成において、
前記第1フロー領域と前記第2フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第1のプリセット閾値を越え、かつ、前記第2フロー領域と前記第3フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第2のプリセット閾値を超える場合に、
前記第1フロー領域の前記カラードプラデータにエイリアシング補正を行わないように決定し、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータに単一エイリアシング補正を決定し、
前記第3フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わないように決定する、
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記エイリアシング補正を決定することは、
第1方向の流速に対応した第1フロー領域が、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に接しつつその第2フロー領域に囲まれており、前記第2フロー領域が、前記第1方向の流速に対応した第3フロー領域に接しつつその第3領域に囲まれており、前記第3フロー領域が、第4フロー領域に接しつつその第4フロー領域に囲まれており、前記第4フロー領域が、ゼロ速度領域に接しつつそのゼロ速度領域に囲まれている構成において、
前記第1フロー領域の前記カラードプラデータに三重エイリアシング補正を決定し、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータに二重エイリアシング補正を決定し、
前記第3フロー領域の前記カラードプラデータに単一エイリアシング補正を決定し、
前記第4フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わないように決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記エイリアシング補正を決定することは、
第1方向の流速に対応した第1フロー領域が、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に接しつつその第2フロー領域に囲まれており、前記第2フロー領域が、前記第1方向の流速に対応した第3フロー領域に接しつつその第3領域に囲まれており、前記第3フロー領域が、第4フロー領域に接しつつその第4フロー領域に囲まれており、前記第4フロー領域が、ゼロ速度領域に接しつつそのゼロ速度領域に囲まれている構成において、
前記第1フロー領域と前記第2フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を越え、前記第2フロー領域と前記第3フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第2のプリセット閾値を下回り、かつ、前記第3フロー領域と前記第4フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第3のプリセット閾値を超える場合に、
前記第1フロー領域の前記カラードプラデータに三重エイリアシング補正を決定し、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータに二重エイリアシング補正を決定し、
前記第3フロー領域の前記カラードプラデータに単一エイリアシング補正を決定し、
前記第4フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わないように決定する、
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記エイリアシング補正を決定することは、
第1方向の流速に対応した第1フロー領域が、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に接しつつその第2フロー領域に囲まれており、前記第2フロー領域が、前記第1方向の流速に対応した第3フロー領域に接しつつその第3領域に囲まれており、前記第3フロー領域が、前記第2方向の流速に対応した第4フロー領域に接しつつその第4フロー領域に囲まれており、前記第4フロー領域が、ゼロ速度領域に接しつつそのゼロ速度領域に囲まれている構成において、
前記第1フロー領域と前記第2フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を下回り、前記第2フロー領域と前記第3フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第2のプリセット閾値を下回り、かつ、前記第3フロー領域と前記第4フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第3のプリセット閾値を超える場合に、
前記第1フロー領域の前記カラードプラデータに単一エイリアシング補正を決定し、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータに二重エイリアシング補正を決定し、
前記第3フロー領域の前記カラードプラデータに単一エイリアシング補正を決定し、
前記第4フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わないように決定する、
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
エイリアシング補正プロセッサを含むシステムであって、前記エイリアシング補正プロセッサが、
カラードプラデータを取得し、
前記カラードプラデータの一つ以上の遷移部であって、各遷移部が、第1方向の流速に対応した第1領域と、前記第1方向とは異なる流速に対応した第2領域との間にある、一つ以上の遷移部を検出し、
前記一つ以上の遷移部のうちの一つ以上を隔てた正規化エネルギ関数を算出し、
前記カラードプラデータ内のフロー領域の構成を特定し、
前記正規化関数と、前記フロー領域の構成とに基づいて、前記カラードプラデータに対するエイリアシング補正を決定する、システム。
【請求項20】
遷移部を隔てた前記正規化エネルギ関数の算出は、
前記遷移部の両側に位置するカラードプラ値ペアの一つ以上について、その各ペアの絶対差の合計を算出し、
前記絶対差の合計を、前記一つ以上のカラードプラ値ペアの数で除算することを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記フロー領域の構成の特定は、
前記カラードプラデータが、単一封入部、二重封入部、または三重封入部のいずれかを有するかどうかの特定を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記エイリアシング補正の決定は、
一つ以上の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値に満たない場合に、前記カラードプラデータにエイリアシング補正を行わない決定を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記プリセット閾値は、前記カラードプラデータに対応付けられたパルス繰り返し周波数の半分のドプラ偏移周波数に対応する速度である、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記エイリアシング補正の決定は、
遷移部に接しているフロー領域の前記カラードプラデータに対して、前記遷移部を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を超える場合に、単一エイリアシング補正を決定することを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記エイリアシング補正の決定は、
ゼロ速度領域に接しているフロー領域の前記カラードプラデータに対して、エイリアシング補正を行わない決定を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
前記エイリアシング補正の決定は、
ゼロフロー領域に接し、かつ、逆向きの流速領域との遷移部に接しているフロー領域の前記カラードプラデータに対して、前記遷移部を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を超える場合に、単一エイリアシング補正を決定することを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
単一エイリアシング補正が決定される前記フロー領域は、前記逆向きの流速領域よりも小さい、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
単一エイリアシング補正の決定は、
前記2つのフロー領域のうちの一方(領域A)に単一エイリアシング補正を適用する一方で、前記2つのフロー領域のうちの他方(領域B)にエイリアシング補正を適用しないことに基づいた、前記カラードプラデータの第1の総エネルギ関数の算出と、
領域Bに単一エイリアシング補正を適用する一方で、領域Aにエイリアシング補正を適用しないことに基づいた、前記カラードプラデータの第2の総エネルギ関数の算出と、
前記第1および第2の総エネルギ関数のうちの小さい方の特定と、を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記エイリアシング補正の決定は、
ゼロ速度領域に接している、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に囲まれた、第1方向の流速に対応したフロー領域の前記カラードプラデータに対する単一エイリアシング補正の決定と、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わない決定と、を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項30】
前記エイリアシング補正の決定は、
ゼロ速度領域に接している、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に囲まれた、第1方向の流速に対応した第1フロー領域の前記カラードプラデータに対する単一エイリアシング補正の決定と、
前記第1フロー領域と前記第2フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を超える場合に、前記第2フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わない決定と、を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項31】
前記エイリアシング補正の決定は、
第1方向の流速に対応した第1フロー領域が、第2方向の流速に対応した第2フロー領域と接しつつその第2フロー領域に囲まれており、前記第2フロー領域が、更に、前記第1方向の流速に対応した第3フロー領域と接しつつその第3フロー領域に囲まれており、前記第3フロー領域が、ゼロ速度領域に接しつつそのゼロ領域に囲まれている構成において、
前記第1フロー領域の前記カラードプラデータに対する二重エイリアシング補正の決定と、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータに対する単一エイリアシング補正の決定と、
前記第3フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わない決定と、を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項32】
前記エイリアシング補正の決定は、
第1方向の流速に対応した第1フロー領域が、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に接しつつその第2フロー領域に囲まれており、前記第2フロー領域が、更に、前記第1方向の流速に対応した第3フロー領域に接しつつその第3領域に囲まれており、前記第3フロー領域が、ゼロ速度領域に接しつつそのゼロ速度領域に囲まれている構成において、
前記第1フロー領域と前記第2フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第1のプリセット閾値を下回り、かつ、前記第2フロー領域と前記第3フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第2のプリセット閾値を超える場合に、
前記第1フロー領域の前記カラードプラデータに対する二重エイリアシング補正の決定と、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータに対する単一エイリアシング補正の決定と、
前記第3フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わない決定と、を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項33】
前記エイリアシング補正の決定は、
第1方向の流速に対応した第1フロー領域が、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に接しつつその第2フロー領域に囲まれており、前記第2フロー領域が、前記第1方向の流速に対応した第3フロー領域に接しつつその第3領域に囲まれており、前記第3フロー領域が、ゼロ速度領域に接しつつそのゼロ速度領域に囲まれている構成において、
前記第1フロー領域と前記第2フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第1のプリセット閾値を越え、かつ、前記第2フロー領域と前記第3フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第2のプリセット閾値を超える場合に、
前記第1フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わない決定と、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータに対する単一エイリアシング補正の決定と、
前記第3フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わない決定と、を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項34】
前記エイリアシング補正の決定は、
第1方向の流速に対応した第1フロー領域が、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に接しつつその第2フロー領域に囲まれており、前記第2フロー領域が、前記第1方向の流速に対応した第3フロー領域に接しつつその第3領域に囲まれており、前記第3フロー領域が、第4フロー領域に接しつつその第4フロー領域に囲まれており、前記第4フロー領域が、ゼロ速度領域に接しつつそのゼロ速度領域に囲まれている構成において、
前記第1フロー領域の前記カラードプラデータに対する三重エイリアシング補正の決定と、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータに対する二重エイリアシング補正の決定と、
前記第3フロー領域の前記カラードプラデータに対する単一エイリアシング補正の決定と、
前記第4フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わない決定と、を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項35】
前記エイリアシング補正の決定は、
第1方向の流速に対応した第1フロー領域が、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に接しつつその第2フロー領域に囲まれており、前記第2フロー領域が、前記第1方向の流速に対応した第3フロー領域に接しつつその第3領域に囲まれており、前記第3フロー領域が、第4フロー領域に接しつつその第4フロー領域に囲まれており、前記第4フロー領域が、ゼロ速度領域に接しつつそのゼロ速度領域に囲まれている構成において、
前記第1フロー領域と前記第2フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を越え、前記第2フロー領域と前記第3フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第2のプリセット閾値を下回り、かつ、前記第3フロー領域と前記第4フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第3のプリセット閾値を超える場合に、
前記第1フロー領域のカラードプラデータに対する三重エイリアシング補正の決定と、
前記第2フロー領域のカラードプラデータに対する二重エイリアシング補正の決定と、
前記第3フロー領域のカラードプラデータに対する単一エイリアシング補正の決定と、
前記第4フロー領域のカラードプラデータにはエイリアシング補正を行わない決定と、
を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項36】
前記エイリアシング補正の決定は、
第1方向の流速に対応した第1フロー領域が、第2方向の流速に対応した第2フロー領域に接しつつその第2フロー領域に囲まれており、前記第2フロー領域が、前記第1方向の流速に対応した第3フロー領域に接しつつその第3領域に囲まれており、前記第3フロー領域が、前記第2方向の流速に対応した第4フロー領域に接しつつその第4フロー領域に囲まれており、前記第4フロー領域が、ゼロ速度領域に接しつつそのゼロ速度領域に囲まれている構成において、
前記第1フロー領域と前記第2フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数がプリセット閾値を下回り、前記第2フロー領域と前記第3フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第2のプリセット閾値を下回り、かつ、前記第3フロー領域と前記第4フロー領域の間の遷移部を隔てた正規化エネルギ関数が第3のプリセット閾値を超える場合に
前記第1フロー領域の前記カラードプラデータに対する単一エイリアシング補正の決定と、
前記第2フロー領域の前記カラードプラデータに対する二重エイリアシング補正の決定と、
前記第3フロー領域の前記カラードプラデータに対する単一エイリアシング補正の決定と、
前記第4フロー領域の前記カラードプラデータにはエイリアシング補正を行わない決定と、
を含む、請求項19に記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2013−501590(P2013−501590A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524854(P2012−524854)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/045233
【国際公開番号】WO2011/019853
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】