説明

超音波発生装置及びそれを備えた設備機器

【課題】強力な音圧レベルの超音波を広範囲に放射することができる超音波発生装置及びそれを備えた設備機器を提供する。
【解決手段】超音波発生装置100は、圧電素子10aが設けられている振動子10(超音波振動子)と、振動子10から発振される超音波の腹の部分に対応する位置に取り付けられ、振動子10の振動と共振することでたわみ振動し超音波を発生する複数枚の振動板12と、振動板12に所定の間隔で対向させ、振動子10から発振される超音波の節の部分に対応する位置に取り付けられ、振動板12からの音放射を反射する複数枚の反射振動板22と、を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を発生する超音波発生装置に関し、特に強力な音圧レベルの超音波を広範囲に放射することが可能な超音波発生装置及びそれを備えた設備機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電素子を利用した超音波発生装置が存在する。このような超音波発生装置は、一般的に、圧電素子に電圧を印加することで圧電素子を発振させ、一定方向の振動の共振周波数を利用することで、特定の周波数を音響発振するようになっている。この超音波を利用して空中に浮遊している塵埃等の粒子を凝集させるようにした空気清浄機等に搭載される超音波凝集装置が存在する。この超音波凝集は、疎密波である超音波の特性によって発生することが知られている。つまり、疎密波の「密」の部分では、強い音圧放射によって、空気同士が摩擦を起こして静電効果が発生し、疎密波の「疎」の部分の塵埃が「密」の部分に移動して粒子が凝集するのである。
【0003】
そのようなものとして、「人の動き等を感知する人感センサを用いた自動運転モードを有して吸気口から吸い込んだ空気を清浄化する空気清浄機において、前記吸気口を空気清浄機本体の少なくとも正面と側面の2面に形成し、前記人感センサとして超音波を送受信する超音波送受信手段を少なくとも前記正面と側面の2面に向けて回動可能に設けると共に、これを用いて人を感知した時は超音波を空気中に照射することにより得られる超音波集塵機能を利用して空気中の埃を肥大化させて集塵する制御手段を備えた空気清浄機」が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、コロナ放電による電気集塵を助長する手段として音放射を組み合わせるようにした技術が開示されている。そのようなものとして、「荷電部と集塵部と、前記荷電部のうちの少なくとも放電部位の一部に対して音波を照射する音波発生手段とを備え、前記荷電部は、放電電極と対向電極とで構成されるとともに、前記音波発生手段は、少なくとも前記放電電極と前記対向電極との間の放電空間に音波を照射する電気集塵装置」が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第3700685号公報(第5頁、第2図)
【特許文献2】特開2004−351330号公報(第6頁、第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波の音圧レベルは、圧電素子を駆動させる入力電圧に依存しており、空中に放射すると極端に減衰してしまう。また、超音波凝集を起こすためには、音波照射範囲内に一定時間異常粒子を滞留させる必要がある。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、音波の照射範囲が狭く、音圧レベルが低いため、超音波凝集を起こすのに必要な時間だけ、音波照射内に粒子を留めておくことができない構成となっている。したがって、特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、音圧レベルを上昇させること及び粒子を留めておくことを考慮していないため、超音波凝集効果を十分に得られないものとなっていた。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、強力な音圧レベルの超音波を広範囲に放射することができる超音波発生装置及びそれを備えた設備機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波発生装置は、圧電素子が設けられている超音波振動子と、前記超音波振動子から発振される超音波の腹の部分に対応する位置に取り付けられ、前記超音波振動子の振動と共振することでたわみ振動し超音波を発生する1枚又は複数枚の振動板と、前記振動板に所定の間隔で対向させ、前記超音波振動子から発振される超音波の節の部分に対応する位置に取り付けられ、前記振動板からの音放射を反射する1枚又は複数枚の反射振動板と、を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る超音波発生装置によれば、振動板と反射振動板との間に強力な音圧レベルの超音波を広範囲に繰り返し放射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波発生装置100の概略構成を示す構成図である。図1に基づいて、超音波発生装置100の構成について説明する。この超音波発生装置100は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電素子で構成される超音波振動子にパルス電圧を印加し、振動子を発振させることによって、超音波を発生させるものである。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
図1に示すように、超音波発生装置100は、振動子(超音波振動子)10と、ホーン11と、複数枚の振動板12と、複数枚の反射振動板22と、を有している。振動子10には、圧電素子10aが設けられ、図示省略の正電極端子及び負電極端子を介してパルス電圧が印加され、発振するようになっている。つまり、振動子10は、パルス電圧が印加されることによって、所定の周波数範囲(一般的に40kHz前後)の音波(超音波)を発振する機能を有しているのである。ホーン11は、両端面が開口され、内部に音響通路(超音波帯域の音響信号を増幅する通路)が形成されるように構成されており、振動子10の先端部(紙面上端部)に取り付けられている。また、ホーン11は、円錐台形状に構成され、振動子10側から振動板12側に向けて徐々に縮径されているのが好ましい。
【0012】
複数枚の振動板12は、振動子10から発信される超音波信号(振動子10内部の発振モード波線A)の「腹」の部分に対応する位置に取り付けられており、振動子10の発振(振動)と共振することによって共振波である超音波を作り出す機能を有している。この図1では、3枚の振動板12がホーン11に取り付けられている状態を図示している。紙面最上部に取り付けられている振動板12を振動板12aと、中間部に取り付けられている振動板12を振動板12bと、最下部に取り付けられている振動板12を振動板12cと、それぞれ称して以下の説明で使用するものとする。なお、振動板12の枚数を図示している3枚に限定するものではない。
【0013】
複数枚の反射振動板22は、振動子10から発信される超音波信号(振動子10内部の発振モード波線A)の「節」の部分に対応する位置に設置されている固定部材14に取り付けられたり、あるいは、振動子10から発信される超音波信号の「節」の部分に相当する筐体面を構成するように取り付けられたりするようになっており、振動板12から放射された超音波を反射させる機能を有している。この図1では、4枚の反射振動板22が取り付けられている状態を図示している。なお、固定部材14は、図示するようにホーン11に設置されている。
【0014】
紙面最上部で、たとえば筐体面を構成するように取り付けられている反射振動板22を反射振動板22aと、振動板12aと振動板12bとの間に取り付けられている反射振動板22を反射振動板22bと、振動板12bと振動板12cとの間に取り付けられている反射振動板22を反射振動板22cと、最下部に取り付けられている反射振動板22を反射振動板22dと、それぞれ称して以下の説明で使用するものとする。なお、反射振動板22の枚数を図示している4枚に限定するものではない。複数枚の振動板12及び複数枚の反射振動板22で多段振動部を構成している。
【0015】
図2は、超音波発生装置100の特徴事項である「格子モード」の「たわみ振動」を説明するための説明図である。図2に基づいて、「格子モード」の「たわみ振動」について説明する。図2(a)が振動板12を上から見た状態を示す平面図を、図2(b)が超音波発生装置100の縦断面構成の一部を省略して示す概略断面図をそれぞれ示している。上述したように、振動板12は、振動子10から発信される超音波信号の「腹」の部分に対応する位置に取り付けられているために、「たわみ振動」を行なうようになっている。つまり、振動板12は、板そのものの固有振動数で決まる「格子モード」での振動(「たわみ振動」)を行なうのである。
【0016】
具体的には、図2(a)の破線で示すように、振動板12は、格子状になっている破線部分を「節(発生した超音波における疎の部分)」、破線以外の部分を「腹(発生した超音波における密の部分)」として「たわみ振動」するようになっているのである。そして、超音波発生装置100では、振動板12の有する振動モードの振動周波数を、振動子10の発振周波数と一致させて用いるようにしている。したがって、振動板12からの超音波は、振動板12の両面(図2(b)では、ホーン11側の面及びその対向面)から発生することになる。
【0017】
図2(b)に示す振動板12は、ホーン11の先端部に取り付けられており、振動子10から発信され、ホーン11を伝搬した超音波信号(波線A)が伝搬することになる。振動板12の有する振動モードの振動周波数は、上述したように振動子10の発振周波数と一致しているので、伝搬した超音波信号により加振(共振)されることになる(波線B1 )。このとき、振動板12が「たわみ振動」することで超音波が発生し、この超音波が振動板12の両面側に放射されるようになっている。
【0018】
振動板12は、以下の計算式(1)で大きさを決定することができ、所望の寸法を設計することができる。
λ={2πCph/f}*1/2・・・式(1)
ここで、λが波長を、Cpが振動板12を構成する板材料の固有定数を、hが振動板12を構成する板材料の厚みを、fが周波数をそれぞれ表している。なお、Cpは、振動板12を構成する材料固有の定数であり、その材料のヤング率やポアソン比等を用いて算出することができる。
【0019】
また、「格子モード」の発生に必要な振動板12の一辺の長さL1 は、以下の計算式(2)で決定することができる。
1 =(N1 −0.5)*λ/2・・・式(2)
ここで、N1 が振動板12に出現する「節」線の数(偶数値)を表している。
すなわち、振動板12の一辺の長さL1 を式(2)で示す関係に設定すれば、振動板12のたわみ振動時におけるモード形状を「格子モード」とすることができる。
【0020】
以上のように、振動板12を「格子モード」で「たわみ振動」させることで、振動板12が振動子10から発信された超音波信号と同等の周波数の特定周波数で振動を行なうことができる。この特定の周波数による振動板12の周波数は、振動板12の全面から放射されることになるので、振動板12の大きさに応じた広い面積から特定の超音波帯域の周波数を持つ強力な音(たとえば、140dB以上)が一様に空中放射(振動子10の中心軸上に沿って30cm以上)されることになる。なお、図2では、ホーン11が設けられている場合を例に示しているが、振動子10の先端部に振動板12を取り付けるようにしてもよい。
【0021】
図3は、超音波発生装置100の特徴事項である「平行縞モード」の「たわみ振動」を説明するための説明図である。図3に基づいて、「平行縞モード」の「たわみ振動」について説明する。図3(a)が振動板12を上から見た状態を示す平面図を、図3(b)が超音波発生装置100の縦断面構成の一部を省略して示す概略断面図をそれぞれ示している。上述したように、振動板12は、振動子10から発信される超音波信号の「腹」の部分に対応する位置に取り付けられ、「たわみ振動」を行なうようになっている。つまり、振動板12は、板そのものの固有振動数で決まる「平行縞モード」での振動(「たわみ振動」)を行なうのである。
【0022】
具体的には、図3(a)の破線で示すように、振動板12は、平行縞状になっている破線部分を「節(発生した超音波における疎の部分)」、破線以外の部分を「腹(発生した超音波における密の部分)」として「たわみ振動」するようになっているのである。そして、超音波発生装置100では、振動板12の有する振動モードの振動周波数を、振動子10の発振周波数と一致させて用いるようにしている。したがって、振動板12からの超音波は、振動板12の両面(図3(b)では、ホーン11側の面及びその対向面)から発生することになる。なお、上記式(1)で振動板12の大きさを決定することができ、上記式(2)で「平行縞モード」の発生に必要な振動板12の一辺の長さL2 を決定することができる。
【0023】
図3(b)で示す振動板12は、ホーン11の先端部に取り付けられており、振動子10から発信され、ホーン11を伝搬した超音波信号(波線A)が伝搬することになる。振動板12の有する振動モードの振動周波数は、上述したように振動子10の発振周波数と一致しているので、伝搬した超音波信号により加振(共振)されることになる(波線B2 )。このとき、振動板12が「たわみ振動」することで、超音波が発生し、この超音波が振動板12aの両面側に放射されるようになっている。
【0024】
以上のように、振動板12を「平行縞モード」で「たわみ振動」させることで、振動板12が振動子10から発信された超音波信号と同等の周波数の特定周波数で振動を行なうことができる。この特定の周波数による振動板12の周波数は、振動板12の全面から放射されることになるので、振動板12の大きさに応じた広い面積から特定の超音波帯域の周波数を持つ強力な音(たとえば、140dB以上)が一様に空中放射(振動子10の中心軸上に沿って30cm以上)されることになる。なお、図3では、ホーン11が設けられている場合を例に示しているが、振動子10に振動板12を取り付けるようにしてもよい。また、「格子モード」に基づいて以下を説明するが、「平行縞モード」でも同様の作用及び効果を有することは言うまでもない。
【0025】
図4は、反射振動板22を設置した状態における超音波放射を説明するための説明図である。図4に基づいて、反射振動板22を設置した状態での超音波の放射について説明する。上述したように、超音波発生装置100では、振動板12の両面から強力な超音波が一様に空中放射される。そこで、「たわみ振動」する反射振動板22を振動板12に所定の間隔(以下で説明する計算式(3))で対向させて設置し、振動板12から放射された超音波を減衰させないようにしているのである。なお、図4では、1枚の反射振動板22が設置されている状態を例に説明するものとする。
【0026】
図4に示すように、超音波は、「たわみ振動」する振動板12の両面から音放射されるようになっている(超音波放射領域:矢印C)。そして、振動板12の下側に所定の間隔をもって、振動板12からの音放射を反射するための反射振動板22を設置している。このような位置に反射振動板22を設置することによって、反射振動板22と振動板12との間に常に強力な音圧レベルを持つ音放射が繰り返し、放射(超音波放射領域:矢印D)可能になっている。このとき、振動板12は振動子10から発信される超音波信号の「腹」が生じる部分に対応する位置に取り付けられ、反射振動板22は振動子10から発信される超音波信号の「節」が生じる部分に対応する位置に設置されている固定部材14に取り付けられている。
【0027】
すなわち、共振周波数の最も強い場所であるホーン11の先端部(「腹」が生じる部分に対応する位置)に取り付けた振動板12と、そのほかの場所(「節」が生じる部分に対応する位置)に設置した固定部材14に取り付けた反射振動板22とを活用して、両者間で超音波を繰り返し反射させ、超音波を減衰させないようにしているのである。したがって、振動板12の前面(紙面上側面)が超音波放射領域(矢印C)となり、振動板12と反射振動板22との間が超音波発生領域(矢印D)となる。なお、振動板12の振動モードによって任意の角度を持って発生する側面波(矢印C1 )及び反射側面波(矢印D1 )については図5で説明する。
【0028】
このように、振動板12と反射振動板22との間に超音波信号が放射/反射を繰り返すことによって、振動板12と反射振動板22との間には複数本の鋭い指向性による超音波信号(矢印C及び矢印D)が発生しており、疎密波を繰り返す超音波による「音の壁」を存在させることができるのである。なお、図4では、反射振動板22を「節」が生じる部分に対応する位置に設置した固定部材14によって取り付けている場合を例に示している。この場合、固定部材14を「節」が生じる部分に対応する位置に設置されていればよく、反射振動板22が「節」が生じる部分に対応する位置になくてもよい。
【0029】
振動板12と反射振動板22との所定の間隔Kは、以下の計算式(3)を満たす関係で決定することができる。
K=(λs/2)*N2 ・・・式(3)
ここで、Kが振動板12と反射振動板22との所定の間隔を、λsが振動板12で発生する周波数の波長を、N2 が次数(奇数値)をそれぞれ表している。この計算式(3)で算出された間隔Kの値で反射振動板22を設置すれば、振動板12からの音放射(矢印C)を、減衰させることなく、反射振動板22と振動板12との間で繰り返し、放射(矢印D)させることができるのである。
【0030】
すなわち、振動板12と反射振動板22との間に複数本の鋭い指向性による超音波による「音の壁」を存在させるためには、反射振動板22を振動板12に対向させ、計算式(3)で算出される間隔Kを満たすような位置に設置しなければならないのである。計算式(3)で算出される間隔Kは、振動子10から発信される超音波信号の「節(発生した超音波における疎の部分)」が生じる部分に対応しているため、反射振動板22が「節」が生じる部分に対応する位置に取り付けられることになるのである。なお、複数枚の反射振動板22を設置する場合でも、反射振動板22を間隔Kで設置すればよい。
【0031】
図5は、2枚の反射振動板22を設置した状態における超音波放射を説明するための説明図である。図5に基づいて、2枚の反射振動板22(説明の便宜上、紙面上側の反射振動板22を反射振動板22e、紙面下側の反射振動板22を反射振動板22fと称するものとする)を設置した状態での超音波の放射について説明する。なお、反射振動板22aと同様に反射振動板22eで、この超音波発生装置100が搭載される設備機器(たとえば、空気清浄機等)の筐体面を構成するようにしてもよい。
【0032】
図1に図示したように、実施の形態1に係る超音波発生装置100は、多段振動部を備えるものである。つまり、超音波発生装置100は、複数の振動板12及び複数枚の反射振動板22を備え、複数枚の反射振動板22を振動板12の前面(紙面上側の面)や近傍音場、後面(紙面下側の面)となる部分のいずれかに設置するようになっている。この図5では、2枚の反射振動板22を振動板12の前面及び後面に設置し、超音波の発生の仕組みを示している。この場合も、上記計算式(3)で算出された間隔K、つまり振動子10から発信される定在波の疎密波である超音波信号の「疎」の部分に反射振動板22を固定する必要がある。図5に示すように、振動板12と反射振動板22eとの間の間隔K2 は、振動板12と反射振動板22fとの間隔K1 の3倍となっているものとする。
【0033】
また、振動板12で発生する超音波の指向性は、振動子10の中心軸方向に最も大きく発生するが、振動板12の振動モードによって任意の角度を持った側面波(矢印C1 )も発生する。したがって、振動板12の表面積よりも、反射振動板22e及び反射振動板22fの表面積を大きくすることで、側面波の有効活用を図ることもできる。つまり、側面波も反射振動板22e及び反射振動板22fで反射側面波(矢印D1 )となり、超音波発生領域に存在することになるのである。また、反射振動板22eと反射振動板22fとの表面積を同一としてもよいし、異なるようにしてもよい。
【0034】
図6は、曲面形状を有する振動板12(反射振動板22を含む)を設置した状態における超音波放射を説明するための説明図である。図6に基づいて、超音波発生装置100に曲面形状を有する複数の振動板12を設置した状態での超音波の放射について説明する。図6に示すように、超音波発生装置100に設置した振動板12及び反射振動板22(説明の便宜上、紙面上側の反射振動板22を反射振動板22g、紙面下側の反射振動板22を反射振動板22hと称するものとする)は、曲面を有している。なお、反射振動板22aが同様に反射振動板22gで、この超音波発生装置100が搭載される設備機器の筐体面を構成するようにしてもよい。
【0035】
この場合も、上記計算式(3)で算出された間隔K、つまり振動板12と反射振動板22との間の平行間隔が保たれれば、曲面を有するもの(たとえば、図6に示すような振動板12と相似円弧形状の複数枚の反射振動板22)を設置することも可能である。つまり、曲面を有する振動板12を用いた場合、設置する反射振動板22は、振動板12の有する円弧と同等の半径を有するように構成しなければならない。したがって、超音波発生装置100を搭載する設備機器の筐体面に応じた形状で振動板12及び反射振動板22を構成することができる。なお、図6では、紙面下側から反射振動板22b、振動板12、反射振動板22aの順で大きくなっている場合を例に示しているが、これに限定するものではない。
【0036】
以上のように、実施の形態1に係る超音波発生装置100では、振動板12(振動板12a、振動板12b及び振動板12c)を「たわみ振動」させることで、振動子10から発信された超音波信号と同等の周波数の特定周波数で振動を行ない、振動板12の全面から特定の超音波帯域の周波数を持つ強力な音が一様に空中放射できる。また、反射振動板22(反射振動板22a、反射振動板22b、反射振動板22c、反射振動板22d、反射振動板22e、反射振動板22f、反射振動板22g及び反射振動板22h)を振動板12から所定の間隔Kをもって設置することにより、振動板12から放射された強力な超音波を、減衰させることなく、反射振動板22と振動板12との間で繰り返し、発生させることができる。
【0037】
したがって、図1に示す超音波発生装置100では、反射振動板22aと振動板12aとの間、振動板12aと反射振動板22bとの間、反射振動板22bと振動板12bとの間、振動板12bと反射振動板22cとの間、反射振動板22cと振動板12cとの間、振動板12cと反射振動板22dとの間、のそれぞれで振動板12a、振動板12b及び振動板12cの全面から放射された強力な超音波を、減衰させることなく、発生させることができる。なお、振動板12及び反射振動板22の材料は、超音波領域の振動周波数で振動することができるものであればよく、金属や樹脂に関わらずどのような材料で構成してもよい。
【0038】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る超音波発生装置100aの概略構成を示す構成図である。図7に基づいて、超音波発生装置100aの構成について説明する。この超音波発生装置100aは、PZT等の圧電素子で構成される超音波振動子にパルス電圧を印加し、振動子を発振させることによって、超音波を発生させるものである。なお、実施の形態2では、実施の形態1と同一部分には同一符号を付し、実施の形態1との相違点を中心に説明するものとする。
【0039】
図7に示すように、超音波発生装置100aの基本的な構成は、実施の形態1に係る超音波発生装置100と同様である。ただし、超音波発生装置100aでは振動子10の終端部側(ホーン11側の端部側)の一部に曲がり段部15を形成している点で、超音波発生装置100と相違している。つまり、超音波発生装置100aでは、振動子10に曲がり段部15が形成されており、この曲がり段部15の終端面に振動波を収束するためのホーン11を取り付けているのである。なお、振動子10の終端部に曲がり段部15を形成した状態を例に説明したが、ホーン11の一部を所定の角度で曲げて曲がり段部としてもよい。なお、反射振動板22dも反射振動板22aと同様に筐体面を構成するとよい。
【0040】
図8は、超音波発生装置100aでの超音波発生の仕組みを説明するための説明図である。図8に基づいて、振動子10の終端部(紙面上側)に、振動子10を所定の角度で曲げた曲がり段部15を形成した状態での超音波放射について説明する。図8に示すように、振動子10には曲がり段部15が形成されており、この曲がり段部15の終端面に振動波を収束するためのホーン11を取り付けている。そして、ホーン11の先端部に振動板12を取り付けている。
【0041】
したがって、図7に示す超音波発生装置100aでは、実施の形態1に係る超音波発生装置100と同様に反射振動板22と振動板12との間で振動板12の全面から放射された強力な超音波を、減衰させることなく、発生させることができる。また、図7に示したような構成にすることで、超音波の進行方向を変換することができ、設備機器の内部空間が小スペースであっても超音波発生装置100aを搭載することができるようになる。すなわち、超音波発生装置100aを搭載する設備機器の形状や大きさに振動子10の形状を対応させることができるのである。
【0042】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る超音波発生装置100bの概略構成を示す構成図である。図9に基づいて、超音波発生装置100bの構成について説明する。この超音波発生装置100bは、PZT等の圧電素子で構成される超音波振動子にパルス電圧を印加し、振動子を発振させることによって、超音波を発生させるものである。なお、実施の形態3では、実施の形態1及び実施の形態2と同一部分には同一符号を付し、実施の形態1及び実施の形態2との相違点を中心に説明するものとする。
【0043】
図9に示すように、超音波発生装置100bの基本的な構成は、実施の形態1に係る超音波発生装置100及び実施の形態2に係る超音波発生装置100aと同様である。ただし、超音波発生装置100bではホーンの終端部に振動方向変換体30が設置されている点で、超音波発生装置100及び超音波発生装置100aと相違している。つまり、超音波発生装置100bでは、ホーン(以下、第1ホーン11a)の終端部に振動方向変換体30が設置されており、この振動方向変換体30のいずれかの面に第1ホーン11aとは別のホーン(以下、第2ホーン11bと称する)を取り付けているのである。なお、第1ホーン11aを設けずに、振動子10に振動方向変換体30を設置してもよい。
【0044】
第1ホーン11a及び第2ホーン11bは、ホーン11と同様な機能を有している。振動方向変換体30は、金属材料で構成されていおり、第1ホーン11aの取付面及びこの取付面の対向面を多角形状(たとえば、正方形等)の角柱形状となっている。つまり、振動方向変換体30は、第1ホーン11aから伝搬した振動を角柱の側面に伝搬することで、振動方向を変更させる機能を有しているのである。図9に示すように、超音波発生装置100bは、振動子10を振動板12と平行となるように配置し、振動子10からの振動を振動方向変換体30で直角方向上側に変換し、第2ホーン11bを介して振動板12に伝搬させるようになっている。
【0045】
図10は、振動方向変換体30の原理の一例を説明するための説明図である。図10に基づいて、振動方向変換体30が振動方向を変換する原理の一例について、第1ホーン11aの終端部に振動方向変換体30を設置し、振動方向変換体30のいずれかの面(紙面右側の面)に振動板12を設置した状態での超音波放射の説明とともに説明する。図10に示すように、第1ホーン11aの終端部に振動方向変換体30が設置され、この振動方向変換体30のいずれかの面(図10では、紙面右側面)に振動板12を取り付けている。
【0046】
振動方向変換体30は、第1ホーン11aから伝搬した振動(面内振動)を、その振動方向変換体30を構成している角柱の側面方向に変換して伝搬させ、その側面を振動(面外振動)させるものである。すなわち、振動方向変換体30は、面内振動を面外振動に変換する機能を有しているのである。したがって、振動方向変換体30は、この振動方向を変換する原理を利用できる形状であればよく、たとえば図10に示すような四面体形状や上面及び底面が他の多角形状の角柱形状であればよい。
【0047】
図11は、振動方向変換体30の原理の他の一例を説明するための説明図である。図11に基づいて、振動方向変換体30が振動方向を変換する原理の他の一例について、第1ホーン11aの終端部に振動方向変換体30を設置し、振動方向変換体30のいずれかの面(紙面右側の面)に振動板12を設置した状態での超音波放射の説明とともに説明する。図11に示すように、第1ホーン11aの終端部に振動方向変換体30が設置され、この振動方向変換体30のいずれかの面(図11では、紙面右側面)に振動板12を取り付けている。
【0048】
図11に示す振動方向変換体30は、超音波特有の原理を利用している。つまり、振動方向変換体30は、第1ホーン11aから伝搬した振動を、この振動の進行波によって第1ホーン11aの取付面からこの取付面の対向面に衝突させ、この対向面で所定の角度(たとえば、45°)で反射させ、振動方向変換体30の側面に衝突させることで、その側面を振動させるものである。したがって、振動方向変換体30は、この振動の進行波を反射させ、振動方向を変換する原理を利用できる形状であればよく、たとえば図11に示すような第1ホーン11aから伝搬される振動の進行波方向の長さを第1ホーン11aの取付面の一辺の長さの2倍程度以上とするような形状であればよい。
【0049】
図12は、超音波発生装置100bでの超音波発生の仕組みを説明するための説明図である。図12に基づいて、振動方向変換体30を設置した状態での超音波放射について説明する。図12に示すように、第1ホーン11aには振動方向変換体30が設置されており、この振動方向変換体30のいずれかの面(ここでは紙面下側の面)に振動板12を取り付けている。実施の形態1で説明したように、振動板12の両面から強力な超音波が一様に空中放射される。そこで、「たわみ振動」する反射振動板22を振動板12に所定の間隔で対向させて設置し、振動板12から放射された超音波を減衰させないようにしているのである。
【0050】
図12に示すように、超音波は、「たわみ振動」する振動板12の両面から音放射されるようになっている(超音波放射領域:矢印C)。そして、振動板12の下側に所定の間隔をもって、振動板12からの音放射を反射するための反射振動板22を設置している。反射振動板22を設置することによって、反射振動板22と振動板12との間に常に強力な音圧レベルを持つ音放射が繰り返し、放射(矢印D)可能になっている。このとき、振動板12は振動子10から発信される超音波信号の「腹」が生じる部分に対応する位置に取り付けられ、反射振動板22は振動子10から発信される超音波信号の「節」が生じる部分に対応する位置に設置されている固定部材14に取り付けられたり、振動子10から発信される超音波信号の「節」が生じる部分の筐体面を構成したりしている。
【0051】
すなわち、共振周波数の最も強い場所である第1ホーン11aの先端部(「腹」が生じる部分に対応する位置)に設置された振動方向変換体30のいずれかの面に取り付けられた振動板12と、そのほかの場所(「節」が生じる部分に対応する位置)に設置した反射振動板22とを活用して、両者間で超音波を繰り返し反射させ、超音波を減衰させないようにしているのである。このように、振動板12と反射振動板22との間に超音波信号が放射/反射を繰り返すことによって、振動板12と反射振動板22との間には複数本の鋭い指向性による超音波信号(矢印C、矢印C1 矢印D及び矢印D1 )が発生しており、疎密波を繰り返す超音波による「音の壁」を存在させることができるのである。
【0052】
図13は、2枚の反射振動板22を設置した状態における超音波放射を説明するための説明図である。図13に基づいて、2枚の反射振動板22(説明の便宜上、紙面上側の反射振動板22を反射振動板22i、紙面下側の反射振動板22を反射振動板22jと称するものとする)を設置した状態での超音波の放射について説明する。図13に示すように、第1ホーン11aには振動方向変換体30が設置されており、この振動方向変換体30のいずれかの面(ここでは紙面下側の面)に振動板12を取り付けている。
【0053】
図9に図示したように、実施の形態3に係る超音波発生装置100bは、多段振動部を備えるものである。つまり、超音波発生装置100bは、複数の振動板12及び複数枚の反射振動板22を備え、複数枚の反射振動板22を振動板12の前面(紙面上側の面)や近傍音場、後面(紙面下側の面)となる部分のいずれかに設置するようになっている。この図12では、2枚の反射振動板22を振動板12の前面及び後面に設置し、超音波の発生の仕組みを示している。この場合も、上記計算式(3)で算出された間隔K、つまり振動子10から発信される定在波の疎密波である超音波信号の「疎」の部分に反射振動板22を固定する必要がある。
【0054】
また、振動板12で発生する超音波の指向性は、振動子10の中心軸方向に最も大きく発生するが、振動板12の振動モードによって任意の角度を持った側面波(矢印C1 )も発生する。したがって、振動板12の表面積よりも、反射振動板22a及び反射振動板22bの表面積を大きくすることで、側面波の有効活用を図ることもできる。つまり、側面波も反射振動板22i及び反射振動板22jで反射側面波(矢印D1 )となり、超音波発生領域に存在することになるのである。また、反射振動板22iと反射振動板22jとの表面積を同一としてもよいし、異なるようにしてもよい。
【0055】
図14は、2枚の振動板12を設置した状態における超音波放射を説明するための説明図である。図14に基づいて、2枚の振動板12(説明の便宜上、紙面上側の振動板12を振動板12d及び紙面下側の振動板12を振動板12eと称するものとする)を設置した状態での超音波の放射について説明する。図14に示すように、第1ホーン11aには振動方向変換体30が設置されており、この振動方向変換体30のいずれかの面(ここでは紙面下側の面及び紙面上側の面)に振動板12d及び振動板12eを取り付けている。そして、振動板12dと振動板12eとの間には、振動板12d及び振動板12eの対向面の面積と同一面積を有する反射振動板22(以下、反射振動板22kと称する)を取り付けている。
【0056】
図13では、1枚の振動板12を挟んで2枚の反射振動板22を設置した場合を例に説明したが、図14では、2枚の振動板12を振動方向変換体30に設置し、それぞれの振動板12の前面及び後面に反射振動板22(振動板12dの前面に設置した反射振動板22を反射振動板22l、振動板12eの後面に設置した反射振動板22を反射振動板22mと称する)を設置した状態を示している。なお、反射振動板22kは、振動板12d及び振動板12eの双方に共通して利用されるようになっている。この場合も、上記計算式(3)で算出された間隔K、つまり振動子10から発信される定在波の疎密波である超音波信号の「疎」の部分に反射振動板22kを固定する必要がある。
【0057】
図14に示すように、振動板12dと反射振動板22lとの間の間隔K2 、及び、振動板12eと反射振動板22mとの間の間隔K2 は、振動板12dと反射振動板22kとの間の間隔K1 、及び、振動板12eと反射振動板22kとの間の間隔K1 の3倍となっているものとする。また、振動板12で発生する超音波の指向性は、振動子10の中心軸方向に最も大きく発生するが、振動板12の振動モードによって任意の角度を持った側面波(矢印C1 )も発生する。したがって、振動板12の表面積よりも、反射振動板22a及び反射振動板22bの表面積を大きくすることで、側面波の有効活用を図ることもできる。また、反射振動板22lと反射振動板22mとの表面積を同一としてもよいし、異なるようにしてもよい。
【0058】
したがって、図9に示す超音波発生装置100bでは、図12〜図14の内容を適用することで、実施の形態1に係る超音波発生装置100と同様に反射振動板22と振動板12との間で振動板12の全面から放射された強力な超音波を、減衰させることなく、発生させることができる。また、図9に示したような構成にすることで、超音波の進行方向を変換することができ、設備機器の内部空間が小スペースであっても超音波発生装置100bを搭載することができるようになる。すなわち、超音波発生装置100bを搭載する設備機器の形状や大きさに振動子10の形状を対応させることができるのである。
【0059】
実施の形態4.
図15は、本発明の実施の形態4に係る空気清浄機200の構成の一部を示す概略構成図である。図15に基づいて、実施の形態1に係る超音波発生装置100、実施の形態2に係る超音波発生装置100a、あるいは、実施の形態3に係る超音波発生装置100bを搭載した設備機器の一例である空気清浄機200について説明する。この空気清浄機200は、内部に取り込んだ空気に含まれている塵埃粒子を超音波により拡大(凝集)、集塵し、清浄化した空気を外部に吹き出すものである。なお、空気清浄機200には、空気の流れを矢印で図示している。
【0060】
図15に示すように、この空気清浄機200には、実施の形態1〜実施の形態3のいずれかに係る超音波発生装置に加え、送風ファン31と、集塵フィルタ32と、温度センサ33と、が設けられている。送風ファン31は、超音波発生装置内に空気を取り込み、清浄化した空気を外部に吹き出すものであり、空気清浄機200内における空気の流路のいずれかに設けられていればよい。集塵フィルタ32は、空気に含まれている塵埃を集塵するものであり、空気の流れに対して略直交するように設けるようにするとよい。温度センサ33は、超音波発生装置の近傍に設置され、超音波発生装置付近の温度を検知するものである。
【0061】
超音波凝集の仕組みについて簡単に説明する。
疎密波である超音波の「密」の部分では、強い音圧放射によって、空気同士が摩擦を起こして静電効果が発生している。そして、振動板12と反射振動板22(反射振動板22a、反射振動板22b、反射振動板22c及び反射振動板22d)との間における超音波発生領域に存在する「音の壁」を通過する塵埃は、摩擦による静電効果の影響を受け、疎密波の「疎」の部分の塵埃が「密」の部分に移動して粒子が拡大(凝集)する。このようにして超音波凝集が発生するようになっている。また、超音波凝集を発生させるには、強力な音(140dB以上)が空中放射されることが条件となる。
【0062】
また、超音波凝集を効果的に実現するためには、塵埃を振動板12と反射振動板22との間に所定時間留めておく必要がある。そこで、空気清浄機200は、実施の形態1〜実施の形態3に係る超音波発生装置を搭載し、強力な超音波を広範囲に渡って減衰することなく発生させることを可能とするとともに、振動板12及び反射振動板22を設置することで塵埃を超音波発生領域に所定時間留めておくことを可能としているのである。したがって、空気清浄機200は、効果的な超音波凝集を実現したものとなっている。
【0063】
図16は、集塵効率と塵埃の滞留時間との関係を示すグラフである。図17は、集塵効率と音圧レベルとの関係を示すグラフである。図18は、共振周波数と素子部温度との関係を示すグラフである。図16〜図18に基づいて、超音波凝集の特徴について説明する。図16では、縦軸が集塵効率(%)を、横軸が塵埃の滞留時間(s)を、それぞれ表している。図17では、縦軸が集塵効率(%)を、横軸が音圧レベル(dB)を、それぞれ表している。図18では、縦軸が共振集塵部(Hz)を、横軸が素子部(超音波発生装置近傍)の温度(℃)を、それぞれ表している。
【0064】
図16から、塵埃の滞留時間が長くなるほど、集塵効率が向上することがわかる。つまり、塵埃を超音波発生領域に長く滞留させるほど超音波凝集を効果的に実現できるのである。また、図17から、超音波の音圧レベルが増加するほど、集塵効率が向上することがわかる。つまり、超音波凝集を発生させるには、140dB以上の音圧レベルが必要であることがわかる。さらに、図18から、素子部温度が増加するほど、共振周波数が減少することがわかる。つまり、素子部温度が低いほど超音波の共振周波数を維持できるのである。なお、図17では、同体積及び同滞留時間での集塵効率と音圧レベルとの関係を示しているものとする。
【0065】
以上のグラフからも、超音波凝集を高効率で発生させるには、強力な音(音圧レベルが140dB以上)が空中放射される必要があるということがわかる。また、塵埃を振動板12と反射振動板22との間に所定時間滞留させておく必要があるということがわかる。そこで、実施の形態1に係る超音波発生装置100、実施の形態2に係る超音波発生装置100a、及び、実施の形態3に係る超音波発生装置100bは、いずれも強力な音を空中放射可能にし、塵埃を振動板12と反射振動板22との間に所定時間滞留させておくことを可能にしているのである。したがって、空気清浄機200も、強力な超音波を広範囲に渡って減衰することなく発生でき、塵埃を超音波発生領域に所定時間留めておくことができるのである。
【0066】
なお、空気清浄機200には、超音波発生装置付近の温度を検知する温度センサ33が設置されている。また、図18から、素子部温度が増加するほど、共振周波数が減少することがわかる。したがって、温度センサ33で検知される超音波発生装置付近の温度に基づいて、超音波発生装置から発生させる超音波の周波数を変化させるようにしておくことが望ましい。具体的には、温度センサ33からの温度情報に基づいて、振動子10への印加電圧を調整し、超音波の周波数を変化させるとよい。振動子10への印加電圧の調整は、超音波発生装置に設けられている図示省略の制御手段等に実行させればよい。
【0067】
送風ファンの大きな回転と目の細かい集塵フィルタによる塵埃の集塵とを行なっていたような空気清浄機が、超音波凝集を常時発生させることができれば、塵埃の凝集効果により、目の粗い集塵フィルタも集塵が行なえるようになる。つまり、目の細かい集塵フィルタと大きな回転を有する送風ファンとの必要性のルールが必要なくなる。したがって、空気清浄機200では、集塵フィルタ32の目を粗いものとしても大きな集塵効果が得られ、送風ファン31の回転を遅くでき、送風ファン31及び送風ファン31を駆動するための図示省略のファンモータによる騒音発生を低減できる。
【0068】
また、空気清浄機200は、コロナ放電を発生させなくても、集塵効果を向上することができる。ただし、コロナ放電やミストと組み合わせることを否定するものではなく、これらと組み合わせることによって更に集塵効果を向上させることができる。さらに、空気清浄機200の大きさや形状に対応して、実施の形態1〜実施の形態3のいずれかに係る超音波発生装置を選択することができる。したがって、設備機器の小型化及びデザイン性を損ねることなく、超音波発生装置を搭載することができる。
【0069】
なお、実施の形態4では、実施の形態1〜実施の形態3のいずれかに係る超音波発生装置を搭載した設備機器の一例として空気清浄機200を例に示したが、これに限定するものではない。たとえば、超音波を利用する設備機器、たとえば空気調和装置や超音波加工装置、超音波霧化装置、超音波接合装置、測距センサ、超音波洗浄装置、超音波美容装置、排ガス清浄機、オイルミストフィルタ等に備えることもできる。したがって、それらの設備機器も、強力な音(140dB以上)が一様に空中放射でき、反射振動板を設置することにより、振動板から放射された強力な超音波を、減衰させることなく、反射振動板と振動板との間で繰り返し、放射させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施の形態1に係る超音波発生装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】超音波発生装置の特徴事項である「格子モード」の「たわみ振動」を説明するための説明図である。
【図3】超音波発生装置の特徴事項である「平行縞モード」の「たわみ振動」を説明するための説明図である。
【図4】反射振動板を設置した状態における超音波放射を説明するための説明図である。
【図5】2枚の反射振動板を設置した状態における超音波放射を説明するための説明図である。
【図6】曲面形状を有する振動板(反射振動板を含む)を設置した状態における超音波放射を説明するための説明図である。
【図7】実施の形態2に係る超音波発生装置の概略構成を示す構成図である。
【図8】超音波発生装置での超音波発生の仕組みを説明するための説明図である。
【図9】実施の形態3に係る超音波発生装置の概略構成を示す構成図である。
【図10】振動方向変換体の原理の一例を説明するための説明図である。
【図11】振動方向変換体の原理の他の一例を説明するための説明図である。
【図12】超音波発生装置での超音波発生の仕組みを説明するための説明図である。
【図13】2枚の反射振動板を設置した状態における超音波放射を説明するための説明図である。
【図14】2枚の振動板を設置した状態における超音波放射を説明するための説明図である。
【図15】実施の形態4に係る空気清浄機の構成の一部を示す概略構成図である。
【図16】集塵効率と塵埃の滞留時間との関係を示すグラフである。
【図17】集塵効率と音圧レベルとの関係を示すグラフである。
【図18】共振周波数と素子部温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0071】
10 振動子、10a 圧電素子、11 ホーン、11a 第1ホーン、11b 第2ホーン、12 振動板、12a 振動板、12b 振動板、12c 振動板、12d 振動板、12e 振動板、14 固定部材、15 曲がり段部、22 反射振動板、22a 反射振動板、22b 反射振動板、22c 反射振動板、22d 反射振動板、22e 反射振動板、22f 反射振動板、22g 反射振動板、22h 反射振動板、22i 反射振動板、22j 反射振動板、22k 反射振動板、22l 反射振動板、22m 反射振動板、30 振動方向変換体、31 送風ファン、32 集塵フィルタ、33 温度センサ、100 超音波発生装置、100a 超音波発生装置、100b 超音波発生装置、200 空気清浄機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子が設けられている超音波振動子と、
前記超音波振動子から発振される超音波の腹の部分に対応する位置に取り付けられ、前記超音波振動子の振動と共振することでたわみ振動し超音波を発生する1枚又は複数枚の振動板と、
前記振動板に所定の間隔で対向させ、前記超音波振動子から発振される超音波の節の部分に対応する位置に取り付けられ、前記振動板からの音放射を反射する1枚又は複数枚の反射振動板と、を有している
ことを特徴とする超音波発生装置。
【請求項2】
前記振動板及び前記反射振動板は、
格子モード又は平行縞モードのたわみ駆動する固有振動数を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波発生装置。
【請求項3】
前記反射振動板を固定部材を用いて取り付ける状態において、
前記固定部材を前記超音波振動子から発信される超音波信号の節の部分に対応する位置に設置する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波発生装置。
【請求項4】
前記所定の間隔は、
前記振動板で発生する周波数の(波長/2)*(奇数値)で算出している
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波発生装置。
【請求項5】
音響通路を構成するホーンを前記超音波振動子の先端部に設けている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波発生装置。
【請求項6】
前記超音波振動子あるいは前記ホーンを折り曲げている
ことを特徴とする請求項5に記載の超音波発生装置。
【請求項7】
前記超音波振動子から発振される超音波の進行方向を変換させる振動方向変換体を前記超音波振動子の先端部あるいは前記ホーンの先端部に取り付けている
ことを特徴とする請求項5に記載の超音波発生装置。
【請求項8】
前記振動方向変換体のいずれかの面に前記ホーンとは別のホーンあるいは前記振動板を取り付けている
ことを特徴とする請求項7に記載の超音波発生装置。
【請求項9】
前記振動方向変換体を角柱形状としている
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の超音波発生装置。
【請求項10】
前記振動板及び前記反射振動板が曲面形状を有している
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の超音波発生装置。
【請求項11】
前記請求項1〜10のいずれか一項に記載の超音波発生装置を搭載した
ことを特徴とする設備機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−63961(P2010−63961A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230722(P2008−230722)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】