説明

超音波診断装置、画像処理装置及びプログラム

【課題】心臓における興奮伝播の様相を容易に判別させること。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、運動情報生成部17aと、抽出部17bと、画像生成部14と、制御部18とを備える。運動情報生成部17aは、被検体の心臓を超音波で3次元走査することで生成された時系列に沿ったボリュームデータ群それぞれから、心壁の運動に関する運動情報を生成する。抽出部17bは、運動情報が所定の範囲となる特異領域を各ボリュームデータから抽出する。画像生成部14は、処理対象となるボリュームデータの特異領域を、当該処理対象となるボリュームデータ以前に生成されたボリュームデータの特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する。制御部18は、画像生成部14が生成した重畳画像を表示するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織の機能を客観的かつ定量的に評価することは、当該生体組織の疾患を診断するうえで重要であり、例えば、心疾患の診断では、心エコーにより心壁運動を定量的に評価する定量的評価法が試みられている。
【0003】
心エコーを用いた定量的評価法の一例としては、超音波画像に特有のスペックルパターンに基づいて、超音波画像上の心筋に設定した点を追跡するスペックルトラッキングを用いた方法がある。例えば、患者の心臓を時系列に沿って超音波により3次元で走査することで収集されたボリュームデータをスペックルトラッキングにより解析することで、左心室などの心壁運動を3次元で定量的評価することができる。
【0004】
ここで、心臓は、電気刺激による機械的興奮(activation)により心筋が運動する電気機械結合系の組織である。近年、電気的な刺激の伝播と機械的な興奮の伝播とには関連性があるものと考えられている。例えば、左心室については心電図のQRS区間における電気刺激を受けることで、心尖部が起点となって3次元的な拡がりを有する左室心筋が効率的に血液を駆出するように同調して収縮の壁運動を起こす。このための壁運動の空間的な伝播(局所的な収縮のタイミングに相当する)は、機械的な興奮の伝播の様子として捉えることができる。従って、心壁運動に関する情報である壁運動情報(例えば、心筋ストレインなどの指標値)の大きい部位は、「機械的興奮部位」に対応するものと考えられる。そこで、例えば、複数の心時相におけるボリュームデータそれぞれの壁運動情報の空間的なピーク値で規格化された指標値のうち、閾値以上の指標値を有する領域を特異領域として標識する表示方法が知られている。かかる表示方法は、特異部位を経時的に更新することで、興奮伝播の様相を医師に提供するものである。
【0005】
しかし、上記の表示方法は、必ずしも、心臓における興奮伝播の様相を判り易く表示するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−39429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、心臓における興奮伝播の様相を容易に判別させることが可能となる超音波診断装置、画像処理装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の超音波診断装置は、運動情報生成部と、抽出部と、画像生成部と、制御部とを備える。運動情報生成部は、被検体の心臓を超音波で3次元走査することで生成された時系列に沿ったボリュームデータ群それぞれから、心壁の運動に関する運動情報を生成する。抽出部は、前記運動情報生成部が生成した前記運動情報が所定の範囲となる特異領域を各ボリュームデータから抽出する。画像生成部は、処理対象となるボリュームデータから前記抽出部が抽出した前記特異領域を、当該処理対象となるボリュームデータ以前に生成されたボリュームデータから前記抽出部が抽出した前記特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する。制御部は、前記画像生成部が生成した前記重畳画像を表示するように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、運動情報生成部が生成する運動情報の一例を説明するための図である。
【図3】図3は、従来の時相更新型の表示方法を説明するための図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る画像生成部を説明するための図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る第2の変形例を説明するための図(1)である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係る第2の変形例を説明するための図(2)である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る第3の変形例を説明するための図である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係る第4の変形例を説明するための図である。
【図9−1】図9−1は、第1の実施形態に係る第5の変形例を説明するための図(1)である。
【図9−2】図9−2は、第1の実施形態に係る第5の変形例を説明するための図(2)である。
【図10】図10は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は、第2の実施形態を説明するための図である。
【図12】図12は、第3の実施形態を説明するための図(1)である。
【図13】図13は、第3の実施形態を説明するための図(2)である。
【0010】
以下、添付図面を参照して、超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、心電計4と、装置本体10とを有する。
【0012】
超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される体外式の超音波プローブである。超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
【0013】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0014】
ここで、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、セクタスキャンにより被検体Pを超音波で2次元走査するとともに、被検体Pを3次元走査することが可能な超音波プローブである。具体的には、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、複数の超音波振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで、被検体Pを3次元走査する体外式のメカニカルスキャンプローブである。
【0015】
なお、第1の実施形態は、超音波プローブ1が、複数の超音波振動子がマトリックス状に配置されることで、被検体Pを3次元で超音波走査することが可能な2次元アレイ超音波プローブである場合であっても適用可能である。2次元アレイ超音波プローブは、超音波を電子的に集束して送信することで、被検体Pを電子的に3次元で走査することが可能である。
【0016】
入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどを有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
【0017】
例えば、第1の実施形態に係る入力装置3は、ボリュームデータから生成される心壁運動の情報の種別の指定や、生成された情報の出力形態の指定を操作者から受け付ける。なお、第1の実施形態に係る入力装置3が受け付ける各種指定内容については、後に詳述する。
【0018】
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された各種画像などを表示したりする。
【0019】
心電計4は、装置本体10と接続され、超音波走査が行なわれる被検体Pの心電図(ECG: Electrocardiogram)を取得する。心電計4は、取得した心電図を装置本体10に送信する。
【0020】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置である。具体的には、第1の実施形態に係る装置本体10は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元超音波画像(ボリュームデータ)を生成可能な装置である。装置本体10は、図1に示すように、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、画像生成部14と、画像メモリ15と、内部記憶部16と、ボリュームデータ処理部17と、制御部18とを有する。
【0021】
送受信部11は、トリガ発生回路、送信遅延回路及びパルサ回路などを有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの送信遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える送信遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0022】
なお、送受信部11は、後述する制御部18の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0023】
また、送受信部11は、アンプ回路、A/D変換器、受信遅延回路、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な受信遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路により受信遅延時間が与えられた反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0024】
このように、送受信部11は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。ここで、第1の実施形態に係る送受信部11は、超音波プローブ1から被検体Pに対して3次元で超音波ビームを送信させ、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
【0025】
Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0026】
ドプラ処理部13は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0027】
なお、第1の実施形態に係るBモード処理部12およびドプラ処理部13は、2次元の反射波データおよび3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、第1の実施形態に係るBモード処理部12は、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成することができる。また、第1の実施形態に係るドプラ処理部13は、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成することができる。
【0028】
画像生成部14は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。具体的には、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した3次元のBモードデータから、3次元のBモード画像を生成する。
【0029】
また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成したドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。具体的には、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した3次元のドプラデータから、3次元のカラードプラ画像を生成する。
【0030】
なお、以下では、画像生成部14が生成した3次元のBモード画像を「ボリュームデータ」と記載する。
【0031】
ここで、画像生成部14は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用画像としての超音波画像を生成する。具体的には、画像生成部14は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用画像としての超音波画像を生成する。また、画像生成部14は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)などを行なう。
【0032】
また、画像生成部14は、超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマークなどを合成した合成画像を生成することもできる。
【0033】
また、画像生成部14は、ボリュームデータをモニタ2にて表示するための各種画像を生成することができる。具体的には、画像生成部14は、超音波ボリュームデータからMPR(Multi Planar Reconstructions)画像、レンダリング画像(ボリュームレンダリング画像やサーフェスレンダリング画像)を生成することができる。
【0034】
画像メモリ15は、画像生成部14が生成した超音波画像を記憶するメモリである。ここで、画像生成部14は、ボリュームデータと当該ボリュームデータを生成するために行なわれた超音波走査の時間とを、心電計4から送信された心電図に対応付けて画像メモリ15に格納する。すなわち、後述するボリュームデータ処理部17は、画像メモリ15に格納されたデータを参照することで、ボリュームデータを生成するために行なわれた超音波走査時の心時相を取得することができる。また、画像メモリ15は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。
【0035】
内部記憶部16は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)や、診断プロトコルや各種ボディーマークなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部16は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像の保管などにも使用される。また、内部記憶部16が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部の周辺装置へ転送することができる。
【0036】
ボリュームデータ処理部17は、画像メモリ15が記憶するボリュームデータに対して各種画像処理を行なう処理部であり、図1に示すように、運動情報生成部17a及び抽出部17bを有する。また、上述した画像生成部14は、ボリュームデータ処理部17の処理結果を用いて、各種画像を生成する。なお、ボリュームデータ処理部17が行なう処理と、ボリュームデータ処理部17の処理結果を用いて画像生成部14が生成する画像については、後に詳述する。
【0037】
制御部18は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部18は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部16から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13、画像生成部14及びボリュームデータ処理部17の処理を制御する。また、制御部18は、画像メモリ15が記憶する超音波画像や、ボリュームデータ処理部17により行われる各種処理を指定するためのGUI、ボリュームデータ処理部17の処理結果に基づいて画像生成部14が生成した画像などをモニタ2にて表示するように制御する。
【0038】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、ボリュームデータを生成し、生成したボリュームデータに対して処理を行なう。具体的には、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、被検体Pの心臓のボリュームデータを生成する。一例を挙げると、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、被検体Pの心臓の左心室(LV:Left Ventricular)を1心拍以上の期間にわたり時系列に沿って撮影した複数のボリュームデータ(ボリュームデータ群)を生成する。
【0039】
そして、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、被検体Pの心臓のボリュームデータ群に対してボリュームデータ処理部17及び画像生成部14による処理を行なって、心臓における興奮伝播の様相が描出された画像を生成し、表示する。
【0040】
まず、図1に示す運動情報生成部17aは、被検体Pの心臓を超音波で3次元走査することで生成された時系列に沿ったボリュームデータ群それぞれから、心壁の運動に関する運動情報を生成する。具体的には、運動情報生成部17aは、ボリュームデータ間のパターンマッチングにより、運動情報を生成する。より具体的には、運動情報生成部17aは、各ボリュームデータに描出された心筋組織に設定された追跡点をスペックルパターンに基づいて追跡することで、各追跡点の移動ベクトルを算出する。そして、運動情報生成部17aは、各追跡点の移動ベクトルを用いて、局所的な心筋の動きを示す運動情報を生成する。換言すると、運動情報生成部17aは、3次元のスペックルトラッキングを行なって、運動情報を生成する。
【0041】
一例を挙げると、運動情報生成部17aは、運動情報として、心臓組織の局所的な面積の変化率を生成する。
【0042】
例えば、入力装置3は、操作者から、ボリュームデータ群の中で、基準時相に収集されたボリュームデータを第1フレームのボリュームデータとする設定要求を受け付ける。基準時相としては、例えば、左心室が最も拡張される心時相が選択される。設定要求が転送された制御部18は、各ボリュームデータに対応付けられている情報に基づいて、ボリュームデータ群の中で、最も早い時期に基準時相のボリュームデータとして生成されたボリュームデータを選択する。そして、制御部18は、選択したボリュームデータを第1フレームのボリュームデータとして、画像メモリ15から読み出す。そして、制御部18は、読み出した第1フレームのボリュームデータを運動情報生成部17aに転送する。なお、第1フレームが設定されることにより、基準時相以降のボリュームデータは、「第2フレーム、第3フレーム、〜、第nフレーム」となる。
【0043】
運動情報生成部17aは、局所的な面積の変化率を求めるに際し、例えば、第1フレームのボリュームデータに含まれる心筋の内膜面を抽出する。本実施形態では、運動情報生成部17aは、左心室内膜面を抽出する。図2は、運動情報生成部が生成する運動情報の一例を説明するための図である。
【0044】
運動情報生成部17aは、図2に示すように、第1フレームのボリュームデータに含まれる左心室内膜面に複数の追跡点を設定する。例えば、運動情報生成部17aは、図2に示すように、左心室内膜面上に複数の矩形で構成されるメッシュを設定し、各矩形の頂点を追跡点として設定する。なお、追跡点を設定するためのメッシュは、第1フレームのボリュームデータを複数方向の断面にて切断した複数のMPR画像や、左心室内膜面のサーフェスレンダリング画像を参照した操作者により手動により設定される場合であっても良い。
【0045】
そして、運動情報生成部17aは、第1フレーム以降の各フレームにおいて、第1フレームに設定した各追跡点がどの位置に移動したのかをスペックルトラッキングにより追跡する。例えば、運動情報生成部17aは、図2に示すように、第1フレームの各追跡点に対応する第nフレームの位置を特定する。そして、運動情報生成部17aは、図2に示すように、第1フレームの矩形の面積(A1)と、第nフレームにおいて第1フレームの矩形に該当する矩形の面積(An)とを算出する。すなわち、運動情報生成部17aは、対応する矩形ごとに、A1及びAnを算出する。そして、運動情報生成部17aは、第nフレームの第1フレームに対する面積変化率(単位:%)として、「((An−A1)/A1)×100」を算出する。すなわち、運動情報生成部17aは、ボリュームデータ間で対応する矩形それぞれの面積を算出して、当該矩形間の面積変化率を算出する。これにより、運動情報生成部17aは、左心室内膜面の局所的な面積変化率を算出する。すなわち、運動情報生成部17aは、まず基準時相で内膜面の局所領域の面積(各矩形の面積)を算出する。そして、運動情報生成部17aは、時間的に連続するボリュームデータにおいて追跡点のトラッキングを行なうことで、各心時相の矩形の面積を算出し、各心時相の各矩形の面積それぞれを、基準時相で対応する矩形の面積で規格化することにより局所的な面積変化率を求める。これにより、運動情報生成部17aは、時間的に連続するボリュームデータにおいて、各矩形がどのように変形したのか示す局所的な面積変化率を求める。
【0046】
なお、運動情報生成部17aは、運動情報として、局所的な面積の変化率(Area change)の時間変化率(Area change rate)を算出しても良い。すなわち、運動情報生成部17aは、局所的な面積の変化率の時間微分値を推定することで、面積変化率の時間変化率を算出しても良い。なお、図2に示す「s,i,p,l」は、アメリカ心エコー図学会などが推奨する16分画において、「中隔(sept)、下壁(inf)、後壁(post)、側壁(lat)」に対応する。
【0047】
図1に戻って、抽出部17bは、運動情報生成部17aが生成した運動情報が所定の範囲となる特異領域を各ボリュームデータから抽出する。具体的には、抽出部17bは、所定の閾値及び当該所定の閾値を越える範囲を上記の所定の範囲として、特異領域を抽出する。例えば、抽出部17bは、各ボリュームデータにおける運動情報のピーク値を探索する。本実施形態では、面積変化率が負の値となることから、抽出部17bは、各ボリュームデータにおいて、面積変化率のピーク値として最小値を探索する。そして、抽出部17bは、各ボリュームデータにおいて探索したピーク値に対して、所定の設定値(α、ただし、αは、0以上で1より小さい値)を乗算した値を所定の閾値として決定する。そして、抽出部17bは、運動情報生成部17aが生成した運動情報が所定の閾値以下となる範囲を上記の所定の範囲として、特異領域を抽出する。すなわち、抽出部17bは、第nフレームの運動情報のピーク値と「α」により第nフレームの閾値を決定する。
【0048】
なお、基準時相として左心室が最も収縮する心時相が選択された場合、面積変化率は、正の値となることから、抽出部17bは、各ボリュームデータにおいて、面積変化率のピーク値として最大値を探索する。そして、抽出部17bは、各ボリュームデータにおいて探索したピーク値に対して、「α」を乗算した値を所定の閾値として決定する。そして、抽出部17bは、所定の閾値以上となる範囲を上記の所定の範囲として、特異領域を抽出する。
【0049】
ところで、特異領域の抽出処理は、運動情報の値をそのまま用いて行なわれる場合であっても良いが、以下に説明する運動情報の規格化を行なった後に行なわれる場合であっても良い。すなわち、抽出部17bは、各ボリュームデータから特異領域を抽出する際に、処理対象となるボリュームデータが生成された心時相における代表値により運動情報を規格化した上で抽出処理を行なう。具体的には、抽出部17bは、予め設定された値を代表値として用いることで、運動情報を規格化する。
【0050】
例えば、抽出部17bは、処理対象となるボリュームデータが生成された心時相における代表値を局所的な面積変化率のピーク値とする。そして、抽出部17bは、ピーク値を「1」とし、ピーク値以外の面積変化率をピーク値で除算することで、規格化する。これにより、抽出部17bは、各ボリュームデータの規格化後の運動情報(1以下の指標値)において、「α」以上の値を有する領域を特異領域として抽出する。
【0051】
ところで、実心臓(左心室)では、「α」が「1」に近い値として設定された場合、規格化後の運動情報に基づいて特異領域として抽出される領域が、狭い領域に限局され、興奮伝播の様相が解りにくい。これは、壁運動指標値のピーク近傍の空間分布が尖っている(狭い領域に限局している)ことに起因する。
【0052】
従って、興奮伝播の様相を解りやすくするためには、「α」を「0」に近い値として設定し、規格化後の運動情報により特異領域として抽出される領域を増やして、特異領域を広範囲にする必要がある。しかし、特異領域を広範囲とすると、各心時相におけるボリュームデータの特異領域が重なることになる。
【0053】
従来では、特異領域を表示する場合、「時相更新型の表示方法」が行なわれていた。すなわち、時相更新型の表示方法では、例えば、第1ボリュームデータに含まれる左心室内膜面のサーフェスレンダリング画像に、第1ボリュームデータの特異領域を重畳した重畳画像を表示させ、第2ボリュームデータに含まれる左心室内膜面のサーフェスレンダリング画像に、第2ボリュームデータの特異領域を重畳した重畳画像を表示させていた。しかし、各心時相の特異領域が広範囲で重なり合ってしまう場合、従来の時相更新型の表示方法では、興奮伝播の様相が解りにくくなってしまっていた。
【0054】
図3は、従来の時相更新型の表示方法を説明するための図である。なお、図3は、規格化後の面積変化率を用いて「α=0.2」により特異領域を抽出した結果に対して、時相更新型の表示方法を適用した一例である。また、図3に示す「s,i,p,l」は、図2と同様に、アメリカ心エコー図学会などが推奨する16分画に対応する。
【0055】
図3では、第1フレーム〜第4フレームの重畳画像が、時相更新型の表示方法により表示されている。なお、図3では、特異領域が、当該特異領域の抽出元であるボリュームデータの心時相に対応付けられた色調にて表示されている。すなわち、図3に示す一例では、特異領域が当該特異領域の心時相に応じて、カラーコード化されている。図3に示す第1フレーム〜第4フレームの重畳画像を参照することで、操作者(例えば、医師)は、各心時相の特異領域を識別できる。しかし、操作者にとって、時相更新型の表示方法は、各心時相の特異領域が広範囲で重なり合うため、興奮伝播の様相を把握することが困難であった。
【0056】
そこで、第1の実施形態では、心臓における興奮伝播の様相を容易に判別させるため、以下に説明する画像生成部14の処理が行なわれる。
【0057】
すなわち、図1に示す画像生成部14は、処理対象となるボリュームデータから抽出部17bが抽出した特異領域を、当該処理対象となるボリュームデータ以前に生成されたボリュームデータから抽出部17bが抽出した特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する。更に、図1に示す画像生成部14は、各特異領域の抽出元であるボリュームデータが生成された心時相に応じて各特異領域に割り当てる色調を変化させたうえで、重畳画像を生成する。すなわち、画像生成部14は、時相保持型の重畳画像を生成する。そして、図1に示す制御部18は、画像生成部14が生成した重畳画像をモニタ2に表示するように制御する。
【0058】
図4は、第1の実施形態に係る画像生成部を説明するための図である。なお、図4は、図3と同様に、規格化後の面積変化率を用いて「α=0.2」により特異領域を抽出した結果に対して、第1の実施形態の実施形態に係る画像生成部14が生成した重畳画像である。また、図4に示す「s,i,p,l」は、図2と同様に、アメリカ心エコー図学会などが推奨する16分画に対応する。
【0059】
例えば、画像生成部14は、図4に示すように、第1フレームの心時相に対応する色調で着色した第1フレームの特異領域を第1フレームの左心室内膜面のサーフェスレンダリング画像に重畳した重畳画像を生成する。そして、画像生成部14は、第2フレームのボリュームデータを処理する場合、図4に示すように、第1フレームの特異領域と重複しない第2フレームの特異領域を、第2フレームの心時相に対応する色調で着色して、第2フレームの左心室内膜面のサーフェスレンダリング画像に重畳した重畳画像を生成する。
【0060】
また、画像生成部14は、第3フレームのボリュームデータを処理する場合、図4に示すように、第1フレーム及び第2フレームの特異領域と重複しない第3フレームの特異領域を、第3フレームの心時相に対応する色調で着色して、第3フレームの左心室内膜面のサーフェスレンダリング画像に重畳した重畳画像を生成する。また、画像生成部14は、第4フレームのボリュームデータを処理する場合、図4に示すように、第1フレーム〜第3フレームの特異領域と重複しない第4フレームの特異領域を、第4フレームの心時相に対応する色調で着色して、第4フレームの左心室内膜面のサーフェスレンダリング画像に重畳した重畳画像を生成する。
【0061】
このようにして画像生成部14により生成された時相保持型の重畳画像は、制御部18の制御により、モニタ2にて、並列表示、又は、動画表示される。
【0062】
すなわち、第1の実施形態は、時間的に一旦閾値を超えた部位は既に興奮したものと考え、その部位で最初に興奮した時相を「保持」した重畳画像を表示させるものである。また、第1の実施形態は、全領域から未だ標識(カラーコード化)されていない部位のうち、ある心時相で初めて相対的な閾値を超えた部位が時間と共に逐次追加されて標識(カラーコード化)されるものである。すなわち、第1の実施形態に係る表示方法は、「時相保持型の表示方法」である。
【0063】
かかる重畳画像を参照することで、操作者は、心時相の経過に応じて逐次追加された部位(図4に示した矢印の領域を参照)を明確に認識することができる。すなわち、図3(従来法)と比較すると、図4では、興奮伝播の様子が解りやすく描出されている。なお、図3及び図4に示す一例は、左脚ブロックを伴う拡張型心筋症である被検体Pにおける収縮開始時相での応答を示すものである。
【0064】
ところで、第1の実施形態は、以下に示す変形例により実行される場合であっても良い。以下、第1の実施形態に係る変形例1〜変形例5について順に説明する。
【0065】
まず、第1の変形例について説明する。第1の変形例は、抽出部17bの処理に関するものである。上記の一例では、抽出部17bが規格化に用いる代表値が、予め設定された値であり、かかる値が、各心時相の運動情報のピーク値である場合について説明した。すなわち、上記の一例では、代表値は、処理対象となるボリュームデータ群に応じて、変動する値である。しかし、予め設定される値は、心時相に対応付けられた固定値である場合であっても良い。
【0066】
例えば、操作者は、運動情報として面積変化率を用いる場合、健常例における各心時相での平均的な面積変化率の値をテーブルとして、内部記憶部16に格納しておく。かかるテーブルは、例えば、平均的な面積変化率の値を基準時相からの経過時間に対応付けたものである。一例を挙げると、かかるテーブルは、「70msec:−5%、120msec:−10%、140msec:−15%、180msec:−20%、200msec:−25%、・・・・・」といったテーブルである。抽出部17bは、かかるテーブルを参照して、「70msec」のボリュームデータを処理する場合、「−5%」を代表値として規格化処理を行なう。また、抽出部17bは、処理対象となるボリュームデータがテーブルに設定されていない心時相である場合、最寄りの時間値での所定値を補間することで代表値を決定する。例えば、「130msec」のボリュームデータを処理する場合、「120msec:−10%、140msec:−15%」を参照して、「−10%」と「−15%」との平均値である「−12.5%」を代表値として規格化処理を行なう。
【0067】
なお、操作者は、固定値を代表値として用いる場合、時間的に一定な値(例えば、−20%)を設定することも可能である。このように、固定値を代表値に用いる場合には、運動情報の種別に応じて個別の固定値を用意しておき、興奮伝播情報を求めるのに用いる運動情報の種別の選択に応じて切り換えて設定するのが好適である。なお、面積変化率や面積変化率の時間変化率以外の運動情報については、後に説明する。
【0068】
或いは、第1の変形例に係る抽出部17bは、各心時相における運動情報から推定された空間的な極値を代表値として用いることで、運動情報を規格化しても良い。すなわち、抽出部17bは、運動情報のピーク値を探索するのではなく、運動情報の統計的分析結果からピーク値を推定しても良い。アーティファクトなどの影響でスパイク状ノイズが運動情報の値に混入するような場合には、統計的推定により、ピーク値の推定を行なうことが有用である。
【0069】
例えば、抽出部17bは、処理対象となるボリュームデータから生成された運動情報の平均値(μ)と、標準偏差(sd)を算出する。そして、抽出部17bは、運動情報の値が負である場合には、「μ−k×sd」をピーク値として推定する。或いは、抽出部17bは、運動情報の値が正である場合には、「μ+k×sd」をピーク値として推定する。なお、「k」は「2〜3」の値であることが望ましい。このように、運動情報の統計的分析結果からピーク値を推定することは、ノイズの影響を排除するうえで有用である。
【0070】
更には、第1の変形例に係る抽出部17bは、ある心時相における各点の運動情報を規格化する処理を行なう代わりに、ある局所領域における運動情報を各心時相に亘って規格化する処理を、各局所領域について行なっても良い。かかる場合、抽出部17bは、所定の局所領域における運動情報の時系列区間内での極値(ピーク値)を、局所領域における代表値として用いることで、局所領域における運動情報を規格化する。具体的には、抽出部17bが運動情報の規格化を行なう際には、ある局所領域における運動情報の時間的変化を監視する。そして、抽出部17bは、空間的なピーク値の代わりに、局所領域での運動情報が1心周期(或いは、収縮期や拡張期)の所定の区間内で有する時間的なピーク値を、その局所領域での代表値として用いることで、運動情報を規格化する。このための局所領域としては、各点(定義されている最小の空間分割の単位)で代表値を与えても良いし、安定性を付帯させるために微少な領域における平均的なピーク値として代表値を与えても構わない。
【0071】
このようにすることで、対象とする運動情報の健常例における平均的な値が、生理的に部位間でばらついている場合においても、運動情報の規格化が意図通りに機能しやすくなる。
【0072】
ここで、運動情報の時間的変化を監視して時間的なピーク値を求める際には、対象となる局所領域の動きを追跡して、運動情報を監視する位置を更新しながらピーク値の算出を行うのが好適である。動きの情報は、運動情報生成部17aによるスペックルトラッキング処理により得られているので、所定の区間内で動きにより位置を追跡しながら定義された運動情報(これまでに説明した実施例での運動情報についても、このように位置を追跡しながら得られている)と同一の位置を用いれば良い。例えば、運動情報生成部17aは、超音波走査によって得られたデータに基づいて、局所領域の動きを追跡する。そして、抽出部17bは、局所領域における運動情報の時系列区間内での極値(ピーク値)を得る際に、追跡された局所領域の位置において得られた運動情報に基づいてピーク値を求める。なお、局所領域の動き追跡は、運動情報生成部17aではなく、追跡部として別途設置された処理部により行なわれる場合であっても良い。このような位置が追跡されたピーク値の探索は、例えば、後に説明する図5などで示すPolar-map書式を用いると、本書式が心臓の座標系で与えられていることから、同一の位置上での時間方向への運動情報の値を比較することで簡便に実現されることが理解されよう。
【0073】
上述してきた本実施形態に関わる特異領域の表示は、心臓の局所的な動きに対応して位置が追跡された出力が行われることが特徴である。そこで、本変形例のピーク値の探索においても、心臓の局所的な動きに対応して位置を追跡することで、より局所的な解析の精度が増すことが期待される。
【0074】
なお、時間的なピーク値を用いて運動情報の規格化を行なう際には、規格化後に有効な特異領域のみを検出するために、所定の下限閾値のレベルを設定するのが好適である。この下限閾値は、ノイズや殆ど変形しない組織(心筋梗塞による瘢痕であるscarなど)が誤検出されるのを防ぐのに有効である。
【0075】
この下限閾値としては、グローバルな時間的ピーク値に対して、数%程度となる値を用いることが好適である。グローバルな時間的ピーク値は、例えば、各点でのピーク値を全領域で平均して求める。或いは、下限閾値として、予め運動情報毎に定められた値を設定しても良い。
【0076】
続いて、第2の変形例について説明する。第2の変形例は、画像生成部14の処理に関するものである。図4に示す一例では、サーフェスレンダリング画像に特異領域を「時相保持型の表示方法」により重畳させていた。図5及び図6は、第1の実施形態に係る第2の変形例を説明するための図である。
【0077】
これに対し、第2の変形例では、画像生成部14は、Polar-map像に対して、特異領域を「時相保持型の表示方法」により重畳させた重畳画像を生成する。図5に示す一例では、アメリカ心エコー図学会などが推奨する16分画のPolar-map像に対して、健常者である被検体Pの拡張後期(Late-diastole)までの特異領域が「時相保持型の表示方法」により重畳されている。また、図6に示す一例では、16分画のPolar-map像に対して、左脚ブロック症例の被検体Pの拡張後期までの特異領域が「時相保持型の表示方法」により重畳されている。なお、図5及び図6に示す「ant-sept」は、前壁中隔であり、「ant」は、前壁であり、「lat」は、側壁であり、「post」は、後壁であり、「inf」は、下壁であり、「sept」は、中隔である。
【0078】
また、第2の変形例において、画像生成部14は、時相保持型の重畳画像とともに、心電波形と、16分画ごとの平均運動情報(平均面積変化率)の時間変化曲線のグラフとを合成しても良い。図5及び図6では、16分画それぞれの平均面積変化率の時間変化曲線を実線で示している。ただし、実際には、画像生成部14は、各平均運動情報の時間変化曲線がどの分画に対応するものであるか判別可能なように、16分画それぞれの平均運動情報の時間変化曲線を分画ごとに割り当てられた色調で着色している。
【0079】
また、図5及び図6では、平均面積変化率の時間変化曲線とともに、心筋の体積の変化率の時間変化曲線をそれぞれ点線a及び点線cで示している。また、図5及び図6では、心内腔の体積の時間変化曲線をそれぞれ点線b及び点線dで示している。すなわち、運動情報生成部17aは、左心室の心筋の内膜面とともに左心室の心筋の外膜面に追跡点を設定することで、心内腔の体積とともに、心筋の外膜内部の体積とを算出することができる。そして、運動情報生成部17aは、心筋の外膜内部の体積から心内腔の体積を差し引くことで、各時相の心筋の体積を算出し、心筋の体積の変化率を算出する。画像生成部14は、これらの情報を運動情報生成部17aから取得することで、図5及び図6に示す時間変化曲線のグラフを生成することができる。ここで、心内腔の体積情報は、駆出率や左室の大きさといった情報として臨床上重要な意味を持つ。一方で、心筋体積から推定可能な心筋重量(あるいは心筋重量を体表面積で規格化する場合もある)についても、例えば、心筋症や肥大心の重症度を判断する指標として用いられている。従って、局所的な壁運動異常を反映する分画毎の壁運動指標値と同時に、これらの体積情報を観察・評価可能であることの意義は、後述する心臓再同期療法の効果判定への適用を一例に、非常に大きいといえる。
【0080】
図5に示す重畳画像を参照することで、操作者は、健常例において、心尖部から円周方向に一様な興奮が弁輪部へと伝播する様相を一目で把握することができる。一方で、図6に示す重畳画像を参照することで、操作者は、左脚ブロック症例において、円周方向の均一性が途絶えた異常な興奮伝播となる様相を一目で把握することができる。すなわち、図6に示す重畳画像を参照することで、操作者は、左脚ブロック症例において、心尖部から前壁に抜けて側壁に回り込む興奮伝播の経路と、心尖部から後壁に抜ける興奮伝播の経路があり、中隔部位が全体的に遅れて興奮する様相を一目で把握することができる。また、図6に示す重畳画像を参照することで、操作者は、左脚ブロック症例にて中隔から前壁中隔について良く見られる所見である、異常な早期興奮(septal-flash)の様相を一目で把握することができる。
【0081】
現在、心臓の電気刺激伝播の観察は、観血的で侵襲性の高い診断法であるカテーテル挿入による電気生理マッピング装置によって行われている。一方、図5及び図6に示す重畳画像に描出される左心室の運動情報は、機械的興奮伝播の様相を示すものであるが、心電波形として観察される電気刺激の伝播に対応していると考えられる。従って、「時相保持型の表示方法」を用いることで、刺激伝導系異常の診断で用いられている電気生理マッピング装置で得ているのと似た診断情報が、非観血的かつ簡便に得られる可能性があることが示唆される。
【0082】
続いて、第3の変形例について説明する。第3の変形例も、画像生成部14の処理に関するものである。第3の変形例においては、画像生成部14は、特異領域を時相保持型で重畳させる画像としてMPR画像を用いる。図7は、第1の実施形態に係る第3の変形例を説明するための図である。
【0083】
例えば、画像生成部14は、ボリュームデータから、短軸断面や、長軸断面の複数のMPR画像を生成する。図7に示す一例では、画像生成部14は、領域Aにおいて、心尖部四腔像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した合成画像を生成している。また、図7に示す一例では、画像生成部14は、領域Bにおいて、心尖部二腔像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した合成画像を生成している。
【0084】
また、図7に示す一例では、画像生成部14は、領域C3において、心尖部に近い短軸断面画像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した合成画像を生成している。また、図7に示す一例では、画像生成部14は、領域C5において、心尖部に近い短軸断面画像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した合成画像を生成している。また、図7に示す一例では、画像生成部14は、領域C7において、心尖部と心基部との中間に位置する短軸断面画像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した合成画像を生成している。また、図7に示す一例では、画像生成部14は、領域C7において、心基部に近い短軸断面画像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した合成画像を生成している。
【0085】
なお、図7に示す一例では、カラーバー及び心電波形とともに、各種の運動情報の値がテーブルとして表示されている。図7に示すEDVは、拡張末期(ED: end diastole)時相での心内腔の体積である。図7に示す一例では、EDVが「156.01mL」であり、拡張末期(基準時相)の時間が「0msec」であることが示されている。また、図7に示すESVは、収縮末期(ES:end systole)時相での心内腔の体積である。図7に示す一例では、ESVが「109.20mL」であり、収縮末期の時間が「422msec」であることが示されている。
【0086】
また、図7に示すEFは、EDV及びESVから定義される駆出率である。図7に示す一例では、EFが「30.01%」であることが示されている。また、図7に示す「1.50×MV」は、心筋の体積(MV)に平均的な心筋密度値である「1.05g/mL」を乗算することで求められる「心筋重量(g)」である。図7に示す一例では、「1.50×MV」が「140.66g」であることが示されている。また、図7に示す一例では、「140.66g」が左心室の心筋の体積から推定されたものであることを表す「est.LV MASS」が示されている。
【0087】
続いて、第4の変形例について説明する。第4の変形例は、特異領域に関する情報の出力形態に関するものである。第4の変形例においては、制御部18は、特異領域として抽出された心時相に関する時間の情報を出力するように制御する。一例を挙げると、第4の変形例においては、制御部18の制御により、画像生成部14は、各特異領域の抽出元であるボリュームデータが生成された心時相に関する文字情報を各特異領域に重畳させたうえで、重畳画像を生成する。図8は、第1の実施形態に係る第4の変形例を説明するための図である。
【0088】
図4〜図7では、特異領域が抽出された心時相の情報をカラーコード化していた。これに対し、第4の変形例では、特異領域が抽出された心時相の情報を時間値(単位:msec)として、更に、特異領域に重畳させる。図8に示す一例では、16分画のPolar-map像に対して、特異領域を時相保持型で重畳させ、更に、心時相に関する文字情報(時間値)を重畳させた重畳画像を示している。なお、第4の変形例においては、制御部18は、特異領域として抽出された心時相に関する時間の情報をテキスト形式で出力するように制御しても良い。例えば、特異領域として抽出された心時相に関する時間の情報は、例えば、画像メモリ15にテキストファイルとして出力される場合や、印刷出力される場合であっても良い。また、特異領域として抽出された心時相に関する時間の情報は、テキスト形式の情報からテーブルやリストに変換されたうえで、モニタ2に表示されたり、画像メモリ15に出力されたり、印刷出力されたりする場合であっても良い。
【0089】
続いて、第5の変形例について説明する。第5の変形例は、特異領域を時相保持型で重畳させた重畳画像の表示形態に関するものである。時相保持型の表示方法は、治療効果を診断する上でも有効である。近年、重度心不全患者に対して両心室ペーシング(biventricular pacing)を行なう心臓再同期療法(CRT:Cardiac Resynchronization Therapy)が注目されている。CRTは、重度心不全患者に合併することが多い心壁運動の収縮同期不全(dyssynchrony)を改善可能な治療である。そこで、CRTの前後で時相保持型の重畳画像を並列表示することで、医師は、CRTの効果を診断することができる。
【0090】
図9−1及び図9−2は、第1の実施形態に係る第5の変形例を説明するための図である。なお、図9−1及び図9−2では、図5及び図6を用いて説明したように、Polar-map像に対して特異領域を「時相保持型の表示方法」により重畳させた重畳画像と、各分画の運動情報の変化曲線とが表示されている。また、モニタ2は、図9−1及び図9−2に示す画像を並列表示しているとする。ここで、図9−1に示す重畳画像は、CRT前(Pre−CRT)に生成されたボリュームデータ群から生成された重畳画像である。また、図9−2に示す重畳画像は、CRT後(Post−CRT)に生成されたボリュームデータ群から生成された重畳画像である。
【0091】
図9−1の重畳画像を参照することで、操作者は、「spetal-flash」が発生していることを観察できる。更に、図9−1の重畳画像を参照することで、操作者は、主に前壁中隔と前壁側で収縮の遅れが発生していることを観察できる。一方、図9−2の重畳画像を参照することで、操作者は、「spetal-flash」が消失していることを観察できる。更に、図9−2の重畳画像を参照することで、操作者は、主に前壁中隔と前壁側に見られていた収縮の遅れが改善している様子を観察できる。すなわち、治療前後で時相保持型の重畳画像を並列表示することで、医師は、CRTなどの治療効果を確認することができる。
【0092】
次に、図10を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図10は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、ボリュームデータ群が画像メモリ15に格納された後の処理について説明する。
【0093】
図10に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、操作者から入力装置3を介して、ボリュームデータ群に対する画像処理要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、画像処理要求を受け付けない場合(ステップS101否定)、超音波診断装置は、待機状態となる。
【0094】
一方、画像処理要求を受け付けた場合(ステップS101肯定)、運動情報生成部17aは、各ボリュームデータの運動情報を生成し(ステップS102)、抽出部17bは、各ボリュームデータの特異領域を抽出する(ステップS103)。
【0095】
そして、画像生成部14は、特異領域を時相保持型で重畳させた重畳画像を、心時相ごとに生成し(ステップS104)、制御部18は、心時相ごとの重畳画像をモニタ2にて表示するように制御し(ステップS105)、処理を終了する。なお、心時相ごとの重畳画像は、並列表示される場合であっても、動画表示される場合であっても良い。
【0096】
上述してきたように、第1の実施形態では、運動情報生成部17aは、被検体Pの心臓を超音波で3次元走査することで生成された時系列に沿ったボリュームデータ群それぞれから、心壁の運動に関する運動情報を生成する。具体的には、運動情報生成部17aは、ボリュームデータ間のパターンマッチングにより、運動情報を生成する。
【0097】
抽出部17bは、運動情報生成部17aが生成した運動情報が所定の範囲となる特異領域を各ボリュームデータから抽出する。第1の実施形態では、抽出部17bは、所定の閾値及び当該所定の閾値を越える範囲を所定の範囲として、特異領域を抽出する。
【0098】
画像生成部14は、処理対象となるボリュームデータから抽出部17bが抽出した特異領域を、当該処理対象となるボリュームデータ以前に生成されたボリュームデータから抽出部17bが抽出した特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する。ここで、画像生成部14は、各特異領域の抽出元であるボリュームデータが生成された心時相に応じて各特異領域に割り当てる色調を変化させたうえで、重畳画像を生成する。そして、制御部18は、画像生成部14が生成した重畳画像を表示するように制御する。
【0099】
すなわち、第1の実施形態では、時相保持型の表示方法を行なうことで、異常な興奮伝播の有無や、異常な興奮伝播が生じている部位を、従来の時相更新型の表示方法と比較して、判りやすく表現することができる。すなわち、操作者は、3次元的に解析された運動情報の3次元的な伝播の様相を把握して解析することができる。例えば、第1の実施形態では、上述したように、健常例では心尖部から円周方向に一様な興奮が弁輪部へと伝播するのに対し、不整脈等で異常な興奮伝導が有る症例では円周方向の均一性が途絶えた興奮伝播となる様相を一目で把握可能な画像を表示することができる。従って、第1の実施形態では、心臓における興奮伝播の様相を容易に判別させることが可能となる。
【0100】
また、第1の実施形態では、運動情報生成部17aは、運動情報として、心臓組織の局所的な面積の変化率又は局所的な面積の変化率の時間変化率の少なくとも一つを生成する。面積の変化率は、円周方向の伸縮と長軸方向の伸縮との双方の情報を有する運動情報である。従って、面積の変化率や面積の変化率の時間変化率を運動情報として用いることは、心臓における興奮伝播の様相を診断する上で、有用な指標となる。
【0101】
また、第1の実施形態では、規格化した運動情報を用いて特異領域を抽出しても良い。すなわち、抽出部17bは、各ボリュームデータから特異領域を抽出する際に、処理対象となるボリュームデータが生成された心時相における代表値により運動情報を規格化した上で抽出処理を行なう。具体的には、抽出部17bは、予め設定された値を代表値として用いることで、運動情報を規格化する。或いは、抽出部17bは、各心時相における運動情報から推定された空間的な極値を代表値として用いることで、運動情報を規格化する。
【0102】
規格化を行なうことで、各心時相のボリュームデータからの特異領域抽出処理を簡易にすることができる。また、代表値を統計学的に推定したピーク値とすることで、実際には興奮伝播が行なわれていない部位の運動情報が、アーティファクトなどの影響でスパイク状ノイズが運動情報の値に混入することでピーク値として採用されることを回避できる。
【0103】
また、第1の実施形態では、制御部18は、特異領域として抽出された心時相に関する時間の情報を出力するように制御する。第1の実施形態によれば、更に、左心室全体から特異領域として検出された局所的な個々の位置上での時間値(ボリュームデータが得られた心時相に関する時間情報)を定義することが可能である。そこで、第1の実施形態では、この時間情報をテキストファイル形式で出力したり、或いは、画像生成部14を介して画像上に表示したりしても良い。例えば、上記の場合では、特異領域をカラーコード化して表示したうえで、特異領域として検出された時間値の各分画における平均値を文字情報として各特異領域に重畳させて表示している。これにより、操作者は、興奮伝播が、どの程度の時間間隔で進行しているのかを数値により定量的に把握することができる。
【0104】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、時相保持型の重畳画像を用いて興奮伝播の指標値が算出される場合について、図11を用いて説明する。図11は、第2の実施形態を説明するための図である。
【0105】
時相保持型の重畳画像では、全領域から未だ標識されていない部位のうち、ある時相で始めて相対的な閾値を超えた部位が時間と共に逐次追加されて標識される。すなわち、時相更新型の重畳画像と比較すると、時相保持型の重畳画像では、興奮伝播の時相が細かな領域に分割されている。従って、ある時相で標識された特異部位の周辺に次の時相で新たな特異領域が出現した場合、次の時相で新たに出現した特異領域の方向へ興奮が伝播したものと考えることができる。すなわち、ある時相での特異領域の境界位置を検出し、次の時相での特異領域の境界位置と近接している部分については、近接している境界線間の法線ベクトルを求めることで、この部分に関する興奮伝播の方向が推定可能となる。
【0106】
そこで、第2の実施形態では、抽出部17bは、更に、連続する心時相における特異領域間の境界位置の時間的な変化に関する時間的変化情報を算出する。抽出部17bは、各ボリュームデータにおける特異領域の位置情報を取得することができる。そこで、抽出部17bは、図11の(A)に示すように、前の心時相の特異領域の境界位置L0周辺に、現時相での新たな特異領域の境界位置L1が出現した場合、L0上の点P0を始点とする法線を生成し、生成した法線と境界位置L1との交点である点P1を特定する。すなわち、抽出部17bは、点P0を始点とし、点P1を終点とする「法線ベクトルP0P1」を、境界位置の時間的な変化に関する時間的変化情報として算出する。かかる法線ベクトルの大きさは、興奮伝播の速度ベクトルの大きさとみなすことができる。興奮伝播速度ベクトルの大きさとしては、法線ベクトルP0P1の大きさを2で割った値として推定するのが好適である。
【0107】
そして、第2の実施形態に係る制御部18は、時間的変化情報を出力するように制御する。例えば、第2の実施形態に係る画像生成部14は、制御部18の制御により、更に、抽出部17bが算出した時間的変化情報を特異領域に重畳させた上で、重畳画像を生成する。例えば、画像生成部14は、図11の(B)に示すように、第2フレームのPolar-map像に重畳された特異領域の境界位置に、抽出部17bが算出した法線ベクトルを示す矢印を重畳させる。ここで、矢印の長さは、法線ベクトルの大きさの二分の一の大きさとする。また、画像生成部14は、図11の(B)に示すように、第3フレームについても同様の処理を行なう。そして、制御部18は、図11の(B)に示す重畳画像をモニタ2に表示させる。
【0108】
なお、第2の実施形態は、抽出部17bが、更に、時間的変化情報(法線ベクトル、興奮伝播速度ベクトル)に基づく興奮伝播速度の情報を算出しても良い。すなわち、抽出部17bは、上記の興奮伝播速度ベクトルをフレーム間の時間間隔で割ることで、興奮伝播速度値(単位:cm/sec)の値を算出することも可能である。抽出部17bが算出した興奮伝播速度の情報は、制御部18の制御により出力される。具体的には、画像生成部14は、制御部18の制御により、更に、抽出部17bが算出した興奮伝播速度の情報を特異領域に重畳させた上で、重畳画像を生成し、モニタ2は、重畳画像を表示する。なお、第2の実施形態は、時間的変化情報及び興奮伝播速度の情報の双方が出力される場合であっても、時間的変化情報及び興奮伝播速度の情報のいずれか一方のみが出力される場合であっても良い。また、時間的変化情報及び興奮伝播速度の出力形態は、上述したように、重畳画像として表示される場合に限定されるものではない。例えば、時間的変化情報(興奮伝播速度ベクトル)及び興奮伝播速度は、時間変化のグラフ(時間変化曲線)として表示される場合や、数値のテキストファイルとして出力される場合であっても良い。
【0109】
上述してきたように、第2の実施形態では、抽出部17bは、更に、連続する心時相における特異領域間の境界位置の時間的な変化に関する時間的変化情報を算出し、当該算出した時間的変化情報を用いて興奮伝播速度の情報を演算する。そして、制御部18は、時間的変化情報又は興奮伝播速度の情報の少なくとも一方を出力するように制御する。例えば、制御部18により、画像生成部14は、更に、抽出部17bが算出した時間的変化情報を特異領域に重畳させた上で、重畳画像を生成する。第2の実施形態では、興奮伝播速度に関する具体的な情報を提供することができる。従って、第2の実施形態では、心臓における興奮伝播の様相を更に容易に判別させることが可能となる。更に、抽出部17bにより得られた特異領域の境界位置の時間的な変化の情報である、時間的変化情報(興奮伝播速度ベクトル)及び興奮伝播速度は、時間変化曲線として表示される場合や、数値のテキストファイルとして出力される場合であっても良い。かかる出力形態によっても、心臓における興奮伝播の様相を更に容易に判別させることが可能となる。
【0110】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、時相保持型の重畳画像に用いられる特異領域の抽出方法の変形例について図12及び図13を用いて説明する。なお、図12及び図13は、第3の実施形態を説明するための図である。
【0111】
第1の実施形態では、抽出部17bは、例えば、各心時相のピーク値で規格化された指標値を求めて、指標値が閾値(α)以上となる領域を特異領域として抽出した。第3の実施形態では、第1の実施形態の特異領域の抽出方法を第1の抽出方法とすると、以下に説明する第2の抽出方法、或いは、第3の抽出方法が抽出部17bにより実行される。
【0112】
まず、第2の抽出方法について説明する。第2の抽出方法を実行する場合、抽出部17bは、所定の複数段階の区間値から設定される複数の範囲を所定の範囲として、特異領域を抽出する。すなわち、第2の抽出方法は、運動情報が複数の所定の値の範囲にある部位を特異領域として抽出するものである。例えば、抽出部17bは、各心時相のピーク値で運動情報を規格化した指標値を、4つのレベルでクラス分けする。すなわち、第1の実施形態で説明したように、ピーク値で規格化した運動情報(指標値)は、「1.0」以下の値となる。
【0113】
そこで、抽出部17bは、例えば、所定の複数段階を「4」として、指標値を4つのレベルに分ける。すなわち、抽出部17bは、指標値を「0.0〜0.25」、「0.25〜0.5」、「0.5〜0.75」及び「0.75〜1.0」の4段階の区間値に区分けする。そして、抽出部17bは、予め設定された値「δ」により、複数の範囲を設定する。すなわち、抽出部17bは、区間値間の境界レベルとなる「0.25」に対して、図12に示すように、「(0.25−δ)〜(0.25+δ)」の第1範囲を設定する。また、抽出部17bは、区間値間の境界レベルとなる「0.5」に対して、図12に示すように、「(0.5−δ)〜(0.5+δ)」の第2範囲を設定する。また、抽出部17bは、区間値間の境界レベルとなる「0.75」に対して、図12に示すように、「(0.75−δ)〜(0.75+δ)」の第3範囲を設定する。なお、抽出部17bは、境界レベルとなる「1.0」に対しては、図12に示すように、「(1.0−δ)〜1.0」の第4範囲を設定する。
【0114】
そして、抽出部17bは、第1範囲〜第4範囲に該当する領域を特異領域として抽出する。換言すると、第2の抽出方法は、運動情報を規格化した指標値から、等高線に相当する複数の領域を特異領域として抽出する。第2の抽出方法で抽出された特異領域は、第1の実施形態と同様に、サーフェスレンダリング画像、Polar-map像、MRP画像において、時相保持型で重畳されたうえで、モニタ2に表示される。
【0115】
なお、第2の抽出方法においても、抽出部17bは、第1の実施形態の第1の変形例として説明したように、複数の固定値や、1つの固定値を代表値として規格化処理を行なうことができる。また、第2の抽出方法においても、抽出部17bは、第1の実施形態の第1の変形例として説明したように、統計学的に推定されたピーク値を代表値として規格化処理を行なうことができる。
【0116】
次に、第3の抽出方法について説明する。興奮伝播の最前線位置では、運動情報の値に局所的なピークの分布が山ないし谷の稜線として出現すると考えられる。すなわち、興奮伝播の様相は、水滴を落とすことで水面に広がる波紋としてイメージすることができる。このような局所的なピークの分布は、運動情報「f」の空間的な全微分「df」がゼロに近い領域として抽出することが可能である。そこで、第3の抽出方法を実行する場合、抽出部17bは、運動情報が空間的に極値となる値を含む範囲を所定の範囲として、特異領域を抽出する。
【0117】
具体的には、抽出部17bは、「ε」をゼロに近い値(例えば、0.01など)として、図13に示すように、|df| < ε となる領域を特異領域として検出する。「ε」の設定により、山や谷の稜線に相当する特異領域の幅を制御することができる。「ε」として相対的に大きな値を用いると幅が拡がり、特異領域は、線状の分布になる。一方、「ε」を小さく設定すると、特異領域は、極大(ないし極小)値を得る点状の分布となる。第3の抽出方法で抽出された特異領域は、第1の実施形態と同様に、サーフェスレンダリング画像、Polar-map像、MRP画像において、時相保持型で重畳されたうえで、モニタ2に表示される。
【0118】
上述してきたように、第3の実施形態では、抽出部17bは、第2の抽出方法として、所定の複数段階の区間値から設定される複数の範囲を所定の範囲として、特異領域を抽出する。第2の抽出方法を行なうことで、ボリュームデータの時間分解能が不足していて識別が困難な同一時相における興奮領域を、レベルの隙間を用いて標識しないことにより把握することができる。生体から得られる運動情報には空間的な連続性が期待されるので、「相対的に値が大きい部位は値が小さい部位よりも速く興奮した」と考えることができるのであれば、第2の抽出方法により、上記の効果を達成できる。
【0119】
或いは、第3の実施形態では、抽出部17bは、第3の抽出方法として、抽出部17bは、運動情報が空間的に極値となる値を含む範囲を所定の範囲として、特異領域を抽出する。第3の抽出方法を行なうことで、興奮伝播の最前線位置を容易に把握させることができる。
【0120】
なお、上述した第1〜第3の実施形態では、運動情報として左心室の運動情報が生成される場合について説明した。しかし、運動情報は、左心室に限定されるものではなく、左心房、右心室、右心房の運動情報であっても良い。また、上述した第1〜第3の実施形態では、運動情報生成部17aが、運動情報として、局所的な面積変化率や、局所的な面積変化率の時間変化率を生成する場合に説明した。しかし、運動情報生成部17aが生成する運動情報は、以下のものであっても良い。すなわち、運動情報生成部17aは、運動情報として、心臓組織の局所的な歪み(strain)、当該心臓組織の局所的な歪みの時間変化率である歪み率を生成しても良い。また、運動情報生成部17aは、運動情報として、心臓組織の局所的な回転(rotation)、当該心臓組織の局所的な回転の時間変化率である回転率を生成しても良い。また、運動情報生成部17aは、運動情報として、心臓組織の局所的な捻れ(twist)、当該心臓組織の局所的な捻れの時間変化率である捻れ率を生成しても良い。また、運動情報生成部17aが、運動情報として、心臓組織の局所的な変位(displacement)、又は、当該心臓組織の局所的な変位の時間変化率である速度を生成しても良い。
【0121】
運動情報生成部17aは、上記の運動情報から選択された少なくとも一つの運動情報を生成することができる。また、抽出部17bは、複数の運動情報が生成された場合、個々の運動情報ごとに特異領域を抽出し、画像生成部14は、個々の運動情報ごとに、時相保持型の重畳画像を生成する。そして、モニタ2は、運動情報ごとの重畳画像を表示する。
【0122】
また、上述した第1〜第3の実施形態では、超音波診断装置においてボリュームデータ群に対する処理が行なわれる場合について説明した。しかし、超音波診断装置とは独立に設置された画像処理装置により、上述したボリュームデータ群に対する処理が行なわれる場合であってもよい。具体的には、図1に示すボリュームデータ処理部17、画像生成部14及び制御部18の表示制御機能を有する画像処理装置が、超音波診断装置、又は、PACSのデータベースや、電子カルテシステムのデータベースから受信したボリュームデータ群を受信して上述した画像処理を行なう場合であってもよい。
【0123】
また、上述した第1〜第3の実施形態と上記の画像処理装置とでは、ボリュームデータ群に対する処理が行なわれる場合について説明した。しかし、上述した一連の画像処理は、このボリュームデータを用いる代わりに、位置の異なる複数の2次元断面のデータを合成することで3次元的な運動情報の分布情報を得ることで行なわれる場合であっても良い。
【0124】
かかる場合、運動情報生成部17aは、被検体の心臓の対象領域のうち、複数の2次元領域を含むように走査をすることで生成された時系列に沿った複数の断面データ群を用いて、心壁の運動に関する運動情報の対象領域における3次元的な分布を生成する。そして、抽出部17bは、運動情報生成部17aが生成した運動情報が所定の範囲となる特異領域を対象領域に分布した運動情報から抽出する。そして、画像生成部14は、処理対象となる複数の各断面データに基づいて抽出部17bが抽出した特異領域を、当該処理対象となる複数の各断面データ以前に生成された複数の各断面データに基づいて抽出部17bが抽出した特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する。そして、制御部18は、重畳画像を表示するように制御する。なお、抽出部17bは、複数の断面データから特異領域を抽出する際に、処理対象となる複数の断面データが生成された心時相における代表値により運動情報を規格化した上で抽出処理を行なう。また、画像生成部14は、各特異領域の抽出元である複数の断面データが生成された心時相に応じて各特異領域に割り当てる色調を変化させたうえで、重畳画像を生成する。
【0125】
具体的には、運動情報生成部17aは、A4C像(心尖部四腔像)、A2C像(心尖部二腔像)及びA3C像(心尖部三腔像)の各々の1心拍の動画像について、2次元画像データ間のパターンマッチングにより、運動情報を生成する。そして、運動情報生成部17aは、運動情報に対して左心室の円周方向に空間的な補間処理を行うことで3次元的な運動情報の時空間分布情報を得る。これにより、特異領域の抽出と、特異領域の時相保持型の重畳画像の生成と、重畳画像の表示とを行なうのが好適な例である。
【0126】
なお、この場合、図1で示した「ボリュームデータ処理部17」は「複数の2次元画像データ処理部17’」として置き換え、図10で示した「ボリュームデータ」の記述は「複数の2次元画像データ」に置き換えることで、本質的に同等な作用が提供可能なことは容易に理解されよう。
【0127】
但し、本形態の場合には、複数の画像データを収集する必要があるために、同一心拍での3次元的な情報は得られない。また、空間的にも3断面程度の限定された領域しか実データが得られないために、隙間のデータは補間して推定することから、ボリュームデータが得られている場合に比較して空間分解能が低下する。更には、断面に垂直な方向への動きは検出が出来ないために、得られる運動情報は本来心臓が有する3次元的な動きの射影成分が観察されていることになる。
【0128】
その一方で、2次元走査の場合には、ボリュームデータを収集する際の3次元走査の場合に比べてフレームレートを高く保つことが可能なため、本形態で得られる運動情報ならびに特異領域の情報に関する時間分解能は高くなるという利点を有する。
【0129】
また、3次元走査が可能な超音波診断装置は、超音波プローブ1として2次元アレイプローブが必要になる。一方で本形態の場合には超音波プローブ1として一般的な1次元アレイのプローブの適用が可能なため、超音波診断装置をより簡便に構成することができる。
【0130】
或いは、上述した一連の画像処理は、2次元走査による画像を上述の変形例のように複数用いることをせずに、ある断面1つのみを用いて行なわれる場合であっても良い。
【0131】
かかる場合、運動情報生成部17aは、被検体の心臓を超音波で2次元走査することで生成された時系列に沿った断面データ群を用いて、心壁の運動に関する運動情報の、前記2次元走査領域における2次元的な分布を生成する。そして、抽出部17bは、運動情報生成部17aが生成した運動情報が所定の範囲となる特異領域を断面データから抽出する。そして、画像生成部14は、処理対象となる断面データから抽出部17bが抽出した特異領域を、当該処理対象となる断面データ以前に生成された断面データから抽出部17bが抽出した特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する。そして、制御部18は、重畳画像を表示するように制御する。なお、抽出部17bは、1つの断面データから特異領域を抽出する際に、処理対象となる1つの断面データが生成された心時相における代表値により運動情報を規格化した上で抽出処理を行なう。また、画像生成部14は、各特異領域の抽出元である1つの断面データが生成された心時相に応じて各特異領域に割り当てる色調を変化させたうえで、重畳画像を生成する。
【0132】
この場合は、図1で示した「ボリュームデータ処理部17」は「2次元画像データ処理部17’’」として置き換え、図10で示した「ボリュームデータ」の記述は「2次元画像データ」に置き換えることで、本質的に同等な作用が提供される。但し、出力画像の表示形態は、これまで述べてきた3次元的なものではなく、2次元画像に対して色付けを行った2次元的な表現に限定される。例えば、図7の領域Aに示したような心尖部四腔像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した2次元画像データが出力画像として表示される。
【0133】
従って、この形態では、出力における本画像処理に関わる特異領域の分布(機械的興奮伝播の情報に相当する)の把握について、走査が行われた心臓中の2次元の特定領域に限定されることになる。しかしながら、対象とした2次元領域内での機械的興奮伝播の情報について、元となる2次元画像が高い時空間分解能を有しているために、相対的に高い時空間分解能で把握可能となる利点を有する。
【0134】
なお、本実施形態で説明した画像処理方法は、あらかじめ用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像処理プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、この画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0135】
以上、説明したとおり、第1〜第3の実施形態によれば、心臓における興奮伝播の様相を容易に判別させることが可能となる。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0137】
1 超音波プローブ
2 モニタ
3 入力装置
4 心電計
10 装置本体
11 送受信部
12 Bモード処理部
13 ドプラ処理部
14 画像生成部
15 画像メモリ
16 内部記憶部
17 ボリュームデータ処理部
17a 運動情報生成部
17b 抽出部
18 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の心臓を超音波で3次元走査することで生成された時系列に沿ったボリュームデータ群それぞれから、心壁の運動に関する運動情報を生成する運動情報生成部と、
前記運動情報生成部が生成した前記運動情報が所定の範囲となる特異領域を各ボリュームデータから抽出する抽出部と、
処理対象となるボリュームデータから前記抽出部が抽出した前記特異領域を、当該処理対象となるボリュームデータ以前に生成されたボリュームデータから前記抽出部が抽出した前記特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成した前記重畳画像を表示するように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
被検体の心臓の対象領域のうち、複数の2次元領域を含むように走査をすることで生成された時系列に沿った複数の断面データ群を用いて、心壁の運動に関する運動情報の前記対象領域における3次元的な分布を生成する運動情報生成部と、
前記運動情報生成部が生成した前記運動情報が所定の範囲となる特異領域を前記対象領域に分布した運動情報から抽出する抽出部と、
処理対象となる複数の各断面データに基づいて前記抽出部が抽出した前記特異領域を、当該処理対象となる複数の各断面データ以前に生成された複数の各断面データに基づいて前記抽出部が抽出した前記特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成した前記重畳画像を表示するように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
被検体の心臓を超音波で2次元走査することで生成された時系列に沿った断面データ群を用いて、心壁の運動に関する運動情報の、前記2次元走査領域における2次元的な分布を生成する運動情報生成部と、
前記運動情報生成部が生成した前記運動情報が所定の範囲となる特異領域を断面データから抽出する抽出部と、
処理対象となる断面データから前記抽出部が抽出した前記特異領域を、当該処理対象となる断面データ以前に生成された断面データから前記抽出部が抽出した前記特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成した前記重畳画像を表示するように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
前記抽出部は、所定の閾値及び当該所定の閾値を越える範囲を前記所定の範囲として、前記特異領域を抽出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記抽出部は、所定の複数段階の区間値から設定される複数の範囲を前記所定の範囲として、前記特異領域を抽出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記抽出部は、前記運動情報が空間的に極値となる値を含む範囲を前記所定の範囲として、前記特異領域を抽出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記抽出部は、各ボリュームデータもしくは少なくとも一つ以上の断面データから前記特異領域を抽出する際に、処理対象となるボリュームデータもしくは少なくとも一つ以上の断面データが生成された心時相における代表値により前記運動情報を規格化した上で抽出処理を行なうことを特徴とする請求項4又は5に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記抽出部は、予め設定された値を前記代表値として用いることで、前記運動情報を規格化することを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記抽出部は、各心時相における前記運動情報から推定された空間的な極値を前記代表値として用いることで、前記運動情報を規格化することを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記抽出部は、所定の局所領域における前記運動情報の時系列区間内での極値を、前記局所領域における前記代表値として用いることで、前記局所領域における前記運動情報を規格化することを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記走査によって得られたデータに基づいて、前記局所領域の動きを追跡する追跡部、
を更に備え、
前記抽出部は、前記局所領域における前記運動情報の時系列区間内での極値を得る際に、前記追跡部により追跡された局所領域の位置において得られた前記運動情報に基づいて前記極値を求めることを特徴とする請求項10に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記画像生成部は、各特異領域の抽出元であるボリュームデータもしくは少なくとも一つ以上の断面データが生成された心時相に応じて各特異領域に割り当てる色調を変化させたうえで、前記重畳画像を生成することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記特異領域として抽出された心時相に関する時間の情報を出力するように制御することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記抽出部は、更に、連続する心時相における特異領域間の境界位置の時間的な変化に関する時間的変化情報を算出し、当該算出した時間的変化情報を用いて興奮伝播速度の情報を演算し、
前記制御部は、前記時間的変化情報又は前記興奮伝播速度の情報の少なくとも一方を出力するように制御することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項15】
前記運動情報生成部は、前記運動情報として、心臓組織の局所的な面積の変化率又は局所的な面積の変化率の時間変化率の少なくとも一つを生成することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項16】
前記運動情報生成部は、前記運動情報として、心臓組織の局所的な歪み、当該心臓組織の局所的な歪みの時間変化率である歪み率、心臓組織の局所的な回転、当該心臓組織の局所的な回転の時間変化率である回転率、心臓組織の局所的な捻れ、当該心臓組織の局所的な捻れの時間変化率である捻れ率、心臓組織の局所的な変位、又は、当該心臓組織の局所的な変位の時間変化率である速度の少なくとも一つを生成することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項17】
前記運動情報生成部は、時系列データ間のパターンマッチングを含む処理により、前記運動情報を生成することを特徴とする請求項1〜16のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項18】
被検体の心臓を超音波で3次元走査することで生成された時系列に沿ったボリュームデータ群それぞれから、心壁の運動に関する運動情報を生成する運動情報生成部と、
前記運動情報生成部が生成した前記運動情報が所定の範囲となる特異領域を各ボリュームデータから抽出する抽出部と、
処理対象となるボリュームデータから前記抽出部が抽出した前記特異領域を、当該処理対象となるボリュームデータ以前に生成されたボリュームデータから前記抽出部が抽出した前記特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成した前記重畳画像を表示するように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項19】
被検体の心臓の対象領域のうち、複数の2次元領域を含むように走査をすることで生成された時系列に沿った複数の断面データ群を用いて、心壁の運動に関する運動情報の前記対象領域における3次元的な分布を生成する運動情報生成部と、
前記運動情報生成部が生成した前記運動情報が所定の範囲となる特異領域を前記対象領域に分布した運動情報から抽出する抽出部と、
処理対象となる複数の各断面データに基づいて前記抽出部が抽出した前記特異領域を、当該処理対象となる複数の各断面データ以前に生成された複数の各断面データに基づいて前記抽出部が抽出した前記特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成した前記重畳画像を表示するように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項20】
被検体の心臓を超音波で2次元走査することで生成された時系列に沿った断面データ群を用いて、心壁の運動に関する運動情報の、前記2次元走査領域における2次元的な分布を生成する運動情報生成部と、
前記運動情報生成部が生成した前記運動情報が所定の範囲となる特異領域を断面データから抽出する抽出部と、
処理対象となる断面データから前記抽出部が抽出した前記特異領域を、当該処理対象となる断面データ以前に生成された断面データから前記抽出部が抽出した前記特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成した前記重畳画像を表示するように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項21】
被検体の心臓を超音波で3次元走査することで生成された時系列に沿ったボリュームデータ群それぞれから、心壁の運動に関する運動情報を生成する運動情報生成手順と、
前記運動情報生成手順により生成された前記運動情報が所定の範囲となる特異領域を各ボリュームデータから抽出する抽出手順と、
処理対象となるボリュームデータから前記抽出手順により抽出された前記特異領域を、当該処理対象となるボリュームデータ以前に生成されたボリュームデータから前記抽出手順により抽出された前記特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する画像生成手順と、
前記画像生成手順により生成された前記重畳画像を表示するように制御する制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項22】
被検体の心臓の対象領域のうち、複数の2次元領域を含むように走査をすることで生成された時系列に沿った複数の断面データ群を用いて、心壁の運動に関する運動情報の前記対象領域における3次元的な分布を生成する運動情報生成手順と、
前記運動情報生成手順が生成した前記運動情報が所定の範囲となる特異領域を前記対象領域に分布した運動情報から抽出する抽出手順と、
処理対象となる複数の各断面データに基づいて前記抽出手順が抽出した前記特異領域を、当該処理対象となる複数の各断面データ以前に生成された複数の各断面データに基づいて前記抽出手順が抽出した前記特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する画像生成手順と、
前記画像生成手順が生成した前記重畳画像を表示するように制御する制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項23】
被検体の心臓を超音波で2次元走査することで生成された時系列に沿った断面データ群を用いて、心壁の運動に関する運動情報の、前記2次元走査領域における2次元的な分布を生成する運動情報生成手順と、
前記運動情報生成手順が生成した前記運動情報が所定の範囲となる特異領域を断面データから抽出する抽出手順と、
処理対象となる断面データから前記抽出手順が抽出した前記特異領域を、当該処理対象となる断面データ以前に生成された断面データから前記抽出手順が抽出した前記特異領域が保持された状態で重畳した重畳画像を生成する画像生成手順と、
前記画像生成手順が生成した前記重畳画像を表示するように制御する制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図7】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−187383(P2012−187383A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169458(P2011−169458)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】