説明

超音波診断装置および超音波画像生成方法

【課題】高画質化と省電力化を図ることができるバッテリ駆動型の超音波診断装置を提供する。
【解決手段】内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、時刻t1に振動子アレイを構成する各トランスデューサに駆動信号が供給されても、受信信号処理部はOFF状態のままON状態とならず、関心領域の測定深度に応じて、時刻t4に関心領域からの超音波エコーの受信が開始された後、時刻t5に関心領域からの超音波エコーの受信が終了するまでの間のみ受信信号処理部がON状態とされ、その後、受信信号処理部は再びOFF状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置および超音波画像生成方法に係り、特に、超音波プローブの振動子アレイから超音波を送受信することにより生成された超音波画像に基づいて診断を行うバッテリ駆動型の超音波診断装置の省電力化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
近年、ベッドサイドや救急医療現場等に搬送して使用することができる携帯型の超音波診断装置が開発されている。
このような超音波診断装置では、その電源にバッテリが用いられており、装置の消費電力が連続使用時間に大きな影響を及ぼすこととなる。
【0004】
特に、超音波プローブと装置本体とを無線接続するワイヤレスプローブ等では、振動子からの超音波の送信および超音波エコーの受信に関わる送受信回路を小さなプローブ内に配置する必要があるため、これらの回路の大幅な省電力化が要求される。
ところが、通常の超音波診断装置では、振動子の駆動電圧として50〜100Vが用いられるのに対して、上記のワイヤレスプローブ等では、実装空間制限から振動子の駆動電圧は低く抑えられているので、高画質を得るために受信回路のS/Nを上げる必要がある。一般に、受信回路のS/Nはその消費電力と関係があり、高S/Nを得るためには受信回路の消費電力を低減することは難しいのが現状である。
【0005】
超音波診断装置における省電力化については、例えば特許文献1に、受信に関与しないチャンネルのバッファアンプのバイアスを停止するようにした装置が示されている。また、特許文献2には、測定ラインの本数を維持しつつ関心領域のみについて測定ラインの密度を上げ、それ以外の範囲については測定ラインの密度を低下させる超音波診断装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−296610号公報
【特許文献2】特開平9−192130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の装置は、使用するチャンネルと使用しないチャンネルとを区別し、使用しないチャンネルのバッファアンプのバイアスを停止するので、省電力化を図ろうとすると、画質が低下するという問題がある。
また、特許文献2の装置では、1フレームの測定ライン数を維持しながらも、測定ラインの粗密を変化させて関心領域の空間分解能を維持しようとするため、測定ラインに直交する方向に関して画質が不均一になるという問題がある。
【0008】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、高画質化と省電力化を図ることができるバッテリ駆動型の超音波診断装置および超音波画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る第1の超音波診断装置は、送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した超音波プローブの振動子アレイから出力される受信信号を受信信号処理部で処理し、処理された受信信号に基づいて画像生成部で超音波画像を生成する超音波診断装置であって、内蔵バッテリと、内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される省電力モードで動作するように受信信号処理部を制御する制御部を備えたものである。
【0010】
好ましくは、制御部は、複数の測定ラインを第1のライン群と第2のライン群とに分割し、第1のライン群の測定ラインに対しては測定深度に関わらずに振動子アレイから出力された受信信号の処理が行われる高画質動作を行い、第2のライン群の測定ラインに対しては振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される電力抑制動作を行うように受信信号処理部を制御する。
この場合、第1のライン群の測定ラインと第2のライン群の測定ラインは、交互に配列することができる。あるいは、第1のライン群は、複数の測定ラインのうち中央部に配列された測定ラインからなり、第2のライン群は、第1のライン群の両側部に配列された測定ラインからなるように構成してもよい。
【0011】
また、制御部は、省電力モードにおいて、関心領域に対しては振動子アレイから出力される受信信号の処理を行い、他の領域に対しては振動子アレイから出力される受信信号の処理を停止することもできる。
この場合、関心領域は、手動により設定してもよく、また、画像生成部で生成された超音波画像から輝度に基づいて関心領域を自動選択する関心領域選択部をさらに備えてもよく、さらに、関心領域を予め設定された超音波の送受信のフォーカス点の周辺領域に設定することもできる。
制御部は、フレームに応じて選択的に、測定深度に関わらずに振動子アレイから出力された受信信号の処理が行われる高画質動作と振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される電力抑制動作を切り替えるように受信信号処理部を制御してもよい。
【0012】
この発明に係る第2の超音波診断装置は、送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を受信信号処理部で処理し、処理された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置であって、内蔵バッテリと、超音波画像から所定値以上の速度で変化する高速変化部分を含む領域を第1の測定領域として検出する領域検出部と、内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、領域検出部により検出された第1の測定領域以外の領域では第1の測定領域よりもフレームレートを低下させるために振動子アレイからの超音波の送受信を間欠的に行う省電力モードで動作するように送信駆動部および受信信号処理部を制御する制御部とを備えたものである。
【0013】
領域検出部は、超音波画像において変形速度または移動速度のうち少なくとも一方が所定値以上の高速変化部分を含む領域を第1の測定領域として検出することができる。
また、領域検出部は、高速変化部分を通る走査線群により覆われる範囲を第1の測定領域として検出することもできる。この場合、領域検出部は、高速変化部分が存在する深さ領域を第1の測定領域として検出することが好ましい。
第1の測定領域以外の領域において、フレームレートを低下させることにより超音波画像データが欠落したフレームは、その前後のフレームにおいて生成された超音波画像データを用いて補間されることが好ましい。
また、領域検出部は、第1の測定領域の検出を一定時間毎に繰り返し行うことができる。
【0014】
この発明に係る第3の超音波診断装置は、送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した超音波プローブの振動子アレイから出力される受信信号を受信信号処理部で処理し、処理された受信信号に基づいて画像生成部で超音波画像を生成する超音波診断装置であって、内蔵バッテリと、振動子アレイから互いに異なる方向に超音波を送受信することにより得られる送受信方向の異なる複数の超音波画像を合成して空間コンパウンド画像を生成すると共に、内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、複数の超音波画像のうち少なくとも1つの超音波画像に対し、振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される省電力モードで動作するように送信駆動部、受信信号処理部および画像生成部を制御する制御部を備えたものである。
【0015】
制御部は、複数の超音波画像のうち1つの超音波画像に対しては、測定深度に関わらずに振動子アレイから出力された受信信号の処理が行われる高画質モードで動作し、残りの超音波画像に対しては、省電力モードで動作するように送信駆動部、受信信号処理部および画像生成部を制御することができる。
制御部は、省電力モードにおいて、設定された関心領域に対しては振動子アレイから出力される受信信号の処理を行い、他の領域に対しては振動子アレイから出力される受信信号の処理を停止することが好ましい。
【0016】
また、空間コンパウンド画像の各フレームが互いに異なる方向への超音波の送受信を順次行うことで生成され、制御部は、各フレームを生成するための最初に行われる超音波の送受信方向が直前のフレームを生成するための最後に行われた超音波の送受信方向と等しくなるように送信駆動部および受信信号処理部を制御することもできる。
【0017】
この発明に係る第1の超音波画像生成方法は、送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した超音波プローブの振動子アレイから出力される受信信号を受信信号処理部で処理し、処理された受信信号に基づいて画像生成部で超音波画像を生成する超音波画像生成方法であって、内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される省電力モードで動作するように受信信号処理部を制御する方法である。
【0018】
この発明に係る第2の超音波画像生成方法は、送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を受信信号処理部で処理し、処理された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成方法であって、超音波画像から所定値以上の速度で変化する高速変化部分を含む領域を第1の測定領域として検出し、内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、第1の測定領域以外の領域では第1の測定領域よりもフレームレートを低下させるために振動子アレイからの超音波の送受信を間欠的に行う省電力モードで動作するように送信駆動部および受信信号処理部を制御する方法である。
【0019】
この発明に係る第3の超音波画像生成方法は、送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した超音波プローブの振動子アレイから出力される受信信号を受信信号処理部で処理し、処理された受信信号に基づいて画像生成部で超音波画像を生成する超音波画像生成方法であって、振動子アレイから互いに異なる方向に超音波を送受信することにより得られる送受信方向の異なる複数の超音波画像を合成して空間コンパウンド画像を生成し、内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、複数の超音波画像のうち少なくとも1つの超音波画像に対し、振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される省電力モードで動作するように送信駆動部、受信信号処理部および画像生成部を制御する方法である。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される省電力モードで動作するように受信信号処理部を制御するので、あるいは、超音波画像に含まれる各領域の変化速度に応じて超音波の送受信を間欠的に行う省電力モードで動作するように送信駆動部および受信信号処理部を制御するので、高画質化と省電力化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1の通常モードにおける駆動信号と受信信号処理部の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】実施の形態1の通常モードにおける各測定ライン上の受信信号処理の様子を模式的に示す図である。
【図4】実施の形態1の省電力モードにおける駆動信号と受信信号処理部の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】実施の形態1の省電力モードにおける各測定ライン上の受信信号処理の様子を模式的に示す図である。
【図6】実施の形態1の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態2の省電力モードにおける各測定ライン上の受信信号処理の様子を模式的に示す図である。
【図8】実施の形態2の変形例の省電力モードにおける各測定ライン上の受信信号処理の様子を模式的に示す図である。
【図9】実施の形態3における関心領域の設定方法を示す図である。
【図10】実施の形態3の省電力モードにおける各測定ライン上の受信信号処理の様子を模式的に示す図である。
【図11】実施の形態4の省電力モードにおける各測定ライン上の受信信号処理の様子を模式的に示し、(A)は奇数フレーム、(B)は偶数フレームを示す図である。
【図12】実施の形態4の変形例の省電力モードにおける各測定ライン上の受信信号処理の様子を模式的に示し、(A)は奇数フレーム、(B)は偶数フレームを示す図である。
【図13】実施の形態4の他の変形例の省電力モードにおける各測定ライン上の受信信号処理の様子を模式的に示し、(A)は奇数フレーム、(B)は偶数フレームを示す図である。
【図14】実施の形態5で用いられた診断装置本体の構成を示すブロック図である。
【図15】実施の形態5における関心領域の判別方法を示す図である。
【図16】実施の形態6における関心領域の設定方法を示す図である。
【図17】実施の形態7で用いられた診断装置本体の構成に示すブロック図である。
【図18】実施の形態7における高画質動作で生成された超音波画像の各フレームを示す図である。
【図19】実施の形態7における電力抑制動作で生成された超音波画像の各フレームを示す図である。
【図20】実施の形態7における高画質動作から電力抑制動作に移行する超音波画像の様子を示す図である。
【図21】実施の形態8における電力抑制動作で生成された超音波画像の各フレームを示す図である。
【図22】実施の形態9における電力抑制動作で生成された超音波画像の各フレームを示す図である。
【図23】実施の形態10で用いられた診断装置本体の構成に示すブロック図である。
【図24】空間コンパウンドを説明するための図である。
【図25】(A)は実施の形態10における空間コンパウンドを説明するための図、(B)および(C)は、実施の形態10における駆動信号と受信信号処理部の動作を示すタイミングチャートである。
【図26】(A)および(B)は、実施の形態10の変形例における空間コンパウンドを説明するための図である。
【図27】実施の形態11で用いられた超音波プローブの構成に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ1と、この超音波プローブ1と無線通信により接続された診断装置本体2とを備えている。
【0023】
超音波プローブ1は、1次元又は2次元の振動子アレイを構成する複数の超音波トランスデューサ3を有し、これらトランスデューサ3にそれぞれ対応して受信信号処理部4が接続され、さらに受信信号処理部4にパラレル/シリアル変換部5を介して無線通信部6が接続されている。また、複数のトランスデューサ3に送信駆動部7を介して送信制御部8が接続され、複数の受信信号処理部4に受信制御部9が接続され、無線通信部6に通信制御部10が接続されている。そして、パラレル/シリアル変換部5、送信制御部8、受信制御部9および通信制御部10にプローブ制御部11が接続されている。
【0024】
一方、診断装置本体2は、無線通信部13を有し、この無線通信部13にシリアル/パラレル変換部14を介してデータ格納部15が接続され、データ格納部15に画像生成部16が接続されている。さらに、画像生成部16に表示制御部17を介して表示部18が接続されている。また、無線通信部13に通信制御部19が接続され、シリアル/パラレル変換部14、画像生成部16、表示制御部17および通信制御部19に本体制御部20が接続されている。
また、診断装置本体2にバッテリ21が内蔵されており、バッテリ21に残量検出部22が接続され、残量検出部22に本体制御部20が接続されている。
さらに、本体制御部20に、操作部23と格納部24がそれぞれ接続されている。
【0025】
超音波プローブ1の複数のトランスデューサ3は、それぞれ振動子を形成するもので、送信駆動部7から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各トランスデューサ3は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0026】
送信駆動部7は、例えば、複数のパルサを含んでおり、送信制御部8によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数のトランスデューサ3から送信される超音波が被検体内の組織のエリアをカバーする幅広の超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数のトランスデューサ3に供給する。
【0027】
各チャンネルの受信信号処理部4は、受信制御部9の制御の下で、対応するトランスデューサ3から出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号をサンプリングすることにより、組織のエリアの情報を含むサンプルデータを生成して、サンプルデータをパラレル/シリアル変換部5に供給する。受信信号処理部4は、複素ベースバンド信号をサンプリングして得られるデータに高能率符号化のためのデータ圧縮処理を施すことによりサンプルデータを生成してもよい。
パラレル/シリアル変換部5は、複数チャンネルの受信信号処理部4によって生成されたパラレルのサンプルデータを、シリアルのサンプルデータに変換する。
【0028】
無線通信部6は、シリアルのサンプルデータに基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、シリアルのサンプルデータを送信する。変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。
無線通信部6は、診断装置本体2との間で無線通信を行うことにより、サンプルデータを診断装置本体2に送信すると共に、診断装置本体2から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部10に出力する。通信制御部10は、プローブ制御部11によって設定された送信電波強度でサンプルデータの送信が行われるように無線通信部6を制御すると共に、無線通信部6が受信した各種の制御信号をプローブ制御部11に出力する。
【0029】
プローブ制御部11は、診断装置本体2から送信される各種の制御信号に基づいて、超音波プローブ1の各部の制御を行う。
なお、超音波プローブ1は、リニアスキャン方式、コンベックススキャン方式、セクタスキャン方式等の体外式プローブでもよいし、ラジアルスキャン方式等の超音波内視鏡用プローブでもよい。
【0030】
診断装置本体2の無線通信部13は、超音波プローブ1との間で無線通信を行うことにより、各種の制御信号を超音波プローブ1に送信する。また、無線通信部13は、アンテナによって受信される信号を復調することにより、シリアルのサンプルデータを出力する。
通信制御部19は、本体制御部20によって設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信が行われるように無線通信部13を制御する。
シリアル/パラレル変換部14は、無線通信部13から出力されるシリアルのサンプルデータを、パラレルのサンプルデータに変換する。データ格納部15は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、シリアル/パラレル変換部14によって変換された少なくとも1フレーム分のサンプルデータを格納する。
【0031】
画像生成部16は、データ格納部15から読み出される1フレーム毎のサンプルデータに受信フォーカス処理を施して、超音波診断画像を表す画像信号を生成する。画像生成部16は、整相加算部25と画像処理部26とを含んでいる。
整相加算部25は、本体制御部20において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
【0032】
画像処理部26は、整相加算部25によって生成される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。画像処理部26は、STC(sensitivity time control)部と、DSC(digital scan converter:デジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。
【0033】
表示制御部17は、画像生成部16によって生成される画像信号に基づいて、表示部18に超音波診断画像を表示させる。表示部18は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部17の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0034】
バッテリ21は、この超音波診断装置の駆動電源として機能し、電力を必要とする各部に電力を供給する。
残量検出部22は、A/Dコンバータを用いてバッテリ21の残量を検出し、本体制御部20に出力する。
また、操作部23は、操作者が入力操作を行うための各種の操作ボタンを有している。
格納部18は、動作プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、DVD−ROM、SDカード、CFカード、USBメモリ等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
【0035】
本体制御部20は、操作者により操作部23から入力された各種の指令信号等に基づいて、診断装置本体2内の各部の制御を行うと共に、バッテリ21の残量に応じて通常モードと省電力モードの一方を選択して診断装置本体2および超音波プローブ1の各部を動作させる。
このような診断装置本体2において、シリアル/パラレル変換部14、画像生成部16、表示制御部17、通信制御部19および本体制御部20は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0036】
ここで、通常モードと省電力モードについて説明する。
通常モードは、測定深度に関わらずに、超音波プローブ1の振動子アレイから出力された受信信号を処理して超音波画像の生成に寄与させる高画質動作を行うモードであり、省電力モードは、振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される電力抑制動作を行うモードである。
【0037】
高画質動作においては、図2に示されるように、振動子アレイを構成する各トランスデューサ3に送信駆動部7から周期ΔTaで駆動信号が供給される場合に、被検体の検査領域の最深部からの超音波エコーを受信するに十分な時間ΔTbだけ受信信号処理部4がON状態とされる。例えば、時刻t1にトランスデューサ3に駆動信号が供給されると、これと同時に対応する受信信号処理部4がON状態とされ、時間ΔTbにわたって受信信号処理部4のON状態が維持され、時刻t1から時間ΔTbが経過した時刻t2に検査に有効な超音波エコーの受信が完了したとして受信信号処理部4がOFF状態にされる。その後、時刻t1から周期ΔTaが経過した時刻t3に次の駆動信号がトランスデューサ3に供給されると共に再び受信信号処理部4がON状態とされる。以降、同様の動作が繰り返される。
【0038】
これにより、図3に示されるように、全ての測定ラインに対して、検査領域の最深部からの超音波エコーを受信するに十分な時間ΔTbにわたって受信信号処理部4で受信信号の処理が行われ、高画質の画像を得ることができる。
【0039】
これに対して、電力抑制動作においては、図4に示されるように、振動子アレイを構成する各トランスデューサ3に送信駆動部7から周期ΔTaで駆動信号が供給される場合に、操作部21から入力された関心領域の特定の測定深度に対応する時間のみ受信信号処理部4がON状態とされ、他の時間は受信信号処理部4がOFF状態にされる。例えば、時刻t1にトランスデューサ3に駆動信号が供給されても、受信信号処理部4はまだON状態とされず、時刻t1から時間ΔTcが経過した時刻t4にON状態とされる。この時間ΔTcは、超音波を送信してから関心領域からの超音波エコーの受信が開始されるまでに要する時間である。すなわち、受信信号処理部4は、関心領域からの超音波エコーの受信が開始される時刻t4にON状態とされ、関心領域からの超音波エコーの受信が終了する時刻t5までの時間ΔTdにわたって受信信号処理部4のON状態が維持される。そして、時刻t5に関心領域の全域からの超音波エコーの受信が完了したとして受信信号処理部4がOFF状態にされ、その後、時刻t1から周期ΔTaが経過した時刻t3に次の駆動信号がトランスデューサ3に供給される。以降、同様の動作が繰り返される。
【0040】
これにより、図5に示されるように、全ての測定ラインに対して、関心領域からの超音波エコーを受信するに必要な時間ΔTdのみ受信信号処理部4で受信信号の処理が行われ、他の時間は受信信号の処理が停止される。その結果、省電力化を図ることができる。
【0041】
次に、図6のフローチャートを参照して、実施の形態1の動作について説明する。
まず、ステップS1で、本体制御部20により、残量検出部22で検出されたバッテリ21の残量が予め設定されたしきい値以下にまで低下したか否かが判定される。
そして、バッテリ21の残量がまだしきい値以下にまで低下していないと判定された場合は、ステップS2に進み、通常モードによる動作が開始される。
一方、バッテリ21の残量がしきい値以下にまで低下していると判定された場合は、さらにステップS3で、商用電源から電源供給を行うことができないか否かが判定される。商用電源から電源供給を行うことが可能である場合は、ステップS4で、商用電源からの電源供給に切り替えた上で、ステップS2に進み、通常モードによる動作が開始される。
【0042】
ステップS3で商用電源からの電源供給が不可であると判定された場合は、ステップS5で、省電力モードで超音波診断装置を使用してもよいか否かが操作者に確認される。
診断の目的等を考慮して、操作者が省電力モードでの使用はできないと判断した場合は、バッテリ21の残量がしきい値以下であるものの、ステップS2に進んで通常モードによる動作が開始される。
ステップS5で操作者により省電力モードによる使用が許可された場合は、ステップS6に進み、省電力モードによる動作が開始される。
【0043】
ステップS2の通常モードにより超音波診断が開始されると、プローブ制御部11および送信制御部8の制御の下で送信駆動部7から供給される駆動信号に従って振動子アレイを構成する複数のトランスデューサ3から超音波が送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ3から出力された受信信号がそれぞれ対応する受信信号処理部4に供給される。
【0044】
このとき、図2および3に示したように、全ての測定ラインに対して、検査領域の最深部からの超音波エコーを受信するに十分な時間ΔTbにわたって受信信号処理部4で受信信号の処理が行われる高画質動作が実行され、サンプルデータが生成される。このサンプルデータは、パラレル/シリアル変換部5でシリアル化された後に無線通信部6から診断装置本体2へ無線伝送され、診断装置本体2の無線通信部13で受信されたサンプルデータが、シリアル/パラレル変換部14でパラレルのデータに変換されてデータ格納部15に格納される。さらに、データ格納部15から1フレーム毎のサンプルデータが読み出され、画像生成部16で画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示制御部17により超音波診断画像が表示部18に表示される。
このようにして、通常モードにより、高画質の画像を得ることができる。
【0045】
一方、ステップS5の省電力モードにおいては、まず、操作者により操作部23から被検体の関心領域の測定深度が入力される。例えば、検査部位等に応じて被検体の体表からの深さを概ね把握することができ、この深さに基づいて関心領域の測定深度を推定し、入力することができる。なお、操作部23から入力された関心領域の測定深度は、無線通信により診断装置本体2の本体制御部20から超音波プローブ1のプローブ制御部11へ伝送される。
【0046】
そして、超音波診断が開始されると、通常モードと同様に、プローブ制御部11および送信制御部8の制御の下で送信駆動部7から供給される駆動信号に従って振動子アレイを構成する複数のトランスデューサ3から超音波が送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ3から出力された受信信号がそれぞれ対応する受信信号処理部4に供給される。
【0047】
ただし、省電力モードにおいては、図4および5に示したように、全ての測定ラインに対して、関心領域からの超音波エコーを受信するに必要な時間ΔTdのみ受信信号処理部4で受信信号の処理が行われる電力抑制動作が実行され、サンプルデータが生成される。
サンプルデータは、パラレル/シリアル変換部5でシリアル化された後に無線通信部6から診断装置本体2へ無線伝送され、診断装置本体2の無線通信部13で受信されたサンプルデータが、シリアル/パラレル変換部14でパラレルのデータに変換されてデータ格納部15に格納される。さらに、データ格納部15から1フレーム毎のサンプルデータが読み出され、画像生成部16で画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示制御部17により超音波診断画像が表示部18に表示される。
【0048】
このように、省電力モードでは、関心領域の測定深度に対してはON状態となり、その他の測定深度に対してはOFF状態となるように受信信号処理部4が制御されるので、関心領域を高画質で画像表示しながらも省電力化を図ることが可能となる。
なお、測定ラインの本数は制限されず、関心領域に関わらない測定深度に対してのみ受信信号処理部4をOFF状態とするので、関心領域の大きさに制限を受けることなく、関心領域の高画質化と省電力化を両立させることができる。
【0049】
実施の形態2
実施の形態1では、省電力モードにおいて、全ての測定ラインに対して、関心領域の測定深度に対応する時間ΔTdのみ受信信号処理部4で受信信号を処理し、他の時間は受信信号の処理を停止する電力抑制動作を行ったが、これに限るものではなく、測定ラインを第1のライン群と第2のライン群とに分割し、第1のライン群の測定ラインに対しては測定深度に関わらずに受信信号の処理を行う高画質動作を行い、第2のライン群の測定ラインに対しては関心領域の測定深度に対してのみ受信信号の処理を行う電力抑制動作を行うように受信信号処理部4を制御することもできる。
【0050】
例えば、図7に示されるように、複数の測定ラインのうち、奇数ラインを第1のライン群L1とし、偶数ラインを第2のライン群L2として、第1のライン群L1の測定ラインと第2のライン群L2の測定ラインが交互に配列されるように設定する。そして、第1のライン群L1の測定ラインに対しては高画質動作を行い、第2のライン群L2の測定ラインに対しては電力抑制動作を行うように受信信号処理部4が制御される。すなわち、第1のライン群L1の測定ラインでは、被検体の検査領域の最深部からの超音波エコーを受信するに十分な時間ΔTbにわたって受信信号が処理され、第2のライン群L2の測定ラインでは、関心領域からの超音波エコーを受信するに必要な時間ΔTdのみ受信信号が処理される。
【0051】
このようにすれば、画面の全領域にわたる超音波画像を得ることができると共に関心領域の測定深度のみを高画質で画像表示することが可能となる。
なお、偶数ラインを第1のライン群L1として高画質動作を行い、奇数ラインを第2のライン群L2として電力抑制動作を行うように、受信信号処理部4を制御してもよい。
また、測定ライン1本毎に第1のライン群L1と第2のライン群L2とに分けるのではなく、数本の測定ライン毎に第1のライン群L1と第2のライン群L2とに分割してもよい。
【0052】
さらに、図8に示されるように、複数の測定ラインのうち中央部に配列された複数の測定ラインを第1のライン群L1として高画質動作を行い、第1のライン群L1の両側部に配列された複数の測定ラインを第2のライン群L2として電力抑制動作を行うように、受信信号処理部4を制御することもできる。
これにより、省電力化を図りながらも、中央部と関心領域の測定深度のみを高画質で画像表示することが可能となる。
【0053】
実施の形態3
上記の実施の形態1および2では、省電力モードにおいて、関心領域の測定深度について全ての測定ラインに対して受信信号の処理を行ったが、図9に示されるように、関心領域Rの測定深度だけでなく、関心領域Rの形状をも、操作者により表示部18の表示パネルあるいは操作部21等から手動で入力設定するようにすれば、図10に示されるように、関心領域Rのみに対して受信信号の処理を行うことができる。すなわち、関心領域Rが存在する測定ラインで且つ関心領域Rが存在する測定深度に対して受信信号の処理を行い、その他の領域に対しては受信信号の処理が停止される。
このようにすることにより、さらに効果的に省電力化を図ることができる。
【0054】
実施の形態4
上記の実施の形態1〜3では、省電力モードにおいて、フレームによって変化することなく、受信信号処理部4の制御が行われたが、これに限るものではなく、フレームに応じて選択的に、高画質動作と電力抑制動作を切り替えて実行するように受信信号処理部4を制御することもできる。
例えば、奇数フレームでは、図11(A)に示されるように、全ての測定ラインに対して測定深度に関わらずに受信信号が処理される高画質動作を行い、偶数フレームでは、図11(B)に示されるように、全ての測定ラインに対して、関心領域からの超音波エコーを受信するに必要な時間ΔTdのみ受信信号の処理が行われ、他の時間は受信信号の処理が停止される電力抑制動作を行うように、受信信号処理部4を制御する。
【0055】
このようにすれば、1フレーム毎に画面の全領域にわたる超音波画像を得ることができると共に関心領域の測定深度のみを高画質で画像表示することが可能となる。
なお、偶数フレームに対して高画質動作を行い、奇数フレームに対して電力抑制動作を行うように、受信信号処理部4を制御してもよい。
また、1フレーム毎に高画質動作と電力抑制動作を切り替えるのではなく、数フレーム毎に高画質動作と電力抑制動作を切り替えてもよい。
【0056】
また、奇数フレームでは、図12(A)に示されるように、全ての測定ラインに対して測定深度に関わらずに受信信号が処理される高画質動作を行い、偶数フレームでは、図12(B)に示されるように、複数の測定ラインのうち中央部に配列された複数の測定ラインに対して高画質動作を行い、両側部に配列された複数の測定ラインに対して電力抑制動作を行うように、受信信号処理部4を制御することもできる。
【0057】
さらに、実施の形態3と同様に、関心領域Rの測定深度だけでなく、関心領域Rの形状をも、操作者により表示部18の表示パネルあるいは操作部21等から手動で入力設定し、奇数フレームでは、図13(A)に示されるように、全ての測定ラインに対して測定深度に関わらずに受信信号が処理される高画質動作を行い、偶数フレームでは、図13(B)に示されるように、関心領域Rのみに対して受信信号を処理する電力抑制動作を行うように、受信信号処理部4を制御してもよい。
【0058】
実施の形態5
図14に、実施の形態5に係る超音波診断装置に用いられた診断装置本体31の構成を示す。この診断装置本体31は、図1に示した実施の形態1における診断装置本体2において、画像生成部16に関心領域選択部32が接続され、この関心領域選択部32に本体制御部20を接続したものである。関心領域選択部32は、図15に示されるように、画像生成部16で生成された超音波画像から輝度に基づいて被検体の関心領域Rを自動選択する。
【0059】
このような関心領域選択部32を備えることにより、画像生成部16で生成された超音波画像から輝度に基づいて関心領域Rが自動選択される。本体制御部20は、関心領域選択部32で自動選択された関心領域Rに基づき、上述した実施の形態3と同様に、関心領域Rのみに対して受信信号の処理を行い、その他の領域に対しては受信信号の処理が停止されるように、無線通信により超音波プローブ1の受信信号処理部4を制御する。
また、本体制御部20は、図13に示した実施の形態4のように、フレームに応じて、高画質動作と、関心領域Rのみに対して受信信号の処理を行う電力抑制動作を切り替えるように、受信信号処理部4を制御してもよい。
【0060】
実施の形態6
図1に示した実施の形態1における診断装置本体2において、図16に示されるように、本体制御部20が、予め設定された超音波の送受信のフォーカス点Fの周辺領域を関心領域Rとして自動選択することもできる。このようにして自動選択された関心領域Rに基づき、本体制御部20は、実施の形態1〜4に記載したように受信信号処理部4を制御する。
【0061】
実施の形態7
図17に、実施の形態7に係る超音波診断装置で用いられた診断装置本体41の構成を示す。この診断装置本体41は、図1に示した実施の形態1における診断装置本体2において、画像生成部16に領域検出部42が接続され、この領域検出部42に本体制御部20を接続したものである。領域検出部42は、画像生成部16で生成された超音波画像から所定値以上の速度で変化する高速変化部分を含む領域を第1の測定領域として、それ以外の領域を第2の測定領域としてそれぞれ検出する。
【0062】
例えば、超音波画像に含まれる各部分(人体の臓器など)について2値化処理等を施してその輪郭を抽出し、各部分の輪郭がフレーム毎に変化する変化量により各部分が変化する速度を求める。続いて、その変化が所定値以上の速度である部分(高速変化部分)を通る走査線群により覆われる範囲を第1の測定領域として検出し、それ以外の範囲を第2の測定領域として検出する。
【0063】
ここで、この実施の形態7における高画質動作と電力抑制動作について図18および図19を参照して説明する。
所定値以上の速度で変化する高速変化部分Hと所定値未満の速度で変化する低速変化部分Lとでは、変化を捉えるために必要なフレームレートが異なる。すなわち、低速変化部分Lに対しては、高速変化部分Hよりも低いフレームレートで変化を捉えることができる。そこで、高速変化部分Hを通る走査線群で覆われる第1の測定領域に対しては、高いフレームレートを維持し、第1の測定領域以外の第2の測定領域に対しては、フレームレートを低下させることができる。
【0064】
高画質動作は、図18に示されるように、順次生成される超音波画像の各フレームにおいて、第1の測定領域のみが検出された場合に選択され、超音波画像の全領域にわたる全ての走査線に対して振動子アレイを構成する複数のトランスデューサ3が連続的に動作するように、送信制御部8により送信駆動部7が制御されると共に受信制御部9により受信信号処理部4が制御される。このようにして、超音波画像の全領域にわたる第1の測定領域に対して超音波を連続的に送受信することで高画質の画像を得ることができる。
【0065】
一方、電力抑制動作は、図19に示されるように、順次生成される超音波画像の各フレームにおいて、第1の測定領域以外の第2の測定領域が検出された場合に選択され、第1の測定領域に対しては、高画質動作と同様に、トランスデューサ3が連続的に動作するように、第2の測定領域に対しては、トランスデューサ3が1フレーム毎に動作/停止を繰り返すように、送信制御部8により送信駆動部7が制御されると共に受信制御部9により受信信号処理部4が制御される。このようにして、第2の測定領域に対して超音波を間欠的に送受信しても低速変化部分Lの変化を捉えることができると共に、送信駆動部7や受信信号処理部4が一定間隔で停止されるため、省電力化を図ることができる。
【0066】
なお、電力抑制動作で超音波を送受信したことで第1の測定領域に比べて第2の測定領域のフレームレートが低下し、超音波画像の生成において第2の測定領域の音線信号が欠落したフレームが生じるが、その欠落したフレームについては、画像生成部16の補間部が、その前後のフレームにおいて生成された第2の測定領域の音線信号を用いて補間を行うことができる。
【0067】
この実施の形態7の超音波診断装置も、図6のフローチャートに示した実施の形態1の動作と同様の動作を行う。すなわち、バッテリ21の残量が予め設定されたしきい値以下に低下し、商用電源からの電源供給が不可であり、さらに操作者により省電力モードによる使用が許可された場合に、省電力モードにより作動し、バッテリ21の残量がしきい値より高い、あるいは、商用電源からの電源供給が可能である、あるいは、操作者が省電力モードでの使用はできないと判断した場合に、通常モードで作動する。
通常モードにおいては、領域検出部42による検出結果に関わらずに、すべての領域およびすべてのフレームに対して高画質動作が行われ、高画質の超音波画像が生成される。
一方、省電力モードにおいては、領域検出部42による検出結果に基づいて、電力抑制動作を少なくとも一部に含むように受信信号処理部4が制御されて、省電力化がなされる。
【0068】
ここで、実施の形態7の省電力モードにおける動作について説明する。
超音波診断が開始されると、まず、本体制御部20が高画質動作を選択する。本体制御部20が超音波プローブ1のプローブ制御部11を介して送信駆動部7および受信信号処理部4を制御することにより、全ての走査線に対して、送信駆動部7から供給される駆動信号に従って複数のトランスデューサ3から超音波が送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ3から出力された受信信号がそれぞれ対応する受信信号処理部4に供給される。受信信号処理部4に供給された受信信号はサンプルデータに順次変換され、パラレル/シリアル変換部5でシリアル化された後に無線通信部6から診断装置本体41へ無線伝送される。診断装置本体41の無線通信部13で受信されたサンプルデータは、シリアル/パラレル変換部14でパラレルのデータに変換され、データ格納部15に格納される。さらに、データ格納部15から1フレーム毎のサンプルデータが読み出され、画像生成部16で画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示制御部17により超音波診断画像が表示部18に表示される。
【0069】
このようにして画像生成部16で生成された高画質モードの超音波画像において、第1の測定領域の検出が領域検出部42により試みられる。領域検出部42は、超音波画像に含まれる各部分(人体の臓器など)についてフレーム毎に変形する変形量を求め、その変形する速度が所定値以上の高速変化部分Hを通る走査線群により覆われる範囲を第1の測定領域として検出し、それ以外の範囲を第2の測定領域として検出する。領域検出部42による検出結果は本体制御部20へ入力される。
続いて、本体制御部20は、領域検出部42による検出結果に基づき、第1の測定領域のみが検出された場合には高画質動作により高いフレームレートを全領域で維持し、第1の測定領域以外の第2の測定領域が検出された場合には電力抑制動作に移行する。
【0070】
例えば、図20に示すように、高速変化部分Hと低速変化部分Lが含まれる高画質動作による超音波画像が生成され、領域検出部42により高速変化部分Hを含む第1の測定領域とそれ以外の第2の測定領域が検出された場合には、本体制御部20は、電力抑制動作を選択して、第1の測定領域に対しては超音波の送受信が連続して行われると共に第2の測定領域に対しては超音波の送受信が間欠的に行われるように、超音波プローブ1のプローブ制御部11を介して送信駆動部7および受信信号処理部4を制御する。
このように、超音波画像に変化速度の異なる複数の部分が含まれる場合でも、各部分の変化速度に応じてフレームレートを調整するため、画質の低下を最小限に抑えながら超音波プローブ1の消費電力が抑制される。
【0071】
電力抑制動作により得られた受信信号は、同様にして、超音波プローブ1から診断装置本体41へ無線伝送され、診断装置本体41の画像生成部16に供給されて画像信号に変換される。この時、第2の測定領域について間欠的に超音波を送受信したことにより第2の測定領域の画像信号が欠落したフレームは、画像生成部16の補間部により、その前後のフレームにおいて生成された第2の測定領域の画像信号を用いて順次補間される。
このようにして生成された画像信号に基づいて、表示制御部17により超音波診断画像が表示部18に表示される。
【0072】
続いて、電力抑制動作による超音波の送受信が一定時間経過すると、図20に示されるように、本体制御部20により再び高画質動作が選択され、高画質動作の超音波画像から第1の測定領域と第2の測定領域の検出が領域検出部42により行われる。
【0073】
このように、超音波画像に含まれる各部分の変化速度に応じてその部分ごとにトランスデューサ3からの超音波の送受信の回数を変えることができる。また、超音波の送受信の回数を低下させることにより欠落した第2の測定領域の画像データについてはその前後に得られた画像データを用いて補間することができる。このため、診断上で必要な画質を低下することなく、すなわち、診断に支障を来すことなく、超音波プローブ1内の省電力化を図ることが可能となる。
【0074】
なお、この実施の形態7において、電力抑制動作から高画質動作への移行は、電力抑制動作による制御が一定時間経過した時に行っているが、これに限るものではなく、例えば、超音波プローブ1の移動を検知することで超音波診断の部位が他の部位に移ったことを感知した時に行うこともできる。
【0075】
実施の形態8
実施の形態7では、省電力モードにおいて、高速変化部分Hを通る走査線群により覆われる範囲を第1の測定領域としたが、これに限るものではなく、図21に示されるように、高速変化部分Hを通る走査線群により覆われ且つ高速変化部分Hの深さ位置を第1の測定領域とすることもできる。
本体制御部20により高画質動作が選択されて高画質の超音波画像が生成されると、領域検出部42は、高速変化部分Hを通る走査線群により覆われ且つ高速変化部分Hの深さ位置を第1の測定領域として、それ以外の領域を第2の測定領域としてそれぞれ検出する。本体制御部20は、領域検出部42の検出結果に基づいて、第1の測定領域のみが検出された場合には高画質動作を選択し、第1の測定領域以外の第2の測定領域が検出された場合には電力抑制動作を選択する。
【0076】
電力抑制動作では、高速変化部分Hを通らない第2の測定領域の走査線に対して、実施の形態7と同様に、間欠的に超音波の送受信が行われる。一方、高速変化部分Hを通る第1の測定領域および第2の測定領域の走査線に対しては、超音波の送信は連続的に行われ、第1の測定領域からの超音波エコーのみが連続的に受信される。すなわち、連続的に送信された超音波に対し、第1の測定領域の測定深度に対応する時間は受信信号処理部4が連続的にON状態とされて超音波エコーの受信が連続的に行われ、第2の測定領域の測定深度に対応する時間は受信信号処理部4が所定間隔でOFF状態とされて超音波エコーの受信が間欠的に行われる。
このようにして得られた電力抑制動作における画像信号は、間欠的に超音波を送受信したことにより第2の測定領域について所定間隔で欠落しているが、画像生成部16の補間部により、画像信号の欠落したフレームはその前後のフレームにおいて生成された第2の測定領域の画像信号を用いて順次補間される。
【0077】
これにより、高速変化領域からの超音波エコーを受信するに必要な時間のみ受信信号処理部4で受信信号の処理が行われ、他の時間は受信信号の処理が停止されるため、画質の低下を最小限に抑えながら超音波プローブ1内の省電力化を図ることが可能となる。
【0078】
実施の形態9
実施の形態7および実施の形態8では、所定速度以上で変形する部分を高速変化部分としたが、これに限るものではなく、図22に示されるように、所定値以上の速度で移動する部分を高速変化部分Hとすることもできる。
【0079】
本体制御部20により高画質動作が選択されて高画質の超音波画像が生成されると、領域検出部42は、その超音波画像から所定値以上の速度で移動する高速変化部分Hを通る走査線群により覆われる範囲を第1の測定領域として、それ以外の領域を第2の測定領域としてそれぞれ検出する。本体制御部20は、領域検出部42の検出結果に基づいて、第1の測定領域のみが検出された場合には高画質動作を選択し、第1の測定領域以外の第2の測定領域が検出された場合には電力抑制動作を選択する。
電力抑制動作では、第1の測定領域に対しては超音波の送受信が連続して行われると共に第2の測定領域に対しては超音波の送受信が間欠的に行われるように、本体制御部20が超音波プローブ1のプローブ制御部11を介して送信駆動部7および受信信号処理部4を制御する。
【0080】
このように、超音波画像に含まれる各部分の移動速度に応じて部分ごとにトランスデューサ3からの超音波の送受信の回数を変えるため、画質の低下を最小限に抑えながら超音波プローブ1の省電力化を図ることが可能となる。
【0081】
実施の形態10
図23に、実施の形態10に係る超音波診断装置で用いられた診断装置本体51の構成を示す。この診断装置本体51は、図1に示した実施の形態1における診断装置本体2において、画像生成部16の画像処理部26と表示制御部17の間に画像合成部52を挿入し、整相加算部25と画像処理部26と画像合成部52により新たな画像生成部16aを形成したものである。
この実施の形態10の超音波診断装置は、互いに方向が異なる超音波を送受信することにより得られる複数の超音波画像を合成して合成超音波画像を生成する、いわゆる空間コンパウンドを行なう診断装置であり、画像合成部52が複数の超音波画像の合成を行う。
【0082】
例えば、3つの超音波画像を合成して空間コンパウンドを行なう場合には、図24に示されるように、超音波プローブ1の振動子アレイを形成する複数のトランスデューサ3から予め設定された方向に超音波を送受信することにより得られる検査領域Aに対応する第1の画像と、この第1の画像を得る際の送受信方向に対して角度θだけ傾斜した方向に超音波を送受信することにより得られる領域Bに対応する第2の画像と、第1の画像を得る際の送受信方向に対して角度−θだけ傾斜した方向に超音波を送受信することにより得られる領域Cに対応する第3の画像が順次生成される。そして、これら第1〜第3の画像が画像合成部52で合成されることで、空間コンパウンド画像が得られる。
このような空間コンパウンドを行なうことで、超音波画像のスペックルを低減することが可能となる。
【0083】
この実施の形態10における高画質動作と電力抑制動作は、いずれも上述した実施の形態1における高画質動作および電力抑制動作と同様である。すなわち、高画質動作においては、測定深度に関わらずに、超音波プローブ1の振動子アレイから出力された受信信号を処理して高画質の超音波画像が生成される。一方、電力抑制動作においては、振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止され、特定の深度領域にのみ対応した超音波画像が生成される。
【0084】
この実施の形態10の超音波診断装置も、図6のフローチャートに示した実施の形態1の動作と同様の動作を行う。すなわち、バッテリ21の残量が予め設定されたしきい値以下に低下し、商用電源からの電源供給が不可であり、さらに操作者により省電力モードによる使用が許可された場合に、省電力モードにより作動し、バッテリ21の残量がしきい値より高い、あるいは、商用電源からの電源供給が可能である、あるいは、操作者が省電力モードでの使用はできないと判断した場合に、通常モードで作動する。
通常モードにおいては、空間コンパウンドを行なうために画像合成部52で合成される第1〜第3の画像がいずれも高画質動作により得られ、測定領域の全域に対して高画質の空間コンパウンド画像が生成される。
一方、省電力モードにおいては、画像合成部52で合成される第1〜第3の画像のうち少なくとも1つの超音波画像が電力抑制動作により得られるように受信信号処理部4が制御され、省電力化がなされる。すなわち、電力抑制動作により得られる、この少なくとも1つの超音波画像は、特定の深度領域にのみ対応した画像となる。
【0085】
ここで、実施の形態10の省電力モードにおける動作について説明する。
例えば、図25(A)に示されるように、検査領域Aの最深部の深度をD1とし、操作者により、操作部23を介して、深度D3から深度D2までの領域が関心領域として設定されるものとする。そして、検査領域Aについては、全域に対応する第1の画像を高画質動作により生成し、第1の画像を得る際の送受信方向に対して角度θおよび角度−θだけ傾斜した方向に超音波を送受信することで得られる第2の画像および第3の画像については、電力抑制動作により関心領域に対応した領域BiおよびCiのみの画像を生成する。
【0086】
検査領域Aに対応する第1の画像を生成する際には、図25(B)に示されるように、振動子アレイに周期的に供給される駆動信号に対して、検査領域Aの最深部からの超音波エコーを受信するに十分な、時刻t6から時刻t7までの時間T1にわたって受信信号処理部4がON状態とされる。
これにより、検査領域Aの最深部からの超音波エコーを受信するに十分な時間T1にわたって受信信号処理部4で受信信号の処理が行われ、高画質の第1の画像を得ることができる。
【0087】
これに対して、検査領域BiおよびCiに対応する第2の画像および第3の画像を生成する際には、図25(C)に示されるように、深度D3に対応する時刻t8から深度D2に対応する時刻t9までの時間T2のみ受信信号処理部4がON状態とされ、時刻t6から時刻t8までの期間と時刻t9から時刻t7までの期間は受信信号処理部4がOFF状態にされる。
これにより、関心領域からの超音波エコーを受信するに必要な時間T2のみ受信信号処理部4で受信信号の処理が行われ、他の時間は受信信号の処理が停止される。その結果、省電力化を図ることができる。
【0088】
このように、省電力モードにおいては、操作者により設定された関心領域の深度に応じて受信信号処理部4をON/OFFすることにより受信信号を処理する深度領域が調整され、関心領域に対応する第2の画像および第3の画像が生成される。
そして、検査領域Aの全域に対応する第1の画像と関心領域に対応する第2の画像および第3の画像を画像合成部52で合成することで、関心領域についてのみ空間コンパウンド画像が得られ、検査領域A内の他の領域については第1の画像が表示することとなる。
以上のようにして、省電力化を図りながらも、関心領域について空間コンパウンド画像を生成することが可能となる。
【0089】
また、関心領域が被検体の体内に設定されると、関心領域は、被検体の体表に配置される超音波プローブ1の振動子アレイから所定の深度以上離間することとなる。このため、図26(A)に示されるように、検査領域Aに対応する第1の画像を得る際の送受信方向に対して角度θおよび角度−θだけ傾斜した方向に超音波を送受信することで超音波画像を得ようとする領域BiおよびCiと検査領域Aとの間に重畳しない部分BaおよびCaが生じる。これらの部分BaおよびCaは、空間コンパウンド画像の生成に利用することができないため、図26(B)に示されるように、第2の画像および第3の画像の生成時に、これらの部分BaおよびCaに対する超音波の送受信を行なわないようにすることが好ましい。
【0090】
これにより、第2の画像および第3の画像の音線の総数が低減され、さらに省電力化がなされると共に、効率のよい受信信号の処理が可能となる。
なお、部分BaおよびCaに対して超音波の送受信を停止する代わりに、これらの部分BaおよびCaに対する音線数および/または同時開口チャンネル数を低減するようにしてもよい。
【0091】
また、上記の3つの超音波画像を合成して空間コンパウンドを行なう例においては、検査領域Aに対応する第1の画像、領域Biに対応する第2の画像、領域Ciに対応する第3の画像の順番で超音波の送受信が行われることで1フレームの空間コンパウンド画像が生成されたが、これに限るものではない。例えば、1フレーム目を第1の画像、第2の画像および第3の画像の順番で超音波の送受信を行い、次の2フレーム目は逆に第3の画像、第2の画像および第1の画像の順番で超音波の送受信を行い、さらに次の3フレーム目は再び第1の画像、第2の画像および第3の画像の順番で超音波の送受信を行う、というように、各フレームを生成するための最初に行われる超音波の送受信方向が直前のフレームを生成するための最後に行われた超音波の送受信方向と等しくなるように超音波プローブ1の送信駆動部7および受信信号処理部4を制御することもできる。このような順番で超音波の送受信を行えば、フレーム間において同一方向の送受信が連続するため、効率よく受信信号の取得を行うことができる。
【0092】
なお、画像合成部52で合成される第1〜第3の画像のうち少なくとも1つの超音波画像が、上述した実施の形態2〜6に示したような方法で、省電力化を図りつつ生成されるようにしてもよい。
空間コンパウンドによって合成する超音波画像の数は、3に限定はされず、2でもよく、あるいは、4以上であってもよい。
また、上記の実施の形態10では、関心領域以外の領域に対して第1の画像のみを生成したが、これに限るものではなく、関心領域以外の領域に対しても、互いに超音波の送受信方向が異なる複数の超音波画像を合成してもよい。
【0093】
実施の形態11
上記の実施の形態1〜10では、バッテリ21が診断装置本体2、31、41または51に内蔵されていたが、超音波プローブ内にバッテリを内蔵させ、このバッテリの残量に基づいて通常モードと省電力モードを切り替えるように構成することもできる。
図27は、実施の形態11で用いられる超音波プローブ61の構成を示す。この超音波プローブ61は、図1に示した実施の形態1における超音波プローブ1において、さらにバッテリ62を内蔵すると共に、バッテリ62に残量検出部63を接続し、残量検出部63をプローブ制御部11に接続したものである。
バッテリ62により、超音波プローブ61内の電力を必要とする各部に電力が供給される。
【0094】
残量検出部63でバッテリ62の残量が検出されて、検出値がプローブ制御部11に出力され、通信制御部10を介して無線通信部6から例えば図1に示した診断装置本体2へ無線伝送される。診断装置本体2の無線通信部6で受信された検出値は、通信制御部19を介して本体制御部20に伝送される。
そして、図6に示したフローチャートに従って、本体制御部20により、超音波プローブ61のバッテリ62の残量が予め設定されたしきい値と比較され、その比較結果と、商用電源からの電源供給の可否、さらに、操作者による省電力モードでの使用許諾とに基づいて通常モードおよび省電力モードのいずれかが選択される。
【0095】
このとき、診断装置本体2の各部への電源供給は、診断装置本体2に内蔵されたバッテリ21から行ってもよく、あるいは、商用電源から電源を供給してもよい。
同様にして、バッテリ62を内蔵する超音波プローブ61を、図14に示した診断装置本体31、図17に示した診断装置本体41、図23に示した診断装置本体51にそれぞれ無線接続して使用することができる。
【0096】
なお、上述した実施の形態1〜11では、超音波プローブと診断装置本体とが互いに無線通信により接続されていたが、これに限るものではなく、接続ケーブルを介して超音波プローブが診断装置本体に接続されていてもよい。この場合には、超音波プローブ1または61の無線通信部6および通信制御部10、診断装置本体2、31、41または51の無線通信部13および通信制御部19等は不要となる。
【符号の説明】
【0097】
1,61 超音波プローブ、2,31,41,51 診断装置本体、3 トランスデューサ、4 受信信号処理部、5 パラレル/シリアル変換部、6 無線通信部、7 送信駆動部、8 送信制御部、9 受信制御部、10 通信制御部、11 プローブ制御部、13 無線通信部、14 シリアル/パラレル変換部、15 データ格納部、16,16a 画像生成部、17 表示制御部、18 表示部、19 通信制御部、20 本体制御部、21,62 バッテリ、22,63 残量検出部、23 操作部、24 格納部、25 整相加算部、26 画像処理部、32 関心領域選択部、42 領域検出部、52 画像合成部、L1 第1のライン群、L2 第2のライン群、R 関心領域、F フォーカス点、H 高速変化部分、L 低速変化部分、A 検査領域、B,C 領域、D1〜D3 深度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力される受信信号を受信信号処理部で処理し、処理された受信信号に基づいて画像生成部で超音波画像を生成する超音波診断装置であって、
内蔵バッテリと、
前記内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、前記振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される省電力モードで動作するように前記受信信号処理部を制御する制御部を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記省電力モードにおいて、複数の測定ラインを第1のライン群と第2のライン群とに分割し、第1のライン群の測定ラインに対しては測定深度に関わらずに前記振動子アレイから出力された受信信号の処理が行われる高画質動作を行い、第2のライン群の測定ラインに対しては前記振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される電力抑制動作を行うように前記受信信号処理部を制御する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
第1のライン群の測定ラインと第2のライン群の測定ラインは、交互に配列されている請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
第1のライン群は、前記複数の測定ラインのうち中央部に配列された測定ラインからなり、第2のライン群は、第1のライン群の両側部に配列された測定ラインからなる請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記省電力モードにおいて、関心領域に対しては前記振動子アレイから出力される受信信号の処理を行い、他の領域に対しては前記振動子アレイから出力される受信信号の処理を停止する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記関心領域は、手動により設定される請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記画像生成部で生成された超音波画像から輝度に基づいて前記関心領域を自動選択する関心領域選択部をさらに備えた請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記関心領域は、予め設定された超音波の送受信のフォーカス点の周辺領域である請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記制御部は、フレームに応じて選択的に、測定深度に関わらずに前記振動子アレイから出力された受信信号の処理が行われる高画質動作と前記振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される電力抑制動作を切り替えるように前記受信信号処理部を制御する請求項1〜8のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を受信信号処理部で処理し、処理された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置であって、
内蔵バッテリと、
前記超音波画像から所定値以上の速度で変化する高速変化部分を含む領域を第1の測定領域として検出する領域検出部と、
前記内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、前記領域検出部により検出された前記第1の測定領域以外の領域では前記第1の測定領域よりもフレームレートを低下させるために前記振動子アレイからの超音波の送受信を間欠的に行う省電力モードで動作するように前記送信駆動部および前記受信信号処理部を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項11】
前記領域検出部は、前記超音波画像において変形速度または移動速度のうち少なくとも一方が所定値以上の高速変化部分を含む領域を前記第1の測定領域として検出する請求項10に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記領域検出部は、前記高速変化部分を通る走査線群により覆われる範囲を前記第1の測定領域として検出する請求項10または11に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記領域検出部は、前記高速変化部分が存在する深さ領域を前記第1の測定領域として検出する請求項12に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記第1の測定領域以外の領域において、フレームレートを低下させることにより超音波画像データが欠落したフレームは、その前後のフレームにおいて生成された超音波画像データを用いて補間される請求項10〜13のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項15】
前記領域検出部は、前記第1の測定領域の検出を一定時間毎に繰り返し行う請求項10〜14のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項16】
送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力される受信信号を受信信号処理部で処理し、処理された受信信号に基づいて画像生成部で超音波画像を生成する超音波診断装置であって、
内蔵バッテリと、
前記振動子アレイから互いに異なる方向に超音波を送受信することにより得られる送受信方向の異なる複数の超音波画像を合成して空間コンパウンド画像を生成すると共に、前記内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、前記複数の超音波画像のうち少なくとも1つの超音波画像に対し、前記振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される省電力モードで動作するように前記送信駆動部、前記受信信号処理部および前記画像生成部を制御する制御部を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記複数の超音波画像のうち1つの超音波画像に対しては、測定深度に関わらずに前記振動子アレイから出力された受信信号の処理が行われる高画質動作を行い、残りの超音波画像に対しては、前記振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される電力抑制動作を行うように前記送信駆動部、前記受信信号処理部および前記画像生成部を制御する請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記省電力モードにおいて、設定された関心領域に対しては前記振動子アレイから出力される受信信号の処理を行い、他の領域に対しては前記振動子アレイから出力される受信信号の処理を停止する請求項16または17に記載の超音波診断装置。
【請求項19】
前記空間コンパウンド画像の各フレームが互いに異なる方向への超音波の送受信を順次行うことで生成され、
前記制御部は、各フレームを生成するための最初に行われる超音波の送受信方向が直前のフレームを生成するための最後に行われた超音波の送受信方向と等しくなるように前記送信駆動部および前記受信信号処理部を制御する請求項16〜18のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項20】
送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力される受信信号を受信信号処理部で処理し、処理された受信信号に基づいて画像生成部で超音波画像を生成する超音波画像生成方法であって、
内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、前記振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される省電力モードで動作するように前記受信信号処理部を制御することを特徴とする超音波画像生成方法。
【請求項21】
送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を受信信号処理部で処理し、処理された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成方法であって、
前記超音波画像から所定値以上の速度で変化する高速変化部分を含む領域を第1の測定領域として検出し、
内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、前記第1の測定領域以外の領域では前記第1の測定領域よりもフレームレートを低下させるために前記振動子アレイからの超音波の送受信を間欠的に行う省電力モードで動作するように前記送信駆動部および前記受信信号処理部を制御する
ことを特徴とする超音波画像生成方法。
【請求項22】
送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力される受信信号を受信信号処理部で処理し、処理された受信信号に基づいて画像生成部で超音波画像を生成する超音波画像生成方法であって、
前記振動子アレイから互いに異なる方向に超音波を送受信することにより得られる送受信方向の異なる複数の超音波画像を合成して空間コンパウンド画像を生成し、
前記内蔵バッテリの残量が所定のしきい値以下に低下したときに、前記複数の超音波画像のうち少なくとも1つの超音波画像に対し、前記振動子アレイから出力される受信信号の処理が測定深度に応じて選択的に停止される省電力モードで動作するように前記送信駆動部、前記受信信号処理部および前記画像生成部を制御する
ことを特徴とする超音波画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−90827(P2013−90827A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235047(P2011−235047)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】