説明

超音波診断装置及び探触子

【課題】 操作性に優れた超音波診断装置及び超音波診断装置用探触子を提供する。
【解決手段】 超音波を体内に送受信する振動子20を有する探触子筐体16に、質量体28と、質量体を回転させるモータ24を設けた。このような構成により、質量体をモータの駆動に基づいて回転することによって慣性質量を発生させ、安定した操作性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて体内の情報を得るための超音波診断装置、及び超音波診断装置用探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波診断装置における、送受信および画像構成の手法はすでに広く知られている。簡単に説明すれば、図8のように、超音波診断装置100は、探触子(プローブ)110と制御部120を有する。探触子110は、筐体112と、筐体112の被検体に接触する部位に設けられた振動子114を有する。一方、制御部120は、送受信部122と信号処理部124を備えており、送受信部122がケーブル130を介して振動子114に接続されている。このような構成を備えた超音波診断装置100によれば、送受信部122で生成されたパルス電圧がケーブル130を介して振動子114に送信される。パルス電圧を受信した振動子114は超音波を生成し、これを被検体に送信する。被検体内に送信された超音波は、臓器境界など音響インピーダンスの一様でない体内部位で反射し、振動子114に返ってくる。振動子114は受信信号を電気信号に変換し、ケーブル130を介して送受信部122に送信する。送受信部122は、電子集束などの処理を行なった後、信号処理部124に信号を送信する。信号処理部124は、受信した信号を画像情報に変換し、図示しない表示部に断層画像を表示する。
【0003】
このように、超音波診断装置100では、通常、探触子110は制御部120から分離されており、操作者が探触子110を自由に任意の検査部位に移動できるようにしてある。また、操作性を考えると、探触子110は軽量であることが望ましい。しかし、探触子110が軽量であると、操作者の手の僅かな動きで超音波の送信方向が大きくずれ、目的部位の画像が得られないという問題がある。この問題を解消するためには探触子110の質量を大きくすればよいが、質量を大きくすると、探触子110を操作する操作者の手に加わる疲労が増大する。また、手ぶれを解消するために、例えば特許文献1に開示されているアーム状器具を探触子に取り付けることも考えられるが、手ぶれが少なくなる反面、操作性が悪くなるという欠点がある。
【特許文献1】実開昭61−54804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、探触子の手ぶれの問題を解消し、操作性に優れた超音波診断装置及び超音波診断装置用探触子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明に係る超音波診断装置及び探触子は、超音波を体内に送受信する振動子を有する探触子筐体に、質量体と、上記質量体を回転させるモータを備えており、このモータで質量体を回転することによって探触子に慣性質量を与え、これにより探触子の操作性を向上したものである。
【0006】
この超音波診断装置では、探触子筐体に、モータをオン・オフするスイッチを設けてもよいし、モータの回転数を調整する回転数調整手段を設けてもよい。
【0007】
超音波診断装置には、探触子筐体の被検体に接触する部位に配置され、被検体に接触する部位が被検体に接触したときにモータを起動する作動手段を設けてもよい。または、超音波診断装置には、探触子筐体が被検体に接触したことを被検体からのエコー信号から検知してモータを起動する作動手段を設けてもよい。さらに、超音波診断装置には、探触子筐体の被検体に接触する部位が被検体の血管上にあることを被検体からのエコー信号から検知してモータを起動する作動手段を設けてもよい。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本発明の超音波診断装置及び探触子によれば、探触子筐体に質量体を配置し、この質量体をモータの駆動に基づいて回転することによって慣性質量を発生させることができる。そのため、操作者の手の僅かな動きによって探触子が不要に動くことがないので、安定した操作性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明に係る超音波診断装置及び超音波診断装置用探触子の複数の実施の形態を説明する。なお、以下に説明する複数の実施の形態において同一又は類似の機能を達成する部分及び部位には共通の符号を付す。
【0010】
《実施の形態1》
【0011】
図1は実施の形態1に係る超音波診断装置及び探触子を示す。超音波診断装置10Aは、探触子(プローブ)12と制御部14を有する。探触子12は、合成樹脂又は金属からなり、操作者(例えば、医師)が片手で持つことが出来る大きさの筐体(ハウジング)16を有する。筐体16は、図示しない被検体(主に人体)に接触する表面部位(接触面18)に隣接して振動子20を備えている。図示しないが、振動子20の外側には整合層と表面コーティング層が設けてあり、振動子20の内側にはバッキング材が設けてある。振動子20の背後に形成された筐体内部の空間22には、モータ24と、このモータ24の回転軸26に連結された質量体28が収容されている。
【0012】
モータ24は、回転軸26の中心線30を、接触面18の中心〔図1(B)に示すX軸とこれに直交するY軸の交点〕を通り且つ接触面18に垂直な軸〔図1(A)に示すZ軸。〕に一致又はほぼ一致させた状態で、筐体16に固定されている。質量体28は、その重心を中心軸30に一致させた状態で回転軸に固定されている。実施の形態では、質量体28は円柱体で構成されており、この円柱体の中心軸が中心軸30に一致させてある。また、質量体28は例えば80gの重さを有し、探触子12の全重量が約230gとしてある。
【0013】
実施の形態では、モータ24を駆動する電源32が制御部14に設けてあり、電源ケーブル34を介してモータ24と電源32が電気的に接続されている。既に背景技術の欄で説明したように、制御部14には送受信部36と信号処理部38が収容されており、送受信部36が振動子20と信号ケーブル40を介して通信可能に接続されている。
【0014】
このように構成された超音波診断装置10Aによれば、送受信部36で生成されたパルス電圧が信号ケーブル40を介して振動子20に送信される。パルス電圧を受信した振動子20は超音波を生成し、これを被検体に送信する。被検体内に送信された超音波は、臓器境界など音響インピーダンスの一様でない体内部位で反射し、振動子20に返ってくる。振動子20は受信信号を電気信号に変換し、信号ケーブル40を介して送受信部36に送信する。送受信部36は、電子集束などの処理を行なった後、信号処理部38に信号を送信する。信号処理部38は、受信した信号を画像情報に変換し、図示しない表示部に断層画像を表示する。
【0015】
上述の超音波診断時、制御部14は電源32を起動し、電源ケーブル34を介してモータ24に電力を供給し、中心軸30を中心として質量体28を回転する。質量体28が回転すると、慣性モーメントと、回転速度に基づく慣性質量が発生する。したがって、探触子筐体16の質量が小さくても、質量体28の慣性質量により探触子12は大きな慣性を持つ。そのため、操作者が探触子12を操作する際に操作者の手が僅かに動いても、探触子12は手ぶれすることがない。その結果、操作者は安定した状態で探触子12を操作することができるので、操作性が良く、目的部位の画像を安定して得ることができる。
【0016】
《実施の形態2》
【0017】
図2は、実施の形態2に係る超音波診断装置及び探触子を示す。図示するように、超音波診断装置10Bにおいて、探触子12は筐体16の表面に露出する手動スイッチ42を備えている。本実施の形態において、手動スイッチ42は、モータ24と電源32を接続する電源ケーブル34の途中に接続されており、スイッチ42を操作することによってモータ24をオン・オフ制御できるようにしてある。このような構成を備えた超音波診断装置10Bによれば、操作者は必要なときにスイッチ42を操作してモータ24を起動し、探触子12に慣性質量を与えることができる。
【0018】
スイッチ42は、単なるオン・オフスイッチに限るものでなく、可変抵抗を備えた回転数調整手段(スイッチ付可変抵抗)に代えることができる。この場合、操作者は電源ケーブル34を含む回路の電気抵抗を調整し、モータ24の回転数を調整することにより探触子12に与える慣性質量を加減できる。
【0019】
《実施の形態3》
【0020】
図3は、実施の形態3に係る超音波診断装置及び探触子を示す。図示するように、超音波診断装置10Cでは、探触子12の被検体接触面18に作動部44が設けてある。本実施の形態において、作動部44は、モータ24と電源32を接続する電源ケーブル34の途中に接続されており、作動部44が被検体に接触したときにモータ24を起動する。具体的に、作動部44は、機械的な接点部を有するスイッチで構成されており、探触子接触面18が被検体に押し付けられたときの圧力によって接点部が閉鎖し、モータ24と電源32を導通する。したがって、操作者がスイッチをオン・オフ操作しなくても、自動的に使用状態で必要な慣性質量が探触子12に生じる。他の形態として、作動部44は、感圧センサと、この感圧センサの出力に基づいて接点を開閉するスイッチを組み合わせて構成してもよい。また、感圧センサに代えて温度センサを用い、この温度センサが体温を検出したときにスイッチを閉じるように構成することもできる。
【0021】
《実施の形態4》
【0022】
図4は、実施の形態4に係る超音波診断装置及び探触子を示す。図示するように、超音波診断装置10Dでは、モータ24を作動するための作動部(接触判定部)46が制御部14に設けてあり、信号処理部38の出力に基づいて作動部46が電源32をオン・オフ制御するようにしてある。このように構成された超音波診断装置10Dによれば、探触子12の接触面18が被検体に接触していない状態では、図5(A)に示すように、振動子20から信号が出力された直後のみエコー信号を発生する。このエコー信号は、振動子20の表面に設けた整合層で生じる多重反射で、多重反射が収束した後にエコー信号は無くなる。一方、探触子12の接触面18が被検体に接触している状態では、図5(B)に示すように、振動子20が信号を出力してから相当時間が経過してもエコー信号が受信される。したがって、作動部46は、振動子20から信号が出力されてからエコー信号が無くなるまでの時間を超える所定時間後(例えば、図5(B)に示す、信号出力から適当な時間を経過したタイミングtの時間)、信号処理部38から出力される信号にエコー信号が含まれるか否か判断する。具体的には、所定時間tに検出されたエコー信号を絶対値を積分し、その積分値が所定の基準値を超えたとき、振動子20でエコー信号が検出されていると判断する。そして、判断の結果、振動子20でエコー信号が検出されていれば電源32を起動し、モータ24に電力を供給し、探触子12に慣性質量を与える。
【0023】
《実施の形態5》
【0024】
図4は、実施の形態4に係る超音波診断装置及び探触子を示す。図示するように、超音波診断装置10Dでは、モータ24を作動するための作動部(血管判定部)48が制御部14に設けてあり、信号処理部38の出力に基づいて作動部48が電源32をオン・オフ制御するようにしてある。このように構成された超音波診断装置10Dによれば、信号処理部38の出力をもとに探触子接触面18が被検体に接触しているか否か判断し、接触していると判断したとき、作動部48が電源32からモータ24に電力を供給し、モータ24を駆動して探触子12に慣性質量を与える。
【0025】
探触子接触面18が被検体に接触しているか否か判断する方法について、図7を参照して説明する。この図に示すグラフは、診断部位の皮膚下に血管が存在するときに信号処理部38から出力されるエコー信号を示している。図示するように、皮膚下に血管が存在する場合、血液からのエコー信号は体組織からのエコー信号に比べて振幅が小さいことから、振動子20で検出されるエコー信号には送信タイミング後に時間tの幅をもって振幅の減衰する箇所が存在する。したがって、作動部48は振幅減衰箇所の有無を検出し、信号処理部38の出力に図示する振幅減衰箇所が存在する場合、診断箇所に血管が存在すると判断するとともに、探触子接触面18が被検体に接触していると判断する。
【0026】
このように構成された超音波診断装置10Eは、特定の箇所の超音波診断に特に有効に利用できる。例えば、血管壁の固さを測定し、脳梗塞などの危険性を調べるものがあり、このような用途においては、例えば頚部の血管などに正確に探触子を当てる必要がある。本実施の形態によれば、探触子からの送受信が血管に向けて行なわれているかを調べ、血管に向けて行なわれているならば探触子筐体の慣性質量を増大されることで、安定した操作を可能にできる。
【0027】
《他の実施の形態》
【0028】
以上で説明した実施の形態では、探触子12から分離された制御部14に電源32を設けているが、探触子12の筐体16にバッテリ電源を設け、このバッテリ電源からモータ24に電力を供給してもよい。
【0029】
また、以上の実施の形態では、探触子接触面18に垂直な中心軸30を中心として質量体28を回転したが、必ずしも質量体の回転軸が探触子接触面に垂直である必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1に係る探触子および超音波診断装置を示すブロック図。
【図2】本発明の第2の実施の形態2に係る探触子および超音波診断装置を示すブロック図。
【図3】本発明の第3の実施の形態3に係る探触子および超音波診断装置を示すブロック図。
【図4】本発明の第4の実施の形態4に係る探触子および超音波診断装置を示すブロック図。
【図5】本発明の実施の形態4におけるエコー信号の説明図。
【図6】本発明の実施の形態5に係る探触子および超音波診断装置を示すブロック図。
【図7】本発明の実施の形態5におけるエコー信号の説明図。
【図8】従来の探触子および超音波診断装置を示すブロック図。
【符号の説明】
【0031】
10A〜10E:超音波診断装置、12:探触子、14:制御部、16:筐体、18:接触面(表面部位)、20:振動子、22:空間、24:モータ、26:回転軸、28:質量体、30:中心軸、32:電源、34:電源ケーブル、36:送受信部、38:信号処理部、40:信号ケーブル、42:スイッチ、44:作動部、46:作動部(接触判定部)、48:作動部(血管判定部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を体内に送受信する振動子を有する探触子筐体に、質量体と、上記質量体を回転させるモータを設けたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
上記探触子筐体に、上記モータをオン・オフするスイッチを設けたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
上記探触子筐体に、上記モータの回転数を調整する回転数調整手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
上記探触子筐体の被検体に接触する部位に配置され、上記被検体に接触する部位が被検体に接触したときに上記モータを起動する作動手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
上記探触子筐体が被検体に接触したことを上記被検体からのエコー信号から検知して上記モータを起動する作動手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
上記探触子筐体の被検体に接触する部位が被検体の血管上にあることを上記被検体からのエコー信号から検知して上記モータを起動する作動手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
超音波を体内に送受信する振動子を有する探触子筐体に、質量体と、上記質量体を回転させるモータを設けたことを特徴とする超音波診断装置用探触子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−223622(P2006−223622A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41841(P2005−41841)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】