説明

超音波診断装置用レンズ及びその製造方法

【課題】高い電磁シールド性を発揮する超音波診断装置用レンズ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】シリコーンゴム組成物で形成されたキャップ10と、キャップ10の内表面に密設された銅薄膜11とを備えて成り、前記銅薄膜は伸びが4〜12%であることを特徴とする超音波診断装置用レンズ2、並びに、凸部を有する第1金型と前記凸部が進入可能な凹部を有する第2金型とを備えて成る成形金型を用いて、前記凸部と前記凹部との間に配置された銅薄膜とシリコーンゴム組成物とを圧縮成形することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置用レンズの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置用レンズ及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、高い電磁シールド性を発揮する超音波診断装置用レンズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置例えば電子走査型超音波診断装置は、被検体の映像を得るため、圧電素子が配列されたプローブを備えている。このようなプローブは、一般に、超音波の送受信により得られたエコー信号へのノイズの混入を防止して良好な画像を描き出すことを目的として、自身の内部に例えば金属製の膜等が設けられることで電磁シールドされた超音波診断装置用レンズを備えている。
【0003】
このような超音波診断装置用レンズとして、例えば、特許文献1に示される超音波探触子が挙げられる。この超音波探触子は、「圧電素子の超音波放射面側に形成される音響レンズの内面に、探触子ケースの内面のシールド膜と共にアースされる導電性膜が形成されていることを特徴とする」。
【0004】
また、特許文献2に記載の超音波プローブは、「直線状に配列された複数個の圧電素子の前面に少なくとも一層の音響整合層を設けた超音波プローブにおいて、前記音響整合層上もしくは音響整合層間に金属薄膜を設けたことを特徴とする」。
【0005】
このような金属製の膜を備えた超音波診断装置用レンズの製造方法として、特許文献1には超音波探触子の製造方法は何ら記載されていないが、特許文献2には、「金属の薄い膜と蒸着や無電解メッキ等を用いて設けている」ことが記載されている(第2頁左欄第8行〜第9行。)。
【0006】
ところで、超音波診断装置用レンズにおいて、通常、前記金属製の膜等は圧電素子のインピーダンスへの影響低減を目的として薄膜状に形成されるから、所定の位置に所定の状態で金属製の膜を設けることは容易ではない。例えば、金属製の膜を備えた超音波診断装置用レンズにおいては、金属製の膜は超音波診断装置用レンズの内部に所定の状態で密設しにくく、超音波診断装置用レンズ又は金属製の膜が変形・破損し、又は、金属製の膜に波打ち現象が生じることがある。このような超音波診断装置用レンズは、超音波診断装置用レンズに要求される十分な電磁シールド性を発揮しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭62−160914号公報
【特許文献2】実公昭63−5692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、高い電磁シールド性を発揮する超音波診断装置用レンズを提供することを、目的とする。
【0009】
また、この発明は、高い電磁シールド性を発揮する超音波診断装置用レンズを歩留りよく容易に製造することのできる超音波診断装置用レンズの製造方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、シリコーンゴム組成物で形成されたキャップと前記キャップの内表面に密設された銅薄膜とを備えて成り、前記銅薄膜は伸びが4〜12%であることを特徴とする超音波診断装置用レンズであり、
請求項2は、前記銅薄膜は前記内表面に接する表面の表面粗さRzが3〜6μmであることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置用レンズであり、
請求項3は、凸部を有する第1金型と前記凸部が進入可能な凹部を有する第2金型とを備えて成る成形金型を用いて、前記凸部と前記凹部との間に配置された前記銅薄膜と前記シリコーンゴム組成物とを圧縮成形することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置用レンズの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る超音波診断装置用レンズは、キャップの内表面に所定の状態で密設された前記銅薄膜を備えて成るから、高い電磁シールド性を発揮する。また、この発明に係る超音波診断装置用レンズの製造方法は、銅薄膜とシリコーンゴム組成物とを圧縮成形する方法であるから、容易な製造方法であるにもかかわらず、キャップ又は銅薄膜の変形・破損、銅薄膜の波打ち現象を防止して銅薄膜をキャップの内表面に所定の状態に密設することができる。
【0012】
したがって、この発明によれば、高い電磁シールド性を発揮する超音波診断装置用レンズを提供することができる。また、この発明によれば、高い電磁シールド性を発揮する超音波診断装置用レンズを歩留りよく容易に製造することのできる超音波診断装置用レンズの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、この発明に係る超音波診断装置用レンズが装着されるプローブを示す断面図である。
【図2】図2は、この発明に係る超音波診断装置用レンズの一実施例である超音波診断装置用レンズを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係る超音波診断装置用レンズは、キャップと銅薄膜とを備えて成り、超音波診断装置におけるプローブの被検体例えば人体表面に、オリーブオイル又は流動パラフィン等を介して、接触されるプローブの先端部に装着される。このような超音波診断装置として、例えば、電子走査型超音波診断装置等が挙げられる。
【0015】
このようなプローブは、特に限定されず、その一例を挙げると、例えば、図1に示されるように、少なくとも一方の端部が開口した略筒状のケース3と、ケース3の前記一方の端部に設けられた超音波診断装置用レンズ2と、ケース3と超音波診断装置用レンズ2とで形成された内部空間に収納された圧電素子4と、圧電素子4の両表面に設けられた電極4a及び4bと、圧電素子4の先端側に設けられた電極4aの表面に形成され、前記超音波診断装置用レンズ2に接触する整合層5と、圧電素子4の後端側に設けられた電極4bの表面に形成さられたバッキング層6と、ケース3の内表面に設けられたシールド膜7とを備えて成るプローブ1が挙げられる。このようなプローブとして、例えば、GE Healthcare社製の超音波診断装置用の各種プローブ等が挙げられる。
【0016】
この発明に係る超音波診断装置用レンズの一実施例である超音波診断装置用レンズ2を、図を参照して説明する。図1及び図2に示されるように、この超音波診断装置用レンズ2は、キャップ10と、キャップ10の内表面に密設された銅薄膜11とを備えて成る。
【0017】
この超音波診断装置用レンズ2は、図1及び図2に示されるように、有底の筒体を成し、開口部側が前記ケース3の前記一方の端部に装着される。超音波診断装置用レンズ2は、装着される前記ケース3の形状及び寸法に応じて適宜の形状及び寸法に調整され、その形状及び寸法は特に限定されない。この例において、超音波診断装置用レンズ2は、軸線に垂直な断面が略長方形の四角柱状に形成され、その底部の外表面が軸線方向に突出する錐状に成っている。この錐状の外表面が被検体表面9に接触する。
【0018】
前記超音波診断装置用レンズ2を構成するキャップ10は、図1及び図2に示されるように、超音波診断装置用レンズ2と基本的に同様の形状を成している。すなわち、キャップ2は、軸線に垂直な断面が略長方形である有底の筒状に形成され、その底部の外表面が軸線方向に突出する錐状に成っている。
【0019】
キャップ10の寸法は、装着される前記ケース3の寸法に応じて適宜の寸法に調整され、特に限定されないが、超音波の送受信に影響を与えるため、キャップ10の底面は過度に厚すぎないのがよい。例えば、底面の最大厚さは1〜1.1mm程度に調整されるのがよい。
【0020】
このキャップ10は、シリコーンゴム組成物で形成される。このシリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムを含有していればよく、例えば、ビニル基を含むジメチルポリシロキサン構造のシリコーンゴムとシリカ(SiO)と加硫剤とを含有するシリコーンゴム組成物等が挙げられる。シリコーンゴム組成物は、後述するこの発明に係る超音波診断装置用レンズの製造方法に用いられる場合には、所謂「ミラブルタイプ」であるのがよい。前記加硫剤としては、シリコーンゴムの加硫剤として一般に使用されるものを特に限定されず用いることができる。前記キャップ10を形成するシリコーンゴム組成物として、具体的には、例えば、特許第3468753号明細書に記載された、「ビニル基を含むジメチルポリシロキサン構造のシリコーンゴムと、このシリコーンゴムに対する重量比が40重量%以上50重量%以下の重量平均粒子径15〜30nmのシリカ(SiO)粒子と、加硫剤として2,5―ジメチル―2,5―ジターシャリーブチルパーオキシシヘキサンとを含有するシリコーンゴム組成物」が挙げられる。
【0021】
前記シリコーンゴム及びシリカ(SiO)を含有するシリコーンゴム組成物として、より具体的には、例えば、商品名「KE−981U」(信越化学工業株式会社製)、商品名「KE−971U」(信越化学工業株式会社製)、商品名「KE−752U」(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
前記銅薄膜11は、銅又は銅を主成分とする銅基合金で形成された薄膜であり、図1及び図2に示されるように、前記キャップ10の内表面に密設されている。この銅薄膜11は、図2に示されるように、キャップ10の内表面のうち底面と一対の側面に密着して設けられているが、この発明において、銅薄膜11はキャップ10の全内表面に設けられてもよい。
【0023】
この銅薄膜11は、JIS Z2241に規定された伸びが4〜12%である。銅薄膜11が前記範囲の伸びを有していると、超音波診断装置用レンズ2を銅薄膜11と前記シリコーンゴム組成物とで一体成形及び圧縮成形しても、キャップ2又は銅薄膜11が変形・破損しにくく、また、銅薄膜が波打ち現象を発生しにくく、前記銅薄膜11が所定の状態で前記キャップ10に密設されることができ、その結果、超音波診断装置用レンズ2が高い電磁シールド性を発揮することに貢献することができる。超音波診断装置用レンズ2がより一層高い電磁シールド性を発揮する点で、銅薄膜2の伸びは4〜9%であるのが好ましく、4〜7%であるのが特に好ましい。銅薄膜11として市販品を使用するときは、銅薄膜11の伸びは、JIS Z2241に規定された方法で測定するが、場合によりカタログ値又は規格値を採用することもできる。
【0024】
前記銅薄膜11は、キャップ10の内表面に接する表面の表面粗さRzが3〜6μmであるのが好ましく、3〜4.5μmであるのがより一層好ましく、3.2〜4μmであるのが特に好ましい。銅薄膜11が前記表面粗さRzを有していると、キャップ10との密接力が高く、キャップ10から銅薄膜11が剥離しにくく、超音波診断装置用レンズ2が高い電磁シールド性を発揮することに貢献することができる。この表面粗さRzは、JIS B0601−1994に規定の「十点平均粗さ」であり、銅薄膜11として市販品を使用するときはカタログ値又は規格値を採用することができ、測定する場合にはJIS B0601−1994の方法を採用することができる。
【0025】
銅薄膜11は、薄膜として形成されており、例えば、9〜18μm程度の厚さを有している。超音波診断装置用レンズ2がより一層高い電磁シールド性を発揮する点で、銅薄膜11の厚さは9〜12μmであるのが好ましい。
【0026】
前記銅薄膜11は、電解で形成された電解銅薄膜であるのが、圧延銅膜と比べ表面粗さが大きく、シリコーンゴムとの密着性が高くなる点で、好ましい。この銅薄膜11は、表面処理されて成る銅薄膜であってもよい。例えば、銅薄膜11は、前記範囲の表面粗さRzとなるように粗面化処理又は平滑化処理が施されてもよく、表面メッキ処理、防錆処理等が施されてもよい。
【0027】
このような銅薄膜としては、例えば、商品名「JTC」(IPCグレード1、厚さ9μm、伸び5%(カタログ値)、表面粗さRz3.8μm(カタログ値)、日鉱金属株式会社製)、商品名「U−WZ箔」(厚さ9μm、伸び7%(カタログ値)、表面粗さRz0.6μm(カタログ値)、古川サーキットフォイル株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
この発明に係る超音波診断装置用レンズは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明において、超音波診断装置用レンズは、四角柱状に形成されている必要はなく、例えば、一方の端部が開口した円柱状、楕円柱状、多角柱状等に形成されてもよく、また、例えば1枚の板を折り返して成る形状のような、相対向する側面のない断面U字型又はV字型等に形成されてもよい。
【0029】
また、超音波診断装置用レンズ2のキャップ10及び銅薄膜11はいずれも一層構造になっているが、この発明においてキャップ及び銅薄膜は複数層構造になっていてもよい。
【0030】
超音波診断装置用レンズ2は、キャップ10と銅薄膜11とが密設されているが、この発明において、超音波診断装置用レンズはキャップと銅薄膜との間に、例えば、接着層、プライマー層等を設けてもよい。
【0031】
次に、この発明に係る超音波診断装置用レンズの製造方法について説明する。この発明に係る超音波診断装置用レンズの製造方法は、凸部を有する第1金型と前記凸部が進入可能な凹部を有する第2金型とを備えて成る成形金型を用いて、前記凸部と前記凹部との間に配置された前記銅薄膜とシリコーンゴム組成物とを圧縮成形することを特徴とする。すなわち、この発明に係る超音波診断装置用レンズの製造方法は圧縮成形法の一種である。
【0032】
この発明に係る超音波診断装置用レンズの製造方法においては、まず、超音波診断装置用レンズ2のキャップ10を形成するシリコーンゴム組成物と、超音波診断装置用レンズ2の銅薄膜11となる銅薄膜とをそれぞれ準備する。また、所望の寸法及び形状のキャップ10を成形可能な成形金型を準備する。
【0033】
この成形金型は、例えば、前記銅薄膜を載置可能な凸部を有する第1金型(下部金型とも称する。)と、前記第1金型の前記凸部が進入可能な凹部を有する第2金型(上部金型とも称する。)とを有している。前記凸部の軸線に垂直な断面形状は前記超音波診断装置用レンズ2の軸線に垂直な断面形状と略同一であり、前記超音波診断装置用レンズ2の内側寸法すなわち銅薄膜11の内表面寸法と略同一に設定されている。前記凹部の軸線に垂直な断面形状は前記超音波診断装置用レンズ2の軸線に垂直な断面形状と略同一であり、前記超音波診断装置用レンズ2の外側寸法すなわちキャップ10の外表面寸法と略同一に設定されている。具体的には、凸部及び凹部はその垂直断面が略長方形をなし、前記凹部は前記凸部よりも超音波診断装置用レンズ2の銅薄膜11及びキャップ10の分だけ大きく設定されている。前記凸部の上面及び前記凹部の底面は超音波診断装置用レンズ2の形状に適合する形状になっており、具体的には、前記凸部の上面は平坦であり、前記凹部の底面は錐状、すなわち、深さ方向に垂直断面が徐々に小さくなるテーパ状になっている。換言すると、この凹部は、前記垂直断面が略長方形の柱状凹部と、柱状凹部から連設され、深さ方向に垂直断面が徐々に小さくなる錐状凹部とで形成されている。前記凸部の高さ及び前記凹部の深さは前記超音波診断装置用レンズの寸法に応じて設定されている。
【0034】
この発明に係る超音波診断装置用レンズの製造方法においては、準備した成形金型を用いて、前記凸部と前記凹部との間に凸部側から凹部に向けて銅薄膜及びシリコーンゴム組成物の順で配置された銅薄膜及びシリコーンゴム組成物を圧縮成形する。具体的には、第1金型の凸部に銅薄膜を載置する。このとき、銅薄膜は前記凸部の上面及び少なくとも一対の側面を覆うように被覆しており、好ましくは、銅薄膜の変形・破損及び/又は銅薄膜の波打ち現象を高度に防止することができる点で前記上面及び前記側面に密着している。
【0035】
この発明に係る超音波診断装置用レンズの製造方法においては、次いで、シリコーンゴム組成物を銅薄膜の上におく。この状態で、第1金型及び第2金型の少なくとも一方を他方に向けて前進させて、前記銅薄膜とシリコーンゴム組成物とを前記凸部及び前記凹部で挟んで圧縮する。このとき、銅薄膜は前記伸びを有しているから、凸部上に配置された銅薄膜がシリコーンゴム組成物を介してかかる成形圧力によって変位することも波打ちすることも極めて少なくなる。このように銅薄膜が変位も波打ちもしにくいからシリコーンゴム組成物は前記凸部と前記凹部との間隙をその端部まで所望のように充填、装填され、前記間隙内に空隙部分が生じることも極めて少ない。
【0036】
このようにして圧縮成形するのと同時又は後にシリコーンゴム組成物が硬化する条件でシリコーンゴム組成物を加熱する。例えば、前記シリコーンゴム組成物の場合には、温度155℃以上で3〜10分間程度加熱するとシリコーンゴム組成物が硬化する。このようにしてシリコーンゴム組成物を硬化した後に所望により二次加熱してもよい。
【0037】
シリコーンゴム組成物を硬化した後に成形金型から圧縮成形品を取り出し、所望によりバリ取り等をして、キャップ10の内表面に密設された銅薄膜11を備えて成る超音波診断装置用レンズ2を製造することができる。
【0038】
この発明に係る超音波診断装置用レンズの製造方法は、前記した製造方法に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る超音波診断装置用レンズの製造方法は、成形したキャップ10の外表面を研磨加工することができし、余剰のキャップ10の側面又は銅薄膜11の端部を切断する切断加工を施すこともできる。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
銅薄膜として、商品名「JTC」(IPCグレード1、厚さ9μm、伸び5%(カタログ値)、表面粗さRz3.8μm(カタログ値)、日鉱金属株式会社製)を準備した。シリコーンゴム組成物として、シリコーンゴム及びシリカ(SiO)を含有するシリコーンゴム組成物(信越化学工業株式会社製、商品名「KE−981U」)100質量部と、加硫剤(信越化学工業株式会社製、商品名「C−8」)0.5質量部とを混合して成るシリコーンゴム組成物を準備した。なお、このシリコーンゴム組成物はJIS K6249における可塑度は420であった。なお、前記銅薄膜「JTC」における伸びをJIS Z2241に規定された方法で測定したところ前記カタログ値又とほぼ同様の値であった。
【0040】
次いで、略長方形断面の1辺が15×23mmで高さが3.0mmの凸部を有する第1金型と、略長方形断面の1辺が16×24mmで深さが3.4mmの柱状凹部と深さが0.6mmの錐状凹部とからなる凹部を有する第2金型とを準備した。
【0041】
前記第1金型の前記凸部に前記銅薄膜及びシリコーンゴム組成物をこの順で配置し、前記銅薄膜を前記凸部に密着させて第2金型を重ね合わせた。第2金型を第1金型に向けて前進させ、前記銅薄膜及びシリコーンゴム組成物を圧縮すると同時に成形金型ごと180℃に5分間加熱してシリコーンゴム組成物を加熱硬化させた。放熱後、成形金型から成形品を取り出し、余剰の銅薄膜を切断した。このようにして、5検体の実施例1の超音波診断装置用レンズ2を製造した。
【0042】
(実施例2)
前記銅薄膜を厚みが12μm、JIS Z2241に規定された伸びが9%、JIS B0601−1994に規定された表面粗さRzが4.6μmの銅薄膜に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、5検体の実施例2の超音波診断装置用レンズ2を製造した。
(実施例3)
前記銅薄膜を厚みが18μm、JIS Z2241に規定された伸びが11%、JIS B0601−1994に規定された表面粗さRzが5.9μmの銅薄膜に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、5検体の実施例3の超音波診断装置用レンズ2を製造した。
【0043】
(実施例4)
前記銅薄膜をJIS B0601−1994に規定された表面粗さRzが10μmの銅薄膜に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、5検体の実施例4の超音波診断装置用レンズ2を製造した。
(実施例5)
前記銅薄膜をJIS B0601−1994に規定された表面粗さRzが2.6μmの銅薄膜に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、5検体の実施例5の超音波診断装置用レンズ2を製造した。
【0044】
(比較例1)
前記銅薄膜をJIS Z2241に規定された伸びが3%の銅薄膜に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、5検体の比較例1の超音波診断装置用レンズを製造した。
(比較例2)
前記銅薄膜をJIS Z2241に規定された伸びが13%の銅薄膜に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、5検体の比較例2の超音波診断装置用レンズを製造した。
【0045】
このようにして製造した各超音波診断装置用レンズのキャップ及び銅薄膜の破損・変形状態を目視にて確認した。その結果、実施例1〜5の超音波診断装置用レンズ2はいずれもキャップ10の端部又は角部に破損・変形は認められず、また、銅薄膜11に波打ち等の変形及び破損は認められなかった。このように、超音波診断装置用レンズ2のキャップ10及び銅薄膜11に変形及び破損がないと、超音波診断装置のプローブに超音波診断装置用レンズ2を装着したときに、高い電磁シールド性を発揮することが十分に推測される。一方、比較例1及び2の超音波診断装置用レンズは、5検体のうち3〜4検体において、キャップの端部又は角部が破損・変形し、又は、銅薄膜が波打ち状に変形し若しくは破断していた。
【符号の説明】
【0046】
1 プローブ
2 超音波診断装置用レンズ
3 ケース
4 圧電素子
4a、4b 電極
5 整合層
6 バッキング層
7 シールド膜
8 リード線
9 被検体表面
10 キャップ
11 銅薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム組成物で形成されたキャップと前記キャップの内表面に密設された銅薄膜とを備えて成り、前記銅薄膜は伸びが4〜12%であることを特徴とする超音波診断装置用レンズ。
【請求項2】
前記銅薄膜は前記内表面に接する表面の表面粗さRzが3〜6μmであることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置用レンズ。
【請求項3】
凸部を有する第1金型と前記凸部が進入可能な凹部を有する第2金型とを備えて成る成形金型を用いて、前記凸部と前記凹部との間に配置された前記銅薄膜と前記シリコーンゴム組成物とを圧縮成形することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置用レンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−83375(P2011−83375A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237493(P2009−237493)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】