説明

超音波診断装置

【課題】 臨床的な重要度に応じて収集レートを制御し、十分な診断情報を与えると共にメモリ資源を有効に活用することができる超音波診断装置を提供すること。
【解決手段】超音波診断装置において把握可能な超音波診断固有の指標(例えば、輝度変化、メモリの空き容量、造影剤の種類、スキャンシーケンス、ECG波形等)を基準として、画像データを収集するレートを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報の時間的変化等に応じてメモリへの書き込みレートを制御することで、メモリ資源を有効活用することができる超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は超音波パルス反射法により、体表から生体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線などの被爆がなく安全性が高い、血流イメージングが可能等の特長を有し、心臓、腹部、泌尿器、および産婦人科などで広く利用されている。
【0003】
この超音波画像診断装置においては、種々の撮影法による生体情報の映像化が可能である。例えばコントラストエコー法(造影剤エコー法)は、被検体の血管内に微小気泡(マイクロバブル)等からなる超音波造影剤を投与することで、超音波散乱エコーの増強を図るものである。
【0004】
この様なコントラストエコー法では、造影剤の浸透状況の変化に従って分単位の長時間にわたり超音波画像を記録する必要がある。そのため、従来の超音波診断装置では、予め設定された一定のレートにより超音波画像を記録している。
【0005】
しかしながら、従来の構成においては、例えば次のような問題がある。
【0006】
まず、従来の超音波診断装置においては、臨床的に非常に重要な期間(例えば、造影剤を投与した直後の超音波画像が激しく変化する期間等)も、特に重要でない期間(例えば、造影剤が飽和して超音波画像の時間的変化がほとんどない期間)も一律のレートで画像収集される。そのため、臨床的に重要な期間であるにも関わらず、診断画像データが十分に収集できない可能性がある。
【0007】
一方、臨床的に非常に重要な期間に合わせて収集レートを高レートにした場合には、保存すべきデータサイズは膨大になることがあり、有限なメモリ資源を十分に有効利用できない。また、事後的に解析等する場合においても、所望する画像データ検索が手間となり、操作者に作業負担を与える場合がある。
【0008】
なお、本願に関連する公知文献としては、例えば次のようなものがある。
【特許文献1】特開平9−24047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、臨床的な重要度に応じて収集レートを制御し、十分な診断情報を与えると共にメモリ資源を有効に活用することができる超音波診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0011】
本発明の視点は、被検体の所定部位に対し超音波を送信し、当該所定部位からのエコー信号を受信する超音波プローブと、前記超音波プローブを駆動するための駆動信号を発生し、当該駆動信号を前記超音波プローブに供給する駆動信号発生手段と、前記超音波プローブによって受信された前記エコー信号に基づいて、フレーム毎の超音波画像データを生成する画像データ生成手段と、フレーム毎の前記超音波画像データを、所定の収集レートで記憶する記憶手段と、所定の指標に従って前記収集レートを制御する制御手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0012】
以上本発明によれば、臨床的な重要度に応じて収集レートを制御し、十分な診断情報を与えると共にメモリ資源を有効に活用することができる超音波診断装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0014】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置10は、探触子11、送受信回路13、検波回路15、A/D変換回路17、スキャン・コンバータ21、シネメモリ23、制御部(CPU)25、フレームメモリ27、ビデオ変換部29、D/A変換回路31、表示部33、操作パネル35、生データメモリ回路40、生データメモリ制御回路42、ディスク装置(HDD)44、記憶媒体46、ECG48を具備している。
【0015】
探触子11は、パルサからの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該探触子11から被検体に超音波が送信されると、生体組織の非線形性により、超音波の伝播に伴って種々のハーモニック成分が発生する。送信超音波を構成する基本波とハーモニック成分は、体内組織の音響インピーダンスの境界、微小散乱等により後方散乱され、反射波(エコー)として探触子11に受信される。
【0016】
送受信回路13は、図示しない遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。送受信回路13は、このレートパルスに基づくタイミングで、探触子11に駆動信号(パルス信号)を印加する。
【0017】
また、送受信回路13は、図示していないアンプ回路、加算器を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。加算器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性(走査線)が決定される。
【0018】
検波回路15は、送受信回路13から受けとった信号に90度位相のずれたリファレンス周波数を有する信号をそれぞれ乗ずることで、BモードやMモードでは振幅検波を、ドプラモードでは位相検波を実行し、I、Q信号を得る。このI、Q信号は、受信信号からリファレンス周波数を減じた周波数を有する信号となる。なお、リファレンス周波数は、一般に超音波画像を生成する帯域の中心周波数に設定される。
【0019】
A/D変換回路17は、検波回路15から受けとったアナログ信号を、ディジタル信号に変換する。
【0020】
スキャン・コンバータ21は、A/D変換回路17から入力した超音波スキャンの走査線信号列を、空間情報に基づいた直交座標系のデータに変換する。
【0021】
シネメモリ23は、例えばフリーズする直前の複数フレームに対応する超音波画像を保存するメモリである。このシネメモリ23に記憶されている画像を連続表示(シネ表示)することで、超音波動画像を表示することも可能である。
【0022】
制御部25(CPU)は、システム全体の制御中枢として、本超音波診断装置を静的又は動的に制御する。
【0023】
フレームメモリ27は、一フレーム分の超音波画像を記憶するメモリであり、当該フレームメモリ27に現在記憶されている画像が表示部33に表示される。また、例えば、操作パネル35のフリーズボタンを押すことにより、当該フレームメモリ27に現在記憶されている画像は、ディスク装置44や記憶媒体46に自動的に記憶される。
【0024】
ビデオ変換部29は、フレームメモリ27から受け取った画像データに対し、さらにビデオフォーマット変換を行う。
【0025】
D/A変換回路31は、ビデオ変換部29から受け取った画像データ(ディジタル信号)をアナログ信号に変換する。
【0026】
表示部33は、D/A変換回路31からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。また、造影剤を用いた場合には、造影剤の空間的分布、つまり血流或いは血液の存在している領域を求めた定量的な情報量に基づいて、輝度画像やカラー画像として表示する。
【0027】
操作パネル35は、オペレータからの各種指示・命令・情報を装置本体22にとりこむための、関心領域(ROI)の設定などを行うための(マウスやトラックボール、モード切替スイッチ、キーボード等)が設けられる。また、当該操作パネル35を介して、送信超音波の送信条件をマニュアル的に入力することもできる。
【0028】
生データメモリ回路40は、生データメモリ制御回路42の制御のもと、生データを所定のレートで保存する。ここで、生データとは、広義にはスキャンコンバージョン前の任意の段階の超音波画像データを意味するが、本実施形態では、説明を具体的にするため、A/D変換回路17において処理を受けた段階のデータを指すものとする。
【0029】
生データメモリ制御回路42は、制御部25の制御のもと、生データメモリ回路40への画像データ書き込みレート(収集レート)を、所定の基準に基づいて制御する。この生データメモリ制御回路42の機能については、後で詳しく説明する。
【0030】
ディスク装置(HDD)44は、超音波撮影を実行するための所定の撮影プログラム、フリーズ指示等によって取り込まれた画像を記憶する主記憶装置である。
【0031】
記憶媒体46は、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、光磁気ディスク(MO)、半導体メモリなどの脱着自在な記録媒体である。
【0032】
ECG48は、心臓の電気現象の時間変化を示すグラフ(波形)を収集する。
【0033】
(収集レート制御機能)
次に、本超音波診断装置10が有する収集レート制御機能について説明する。本機能は、超音波診断装置において把握可能な超音波診断固有の指標を基準として、画像データを収集するレートを制御するものである。以下、基準とする指標毎の実施例として説明する。また、以下においては、画像データとして生データを収集する場合について説明する。しかしながら、本収集レート制御機能は、収集する画像データの種類には拘泥されず、いずれの処理段階の画像データの収集においても実行可能である。
【0034】
[輝度変化に基づく収集レート制御]
まず、輝度変化を指標として収集レートの制御を行う例について説明する。この例は、シネメモリ23中に画像データに基づき、制御部25によって作成されたTIC(Time Intensity Curve:時間輝度変化曲線)を監視することで輝度変化(すなわち、バブル流入に伴う超音波画像の変化)を把握し、この輝度変化に応じた収集レートの制御を行うものである。なお、TIC作成の対象となる領域は、操作者のマニュアル設定や装置の初期設定によって設定される。
【0035】
図2の上段は、シネメモリ23に保存される画像データを用いて、制御部25によって作成されたTICの一例を示した図である。制御部25は、当該該TICを監視しながらその変化率の変化量等に応じて撮影総時間を複数の期間に分割し、各期間の変化率に基づいて画像データの収集レートを決定する。収集レートの決定法は、特に限定しない。例えば、収集レートと輝度変化率との対応テーブルを予めディスク装置44に格納しておき、これに基づいて各期間の収集レートを計算する、又は、各期間の輝度変化率に所定の定数を積算することにより、各期間の収集レートを計算する等の手法を採用することができる。
【0036】
なお、図2の下段においては、同図上段のTICを期間T1、T2、T3の三つの期間に分割し、各期間について決定されたデータ収集レートを概念的に示した。同図に示すように、期間T1が造影剤流入により最も輝度変化率が大きく、臨床的意義も重要であると考えられるため、当該期間T1については、高い収集レートを選択する。一方、期間T2については、造影剤が飽和に達し輝度変化率が小さく臨床的意義も低いため、期間T1に比して低い収集レートを選択し、期間T3については、期間T2に比してさらに低い収集レートを選択する。
【0037】
[メモリの空き容量に基づく収集レート制御]
次に、メモリの空き容量を指標として収集レートの制御を行う例について説明する。この例は、制御部25の制御のもと、例えば生データメモリ制御部42が、生データメモリ回路40の空き容量を随時監視して把握し、この空き容量に応じた収集レートの制御を行うものである。
【0038】
空き容量に応じた収集レートの決定法は、特に限定しない。例えば、収集レートと空き容量との対応テーブルを予めディスク装置44に格納しておき、これに基づいて各期間の収集レートを計算する、輝度変化率に所定の定数を積算することにより、各期間の収集レートを計算する、撮影総時間内に収集する画像データが全て保存されるように、空き容量から収集レートを逆算する等の手法を採用することができる。
【0039】
このモリの空き容量を収集レート制御の指標とする手法は、他の手法、特に輝度変化を収集レートの指標とする手法と組み合わせて使用すると効果的である。例えば、図2の上段に示す期間T1、期間T2、期間T3のそれぞれにおいて所定のレートにて画像を収集しているものとする。生データメモリ制御部42は、所定のタイミングで生データメモリの空き容量を計算し、その値が所定の閾値を下回った場合には、各期間の収集レートをそれぞれ低下させるように生データメモリ回路40を制御する。
【0040】
より具体的には、例えば期間T1、期間T2については閾値を下回る前の収集レートを0.4倍したレートに、期間T3については閾値を下回る前の収集レートを0.1倍したレートに、それぞれ低下させる。また、例えば、
空き容量をそれぞれ期間T1:期間T2:期間T3=4:1:1といった比率になるように振り分け、撮影総時間内に収集する画像データが各期間内において全て保存されるように、収集レートを低下させる。
【0041】
なお、空き容量に応じて収集レートを低下させるのみでなく、例えば空き容量に十分余裕がある場合には、逆に収集レートを上昇させる構成であってもよい。
【0042】
[造影剤の種類に基づく収集レート制御]
一般的に、造影剤が診断部位へ流入するまでの時間や造影剤の流入/流出速度等は、被検体の個体差と造影剤の種類(例えば、注入方法、注入部位、次世代造影剤であるか否か、その他の造影剤の成分や性質等)に依存する。従って、例えば診断上重要な画像が得られるタイミングは、造影剤によって異なる場合がある。本超音波診断装置10は、造影剤の種類を指標として収集レートの制御を行うことで、造影剤の種類に応じた、好適なタイミングでの収集レートの切り替え、及び収集レートの選択を実行する。
【0043】
造影剤の種類に応じた収集レートは、例えばディスク装置44に予め記憶されたテーブルに基づいて決定される。なお、図3に、造影剤の種類に応じて収集レート(図2に示した期間T1、T2、T3毎の収集レート)を決定するためのテーブルの一例を示した。
【0044】
また、造影剤の種類に応じた収集レートを操作者のマニュアル設定によって登録可能とし、これに従って収集レートを制御する構成であってもよい。
【0045】
図4は、本超音波診断装置10が具備する、造影剤の種類に応じた収集レートをマニュアル設定するためのインターフェースの一例を示した図である。例えば、使用可能な造影剤の種類がn種類あるとすれば、スイッチ350により、Type1〜nと各造影剤とを対応づけて登録する。また、スイッチ351により各造影剤(図4においては、Type1に対応する造影剤)を用いて実行する撮影総時間を登録し、スイッチ352により、設定された撮影総時間の期間1/3、期間2/3、期間3/3のそれぞれ(例えば、図2の期間T1、期間T2、期間T3に相当するもの)における収集レートを登録する。以上の各登録により、図3に示したテーブルが作成され、ディスク装置44に記憶され、登録後においては、スイッチ350により使用する造影剤を選択するのみで、登録内容に従った収集レート制御が自動的に実行される。
【0046】
[スキャンシーケンスに基づく収集レート制御]
次に、スキャンシーケンスを指標として収集レートの制御を行う例について説明する。この例は、制御部42がスキャンシーケンスに基づいて現在の撮影が全体のどの時相にあるかを判定し、その時相に応じて収集レートの制御を行う手法である。この手法はスキャンシーケンスの種類には拘泥されないが、例えばフラッシュエコー法を実行するためのシーケンス(フラッシュエコーシーケンス)において実益が大きい。以下、フラッシュエコーシーケンスを指標として収集レートの制御を行う場合を例として説明する。
【0047】
図5は、フラッシュエコーシーケンスを指標とした収集レート制御を説明するための図である。図5に示すように、フラッシュエコーシーケンスにおいては、モニタリング中においては、超音波走査面内に造影剤が次第に灌流する様子を低音圧スキャンによりモニタリングするモニタリングスキャン、時間の経過と共に充填された造影剤を高音圧スキャンにより当該超音波走査面内から一掃することで高調波を発生させ、これを取得して画像化するフラッシュスキャンが繰り返し実行される(なお、図5中の矢印は超音波スキャンを、その長さは音圧の強さをそれぞれ擬似的に示している)。係るシーケンスにおいて得られる画像は、フラッシュスキャンに近づくに従って臨床的価値が次第に高くなり、フラッシュスキャンによって得られるものが最も臨床的価値が高い。
【0048】
フラッシュエコー法においては、造影剤を利用する性格上、モニタリングスキャン及びフラッシュスキャンの実行タイミングが、予めプログラムされている場合がある。係る場合には、スキャンシーケンス全体における時相を監視し特定することにより、収集された画像が図5のどのスキャンに該当するがを特定することができ、従って、その画像の臨床的価値を判定することができる。
【0049】
そこで、本超音波診断装置10は、制御部42の監視により収集した画像の時相を把握し、その時相が、例えば造影剤の充填開始付近に対応する場合には収集レートを低く設定し、フラッシュスキャン時及び少なくともその直前を含む期間に対応する場合には、収集レートを最も高くするように制御する。また、造影剤の充填開始付近からフラッシュスキャンまでの期間においては、フラッシュスキャンに近づくに従って、収集レートが高くなるように制御する。なお、図6に、図5の丸印内に存在する間歇送信に関する当該制御の概念図を示した。同図における矢印は、フレーム画像の保存動作を擬似的に示している。
【0050】
また、探触子11から送信される送信超音波の音圧を監視し、その変化に基づいて収集された画像の臨床的価値を判定することも可能である。
【0051】
図7は、図5に従うフラッシュエコーシーケンスにおける送信音圧の変化を示した図である。制御部42は、探触子11から送信される送信音波の音圧を監視することで、例えば図7に示す各高音圧超音波スキャンの実行時刻(時相)、及びその前後の各期間を特定することが可能である。従って、これらの期間においては収集レートが高くなるように、それ以外の期間については収集レートが低くなるように、制御する。なお、このように送信超音波の音圧変化に基づく制御は、マニュアル操作によってフラッシュスキャンを実行する場合においても有効である。
【0052】
[ECG波形に基づく収集レート制御]
次に、ECG波形を指標として収集レートの制御を行う例について説明する。この例は、制御部42がECG波形に基づいて心時相を判定し、その心時相に応じて収集レートの制御を行う手法である。
【0053】
図8は、ECG波形を指標とした収集レート制御を説明するための図である。図8上段に示すように、複数フレームの超音波画像データ(今の場合、生データ)が連続的に撮影されるものとする。制御部25は、各画像データの撮影時刻とECG48から得られるECG波形に基づく心時相との対応関係から、所定の時相に対応するフレームの画像データを間引き、それ以外を残してメモリ回路40に保存する。なお、図8下段では、本手法の一例として、図8上段に示した複数フレームのうち、図8中段のECG波形におけるQRS期間(Q波、R波、S波が発生する期間)に属する時相、T波始点時相、T波終点時相、P波始点時相のそれぞれに対応するのみをメモリ回路40に保存する例を示した。
【0054】
なお、本手法における収集レートの決定手法は、ECG波形を指標とするものであれば特に限定されない。例えば、各心時相と収集レートとを対応付けたテーブルを予めディスク装置44に格納しておき、これに基づいて収集レートを決定する、或いは、例えばR−R波の一心拍周期の間引き率を定義する曲線を予めディスク装置44に格納しておき、これに基づいて収集レートを決定する等の手法を採用することができる。
【0055】
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0056】
まず、本超音波診断装置によれば、輝度変化率を監視することで造影剤の灌流状況を定量的に分析し、その変化に応じて収集レートを制御する。従って、造影剤の灌流に伴う画像変化(輝度変化)の急激な期間(例えばフラッシュエコーの直前から直後の期間等)においては高いレートを採用し、一方、画像変化の少ない期間においては低いレートを採用して画像を収集・保存することができる。そのため、操作者は特別な操作を行うことなしに、臨床上重要な期間については詳細な画像データを自動的に取得しつつ、輝度変化率に応じて収集レートを適切に制御して無駄なデータを自動的に排除することができる。
【0057】
また、本超音波診断装置によれば、メモリの空き容量を随時管理して把握し、この空き容量と撮影総時間とを考慮して収集レートを制御する。従って、撮影総時間に撮影された画像を常に残りの容量に保存可能とするように収集レートを制御し、また、臨床上の重要度に応じて、収集レートを制御することも可能である。そのため、操作者は、メモリの空き容量に特に注意を払うことなく、シーケンス全体にわたって撮影される画像を途切れることなく収集し得ると共に、臨床上重要な期間については詳細な画像を取得することができる。
【0058】
また、本超音波診断装置によれば、造影剤の種類を指標として収集レートの制御を行う。従って、操作者は、造影剤の特性に基づく流入速度のばらつき等に特に注意を払うことなく、造影剤の種類に応じた、好適なタイミングでの収集レートの切り替え、及び収集レートの選択を実行することができる。
【0059】
また、本超音波診断装置によれば、スキャンシーケンスを指標として撮影フェーズを判定し、当該撮影フェーズに応じて収集レートを制御する。従って、例えば撮影がフラッシュエコーシーケンスに従う場合には、フラッシュエコーの直前から直後の期間等においては高いレートを採用し、一方、モニタリングモードの最初の期間においては低いレートを採用して画像を収集・保存することができる。そのため、操作者は特別な操作を行うことなしに、臨床上重要な期間については詳細な画像データを自動的に取得しつつ、撮影フェーズに応じて収集レートを適切に制御して無駄なデータを自動的に排除することができる。
【0060】
また、本超音波診断装置によれば、ECG波形に基づいて心時相を判定し、その心時相に応じて収集レートの制御を行う。従って、例えば一心拍において撮影される画像のうち、臨床上特に重要な心時相に対応する画像のみが選択的に保存され、その他の重要度の低い時相に対応する画像は間引きされる。そのため、操作者は特別な操作を行うことなしに、臨床上重要な期間については詳細な画像データを自動的に取得しつつ、心時相に応じて収集レートを適切に制御して無駄なデータを自動的に排除することができる。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上本発明によれば、臨床的な重要度に応じて収集レートを制御し、十分な診断情報を与えると共にメモリ資源を有効に活用することができる超音波診断装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成図を示している。
【図2】図2は、制御部25によって作成されたTICの一例を示した図(上段)と、当該TICに基づいて制御される画像データ収集レートを示した概念図(下段)である。
【図3】図3は、造影剤の種類に応じた収集レートを決定するためのテーブルの一例を示した図である。
【図4】図4は、本超音波診断装置10が具備する、造影剤の種類に応じた収集レートをマニュアル設定するためのインターフェースの一例を示した図である。
【図5】図5は、フラッシュエコーシーケンスを指標とする収集レート制御を説明するための図である。
【図6】図6は、フラッシュスキャンシーケンスを指標とする収集レート制御の一例を示した概念図である。
【図7】図7は、図5に従うフラッシュエコーシーケンスにおける送信音圧の変化を示した図である。
【図8】図8は、ECG波形を指標とした収集レート制御を説明するための図である。
【符号の説明】
【0064】
10…超音波診断装置、11…探触子、13…送受信回路、15…検波回路、17…A/D変換回路、21…スキャン・コンバータ、23…シネメモリ、25…制御部(CPU)、27…フレームメモリ、29…ビデオ変換部、31…D/A変換回路、33…表示部、35…操作パネル、40…生データメモリ、42…生データメモリ制御回路、44…ディスク装置、46…記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の所定部位に対し超音波を送信し、当該所定部位からのエコー信号を受信する超音波プローブと、
前記超音波プローブを駆動するための駆動信号を発生し、当該駆動信号を前記超音波プローブに供給する駆動信号発生手段と、
前記超音波プローブによって受信された前記エコー信号に基づいて、フレーム毎の超音波画像データを生成する画像データ生成手段と、
フレーム毎の前記超音波画像データを、所定の収集レートで記憶する記憶手段と、
所定の指標に従って前記収集レートを制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
フレーム毎の前記超音波画像データに基づく輝度変化曲線を生成する曲線生成手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記輝度変化を前記指標として、前記収集レートを制御することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記記憶手段の空き容量を監視する監視手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記監視手段によって監視される前記空き容量を前記指標として、前記収集レートを制御することを特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記被検体に注入する造影剤の種類を入力する入力手段をさらに具備し、
前記制御手段は、入力された前記造影剤の種類を前記指標として、予め記憶された造影剤の種類と収集レートとの対応テーブルに基づいて、前記収集レートを制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記制御手段は、所定のシーケンスに従って実行される撮影の撮影総時間を複数の期間に分割し、前記期間毎に前記収集レートを決定することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項6】
スキャンシーケンスを指定する指定手段をさらに具備し、
前記制御手段は、指定されたスキャンシーケンスを前記指標として、前記収集レートを制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記超音波プローブから送信される送信超音波の音圧変化を監視する監視手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記音圧変化を前記指標として、前記収集レートを制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記制御手段は、高音圧による超音波送信を間歇的に実行するシーケンスに従って撮影を実行する場合には、高音圧による超音波送信から次の高音圧による超音波送信までの間に、前記収集レートが次第に高くなるように前記収集レートを制御することを特徴とする請求項6又は7記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記被検体から心電図波形を取得する心電波形取得手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記心電図波形を前記指標として、前記収集レートを制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−102126(P2006−102126A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292831(P2004−292831)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】