説明

超音波診断装置

【課題】簡易な構成で比較的高画質な超音波画像を得る。
【解決手段】超音波診断装置2の検査部10には、超音波トランスデューサ(UT)ユニット15、形状計測ユニット16、およびこれらを被観察部位Cに対して水平方向に移動させるベルトコンベア17が配されている。UTユニット15は、5個の超音波トランスデューサUTa25〜UTe29が凸曲面上に配列されたUTアレイ22を有し、被観察部位Cに超音波走査を行う。形状計測ユニット16は、レーザー光源37および受光器38を有し、被観察部位Cの形状を計測する。プロセッサ部11の主制御部60は、形状計測の結果に基づき、UTa25〜UTe29のうち、被観察部位Cに超音波が垂直に当たり得るUTをUTユニット15の移動位置に応じて選択駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の被観察部位の形状情報を取得して、これに応じた超音波走査を行う超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の被観察部位、例えば乳房を超音波検査して乳がん検診に資する超音波診断装置が提案されている。この種の超音波診断装置では、高画質な超音波画像を取得するため、曲面形状を有する乳房に対して超音波が常に垂直に当たるよう、様々な工夫がなされている。
【0003】
特許文献1、2には、乳房と超音波トランスデューサ、または超音波プローブの間に温水等を介在させ、乳房に対して超音波トランスデューサ、または超音波プローブを機械的に走査する水浸法を用いた超音波診断装置が開示されている。特許文献1、2では、乳房の形状情報を得るため、乳房を超音波走査やレーザー走査によりプレスキャンしている。そして、プレスキャン結果に基づいて、乳房に対して超音波が垂直に当たるよう、超音波トランスデューサ、または超音波プローブを昇降、移動、傾斜させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−301070号公報
【特許文献2】特開2009−225904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の発明は、超音波トランスデューサ、または超音波プローブを昇降させたり傾斜させたりする機構が要るため構造が複雑になり、組立コスト、部品コスト、メンテナンスコストが嵩むという問題があった。従って、特許文献1、2の構成を現実的に製品化することはコスト面の障害が大きかった。
【0006】
本発明は、上記背景を鑑みてなされたものであり、簡易な構成で比較的高画質な超音波画像を得ることができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の超音波診断装置は、被検体の被観察部位の形状を計測する形状計測手段と、被観察部位に超音波を送信するとともに被観察部位からの反射波を受信し、反射波に応じた検出信号を出力する超音波トランスデューサが曲面上に複数配列されてなる超音波トランスデューサアレイと、前記超音波トランスデューサアレイを被観察部位に対して水平方向に移動させる移動機構と、前記形状計測手段により取得された被観察部位の形状情報に基づいて、複数の超音波トランスデューサのうち、被観察部位に超音波が垂直に当たり得る超音波トランスデューサを前記超音波トランスデューサアレイの移動位置に応じて選択駆動させる駆動制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記超音波トランスデューサアレイは、凸曲面上に複数の超音波トランスデューサが配列されてなることが好ましい。なお、超音波トランスデューサが配列される面は凸曲面に限らず、凹曲面であってもよい。また、「曲面」には、角度の異なる複数の平坦な傾斜面を繋げた断面多角形状のものも含む。
【0009】
前記形状計測手段は、被観察部位に対して非接触で形状計測を行う。具体的には、前記形状計測手段は、被観察部位に光を照射する投光器と、被観察部位からの反射光を受光する受光器とからなり、前記受光器の出力に基づいて被観察部位の形状情報を算出する。
【0010】
超音波トランスデューサは半導体デバイスからなることが好ましい。半導体デバイスは、具体的にはMEMS技術にてシリコン基板上に作製されるcMUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer)やpMUT(Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer)である。
【0011】
被観察部位と前記超音波トランスデューサアレイの間に超音波伝達媒体を介在させることが好ましい。また、被観察部位は、例えば乳房、腹部、甲状腺、頸動脈、関節(肘、膝等)といった軟部組織を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の超音波トランスデューサが曲面上に複数配列されてなる超音波トランスデューサアレイを被観察部位に対して水平方向に移動させつつ、被観察部位の形状計測の結果に基づいて、被観察部位に超音波が垂直に当たり得る超音波トランスデューサを順次選択駆動するので、簡易な構成で比較的高画質な超音波画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】超音波診断装置の概略を示す構成図である。
【図2】検査部の要部外観斜視図である。
【図3】超音波トランスデューサアレイの走査範囲および軌跡を示す平面図である。
【図4】超音波診断装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】主制御部の構成およびプロファイルの一例を示すブロック図である。
【図6】超音波トランスデューサアレイの駆動例を示す説明図である。
【図7】超音波診断の手順を示すフローチャートである。
【図8】UTアレイの別の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、超音波診断装置2は、被検体Hの乳房C1およびその周囲の腋窩部位(腋の下)C2、鎖骨下C3(以下、まとめて被観察部位Cという)といった乳がんの発生箇所の超音波画像を取得するものであり、検査部10とプロセッサ部11とからなる。被検体Hはベッド(図示せず)にうつ伏せに寝かされ、ベッド内部に配置された検査部10に片方の乳房C1を対面させて安静な状態を保っている。以下の説明では、ベッドの長手方向をX方向、これに直交する方向をY方向(ともに水平方向に相当)、鉛直方向をZ方向とする。
【0015】
検査部10は、超音波伝達媒体、例えば温水12が満たされた水槽13と、水槽13の上面開口全体を覆う弾性シート14とを有する。水槽13は、被観察部位Cをカバーするに十分なサイズをもつ。弾性シート14は超音波伝達可能な材料からなり、被観察部位Cが載せられるとその重みにより被観察部位Cの形状に倣うように変形する。
【0016】
水槽13内には、超音波トランスデューサ(以下、UTと略す)ユニット15、形状計測ユニット16、およびベルトコンベア17等が設けられている。これら各部材の電気系統は、温水12が入り込んで故障しないよう、水密性が確保された空間に配置されており、水槽13に穿たれたシール孔を通した配線ケーブル(ともに図示せず)により、外部のプロセッサ部11と電気的に接続されている。
【0017】
図2において、UTユニット15は、直方体状の台座20、台座20上に取り付けられたバッキング材21、バッキング材21上に設けられたUTアレイ22等を備える。バッキング材21は、XZ平面に平行な断面が凸円弧状で、Y方向の両側に張り出すよう形成されている。UTアレイ22上には、被検体Hとの間の音響インピーダンスを緩和するための音響整合層23が設けられている。また、音響整合層23上には、UTアレイ22から発せられる超音波を被観察部位Cに向けて収束させる音響レンズ24が取り付けられている。UTユニット15には、この他にも、UTアレイ22を駆動するための配線基板等が設けられている。
【0018】
UTアレイ22は、略短冊状の5個のUT、すなわちUTa25、UTb26、UTc27、UTd28、およびUTe29(UTe29は図6参照)が一次元アレイ状に所定のピッチで配列されてなる。UTの材料は特に規定しないが、例えばPZT等の一般的な圧電セラミックス厚膜である。
【0019】
UTa25〜UTe29は、バッキング材21の曲面に沿ってX方向に並べて取り付けられている。UTa25〜UTe29は、台座20の幅(ベルトコンベア17の第一直線走行路47の幅)と第一直線走行路47間の隙間を足したY方向の幅を有し、第一直線走行路47間の隙間の略半分の幅でY方向両側に張り出している。
【0020】
UTa25は、バッキング材21の凸曲面の頂点に配されており、XY平面とのなす角が略0°(XY平面と略平行)である。UTa25のすぐ脇のUTb26、UTc27は、バッキング材21の凸曲面の中腹の、XY平面とのなす角がそれぞれ略30°となる対称な位置に配されている。UTd28、UTe29は、バッキング材21の凸曲面の裾野の、XY平面とのなす角がそれぞれ略60°となる対称な位置に配されている。
【0021】
形状計測ユニット16は、被観察部位Cの三次元形状を計測するためのものであり、UTユニット15の台座20と略同じサイズの直方体状をなしている。形状計測ユニット16の上面には、レーザー光が透過する投光窓35および受光窓36が設けられている。投光窓35および受光窓36の奥には、レーザー光源37および受光器38がそれぞれ設けられている。レーザー光源37は、例えば赤外光半導体レーザーからなり、被観察部位Cに対して赤外レーザー光を発する。受光器38は、例えばCMOSイメージセンサからなり、被観察部位Cで反射したレーザー光を受光する。
【0022】
ベルトコンベア17は、環状のクレセントチェーン45をモータ46(図4参照)の駆動にて循環回走させる搬送装置である。図3に示すように、ベルトコンベア17は、X方向に平行に延び、Y方向に等間隔に並んだ複数列(例えば10列)の第一直線走行路47と、各第一直線走行路47の端部同士を繋ぐ曲線走行路48と、各ユニット15、16の走行始点Sおよび終点Eを繋ぐY方向に平行な第二直線走行路49とを有する。各ユニット15、16はベルトコンベア17に載せられ、形状計測ユニット16が先行した形で、ベルトコンベア17に沿って一定速度でXY平面上をジグザグに移動する。これにより、被観察部位Cの形状計測および超音波走査が可能となる。
【0023】
図4において、主制御部60は、プロセッサ部11全体の動作を統括的に制御する。主制御部60は、図示しないデータバスやアドレスバス、制御線を介して各部と接続している。ROM61には、プロセッサ部11の動作を制御するための各種プログラム(OS、アプリケーションプログラム等)やデータ(グラフィックデータ等)が記憶されている。主制御部60は、ROM61から必要なプログラムやデータを読み出して、作業用メモリであるRAM62に展開し、読み出したプログラムを逐次処理する。また、主制御部60は、操作部63から操作入力信号を受け、これに応じた動作を各部に実行させる。
【0024】
主制御部60には、形状計測ユニット16の受光器38が接続されている。図5に示すように、主制御部60には、ROM61のプログラムを実行することにより、形状データ算出部80とプロファイル作成部81が構築される。形状データ算出部80は、受光器38の出力から、三角測量の原理に基づき、被観察部位Cの三次元形状を表す形状データを算出する。プロファイル作成部81は、形状データ算出部80で算出された形状データを元に、UTアレイ22の駆動制御手順を示すプロファイル82を作成する。
【0025】
プロファイル82は、ベルトコンベア17の第一直線走行路47の列No.とX座標(ともに図3参照)毎に、UTa25〜UTe29のうちのいずれを駆動させて超音波走査をさせるかを規定したものである。プロファイル作成部81は、被観察部位Cの各領域A1、A2、A3、・・・(図6参照)で被観察部位Cに超音波を垂直に照射し得るUTを形状データから割り出す。具体的には、形状データからその領域のXY平面とのなす角度を求め、求めた角度と傾き角が最も近いUTを選択する。
【0026】
例えば、図6に示す領域A1はX方向と略平行、すなわちXY平面とのなす角が略0°であるため、駆動するUTとしてはUTa25を選択する。同様に、領域A2、A3はそれぞれXY平面とのなす角が略30°、60°であるため、UTb26、UTd28をそれぞれ選択する。プロファイル作成部81は、このUTの選択を第一直線走行路47の列およびX座標毎に行うことで、被観察部位C全体をカバーするプロファイル82を作成する。この際、第一直線走行路47の奇数列と偶数列で、UTb26とUTc27およびUTd28とUTe29の位置関係が逆になることに留意する。プロファイル作成部81は、作成したプロファイル82をRAM62に記憶させる。
【0027】
乳房の形状は比較的滑らかで凹凸が少ないが、乳頭やアンダーバスト、乳房と腋窩部位、鎖骨下の境界部分は他の部分との凹凸差がある。このため、UTの選択駆動がUTユニット15の移動に間に合わず、超音波走査が行われない領域Aができてしまう。例えば図6の領域A1と領域A2の境界までUTa25で超音波走査して、その後UTb26に切り替えた場合、その時点のUTユニット15は領域A1と領域A2の境界の直下にあるため、領域A2の前半部分が超音波走査されなくなってしまう。これを防ぐため、プロファイル作成部81は、隣り合う各領域Aの境界の手前で次の領域AのUTに切り替え、超音波走査されない領域Aが最小限となるようプロファイル82のUT駆動の項を設定する。
【0028】
図4に戻って、送受信部64はパルサおよびレシーバからなり、UTa25〜UTe29用に5個設けられている。送受信部64は、主制御部60の制御の下、ベルトコンベア17によるUTユニット15の移動に同期して、UTa25〜UTe29のうち、プロファイル82により選択されたUTに超音波および反射波の送受信を行わせる。こうすることで、図6に示すように、UTユニット15の移動に応じて駆動するUTが領域A毎に変更されながら超音波走査が実行される。
【0029】
送受信部64は、主制御部60から送信される駆動信号に基づいて、プロファイル82により選択されたUTに超音波を発生させるための励振パルスを送信する。また、送受信部64は、被観察部位Cからの反射波を受信してUTから出力された検出信号を増幅してA/D変換し、A/D変換でデジタル化した検出信号を画像処理部65に出力する。
【0030】
なお、乳房C1は凸形状であるので、当然ではあるが領域A毎に被観察部位CとUTとの距離が異なる。鎖骨下およびアンダーバストは距離が遠く、乳頭が最も距離が近くなる。被観察部位CとUTとの距離は形状データを解析すれば求まる。送受信部64は、被観察部位Cとの距離に応じてUTの駆動条件(駆動電圧等)を適宜変更し、被観察部位Cに常に一定強度の超音波が照射されるようにする。
【0031】
画像処理部65は、送受信部64からの検出信号に対して直交検波処理を施し、検出信号を複素ベースバンド化する。そして、ベルトコンベア17の走行始点Sから終点EにUTユニット15が移動するまでの間の複数回の超音波および反射波の送受信で得られた検出信号から、形状データを参照して一つの超音波画像を生成する。表示制御部66は、画像処理部65で生成された超音波画像に患者情報や検査情報を合成し、これをモニタ67に表示させる。
【0032】
主制御部60には、形状計測ユニット16のレーザー光源37、およびベルトコンベア17を駆動させるモータ46が接続されている。主制御部60は、これらレーザー光源37およびモータ46の駆動を制御する。主制御部60は、例えばモータ46に入力する駆動パルス数に基づいて、ベルトコンベア17による各ユニット15、16の移動量(XY平面における位置)を検出する。
【0033】
次に、図7のフローチャートを参照して、上記構成の超音波診断装置2で被観察部位Cの超音波診断を行う手順を説明する。まず、被検体Hをベッドにうつ伏せに寝かせ、被観察部位Cを検査部10の弾性シート14に押し当てた状態で安静にさせる(S10)。そして、操作部63を操作して、被検体Hの情報や検査日の日付等を入力した後、検査開始を指示する操作入力信号を入力する。このときベルトコンベア17は停止しており、従って各ユニット15、16は走行始点Sにある。
【0034】
操作部63からの操作入力信号を受けると、主制御部60は、モータ46を駆動させて、ベルトコンベア17により各ユニット15、16を移動させる。またこの移動中、主制御部60は、レーザー光源37を駆動させる。これにより投光窓35から被観察部位Cにレーザー光が照射され、その反射光が受光窓36を介して受光器38にて受光される(S11)。主制御部60の形状データ算出部80は、受光器38の出力を元に形状データを算出する(S12)。そして、この形状データに基づいて、プロファイル作成部81でプロファイル82が作成される(S13)。作成されたプロファイル82は、RAM62に記憶される。
【0035】
形状計測終了後、主制御部60は、第二直線走行路49を通って終点Eから走行始点Sに各ユニット15、16が戻るまでベルトコンベア17(モータ46)を駆動させ、各ユニット15、16が走行始点Sに戻ったらモータ46の駆動を停止させる。
【0036】
次いで、主制御部60は、再びベルトコンベア17を駆動して各ユニット15、16を移動させる。この移動中、主制御部60は、RAM62に記憶されたプロファイル82に基づいて、送受信部64を駆動制御してUTに超音波および反射波の送受信を行わせる(S14)。これにより被観察部位Cの形状に合ったUTが適切に選択駆動され、被観察部位Cに対して垂直に超音波および反射波の送受信を行うことができる。
【0037】
超音波走査によりUT17から出力される検出信号は、送受信部64で増幅、A/D変換された後、画像処理部65で直交検波等が施される。そして、表示制御部66により超音波断層画像としてモニタ67に表示される(S15)。
【0038】
以上説明したように、被観察部位Cに対する角度が異なるUTa25〜UTe29を使用し、被観察部位Cの形状計測結果に基づいて、被観察部位Cに超音波が垂直に照射され得るUTを選択駆動して超音波走査をするので、UTを被観察部位に対して昇降させたり傾斜させる機構を設けることなく、また比較的少ない個数のUTで高画質な超音波画像を取得することができる。
【0039】
上記実施形態では、UTが一次元アレイ状に配列されたUTアレイ22を例示したが、この場合はX方向の一次元のみで被観察部位に対して超音波を垂直に照射していて、Y方向に対する被観察部位の傾斜は加味しておらず、被観察部位の面に対してUTの面は必ずしも平行にならない。これを解決するため、図8に示すように、凸半球状の面に複数のUT85を放射状に配列したUTアレイ86を用いてもよい。このUTアレイ86を用い、被観察部位の面とUTの面が平行となるよう駆動するUTを選択すれば、より厳密に被観察部位に垂直に超音波を照射することができる。なお、UTアレイ22と同様の部材には同一符号を付し、説明は省略する。
【0040】
UTを配列する面は、上記実施形態で例示した凸曲面上でなくともよく、凹曲面上でも構わない。但し、凹曲面上に配列すると、曲面の形状によっては曲面の端で超音波および反射波の送受信が阻害されるおそれがあるため、凸曲面上に配列することが好ましい。
【0041】
乳房形状は一般的に鎖骨下から乳頭までは傾斜がなだらかで、乳頭からアンダーバストまでは比較的傾斜がきつい。このため、上記実施形態のようにUTを配列する面を中心対称にするのではなく、乳房形状に合わせて、傾斜が急峻な面となだらかな面の非対称な構成としてもよい。
【0042】
さらに、UTを配列する面は滑らかな曲面でなくともよく、角度の異なる複数の平坦な傾斜面を繋げた断面多角形状でもよい。要するに、UTアレイを構成する複数のUTの角度が異なっていればよい。
【0043】
上記実施形態では、UTの材料としてPZT等の圧電セラミックス厚膜を例示しているが、本発明はこれに限定されない。MEMS技術にてシリコン基板上に作製されるcMUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer)やpMUT(Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer)といった半導体デバイスを用いてもよい。圧電セラミックス厚膜を用いた場合よりもUTアレイを小型化することができる。
【0044】
上記実施形態では、形状計測を行った後に超音波走査を行っているが、形状計測を行いつつ超音波走査を行ってもよい。また、上記実施形態では、形状計測ユニットをベルトコンベア上に配置しているが、可動反射ミラー等でレーザー光の走査が可能となるようレーザー光源を構成し、例えば水槽の底面の四隅や中央に形状計測ユニットを埋設してもよい。あるいは水槽の側面に配置してもよい。
【0045】
上記実施形態では、UTユニットをベルトコンベアにて一定速度で搬送しているが、モータを駆動制御してベルトコンベアの速度を調節しながら超音波走査をしてもよいし、超音波走査されない領域がないよう、モータを逆転駆動させてUTユニットを戻して超音波走査してもよい。
【0046】
上記実施形態のレーザー光源および受光器の代わりに、UTを形状計測手段として用い、特定のUTで超音波走査して得られた検出信号を元に形状データを算出してもよい。上記実施形態であれば、例えばXY平面とのなす角が略0°のUTa25で被観察部位を超音波走査して形状データを算出する。上記実施形態と同様に非接触で形状計測を行うことができる。なお、非接触の形状計測に限らず、圧力センサ等を被観察部位に接触させて形状計測を行ってもよい。
【0047】
UTの大きさ、個数、配列ピッチ、角度等は、超音波診断装置2の仕様に応じて適宜変更可能である。UTの個数を多くし、角度もより細かく設定すれば、より精緻な超音波走査が可能となる。過去の乳房の形状データから出現頻度が高い角度を割り出して、各UTの角度を設定してもよい。
【0048】
あるいは、第一直線走行路と同数のUTユニットを用意し、各列同時に超音波走査してもよい。UTアレイは、隣り合う列のUTアレイが接触しないようなサイズにする。この場合、ベルトコンベアを無端ベルトで構成すれば曲線走行路や第二直線走行路が必要なくなるうえ、超音波走査を短時間で行うことができる。
【0049】
また、UT、レーザー光源、受光器、モータとプロセッサ部間の信号の遣り取りを無線化してもよい。
【0050】
なお、被観察部位は乳房に限らず、軟部組織を含めばよく、例えば腹部、甲状腺、頸動脈、関節(肘、膝等)でもよい。
【符号の説明】
【0051】
2 超音波診断装置
10 検査部
11 プロセッサ部
17 ベルトコンベア
22、86 超音波トランスデューサ(UT)アレイ
25〜29、85 超音波トランスデューサ(UTa〜UTe、UT)
37 レーザー光源
38 受光器
46 モータ
60 主制御部
64 送受信部
80 形状データ算出部
81 プロファイル作成部
82 プロファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の被観察部位の形状を計測する形状計測手段と、
被観察部位に超音波を送信するとともに被観察部位からの反射波を受信し、反射波に応じた検出信号を出力する超音波トランスデューサが曲面上に複数配列されてなる超音波トランスデューサアレイと、
前記超音波トランスデューサアレイを被観察部位に対して水平方向に移動させる移動機構と、
前記形状計測手段により取得された被観察部位の形状情報に基づいて、複数の超音波トランスデューサのうち、被観察部位に超音波が垂直に当たり得る超音波トランスデューサを前記超音波トランスデューサアレイの移動位置に応じて選択駆動させる駆動制御手段と、を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波トランスデューサアレイは、凸曲面上に複数の超音波トランスデューサが配列されてなることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記形状計測手段は、被観察部位に対して非接触で形状計測を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記形状計測手段は、被観察部位に光を照射する投光器と、被観察部位からの反射光を受光する受光器とからなり、
前記受光器の出力に基づいて被観察部位の形状情報を算出することを特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
超音波トランスデューサは半導体デバイスからなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
被観察部位と前記超音波トランスデューサアレイの間に超音波伝達媒体を介在させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
被観察部位は軟部組織を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−177385(P2011−177385A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45608(P2010−45608)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】