説明

超音波診断装置

【課題】同一断面について生体組織が同一形状の超音波画像と医用画像とを表示することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波プローブの位置を検出する位置センサの位置検出情報に基づいて、所定の点を原点とする三次元空間の座標系におけるエコーデータの位置を算出する位置算出部と、MRI装置において予め取得されたMRI画像における生体組織の形状を前記エコーデータに基づく超音波画像における生体組織の形状に変形する変形演算を行なう変形演算部と、前記三次元空間の座標系である超音波画像の座標系と前記MRI画像の座標系との間の座標変換を行なって、同一断面について、前記変形演算によって得られたデータに基づく形状変形済みMRI画像MG′と前記超音波画像UGとをともに表示部6に表示する表示画像制御部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像と超音波画像以外の医用画像とを表示する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置では、被検体の体表面に超音波プローブを当接して被検体内に超音波を送信し、得られたエコーデータに基づいて超音波画像を作成し表示する。また、超音波画像以外の医用画像としては、MRI(Magnetic Resonance Imaging)画像、X線CT(Computed Tomography)画像などがある。そして、特許文献1には、超音波画像とMRI画像又はCT画像とを並べて表示する超音波診断装置が開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−151131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超音波診断装置において、同一断面についての超音波画像と超音波画像以外の医用画像とを表示しようとした場合、それぞれの画像における撮影時の被検体の姿勢の相違により、同一断面であっても生体組織の形状が異なる場合がある。例えば、乳房について超音波診断装置において撮影を行なう場合には、仰臥位で撮影を行なう。一方、MRI装置において乳房の撮影を行なう場合には、伏臥位で撮影を行なう。従って、超音波画像における乳房は、重力によって押しつぶされた形状になっており、一方でMRI画像における乳房は、重力によって垂下した形状になっていて、各画像における形状が異なっている。
【0005】
このようなことから、超音波画像と超音波画像以外の医用画像とをともに表示する場合において、同一断面について生体組織が同一形状の画像を表示することが診断上望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するためになされた第1の観点の発明は、被検体に対して超音波を送信してエコーを受信する超音波プローブと、該超音波プローブの位置を検出するための位置センサと、該位置センサの位置検出情報に基づいて、所定の点を原点とする三次元空間の座標系におけるエコーデータの位置を算出する位置算出部と、前記エコーデータに基づく超音波画像及び超音波診断装置以外の医用画像装置において予め取得された医用画像のうち、何れか一方の画像における生体組織の形状を他方の画像における生体組織の形状に変形する変形演算を行なう変形演算部と、前記三次元空間の座標系である超音波画像の座標系と前記医用画像の座標系との間の座標変換を行なって、同一断面について、前記変形演算によって得られたデータに基づく形状変形済み画像と前記他方の画像とをともに表示部に表示する表示画像制御部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0007】
第2の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記変形演算部は、粒子法又は有限要素法を用いて変形演算を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0008】
第3の観点の発明は、第2の観点の発明において、前記変形演算部は、前記一方の画像を基準にして前記他方の画像における生体組織に作用する応力を想定して変形演算を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0009】
第4の観点の発明は、第1〜3のいずれか一の観点の発明において、前記生体組織は乳房であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
第5の観点の発明は、第4の観点の発明において、前記変形演算部は、剛体に設けられた非圧縮超弾性体を乳房と想定して粒子法又は有限要素法によって変形演算を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
第6の観点の発明は、第5の観点の発明において、前記変形演算部は、前記超音波画像及び前記医用画像における乳房を、水平状態の剛体の下面に設けられた非圧縮超弾性体、水平状態の剛体の上面に設けられた非圧縮超弾性体、鉛直状態の剛体の片面に設けられた非圧縮超弾性体のいずれかであるとして、粒子法又は有限要素法による変形演算を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
第7の観点の発明は、第6の観点の発明において、前記変形演算部は、前記超音波画像における乳房を、水平状態の剛体の上面に設けられた非圧縮超弾性体又は鉛直状態の剛体の片面に設けられた非圧縮超弾性体とし、前記医用画像における乳房を、水平状態の剛体の下面に設けられた非圧縮超弾性体として、粒子法又は有限要素法による変形演算を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0013】
第8の観点の発明は、第1〜7のいずれか一の観点の発明において、前記変形演算部は、前記超音波画像における生体組織の形状を、前記医用画像における生体組織の形状に変形する変形演算を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0014】
第9の観点の発明は、第1〜8のいずれか一の観点の発明において、前記表示画像制御部は、スキャンコンバータによって前記エコーデータを走査変換して超音波画像データを作成することを特徴とする超音波診断装置である。
【0015】
第10の観点の発明は、第9の観点の発明において、前記変形演算の対象は、前記スキャンコンバータによる走査変換前の前記エコーデータ又は前記スキャンコンバータによる走査変換後の超音波画像データのいずれかであることを特徴とする超音波診断装置である。
【0016】
第11の観点の発明は、第1〜7のいずれか一の観点の発明において、前記変形演算部は、前記医用画像における生体組織の形状を、前記超音波画像における生体組織の形状に変形する変形演算を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0017】
第12の観点の発明は、第1〜11のいずれか一の観点の発明において、前記医用画像のデータを記憶する記憶部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0018】
第13の観点の発明は、第12の観点の発明において、前記超音波画像はリアルタイムの画像であり、前記医用画像は前記記憶部に記憶されたデータに基づく画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0019】
第14の観点の発明は、第12の観点の発明において、前記超音波画像は、前記超音波プローブによる超音波の送受信を行なうことによって予め取得され記憶されたデータに基づく画像であり、前記医用画像は前記記憶部に記憶されたデータに基づく画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0020】
第15の観点の発明は、第1〜14のいずれか一の観点の発明において、前記表示画像制御部は、前記形状変形済み画像と前記他方の画像とを並べて前記表示部に表示することを特徴とする超音波診断装置である。
【0021】
第16の観点の発明は、第1〜14のいずれか一の観点の発明において、前記表示画像制御部は、前記形状変形済み画像と前記他方の画像とを重ねて前記表示部に表示することを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0022】
上記観点の発明によれば、前記超音波画像又は前記医用画像のうち、いずれか一方の画像における生体組織の形状を他方の画像における生体組織の形状に変形する変形演算を行なって形状変形済み画像が作成される。そして、超音波画像の座標系と医用画像の座標系との間の座標変換を行なって同一断面についての形状変形済み画像と前記他方の画像とがともに表示される。これにより、同一断面について生体組織が同一形状の超音波画像と医用画像とを表示することができる。
【0023】
また、例えば超音波画像と医用画像とで撮影時の被検体の体勢が異なっていることなどが原因で、両画像における生体組織の形状が大きく異なっていても、粒子法又は有限要素法を用いて変形演算を行なうことにより、変形後の生体組織の形状を演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施形態の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す超音波診断装置における表示制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す超音波診断装置における制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】第一実施形態の超音波診断装置における処理を示すフローチャートである。
【図5】被検体の姿勢と乳房の形状を説明する図であり、(A)はMRI装置において撮影を行なう場合における乳房の形状を示す図、(B)は超音波診断装置において撮影を行なう場合における乳房の形状を示す図である。
【図6】形状変形の演算を説明する図であり、(A)は非圧縮超弾性体が剛体の下面において垂下している状態を示す図、(B)は非圧縮超弾性体が自重によって剛体の上面に対して押し付けられている状態を示す図である。
【図7】同一断面についての超音波画像及び変形済みMRI画像が並べて表示された表示部を示す図である。
【図8】第一実施形態の変形例における形状変形の演算を説明する図である。
【図9】第二実施形態の超音波診断装置における処理を示すフローチャートである。
【図10】第二実施形態における形状変形の演算を説明する図であり、(A)は非圧縮超弾性体が自重によって剛体の上面に対して押し付けられている状態を示す図、(B)は非圧縮超弾性体が剛体の下面において垂下している状態を示す図である。
【図11】第二実施形態において同一断面についての変形済み超音波画像及びMRI画像が並べて表示された表示部を示す図である。
【図12】同一断面についての超音波画像及び変形済みMRI画像が重ねて表示された表示部を示す図である。
【図13】同一断面についての変形済み超音波画像及びMRI画像が重ねて表示された表示部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8、HDD(ハードディスクドライブ:Hard Disk Drive)9、磁気発生部10及び磁気センサ11を備える。
【0026】
前記超音波プローブ2は、アレイ状に配置された複数の超音波振動子(図示省略)を有して構成され、この超音波振動子によって被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。
【0027】
前記超音波プローブ2には、例えばホール素子で構成される前記磁気センサ11が設けられている。この磁気センサ11により、例えば磁気発生コイルで構成される前記磁気発生部10から発生する磁気が検出されるようになっている。前記磁気センサ11における検出信号は、前記表示制御部5へ入力されるようになっている。前記磁気センサ11における検出信号は、図示しないケーブルを介して前記表示制御部5へ入力されてもよいし、無線で前記表示制御部5へ入力されてもよい。前記磁気発生部10及び前記磁気センサ11は、本発明における位置センサの実施の形態の一例である。
【0028】
前記送受信部3は、前記超音波プローブ2を所定の送信条件で駆動させ、走査面を超音波ビームによって音線順次で走査させる。前記送受信部3は前記制御部8からの制御信号によって前記超音波プローブ2を駆動させる。
【0029】
また、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2で得られたエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行ない、信号処理後のエコーデータを前記エコーデータ処理部4へ出力する。
【0030】
前記エコーデータ処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコーデータに対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等の所定の処理を行う。
【0031】
前記表示制御部5は、図2に示すように、位置算出部51、メモリ52、表示画像制御部53を有する。前記位置算出部51は、前記磁気センサ11からの磁気検出信号に基づいて、前記磁気発生部10を原点とする三次元空間における前記超音波プローブ2の位置及び傾きの情報(以下、「プローブ位置情報」と云う)を算出する。さらに、前記位置算出部51は、前記プローブ位置情報に基づいてエコーデータの前記三次元空間における位置情報を算出する。前記磁気発生部10を原点とする三次元空間の座標系は、超音波画像の座標系の実施の形態の一例である。また、前記位置算出部51は、本発明における位置算出部の実施の形態の一例である。
【0032】
前記メモリ52は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリ(Memory)などで構成される。このメモリ52には、例えば前記エコーデータ処理部4から出力されて、後述するように前記表示画像制御部53において前記超音波画像データに変換される前のエコーデータなどが記憶される。前記超音波画像データに変換される前のデータを、ローデータ(Raw Data)と云うものとする。ローデータは、前記HDD9に記憶されるようになっていてもよい。
【0033】
また、前記メモリ52又は前記HDD9には、後述するように、超音波診断装置1以外の医用画像装置において取得された医用画像のデータが記憶される。前記メモリ52及び前記HDD9は、本発明における記憶部の実施の形態の一例である。
【0034】
前記表示画像制御部53は、前記エコーデータ処理部4から出力されたエコーデータを、スキャンコンバータ(Scan Converter)によって超音波画像データに走査変換する。そして、前記表示画像制御部52は、この超音波画像データに基づく超音波画像(Bモード画像)を前記表示部6に表示する。
【0035】
また、前記表示画像制御部53は、超音波画像の座標系と、超音波画像以外の医用画像の座標系との間の座標変換を行なって、同一断面についての超音波画像と医用画像とをともに前記表示部6に表示する。本例では、後述するように超音波画像と医用画像とを並べて前記表示部6に表示する。
【0036】
後述するように、医用画像は本例ではMRI画像である。そして、前記表示部6に表示されるMRI画像は、後述の変形演算部81で得られた変形済みMRI画像である。詳細は後述する。前記表示画像制御部53は、本発明における表示画像制御部の実施の形態の一例である。
【0037】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成される。前記操作部7は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0038】
前記制御部8は、CPU(CentRal Processing Unit)を有して構成される。この制御部8は、前記HDD9に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0039】
また、前記制御部8は、図3に示すように変形演算部81を有する。この変形演算部81は、超音波画像又はMRI画像のうち、何れか一方の画像における生体組織の形状を他方の画像における生体組織の形状に変形する変形演算を行なう。本例では、前記変形演算部81は、後述するようにMRI画像における乳房の形状を、超音波画像における乳房の形状に変形する演算を行なう。前記変形演算部81は、本発明における変形演算部の実施の形態の一例である。
【0040】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について図4のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS1では、図示しないMRI装置において取得されたMRI画像データを前記超音波診断装置1に取り込む。前記超音波診断装置1に取り込まれたMRI画像データは、前記メモリ52又は前記HDD9に記憶される。
【0041】
ここで、撮影の対象となる生体組織は乳房である。MRI装置において乳房を対象にした撮影を行なう場合、被検体Pは伏臥位の姿勢になっているため、図5(A)に示すように乳房Brは垂下した形状になっている。一方、後述するように超音波診断装置において乳房を対象にした撮影を行なう場合、被検体Pは仰臥位の姿勢になっているため、図5(B)に示すように乳房Brは自重によってつぶれたような形状になっている。
【0042】
次に、ステップS2では、前記変形演算部81がMRI画像データを対象にして変形演算を行ない、変形済みMRI画像データを作成する。具体的に説明すると、前記変形演算部81は、物体の変形解析に用いられる粒子法又は有限要素法を用いて、MRI画像における乳房の形状を、超音波画像における乳房の形状に変形する変形演算を行なう。従って、本例では、前記MRI画像が本発明における一方の画像の実施の形態の一例であり、前記超音波画像が本発明における他方の画像の実施の形態の一例である。
【0043】
ここで、人体においては大胸筋の上に乳房が載っている状態なので、粒子法又は有限要素法を用いて乳房の形状の変形演算を行なうにあたっては、大胸筋を剛体とし、乳房を非圧縮超弾性体としたモデルを想定する。すなわち、剛体に設けられた非圧縮超弾性体の形状変形を、粒子法又は有限要素法を用いて演算する。
【0044】
より詳細に説明すると、MRI装置における被検体の撮影姿勢は伏臥位である。従って、MRI画像における乳房として、図6(A)に示すように水平状態の剛体Xの下面に設けられた非圧縮超弾性体Yが垂下した状態を想定する。一方、超音波診断装置における被検体の撮影姿勢は仰臥位である。従って、超音波画像における乳房として、図6(B)に示すように水平状態の剛体Xの上面に設けられた非圧縮超弾性体Yが自重によって剛体Xに対して押し付けられている状態を想定する。そして、非圧縮超弾性体Yが、図6(A)に示すように剛体Xの下面において垂下した状態から、図6(B)に示すように剛体Xの上面に対して自重で押し付けられている状態に変化した場合の非圧縮超弾性体の形状変形を粒子法又は有限要素法によって演算することにより、MRI画像における乳房の形状を、超音波画像における乳房の形状に変形する演算を行なう。
【0045】
粒子法又は有限要素法による形状変形の演算により、図6(A)に示すように、剛体Xの下面において非圧縮超弾性体Yが垂下している状態から、図6(B)に示すように剛体Xの上面に対して非圧縮超弾性体Yが自重で押し付けられている状態に変化した場合における応力変化に伴う非圧縮超弾性体Yの変化形状が求まる。このような粒子法又は有限要素法による変形演算の際には、図6(A)の状態を初期状態として図6(B)における非圧縮超弾性体にかかる相対的な応力の大きさと向きを考える。具体的には、図6(B)においては、図6(A)の状態を基準にして、鉛直下向きの方向(図6(B)における前記剛体Xの上面に対して押し付けられる方向)の2倍の重力(体積力)Wを想定した応力F=2Wが作用しているものとする。ただし、ここでいう重力は、図6(A)の状態を基準にして考えた場合の相対的な重力である。
【0046】
変形演算により得られた変形済みMRI画像データは、前記メモリ52又は前記HDD9に記憶される。
【0047】
次に、ステップS3では、仰臥位の体勢になっている被検体に対し、前記超音波プローブ2によって超音波を送信してエコーを受信し、前記表示画像制御部53が、送受信面についてリアルタイムの超音波画像UGを前記表示部6に表示する。また、前記表示画像制御部53は、前記変形済みMRI画像データに基づいて、任意断面についての変形済みMRI画像MG′を、前記超音波画像UGと並べて前記表示部6に表示する。ここでは、超音波画像UGとは異なる断面の前記変形済みMRI画像MG′が表示されているものとする。ちなみに、前記変形済みMRI画像MG′は、被検体Pが仰臥位の姿勢になっている状態(図5(B)の状態)の画像である。
【0048】
次に、ステップS4では、超音波画像UGの座標系と変形済みMRI画像MG′の座標系との位置合わせ処理を行なう。具体的には、操作者は前記表示部6に表示された前記超音波画像UGと前記変形済みMRI画像MG′とを見比べながら、いずれか一方又は両方の画像の断面を移動させ、同一断面の超音波画像UGと変形済みMRI画像MG′とを表示させる。前記超音波画像UGの断面の移動は、前記超音波プローブ2の位置を変えることによって行なう。また、変形済みMRI画像の断面の移動は、前記操作部7を操作して断面を変更する指示を入力することにより行なう。
【0049】
同一断面か否かは、例えば操作者が特徴的な部位を参照するなどして判断する。ちなみに、前記超音波プローブ2による超音波の走査面はMRI画像のスライス面と平行であるものとする。
【0050】
同一断面についての超音波画像UG及び変形済みMRI画像MG′が表示されると、操作者は同一断面の表示がなされたことを表す指示入力を行なう。これにより、超音波画像UGの座標系と変形済みMRI画像MG′の座標系との間の座標変換が可能になり、位置合わせ処理が完了する。
【0051】
ステップS4において位置合わせ処理が行なわれた後のステップS5においては、前記表示画像制御部53は、図7に示すように、前記超音波プローブ2による超音波の走査面と同一断面の変形済みMRI画像MG′を、前記走査面についての超音波画像UGと並べて前記表示部6に表示する。表示画像制御部53は、超音波画像の座標系と変形済みMRI画像の座標系との間で座標変換を行なって、前記超音波画像UGと同一断面の変形済みMRI画像MG′を表示する。前記表示画像制御部53による座標変換について説明すると、本例では、超音波画像UGの座標系であるエコーデータの位置情報を変形済みMRI画像MG′の座標系に座標変換する。そして、前記表示画像制御部53は、この座標変換により得られた所定断面についての変形済みMRI画像MG′を表示する。前記表示画像制御部53は、前記超音波プローブ2による超音波の走査面が変わっても、新たな断面についての変形済みMRI画像MG′を表示する。従って、前記超音波プローブ2を動かし、超音波画像の断面が変わっても、これに追従するようにして新たな断面と同一断面の変形済みMRI画像MG′が自動的に表示される。
【0052】
本例の超音波診断装置1によれば、前記超音波画像UGと前記変形済みMRI画像MG′は、ともに被検体Pが仰臥位の姿勢になっている状態の画像であるため、同一断面について乳房の形状が同一の画像を表示することができる。従って、診断に有用である。
【0053】
また、仰臥位の状態の乳房の形状と伏臥位の状態の乳房の形状とは大きく異なっているものの、乳房の形状の変形演算を、粒子法又は有限要素法を用いて行なっているので、変形後の乳房の形状を演算することができる。
【0054】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。上記実施形態においては、仰臥位の体勢になっている被検体に対して超音波の送受信を行なうが、立位の体勢になっている被検体に対して超音波の送受信を行なう場合には、乳房を、図8に示すように鉛直状態の剛体Xの片面に設けられた非圧縮超弾性体Yと想定する。そして、非圧縮超弾性体Yが図6(A)の状態から図8の状態に変化した場合の形状変形を、粒子法又は有限要素法によって演算する。この場合において、変形演算を行なう際の応力としては、図6(A)の状態を初期状態とした場合における図8の状態の応力を考える。すなわち、応力として、鉛直下向きの方向(図8における剛体Xと平行な方向)の重力(体積力)Wと、剛体Xに対して垂直な方向(図8における剛体Xの片面に対して押し付けられる方向)の重力(体積力)Wを考える。なお、ここでいう重力も、図6(A)の状態を基準にして考えた場合の相対的な重力である。
【0055】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。上記第一実施形態においては、リアルタイムの超音波画像UGを表示するとともに、この超音波画像UGと同一断面の変形済みMRI画像MG′を表示しているが、この第二実施形態においては、前記HDD9又は前記メモリ52に記憶されたローデータを対象にして変形演算を行ない、変形済みエコーデータを作成する。そして、この変形済みエコーデータに基づく変形済み超音波画像UG′と、MRI画像データに基づいて作成されたMRI画像MGとが前記表示部6に表示される。
【0056】
具体的に図9のフローチャートに基づいて説明する。図9において、ステップS11では、第一実施形態のステップS1と同様に、前記超音波診断装置1にMRI画像データを取り込み、これを前記メモリ52又は前記HDD9に記憶する。
【0057】
次に、ステップS12では、前記超音波プローブ2によって被検体に対する超音波の送受信を行ないエコーデータを取得する。このステップS12では、前記超音波プローブ2によって三次元領域の走査を行い、3Dのエコーデータ(ボリュームデータ)を取得する。取得された3Dのエコーデータは、ローデータとして前記メモリ52又は前記HDD9に記憶される。
【0058】
次に、ステップS13では、ステップS12で取得された3Dのエコーデータを対象にして、前記変形演算部81が変形演算を行ない、変形済みエコーデータを作成する。変形演算は、3Dのエコーデータの各断面のエコーデータについて行なう。
【0059】
このステップS13における変形演算においても、大胸筋を剛体とし、乳房を非圧縮超弾性体としたモデルを想定し、剛体に設けられた非圧縮超弾性体の形状変形を、粒子法又は有限要素法を用いて演算する。ただし、本例では、図10(A)に示すように、非圧縮超弾性体が、剛体Xの上面に対して自重で押し付けられている状態から、図10(B)に示すように、剛体Xの下面において垂下した状態に変化した場合の非圧縮超弾性体の形状変形を粒子法又は有限要素法によって演算することにより、超音波画像における乳房の形状をMRI画像における乳房の形状に変形する演算を行なう。本例では、変形演算の際に、図10(A)の状態を初期状態として図10(B)における非圧縮超弾性体にかかる応力の大きさと向きを考える。具体的には、図10(B)においては、図10(A)の状態を基準にして、鉛直下向きの方向(図10(B)において前記剛体Xの下面から引っ張られる方向)の2倍の重力(体積力)Wを想定した応力F=2Wが作用しているものとする。ただし、ここでいう重力も、図10(A)の状態を基準にして考えた場合の相対的な重力である。
【0060】
変形演算により得られた変形済みエコーデータは、前記メモリ52又は前記HDD9に記憶される。
【0061】
次に、ステップS14では、前記表示画像制御部53が、変形済みエコーデータに基づく変形済み超音波画像UG′とMRI画像データに基づくMRI画像MGとを表示部6に並べて表示する。ここでは、変形済み超音波画像UG′とMRI画像MGの断面は異なる断面であるとする。ちなみに、前記変形済み超音波画像UG′は、被検体Pが伏臥位の姿勢になっている状態(図5(A)の状態)の画像である。
【0062】
次に、ステップS15では、変形済み超音波画像UG′の座標系とMRI画像MGの座標系との位置合わせ処理を行なう。この位置合わせ処理の内容は、第一実施形態のステップS4の位置合わせ処理と基本的には同一であり、前記表示部6に表示された変形済み超音波画像UG′とMRI画像MGとを見比べながら同一断面を表示させて行なう。ちなみに、前記変形済み超音波画像UG′の断面の移動は、MRI画像の断面の移動と同様に、前記操作部7を操作して断面を変更する指示を入力することにより行なう。
【0063】
ステップS15において位置合わせ処理が行なわれた後のステップS16においては、前記表示画像制御部53は、図11に示すように、同一断面についての変形済み超音波画像UG′及びMRI画像MGを前記表示部6に表示する。このステップS16では、前記操作部7における指示入力により、前記変形済み超音波画像UG′及びMRI画像MGのいずれかの断面を変更しても、断面を変更した画像の座標系における座標を、断面を変更していない画像の座標系における座標に座標変換して、同一断面についての変形済み超音波画像UG′及びMRI画像MGを表示する。例えば、変形済み超音波画像UG′の断面を変更した場合、変形済み超音波画像UG′の座標系における新たな断面の座標を、MRI画像MGの座標系における座標系に座標変換して、MRI画像MGの座標系において対応する断面を特定し、新たな断面と同一断面のMRI画像を表示する。また、MRI画像MGの断面を変更した場合、MRI画像MGの座標系における新たな断面の座標を変形済み超音波画像UG′の座標系に座標変換して、変形済み超音波画像UG′の座標系において対応する断面を特定し、新たな断面と同一断面の変形済み超音波画像UG′を表示する。
【0064】
以上説明した第二実施形態によれば、前記変形済み超音波画像UG′及びMRI画像MGは、ともに被検体Pが伏臥位の姿勢になっている状態の画像であるため、第一実施形態と同様に、同一断面について乳房の形状が同一の画像を表示することができる。従って、診断に有用である。
【0065】
なお、第二実施形態において、超音波画像ではなく、MRI画像における乳房の形状を超音波画像における形状に変形して得られた変形済みMRI画像を、超音波画像とともに表示するようにしてもよい。
【0066】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、医用画像はMRI画像に限られるものではなく、例えばX線CT画像やマンモグラフィ装置で得られた画像などであってもよい。
【0067】
また、第二実施形態において、ローデータ、すなわち前記表示画像制御部53におけるスキャンコンバータによる走査変換前の前記エコーデータを対象にした変形演算ではなく、走査変換後の超音波画像データを対象にした変形演算を行なってもよい。
【0068】
また、前記第一実施形態のステップS5においては、前記表示画像制御部53は、同一断面の超音波画像UGと変形済みMRI画像MG′とを並べて前記表示部6に表示するようになっているが、図12に示すように、同一断面の前記超音波画像UGと前記変形済みMRI画像MG′とを互いに透過させた状態で重ねて(合成して)前記表示部6に表示してもよい。
【0069】
また、同様に前記第二実施形態のステップS16においても、前記表示画像制御部53は、同一断面の変形済み超音波画像UG′とMRI画像MGとを並べて前記表示部6に表示するようになっているが、図13に示すように、同一断面の変形済み超音波画像UG′とMRI画像MGとを互いに透過させた状態で重ねて(合成して)前記表示部6に表示してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
6 表示部
9 HDD(記憶部)
10 磁気発生部(位置センサ)
11 磁気センサ(位置センサ)
51 位置算出部
52 メモリ(記憶部)
53 表示画像制御部
81 変形演算部
MG MRI画像
MG′ 変形済みMRI画像
UG 超音波画像
UG′ 変形済み超音波画像
Br 乳房
X 剛体
Y 非圧縮超弾性体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波を送信してエコーを受信する超音波プローブと、
該超音波プローブの位置を検出するための位置センサと、
該位置センサの位置検出情報に基づいて、所定の点を原点とする三次元空間の座標系におけるエコーデータの位置を算出する位置算出部と、
前記エコーデータに基づく超音波画像及び超音波診断装置以外の医用画像装置において予め取得された医用画像のうち、何れか一方の画像における生体組織の形状を他方の画像における生体組織の形状に変形する変形演算を行なう変形演算部と、
前記三次元空間の座標系である超音波画像の座標系と前記医用画像の座標系との間の座標変換を行なって、同一断面について、前記変形演算によって得られたデータに基づく形状変形済み画像と前記他方の画像とをともに表示部に表示する表示画像制御部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記変形演算部は、粒子法又は有限要素法を用いて変形演算を行なうことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記変形演算部は、前記一方の画像を基準にして前記他方の画像における生体組織に作用する応力を想定して変形演算を行なうことを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記生体組織は乳房であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記変形演算部は、剛体に設けられた非圧縮超弾性体を乳房と想定して粒子法又は有限要素法によって変形演算を行なうことを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記変形演算部は、前記超音波画像及び前記医用画像における乳房を、水平状態の剛体の下面に設けられた非圧縮超弾性体、水平状態の剛体の上面に設けられた非圧縮超弾性体、鉛直状態の剛体の片面に設けられた非圧縮超弾性体のいずれかであるとして、粒子法又は有限要素法による変形演算を行なうことを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記変形演算部は、前記超音波画像における乳房を、水平状態の剛体の上面に設けられた非圧縮超弾性体又は鉛直状態の剛体の片面に設けられた非圧縮超弾性体とし、前記医用画像における乳房を、水平状態の剛体の下面に設けられた非圧縮超弾性体として、粒子法又は有限要素法による変形演算を行なうことを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記変形演算部は、前記超音波画像における生体組織の形状を、前記医用画像における生体組織の形状に変形する変形演算を行なうことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記表示画像制御部は、スキャンコンバータによって前記エコーデータを走査変換して超音波画像データを作成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記変形演算の対象は、前記スキャンコンバータによる走査変換前の前記エコーデータ又は前記スキャンコンバータによる走査変換後の超音波画像データのいずれかであることを特徴とする請求項9に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記変形演算部は、前記医用画像における生体組織の形状を、前記超音波画像における生体組織の形状に変形する変形演算を行なうことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記医用画像のデータを記憶する記憶部を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記超音波画像はリアルタイムの画像であり、前記医用画像は前記記憶部に記憶されたデータに基づく画像であることを特徴とする請求項12に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記超音波画像は、前記超音波プローブによる超音波の送受信を行なうことによって予め取得され記憶されたデータに基づく画像であり、前記医用画像は前記記憶部に記憶されたデータに基づく画像であることを特徴とする請求項12に記載の超音波診断装置。
【請求項15】
前記表示画像制御部は、前記形状変形済み画像と前記他方の画像とを並べて前記表示部に表示することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項16】
前記表示画像制御部は、前記形状変形済み画像と前記他方の画像とを重ねて前記表示部に表示することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−239974(P2011−239974A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115092(P2010−115092)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】