説明

超音波霧化装置及びこれを用いた冷蔵庫

【課題】霧化用の液体を放熱のために常に一定量残しておく必要がなく、霧化用の液体を全て霧化させた後でも、超音波振動子を放熱させて稼働させることが可能であるとともに、例えば冷蔵庫の加湿に用いた場合でも、そのことにより衛生性が損なわれないようにすることができる超音波霧化装置を提供する。
【解決手段】超音波振動子5と、内部に第1の液体6を密封するとともに前記超音波振動子5をその振動面が前記第1の液体6に触れるように保持する第1筐体2と、前記第1筐体2の壁体の一部を共有壁体4として、当該第1筐体2に隣接して設けられた第2筐体3とを具備し、前記振動面の振動が前記第1の液体6を介して前記共有壁体4に伝達され、前記第2筐体5に貯留された第2の液体7を霧化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子により水を霧化して加湿する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭用冷凍冷蔵庫などには、貯蔵物の鮮度維持を目的として、加湿装置が搭載されている。この庫内の加湿を実現する代表的な装置として、超音波振動子を用いたものがある。
【0003】
超音波振動子を用いた加湿装置は、他の方法を用いた加湿装置と比較して、加熱の必要がないなどの特長をもつものの、超音波振動子が稼働時に発生した熱を蓄積して、自身の破損に至る可能性を有している。
【0004】
通常は、特許文献1に示すように、超音波霧化器の内部では、超音波振動子の周囲を加湿用の液体(水)で満たされるようにしてあり、加湿用の液体が放熱剤の役割をはたすように構成されている。つまり、加湿用の液体を介した放熱により超音波振動子に過度な熱が蓄積されるのを回避できるように構成することによって、超音波振動子の破損を防いでいる。
【0005】
このように液体を放熱剤として利用しているがゆえ、全ての液体が霧化し空焚き状態に至ると、超音波霧化器内の超音波振動子は放熱できず破損してしまうため、霧化用の液体を最後の一滴まで霧化することなく、常時一定量の液体を超音波霧化器内に貯めておく必要がある。
【0006】
しかしながら、家庭用冷凍冷蔵庫の使用を前提とした場合、長期間にわたって液体を庫内に放置することは雑菌が繁殖する原因となるため、衛生性を著しく損なう恐れがある。さらに、常時一定量の液体が貯えているかどうかを常にモニターする水位センサーを搭載しなければならないといった問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−89202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これらの課題を解決すべくなされたものであって、その主たる目的は、霧化用の液体を放熱のために常に一定量残しておく必要がなく、霧化用の液体を全て霧化させた後でも、超音波振動子を放熱させて稼働させることが可能であるとともに、例えば冷蔵庫の加湿に用いた場合でも、そのことにより衛生性が損なわれないようにすることができる超音波霧化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る超音波霧化装置は、超音波振動子と、内部に第1の液体を密封するとともに前記超音波振動子をその振動面が前記第1の液体に触れるように保持する第1筐体と、前記第1筐体の壁体の一部を共有壁体として、当該第1筐体に隣接して設けられた第2筐体とを具備し、前記振動面の振動が前記第1の液体を介して前記共有壁体に伝達され、前記第2筐体に貯留された第2の液体を霧化させるものであることを特徴とする。
【0010】
このような構成であれば、前記第1筐体内に第1の液体が密封されているため、前記超音波振動子より発生される熱は、常に前記第1の液体により放熱することができる。従って、従来のように放熱のための液体が無くなることにより、放熱できなくなって前記超音波振動子が破損するような事態は避けられるという効果が得られる。それゆえに、常時一定量の霧化用の液体が貯えているかどうかを常にモニターする水位センサーの設置も必要としない。さらに、前記超音波振動子の放熱用の液体である第1の液体が、前記第1筐体内に密封されているので、衛生上の問題も解決することができるという効果が得られる。
【0011】
前記第1筐体について具体的に説明すると、前記第1筐体の適切な壁体には、前記超音波振動子を、前記第1の液体が漏れることがないように完全密封を可能とする取り付け方法により、超音波振動が共有壁体に向かって発生されるように取り付けられている。前記第1筐体と前記第2筐体の共有壁体は、前記第2筐体内の液体と前記第1筐体内の液体とを混合しないが、超音波振動を前記第1筐体内の液体から前記第2筐体内の液体へ伝達することは可能にしてある。前記超音波振動子を設置した壁体とは対向する壁体には、第1の液体が完全密封可能とする方法にて上部共有壁体が設置されている。さらに、その他の第1筐体の壁体は、第1の液体が完全密封できるように、閉じられた内周面で構成される。
【0012】
前記第2筐体の適切な壁体には、第2筐体内の第2の液体と前記第1筐体内の第1の液体との混合しないように、前記第1筐体と共有するように共有壁体が設置されている。第2筐体内の第2の液体は、前記第1筐体に設置された前記超音波振動子により発生した超音波振動が、共有壁体を介して伝達されることにより、前記第2筐体の開口部から霧化される。
【0013】
上記の共有壁体は膜状のものであればよいが、前記超音波振動子を前記第1筐体の底壁に設置したとして、鉛直下方向に対して凹な形状をもつ膜形状のものとすることにより、前記第2筐体内に霧化させるべき液体を残すことなく、完全に霧化させることができる。
【0014】
また、上記の共有壁体の材料として、伸縮性のあるエラストマ樹脂や形状記憶合金を用いることにより、筐体に伸縮性をもたせることが可能となる。これにより、前記第1筐体の非圧縮性液体が凍結してしまったとしても、液体積の膨張による筐体の破損を免れることが可能となる。
【0015】
さらに、第1筐体内の密封された非圧縮性液体の凍結状態を把握できる温度センサーを第1筐体内の適切な箇所に設置することにより、非圧縮性液体が凍結した場合には前記超音波振動子の振動を停止し霧化をやめ、それにより前記超音波振動子を含む霧化装置の破損を回避することができる。
【0016】
その他にも、本発明では、前記第1筐体内に非圧縮性液体が完全密封されているため、前記第2筐体内の霧化を目的とした液体とは異なる成分のものを利用することができる。すなわち、前記第1筐体内の非圧縮性液体として、食塩水などのような凝固点が0℃以下の寒剤を用いることで、非圧縮性液体の凍結を回避し、その結果凍結時に液体積が膨張して第1筐体や、前記超音波振動子が破損する問題を解決することもできる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、従来装置がもつ多くの課題を本質的に解決することができる。すなわち、内部に非圧縮性液体を密封するとともに前記超音波振動子をその振動面が前記非圧縮性液体に触れるように保持する第1筐体と、前記第1筐体の壁体の一部を共有壁体として、当該第1筐体に隣接して設けられた第2筐体とで装置を構成することにより、構成自体は極めて単純ではあるものの、超音波振動子の放熱の問題、液体の庫内放置による衛生上の問題、さらには第1の液体の凍結による筐体の破損の問題を、全て解決することができ、流体を密閉した筐体を持たない従来装置と比較し、低コストで高性能な霧化装置を実現することができる。さらに、第1筐体内に非圧縮性液体の凍結状態を把握できる温度センサーを設置することにより、超音波振動子の破損を免れることができるうえ、従来装置よりよりきめ細かな霧化の制御も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波霧化装置の構造を示す模式図。
【図2】同実施形態における超音波霧化装置の制御アルゴリズムを示すフローチャート。
【図3】本発明の別の実施形態に係る超音波霧化装置の構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
<構成>
図1に、本発明の実施形態の一例を示す。本実施形態に係る超音波霧化装置1は、冷蔵庫(図示しない)の庫内の加湿をするために用いられるものであり、第1筐体2、第2筐体3、共有壁体4、超音波振動子5を具備している。この超音波霧化装置1の外形について説明すると、概略円筒形状の第1筐体2の上に、上面が開口した平円筒形状の第2筐体3が載置された形状をしている。前記第1筐体2の底面部には一部開口があり、その開口を塞ぐように平板状の超音波振動子5が設けてあり、第1筐体2内部の第1の液体とその振動面が接するようにしてある。そして、前記第1筐体2の上面と前記第2筐体3の底面とは前記共有壁体4を共有するようにして前記第1筐体2と前記第2筐体3とを一体にしてある。
【0021】
この具備された構成について説明すると、第1筐体2は、第1筐体2内に第1の液体である非圧縮性液体6を完全密封してある。また、前記第1筐体2の適当な個所には温度センサー13が設置してある。前記非圧縮性液体6は、具体的には、食塩水などのような凝固点が0℃以下の寒剤である。
【0022】
前記第1筐体2の底壁に設置した前記超音波振動子5は、第1筐体内の非圧縮性液体6の完全密封を達成するため、超音波振動子5が上面に載置された底壁8を例えばボルト9により締め付ける。同様に、前記共有壁体4側においても、パッキング10を,ボルト11および12により締め付けることにより,第1筐体2内の非圧縮性液体6の完全密封を達成する。
【0023】
また前記第1筐体2内の適当な箇所には、温度センサー13を設置する。これにより、非圧縮性液体6が凍結する温度となった場合には前記超音波振動子5の振動を停止し霧化をやめ、それにより前記超音波振動子5を含む超音波霧化装置1の破損を回避することができる。
【0024】
これに対して、前記第2筐体3内に収容されている第2の液体である霧化させるべき液体7は、前記共有壁体4により非圧縮性液体6とは分離されてはいるが、超音波振動子5より発生する振動は、前記非圧縮性液体6及び前記共有壁体4を介して、霧化させるべき液体7に伝達される。従って、前記超音波振動子5が第1筐体2内に設けられていてもその前記超音波振動によって霧化されるべき液体7を霧化することができる。なお、前記第2の液体は、冷蔵庫内を加湿するための水であるため普通の水道水や通常の水等であればよい。
【0025】
前記共有壁体4は、どのような形状でも良いが、図1に示したように、鉛直下方向に対して凹な形状をもつ膜形状のものとすることにより、前記第2筐体3にある液体は前記共有壁体4の凹んでいる部分に集まるので、前記第2筐体内に霧化させるべき液体7を残すことなく、完全に霧化させることができる。この膜形状について言い換えると、縦断面において前記共有壁体4は鉛直下向きに凸となっているともいえる。この前記共有壁体4の材料としては、伸縮性のあるエラストマ樹脂や形状記憶合金を用いることにより、共有壁体4に伸縮性をもたせることが可能となる。これにより、前記第1筐体2内の非圧縮性液体6が凍結してしまったとしても、液体が固体になることによる体積膨張によって筐体が破損してしまうのを免れることが可能となる。
【0026】
<制御アルゴリズム>
図2には、前述した温度センサー13を用いた超音波霧化装置1の制御アルゴリズムを示す。なお、この制御アルゴリズムは、CPU、メモリ、A/D、D/Aコンバータ等の入出力機構等からなる制御機構と、上述した構成要素が協業してその機能を発揮するようにしてある。
【0027】
図2に示したように、冷蔵庫側と超音波霧化装置1でそれぞれ湿度と温度をモニタリングすることにより各種制御が行われる。
【0028】
まず、冷蔵庫本体の電源がONとなると、冷蔵庫側にて庫内の湿度と検知し、その庫内湿度が設定湿度以下であれば、前記第1筐体2内に設置した温度センサー13により、第1筐体2内の第1液体の温度を検知する。第1液体の温度が凝固点以上であれば、霧化器の電源を適当な時間だけONにし、その後OFFにする。液体温度が凝固点以下であれば、霧化器を稼働せず、再び筐体内の液体の温度を検知する。
【0029】
その他の実施形態について説明する。
【0030】
前記実施形態では、超音波振動子5は、前記第1筐体2の底壁に設置している実施形態を示しているが、底壁に限るものではない。例えば、筐体の設置場所の制約がある場合には、図3に示す構成も考えうる。具体的には、第1筐体2がまっすぐに延びる円筒形状ではなく、断面視において概略L字状にまがったものであり、その側面側に前記超音波振動子5を設けてもよい。要するに、前記超音波振動子5が第1筐体2内の第1液体と接触し、その超音波振動が、前記共有壁体4へと伝達されるように構成されていればよい。
【0031】
その他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1・・・超音波霧化装置
2・・・第1筐体
3・・・第2筐体
4・・・共有壁体
5・・・超音波振動子
6・・・第1筐体内の非圧縮性液体(第1の液体)
7・・・第2筐体内の霧化させるべき液体(第2の液体)
13・・・温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子と、内部に第1の液体を密封するとともに前記超音波振動子をその振動面が前記第1の液体に触れるように保持する第1筐体と、前記第1筐体の壁体の一部を共有壁体として、当該第1筐体に隣接して設けられた第2筐体とを具備し、前記振動面の振動が前記第1の液体を介して前記共有壁体に伝達され、前記第2筐体に貯留された第2の液体を霧化させるものであることを特徴する超音波霧化装置。
【請求項2】
前記共有壁体が、前記第1筐体の上壁と前記第2筐体の底壁とを兼ねるものであり、鉛直下方向に対して凹な形状をもつものである請求項1記載の超音波霧化装置。
【請求項3】
前記共有壁体が伸縮性のある素材で構成されている請求項1又は2記載の超音波霧化装置。
【請求項4】
前記共有壁体が形状記憶合金で構成されている請求項1又は2記載の超音波霧化装置
【請求項5】
前記第1の液体の温度を検知する温度センサーと、
前記温度センサーが検知した温度が、第1の液体の凝固点以下である場合には、前記超音波振動子の振動を停止させる振動停止部とをさらに具備している請求項1、2、3又は4記載の超音波霧化装置
【請求項6】
前記第1の液体が、0℃を下回る凝固点のものである請求項1、2、3、4又は5記載の超音波霧化装置
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか記載の超音波霧化装置を有し、該超音波霧化装置によって庫内を加湿することを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−130843(P2012−130843A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283841(P2010−283841)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】