超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜、同薄膜を用いた高感度分子検出用基板及び同薄膜の製造方法
【課題】貴金属又は磁性金属ナノ粒子を、高い面内数密度で基板上に配置し、しかもナノ粒子相互間の距離を10nm以下に保ち、熱や化学物質によって近接したナノ粒子同士が融合して容易に大きな粒子にならない性質を持った薄膜を調製する。そして、これをさまざまな分子計測用の基板として利用しようとすることを課題とする。
【解決手段】絶縁性物質と貴金属又は磁性金属を同時スパッタリングすることにより、基板上に貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上である超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【解決手段】絶縁性物質と貴金属又は磁性金属を同時スパッタリングすることにより、基板上に貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上である超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属又は磁性金属ナノ粒子がお互いに10nm以下の距離で絶縁性の物質によって隔たされた薄膜及びその製造方法並びにこの薄膜を利用した分子計測に使用する高感度検出用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
金のナノ粒子の調製には、非常に多くの手法が適用され、その光学的性質が粒子サイズ、形状、周りの誘電性環境によって変わるという報告又は非線形光学特性などへの応用などが検討されてきた(非特許文献1、2参照)
一方、Au/SiO2ナノコンポジットにおいて、その光学的性質が検討されてきた(非特許文献3−9参照)。
【0003】
また、金のナノ粒子はAu−チオール結合を利用した自己集積単分子(SAM)膜が、近年盛んに研究されている(非特許文献10、11参照)。分子の導電性を測定する場合、このSAM膜上の分子と走査型トンネル顕微鏡(STM)を使って行われているのがほとんどである(特許文献10−15参照)。
このように基板上で分子の電導性を直接測ろうとする試みは、特殊な実験システムを必要とし、非常に限られているのが現状である。
【0004】
これまでに、貴金属ナノ粒子(金、白金など)を酸化ケイ素などの絶縁性の物質あるいは酸化チタンなどの半導性物質中に分散させ、非線形光学材料や光電極へ適用しようとする報告されている。いわゆるナノコンポジットである。
しかし、この従来技術では、貴金属の分散量は原子数比にして高々5〜10%程度にしかすぎない。
【0005】
貴金属ナノ粒子は反応性が高く、容易に融合して大きな粒子に成長してしまうことが知られており、これを克服する必要がある。
これまでに、さまざまな手法(主として有機化学的手法)により貴金属ナノ粒子間の距離を有機分子鎖長により制御し、ナノ粒子配列基板として用いようとする報告があった。
しかし、この場合、貴金属ナノ粒子表面は、既に有機分子により被覆されているので、さらなる反応や計測への応用には不適当である
【0006】
【非特許文献1】C. Burda, et al., “Optical Spectroscopy of Nanophase Materials in Characterization of Nanophase Materials”, eds. Z.L. Wang, Wiley-VCH Verlag GmbH, Weinheim, Germany, 2000.
【非特許文献2】M.-C. Daniel, D. Astruc, Chem. Rev., 104 (2004) 293-346.
【非特許文献3】I. Tanahashi, et al., J. Appl. Phys., 79(3) (1996) 1244-1249.
【非特許文献4】T. Ung, L.M. Liz-Marzan, P. Mulvaney, J. Phys Chem. B, (2001) 3441-3452.
【非特許文献5】S.H. Cho, et al., Thin Solid Films, 447-448 (2004) 68-73.
【非特許文献6】W.P. Hu et al., Biosensors and Bioelectronics, 19 (2004) 1465-1471.
【非特許文献7】L. He, E.A. Smith, M.J. Natan, C.D. Keating, J. Phys. Chem. B, 108 (2004) 10973-10980.
【非特許文献8】D. Barreca et al., J. Appl. Phys., 96(3) (2004) 1655-1665.
【非特許文献9】H.B. Liao, W. Wen, G.K.L. Wong, Appl. Phys. A, 80 (2005) 861-864.
【非特許文献10】L. Fu, L. Cao, Y. Lim, D. Zuh, Advances in Colloid and Interface Sci., 111 (2004) 133-157.
【非特許文献11】G. Schmid, U. Simon, Chem. Commun. (2005) 697-710.
【非特許文献12】J.J. Langer, M. Martynski, Synthetic Mater., 107 (1999) 1-6.
【非特許文献13】S. Wakamatsu, U. Akiba, M. Fusihiha, Colloids and Surfaces A, 198-200 (2002) 785-790.
【非特許文献14】D. Vuillaume, S. Lenfant, Microelect. Eng., 70 (2003) 539-550.
【非特許文献15】S.-U. Kim, H.-K. Shin, Y.-S. Kwon, Colloids and Surfaces A, 257-258 (2005) 211-214.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決することを目的とし、貴金属又は磁性金属ナノ粒子を、高い面内数密度で基板上に配置し、しかもナノ粒子相互間の距離を10nm以下に保ち、熱や化学物質によって近接したナノ粒子同士が融合して容易に大きな粒子にならない性質を持った薄膜を調製するものである。そして、これをさまざまな分子計測用の基板として利用しようとすることを課題とする。
【0008】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子は、反応性が高く、容易に融合して大きな粒子に成長してしまうが、本発明は、これを克服するものである。本発明では、貴金属又は磁性金属ナノ粒子の融合を押さえ、かつ貴金属又は磁性金属表面は何も被覆されていない状態、すなわち無機的な手法により実現しようとするものである。
このように、融合を押さえかつ分子電導測定などの応用を考え、絶縁性無機物質を貴金属又は磁性金属ナノ粒子間に介在させることを課題とする。すなわち貴金属又は磁性金属ナノ粒子が絶縁性無機物質中に、高濃度に分散したナノコンポジット基板をいかにして作成するかという課題に還元される。本願発明は、これを達成しようとするものである。
【0009】
隣り合う貴金属ナノ粒子間に分子を結合させ、貴金属ナノ粒子を電極に接続させることで、分子の導電性を直接計測することを可能とし、この薄膜を利用することにより、分子の導電性に変化を与える他の分子あるいは湿度などの外界環境を計測するためのセンサ用基板としての利用を可能とする。
また、ナノ粒子間距離が2nm以下になる割合を十分高め、貴金属ナノ粒子が互いに接近していることによって生じる光増強電場を利用することを可能とする。さらに、ナノコンポジット基板の生成において、通常センチメートル四方の大きさのものを得、光増強電場を薄膜全体に均一に分布させた、面状単一分子検出器あるいは位置敏感単一分子検出器の、基本部品として利用する。
磁性金属ナノ粒子分散コンポジット基板の利用については、例えば分散している磁性金属を予め磁化させておき、この磁性金属ナノ粒子分散コンポジット上に分子を自立的に配向させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上であること超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を提供することができる。
この場合、貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離に隔てられていることが必要であり、さらに2nm以下の距離で隔てられていることが、より望ましい。本願発明はこれらを達成することができる。粒子間距離をより狭くすることに制限はない。但し、上限値を10nmとすることが効率良く表面増強ラマン信号を得るためあるいは分子電導を測定するための要件である。
また、分子電導測定のためには貴金属又は磁性金属ナノ粒子の平均直径が2nm以上であることが良く、さらには、表面増強ラマン信号を得るためには貴金属又は磁性金属ナノ粒子の平均直径が10nm以上であることが良い。粒子径を500nm程度にすることは容易である。粒子径の上限に制限が必要でないことは理解されるべきである。しかし、粒子径が大きくなる場合には、粒子間の距離の調整は難しくなる傾向にある。
粒子間の距離がより小さく、ナノ粒子サイズが10〜50nmの場合に表面増強ラマン信号を効率良く得ることができる。
【0011】
本発明の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜は、絶縁性物質としてセラミックスを用いることができる。また、絶縁性物質として酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化硼素、窒化珪素から選択した1以上の材料を使用することができ、これらは絶縁性物質として、より望ましい材料である。
本発明は、ナノ粒子として分散している貴金属又は磁性金属の原子数を絶縁性物質中に含まれる金属又は半金属若しくは金属性非金属の原子数で割った値が0.3以上である上記超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を提供することができる。この上記超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜は、高感度分子検出用基板材料として有用である。
したがって、本願発明は、上記超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を用いた高感度分子検出用基板を提供するものである。
【0012】
本願発明は、絶縁性物質と貴金属又は磁性金属を同時スパッタリングすることにより、基板上に貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上である超高密度貴金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法を提供する。その具体的手段として、絶縁性物質上に貴金属又は磁性金属の線を載せ、同時スパッタリングすることにより、超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を製造することができる。同時スパッタリングは有用な方法であり、後述する条件で容易に達成できる。
【0013】
さらに、絶縁性物質としてセラミックスを使用することができ、また絶縁性物質として酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化硼素、窒化珪素から選択した1以上の物質を使用することができる。これらは絶縁性物質として、より望ましい材料である。
本発明の方法により、ナノ粒子として分散している貴金属又は磁性金属の原子数を絶縁性物質中に含まれる金属又は半金属若しくは金属性非金属の原子数で割った値が0.3以上である超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を効率良く製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜は、貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられおり、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上であるという、個々のナノ粒子が絶縁性物質で覆われた超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子が分散した薄膜を得ることができるので、その利用は多岐に亘る。
【0015】
超高密度貴金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を利用して、例えば隣り合う金ナノ粒子間に分子を結合させ、金ナノ粒子を電極に接続させることで分子の導電性を直接計測することが可能となる。この薄膜を利用すると、分子の導電性に変化を与える他の分子あるいは湿度などの外界環境を計測するためのセンサ用基板として利用できる。
また、貴金属ナノ粒子が互いに接近しているために生じる光増強電場を利用することが可能になる。そして、センチメートル四方の大きさのナノコンポジット基板が容易に得られるため、光増強電場が薄膜全体に均一に分布させた面状単一分子検出器あるいは位置敏感単一分子検出器の基本部品として利用が可能となるという優れた効果を有する。
【0016】
さらに、磁性金属ナノ粒子分散コンポジットを形成した場合は、分散している磁性金属を予め磁化させておき、この磁性金属ナノ粒子分散コンポジット上に分子を自立的に配向させることができる。
通常の方法では、分子の集合体に圧力を加えたり、流れを与えたりすることにより、このような分子の集合体に配向を与えているが、この場合、分子同士はお互いに隙間無く充填されていることが必要となる。
しかし、本発明の磁性金属ナノ粒子分散コンポジット基板を用いると、上記のように隙間無く充填する必要はなく、分子を特定の方向に配向させることができるという著しい特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の特徴を、図等を用いて具体的に説明する。なお、以下の説明は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、これに制限されるものではない。すなわち、本願発明の技術思想に基づく変形、実施態様、他の例は、本願発明に含まれるものである。
【0018】
本願発明の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜は、上記の通り貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、数密度が10000個/μm2以上の貴金属又は磁性金属ナノ粒子を備えている。
貴金属としては、金、白金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム又はこれらの金属を基とする合金などを使用することができる。これらの貴金属は、超高密度貴金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の使用目的に応じて選択できる。
また、磁性金属としては、鉄、コバルト、ニッケルなど又はこれらの金属を基とする合金などを使用することができる。これらの磁性金属も、超高密度磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の使用目的に応じて、任意に選択できる。さらに、前記貴金属と磁性金属の複合体として使用することも容易に理解されるであろう。本願発明は、これらを全て含むものである。
【0019】
絶縁性物質としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化硼素、窒化珪素、その他のセラミックスを使用できる。これらは、好適な絶縁性物質であるが、無機材料系の絶縁性物質であれば、特に制限はない。
このようにして得られた超高密度貴金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜は、高感度分子検出用基板に特に有用である。
【0020】
本発明は、絶縁性物質と貴金属又は磁性金属を同時スパッタリングすることが有効である。スパッタリングは一般に知られた技術であるが、絶縁性物質中に超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子を分散させたコンポジット薄膜を形成するということに有効である、と認識することはなかった。通常スパッタ膜はある程度の厚みの膜を形成することを目的とするからである。
【0021】
本願発明の場合は、特に、極めて短時間の同時スパッタが有効である。むしろ、短時間のスパッタでなければ、達成することはできないと言い得るものである。それは、後述の実施例に示すように、スパッタ時間を長くすると、絶縁性物質中に貴金属又は磁性金属の新しい粒子が形成されず、スパッタ粒子は、すでに形成された粒子の成長に使われてしまうからである。
絶縁性物質中の貴金属又は磁性金属の粒子の成長は、目的とするナノ粒子の形成に反するものである。これが、従来、超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を形成するためにスパッタリング法の利用の着想が生まれなかった原因と言える。
【0022】
スパッタリング用のターゲット材をモザイクターゲットにすることもできる。絶縁性物質と貴金属又は磁性金属を同時スパッタ可能であれば、特にターゲットの構造に制限はない。
これによって、基板上に貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上である耐久性に富む超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を製作することが可能となる。
また、以下に説明するように、貴金属又は磁性金属を均一に分散させ、その結晶粒成長を押さえるための条件選択が重要である。また、貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度を高く保つため短時間のプロセスが有利である。また、ナノコンポジット基板には、ある程度の平滑性が必要である。
【0023】
さらに、ナノ粒子として分散している貴金属又は磁性金属の原子数を絶縁性物質中に含まれる金属又は半金属若しくは金属性非金属(酸化ケイ素の場合はシリコン)の原子数で割った値が0.3以上であることが望ましい。
これは、超高密度貴金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を、高感度分子検出用基板、高感度分子センサ用基板、その他化学物質や湿度などの環境センサ用基板、大面積面状単一分子検出器および位置敏感単一分子検出器等として使用する場合に、超高密度貴金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜中のナノ粒子が絶縁相によって隔てられてはいるがナノ粒子間の距離が十分に接近している状態を実現する上で、好適となる条件である。
【0024】
ナノ粒子として分散している貴金属又は磁性金属の原子数を絶縁性物質中に含まれる金属又は半金属若しくは金属性非金属原子の数で割った値の上限値に特に制限はないが、値が大きくなるとナノ粒子間の接触が生じるようになり上記の応用に適さなくなることから、実用的にはこの値を2.0以下とするのが望ましい。
以下の例では、分散しているナノ粒子として金、絶縁性物質として酸化ケイ素を用いた例について説明してあるが、他の組み合わせを用いる場合にも、貴金属又は磁性金属の原子数を、該絶縁性物質を構成する物質である金属又は半金属若しくは金属性非金属の原子数で割った値を、上記の比に調整することにより、当然ながら同等の効果を生むものであることは知るべきである。
【実施例】
【0025】
(Au/SiO2ナノコンポジット基板の作成と評価)
単層のAu/SiO2ナノコンポジット薄膜を同時スパッタリング法により調製した。スパッタはRFマグネトロンスパッタ装置を使用し、アルゴン圧力は4mTorr、投入電力25W、スパッタ時間は2〜10分の間で実施した。
シリカ(SiO2)ターゲット上に48本の金線(直径:0.5 mm、長さ:10 mm )を対称に配置し、SiO2とAuを同時にアルゴンプラズマ中でスパッタ蒸着した。ナノコンポジットを蒸着する基板は、p型のSiウェファー(100)面を用いた。この時のAuの割合は、Au/Si比にして約0.77であった。
【0026】
(ナノコンポジット基板の形態(図1))
2分間、5分間、10分間の蒸着により得られたAu/SiO2ナノコンポジット基板の表面形態を電界放射型走査型顕微鏡により分析した。その結果、図1に示すように、白い点で表される金のナノ粒子が、灰色で表されるシリカ中に均一に分散している様子を観察することができた。
2分間の蒸着により得られた金ナノ粒子の平均サイズは2.6nmであり、サイズ分布幅は小さかった。蒸着時間を増やすと5分間で3.7nm、10分間で4.6nmとなった。 金粒子の成長速度約0.3nm/minであった。
【0027】
(ナノコンポジット中の、金ナノ粒子の分散状態の解析(図2))
金のナノ粒子を○で表し、近くの別の金ナノ粒子との間の関係をVoronoi 解析という手法で表したものが図2である。図中で○を線で結んであるものは隣の粒子との距離を表したものである。
個々の金粒子は、それぞれ平均5.95個の金粒子に隣接していることが明らかになり、ほぼ面内最密充填をしていることがわかる。しかも、その間にはシリカ相が介在していた。
【0028】
(ナノコンポジット中の金ナノ粒子の平均粒子間距離(図3〜図4))
図3は、平均粒子間距離を計算したもので、金粒子の中心間距離と金粒子の縁から縁までを計算したものである。金と金の間は10nm以下になっていることがわかる。スパッタ時間を増加させると金のナノ粒子の数が増加し粒子間距離が減少することが期待されるが、実際はこの予想とは逆の傾向を示した。
【0029】
金ナノ粒子の数密度はスパッタ時間とともに14000個/μm2(2分間)、 10000個/μm2(5分間)、7700個/μm2(10分間)と減少した。このことは、スパッタ時間を長くすると、金は粒子の成長に使われ新しい粒子に形成には使われていないことが明らかである。図4は、スパッタ時間による粒子間距離の分布の変化で、粒子間距離とその分布幅はスパッタ時間とともに増加することがわかる。
【0030】
(ナノコンポジット基板を使った分子導電性評価の可能性(図5〜図6))
本ナノコンポジット基板を分子の導電性の評価に利用するためには、粒子間距離が分布をもつことから、ある長さ以下の粒子間距離をもつ割合を見積もることが重要である。図5は、2nm、2.4nm、3nm、4nm以下の距離をもつ粒子間の割合をプロットしたものである。図5中、□は2分間、○は5分間、△は10分間スパッタした結果である。
例えば、2.4nm以下の鎖長の分子を本ナノコンポジット基板上に化学的に結合させたとき10分間スパッタした基板では、約20%の粒子間を分子がつなぐことができることがわかる。
【0031】
図6は、2.4nmよりも短い粒子間距離の部分がナノコンポジット基板上にどのように分布しているかを、異なるスパッタ時間で得た基板で比較したものである。導電性分子を吸着させた場合は、その分子鎖長が平均分子間距離よりもかなり短くても、電極間の距離によって分子の導電性を測定できることが、このデータから明らかである。図6中、[a]は2分間、[b]は5分間、[c]は10分間スパッタした結果である。
【0032】
(スパッタ条件による金粒子分散状態の変化(図7))
スパッタ条件を変化させることで、粒子間距離を最適化することができる。
図7は、その1例であり、シリカ(SiO2)ターゲット上に金線36本を乗せ、Si基板上に同時スパッタ(100W、1分間)し、これによって得られたナノコンポジット基板の表面形態を示す図である。
この場合、金粒子の平均粒径4.5nm、粒子間距離7.5nm、数密度16000個/μm2のものが得られている。この時のAuの割合は、Au/Si比にして約0.59であった。
【0033】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子の粒子間距離とナノ粒子のサイズは、表面増強ラマン信号を効率良く得るために重要である。上記の通り貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離に隔てられていることが必要であり、さらに2nm以下の距離で隔てられていることがより望ましい。
図14に、その一例を示す。図14では、径がおよそ3nm〜20nmの粒子が2nm〜10nmの距離に隔てられて、多数存在しているのが確認できる。粒子間の距離と粒子サイズは、基板材料の選択、貴金属又は磁性金属の選択、スパッタ条件の厳密な調整により調整することができる。本願発明は、これらを全て包含するものである。
【0034】
(ナノコンポジット基板の絶縁性の検証(図8))
Si基板上にナノコンポジット薄膜を形成させたときの表面電導を計測した。その結果、Si基板上にナノコンポジット薄膜を形成させたとき(図8中□)はSi基板を通して電流が流れてしまうが、高絶縁性の熱酸化Si基板を用いたとき(図8中■)は基板を通して電流が全く流れず、高濃度にAuが分散しているにも関わらずナノコンポジット薄膜は絶縁性を保っている。この状態を利用すれば、分子電導の測定が可能であることを示している。
【0035】
(ナノコンポジット基板上への分子接合の検証(図9))
図9はナノコンポジット基板上にフッ素原子を含む分子を結合させたときの、光電子スペクトルの変化を示す図である。基板の成分や表面の汚れ以外に、分子中に含まれるフッ素が表面から検出された。
この結果から明らかなように、得られたナノコンポジット基板は、金が10nm以下の粒子サイズで表面に露出しており、かつSiO2のような絶縁層で隔てられた状況であるが、分子が直接金と結合を形成できることが分かる。
これにより、本発明のナノコンポジット基板は、分子を結合させることにより分子の導電性を直接測定できることを示している。
【0036】
(ナノコンポジット基板上へ分子を接合させることにより分子の電導性を測定できることの検証(図10、図11))
図10は、金ナノ粒子がシリカ中に分散したナノコンポジット基板上に、両端にチオール(−SH)基をもつ導電性分子を接合させ、金ナノ粒子同士を導電性分子で繋ぐことにより数百ナノメートルの距離をもつ電極間(図11のような構造)の電導特性を測定した結果である。
分子を接合させる前と比べて105倍の電流値が得られ、ナノコンポジット基板を使うことにより分子電導の測定が可能であることを示している。走査型トンネル分光法によるほぼ同じ構造の電導性分子の電導特性と、上記の結果から計算される1分子の平均電導特性はほぼ一致したことからもこの手法の有効性がわかる。
【0037】
(ナノコンポジット基板上へ分子を接合させることにより分子の電導性の有無を光学的に測定できることの検証(図12))
図12は分子を吸着させる前のナノコンポジット基板[b]、及び両端に金ナノ粒子と接合できる官能基を有する分子で導電性を持つ分子[c]と、持たない分子[a]を接合させた時のナノコンポジット基板の透過スペクトルである。導電性分子が接合した分子のみが長波長側にピークシフトしたことから、分子の導電性を簡便に検出できることがわかる。
【0038】
(ナノコンポジット基板を利用して吸着分子の表面増強ラマン信号を光学的に測定できることの検証(図13))
図13に示すように、ナノコンポジット基板を用いることで、表面増強ラマン信号の検出に成功した。金/シリカナノコンポジット基板に銅フタロシアニンを蒸着し、これにレーザー光を照射することで得られる表面増強ラマン信号(b)は、ナノコンポジット基板なしの場合(c)と比較して約100倍の信号強度が得られている。現状では、従来法の結果(a)と比べて約1/4〜5であるが最適化により大幅な改良が可能である。
本手法で得られるナノ粒子は従来法で得られるナノ粒子と比べて、安定性が極めて高いことから、ナノ粒子の分布構造を最適化することで実用的に安定であり使用法が容易な基板が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上記に示す通り、本発明の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜は、貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられおり、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上であるという、個々のナノ粒子が絶縁性物質で覆われた超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子が分散した薄膜を得ることができるので、その利用は多岐に亘る。
ナノ粒子・ナノコンポジット応用技術、単分子電導性計測、単一分子分光計測用基板、面状分子計測素子などである。具体的には、高感度分子検出用基板として、高感度分子センサ用基板、その他化学物質や湿度などの環境センサ用基板、大面積面状単一分子検出器および位置敏感単一分子検出器等に最適である。
さらに、磁性金属ナノ粒子分散コンポジット基板については、例えば該基板中に分散している磁性金属を予め磁化させておき、この上に特定の分子の皮膜を形成し、この分子の皮膜を特定の方向に自立的に配向させることにより、配向を調整した分子の皮膜を形成することに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】Au/SiO2ナノコンポジット基板の表面形態を電界放射型走査型顕微鏡に観察した結果を示す図である。[a]はスパッタ(蒸着)時間2分、[b]はスパッタ(蒸着)時間5分、[c]はスパッタ(蒸着)時間10分の場合をそれぞれ示す。
【図2】Voronoi解析の結果を示す図である。[a]はスパッタ(蒸着)時間2分、[b]はスパッタ(蒸着)時間5分、[c]はスパッタ(蒸着)時間10分の場合をそれぞれ示す。
【図3】平均金粒子間距離のスパッタ時間に伴う変化を示す図である。
【図4】平均金粒子間距離の分布のスパッタ時間に伴う変化を示す図である。
【図5】金粒子間距離が特定の長さ以下である割合を示す図である。
【図6】金粒子間距離が2.4nm以下の粒子間の分布状態を示す図である。[a]はスパッタ(蒸着)時間2分、[b]はスパッタ(蒸着)時間5分、[c]はスパッタ(蒸着)時間10分の場合をそれぞれ示す。
【図7】金線36本を使った同時スパッタ法(100W、1分間)で得られたナノコンポジット基板の表面形態を示す図である。
【図8】Si基板上に生成した、ナノコンポジット基板の表面電導計測の結果を示す図である。
【図9】ナノコンポジット基板上にフッ素原子を含む分子を結合させたときの、光電子スペクトルの変化を示す図である。
【図10】金ナノ粒子がシリカ中に分散したナノコンポジット基板上に両端にチオールと−SH基をもつ導電性分子を接合させ、金ナノ粒子同志を導電性分子で繋ぐことにより数百ナノメートルの距離をもつ電極間の電導特性を測定した結果を示す図である。
【図11】ナノコンポジット基板上を使って分子の電導特性を測定する方法を表した模式図である。
【図12】分子を吸着させる前のナノコンポジット基板、及び両端に金ナノ粒子と接合できる官能基を有する分子で導電性を持つ分子と持たない分子を接合させた時のナノコンポジット基板の透過スペクトルを示す図である。
【図13】金/シリカナノコンポジット基板に銅フタロシアニンを蒸着し、これにレーザー光を照射することで得られる表面増強ラマン信号(b)を示す図である。
【図14】基板上に形成された金属ナノ粒子の粒子間距離と粒子サイズの一例を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属又は磁性金属ナノ粒子がお互いに10nm以下の距離で絶縁性の物質によって隔たされた薄膜及びその製造方法並びにこの薄膜を利用した分子計測に使用する高感度検出用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
金のナノ粒子の調製には、非常に多くの手法が適用され、その光学的性質が粒子サイズ、形状、周りの誘電性環境によって変わるという報告又は非線形光学特性などへの応用などが検討されてきた(非特許文献1、2参照)
一方、Au/SiO2ナノコンポジットにおいて、その光学的性質が検討されてきた(非特許文献3−9参照)。
【0003】
また、金のナノ粒子はAu−チオール結合を利用した自己集積単分子(SAM)膜が、近年盛んに研究されている(非特許文献10、11参照)。分子の導電性を測定する場合、このSAM膜上の分子と走査型トンネル顕微鏡(STM)を使って行われているのがほとんどである(特許文献10−15参照)。
このように基板上で分子の電導性を直接測ろうとする試みは、特殊な実験システムを必要とし、非常に限られているのが現状である。
【0004】
これまでに、貴金属ナノ粒子(金、白金など)を酸化ケイ素などの絶縁性の物質あるいは酸化チタンなどの半導性物質中に分散させ、非線形光学材料や光電極へ適用しようとする報告されている。いわゆるナノコンポジットである。
しかし、この従来技術では、貴金属の分散量は原子数比にして高々5〜10%程度にしかすぎない。
【0005】
貴金属ナノ粒子は反応性が高く、容易に融合して大きな粒子に成長してしまうことが知られており、これを克服する必要がある。
これまでに、さまざまな手法(主として有機化学的手法)により貴金属ナノ粒子間の距離を有機分子鎖長により制御し、ナノ粒子配列基板として用いようとする報告があった。
しかし、この場合、貴金属ナノ粒子表面は、既に有機分子により被覆されているので、さらなる反応や計測への応用には不適当である
【0006】
【非特許文献1】C. Burda, et al., “Optical Spectroscopy of Nanophase Materials in Characterization of Nanophase Materials”, eds. Z.L. Wang, Wiley-VCH Verlag GmbH, Weinheim, Germany, 2000.
【非特許文献2】M.-C. Daniel, D. Astruc, Chem. Rev., 104 (2004) 293-346.
【非特許文献3】I. Tanahashi, et al., J. Appl. Phys., 79(3) (1996) 1244-1249.
【非特許文献4】T. Ung, L.M. Liz-Marzan, P. Mulvaney, J. Phys Chem. B, (2001) 3441-3452.
【非特許文献5】S.H. Cho, et al., Thin Solid Films, 447-448 (2004) 68-73.
【非特許文献6】W.P. Hu et al., Biosensors and Bioelectronics, 19 (2004) 1465-1471.
【非特許文献7】L. He, E.A. Smith, M.J. Natan, C.D. Keating, J. Phys. Chem. B, 108 (2004) 10973-10980.
【非特許文献8】D. Barreca et al., J. Appl. Phys., 96(3) (2004) 1655-1665.
【非特許文献9】H.B. Liao, W. Wen, G.K.L. Wong, Appl. Phys. A, 80 (2005) 861-864.
【非特許文献10】L. Fu, L. Cao, Y. Lim, D. Zuh, Advances in Colloid and Interface Sci., 111 (2004) 133-157.
【非特許文献11】G. Schmid, U. Simon, Chem. Commun. (2005) 697-710.
【非特許文献12】J.J. Langer, M. Martynski, Synthetic Mater., 107 (1999) 1-6.
【非特許文献13】S. Wakamatsu, U. Akiba, M. Fusihiha, Colloids and Surfaces A, 198-200 (2002) 785-790.
【非特許文献14】D. Vuillaume, S. Lenfant, Microelect. Eng., 70 (2003) 539-550.
【非特許文献15】S.-U. Kim, H.-K. Shin, Y.-S. Kwon, Colloids and Surfaces A, 257-258 (2005) 211-214.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決することを目的とし、貴金属又は磁性金属ナノ粒子を、高い面内数密度で基板上に配置し、しかもナノ粒子相互間の距離を10nm以下に保ち、熱や化学物質によって近接したナノ粒子同士が融合して容易に大きな粒子にならない性質を持った薄膜を調製するものである。そして、これをさまざまな分子計測用の基板として利用しようとすることを課題とする。
【0008】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子は、反応性が高く、容易に融合して大きな粒子に成長してしまうが、本発明は、これを克服するものである。本発明では、貴金属又は磁性金属ナノ粒子の融合を押さえ、かつ貴金属又は磁性金属表面は何も被覆されていない状態、すなわち無機的な手法により実現しようとするものである。
このように、融合を押さえかつ分子電導測定などの応用を考え、絶縁性無機物質を貴金属又は磁性金属ナノ粒子間に介在させることを課題とする。すなわち貴金属又は磁性金属ナノ粒子が絶縁性無機物質中に、高濃度に分散したナノコンポジット基板をいかにして作成するかという課題に還元される。本願発明は、これを達成しようとするものである。
【0009】
隣り合う貴金属ナノ粒子間に分子を結合させ、貴金属ナノ粒子を電極に接続させることで、分子の導電性を直接計測することを可能とし、この薄膜を利用することにより、分子の導電性に変化を与える他の分子あるいは湿度などの外界環境を計測するためのセンサ用基板としての利用を可能とする。
また、ナノ粒子間距離が2nm以下になる割合を十分高め、貴金属ナノ粒子が互いに接近していることによって生じる光増強電場を利用することを可能とする。さらに、ナノコンポジット基板の生成において、通常センチメートル四方の大きさのものを得、光増強電場を薄膜全体に均一に分布させた、面状単一分子検出器あるいは位置敏感単一分子検出器の、基本部品として利用する。
磁性金属ナノ粒子分散コンポジット基板の利用については、例えば分散している磁性金属を予め磁化させておき、この磁性金属ナノ粒子分散コンポジット上に分子を自立的に配向させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上であること超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を提供することができる。
この場合、貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離に隔てられていることが必要であり、さらに2nm以下の距離で隔てられていることが、より望ましい。本願発明はこれらを達成することができる。粒子間距離をより狭くすることに制限はない。但し、上限値を10nmとすることが効率良く表面増強ラマン信号を得るためあるいは分子電導を測定するための要件である。
また、分子電導測定のためには貴金属又は磁性金属ナノ粒子の平均直径が2nm以上であることが良く、さらには、表面増強ラマン信号を得るためには貴金属又は磁性金属ナノ粒子の平均直径が10nm以上であることが良い。粒子径を500nm程度にすることは容易である。粒子径の上限に制限が必要でないことは理解されるべきである。しかし、粒子径が大きくなる場合には、粒子間の距離の調整は難しくなる傾向にある。
粒子間の距離がより小さく、ナノ粒子サイズが10〜50nmの場合に表面増強ラマン信号を効率良く得ることができる。
【0011】
本発明の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜は、絶縁性物質としてセラミックスを用いることができる。また、絶縁性物質として酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化硼素、窒化珪素から選択した1以上の材料を使用することができ、これらは絶縁性物質として、より望ましい材料である。
本発明は、ナノ粒子として分散している貴金属又は磁性金属の原子数を絶縁性物質中に含まれる金属又は半金属若しくは金属性非金属の原子数で割った値が0.3以上である上記超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を提供することができる。この上記超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜は、高感度分子検出用基板材料として有用である。
したがって、本願発明は、上記超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を用いた高感度分子検出用基板を提供するものである。
【0012】
本願発明は、絶縁性物質と貴金属又は磁性金属を同時スパッタリングすることにより、基板上に貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上である超高密度貴金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法を提供する。その具体的手段として、絶縁性物質上に貴金属又は磁性金属の線を載せ、同時スパッタリングすることにより、超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を製造することができる。同時スパッタリングは有用な方法であり、後述する条件で容易に達成できる。
【0013】
さらに、絶縁性物質としてセラミックスを使用することができ、また絶縁性物質として酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化硼素、窒化珪素から選択した1以上の物質を使用することができる。これらは絶縁性物質として、より望ましい材料である。
本発明の方法により、ナノ粒子として分散している貴金属又は磁性金属の原子数を絶縁性物質中に含まれる金属又は半金属若しくは金属性非金属の原子数で割った値が0.3以上である超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を効率良く製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜は、貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられおり、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上であるという、個々のナノ粒子が絶縁性物質で覆われた超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子が分散した薄膜を得ることができるので、その利用は多岐に亘る。
【0015】
超高密度貴金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を利用して、例えば隣り合う金ナノ粒子間に分子を結合させ、金ナノ粒子を電極に接続させることで分子の導電性を直接計測することが可能となる。この薄膜を利用すると、分子の導電性に変化を与える他の分子あるいは湿度などの外界環境を計測するためのセンサ用基板として利用できる。
また、貴金属ナノ粒子が互いに接近しているために生じる光増強電場を利用することが可能になる。そして、センチメートル四方の大きさのナノコンポジット基板が容易に得られるため、光増強電場が薄膜全体に均一に分布させた面状単一分子検出器あるいは位置敏感単一分子検出器の基本部品として利用が可能となるという優れた効果を有する。
【0016】
さらに、磁性金属ナノ粒子分散コンポジットを形成した場合は、分散している磁性金属を予め磁化させておき、この磁性金属ナノ粒子分散コンポジット上に分子を自立的に配向させることができる。
通常の方法では、分子の集合体に圧力を加えたり、流れを与えたりすることにより、このような分子の集合体に配向を与えているが、この場合、分子同士はお互いに隙間無く充填されていることが必要となる。
しかし、本発明の磁性金属ナノ粒子分散コンポジット基板を用いると、上記のように隙間無く充填する必要はなく、分子を特定の方向に配向させることができるという著しい特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の特徴を、図等を用いて具体的に説明する。なお、以下の説明は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、これに制限されるものではない。すなわち、本願発明の技術思想に基づく変形、実施態様、他の例は、本願発明に含まれるものである。
【0018】
本願発明の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜は、上記の通り貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、数密度が10000個/μm2以上の貴金属又は磁性金属ナノ粒子を備えている。
貴金属としては、金、白金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム又はこれらの金属を基とする合金などを使用することができる。これらの貴金属は、超高密度貴金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の使用目的に応じて選択できる。
また、磁性金属としては、鉄、コバルト、ニッケルなど又はこれらの金属を基とする合金などを使用することができる。これらの磁性金属も、超高密度磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の使用目的に応じて、任意に選択できる。さらに、前記貴金属と磁性金属の複合体として使用することも容易に理解されるであろう。本願発明は、これらを全て含むものである。
【0019】
絶縁性物質としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化硼素、窒化珪素、その他のセラミックスを使用できる。これらは、好適な絶縁性物質であるが、無機材料系の絶縁性物質であれば、特に制限はない。
このようにして得られた超高密度貴金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜は、高感度分子検出用基板に特に有用である。
【0020】
本発明は、絶縁性物質と貴金属又は磁性金属を同時スパッタリングすることが有効である。スパッタリングは一般に知られた技術であるが、絶縁性物質中に超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子を分散させたコンポジット薄膜を形成するということに有効である、と認識することはなかった。通常スパッタ膜はある程度の厚みの膜を形成することを目的とするからである。
【0021】
本願発明の場合は、特に、極めて短時間の同時スパッタが有効である。むしろ、短時間のスパッタでなければ、達成することはできないと言い得るものである。それは、後述の実施例に示すように、スパッタ時間を長くすると、絶縁性物質中に貴金属又は磁性金属の新しい粒子が形成されず、スパッタ粒子は、すでに形成された粒子の成長に使われてしまうからである。
絶縁性物質中の貴金属又は磁性金属の粒子の成長は、目的とするナノ粒子の形成に反するものである。これが、従来、超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を形成するためにスパッタリング法の利用の着想が生まれなかった原因と言える。
【0022】
スパッタリング用のターゲット材をモザイクターゲットにすることもできる。絶縁性物質と貴金属又は磁性金属を同時スパッタ可能であれば、特にターゲットの構造に制限はない。
これによって、基板上に貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上である耐久性に富む超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を製作することが可能となる。
また、以下に説明するように、貴金属又は磁性金属を均一に分散させ、その結晶粒成長を押さえるための条件選択が重要である。また、貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度を高く保つため短時間のプロセスが有利である。また、ナノコンポジット基板には、ある程度の平滑性が必要である。
【0023】
さらに、ナノ粒子として分散している貴金属又は磁性金属の原子数を絶縁性物質中に含まれる金属又は半金属若しくは金属性非金属(酸化ケイ素の場合はシリコン)の原子数で割った値が0.3以上であることが望ましい。
これは、超高密度貴金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を、高感度分子検出用基板、高感度分子センサ用基板、その他化学物質や湿度などの環境センサ用基板、大面積面状単一分子検出器および位置敏感単一分子検出器等として使用する場合に、超高密度貴金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜中のナノ粒子が絶縁相によって隔てられてはいるがナノ粒子間の距離が十分に接近している状態を実現する上で、好適となる条件である。
【0024】
ナノ粒子として分散している貴金属又は磁性金属の原子数を絶縁性物質中に含まれる金属又は半金属若しくは金属性非金属原子の数で割った値の上限値に特に制限はないが、値が大きくなるとナノ粒子間の接触が生じるようになり上記の応用に適さなくなることから、実用的にはこの値を2.0以下とするのが望ましい。
以下の例では、分散しているナノ粒子として金、絶縁性物質として酸化ケイ素を用いた例について説明してあるが、他の組み合わせを用いる場合にも、貴金属又は磁性金属の原子数を、該絶縁性物質を構成する物質である金属又は半金属若しくは金属性非金属の原子数で割った値を、上記の比に調整することにより、当然ながら同等の効果を生むものであることは知るべきである。
【実施例】
【0025】
(Au/SiO2ナノコンポジット基板の作成と評価)
単層のAu/SiO2ナノコンポジット薄膜を同時スパッタリング法により調製した。スパッタはRFマグネトロンスパッタ装置を使用し、アルゴン圧力は4mTorr、投入電力25W、スパッタ時間は2〜10分の間で実施した。
シリカ(SiO2)ターゲット上に48本の金線(直径:0.5 mm、長さ:10 mm )を対称に配置し、SiO2とAuを同時にアルゴンプラズマ中でスパッタ蒸着した。ナノコンポジットを蒸着する基板は、p型のSiウェファー(100)面を用いた。この時のAuの割合は、Au/Si比にして約0.77であった。
【0026】
(ナノコンポジット基板の形態(図1))
2分間、5分間、10分間の蒸着により得られたAu/SiO2ナノコンポジット基板の表面形態を電界放射型走査型顕微鏡により分析した。その結果、図1に示すように、白い点で表される金のナノ粒子が、灰色で表されるシリカ中に均一に分散している様子を観察することができた。
2分間の蒸着により得られた金ナノ粒子の平均サイズは2.6nmであり、サイズ分布幅は小さかった。蒸着時間を増やすと5分間で3.7nm、10分間で4.6nmとなった。 金粒子の成長速度約0.3nm/minであった。
【0027】
(ナノコンポジット中の、金ナノ粒子の分散状態の解析(図2))
金のナノ粒子を○で表し、近くの別の金ナノ粒子との間の関係をVoronoi 解析という手法で表したものが図2である。図中で○を線で結んであるものは隣の粒子との距離を表したものである。
個々の金粒子は、それぞれ平均5.95個の金粒子に隣接していることが明らかになり、ほぼ面内最密充填をしていることがわかる。しかも、その間にはシリカ相が介在していた。
【0028】
(ナノコンポジット中の金ナノ粒子の平均粒子間距離(図3〜図4))
図3は、平均粒子間距離を計算したもので、金粒子の中心間距離と金粒子の縁から縁までを計算したものである。金と金の間は10nm以下になっていることがわかる。スパッタ時間を増加させると金のナノ粒子の数が増加し粒子間距離が減少することが期待されるが、実際はこの予想とは逆の傾向を示した。
【0029】
金ナノ粒子の数密度はスパッタ時間とともに14000個/μm2(2分間)、 10000個/μm2(5分間)、7700個/μm2(10分間)と減少した。このことは、スパッタ時間を長くすると、金は粒子の成長に使われ新しい粒子に形成には使われていないことが明らかである。図4は、スパッタ時間による粒子間距離の分布の変化で、粒子間距離とその分布幅はスパッタ時間とともに増加することがわかる。
【0030】
(ナノコンポジット基板を使った分子導電性評価の可能性(図5〜図6))
本ナノコンポジット基板を分子の導電性の評価に利用するためには、粒子間距離が分布をもつことから、ある長さ以下の粒子間距離をもつ割合を見積もることが重要である。図5は、2nm、2.4nm、3nm、4nm以下の距離をもつ粒子間の割合をプロットしたものである。図5中、□は2分間、○は5分間、△は10分間スパッタした結果である。
例えば、2.4nm以下の鎖長の分子を本ナノコンポジット基板上に化学的に結合させたとき10分間スパッタした基板では、約20%の粒子間を分子がつなぐことができることがわかる。
【0031】
図6は、2.4nmよりも短い粒子間距離の部分がナノコンポジット基板上にどのように分布しているかを、異なるスパッタ時間で得た基板で比較したものである。導電性分子を吸着させた場合は、その分子鎖長が平均分子間距離よりもかなり短くても、電極間の距離によって分子の導電性を測定できることが、このデータから明らかである。図6中、[a]は2分間、[b]は5分間、[c]は10分間スパッタした結果である。
【0032】
(スパッタ条件による金粒子分散状態の変化(図7))
スパッタ条件を変化させることで、粒子間距離を最適化することができる。
図7は、その1例であり、シリカ(SiO2)ターゲット上に金線36本を乗せ、Si基板上に同時スパッタ(100W、1分間)し、これによって得られたナノコンポジット基板の表面形態を示す図である。
この場合、金粒子の平均粒径4.5nm、粒子間距離7.5nm、数密度16000個/μm2のものが得られている。この時のAuの割合は、Au/Si比にして約0.59であった。
【0033】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子の粒子間距離とナノ粒子のサイズは、表面増強ラマン信号を効率良く得るために重要である。上記の通り貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離に隔てられていることが必要であり、さらに2nm以下の距離で隔てられていることがより望ましい。
図14に、その一例を示す。図14では、径がおよそ3nm〜20nmの粒子が2nm〜10nmの距離に隔てられて、多数存在しているのが確認できる。粒子間の距離と粒子サイズは、基板材料の選択、貴金属又は磁性金属の選択、スパッタ条件の厳密な調整により調整することができる。本願発明は、これらを全て包含するものである。
【0034】
(ナノコンポジット基板の絶縁性の検証(図8))
Si基板上にナノコンポジット薄膜を形成させたときの表面電導を計測した。その結果、Si基板上にナノコンポジット薄膜を形成させたとき(図8中□)はSi基板を通して電流が流れてしまうが、高絶縁性の熱酸化Si基板を用いたとき(図8中■)は基板を通して電流が全く流れず、高濃度にAuが分散しているにも関わらずナノコンポジット薄膜は絶縁性を保っている。この状態を利用すれば、分子電導の測定が可能であることを示している。
【0035】
(ナノコンポジット基板上への分子接合の検証(図9))
図9はナノコンポジット基板上にフッ素原子を含む分子を結合させたときの、光電子スペクトルの変化を示す図である。基板の成分や表面の汚れ以外に、分子中に含まれるフッ素が表面から検出された。
この結果から明らかなように、得られたナノコンポジット基板は、金が10nm以下の粒子サイズで表面に露出しており、かつSiO2のような絶縁層で隔てられた状況であるが、分子が直接金と結合を形成できることが分かる。
これにより、本発明のナノコンポジット基板は、分子を結合させることにより分子の導電性を直接測定できることを示している。
【0036】
(ナノコンポジット基板上へ分子を接合させることにより分子の電導性を測定できることの検証(図10、図11))
図10は、金ナノ粒子がシリカ中に分散したナノコンポジット基板上に、両端にチオール(−SH)基をもつ導電性分子を接合させ、金ナノ粒子同士を導電性分子で繋ぐことにより数百ナノメートルの距離をもつ電極間(図11のような構造)の電導特性を測定した結果である。
分子を接合させる前と比べて105倍の電流値が得られ、ナノコンポジット基板を使うことにより分子電導の測定が可能であることを示している。走査型トンネル分光法によるほぼ同じ構造の電導性分子の電導特性と、上記の結果から計算される1分子の平均電導特性はほぼ一致したことからもこの手法の有効性がわかる。
【0037】
(ナノコンポジット基板上へ分子を接合させることにより分子の電導性の有無を光学的に測定できることの検証(図12))
図12は分子を吸着させる前のナノコンポジット基板[b]、及び両端に金ナノ粒子と接合できる官能基を有する分子で導電性を持つ分子[c]と、持たない分子[a]を接合させた時のナノコンポジット基板の透過スペクトルである。導電性分子が接合した分子のみが長波長側にピークシフトしたことから、分子の導電性を簡便に検出できることがわかる。
【0038】
(ナノコンポジット基板を利用して吸着分子の表面増強ラマン信号を光学的に測定できることの検証(図13))
図13に示すように、ナノコンポジット基板を用いることで、表面増強ラマン信号の検出に成功した。金/シリカナノコンポジット基板に銅フタロシアニンを蒸着し、これにレーザー光を照射することで得られる表面増強ラマン信号(b)は、ナノコンポジット基板なしの場合(c)と比較して約100倍の信号強度が得られている。現状では、従来法の結果(a)と比べて約1/4〜5であるが最適化により大幅な改良が可能である。
本手法で得られるナノ粒子は従来法で得られるナノ粒子と比べて、安定性が極めて高いことから、ナノ粒子の分布構造を最適化することで実用的に安定であり使用法が容易な基板が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上記に示す通り、本発明の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜は、貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられおり、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上であるという、個々のナノ粒子が絶縁性物質で覆われた超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子が分散した薄膜を得ることができるので、その利用は多岐に亘る。
ナノ粒子・ナノコンポジット応用技術、単分子電導性計測、単一分子分光計測用基板、面状分子計測素子などである。具体的には、高感度分子検出用基板として、高感度分子センサ用基板、その他化学物質や湿度などの環境センサ用基板、大面積面状単一分子検出器および位置敏感単一分子検出器等に最適である。
さらに、磁性金属ナノ粒子分散コンポジット基板については、例えば該基板中に分散している磁性金属を予め磁化させておき、この上に特定の分子の皮膜を形成し、この分子の皮膜を特定の方向に自立的に配向させることにより、配向を調整した分子の皮膜を形成することに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】Au/SiO2ナノコンポジット基板の表面形態を電界放射型走査型顕微鏡に観察した結果を示す図である。[a]はスパッタ(蒸着)時間2分、[b]はスパッタ(蒸着)時間5分、[c]はスパッタ(蒸着)時間10分の場合をそれぞれ示す。
【図2】Voronoi解析の結果を示す図である。[a]はスパッタ(蒸着)時間2分、[b]はスパッタ(蒸着)時間5分、[c]はスパッタ(蒸着)時間10分の場合をそれぞれ示す。
【図3】平均金粒子間距離のスパッタ時間に伴う変化を示す図である。
【図4】平均金粒子間距離の分布のスパッタ時間に伴う変化を示す図である。
【図5】金粒子間距離が特定の長さ以下である割合を示す図である。
【図6】金粒子間距離が2.4nm以下の粒子間の分布状態を示す図である。[a]はスパッタ(蒸着)時間2分、[b]はスパッタ(蒸着)時間5分、[c]はスパッタ(蒸着)時間10分の場合をそれぞれ示す。
【図7】金線36本を使った同時スパッタ法(100W、1分間)で得られたナノコンポジット基板の表面形態を示す図である。
【図8】Si基板上に生成した、ナノコンポジット基板の表面電導計測の結果を示す図である。
【図9】ナノコンポジット基板上にフッ素原子を含む分子を結合させたときの、光電子スペクトルの変化を示す図である。
【図10】金ナノ粒子がシリカ中に分散したナノコンポジット基板上に両端にチオールと−SH基をもつ導電性分子を接合させ、金ナノ粒子同志を導電性分子で繋ぐことにより数百ナノメートルの距離をもつ電極間の電導特性を測定した結果を示す図である。
【図11】ナノコンポジット基板上を使って分子の電導特性を測定する方法を表した模式図である。
【図12】分子を吸着させる前のナノコンポジット基板、及び両端に金ナノ粒子と接合できる官能基を有する分子で導電性を持つ分子と持たない分子を接合させた時のナノコンポジット基板の透過スペクトルを示す図である。
【図13】金/シリカナノコンポジット基板に銅フタロシアニンを蒸着し、これにレーザー光を照射することで得られる表面増強ラマン信号(b)を示す図である。
【図14】基板上に形成された金属ナノ粒子の粒子間距離と粒子サイズの一例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上であることを特徴とする超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項2】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに2nm以下の距離で隔てられていることを特徴とする請求項1記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項3】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子の平均直径が2nm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項4】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子の平均直径が10nm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項5】
絶縁性物質がセラミックスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項6】
絶縁性物質が酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化硼素、窒化珪素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項7】
ナノ粒子として分散している貴金属又は磁性金属の原子数を絶縁性物質中に含まれる金属又は半金属若しくは金属性非金属の原子数で割った値が0.3以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項8】
請求項1〜7の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を用いた高感度分子検出用基板。
【請求項9】
絶縁性物質と貴金属又は磁性金属を同時スパッタリングすることにより、基板上に貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上である超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項10】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに2nm以下の距離で隔てられていることを特徴とする請求項9記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項11】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子の平均直径が2nm以上であることを特徴とする請求項9又は10記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項12】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子の平均直径が10nm以上であることを特徴とする請求項9又は10記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項13】
絶縁性物質上に貴金属又は磁性金属の線を載せ、同時スパッタリングすることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項14】
絶縁性物質がセラミックスであることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項15】
絶縁性物質が酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化硼素、窒化珪素であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項16】
ナノ粒子として分散している貴金属又は磁性金属の原子数を絶縁性物質中に含まれる金属又は半金属若しくは金属性非金属の原子数で割った値が0.3以上であることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項1】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上であることを特徴とする超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項2】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに2nm以下の距離で隔てられていることを特徴とする請求項1記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項3】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子の平均直径が2nm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項4】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子の平均直径が10nm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項5】
絶縁性物質がセラミックスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項6】
絶縁性物質が酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化硼素、窒化珪素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項7】
ナノ粒子として分散している貴金属又は磁性金属の原子数を絶縁性物質中に含まれる金属又は半金属若しくは金属性非金属の原子数で割った値が0.3以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜。
【請求項8】
請求項1〜7の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜を用いた高感度分子検出用基板。
【請求項9】
絶縁性物質と貴金属又は磁性金属を同時スパッタリングすることにより、基板上に貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに10nm以下の距離で絶縁性物質により隔てられ、かつ該貴金属又は磁性金属ナノ粒子の数密度が10000個/μm2以上である超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項10】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子が互いに2nm以下の距離で隔てられていることを特徴とする請求項9記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項11】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子の平均直径が2nm以上であることを特徴とする請求項9又は10記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項12】
貴金属又は磁性金属ナノ粒子の平均直径が10nm以上であることを特徴とする請求項9又は10記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項13】
絶縁性物質上に貴金属又は磁性金属の線を載せ、同時スパッタリングすることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項14】
絶縁性物質がセラミックスであることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項15】
絶縁性物質が酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化硼素、窒化珪素であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【請求項16】
ナノ粒子として分散している貴金属又は磁性金属の原子数を絶縁性物質中に含まれる金属又は半金属若しくは金属性非金属の原子数で割った値が0.3以上であることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の超高密度貴金属又は磁性金属ナノ粒子分散コンポジット薄膜の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−93589(P2007−93589A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228023(P2006−228023)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]