説明

超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造

【課題】
コンクリートを現場打設するコンクリート構造物に於いて、現場で打設されたコンクリート表面を覆うための高耐久性薄肉埋設型枠ボード等に用いる超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造の技術を提供する。
【解決手段】
コンクリート構造物16の補修部位の周囲に所望数のボルト打込用孔を穿孔すると共にコンクリートアンカー21をコンクリート構造物16の表面から打込み・埋設している。そして前記補修部位を被覆するように該コンクリート構造物16の表面に不陸調整用プラスチックスペーサ17を配置する。次に調整板19又は不陸調整用プラスチックスペーサ17若しくは超高強度繊維補強コンクリート板取付金具18の表面に固着した面ファスナー20の一方ファスナー部20Aの各突起片20aの相互間隙に接着剤20cを塗布・充填する。そして、該調整板19を備えた超高強度繊維補強コンクリート板取付金具18を前記不陸調整用プラスチックスペーサ17に当接・配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性の高いコンクリート構造物の建設を可能とするもので、コンクリートを現場打設するコンクリート構造物(躯体)に於いて、現場で打設されたコンクリート表面を覆うための高耐久性薄肉埋設型枠ボード等に用いる超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造に於ける第1の例として図6(a)(b)に示す特許第4078927号特許公報に開示された技術がある。
これについて説明すれば、平板状のセメントボード1a、1bを上下,左右方向に隣接配置し、その背面後に、コンクリート2を打設して、セメントボード1a、1bを永久型枠として用いる際のセメントボードの接合方法において、前記平板状のセメントボード1a、1bの接合部3に外方に向けて拡開する空間部4を形成し、前記空間部4に、エポキシ樹脂主剤と、硬化剤と、珪砂などの無機粒状物との混合物で構成した接着剤5、5Aを充填して、該接着剤5、5Aを硬化させることにより、隣接するセメントボード1a、1b間を接着固定する永久型枠用セメントボードの接合方法であって、前記接着剤5は、前記コンクリート2を打設する前に、前記空間部4内に一部を充填して止水性を確保し、前記コンクリート2を打設した後に、接着剤5Aを前記空間部4の残りの部分に充填する。すなわち、図6(a)に示すように、セメントボード1a、1bの背面側にコンクリート2を打設する前に空間4内に接着剤5を充填し、コンクリート2の打設が終了すると、図6(b)に示すように、空間部4内に接着剤5Aを充填し、接着剤5Aを硬化させると、セメントボード1a、1bの接着固定が行われて、接合が完了する。以上のように構成した接合方法によれば、コンクリート2の打設前に、接着剤5を充填し、コンクリート2の打設後に、接着剤5Aを充填するので、コンクリートノロや水分の流出を防止しつつ、きれいに仕上げることができる。
【0003】
従来の技術に於ける第2の例としては、図7に示す特許第3894738号特許公報に開示された技術がある。
これについて説明すれば、埋設型枠用ボード6は、図7(a)に示すように、特定の配合物の硬化体からなる板状の本体部7と、本体部7の片面すなわち後打ちコンクリートが打ち込まれる側の面に設けられた多数の突起体8とからなる。複数の本体部7をその端面(図示せず)を突き合せて設置して埋設型枠を構成し、本体部7間の目地部はエポキシ樹脂系の接着剤を充填する構造を標準としている(図示せず)。多数の突起体8を構成する各粒体、例えば砕石またはセラミックス粉砕物等は、図7(b)に示すように、本体部7の片面において部分的に埋め込まれ、本体部7の片面における底面9から適宜の高さだけ突出した状態に配置され固定されている。なお、多数の突起体8は、砕石等の粒体を用いる代わりに、本体部7自体の片面に凹凸形状を形成させることによって、形成させてもよい。
前記埋設型枠用ボード6は、例えば、図7(c)に示すような形態で用いられる。図7(c)に於いて、コンクリート構造体10は、多数の突起体8を有する片側の面を内側に向けた状態で対向して配置された2つの埋設型枠用ボード6、6と、2つの埋設型枠用ボード6、6の間に打ち込まれた後打ちコンクリート11とから構成される。埋設型枠用ボード6、6は、後打ちコンクリート11の硬化後も、取り外されることなく、コンクリート構造体10の構成部分として存置する。埋設型枠用ボード6の片面に形成される多数の突起体8の高さは、平均値で2mm以上、好ましくは5〜20mmである。ここで、多数の突起体8の高さの平均値とは、埋設型枠用ボード6の片面において、多数の突起体8の部分のみ、すなわち底面9を除く部分を対象にして、高さが同じになるように平坦にならした場合の高さ、すなわち多数の突起体8の投影面において、これら突起体8の体積の合計を一定に保持したまま、投影面上の全ての地点において同一の高さを有するように平坦にならした場合の当該高さをいう。そして、多数の突起体8の高さの平均値が2mm未満では、埋設型枠用ボード6と後打ちコンクリート11との付着力が低下し、0.5MPa以上の付着力を得ることができない。この場合、後打ちコンクリート11の厚さにもよるが、後打ちコンクリート11の剥離が生じる可能性がある。
【0004】
また、従来の技術に於ける第3の例としては、図8に示す超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造の技術がある。
これについて説明すれば、前記超高強度繊維補強コンクリート12は圧縮強度の特性値が150N/mm以上、ひび割れ発生強度の特性値が4N/mm以上、引張強度の特性値が5N/mm以上の繊維補強を行ったセメント質複合材である。13は目地部であり例えば0〜2(mm)の幅長の隙間S1を有している。この目地部13の樹脂注入開口13aは例えばその幅長S2が例えば4〜6(mm)で構成され、エポキシ樹脂系の接着剤15を注入している。14は突起体でありその多数個を超高強度繊維補強コンクリート12の表面に埋設している。そして、超高強度繊維補強コンクリート12の目地の位置や間隔は適用する構造物の形状や施工方法を考慮して決定する。超高強度繊維補強コンクリート12の目地部13は図8に示す突合せ構造であり超高強度繊維補強コンクリート12の目地部13の接着にはエポキシ樹脂系の接着剤15を使用する。超高強度繊維補強コンクリート12の形状や寸法は適用する構造物の形状や施工方法などを考慮して決定してよいが、耐久性の観点からは目地部13を減らすことが望ましい。一般には目地部13の接着は超高強度繊維補強コンクリート12を設置しながら順次行って樹脂注入開口13aが逆方向の目地の構造とし、接着剤が適切に充填され易い構造にする。エポキシ樹脂系の接着剤15は硬化後性状が土木学会基準のプレキャストコンクリート用エポキシ樹脂系接着剤(橋げた用)品質規格に適合するものを使用し、エポキシ樹脂系の接着剤15の硬化前性状は施工性などを考慮して定める。
【特許文献1】第4078927号特許公報
【特許文献2】第3894738号特許公報
【非特許文献1】財団法人土木研究センター発行建設技術審査証明報告書(建技審証 第0124号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術は、叙上した構成であるので次の課題が存在した。すなわち従来技術の第1ないし第3の例によれば、平板状のセメントボード1a、1b、埋設型枠用ボード6、又は超高強度繊維補強コンクリート12は、いずれも耐久性に優れておりコンクリート構造物の設計耐用年数を満足することが可能であっても、これら同士を突き合せた目地部はその隙間や空間部にエポキシ樹脂系接着剤5、5A、15を充填しており、従って前記平板状のセメントボード1a、1b等が紫外線に露呈されている場合は、目地部に充填されたエポキシ樹脂系接着剤5、5A、15は短期間で変色し、強度の劣化を生じる。この強度の劣化により目地部に於いてエポキシ樹脂系接着剤5、5A、15と被接着体である平板状のボード1a、1b等の間で接着面の剥離が発生し、地震等による外力が該目地部に印加した場合は、エポキシ樹脂系接着剤5、5A、15が目地部から脱落する場合もありうる。このように前記目地部に於いてエポキシ樹脂系接着剤5、5A、15と被接着体である平板状のボード1a、1b等の間で一旦接着面の剥離が生じると、その微細な接着面の剥離による隙間へコンクリート構造物の劣化要因物質が雨水等と共に容易に滲入してコンクリート構造物の劣化を促進するという問題点があった。また、従来技術の第1ないし第3の例によればエポキシ樹脂系接着剤5、5A、15を目地部に確実に充填するために、目地部に開口部13aや空間部4を設ける必要がある。開口部13aや空間部4に充填されたエポキシ樹脂系接着剤5、5A、15は目地部の他の部分のエポキシ樹脂系接着剤の量に比較して体積が多く、紫外線の影響を受け易く剥離現象が顕著である。従って硬化後の体積収縮率が小さいエポキシ樹脂系接着剤を採用したとしても経時変化としての体積収縮現象は回避することが困難であり、該体積収縮現象がエポキシ樹脂系接着剤5、5A、15と被接着体である平板状のボードボード1a、1b等の間での接着面の剥離の原因となる故に、コンクリート構造物の劣化を促進するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造は叙上の問題を解決すべく発明したものであり、目地部の構造について高耐久性を確保するために、紫外線が当らない超高強度繊維補強コンクリートの背面にて、例えば40年以上の品質保証や耐久性が確認されている柔軟性接着剤を充填した面ファスナーを備えたシール構造を配置し、さらに超高強度繊維補強コンクリートボードの設置時にこれを仮固定を可能にすることで施工の簡素化を図るシール構造を提供し、具体的には、超高強度繊維補強コンクリート本体に事前に面ファスナーを設置しておき、超高強度繊維補強コンクリート取付位置に面ファスナーの一方を貼り付けてから面ファスナー内の空間にエポキシ樹脂等柔軟性接着剤を充填し、前記面ファスナーを例えばキノコ型突起体の組合せで構成することにより超高強度繊維補強コンクリートをスライド可能としたことを特徴とするものであって、次の構成、手段から成立する。
【0007】
すなわち、請求項1記載の発明によれば、コンクリート構造物(躯体)と、該コンクリート構造物(躯体)の表面に、超高強度繊維補強コンクリート板取付金具を固定・配置する複数のアンカーボルトとでなる構成に於いて、超高強度繊維補強コンクリート板取付金具の表面に固着した一方ファスナー部及び該一方ファスナー部に噛合うと共に他方の上面に円柱突起群を形成した超高強度繊維補強コンクリート板の一方の上面に固着した他方ファスナー部でなる面ファスナーと、一方ファスナー部と他方ファスナー部間に接着剤を介在させかつ前記コンクリート構造物と前記超高強度繊維補強コンクリート板との間に充填される注入剤とでなることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、コンクリート構造物(躯体)と、該コンクリート構造物(躯体)の表面に、超高強度繊維補強コンクリート板取付金具を固定・配置する複数のアンカーボルトとでなる構成に於いて、超高強度繊維補強コンクリート板取付金具の表面に固着した一方ファスナー部及び該一方ファスナー部に噛合うと共に他方の上面に円柱突起群を形成した超高強度繊維補強コンクリート板の一方の上面に固着した他方ファスナー部でなる面ファスナーと、一方ファスナー部と他方ファスナー部間に接着剤を介在させかつ前記コンクリート構造物と前記超高強度繊維補強コンクリート板との間に充填される注入剤と、前記超高強度繊維補強コンクリート板をコンクリート構造物の表面に打込み・固定する複数のコンクリートアンカーボルトとでなることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明に於いて、前記面ファスナーの一方及び他方ファスナー部が基板と該基板に一体形成される突起片群とで構成すると共に仮固定する際該一方、他方ファスナー部の突起片群を噛合わせ固定することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明に於いて、前記面ファスナーに於ける一方、他方ファスナー部の突起片がキノコ状突起片でなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造は、叙上の構成を有するので次の効果がある。
すなわち、請求項1記載の発明によれば、コンクリート構造物(躯体)と、該コンクリート構造物(躯体)の表面に、超高強度繊維補強コンクリート板取付金具を固定・配置する複数のアンカーボルトとでなる構成に於いて、超高強度繊維補強コンクリート板取付金具の表面に固着した一方ファスナー部及び該一方ファスナー部に噛合うと共に他方の上面に円柱突起群を形成した超高強度繊維補強コンクリート板の一方の上面に固着した他方ファスナー部でなる面ファスナーと、一方ファスナー部と他方ファスナー部間に接着剤を介在させかつ前記コンクリート構造物と前記超高強度繊維補強コンクリート板との間に充填される注入剤とでなることを特徴とする超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造を提供する。
このような構成としたので、コンクリート構造物(躯体)の表面に固定する不陸調整用プラスチックスペーサ等を超高強度繊維補強コンクリート板との間に面ファスナーを介在させて超高強度繊維補強コンクリート板を仮固定することができ、また、当初からコンクリートアンカーボルトを固定する工程まで補修工事を迅速にかつ簡素化すると共に高品質であって施工の安全性を高めると共に、面ファスナー内に接着剤を介在させたので、紫外線等や水(HO)又二酸化炭素(CO)等の劣化要因物質が内部に侵入せず、該面ファスナーの耐久性を高めることができるという効果がある。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、コンクリート構造物(躯体)と、該コンクリート構造物(躯体)の表面に、超高強度繊維補強コンクリート板取付金具を固定・配置する複数のアンカーボルトとでなる構成に於いて、超高強度繊維補強コンクリート板取付金具の表面に固着した一方ファスナー部及び該一方ファスナー部に噛合うと共に他方の上面に円柱突起群を形成した超高強度繊維補強コンクリート板の一方の上面に固着した他方ファスナー部でなる面ファスナーと、一方ファスナー部と他方ファスナー部間に接着剤を介在させかつ前記コンクリート構造物と前記超高強度繊維補強コンクリート板との間に充填される注入剤と、前記超高強度繊維補強コンクリート板をコンクリート構造物の表面に打込み・固定する複数のコンクリートアンカーボルトとでなることを特徴とする超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造を提供する。
このような構成としたので、請求項1記載の発明の効果に加えて最終的に超高強度繊維補強コンクリート板をコンクリートアンカーボルトでコンクリート構造物に固定するので補修工事を高品質に確保することができるという効果がある。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、前記面ファスナーの一方及び他方ファスナー部が基板と該基板に一体形成される突起片群とで構成すると共に仮固定する際該一方、他方ファスナー部の突起片群を噛合わせ固定することを特徴とする請求項1又は2記載の超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造を提供する。
このような構成としたので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、超高強度繊維補強コンクリート板の目地部から流入するコンクリート構造物(躯体)の劣化要因物質を拡散することなく容易に遮断することができるという効果がある。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、前記面ファスナーに於ける一方、他方ファスナー部の突起片がキノコ状突起片でなることを特徴とする請求項1又は2記載の超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造を提供する。
このような構成としたので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、面ファスナーの一方、他方ファスナー部の固着力を高めるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造に於ける実施の形態について図1ないし図5に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造を示す垂直断面図である。
図2は超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造に適用する面ファスナーの内部構成及び一方、他方の超高強度繊維補強コンクリート板を示す拡大断面図である。
図3は一方の超高強度繊維補強コンクリート板の上面の形状及び他方ファスナー部の表面形状を示す平面図である。
図4は図2に示す一方、他方の超高強度繊維補強コンクリート板が突合せした状態から他方の超高強度繊維補強コンクリート板が移動した際、該突合せ目地部が生じたときの状態を示す拡大断面図である。
図5は図4に示す突合せ目地部からコンクリートの劣化要因物質が流入する状態を示す拡大部分断面図である。
【0017】
16はコンクリート構造物(躯体)であり、既設の構造物であって、例えば上下水道コンクリート構造物や橋梁コンクリート構造物である場合、硫化水素等で侵食され、また風雨に曝されて劣化しその部位が損傷を生じることになる。
【0018】
17は前記コンクリート構造物16の表面に当接配置した不陸調整用プラスチックスペーサであり、該コンクリート構造物を補修する際、後述する超高強度繊維補強コンクリート板を固定するための調整板等を固定する台座としての機能を有する。
【0019】
18は超高強度繊維補強コンクリート板取付金具であって、ステンレス等の金属材料で構成される。ここで、超高強度繊維補強コンクリート板は圧縮強度の特性値が150N/mm以上、ひび割れ発生強度の特性値が4N/mm以上、引張強度の特性値が5N/mm以上の繊維補強を行ったセメント質複合材板である。19は前記超高強度繊維補強コンクリート板取付金具18の表面に各種の接着剤や溶接手段により固着されたステンレス等の金属材料でなる調整板である。該前記超高強度繊維補強コンクリート板取付金具18と調整板19は一体物として成型してもよい。該調整板19の表面には面ファスナー20の一方ファスナー部20Aを固定している。この固定手段はボンド等の接着剤等でなる。
この一方ファスナー部20Aは直接に前記超高強度繊維補強コンクリート板取付金具18に接着剤等で固定してもよい。
【0020】
前記面ファスナー20の一方ファスナー部20Aは図1及び図2で示すように例えば、突起片20aとしてのキノコ状突起片群を備えている。該一方ファスナー部20Aは基板20bと該突起片20aで構成される。
【0021】
かくて、前記超高強度繊維補強コンクリート板取付金具18、前記調整板19及び前記一方ファスナー部20Aでなる構成部材はコンクリート構造物16の補修部位の付近に予め打込・埋設されている複数のコンクリートアンカー21にアンカーボルト22を打込んで前記不陸調整用プラスチックスペーサ17に固定する。
【0022】
23は超高強度繊維補強コンクリート板であってその他方上面は図3で示すように例えば円柱突起群23aを形成し、その隣接部位の例えば右側すなわち一方上面に他方ファスナー部20Bを固定している。該他方ファスナー部20Bは基板20bと突起片20aで構成され突起片20aとしての例えばキノコ状突起群で構成される。該超高強度繊維補強コンクリート板23は土木構造物例えばコンクリート構造物が劣化した際、その補修を行うときに使用する超高強度繊維補強コンクリート板23であって、その素材は無機系セメント材等で形成される。
【0023】
当該超高強度繊維補強コンクリート板23は、例えば、横長(水平長)が約2(m)、縦長が約1(m)、厚さ約25(mm)の略矩形の薄板状でなる。そしてその表面は所定間隔を有してコンクリートアンカーボルトのボルト頭を挿通する打込用孔23bを貫通形成している。また図1、図3に示すように超高強度繊維補強コンクリート板23は左又は右縁部を除く全体部分、すなわち他方の上面に微小の所定間隔を置いて径長が約6(mm)程度の小さな円柱突起群23aを一連かつ無数に配設・形成している。そしてその左又は右縁部すなわち、一方の上面は図示するように無数の小さな突起片20aで形成した面ファスナー20を備え、特異な形状でなる。この面ファスナー20の他方ファスナー部20Bの幅長は超高強度繊維補強コンクリート板23の左又は右縁部の幅長であって、例えば約5(cm)を有し、該超高強度繊維補強コンクリート板23の上面に接着剤等で貼着して構成している。
【0024】
そこで、例えばコンクリート構造物としてのコンクリート開水路に適用した場合、この断面略U字状でなるコンクリート開水路の内壁面に超高強度繊維補強コンクリート板23をコンクリートアンカーボルト打込用孔23bからコンクリートアンカーボルト24で打込み固定する。
【0025】
次に本発明に係る超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造に於ける実施の形態についてその組立手順や施工方法等を説明する。
先ず、コンクリート構造物16の補修部位の周囲に所望数のボルト打込用孔(図示せず)を穿孔すると共にコンクリートアンカー21をコンクリート構造物16の表面から打込み・埋設している。そして前記補修部位を被覆するように該コンクリート構造物16の表面に不陸調整用プラスチックスペーサ17を配置する。
【0026】
次に前記調整板19又は不陸調整用プラスチックスペーサ17若しくは超高強度繊維補強コンクリート板取付金具18の表面に固着した面ファスナー20の一方ファスナー部20Aの突起片20aの群又は各突起片20aの相互間隙に例えばキノコ状突起片群の内部に例えば柔軟性接着剤等の接着剤20cを塗布・充填する。そして、該調整板19を備えた超高強度繊維補強コンクリート板取付金具18を前記不陸調整用プラスチックスペーサ17に当接・配置する。この接着剤20cはエポキシ樹脂系、ポリブタジエン樹脂系、アクリル樹脂系又はシリコン樹脂系等の接着剤で構成する。
尚、前記不陸調整用プラスチックスペーサ17や前記超高強度繊維補強コンクリート板取付金具18を省略し、直接にコンクリート構造物16の表面に調整板19を配置してもよい。
【0027】
また、前記面ファスナー20の一方ファスナー部20Aと同時に他方ファスナー部20Bにもその突起片20aの群又は各突起片20aの相互間隙に例えばキノコ状突起片群の内部に接着剤20cを塗布・充填する。かくして超高強度繊維補強コンクリート板23の上面に固着した他方ファスナー部20Bを一方ファスナー部20Aに噛合せた際、面ファスナー20の一方及び他方ファスナー部20A、20B及び基板20b、20bで構成される空間内に前記接着剤20cが密封されることになる。
【0028】
そして複数のコンクリートアンカー21にアンカーボルト22を打込み、不陸調整用プラスチックスペーサ17及び一方ファスナー部20Aを備えた超高強度繊維補強コンクリート板取付金具18をコンクリート構造物16の表面に固定する。このとき、超高強度繊維補強コンクリート板23、23はコンクリート構造物16又は調整板19等に仮固定される状態となる。そして該超高強度繊維補強コンクリート板23、23はその表面(上面)から例えば支保工用パイプ(図示せず)等で支持される。この支保工用パイプは型枠の一部で該超高強度繊維補強コンクリート板23、23を所定位置に固定するためのパイプである。そして前記コンクリート構造物16と超高強度繊維補強コンクリート板23との隙間ないし空間内に各種樹脂系等で構成される注入剤25を注入しかつ充填する。この注入剤25が固化すれば該支保工用パイプを取外す。
【0029】
また他の工法としてはさらに超高強度繊維補強コンクリート板23の他方ファスナー部20Bを前記一方ファスナー部20Aと図2に示すように噛合せて固定した後、超高強度繊維補強コンクリート23はコンクリート構造物16又は調整板19等に仮固定される状態とし、そして超高強度繊維補強コンクリート板23をコンクリートアンカーボルト24を予め穿孔しているコンクリートアンカーボルト打込用孔23bから打込み、該超高強度繊維補強コンクリート板23をコンクリート構造物16に固定・配置する。最後に前記コンクリート構造物16と超高強度繊維補強コンクリート板23との隙間ないし空間内に各種樹脂系等で構成される注入剤25を注入しかつ充填する。
【0030】
また、前述した本発明に係る超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造によれば、躯体としてのコンクリート構造物16に構成するアルカリ骨材の応力反応等により該コンクリート構造物16が膨張し、また外部要因振動として地震等が誘起すれば図4に示すように超高強度繊維補強コンクリート板23のいずれか一方が矢印P1方向に移動する。そこで隣接する該超高強度繊維補強コンクリート板23、23間に目地スペースS3を形成する。該目地スペースS3が形成されれば該目地スペースS3内に図5に示すように紫外線、水(HO)や二酸化炭素(CO)、飛沫塩分等の柔軟性接着剤の劣化要因物質が矢印P2方向に流入しても、該面ファスナー20の一方ファスナー部20Aや他方ファスナー部20Bに形成された突起片20aの群内の相互間隙内に存在する接着剤20cにより劣化要因物質が拡散することなく滞留し、また前記劣化要因物質が一方ファスナー部20Aや他方ファスナー部20Bの上下の基板20b、20bに遮蔽されコンクリート構造物16の表面に流過せず、該コンクリート構造物16の補修を完全なものとし、補修品質を高いものに設定することができる。
尚、前記目地スペースS3に各種の樹脂剤を充填することも可能である。
【0031】
以上説明したコンクリート構造物(躯体)16を被覆する超高強度繊維補強コンクリート板23に目地を形成とすることにより、超高強度繊維補強コンクリート板23の突合せ部の目地スペースS3に充填した充填剤は経年劣化するものの、面ファスナー20内に塗布した接着剤20cにより紫外線、水(HO)や二酸化炭素(CO)、飛沫塩分等の劣化要因物質は阻止されてコンクリート構造物(躯体)16の表面や内部に浸入しない。又、一方の超高強度繊維補強コンクリート板23が地震等により変動しても、単に接着剤20cでの接着だけでは炸裂する可能性があるが、面ファスナー20を使用した構造であるため、突起片20aとしての例えば独立したキノコ状突起片群が接着剤20cの炸裂を部分的に抑止することが可能である。この構造により前記劣化要因物質はその一部が例えば独立したキノコ状突起群で停止する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造を示す垂直断面図である。
【図2】超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造に適用する面ファスナーの内部構成及び一方、他方の超高強度繊維補強コンクリート板を示す拡大断面図である。
【図3】一方の超高強度繊維補強コンクリート板の上面の形状及び他方ファスナー部の表面形状を示す平面図である。
【図4】図2に示す一方、他方の超高強度繊維補強コンクリート板が突合せした状態から他方の超高強度繊維補強コンクリート板が移動した際、該突合せ目地部が生じたときの状態を示す拡大断面図である。
【図5】図3に示す突合せ目地部からコンクリートの劣化要因物質が流入する状態を示す拡大部分断面図である。
【図6】従来の技術に於ける第1の例を示す垂直断面図である。
【図7】従来の技術に於ける第2例を示す説明概要図である。
【図8】従来の技術に於ける第3の例を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
【0033】
16 コンクリート構造物(躯体)
17 不陸調整用プラスチックスペーサ
18 超高強度繊維補強コンクリート板取付金具
19 調整板
20 面ファスナー
20A 面ファスナーの一方ファスナー部
20B 面ファスナーの他方ファスナー部
20a 突起片
20b 基板
20c 接着剤
21 コンクリートアンカー
22 アンカーボルト
23 超高強度繊維補強コンクリート板
23a 円柱突起群
23b コンクリートアンカーボルト打込用孔
24 コンクリートアンカーボルト
25 注入剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物(躯体)と、該コンクリート構造物(躯体)の表面に、超高強度繊維補強コンクリート板取付金具を固定・配置する複数のアンカーボルトとでなる構成に於いて、超高強度繊維補強コンクリート板取付金具の表面に固着した一方ファスナー部及び該一方ファスナー部に噛合うと共に他方の上面に円柱突起群を形成した超高強度繊維補強コンクリート板の一方の上面に固着した他方ファスナー部でなる面ファスナーと、一方ファスナー部と他方ファスナー部間に接着剤を介在させかつ前記コンクリート構造物と前記超高強度繊維補強コンクリート板との間に充填される注入剤とでなることを特徴とする超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造。
【請求項2】
コンクリート構造物(躯体)と、該コンクリート構造物(躯体)の表面に、超高強度繊維補強コンクリート板取付金具を固定・配置する複数のアンカーボルトとでなる構成に於いて、超高強度繊維補強コンクリート板取付金具の表面に固着した一方ファスナー部及び該一方ファスナー部に噛合うと共に他方の上面に円柱突起群を形成した超高強度繊維補強コンクリート板の一方の上面に固着した他方ファスナー部でなる面ファスナーと、一方ファスナー部と他方ファスナー部間に接着剤を介在させかつ前記コンクリート構造物と前記超高強度繊維補強コンクリート板との間に充填される注入剤と、前記超高強度繊維補強コンクリート板をコンクリート構造物の表面に打込み・固定する複数のコンクリートアンカーボルトとでなることを特徴とする超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造。
【請求項3】
前記面ファスナーの一方及び他方ファスナー部が基板と該基板に一体形成される突起片群とで構成すると共に仮固定する際該一方、他方ファスナー部の突起片群を噛合わせ固定することを特徴とする請求項1又は2記載の超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造。

【請求項4】
前記面ファスナーに於ける一方、他方ファスナー部の突起片がキノコ状突起片でなることを特徴とする請求項1又は2記載の超高強度繊維補強コンクリート板の目地構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−7244(P2010−7244A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164377(P2008−164377)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】