説明

距離測定器及びその製造方法

【課題】低コストで製造され、小型で、検出する光量の損失が少なく、高精度に測定を行うことができる距離測定器を提供する。
【解決手段】光源1は、ホルダ81に固定され、レーザ光Lを射出する。有孔ミラー2は、光源1から射出されるレーザ光1の光軸に対して傾斜し、光源1からレーザ光Lを照射される照射領域Aが、光軸方向から見てレーザ光Lのファーフィールドパターンとなるように、ホルダ81に対して空間的に固定されたホルダ82に固定され、照射領域Aに、レーザ光Lに対して光学的に阻害がない透過部20を有する。走査部3は、透過部20を透過したレーザ光Lを、被測定物7に向けて反射させる。検出部5は、被測定物7において反射し、有孔ミラー2において反射したレーザ光Lを検出する。処理部6は、光源1及び検出部5の駆動を制御し、検出部5の出力に基づいて被測定物7までの距離を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を射出して対象までの距離を高精度に測定する距離測定器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物に向けて射出したレーザ光の反射光を検出することにより、被測定物までの距離を測定する距離測定器が知られている。このような距離測定器は、光源から射出されたレーザ光がハーフミラーを介して被測定物に照射され、被測定物において反射したレーザ光が、ハーフミラーにおいて反射し、検出部に入射し、検出されることにより、被測定物までの距離を測定する。レーザ光は、光源からの射出時と、被測定物からの反射時にハーフミラーを通過するので、検出部に入射する光量は、射出時の約1/4に減少してしまう。検出に十分な光量を検出部に入射させるため、レーザ光の出力を上げると、消費電力が増加してしまう。更に、射出できるレーザ光の出力は、安全基準より上限が定められることから、測定限界距離が低減してしまう。
【0003】
そこで、特許文献1のように、ハーフミラーの代わりに、一部に貫通孔を有するミラーを用いて、光源から射出したレーザ光を、ミラーの貫通孔を通過させ、被測定物からの反射光をミラーで検出部に反射させることにより、検出部に入射するレーザ光の光量を向上させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−216238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、光源、ミラー等の取り付けの際の位置決め精度のばらつきを考慮して、貫通孔の穴径をレーザ光のビーム径よりも大きくする必要がある。よって、反射光の光量に損失が生じ、検出精度が低下してしまう。
【0006】
また、レーザ光の光源は、小型化、軽量化のため、半導体レーザ光源を用いることが好ましいが、半導体レーザのビーム形状は、縦横比が異なるファーフィールドパターンとなるため、レーザ光のビーム径に対する貫通孔の穴径が大きくなり、更に反射光の光量に損失が生じてしまう。
【0007】
また、検出部に入射する光量の損失を抑えるため、ミラーの面積を増大させることが考えられるが、距離測定器のサイズ増大とコスト増加につながってしまう。
【0008】
上記問題点を鑑み、本発明は、低コストで製造され、小型で、検出する光量の損失が少なく、高精度に測定を行うことができる距離測定器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、第1のホルダ(81)に固定され、レーザ光(L)を射出する光源(1)と、前記光源(1)から射出される前記レーザ光(L)の光軸に対して傾斜し、前記光源(1)から前記レーザ光(L)を照射される照射領域(A)が、前記光軸方向から見て前記レーザ光(L)のファーフィールドパターンとなるように、前記第1のホルダ(81)に対して空間的に固定された第2のホルダ(82)に固定され、前記照射領域(A)に、前記レーザ光(L)に対して光学的に阻害がない透過部(20)(20)を有する有孔ミラー(2)と、前記透過部(20)を透過した前記レーザ光(L)を、被測定物(7)に向けて反射させる走査部(3)と、前記被測定物(7)において反射し、前記有孔ミラー(2)において反射した前記レーザ光(L)を検出する検出部(5)と、前記光源(1)及び前記検出部(5)の駆動を制御し、前記検出部(5)の出力に基づいて前記被測定物(7)までの距離を算出する処理部(6)とを備えることを特徴とする距離測定器であることを要旨とする。
【0010】
また、本発明の第1の態様に係る距離測定器においては、前記光軸方向から見たパターンが楕円形である。
【0011】
また、本発明の第1の態様に係る距離測定器においては、前記光源(1)は、半導体レーザ光源である。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1のホルダ(81)に固定され、レーザ光(L)を射出する光源(1)と、前記第1のホルダ(81)に対して空間的に固定された第2のホルダ(82)に固定され、一部に、前記レーザ光(L)に対して光学的に阻害がない透過部(20)を有する有孔ミラー(2)と、前記透過部(20)を透過した前記レーザ光(L)を、被測定物(7)に向けて反射させる走査部(3)と、前記被測定物(7)において反射し、前記有孔ミラー(2)において反射した前記レーザ光(L)を検出する検出部(5)と、前記光源(1)及び前記検出部(5)の駆動を制御し、前記検出部(5)の出力に基づいて前記被測定物(7)までの距離を算出する処理部(6)とを備える距離測定器の製造方法であって、透明基板(21)の片面に反射膜(22)を形成することにより、ミラー(2p)を作製する工程と、前記光源(1)から射出される前記レーザ光(L)の光軸に対して傾斜し、前記光源(1)から前記レーザ光(L)を照射される照射領域(A)が、前記光軸方向から見て前記レーザ光(L)のファーフィールドパターンとなるように、前記第2のホルダ(82)に固定された前記ミラー(2p)に、前記光源(1)が前記レーザ光(L)を射出する工程と、前記第2のホルダ(82)に固定された前記ミラー(2p)の前記照射領域(A)に、前記透過部(20)を形成することにより、前記有孔ミラー(2)を作製する工程とを含む距離測定器の製造方法であることを要旨とする。
【0013】
また、本発明の第2の態様に係る距離測定器の製造方法は、前記ミラー(2p)を作製する工程は、前記反射膜(22)の表面をレジスト膜(23)で被覆する工程を含み、前記有孔ミラー(2)を作製する工程は、前記光源(1)が前記レーザ光(L)を射出することにより、前記照射領域(A)の前記レジスト膜(23)を選択的に除去して、前記照射領域(A)の前記反射膜(22)を露出させる工程と、前記照射領域(A)において露出した前記反射膜(22)を、エッチングにより選択的に除去して、前記透過部(20)を形成する工程とを含むことができる。
【0014】
また、本発明の第2の態様に係る距離測定器の製造方法は、前記ミラー(2p)を作製する工程は、前記反射膜(22)の表面をレジスト膜(23)で被覆する工程を含み、前記有孔ミラー(2)を作製する工程は、照射装置(11)が、前記レーザ光(L)に照射された前記照射領域(A)をモニタリングして、前記照射領域(A)を照射するように成形した加工用レーザ光(PL)を射出することにより、前記照射領域(A)の前記レジスト膜(23)を選択的に除去して、前記照射領域(A)の前記反射膜(22)を露出させる工程と、前記照射領域(A)において露出した前記反射膜(22)を、エッチングにより選択的に除去して、前記透過部(20)を形成する工程とを含むことができる。
【0015】
また、本発明の第2の態様に係る距離測定器の製造方法は、前記ミラー(2p)を作製する工程は、前記反射膜(22)の表面をレジスト膜(23)で被覆する工程を含み、前記有孔ミラー(2)を作製する工程は、前記光軸に対して傾斜し、前記光源(1)から射出された前記レーザ光(L)を反射させる第1の反射面(91)と、前記光源(1)から射出され、前記第1の反射面(91)において反射した前記レーザ光(L)と平行な方向から入射する光を、前記光軸と平行な方向に反射させる第2の反射面(92)とを備える反射ミラー(9)の前記第1の反射面(91)に、前記光源(1)が、前記レーザ光(L)を射出する工程と、照射装置(11)が、前記光源(1)から射出され、前記第1の反射面(91)において反射した前記レーザ光(L)を入射することにより、前記照射領域(A)における前記ファーフィールドパターンを取得する工程と、前記照射装置(11)から射出される加工用レーザ光(PL)が、前記第2の反射面(92)において、前記光軸上に反射するように、前記反射ミラー(9)が前記光軸方向に平行移動する工程と、前記照射装置(11)が、前記取得したファーフィールドパターンに基づいて前記照射領域(A)を照射するように成形した加工用レーザ光(PL)を、前記平行移動した反射ミラー(9)の前記第2の反射面(92)に射出することにより、前記照射領域(A)の前記レジスト膜(23)を選択的に除去して、前記照射領域(A)の前記反射膜(22)を露出させる工程と、前記照射領域(A)において露出した前記反射膜(22)を、エッチングにより選択的に除去して、前記透過部(20)を形成する工程とを含むことができる。
【0016】
また、本発明の第2の態様に係る距離測定器の製造方法は、前記エッチングは、ドライエッチングとすることができる。
【0017】
また、本発明の第2の態様に係る距離測定器の製造方法は、前記有孔ミラー(2)を作製する工程は、照射装置(11)が、前記レーザ光(L)に照射された前記照射領域(A)をモニタリングして、前記照射領域(A)を照射するように成形した加工用レーザ光(PL)を射出することにより、前記照射領域(A)の前記反射膜(22)を選択的に除去して、前記透過部(20)を形成する工程を含むことができる。
【0018】
また、本発明の第2の態様に係る距離測定器の製造方法は、前記有孔ミラー(2)を作製する工程は、前記光軸に対して傾斜し、前記光源(1)から射出された前記レーザ光(L)を反射させる第1の反射面(91)と、前記光源(1)から射出され、前記第1の反射面(91)において反射した前記レーザ光(L)と平行な方向から入射する光を、前記光軸と平行な方向に反射させる第2の反射面(92)とを備える反射ミラー(9)の前記第1の反射面(91)に、前記光源(1)が、前記レーザ光(L)を射出する工程と、照射装置(11)が、前記光源(1)から射出され、前記第1の反射面(91)において反射した前記レーザ光(L)を入射することにより、前記照射領域(A)における前記ファーフィールドパターンを取得する工程と、前記照射装置(11)から射出される加工用レーザ光(PL)が、前記第2の反射面(92)において、前記光軸上に反射するように、前記反射ミラー(9)が前記光軸方向に平行移動する工程と、前記照射装置(11)が、前記取得したファーフィールドパターンに基づいて前記照射領域(A)を照射するように成形した加工用レーザ光(PL)を、前記平行移動した反射ミラー(9)の前記第2の反射面(92)に射出することにより、前記照射領域(A)の前記反射膜(22)を選択的に除去して、前記透過部(20)を形成する工程とを含むことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低コストで製造され、小型で、検出する光量の損失が少なく、高精度に測定を行うことができる距離測定器及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る距離測定器の基本的な構成を説明する模式的なブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る距離測定器の有孔ミラーを、光源の光軸方向から見た正面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る距離測定器の製造方法を説明する模式図である。
【図4】(a)、(b)、(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る距離測定器の製造方法を説明する模式的な断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る距離測定器の製造方法を説明する模式図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る距離測定器の製造方法を説明する模式的な断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る距離測定器の製造方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法の関係、各層の厚みの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0022】
また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための素子や装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでなく、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0023】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る距離測定器は、図1に示すように、ホルダ81に固定され、レーザ光Lを射出する光源1と、ホルダ82に固定され、一部に、レーザ光Lに対して光学的に阻害がない透過部20を有する有孔ミラー2と、透過部20を透過したレーザ光Lを、被測定物7に向けて反射させる走査部3と、被測定物7において反射し、走査部3、有孔ミラー2において反射したレーザ光Lを検出する検出部5と、光源1、走査部3、検出部5の駆動を制御し、検出部5の出力に基づいて、第1の実施の形態に係る距離測定器から被測定物7までの距離を算出する処理部6とを備える。
【0024】
光源1は、ファーフィールドパターンが概ね楕円形状となる半導体レーザ光源である。光源1は、処理部6により駆動を制御され、パルス発振、連続発振をし、種々のレーザ光Lを射出できる。光源1を固定するホルダ81、有孔ミラー2を固定するホルダ82は、例えば、基体に設置される同一の基板上にそれぞれ固定されることにより、互いに空間的に固定されている。
【0025】
図1、図2に示すように、有孔ミラー2は、光源1から射出されるレーザ光Lの光軸に対して傾斜し、光源1からレーザ光Lを照射される照射領域Aが、レーザ光Lの光軸方向から見て前記レーザ光のファーフィールドパターンとなるように、光源1から所定の距離を有してホルダ82に固定されている。有孔ミラー2の照射領域Aは、透過部20となっている。有孔ミラー2の照射領域A以外の領域は、光が透過せず反射するミラーとなっている。有孔ミラー2の透過部20を透過したレーザ光Lは、走査部3に入射される。有孔ミラー2の、透過部20以外の領域は、光を反射するミラーとなっている。
【0026】
走査部3は、例えば、微小電気機械システム(MEMS)技術により製造された、水平及び垂直方向の2軸方向の走査が可能な光走査素子(マイクロスキャナ)である。走査部3は、有孔ミラー2の透過部20を透過したレーザ光Lを、被測定物7に向けて反射させ、被測定物7に対して、例えば2軸方向の走査を行う。
【0027】
被測定物7において反射したレーザ光Lは、走査部3に入射し、走査部3において、有孔ミラー2に向いて反射する。被測定物7、走査部3において反射したレーザ光Lは、有孔ミラー2において更に反射し、光学フィルタ、光学レンズ等から構成される光学素子部4を介して、検出部5に入射する。検出部5は、被測定物7、走査部3、有孔ミラー2において反射したレーザ光Lを検出し、検出強度に応じた検出信号を処理部6に出力する。
【0028】
処理部6は、光源1がレーザ光Lのパルスを射出してから、検出部5が、光源1が射出したパルスを示す検出信号を出力するまでの時間Tに基づいて、第1の実施の形態に係る距離測定器から被測定物7までの距離Dを算出する。距離Dは、光速c=3.0×10m/sとして、式(1)により求めることができる。
【0029】
D=Tc/2 …(1)
処理部6は、その他、2軸方向の走査をする走査部3を用いて距離Dを測定した結果に応じて、距離Dを2次元画像としてマッピングすることができる。
【0030】
第1の実施の形態に係る距離測定器によれば、有孔ミラー2が、光源1による照射領域Aに透過部20を有することにより、検出する光量の損失が少なく、高精度に測定を行うことができる。また、光源1として半導体レーザ光源を採用することにより、サイズを小さくすることができる。
【0031】
−距離測定器の製造方法−
図3、図4を参照して、第1の実施の形態に係る距離測定器の製造方法を説明する。
【0032】
先ず、図4(a)に示すように、白板ガラス等の透明材料からなる透明基板21の上面に、反射膜22を形成し、反射膜22の上面にレジスト膜23を被覆することにより、ミラー2pを作製する。透明基板21の厚さは、例えば、約0.7mm程度とすることができる。反射膜22は、例えば、アルミニウム(Al)等の金属や、Al及び銅(Cu)等を含む合金からなり、DCスパッタリング等により、厚さが約100nm程度となるように、透明基板21の上面に積層される。レジスト膜23は、例えば、カーボンブラックが約5%程度含まれるポリウレタン系の樹脂等からなり、厚さが約10μm程度となるように、反射膜22の上面に塗布される。レジスト膜23は、カーボンブラックが含まれることにより、赤外レーザ光の吸収が高まり、溶融、蒸発しやすくなる。
【0033】
次に、図3に示すように、ミラー2pが、光源1を固定するホルダ81に対して空間的に固定されたホルダ82に固定される。ミラー2pは、光源1から射出されるレーザ光Lの光軸に対して傾斜し、光源1からレーザ光Lを照射される照射領域Aが、レーザ光Lの光軸方向から見てレーザ光Lのファーフィールドパターンとなるように、光源1から所定の距離を有してホルダ82に固定される。
【0034】
次に、光源1は、ホルダ82に固定されたミラー2pに、例えば、出力6W、デューティ比50%、パルス幅0.5msで、波長940nmのレーザ光Lを射出する。
【0035】
レーザ光Lが、約20秒程度の間、ミラー2pの照射領域Aに照射されることにより、照射領域Aのレジスト膜23は、溶融、蒸発する。図4(b)に示すように、照射領域Aのレジスト膜23が選択的に除去されることにより、照射領域Aの反射膜22が露出する。
【0036】
照射領域Aにおいて露出した反射膜22は、例えば、リン酸(HPO)、硝酸(HNO)を含む混合液等を用いたウェットエッチングにより、選択的に除去される。
【0037】
図4(c)に示すように、照射領域Aの反射膜22が選択的に除去されることにより、照射領域Aに透過部20が形成される。ホルダ82に固定されたミラー2pの照射領域Aに、透過部20が形成されることにより、ミラー2pは、有孔ミラー2となる。ウェットエッチング終了の確認後、有孔ミラー2は、ホルダ82に固定された状態のまま、水洗、乾燥される。
【0038】
或いは、照射領域Aをなして露出した反射膜22を選択的に除去する方法として、三塩化ホウ素(BCl)等の塩素系のエッチングガスを用いたドライエッチングを採用しても良い。ドライエッチングは、照射領域Aが除去されたレジスト膜23をマスクとして行われる。ドライエッチングにより反射膜22を選択的に除去することにより、水洗、乾燥が不要となり、工程が簡単になる。
【0039】
以上のように、ホルダ82に固定され、ホルダ81に固定された光源1からレーザ光Lを照射される照射領域Aに透過部20を有する有孔ミラー2が作製される。ホルダ81に固定された光源1、及びホルダ82に固定された有孔ミラー2に加え、走査部3、光学素子部4、検出部5、及び処理部6が、それぞれを保持する基体に設置される。走査部は、有孔ミラー2の透過部20を透過したレーザ光Lが、被測定物7に向けて反射可能なように設置される。光学素子部4及び検出部5は、検出部5が、被測定物7、走査部3において反射し、有孔ミラー2の透過部20以外の領域において反射したレーザ光Lを、光学素子部4を介して検出可能なように、それぞれ設置される。このように、第1の実施の形態に係る距離測定器が完成する。
【0040】
第1の実施の形態に係る距離測定器の製造方法によれば、光源1、ミラー2pが、互いに空間的に固定されたホルダ81、ホルダ82にそれぞれ固定された状態のまま、照射領域Aに透過部20を有する有孔ミラー2を備える距離測定器を製造できる。よって、組み立てのための光軸合わせの必要がなく、製造コストを低減できる。
【0041】
また、有孔ミラー2の透過部20が、従来のミラーの貫通孔の穴径a(図2参照)に比して、非常に高精度に、光源1による照射領域Aをなして形成され、検出する光量の損失が少なく、高精度に測定を行うことができる。また、光源1として半導体レーザ光源を採用することにより、距離測定器のサイズを小さくすることができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態において説明した距離測定器の製造方法は、透過部20を形成するために、ミラー2pのレジスト膜23を除去する手段として、光源1から射出されるレーザ光Lを用いたが、他の装置から射出される加工用レーザ光を用いても良い。第2の実施の形態に係る距離測定器の製造方法に用いる照射装置11(図5参照)は、高出力の加工用レーザ光PLを射出する他、光源1が射出したレーザ光Lの強度、形状をモニタリングする照射モニタ(図示省略)と、射出する加工用レーザ光PLの形状を、照射モニタのモニタリング結果に応じて調整するビーム成形部(図示省略)とを備える。照射装置11は、例えば、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光源による加工用レーザ光PLを射出する。照射装置11のビーム成形部は、例えば、レンズ、マスク、コリメータ、ホログラムレンズ、ディフォーマブルミラー等から構成可能である。
【0043】
以下、第2の実施の形態に係る距離測定器の製造方法を説明する。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と実質的に同様の工程、構成については、重複する説明を省略する。
【0044】
先ず、例えば、厚さ約0.7mm程度の透明基板21の上面に、厚さ約100nm程度の反射膜22、厚さ約1μm程度のレジスト膜23が順次積層することにより、ミラー2pを作製する(図4(a)参照)。
【0045】
次に、図5に示すように、ミラー2pが、光源1を固定するホルダ81に対して空間的に固定されたホルダ82に固定される。ミラー2pは、光源1から射出されるレーザ光Lの光軸に対して傾斜し、光源1からレーザ光Lを照射される照射領域Aが、レーザ光Lの光軸方向から見てレーザ光Lのファーフィールドパターンとなるように、光源1から所定の距離を有してホルダ82に固定される。
【0046】
次に、光源1は、例えば、出力50mW、連続波(CW)で、波長870nmのレーザ光Lを射出する。
【0047】
次に、照射装置11の照射モニタは、レーザ光Lに照射されたミラー2pの照射領域Aをモニタリングする。照射装置11は、照射モニタのモニタリング結果に応じて、ビーム成形部により照射領域Aを照射するように成形された加工用レーザ光PLを、ミラー2pに照射領域Aに射出する。照射装置11は、例えば、出力20W、デューティ比10%、パルス幅1msで、波長870nmの加工用レーザ光PLを射出する。
【0048】
ホルダ82に固定されたミラー2pは、レジスト膜23側の面に反射膜22に作用するエッチングガスを吹き付けられながら、約200秒程度の間、照射領域Aに加工用レーザ光PLを照射されることにより、照射領域Aのレジスト膜23及び反射膜22が、順次、選択的に除去される(図4(c)参照)。
【0049】
照射領域Aのレジスト膜23及び反射膜22が選択的に除去されることにより、照射領域Aに透過部20が形成される。ホルダ82に固定されたミラー2pの照射領域Aに、透過部20が形成されることにより、ミラー2pは、有孔ミラー2となる。
【0050】
或いは、照射領域Aの反射膜22を選択的に除去する方法として、ウェットエッチングを採用しても良い。
【0051】
第2の実施の形態に係る距離測定器の製造方法によれば、光源1、ミラー2pが、互いに空間的に固定されたホルダ81、ホルダ82にそれぞれ固定された状態のまま、照射領域Aに透過部20を有する有孔ミラー2を備える距離測定器を製造できる。よって、組み立てのための光軸合わせの必要がなく、製造コストを低減できる。
【0052】
また、有孔ミラー2の透過部20が、非常に高精度に、光源1による照射領域Aをなして形成され、検出する光量の損失が少なく、高精度に測定を行うことができる。また、光源1として半導体レーザ光源を採用することにより、距離測定器のサイズを小さくすることができる。
【0053】
また、第2の実施の形態に係る距離測定器の製造方法によれば、高出力の加工用レーザ光PLを出力する照射装置を用いて、透過部20を形成するので、距離測定用の光源1を用いて透過部を形成する実施形態1と比較して、光源1の負担を低減することができる。
【0054】
(第3の実施の形態)
第2の実施の形態において説明した距離測定器の製造方法は、照射装置11が加工用レーザ光PLをミラー2pに直接照射する構成としたが、反射ミラーにおいて反射した加工用レーザ光PLをミラー2pに間接的に照射する構成としても良い。第3の実施の形態に係る距離測定器の製造方法に用いる反射ミラー9は、図6に示すように、光源1から射出されるレーザ光Lの光軸に対して傾斜し、光源1から射出されたレーザ光Lを反射させる反射面91と、光源1から射出され、反射面91において反射したレーザ光Lと平行な方向から入射する光を、光源1から射出されるレーザ光Lの光軸と平行な方向に反射させる反射面92とを備える。すなわち、反射ミラー9の反射面92は、光源1から射出されるレーザ光Lの光軸に対する反射面91の傾斜角から、更に90°傾斜して配置されている。
【0055】
以下、第3の実施の形態に係る距離測定器の製造方法を説明する。第3の実施の形態において、第2の実施の形態と実質的に同様の工程、構成については、重複する説明を省略する。
【0056】
先ず、図7(a)に示すように、例えば、厚さ約0.5mm程度の透明基板21の上面に、厚さ約100nm程度の反射膜22が積層することにより、ミラー2paを作製する。
【0057】
次に、図6に示すように、ミラー2paが、光源1を固定するホルダ81に対して空間的に固定されたホルダ82に固定される。ミラー2paは、光源1から射出されるレーザ光Lの光軸に対して傾斜し、光源1からレーザ光Lを照射される照射領域Aが、レーザ光Lの光軸方向から見てレーザ光Lのファーフィールドパターンとなるように、光源1から所定の距離を有してホルダ82に固定される。
【0058】
次に、光源1は、光源1とミラー2paとの間に配置された反射ミラー9の反射面91に、例えば、出力50mW、連続波(CW)で、波長905nmのレーザ光Lを射出する。
【0059】
次に、図6(a)に示すように、照射装置11の照射モニタは、光源1から射出され、反射面91において反射したレーザ光Lを入射し、レーザ光Lの形状をモニタリングすることにより、照射領域Aにおけるレーザ光Lのファーフィールドパターンを取得する。
【0060】
次に、図6(b)に示すように、反射ミラー9は、照射装置11から射出される加工用レーザ光PLが、反射面92において、光源1から射出されるレーザ光Lの光軸上に反射するように、レーザ光Lの光軸方向に平行移動する。
【0061】
次に、照射装置11は、照射モニタが取得したファーフィールドパターンに基づいて、ビーム成形部によりミラー2paの照射領域Aを照射するように成形された加工用レーザ光PLを、反射面92に射出する。照射装置11は、例えば、出力20W、デューティ比10%、パルス幅10nsで、加工用レーザ光PLを射出する。
【0062】
ホルダ82に固定されたミラー2paは、約1000秒程度の間、反射面92において反射した加工用レーザ光PLを照射領域Aに照射されることにより、照射領域Aの反射膜22が、選択的に除去される。
【0063】
図7(b)に示すように、照射領域Aの反射膜22が選択的に除去されることにより、照射領域Aに透過部20が形成される。ホルダ82に固定されたミラー2paの照射領域Aに、透過部20が形成されることにより、ミラー2paは、有孔ミラー2aとなる。
【0064】
第3の実施の形態に係る距離測定器の製造方法によれば、光源1、ミラー2paが、互いに空間的に固定されたホルダ81、ホルダ82にそれぞれ固定された状態のまま、照射領域Aに透過部20を有する有孔ミラー2aを備える距離測定器を製造できる。よって、組み立てのための光軸合わせの必要がなく、製造コストを低減できる。
【0065】
また、有孔ミラー2aの透過部20が、非常に高精度に、光源1による照射領域Aをなして形成され、検出する光量の損失が少なく、高精度に測定を行うことができる。また、光源1として半導体レーザ光源を採用することにより、距離測定器のサイズを小さくすることができる。
【0066】
また、第3の実施の形態に係る距離測定器の製造方法によれば、高出力の加工用レーザ光PLを出力する照射装置11を用いて透過部20を形成するので、距離測定用の光源1を用いて透過部を形成する実施形態1と比較して、光源1の負担を低減することができる。
【0067】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0068】
既に述べた第2の実施の形態においては、ミラー2pは、第3の実施の形態において説明したレジスト膜23が被覆されないミラー2paとしても良い。この場合、反射膜22は、エッチングされず、第3の実施の形態と同様に、照射装置11から出力される加工用レーザにより、選択的に除去されれば良い。
【0069】
また、既に述べた第3の実施の形態においては、ミラー2paは、第1及び第2の実施の形態において説明したレジスト膜23が被覆されたミラー2pとしても良い。この場合、反射膜22は、第1及び第2の実施の形態と同様に、エッチングにより選択的に除去されることができる。
【0070】
上記の他、第1〜3の実施の形態を応用した構成等、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0071】
1…光源
2,2a…有孔ミラー
2p,2pa…ミラー
3…走査部
4…光学素子部
5…検出部
6…処理部
7…被測定物
9…反射ミラー
11…照射装置
20…透過部
21…透明基板
22…反射膜
23…レジスト膜
81,82…ホルダ
91,92…反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のホルダに固定され、レーザ光を射出する光源と、
前記光源から射出される前記レーザ光の光軸に対して傾斜し、前記光源から前記レーザ光を照射される照射領域が、前記光軸方向から見て前記レーザ光のファーフィールドパターンとなるように、前記第1のホルダに対して空間的に固定された第2のホルダに固定され、前記照射領域に、前記レーザ光に対して光学的に阻害がない透過部を有する有孔ミラーと、
前記透過部を透過した前記レーザ光を、被測定物に向けて反射させる走査部と、
前記被測定物において反射し、前記有孔ミラーにおいて反射した前記レーザ光を検出する検出部と、
前記光源及び前記検出部の駆動を制御し、前記検出部の出力に基づいて前記被測定物までの距離を算出する処理部と
を備えることを特徴とする距離測定器。
【請求項2】
前記透過部は、前記光軸方向から見たパターンが楕円形であることを特徴とする請求項1に記載の距離測定器。
【請求項3】
前記光源は、半導体レーザ光源であることを特徴とする請求項1に記載の距離測定器。
【請求項4】
第1のホルダに固定され、レーザ光を射出する光源と、
前記第1のホルダに対して空間的に固定された第2のホルダに固定され、一部に、前記レーザ光に対して光学的に阻害がない透過部を有する有孔ミラーと、
前記透過部を透過した前記レーザ光を、被測定物に向けて反射させる走査部と、
前記被測定物において反射し、前記有孔ミラーにおいて反射した前記レーザ光を検出する検出部と、
前記光源及び前記検出部の駆動を制御し、前記検出部の出力に基づいて前記被測定物までの距離を算出する処理部と
を備える距離測定器の製造方法であって、
透明基板の片面に反射膜を形成することにより、ミラーを作製する工程と、
前記光源から射出される前記レーザ光の光軸に対して傾斜し、前記光源から前記レーザ光を照射される照射領域が、前記光軸方向から見て前記レーザ光のファーフィールドパターンとなるように、前記第2のホルダに固定された前記ミラーに、前記光源が前記レーザ光を射出する工程と、
前記第2のホルダに固定された前記ミラーの前記照射領域に、前記透過部を形成することにより、前記有孔ミラーを作製する工程と
を含むことを特徴とする距離測定器の製造方法。
【請求項5】
前記ミラーを作製する工程は、前記反射膜の表面をレジスト膜で被覆する工程を含み、
前記有孔ミラーを作製する工程は、
前記光源が前記レーザ光を射出することにより、前記照射領域の前記レジスト膜を選択的に除去して、前記照射領域の前記反射膜を露出させる工程と、
前記照射領域において露出した前記反射膜を、エッチングにより選択的に除去して、前記透過部を形成する工程と
を含むことを特徴とする請求項4に記載の距離測定器の製造方法。
【請求項6】
前記ミラーを作製する工程は、前記反射膜の表面をレジスト膜で被覆する工程を含み、
前記有孔ミラーを作製する工程は、
照射装置が、前記レーザ光に照射された前記照射領域をモニタリングして、前記照射領域を照射するように成形した加工用レーザ光を射出することにより、前記照射領域の前記レジスト膜を選択的に除去して、前記照射領域の前記反射膜を露出させる工程と、
前記照射領域において露出した前記反射膜を、エッチングにより選択的に除去して、前記透過部を形成する工程と
を含むことを特徴とする請求項4に記載の距離測定器の製造方法。
【請求項7】
前記ミラーを作製する工程は、前記反射膜の表面をレジスト膜で被覆する工程を含み、
前記有孔ミラーを作製する工程は、
前記光軸に対して傾斜し、前記光源から射出された前記レーザ光を反射させる第1の反射面と、前記光源から射出され、前記第1の反射面において反射した前記レーザ光と平行な方向から入射する光を、前記光軸と平行な方向に反射させる第2の反射面とを備える反射ミラーの前記第1の反射面に、前記光源が、前記レーザ光を射出する工程と、
照射装置が、前記光源から射出され、前記第1の反射面において反射した前記レーザ光を入射することにより、前記照射領域における前記ファーフィールドパターンを取得する工程と、
前記照射装置から射出される加工用レーザ光が、前記第2の反射面において、前記光軸上に反射するように、前記反射ミラーが前記光軸方向に平行移動する工程と、
前記照射装置が、前記取得したファーフィールドパターンに基づいて前記照射領域を照射するように成形した加工用レーザ光を、前記平行移動した反射ミラーの前記第2の反射面に射出することにより、前記照射領域の前記レジスト膜を選択的に除去して、前記照射領域の前記反射膜を露出させる工程と、
前記照射領域において露出した前記反射膜を、エッチングにより選択的に除去して、前記透過部を形成する工程と
を含むことを特徴とする請求項4に記載の距離測定器の製造方法。
【請求項8】
前記エッチングは、ドライエッチングであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の距離測定器の製造方法。
【請求項9】
前記有孔ミラーを作製する工程は、
照射装置が、前記レーザ光に照射された前記照射領域をモニタリングして、前記照射領域を照射するように成形した加工用レーザ光を射出することにより、前記照射領域の前記反射膜を選択的に除去して、前記透過部を形成する工程
を含むことを特徴とする請求項4に記載の距離測定器の製造方法。
【請求項10】
前記有孔ミラーを作製する工程は、
前記光軸に対して傾斜し、前記光源から射出された前記レーザ光を反射させる第1の反射面と、前記光源から射出され、前記第1の反射面において反射した前記レーザ光と平行な方向から入射する光を、前記光軸と平行な方向に反射させる第2の反射面とを備える反射ミラーの前記第1の反射面に、前記光源が、前記レーザ光を射出する工程と、
照射装置が、前記光源から射出され、前記第1の反射面において反射した前記レーザ光を入射することにより、前記照射領域における前記ファーフィールドパターンを取得する工程と、
前記照射装置から射出される加工用レーザ光が、前記第2の反射面において、前記光軸上に反射するように、前記反射ミラーが前記光軸方向に平行移動する工程と、
前記照射装置が、前記取得したファーフィールドパターンに基づいて前記照射領域を照射するように成形した加工用レーザ光を、前記平行移動した反射ミラーの前記第2の反射面に射出することにより、前記照射領域の前記反射膜を選択的に除去して、前記透過部を形成する工程と
を含むことを特徴とする請求項4に記載の距離測定器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−181144(P2012−181144A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45254(P2011−45254)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】