説明

距離測定装置、距離測定方法および距離測定プログラム

【課題】 狭い放射周波数帯域においても、近距離まで精度良く計測可能な距離測定装置、距離測定方法および距離測定プログラムを提供する。
【解決手段】 送信部20は、発信部12の出力信号と同一周波数fの電磁波を計測軸(x軸)方向に放出する。検出部30は、方向性結合器32にて検出した反射波Rを送信信号の同相信号と直交信号とにより同期検波し、検波信号から直流成分を抽出することにより、反射波Rの同相成分I(f)と直交成分Q(f)とを検出する。解析信号生成部42は、反射波Rの同相成分I(f),直交成分Q(f)と、所定の距離dに応じた周期性を持つ信号I(f),Q(f)とをミキシングし、得られた側帯波の一方のみを用いて解析信号p(f)を生成する。フーリエ変換部44は、解析信号p(f)をフーリエ変換して得られたプロファイルP(x)から測定対象物までの距離を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、距離測定装置、距離測定方法および距離測定プログラムに関し、より特定的には、被測定対象物に対して放射した電磁波から測定対象物との距離を計測する距離測定装置、距離測定方法および距離測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在汎用されているマイクロ波を利用した被検出対象物との距離測定方法は、FMCW(周波数変調持続波)方式とパルス・レーダ方式とに大別される。
【0003】
FMCW方式とは、周波数掃引した連続波を発信し、放射信号と反射信号との周波数差から被検出対象物までの距離を求めるものである(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
一方、パルス・レーダ方式とは、パルス信号を発信してからそれが測定対象で反射して戻ってくるまでの時間を計測することにより、被検出対象物までの距離を求めるものである(たとえば特許文献2参照)。
【0005】
上記の2つの計測方式は、いずれも高い計測精度を有する反面、それぞれ、以下に示す問題点を抱えている。
【0006】
最初に、FMCW方式については、計測精度は、計測精度=光速/(2×周波数の掃引幅)の関係式で表わされるように、放射周波数の掃引幅によって決まることから、高い精度を得るためには広い帯域幅を使用する必要がある。しかしながら、距離測定装置が通常使用する、移動体検知センサ用として電波法で区分されている24.15GHzの周波数帯域においては、特定小電力無線の規制によって、帯域幅は、実効周波数24.1〜24.2GHzの0.1GHzに使用が制限されている。このため、FMCW方式のマイクロウェーブ式レベル計の屋外での使用については、十分な帯域幅が得られないという理由から、計測精度に限界が生じてしまい、また、近距離計測が難しくなることとなる。
【0007】
次に、パルス・レーダ方式については、放射器において非常に短い電気的パルスを発生させるためには、成分的には広い電波帯域幅が必要とされる。例えば、2n秒のインパルスを発生させるために必要な帯域幅は2GHzとなる。したがって、この場合も、電波法の定める帯域幅の制限を受けて、屋外での使用が制限されることとなり、より短い電気的パルスが使用できないため、近距離計測が難しくなることとなる。
【0008】
したがって、これらの問題を解決するためには、電波法で定められている電波帯域や放射利得を満足し、かつ、計測距離にかかわらず、特に近距離測定においても高い計測精度を維持することが必要とされる。
【0009】
上記の2つの計測方式では、使用帯域幅が広いことから、電波法で分類される特定小電力無線として利用することはできないが、出力パワーを抑えた微弱電力無線として利用することが可能である。しかしながら、放射信号の出力電力を下げることによって、反射信号の電力も非常に小さくなるため、遠距離の計測を行なう場合にノイズの影響を受けやすいという問題が生じる。
【0010】
さらに、最近では、近距離であっても高い測定精度を有する距離測定装置が提案されている(たとえば特許文献3参照)。
【0011】
図10は、特許文献3に提案されている距離測定装置の構成を示す概略ブロック図である。
【0012】
図10を参照して、距離測定装置は、所定の周波数の信号を出力する発信源60と、発信源60の出力信号と同一周波数の電磁波を放出する送信部70と、送信部70から放出された電磁波(以下、進行波Dとも称する)と測定対象物M〜M(nは自然数)にて反射した反射波Rとが干渉して形成された定在波Sの振幅を検知するための検出部80と、検出部80の検出信号から測定対象物M(kはn以下の自然数)までの距離を算出する信号処理部90とを備える。
【0013】
発信源60は、発信部62と周波数制御部64とを含む。発信部62は、周波数制御部64が制御する一定の周波数fの信号を送信部70に対して出力する。周波数制御部64は、発信部62に送った周波数fに関する情報を信号処理部90にも出力する。
【0014】
ここで、図10の距離測定装置における計測方式の原理について、簡単に説明する。
まず、図10に示すように、送信部70から放出された進行波Dと測定対象物Mにて反射した反射波Rとが干渉することによって、送信部70と測定対象物Mとの間の伝搬媒質中に定在波Sが形成される。
【0015】
このとき、定在波Sをx軸上の観測点xsに設けられた検出部80で観測して得られる受信パワー信号p(f,x)は、進行波Dの周波数fに対して正弦波関数(cos関数)となる。特に、複数の測定対象物からの反射がある場合には、各測定対象物に対応して互いに異なる周期の正弦波が複数合成されたものとなる。各正弦波の周期は、観測点から測定対象物Mまでの距離に逆比例の関係にある。図10の距離測定装置は、この性質を利用して測定対象物Mまでの距離を測定するものである。
【0016】
すなわち、定在波Sは、送信部70から放出された進行波Dと、測定対象物Mによる反射波Rとの加法的合成によって発生し、そのパワー信号p(f,x)は、次式で表わすことができる。
【0017】
【数1】

【0018】
ただし、cは光速、fは送信周波数、Aは進行波Dの振幅レベル、dは測定対象物Mまでの距離である。また、γは測定対象物Mの反射係数の大きさで伝搬損失を含む。φは反射における位相シフト量である。
【0019】
図11は、測定対象物Mが距離dの位置にあるときに、x=x=0の位置で観測される受信パワー信号p(f,0)の波形図である。
【0020】
図11を参照して、受信パワー信号p(f,0)は、送信周波数fに対して周期的であることが分かる。また、その周期はc/2dであって、測定対象物までの距離dに反比例することが分かる。したがって、この受信パワー信号p(f,0)をフーリエ変換して周期情報を抽出すれば、測定対象物までの距離dを求めることができる。なお、式(1)の受信パワー信号p(f,0)にフーリエ変換を適用して得られるプロファイルP(x)は、式(2)のようになる。
【0021】
【数2】

【0022】
ただし、
【0023】
【数3】

【0024】
は送信周波数帯域の中間周波数、fは送信周波数の帯域幅である。
このように、図10の距離測定装置において、測定対象物Mまでの距離dは、進行波Dの送信周波数fに対する受信パワー信号p(f,0)の変動周期にのみ依存し、送信部70によって電磁波を発信してから検出部80に戻ってくるまでの時間の影響を受けないことから、これまでのFMCW方式およびパルス・レーダ方式に対して、近距離においても、より高い精度で測定することができる。
【特許文献1】特開平7−159522号公報
【特許文献2】特表平8−511341号公報
【特許文献3】特許第3461498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ここで、図10に示す従来の距離測定装置においては、定在波Sの受信パワー信号p(f,0)を式(2)にてフーリエ変換することから、送信周波数帯域幅fにおいて、受信パワー信号p(f,x)に1周期以上の周期性がなければ、正確な周期情報を抽出することができない。
【0026】
図12は、f=24.0375GHz,f=75MHz,γ=0.1,φ=πの条件下において、の測定対象物Mの距離dを0m≦d≦5mの範囲で変化させたときの受信パワー信号のプロファイルの大きさ|P(x)|を式(1),(2)を用いて数値計算により求めたものである。なお、進行波のレベルAを引いた、p(f,0)−Aをフーリエ変換しているので、式(1)の第1項は除去されている。
【0027】
図12を参照して、プロファイルの大きさ|P(x)|は、式(2)の第2項の成分と第3項の成分とに対応して、xが正となる領域とxが負となる領域とにおいてそれぞれ極大値を有する波形となる。従来の距離測定装置においては、測定対象物Mは必ずxが正の領域に位置することから、この波形のうちの一方の領域(x>0)の極大値を抽出し、極大値に対応するxの値を測定対象物Mの位置としている。
【0028】
しかしながら、距離dが小さいときには、図12に示すように、プロファイルの大きさ|P(x)|のピークは正確な測定対象物Mの位置を示さなくなる。これは、距離dが小さくなるに伴なって、2つの極大値が互いに干渉し合うことによって、波形が乱れてしまうことによる。図12の場合では、距離dが2m以上では正確に測距できるが、距離dが2mを下回ると、正しい計測値が得られていないことが分かる。
【0029】
すなわち、従来の距離測定装置においては、xが負の領域に現れる極大値が、xが正の領域に現れる極大値に及ぼす影響(以下、負の周波数の影響とも称する。)に起因して、近距離における計測誤差の増加が問題となっていた。
【0030】
図13は、測定対象物Mの距離dが近距離レベル(〜10m)のときのプロファイルP(x)から得られる計測値と実際の測定対象物Mまでの距離との関係を示す図である。なお、同図の関係は、測定条件として、送信部70から放出される進行波Dにおいて、送信周波数fの中心周波数fを24.15GHzとし、送信周波数帯域幅fを75MHzとしたときに得られたものである。
【0031】
図13を参照して、従来の距離測定装置から得られる計測値と実際の測定対象物Mまでの距離dとの間に生じる計測誤差は、測定対象物Mまでの距離が短いほど、大きいことが分かる。具体的には、測定対象物Mまでの距離が4m以上においては、計測値は実際の測定対象物Mまでの距離に正確に一致しているが、4mを下回ると、計測誤差が急激に増加し始める。そして、測定対象物Mまでの距離が2m以下となる領域では、計測誤差が1000mm程度にまで及び、測定精度が著しく劣ってしまうことが分かる。これは、近距離でのプロファイルP(x)の乱れによるものであり、2mが測距できる距離の限界であることを示唆している。
【0032】
詳細には、距離d=2mのときには、受信パワー信号p(f,0)の周期は、c/(2×2)=75MHzとなることから、送信周波数帯域幅f=75MHzはちょうど受信パワー信号p(f,x)の1周期分の帯域に相当する。したがって、これより短い周期となるような、より長い距離dであれば正しい計測値が得られることから、最小検出距離dminは、
【0033】
【数4】

【0034】
で表わすことができる。
ここで、先述のように、従来の距離測定装置を特定小電力無線として使用する場合は、使用できる周波数帯域幅が国内電波法によって制限される。たとえば「移動体検知センサ」においては、24.15GHz帯での周波数帯域を使用したとすると、占有周波数帯域幅の許容値は76MHzと規定される。したがって、図13の場合と同様に、約2m以下の近距離の位置計測において、計測結果に大きな誤差を生じることとなる。
【0035】
以上に述べた計測誤差は、受信パワー信号p(f,x)が1周期成分以下となる近距離に特有の問題点であるが、1周期成分以上の周期性が含まれる距離(中距離および遠距離)の場合であっても、以下に示すように数mm程度の計測誤差が生じうる。
【0036】
図14は、測定対象物Mの距離dが遠距離レベル(〜20m)のときのプロファイルP(x)から得られる計測値と実際の測定対象物Mまでの距離との関係を示す図である。なお、同図の関係は、測定条件として、送信部70から放出される進行波Dにおいて、送信周波数fの中心周波数fを24.15GHzとし、送信周波数帯域幅fを75MHzとしたときに得られたものである。
【0037】
図14を参照して、測定対象物Mを遠距離レベルである距離d=10mからd=20mまで位置変化させたときには、計測結果に最大±2mm程度の誤差が生じていることが分かる。この誤差の一因としては、フーリエ変換における窓関数の窓長が受信パワー信号p(f,0)の波長の整数倍になっていないことが挙げられる。
【0038】
また、中距離および遠距離においては、受信パワー信号p(f,0)に周期性があるにも関わらず、測定対象物Mが微小に位置変化した場合においても、計測誤差が生じる。
【0039】
図15は、測定対象物Mを距離d=10mの位置を基準として、±10mmの範囲内で微小に位置変化させたときの計測誤差を示す図である。
【0040】
図15から明らかなように、測定対象物Mが当該距離測定装置から遠距離であって、受信パワー信号p(f,0)に十分な周期性が見られる距離d=10mの地点に位置するときにおいても、計測結果には、約±5cm程度の誤差が生じている。
【0041】
ここで、この計測誤差を低減する手段としては、第1に、受信パワー信号p(f,0)をフーリエ変換する際に、受信パワー信号p(f,0)から少なくとも1周期成分が含まれる信号範囲を抽出してフーリエ変換することを、少なくとも半周期成分以上の範囲で繰り返し、その各フーリエ変換されたデータから各時間領域の和を求めることが挙げられる。
【0042】
第2に、送信周波数fの使用帯域幅fは同一とし、送信する初期の周波数をわずかにずらせることによって得られた受信パワー信号をフーリエ変換することを、少なくとも半周期成分以上の範囲で繰り返し、その各フーリエ変換されたデータから各時間領域の和を求めることが挙げられる。
【0043】
図16は、受信パワー信号p(f,0)をこれらの手段に従って多重処理したときの処理結果である。図16から明らかなように、計測結果に見られる誤差は、変位が±10mmに至る範囲において、約±1cm程度にまで改善される。
【0044】
しかしながら、このような多重処理は、複数のフーリエ変換処理を含むことから、処理に相当な時間が必要となり、即応性を必要とする用途には不向きであるという問題点を有する。
【0045】
さらに、図10の距離測定装置では、測定対象物Mが等速で計測軸(x軸)上を移動している場合においても、計測結果に誤差が生じるという問題がある。
【0046】
詳細には、測定対象物Mが移動している場合、検出部80で検出される定在波Sの受信パワー信号p(f,0)においては、受信周波数が送信周波数fに対して伝搬媒質の時間的変化に比例した周波数だけシフトするという、ドップラーシフトが生じる。このときのシフト量は、測定対象物Mが接近する場合には受信周波数を下げる方向に作用し、測定対象物Mが離れる場合では受信周波数を上げる方向に作用する。
【0047】
たとえば、所定の距離d=10mに位置する測定対象物Mが一定の速度で等速移動しているものとする。そして、従来の距離測定装置は、送信部70において、使用帯域幅内で送信周波数fを上昇させながら掃引する上昇掃引と、使用帯域幅内で送信周波数fを下降させながら掃引する下降掃引とをそれぞれ行なうものとする。
【0048】
このとき、測定対象物Mの移動方向と送信周波数fの掃引方向とにより、受信パワー信号p(f,0)には周期性に以下のような現象が生じる。詳細には、上昇掃引の場合は、測定対象物Mが接近するときには周期性が長くなり、測定対象物Mが遠ざかるときには周期性が短くなる。一方、下降掃引の場合は、測定対象物Mが接近するときには周期性が短くなり、測定対象物Mが遠ざかるときには周期性が長くなる。
【0049】
そして、いずれの掃引方向においても、周期性が長くなると、送信周波数帯域幅fにおいて、受信パワー信号p(f,0)に1周期以上の周期性が得られず、上述した負の周波数の影響による計測誤差を増加させてしまう。
【0050】
さらに、このときの計測誤差は、上述したドップラーシフトの影響により、上昇掃引と下降掃引とのいずれの掃引方向においても、測定対象物Mの移動速度が増加するにつれ、実際の測定対象物Mの位置(10m)に対する誤差が大きくなる。
【0051】
このような計測誤差を低減する手段としては、送信周波数fを上昇掃引して得られる受信パワー信号p(f,0)をフーリエ変換して得られる計測結果(以下、第1の位置情報とも称する)と、送信周波数fを下降掃引して得られる受信パワー信号p(f,0)をフーリエ変換して得られる計測結果(以下、第2の位置情報とも称する)とを求め、第1および第2の位置情報を平均化する補正処理を行なうことによって、移動する測定対象物の位置を検出する方法が挙げられる。
【0052】
この方法に従って補正処理をした結果を図17に示す。図17を参照して、掃引時間が10m秒のときにおいては、移動速度がおよそ±2m/s以下となる範囲において、計測誤差が0mに保たれている。しかしながら、移動速度がこの範囲を超えて増加するに従って計測誤差が大きくなることが分かる。これは、上述した負の周波数の影響に起因するものである。すなわち、従来の距離測定装置では、プロファイルの大きさ|P(x)|の波形において、xが正となる領域の極大値のみを一様に抽出することから、測定対象物Mが遠ざかる方向に高速に移動し、xが負となる領域に存在する場合を正確に検出できないことによる。
【0053】
なお、図示は省略するが、掃引時間をより短くすることによって、正しい測定対象物Mの位置が得られるときの移動速度の範囲はさらに拡大される。
【0054】
しかしながら、このような方法では、補正処理ができる測定対象物Mの移動速度の範囲が、送信周波数fの掃引時間に依存することから、高速で移動する測定対象物Mを対象とするときには、掃引時間を一層短く、すなわち掃引速度を高速にしなければならない。そのためには、安定して高速可変が可能な発振器が新たに必要となる。
【0055】
それゆえ、この発明のある目的は、狭い放射周波数帯域においても、近距離まで精度良く計測可能な距離測定装置、距離測定方法および距離測定プログラムを提供することである。
【0056】
この発明の別の目的は、移動する測定対象物においても、正確に測距可能な距離測定装置、距離測定方法および距離測定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0057】
この発明によれば、測定対象物までの距離を計測する距離測定装置は、所定の送信周波数と所定の帯域幅とを有する送信信号を出力する発信源と、送信信号と同一周波数の電磁波を発生し、測定対象物に対して放射する送信部と、電磁波の反射波を検出する検出部と、検出された反射波と送信周波数との関係を演算処理することによって測定対象物までの距離を算出する信号処理部とを備える。検出部は、検出された反射波を送信信号により同期検波して反射波の位相変化成分を抽出する検波手段を含む。信号処理部は、抽出された位相変化成分の変動周波数を、所定の距離に応じた周波数だけ変化させる周波数変換手段と、周波数変換手段により得られる上側帯波および下側帯波のうちの一方を解析信号とする解析信号生成手段と、解析信号をフーリエ変換してプロファイルを算出し、プロファイルの極大値と所定の距離とに基づいて測定対象物までの距離を求めるフーリエ変換手段とを含む。
【0058】
好ましくは、発信源は、所定の送信周波数を所定の帯域幅で所定のステップで上昇させて掃引する上昇掃引手段と、所定の送信周波数を所定の帯域幅で所定のステップで下降させて掃引する下降掃引手段とを含む。信号処理部は、上昇掃引手段に応じてフーリエ変換手段にて得られる測定対象物までの距離を第1の位置情報とし、下降掃引手段に応じてフーリエ変換手段にて得られる測定対象物までの距離を第2の位置情報として保持する手段と、保持された第1および第2の位置情報を平均化して真の測定対象物までの距離を導出する補正手段とをさらに含む。
【0059】
好ましくは、検波手段は、反射波を送信信号により同期検波して位相変化成分の同相成分を抽出し、反射波を送信信号とπ/2位相が異なる信号により同期検波して位相変化成分の直交成分を抽出する。
【0060】
好ましくは、所定の距離は、所定の送信周波数を所定の帯域幅で掃引させるときの分割数に応じて可変とする。
【0061】
好ましくは、所定の距離は、所定の帯域幅と分割数とから決まる最大検出可能距離の略半分を最大値とするように設定される。
【0062】
好ましくは、検波手段は、包絡線検波した反射波から送信信号の直流成分を差し引くことにより反射波の位相変化成分を抽出する。
【0063】
この発明によれば、測定対象物までの距離を計測する距離測定方法は、所定の送信周波数と所定の帯域幅とを有する信号を出力するステップと、信号と同一周波数の電磁波を発生し、測定対象物に対して放射するステップと、電磁波の反射波を検出するステップと、検出した反射波と送信周波数との関係を演算処理することによって測定対象物までの距離を算出するステップとを備える。反射波を検出するステップは、検出された反射波を送信信号により同期検波して反射波の位相変化成分を抽出するステップを含む。測定対象物までの距離を算出するステップは、抽出された位相変化成分の変動周波数を、所定の距離に応じた周波数だけ変化させるステップと、周波数を変化させて得られる上側帯波および下側帯波のうちの一方を解析信号とするステップと、解析信号をフーリエ変換してプロファイルを算出し、プロファイルの極大値と所定の距離とに基づいて測定対象物までの距離を求めるステップとを含む。
【0064】
好ましくは、所定の送信周波数と所定の帯域幅とを有する信号を出力するステップは、所定の送信周波数を所定の帯域幅で所定のステップで上昇させて掃引するステップと、所定の送信周波数を所定の帯域幅で所定のステップで下降させて掃引するステップとを含む。測定対象物までの距離を算出するステップは、上昇掃引したときにフーリエ変換にて得られる測定対象物までの距離を第1の位置情報とし、下降掃引したときにフーリエ変換にて得られる測定対象物までの距離を第2の位置情報として保持するステップと、保持された第1および第2の位置情報を平均化して真の測定対象物までの距離を導出するステップとをさらに含む。
【0065】
好ましくは、反射波の位相変化成分を抽出するステップは、反射波を送信信号により同期検波して位相変化成分の同相成分を抽出し、反射波を送信信号とπ/2位相が異なる信号により同期検波して位相変化成分の直交成分を抽出する。
【0066】
好ましくは、所定の距離は、所定の送信周波数を所定の帯域幅で掃引させるときの分割数に応じて可変とする。
【0067】
好ましくは、所定の距離は、所定の帯域幅と分割数とから決まる最大検出可能距離の略半分を最大値とするように設定される。
【0068】
好ましくは、反射波の位相変化成分を抽出するステップは、包絡線検波した反射波から送信信号の直流成分を差し引くことにより反射波の位相変化成分を抽出する。
【0069】
この発明によれば、測定対象物までの距離を計測する距離測定プログラムは、コンピュータに、所定の送信周波数と所定の帯域幅とを有する信号を出力するステップと、信号と同一周波数の電磁波を発生し、測定対象物に対して放射するステップと、電磁波の反射波を検出するステップと、検出した反射波と送信周波数との関係を演算処理することによって測定対象物までの距離を算出するステップとを実行させる。反射波を検出するステップは、検出された反射波を送信信号により同期検波して反射波の位相変化成分を抽出するステップを含む。測定対象物までの距離を算出するステップは、抽出された位相変化成分の変動周波数を、所定の距離に応じた周波数だけ変化させるステップと、周波数を変化させて得られる上側帯波および下側帯波のうちの一方を解析信号とするステップと、解析信号をフーリエ変換してプロファイルを算出し、プロファイルの極大値と所定の距離とに基づいて測定対象物までの距離を求めるステップとを含む。
【0070】
好ましくは、所定の送信周波数と所定の帯域幅とを有する信号を出力するステップは、所定の送信周波数を所定の帯域幅で所定のステップで上昇させて掃引するステップと、所定の送信周波数を所定の帯域幅で所定のステップで下降させて掃引するステップとを含む。測定対象物までの距離を算出するステップは、上昇掃引したときにフーリエ変換にて得られる測定対象物までの距離を第1の位置情報とし、下降掃引したときにフーリエ変換にて得られる測定対象物までの距離を第2の位置情報として保持するステップと、保持された第1および第2の位置情報を平均化して真の測定対象物までの距離を導出するステップとをさらに含む。
【0071】
好ましくは、反射波の位相変化成分を抽出するステップは、反射波を送信信号により同期検波して位相変化成分の同相成分を抽出し、反射波を送信信号とπ/2位相が異なる信号により同期検波して位相変化成分の直交成分を抽出する。
【0072】
好ましくは、所定の距離は、所定の送信周波数を所定の帯域幅で掃引させるときの分割数に応じて可変とする。
【0073】
好ましくは、所定の距離は、所定の帯域幅と分割数とから決まる最大検出可能距離の略半分を最大値とするように設定される。
【0074】
好ましくは、反射波の位相変化成分を抽出するステップは、包絡線検波した反射波から送信信号の直流成分を差し引くことにより反射波の位相変化成分を抽出する。
【発明の効果】
【0075】
この発明によれば、制限された送信周波数帯域幅においても、測定対象物を距離0mから高い測定精度で測距可能な距離測定装置を実現することができる。
【0076】
さらに、測定対象物が高速移動しているときにおいても、送信周波数を上昇掃引および下降掃引して得られる計測結果に補正処理を施すことにより、掃引時間に依存せず、精度良く測距することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0078】
図1は、この発明の実施の形態に従う距離測定装置の基本構成を示す回路図である。
図1を参照して、距離測定装置は、一定の送信周波数fの送信信号を発信する発信源10と、発信された送信信号と同一の周波数fの電磁波を放出する送信部20と、送信部20から出力された電磁波(以下、進行波Dとも称する)が測定対象物M〜Mにおいてそれぞれ反射されたときの電磁波(以下、反射波Rとも称する)を検出する検出部30と、検出部30で検出された反射波Rを演算処理し、測定対象物M〜Mとの距離d〜dを算出する信号処理部40とを備える。
【0079】
発信源10は、一定の周波数fの送信信号を出力する発信部12と、発信部12の出力する送信信号の周波数fを制御する周波数制御部14とを含む。
【0080】
発信部12は、たとえば電圧制御発振回路(VCO:Voltage Controlled Oscillator)で構成され、周波数制御部14からの制御信号に基づいて、所定の送信周波数fの送信信号を出力する。
【0081】
周波数制御部14は、たとえば位相検出器で構成され、信号処理部40からの基準発振信号と発信部12から帰還される帰還信号との位相差を検出し、VCOの発振周波数を上昇または下降させる制御信号を出力する。
【0082】
発信部12では、VCOがこの制御信号を受けて発振周波数を調整することにより、基準発振信号に対して周波数と位相とが一致し、かつ所定の送信周波数fに制御された送信信号が出力される。
【0083】
送信部20は、たとえばアンテナで構成され、アンテナと測定対象物M〜Mとの間に存在する空気や水などの伝搬媒質中もしくは真空中に、発信部12の出力信号と同一周波数fの電磁波を計測軸(x軸)方向に放出する。
【0084】
検出部30は、方向性結合器32と、乗算器34,35と、ローパスフィルタ(LPF)36,37と、π/2移相器38とを含む。
【0085】
方向性結合器32は、x軸上のx=0の地点に位置するように配される。方向性結合器32は、送信部20のアンテナで受信された信号から反射波Rを検出し、その検出した反射波Rを乗算器34,35の一方入力へそれぞれ出力する。
【0086】
乗算器34,35の他方入力には、発信部12であるVCOから送信周波数fの送信信号がそれぞれ与えられる。このとき、乗算器35の他方入力には、発信部12からの送信信号をπ/2移相器38でπ/2だけ位相シフトして得られる信号が与えられる。
【0087】
これにより、乗算器34,35においては、反射波Rと送信信号に同期した信号とを積算することによる検波、いわゆる同期検波が行なわれる。そして、乗算器34からは、これら2つの入力信号の乗算結果として、検波信号の同相(I相)成分I(f,t)が出力される。また、乗算器35からは、これら2つの入力信号の乗算結果として、検波信号の直交(Q相)成分Q(f,t)が出力される。
【0088】
そして、検波信号の同相成分I(f,t)と直交成分Q(f,t)とがLPF36,37にそれぞれ与えられると、高周波成分が除去されて、直流成分I(f),Q(f)が抽出される。抽出された直流成分I(f),Q(f)は、信号処理部40へ出力される。
【0089】
信号処理部40は、検出部30に接続され、反射波Rの直流成分I(f),Q(f)を受ける。
【0090】
信号処理部40は、反射波Rの直流成分I(f),Q(f)から解析信号p(f)を生成する解析信号生成部42と、生成された解析信号p(f)をフーリエ変換してプロファイルP(x)を算出するフーリエ変換部44とを含む。なお、解析信号生成部42とフーリエ変換部44とは、たとえばデジタルシグナルプロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)によって一体的に構成される。これにより、各部における演算処理は、予め記憶されたプログラムにしたがってソフトウェア的に実行される。
【0091】
以上のように、本実施の形態に係る距離測定装置の構成は、図10に示す従来の距離測定装置に対して、基本的な構成を同じくする。しかしながら、検出部30において反射波Rを検出する点と、信号処理部40に解析信号生成部42を含む点とにおいて、従来の距離測定装置とは異なる。以下に、本実施の形態に従う距離測定方法について詳細に説明し、上記の相違点のもたらす効果について明示する。
【0092】
最初に、本実施の形態に従う距離測定方法の測定原理について説明する。
図1に示す距離測定装置において、送信部20から放出された進行波Dが時刻tにおいて、
【0093】
【数5】

【0094】
で表わされるとき、各測定対象物までの距離をdとすれば、各測定対象物Mによる反射波Rは、次のように表わすことができる。
【0095】
【数6】

【0096】
ただし、cは光速、fは送信周波数、Aは進行波Dの振幅レベル、dは測定対象物Mまでの距離である。また、γは測定対象物Mの反射係数の大きさで伝搬損失を含む。φは反射における位相シフト量である。
【0097】
そして、検出部30の乗算器34,35において、式(6)の反射波Rを、送信周波数fの送信信号とこれとπ/2位相が異なる送信信号の直交信号とでそれぞれ同期検波することにより、次式で示す検波信号の同相成分I(f,t)と直交成分Q(f,t)とが得られる。
【0098】
【数7】

【0099】
さらに、式(7)の同相成分I(f,t)および直交成分Q(f,t)から、LPF36,37を介して高周波成分(送信信号の2倍波成分に相当)を除去することによって、直流成分I(f),Q(f)が抽出される。
【0100】
【数8】

【0101】
ここで、式(8)を参照して、直流成分I(f),Q(f)は、式(7)で表わされる反射波Rの検波信号から、進行波Dが測定対象物Mで反射したときの位相シフト量φの変化分(以下、位相変化成分とも称する)を抽出したものであることが分かる。すなわち、式(8)の直流成分は、測定対象物Mまでの距離dに応じた周期で変動する関数となる。したがって、この直流成分をフーリエ変換することによって周期成分を抽出すれば、距離dが分かる。
【0102】
式(8)に示す直流成分は、それぞれ実信号として、次式で示すcos関数とsin関数とで表される。
【0103】
【数9】

【0104】
したがって、式(9),(10)を同相成分および直交成分とする複素正弦波関数を受信パワー信号p(f)とし、これをフーリエ変換して得られるプロファイルの大きさ|P(x)|の極大値に基づいて測定対象物Mまでの距離dが得られると予想される。
【0105】
しかしながら、式(9),(10)からなる複素正弦波関数をフーリエ変換したプロファイルP(x)には、上記の式(2)のプロファイルP(x)と同様に、e+jθ(f)に起因する第2項と、e-jθ(f)に起因する第3項とが発生する(θ(f)は位相変化成分)。そのため、図12で示したのと同様に、距離dが小さいときには、プロファイルの大きさ|P(x)|において、第2項および第3項にそれぞれ対応する2つの極大値が互いに干渉し合うことによって、計測誤差が増加することになる。すなわち、負の周波数の影響を回避できないことから、測定対象物が近距離に位置するとき、および測定対象物が移動体であるときの計測誤差を低減することができない。
【0106】
そこで、この発明による距離測定装置は、式(9),(10)からなる複素正弦波関数の周期性が、負の周波数の影響を受けない距離に応じた周期性となるように、周波数変換させることを特徴とする。
【0107】
詳細には、式(9),(10)を同相成分および直交成分とする、距離dに応じた周期性を持つ実信号と、予め設定された所定の距離dに応じた周期性を持つ信号I(f),Q(f)とを混成(ミキシング)する。信号I(f),Q(f)をそれぞれ、
【0108】
【数10】

【0109】
とすると、式(9),(10)の実信号と式(11),(12)とをミキシングすることによって、次式で示される解析信号p(f)が生成される。
【0110】
【数11】

【0111】
すなわち、式(13)の解析信号p(f)は、送信周波数fに対して周期的であり、その周期性は、所定の距離dに応じた周期性よりも距離dに応じた周期性だけ高い信号となる。
【0112】
ここで、距離dに応じた信号I(f),Q(f)と、測定対象物Mの距離dに応じた実信号I(f),Q(f)とをミキシングしたときには、式(13)で示す両信号の周波数の和の成分に加えて、両信号の周波数の差の成分も同時に発生する。以下において、周波数の和の成分を上側帯波(USB:Upper Side Band)とも称し、周波数の差の成分を下側帯波(LSB:Lower Side Band)とも称する。
【0113】
そして、これらの上側帯波USBと下側帯波LSBとからなる信号をフーリエ変換すると、得られるプロファイルの波形には、所定の距離dを中心として、+dだけシフトした位置(x=d+d)と、−dだけシフトした位置(x=d−d)とにそれぞれ極大値が現れる。
【0114】
これは、図12のプロファイルP(x)において見られた、x=0を中心として、xが正の領域とxが負の領域とにそれぞれ極大値が生じる現象に等しい。そのため、x=dを中心として負の領域(x=d−d)に現れる極大値が、実質的に負の周波数の影響を正の領域(x=d+d)に現れる極大値に及ぼすこととなり、計測誤差を増加させることになる。
【0115】
すなわち、距離dが0mに近づくに従って、2つの極大値が共に中心値dに近接することになり、互いに干渉し合うことによって計測誤差を大きくする結果となる。また、測定対象物Mが高速で移動しているときには、正の領域(x=d+d)に現れる極大値が負の領域(x=d−d)に現れ、かつ負の領域に現れる極大値が正の領域に現れるといった逆転現象が発生する。その結果、真の極大値がいずれかを判別することが困難となり、計測誤差を増加させることになる。
【0116】
そこで、この発明による距離測定装置は、このような実質的な負の周波数の影響を抑える手段として、上側帯波USBと下側帯波LSBとのいずれか一方のみを解析信号p(f)として利用する構成とする。
【0117】
詳細には、上側帯波USBを解析信号p(f)として利用するときには、解析信号p(f)は、上記の式(13)で表現される。一方、下側帯波LSBを解析信号p(f)として利用するときには、解析信号p(f)は、p(f)=I(f)・I(f)−Q(f)Q(f)と表現される。
【0118】
たとえば式(13)の上側帯波を解析信号p(f)として、これをフーリエ変換の公式
【0119】
【数12】

【0120】
に適用して得られる距離xにおけるプロファイルP(x)は、次式のようになる。
【0121】
【数13】

【0122】
ただし、f0は送信周波数帯域の中心周波数、fwは送信周波数の帯域幅である。
これによれば、式(15)のプロファイルP(x)は、x=d+dの位置に極大値を有することになり、x=d−dに位置する極大値による実質的な負の周波数の影響が除去された結果となる。
【0123】
ここで、距離dに応じた周期性を持つ実信号ejθ(f)と、所定の距離dに応じた周期性を持つ信号I(f),Q(f)とをミキシングするにあたって、適用される式(13)の各成分のうち、信号I(f),Q(f)については、式(11),(12)で示される算術式を用いて得ることができる。一方、実信号ejθ(f)については、実数成分(cos関数)は受信した反射波Rから導くことができるが、虚数成分(sin関数)については導き出すことができない。
【0124】
一般に、cos関数から複素正弦波関数ejθ(f)を導く方法には、ヒルベルト変換が知られている。これによれば、cos関数から、これに直交するsin関数を求めることで複素正弦波関数ejθ(f)が得られる。しかしながら、ヒルベルト変換によって複素正弦波関数を生成するためには、基本となるcos関数に十分な周期性が含まれることが必要とされる。したがって、本実施の形態のように、距離dが短く、cos関数に十分な周期性が認められない場合においては、ヒルベルト変換の適用は困難であるといえる。
【0125】
これに対して、本実施の形態では、式(7)に示したように、反射波Rを送信信号の同相信号と直交信号とでそれぞれ同期検波して直流成分を抽出することによって、実数成分である同相成分I(f)と、虚数成分である直交成分Q(f)とが得られるため、複素正弦波関数ejθ(f)を導くことができる。
【0126】
すなわち、この発明による距離測定装置によれば、距離dに応じた周期性を持つ実信号を反射波Rの同期検波を行なうことにより導出し、かつ、所定の距離dに応じた周期性を持つ信号とを算術式から導出することによって、実質的な負の周波数の影響が除去された解析信号p(f)を生成することが可能となる。
【0127】
ここで、解析信号p(f)の生成において重要となる、所定の距離dの設定方法について説明する。
【0128】
式(13)の解析信号p(f)をフーリエ変換して得られるプロファイルP(x)は、図12に示す従来のプロファイルP(x)と同様に、第2項および第3項の成分に対応して、xが正となる領域(x=d+d)と、xが負となる領域(x=−d−d)とにそれぞれ極大値が現れる。したがって、所定の距離dの設定には、距離dが0mとなるときにおいても、2つの極大値が干渉し合うことがないことが条件となる。具体的には、測定対象物Mが静止しているときには、最低でも、式(4)の最小検出距離dminが確保されるように設定することが必要とされる。なお、フーリエ変換における窓関数を考慮すると、所定の距離dは、さらに最小検出距離dminを2倍した距離に設定される。
【0129】
また、測定対象物Mが移動するときには、測定対象物Mまでの距離dと移動速度との関係に基づいて設定することが必要とされる。
【0130】
詳細には、送信周波数fの掃引において、帯域幅fをN個の分割数で掃引した場合、サンプリング定理から導出される最大検出距離dmaxは、dmax=N・C/fとなる。そして、測定対象物Mkが移動しているときには、送信周波数fを上昇掃引して得られる解析信号p(f)をフーリエ変換して得られる計測結果(第1の位置情報)と、送信周波数fを下降掃引して得られる解析信号p(f)をフーリエ変換して得られる計測結果(第2の位置情報)とを求め、第1および第2の位置情報を平均化する補正処理が行なうことによって、移動する測定対象物Mの位置が検出される。このときの第1および第2の位置情報は、補正値を中心に遠方と近方とにそれぞれシフトしたデータとなり、そのシフト量は、移動速度が高いほど大きくなる。したがって、所定の距離dを最大検出距離dmaxの1/2を最大値となるように設定すれば、上述した補正処理を行なうことが可能となる。
【0131】
そして、測定対象物Mの移動速度が大きくなると、帯域幅fに含まれる反射波Rの波長数が増えることから、送信周波数fの掃引における分割数Nをさらに増加させる必要が生じる。このとき、所定の距離dは、最大検出距離dmaxが増加したことに比例して増加することになる。すなわち、所定の距離dは、測定対象物Mまでの距離dと移動速度に応じて設定される可変値である。
【0132】
以上のように、この発明による距離測定装置は、反射波Rから距離dに応じた周期性を有する信号を抽出し、この信号の周波数を距離dに応じた周期性だけシフトさせたときに発生する2つの側帯波の一方を用いて解析信号p(f)を生成する。その解析信号p(f)の生成手段として、反射波Rの同期検波手段と周波数変換手段とが存在する。
【0133】
これは、受信した定在波Sの受信パワー信号をフーリエ変換する従来の距離測定装置に対して、反射波Rから見かけ上の定在波を生成し、この定在波を用いて生成した解析信号p(f)をフーリエ変換する点で異なる。そして、この相違点により、この発明による距離測定装置は、負の周波数の影響を除去して、近距離に位置する測定対象物Mおよび移動する測定対象物Mにおいても、正確に距離dを計測することが可能となる。
【0134】
図3は、図1の距離測定装置において、以上に述べた測定原理を実現するための動作を示すフロー図である。
【0135】
図3を参照して、まず計測に先立って、図1の周波数制御部14において、周波数条件が設定される。詳細には、送信部20から放出される電磁波の中心周波数f、送信周波数範囲f、掃引する周波数ステップΔfが設定される(ステップS01)。
【0136】
周波数条件が設定されると、周波数制御部14は、掃引開始時の送信周波数fとして、f=f−f/2を設定する。周波数制御部14は、発信部12のVCOの発振周波数を送信周波数fに制御するための制御信号を出力する(ステップS02)。
【0137】
発信部12は、周波数制御部14からの制御信号に応じて、自己の発振周波数を送信周波数fに調整し、送信周波数fの信号を出力する(ステップS03)。送信部20は、出力信号と同一周波数fの電磁波を測定対象物Mに対して放出する。
【0138】
次に、検出部30は、送信周波数fの進行波Dが測定対象物で反射されたときの反射波Rを検出する。このとき、検出部30では、方向性結合器32を介して送信部20の受信信号から反射波Rが検出されると、反射波Rが送信信号により同期検波されて直流成分が抽出されることにより、反射波Rの同相成分I(f),直交成分Q(f)が検出される(ステップS04)。
【0139】
ステップS03およびS04に示す検出動作は、さらに、送信周波数fを周波数ステップΔfだけ増加させて行なわれる(ステップS06)。以上に示す一連の動作は、最終的に送信周波数fが掃引終了時の周波数f+f/2に至るまで繰り返される(ステップS05)。
【0140】
ステップS05において、所定の周波数帯域幅fでの反射波Rの同相成分I(f),直交成分Q(f)の検出が終了すると、信号処理部40内の解析信号生成部42において、同相成分I(f),直交成分Q(f)から解析信号p(f)が算出される(ステップS07)。
【0141】
このとき、解析信号生成部42では、ステップS10に示すように、測定対象物Mの位置および移動速度に基づいて所定の距離dが設定されると、距離d0に応じた周期性を有する信号I(f),Q(f)が式(11),(12)を用いて算出される(ステップS11)。そして、ステップS07において、同相成分I(f),直交成分Q(f)と信号I(f),Q(f)とがミキシングされ、発生する2つの側帯波のうちの一方(たとえば上側帯波USB)を用いて解析信号p(f)が生成される。
【0142】
ステップS07にて得られた解析信号p(f)は、フーリエ変換部44においてフーリエ変換される。これにより、プロファイルP(x)が導出される(ステップS08)。
【0143】
最後に、プロファイルP(x)の極大値を抽出することにより、測定対象物Mの距離dを求めることができる(ステップS09)。
【0144】
図4は、図1の距離測定装置において、プロファイルP(x)から求められる測定対象物Mの距離d(計測値)と実際の測定対象物までの距離との関係を示す図である。なお、同図の関係は、f=24.0375GHz,f=75MHz,γ=0.1,φ=πの条件下において、測定対象物Mの距離dを0m≦d≦10mの範囲で変化させたときに得られたものである。
【0145】
図4に示すように、プロファイルP(x)から得られる測定対象物の距離dと実際の測定対象物までの距離とは、0m≦d≦10mの全範囲において、1対1の関係が得られている。これにより、図12に示される従来計測不可能であった距離が2m以下の領域においても計測することができ、特にd=0mからの測距が可能となる。
【0146】
図5は、測定対象物Mまでの距離dが遠距離レベル(10m≦d≦20m)のときの計測値と実際の測定対象物までの距離との関係を示す図である。
【0147】
図5から明らかなように、測定対象物Mの距離dには、図13で示される誤差が生じていない。したがって、中距離以上に位置する測定対象物Mに対しても、計測誤差を低減することができる。
【0148】
次に、図1の距離測定装置における移動する測定対象物Mまでの距離dの測定動作について説明する。
【0149】
図6は、図1に示す距離測定装置における測定動作を説明するためのフロー図である。
図6を参照して、まず計測に先立って、図1の周波数制御部14において、周波数条件が設定される。詳細には、送信部20から放出される電磁波の中心周波数f、送信周波数範囲f、掃引する周波数ステップΔfが設定される(ステップS20)。以下においては、送信周波数fを、周波数ステップΔfごとに増加(上昇掃引に相当)、または周波数ステップΔfごとに減少(下降掃引に相当)することによって、第1および第2の位置情報がそれぞれ検出される。
【0150】
まず、上昇掃引においては、周波数条件が設定されると、周波数制御部14は、掃引開始時の送信周波数fとして、f=f−f/2を設定する。周波数制御部14は、発信部12のVCOの発振周波数を送信周波数fに制御するための制御信号を出力する(ステップS21)。
【0151】
発信部12は、周波数制御部14からの制御信号に応じて、自己の発振周波数を送信周波数fに調整し、送信周波数fの信号を出力する(ステップS22)。送信部20は、出力信号と同一周波数fの電磁波を測定対象物Mに対して放出する。
【0152】
次に、検出部30は、送信周波数fの進行波Dが測定対象物Mで反射された反射波Rを検出する。そして、検出部30は、反射波Rを送信信号の同相信号と直交信号とにより同期検波して、反射波Rの同相成分I(f),直交成分Q(f)を検出する(ステップS23)。
【0153】
ステップS22およびS23に示す検出動作は、送信周波数fを周波数ステップΔfだけ増加させて行なわれる(ステップS24)。以上に示す一連の動作は、最終的に送信周波数fが掃引終了時の周波数f+f/2に至るまで繰り返される(ステップS25)。
【0154】
ステップS25において、所定の周波数範囲fでの同相成分I(f)および直交成分Q(f)の検出が終了すると、信号処理部40内の解析信号生成部42において、同相成分I(f),直交成分Q(f)と所定の距離dに応じた周期性の信号I(f),Q(f)とがミキシングされ、そのとき生じる上側帯波USBから解析信号p(f)が算出される(ステップS26)。
【0155】
さらに、得られた解析信号p(f)は、フーリエ変換部44においてフーリエ変換される。これにより、プロファイルP(x)が導出される(ステップS27)。
【0156】
最後に、プロファイルP(x)の極大値を抽出し、極大値を与える位置xから所定の距離dを差し引くことにより、測定対象物Mの距離dを求めることができる(ステップS28)。検出された距離dは、第1の位置情報としてフーリエ変換部44に格納される。
【0157】
次に、下降掃引においては、周波数条件が設定されると、周波数制御部14は、掃引開始時の送信周波数fとして、f=f+f/2を設定する。周波数制御部14は、発信部12のVCOの発振周波数を送信周波数fに制御するための制御信号を出力する(ステップS31)。
【0158】
発信部12は、周波数制御部14からの制御信号に応じて、自己の発振周波数を送信周波数fに調整し、送信周波数fの信号を出力する。送信部20は、出力信号と同一周波数fの電磁波を測定対象物Mに対して放出する(ステップS32)。
【0159】
次に、検出部30は、送信周波数fの進行波Dが測定対象物Mで反射された反射波Rを検出する。そして、ステップS23と同様の手順に従って、反射波Rの同相成分I(f),直交成分Q(f)がそれぞれ検出される(ステップS33)。
【0160】
ステップS32およびS33に示す検出動作は、送信周波数fを周波数ステップΔfだけ減少させて行なわれる(ステップS34)。以上に示す一連の動作は、最終的に送信周波数fが掃引終了時の周波数f−f/2に至るまで繰り返される(ステップS35)。
【0161】
ステップS34において、所定の周波数範囲fでの同相成分I(f),直交成分Q(f)の検出が終了すると、信号処理部40内の解析信号生成部42において、同相成分I(f),直交成分Q(f)と、距離dに応じた周期性の信号I(f),Q(f)とがミキシングされ、そのときの上側帯波USBから解析信号p(f)が算出される(ステップS36)。
【0162】
得られた解析信号p(f)は、フーリエ変換部44においてフーリエ変換される。これにより、プロファイルP(x)が導出される(ステップS37)。
【0163】
最後に、プロファイルP(x)の極大値を抽出することにより、測定対象物Mの距離dを求めることができる(ステップS38)。検出された距離dは、第2の位置情報としてフーリエ変換部44に格納される。
【0164】
フーリエ変換部44は、ステップS28,S38において、第1および第2の位置情報が送られると、これら2つの位置情報を平均化する(ステップS39)。得られた結果は、測定対象物Mの真の位置情報として取得される(ステップS40)。
【0165】
図7は、図6の補正処理から得られる距離(計測値)と測定対象物Mの移動速度との関係を示す図である。
【0166】
図7を参照して、上昇掃引時の計測結果である第1の位置情報と、下降掃引時の計測結果である第2の位置情報とを平均化することにより、計測誤差は、測定対象物Mの移動速度の広い範囲において、略0mに保持されている。
【0167】
しかしながら、図7において、移動速度が40m/sを超えると、約5.0mの計測誤差が生じてしまう。この計測誤差は、送信周波数fの分割数Nによるサンプリングのためのエリアジングの影響を受けることに起因する。そして、送信周波数fの分割数Nをさらに増加すれば、図8に示すように、高速時における計測誤差を解消することができる。
【0168】
以上のように、この発明による距離測定装置によれば、反射波を同期検波して同相成分と直交成分とを検出し、これを所定の距離に応じた周波数だけシフトさせたときの側帯波の一方を解析信号として利用することにより、近距離から遠距離まで精度良く計測することができる。また、測定対象物が高速移動しているときにおいても、送信周波数を上昇掃引および下降掃引して得られる計測結果に補正処理を施すことにより、掃引時間に依存せず、精度良く測距することができる。
【0169】
なお、本実施の形態では、反射波Rの検出を方向性結合器32により行なう構成としたが、図8に示すように、受信専用に設けたアンテナ202により検出する構成としても良い。この場合、アンテナ202の受信した信号は直接乗算器24,26の一方入力にそれぞれ入力される。
【0170】
また、この発明における反射波Rの同相成分I(f)および直交成分Q(f)の検出を、アナログ乗算器24,26で反射波Rを同期検波する構成としたが、送信信号の送信周波数fが高く、アナログ乗算器が使用できない場合は、乗算器24,26をダイオードで構成し、反射波Rを包絡線検波することによって検出する構成とすればよい。なお、この場合、検波信号には、送信信号の直流成分をも含まれるため、この直流成分を除去するための手段が別途必要となる。
【0171】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】この発明の実施の形態に従う距離測定装置の基本構成を示す回路図である。
【図2】図1の距離測定装置における測定動作を説明するためのフロー図である。
【図3】図1の距離測定装置における測定動作を説明するためのフロー図である。
【図4】プロファイルP(x)から求められる測定対象物Mの距離d(計測値)と実際の測定対象物までの距離との関係を示す図である。
【図5】プロファイルP(x)から求められる測定対象物Mの距離d(計測値)と実際の測定対象物までの距離との関係を示す図である。
【図6】図1の距離測定装置における測定動作を説明するためのフロー図である。
【図7】プロファイルP(x)から得られる距離(計測値)と測定対象物の移動速度との関係を示す図である。
【図8】プロファイルP(x)から得られる距離(計測値)と測定対象物の移動速度との関係を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態の変更例に従う距離測定装置の基本構成を示す回路図である。
【図10】特許文献3に提案されている距離測定装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図11】測定対象物Mが距離dの位置にあるときに、x=x=0の位置で観測される受信パワー信号p(f,0)の波形図である。
【図12】測定対象物Mの距離dが0mから5mまでの範囲におけるプロファイルの大きさ|P(x)|の計算結果を示す図である。
【図13】プロファイルP(x)から求められる測定対象物Mの距離d(計測値)と実際の測定対象物までの距離との関係を示す図である。
【図14】プロファイルP(x)から求められる測定対象物Mの距離d(計測値)と実際の測定対象物までの距離との関係を示す図である。
【図15】測定対象物Mを距離d=10mの位置を基準として、±10mmの範囲内で微小に位置変化させたときの計測誤差を示す図である。
【図16】受信パワー信号を多重処理して得られる計測結果を示す図である。
【図17】測定対象物Mが等速移動しているときのプロファイルP(x)から得られる距離(計測値)と測定対象物の移動速度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0173】
10,60 発信源、12,62 発信部、14,64 周波数制御部、20,70 送信部、30,30A,32 方向性結合器、34,35 乗算器、36,37 LPF,38 π/2移相器、80 検出部、40,90 信号処理部、42 解析信号生成部、44,92 フーリエ変換部、M〜M 測定対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物までの距離を計測する距離測定装置であって、
所定の送信周波数と所定の帯域幅とを有する送信信号を出力する発信源と、
前記送信信号と同一周波数の電磁波を発生し、前記測定対象物に対して放射する送信部と、
前記電磁波の反射波を検出する検出部と、
検出された前記反射波と前記送信周波数との関係を演算処理することによって前記測定対象物までの距離を算出する信号処理部とを備え、
前記検出部は、
検出された前記反射波を前記送信信号により同期検波して前記反射波の位相変化成分を抽出する検波手段を含み、
前記信号処理部は、
抽出された前記位相変化成分の変動周波数を、所定の距離に応じた周波数だけ変化させる周波数変換手段と、
前記周波数変換手段により得られる上側帯波および下側帯波のうちの一方を解析信号とする解析信号生成手段と、
前記解析信号をフーリエ変換してプロファイルを算出し、前記プロファイルの極大値と前記所定の距離とに基づいて前記測定対象物までの距離を求めるフーリエ変換手段とを含む、距離測定装置。
【請求項2】
前記発信源は、
前記所定の送信周波数を前記所定の帯域幅で所定のステップで上昇させて掃引する上昇掃引手段と、
前記所定の送信周波数を前記所定の帯域幅で所定のステップで下降させて掃引する下降掃引手段とを含み、
前記信号処理部は、
前記上昇掃引手段に応じて前記フーリエ変換手段にて得られる前記測定対象物までの距離を第1の位置情報とし、前記下降掃引手段に応じて前記フーリエ変換手段にて得られる前記測定対象物までの距離を第2の位置情報として保持する手段と、
保持された前記第1および第2の位置情報を平均化して真の前記測定対象物までの距離を導出する補正手段とをさらに含む、請求項2に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記検波手段は、前記反射波を前記送信信号により同期検波して前記位相変化成分の同相成分を抽出し、前記反射波を前記送信信号とπ/2位相が異なる信号により同期検波して前記位相変化成分の直交成分を抽出する、請求項1または請求項2に記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記所定の距離は、前記所定の送信周波数を前記所定の帯域幅で掃引させるときの分割数に応じて可変とする、請求項3に記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記所定の距離は、前記所定の帯域幅と前記分割数とから決まる最大検出可能距離の略半分を最大値とするように設定される、請求項4に記載の距離測定装置。
【請求項6】
前記検波手段は、包絡線検波した前記反射波から前記送信信号の直流成分を差し引くことにより前記反射波の位相変化成分を抽出する、請求項1または請求項2に記載の距離測定装置。
【請求項7】
測定対象物までの距離を計測する距離測定方法であって、
所定の送信周波数と所定の帯域幅とを有する信号を出力するステップと、
前記信号と同一周波数の電磁波を発生し、前記測定対象物に対して放射するステップと、
前記電磁波の反射波を検出するステップと、
検出した前記反射波と前記送信周波数との関係を演算処理することによって前記測定対象物までの距離を算出するステップとを備え、
前記反射波を検出するステップは、
検出された前記反射波を前記送信信号により同期検波して前記反射波の位相変化成分を抽出するステップを含み、
前記測定対象物までの距離を算出するステップは、
抽出された前記位相変化成分の変動周波数を、所定の距離に応じた周波数だけ変化させるステップと、
前記周波数を変化させて得られる上側帯波および下側帯波のうちの一方を解析信号とするステップと、
前記解析信号をフーリエ変換してプロファイルを算出し、前記プロファイルの極大値と前記所定の距離とに基づいて前記測定対象物までの距離を求めるステップとを含む、距離測定方法。
【請求項8】
前記所定の送信周波数と所定の帯域幅とを有する信号を出力するステップは、
前記所定の送信周波数を前記所定の帯域幅で所定のステップで上昇させて掃引するステップと、
前記所定の送信周波数を前記所定の帯域幅で所定のステップで下降させて掃引するステップとを含み、
前記測定対象物までの距離を算出するステップは、
前記上昇掃引したときに前記フーリエ変換にて得られる前記測定対象物までの距離を第1の位置情報とし、前記下降掃引したときに前記フーリエ変換にて得られる前記測定対象物までの距離を第2の位置情報として保持するステップと、
保持された前記第1および第2の位置情報を平均化して真の前記測定対象物までの距離を導出するステップとをさらに含む、請求項7に記載の距離測定方法。
【請求項9】
前記反射波の位相変化成分を抽出するステップは、前記反射波を前記送信信号により同期検波して前記位相変化成分の同相成分を抽出し、前記反射波を前記送信信号とπ/2位相が異なる信号により同期検波して前記位相変化成分の直交成分を抽出する、請求項7または請求項8に記載の距離測定方法。
【請求項10】
前記所定の距離は、前記所定の送信周波数を前記所定の帯域幅で掃引させるときの分割数に応じて可変とする、請求項9に記載の距離測定方法。
【請求項11】
前記所定の距離は、前記所定の帯域幅と前記分割数とから決まる最大検出可能距離の略半分を最大値とするように設定される、請求項10に記載の距離測定方法。
【請求項12】
前記反射波の位相変化成分を抽出するステップは、包絡線検波した前記反射波から前記送信信号の直流成分を差し引くことにより前記反射波の位相変化成分を抽出する、請求項7または請求項8に記載の距離測定方法。
【請求項13】
測定対象物までの距離を計測する距離測定プログラムであって、
コンピュータに、
所定の送信周波数と所定の帯域幅とを有する信号を出力するステップと、
前記信号と同一周波数の電磁波を発生し、前記測定対象物に対して放射するステップと、
前記電磁波の反射波を検出するステップと、
検出した前記反射波と前記送信周波数との関係を演算処理することによって前記測定対象物までの距離を算出するステップとを実行させ、
前記反射波を検出するステップは、
検出された前記反射波を前記送信信号により同期検波して前記反射波の位相変化成分を抽出するステップを含み、
前記測定対象物までの距離を算出するステップは、
抽出された前記位相変化成分の変動周波数を、所定の距離に応じた周波数だけ変化させるステップと、
前記周波数を変化させて得られる上側帯波および下側帯波のうちの一方を解析信号とするステップと、
前記解析信号をフーリエ変換してプロファイルを算出し、前記プロファイルの極大値と前記所定の距離とに基づいて前記測定対象物までの距離を求めるステップとを含む、距離測定プログラム。
【請求項14】
前記所定の送信周波数と所定の帯域幅とを有する信号を出力するステップは、
前記所定の送信周波数を前記所定の帯域幅で所定のステップで上昇させて掃引するステップと、
前記所定の送信周波数を前記所定の帯域幅で所定のステップで下降させて掃引するステップとを含み、
前記測定対象物までの距離を算出するステップは、
前記上昇掃引したときに前記フーリエ変換にて得られる前記測定対象物までの距離を第1の位置情報とし、前記下降掃引したときに前記フーリエ変換にて得られる前記測定対象物までの距離を第2の位置情報として保持するステップと、
保持された前記第1および第2の位置情報を平均化して真の前記測定対象物までの距離を導出するステップとをさらに含む、請求項13に記載の距離測定プログラム。
【請求項15】
前記反射波の位相変化成分を抽出するステップは、前記反射波を前記送信信号により同期検波して前記位相変化成分の同相成分を抽出し、前記反射波を前記送信信号とπ/2位相が異なる信号により同期検波して前記位相変化成分の直交成分を抽出する、請求項13または請求項14に記載の距離測定プログラム。
【請求項16】
前記所定の距離は、前記所定の送信周波数を前記所定の帯域幅で掃引させるときの分割数に応じて可変とする、請求項15に記載の距離測定プログラム。
【請求項17】
前記所定の距離は、前記所定の帯域幅と前記分割数とから決まる最大検出可能距離の略半分を最大値とするように設定される、請求項16に記載の距離測定プログラム。
【請求項18】
前記反射波の位相変化成分を抽出するステップは、包絡線検波した前記反射波から前記送信信号の直流成分を差し引くことにより前記反射波の位相変化成分を抽出する、請求項13または請求項14に記載の距離測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−24671(P2007−24671A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206798(P2005−206798)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【特許番号】特許第3784823号(P3784823)
【特許公報発行日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【出願人】(000233790)株式会社ノーケン (13)
【Fターム(参考)】