説明

跨座式モノレール用軌道桁の落下防止装置

【課題】地震時の安全性をより高めることのできる跨座式モノレール用軌道桁の落下防止
装置を提供する。
【解決手段】落下防止装置は、跨座式モノレール用軌道桁1の橋脚からの落下を防止する
ためのものである。落下防止装置は、軌道桁1の前後の端部の両案内面2bで互いに向き
合わされた一対の継目板4A,4B間に、紐状の連結部材6を掛け渡して構成されている
。連結部材6は、紐状の部材の両端を接続した環状を呈しており、両継目板4A,4Bが
備える掛止溝44に掛け止められて軌道桁1の案内面2bと継目板4A,4Bとの間に配
置され、軌道桁1に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、跨座式モノレール用軌道桁の落下防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
跨座式モノレールの軌道桁は、隣り合う軌道桁と突き合わせた端部を、支承部で支柱に支持されている。特許文献1,2に記載された跨座式モノレールにおける軌道桁落下防止装置は、モノレールの車体に跨がれる軌道桁に十分な設置スペースを確保できないことから、軌道桁を支持する支承部同士をケーブルで連結して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−68395号公報
【特許文献2】特開2007−120290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各特許文献の落下防止装置は、支承部に設置されているため、支承部や支承部を支柱に固定するアンカーの破損時に最終的に作動することとなる。また、軌道桁の変位方向によっては作動時にケーブルが捻れる等して不安定な状態になる。また、地震等の際に支承部間に変位が生じると、ケーブルから支承部に想定外の応力が作用する虞がある。このため、地震時の安全性をより高めることのできる落下防止装置が望まれていた。
【0005】
本発明の目的は斯かる課題に鑑みてなされたもので、地震時の安全性をより高めることのできる跨座式モノレール用軌道桁の落下防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明の跨座式モノレール用軌道桁の落下防止装置は、橋脚上に支承で支持されて隣り合う軌道桁と端部同士を突き合わせて連結された跨座式モノレール用軌道桁の落下防止装置であって、前記端部に設けられた掛止部に、対向する前記軌道桁間にタルミを持たせて掛け渡された連結部材を備え、前記連結部材は、表面をエラストマーで覆われて前記エラストマーと一体化されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記連結部材が、繊維ロープの端部を互いに編み込むことで環状にエンドレス化して構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、環の大きさの異なる複数の連結部材を、両前記軌道桁間に掛け渡して構成されていることを特徴とする構造例も含む。
また、本発明は、環の小さな連結部材の伸度が、環の大きな連結部材の伸度に比べて大きいことを特徴とする。
また、本発明は、前記掛止部が、両前記軌道桁の前記端部の両側面に互いに向き合って備えられた一対の継目板に形成されており、前記連結部材が、前記側面と前記継目板との間に配置されて前記軌道桁に固定されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記継目板が、本体の一縁部から櫛歯状に延出したフィンガー部を、向き合った前記継目板のフィンガー部と噛み合わせるように配置されており、前記掛止部が、隣り合う前記フィンガー部間に位置する前記一縁部まで端部を延ばして前記本体に形成されて前記連結部材を収容する肉薄部と、前記肉薄部に突設されて前記連結部材の掛け止められる掛止突起とから構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記継目板が、本体よりも肉薄に構成されて前記本体の一主面側の一縁部から櫛歯状に延出したフィンガー部を、向き合った前記継目板のフィンガー部と噛み合わせるように配置されており、前記掛止部が、前記一縁まで両端を延ばして前記本体の他主面に形成された一本の溝から構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記掛止部が、両前記軌道桁の前記端部の下面に互いに向き合って備えられた一対のソールプレートに形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軌道桁同士を連結部材で直接接続して軌道桁間の変位に基づき落下防止装置を作動させることで、地震時の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態の落下防止装置を備えた軌道桁を示す図であり、(a)は横断面図,(b)は右側面図である。
【図2】軌道桁が前端部に備える案内面継目板を示す図であり、(a)は外側から,(b)は内側から,(c)は下側から見た図である。
【図3】案内面継目板を桁本体に支持する台座を示す図であり、(a)は外側から,(b)は後側から,(c)は下側から見た図である。
【図4】桁本体が備える台座に案内面継目板を取り付けた状態を示す図であり、(a)は右側から,(b)は下側から見た図である。
【図5】桁本体が備える台座に他の例の案内面継目板を取り付けた状態を示す図であり、(a)は右側から,(b)は下側から見た図,(c)は(b)の枠A内の拡大図である。
【図6】軌道桁が前端部に備える他の例の案内面継目板を示す図であり、(a)は外側から,(b)は内側から,(c)は下側から見た図である。
【図7】桁本体が備えるソールプレートに連結部材を掛け止めた状態を右側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態の落下防止装置を備えた軌道桁1を示す図であり、(a)は横断面図,(b)は右側面図である。
【0010】
図1に示す軌道桁1は、図示しない支承で橋脚に支持されており、隣り合う前側の軌道桁1Aと後側の軌道桁1Bとで端部同士を突き合わせている。この例では、軌道桁1A,1Bは、前端部を可動支承で、後端部を固定支承でそれぞれ下面2cを支持されている。軌道桁1A,1Bは、桁本体2A,2Bの上面がモノレールの走行する軌道面2aとなっており、軌道面を挟んで配置された左右の側面がモノレールを案内する案内面2bとなっている。桁本体2Aの後端面と桁本体2Bの前端面との間には、間隙20が設けられている。桁本体2A,2Bが備える案内面2bの前後の端部には、それぞれ台座5を介して案内面継目板4が取り付けられている。
【0011】
図2は、軌道桁1Bが前端部に備える案内面継目板4Bを示す図であり、(a)は外側から,(b)は内側から,(c)は下側から見た図である。
【0012】
案内面継目板4Bは、図2に示すように、方形の平板状を呈した継目板本体41の前縁部から、複数のフィンガー部42を延出させた概略形状を有している。継目板本体41には、複数の挿通孔43が設けられている。図に示す例では、継目板本体41の前縁部及び後縁部に沿って、それぞれ3つの挿通孔43が等間隔で配列されている。前縁部の挿通孔43と後縁部の挿通孔43とは、互いに上下位置をずらして配置されている。
【0013】
各挿通孔43は、継目板本体41の外面側から内面側にかけてを貫通しており、内面側には縮径部43aを備えている。挿通孔43には、案内面継目板4Bを台座5に取り付けるためのネジ7(図4参照)が挿通され、縮径部43aの外側に位置する拡径部にネジ7の頭部7aを収容する。
【0014】
フィンガー部42は、継目板本体41の前縁から前方に向けて矩形状を呈して延びた平板体で、継目板本体41よりも肉薄に形成されており、基端部から先端部にかけてほぼ等しい肉厚を有して延びている。図に示す例では、4つのフィンガー部42が継目板本体41の前縁部に等間隔で設けられている。最も上側に位置するフィンガー部42は、上側面を継目板本体41の上側面と面一にさせており、先端の下側の角部が外面視で円弧状を呈している。残りの3つのフィンガー部42は、先端の上下の角部が外面視で円弧状を呈しており、略円形の先端形状を有している。
【0015】
継目板本体41の内面には、連結部材6を掛け止めるための掛止溝44が設けられている。各掛止溝44は、継目板本体41の前縁から後方に延びた後に屈曲して前縁まで延びた溝から構成されており、継目板本体41の前縁側に配列された挿通孔43をそれぞれ囲むように略U字状を呈している。
【0016】
図3は、案内面継目板4Bを桁本体2Bに支持する台座5Bを示す図であり、(a)は外側から,(b)は後側から,(c)は下側から見た図である。台座5Bは、略矩形の平板状を呈した台座本体51と、台座本体51の後縁から外方に向けて延びた屈曲片54と、台座本体51の前縁から内側に屈曲して前方に延びた延出片52と、台座本体51及び屈曲片54に固定された定着板56とを備えて構成されている。
【0017】
台座本体51の内面には、定着ボルト55が螺着されるネジ部53が固定されている。ネジ部53は、筒状を呈しており、台座本体51に形成された貫通孔51aにネジ孔53aを連通させて、台座本体51の内面に溶接等で固定されている。定着ボルト55は、台座5を軌道桁1に定着させるためのものであり、頭部55aを内側に向けてネジ孔53aに内側から螺着されて、ネジ部53に固定される。
【0018】
屈曲片54の後面には、台座5を軌道桁1に定着させるための定着棒57が固定されている。定着棒57は、丸棒状の本体の一端を屈曲片54の後面に溶接等で固定されて、他端に備えた頭部57aを後側に向けている。
【0019】
定着板56は、矩形の平板の1つの角部を矩形に切り欠いた形状を有しており、両主面に開口した貫通孔56aを複数備えている。定着板56は、台座本体51の内面及び屈曲片54の後面に切欠部分の端面を当接させて、溶接等で固着されている。
【0020】
台座5Bは、桁本体2Bが備える案内面2aの前縁から後方に延びた段差部21に台座本体51を収容され、ネジ部53,定着ボルト55,定着板56,および定着棒57を桁本体2Bに埋設されることで、桁本体2Bに固定されている。桁本体2Bに固定された台座5Bは、屈曲片54を段差部21の後側面に、延出片52を段差部21の前側面にそれぞれ当接させて、台座本体51を段差部21の底面に載置されている。
【0021】
図4は、桁本体2A,2Bが備える台座5A,5Bに案内面継目板4A,4Bを取り付けた状態を示す図であり、(a)は右側から,(b)は下側から見た図である。
【0022】
図4に示すように、軌道桁1Aが後端部に備える案内面継目板4Aは、継目板本体41からのフィンガー部42の延出位置を除いて、軌道桁1Bが前端部に備える案内面継目板4Bと同様の構成を有している。案内面継目板4Aでは、最も下側に位置するフィンガー部42が下側面を継目板本体41の下側面と面一にさせており、各フィンガー部42が案内面継目板4Bのフィンガー部42と同じ等間隔で継目板本体41の後縁部から後方に延びている。また、軌道桁1Aが後端部に備える台座5Aは、台座本体51の前縁部に屈曲片54が、後縁部に延出片52がそれぞれ形成されている他は、軌道桁1Bが前端部に備える台座5Bと同様の構成を有している。
【0023】
案内面継目板4Aと案内面継目板4Bとは、互いのフィンガー部42を噛み合わせるようにして台座5に固定され、桁本体2に取り付けられる。各案内面継目板4は、挿通孔43の縮径部43aを台座本体51の貫通孔51aに向き合わせて継目板本体41を台座本体51に載置され、挿通孔43に外側から挿通されたネジ7が貫通孔51aを通してネジ部53のネジ孔53aに螺着されて、桁本体2に固定される。ネジ7は、挿通孔43の拡径部の底面に頭部7aを当接させて挿通孔43に収容される。案内面継目板4Aが備える各掛止溝44と、案内面継目板4Bが備える各掛止溝44との間には、連結部材6が掛け渡されている。
【0024】
連結部材6は、アラミド系繊維,ポリアミド系繊維,ポリエステル系繊維等の繊維を編み込んで形成された1本の繊維ロープの両端を接続した環状を呈している。連結部材6は、1本の繊維ロープの両端部を互いに編み込むことで環状にエンドレス化して構成されている。桁本体2Aと桁本体2Bとの間に掛け渡す連結部材6の長さは、間隙20の長さや連結部材6の伸びを考慮して、連結部材6に張力を働かせる桁本体2Aと桁本体2Bとの間での変位量に基づき定められる。
【0025】
連結部材6は、案内面継目板4Aと案内面継目板4Bとの間に掛け渡されている。連結部材6の案内面継目板4B側の端部は、台座5Bの台座本体51と掛止溝44との間に収容されて掛止溝44の周壁に掛け止められ、掛止溝44内からの離脱が規制されている。連結部材6の案内面継目板4A側の端部も、案内面継目板4B側の端部と同様に、台座5Aの台座本体51と掛止溝44との間に収容されて掛止溝44の周壁に掛け止められ、掛止溝44内からの離脱が規制されている。連結部材6の表面は、加硫成形により一体化されたエラストマー60で覆われている。
【0026】
地震時等に桁本体2Aと桁本体2Bとの間に変位が生じて、桁本体2Aと桁本体2Bとの間の間隙20が、桁本体2Aと桁本体2Bとの間に掛け渡された連結部材6の長さよりも広がると、連結部材6に張力が働くことで桁本体2Aと桁本体2Bとの間での変位の拡大が防止される。また、桁本体2Aと桁本体2Bとの間に、上下,左右,周方向等の前後方向とは異なる方向で変位が生じたときにも、この変位の拡大が連結部材6により抑えられる。
【0027】
本実施形態によれば、桁本体2の前後の端部に備えられる案内面継目板4Aと案内面継目板4Bとの間に連結部材6を掛け渡し、桁本体2Aと桁本体2Bとを直接接続することで落下防止装置が構成されていることから、軌道桁1Aと軌道桁1Bとの変位に基づき落下防止装置を作動させることができる。また、軌道桁1A,1Bの支承部や支承部を支柱に固定するアンカーの破損前に落下防止装置を作動させることができる。この結果、地震時の安全性を高めることができる。
【0028】
また、本実施形態によれば、桁本体2の左右の案内面2bに備えられた複数の案内面継目板4Aと案内面継目板4Bとの間にそれぞれ連結部材6が掛け渡されていることから、桁本体2Aと桁本体2Bとの間で生じる軸心を中心とした周方向への変位を効果的に抑えることができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、台座5と案内面継目板4との間に連結部材6が配置されて桁本体2に固定されているので、軌道桁1の外観を損ねるのを防止できる。また、連結部材6をエラストマー60で覆っているので、連結部材6の耐候性を確保でき、また、連結部材6を所定の形状に保持することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、桁本体2に台座5を介して着脱自在に取り付けられた案内面継目板4を用いて、桁本体2Aと桁本体2Bとの間に連結部材6を掛け渡していることから、案内面継目板4を台座5に付け替えるという簡単な作業で落下防止装置の着脱を行うことができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、フィンガー部42が継目板本体41よりも肉薄に構成されており、フィンガー部42の延出する継目板本体41の縁部に掛止溝44の端部が位置していても、フィンガー部42の強度を低下させずに済むことから、掛止溝44の形状,形成位置,数量等を、フィンガー部42の形成位置等の影響を受けずに定めることができる。
【0032】
上記実施形態では、案内面継目板4A,4Bの掛止溝44に連結部材6の一端を掛け止めた場合について説明したが、連結部材6を掛け止めるための構成は任意であり、例えば、図5に示す落下防止装置のように構成することもできる。
【0033】
図5は、桁本体2A,2Bが備える台座9A,9Bに案内面継目板8A,8Bを取り付けて構成された落下防止装置を示す図であり、(a)は右側から,(b)は下側から見た図である。また、図6は、軌道桁1Bが前端部に備える案内面継目板8Bを示す図であり、(a)は外側から,(b)は内側から,(c)は下側から見た図である。
【0034】
図5に示す落下防止装置は、桁本体2に備えられた台座9に、案内面継目板8を取り付けて構成されている。桁本体2Bが前端部に備える案内面継目板8Bは、図6に示すように、方形の平板状を呈した継目板本体81の前縁部から、複数のフィンガー部82を延出させた概略形状を有しており、上述した案内面継目板8Bと同様に複数の挿通孔83を備えている。
【0035】
案内面継目板8Bが備える継目板本体81の内面には、案内面継目板4Bの掛止溝44に代えて、継目板本体81を肉薄にして構成された収容部85及び収容部85の底面に突設された掛止突起84が設けられている。収容部85は、隣り合うフィンガー部82の間に位置する継目板本体81の前縁部から、継目板本体81の後方に向けて延びており、前後方向の中央部を窄ませている。
【0036】
掛止突起84は、収容部85の拡幅した後端部に設けられており、収容部85の底面から継目板本体81の内方に向けて延びる円柱状を呈している。収容部85の後端部の内周面と、掛止突起84の外周面との間に形成される溝は、掛止突起84の外周面に沿って環状を呈して延びている。
【0037】
案内面継目板8Bが備えるフィンガー部82は、外面及び内面視で案内面継目板4Bのフィンガー部42と同様の形状を有しているが、先端側にかけて内面を外側に傾斜させて徐々に肉薄に形成されている。最も上側に位置するフィンガー部82は、上側面を継目板本体81の上側面と面一にさせており、先端の下側の角部が外面視で円弧状を呈している。残りの3つのフィンガー部82は、先端の上下の角部が外面視で円弧状を呈しており、略円形の先端形状を有している。
【0038】
図5に示すように、案内面継目板8Bを桁本体2Bに支持する台座9Bは、上記実施形態の台座5Bと同様に、台座本体91,延出片92,ネジ部93,屈曲片94,及びボルト95を備えるが、定着板56,定着棒57に相当する部材は備えていない。軌道桁1Aが後端部に備える案内面継目板8Aは、継目板本体81からのフィンガー部82の延出位置を除いて、軌道桁1Bが前端部に備える案内面継目板8Bと同様の構成を有している。軌道桁1Aが後端部に備える台座9Aは、台座本体91の前縁部に屈曲片94が、後縁部に延出片92がそれぞれ形成されている他は、軌道桁1Bが前端部に備える台座9Bと同様の構成を有している。
【0039】
図5に示すように、案内面継目板8Aと案内面継目板8Bとは、互いのフィンガー部82を噛み合わせるようにして台座9に固定され、桁本体2に取り付けられる。各案内面継目板8は、挿通孔83の縮径部83aをネジ部93が備えるネジ孔93aに向き合わせて継目板本体81を台座本体91に載置され、挿通孔83に外側から挿通されたネジ7がネジ孔93aに螺着されて、桁本体2に固定される。ネジ7は、挿通孔83の拡径部の底面に頭部7aを当接させて挿通孔83に収容される。案内面継目板8Aが備える各収容部85と、案内面継目板8Bが備える各収容部85との間には、収容部85に収容されて掛止突起84に掛け止められて連結部材6が掛け渡されている。連結部材6は、上記実施形態と同様に、エラストマー60で表面を覆われている。
【0040】
案内面継目板8A,8Bを用いて構成された落下防止装置によっても、案内面継目板8Aと案内面継目板8Bとの間に複数の連結部材6を掛け渡し、案内面継目板8A,8Bと台座9との間に連結部材6を配置していることから、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
しかも、隣り合うフィンガー部82間に位置する継目板本体81の前縁部まで端部を延ばした収容部85に連結部材6を収容し、収容部85に突設された掛止突起84に連結部材6を掛け止めることから、フィンガー部82の強度を保ちつつ、地震時の安全性を高めることができる。
【0042】
また、上述した各落下防止装置では、軌道桁1A,1Bの備える全ての案内面継目板4A,4B間及び案内面継目板8A,8B間に連結部材6を掛け渡して落下防止装置を構成した場合について説明した。しかしながら、軌道桁1A,1Bの備える一部の案内面継目板4A,4B間及び8A,8B間に連結部材6を掛け渡して落下防止装置を構成してもよい。
【0043】
また、連結部材6は、必ずしも紐状の部材の端部を接続した環状を呈している必要はなく、例えば、掛止突起84や掛止溝44に掛け止められる端部のみが環状を呈していてもよい。また、連結部材6の表面をエラストマーで被覆する方法は任意であり、エラストマーを加硫接着して被覆してもよい。また、案内面継目板4A,4Bや案内面継目板8A,8Bの形状も任意であり、例えば、フィンガー部42,82の数量は4本には限定されない。
【0044】
また、案内面継目板4A,4Bや案内面継目板8A,8Bに連結部材6を掛け止める掛止部の構成や数量、案内面継目板4Aと案内面継目板4Bとの間に掛け渡される連結部材6の長さや、各掛止溝44に掛け止める連結部材6の本数は任意に設定できる。例えば、長さの異なる複数の連結部材6を掛止溝44に掛け止めて、各連結部材6による張力を段階的に働かせるようにしてもよい。この構成によれば、地震時におけるエネルギー吸収・緩衝能力を効率的に発揮することができる。
【0045】
また、この場合、環の小さな連結部材6の伸度を、環の大きな連結部材6の伸度に比べて大きくしてもよい。各連結部材6が同じ繊維ロープで構成されている場合、伸度が小さな連結部材6は伸度が大きな連結部材6に比べて高い強度を有することから、この構成によれば、環の小さな連結部材6でエネルギーを吸収してから環の大きな連結部材6で軌道桁1A,1B同士の移動を規制することができ、軌道桁1A,1B同士の移動規制時に案内面継目板4や台座5が破損するのを防止しつつ、軌道桁1A,1B同士の変位の拡大を確実に抑えることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、桁本体2A,2Bの案内面2bに取り付けられた案内面継目板4に連結部材6の掛止部が備えられている場合について説明した。しかしながら、図7に示すように、桁本体2A,2Bの下面に取り付けられたソールプレート10A,10Bに、連結部材6の掛止部が備えられていてもよい。
【0047】
図7に示す例では、ソールプレート10A,10Bは、平板状の本体11が定着部12で桁本体2A,2Bに定着されている。本体11の下面には、支承部16A,16Bで支承される被支持部14が設けられている。支承部16A,16Bは、橋脚(不図示)の上面にアンカー15A,15Bで固定されており、支軸17で被支持部14を回転自在に支持している。
【0048】
また、本体11の下面には、連結部材6が掛け止められる掛止部13が備えられている。連結部材6は、ソールプレート10Aの掛止部13とソールプレート10Bの掛止部13との間にタルミを持たせて掛け渡されており、上記実施形態と同様にエラストマー60で覆われている。
【0049】
このような構成でも、桁本体2A,2Bの下面側に連結部材6が架け渡されていることから、軌道桁1の外観を損ねるのを防止しつつ、ソールプレート10や支承部16やアンカー15の破損前に落下防止装置を作動させて、地震時の安全性を高めることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、連結部材6をエラストマー60で覆っている場合について説明したが、連結部材6だけでなく案内面継目板4,8も連結部材6で覆う構成としてもよい。この構成によれば、連結部材6だけでなく案内面継目板4,8もエラストマーで保護することができる。また、例えば、案内面継目板4Aと案内面継目板4Bとが衝突してフィンガー部42が破損した場合でも、エラストマーで覆われたフィンガー部42が継目板本体41から脱落するのを防止することもでき、地震時の安全性をより高めることができる。
【符号の説明】
【0051】
1,1A,1B 軌道桁
2,2A,2B 桁本体
2a 軌道面
2b 案内面
20 間隙
4,4A,4B 案内面継目板
41 継目板本体
42 フィンガー部
43 挿通孔
43a 縮径部
44 掛止溝
5,5A,5B 台座
51 台座本体
51a 貫通孔
52 延出片
53 ネジ部
53a ネジ孔
54 屈曲片
55 定着ボルト
55a 頭部
56 定着板
56a 貫通孔
57 定着棒
57a 頭部
6 連結部材
60 エラストマー
7 ネジ
7a 頭部
8A,8B 案内面継目板
81 継目板本体
82 フィンガー部
83 挿通孔
84 掛止突起
85 収容部
9,9A,9B 台座
10A,10B ソールプレート
11 本体
12 定着部
14 被支持部
13 掛止部
15A,15B アンカー
16A,16B 支承部
17 支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋脚上に支承で支持されて隣り合う軌道桁と端部同士を突き合わせて連結された跨座式
モノレール用軌道桁の落下防止装置であって、
前記端部に設けられた掛止部に、対向する前記軌道桁間にタルミを持たせて掛け渡され
た連結部材を備え、
前記連結部材は、表面をエラストマーで覆われて前記エラストマーと一体化されている
ことを特徴とする跨座式モノレール用軌道桁の落下防止装置。
【請求項2】
前記連結部材は、繊維ロープの端部を互いに編み込むことで環状にエンドレス化して構
成されていることを特徴とする請求項1に記載の跨座式モノレール用軌道桁の落下防止装
置。
【請求項3】
環の大きさの異なる複数の連結部材を、両前記軌道桁間に掛け渡して構成されているこ
とを特徴とする請求項1又は2に記載の跨座式モノレール用軌道桁の落下防止装置。
【請求項4】
環の小さな連結部材の伸度が、環の大きな連結部材の伸度に比べて大きいことを特徴とする請求項3に記載の跨座式モノレール用軌道桁の落下防止装置。
【請求項5】
前記掛止部は、両前記軌道桁の前記端部の両側面に互いに向き合って備えられた一対の
継目板に形成されており、
前記連結部材は、前記側面と前記継目板との間に配置されて前記軌道桁に固定されてい
ることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の跨座式モノレール用軌道桁の落下
防止装置。
【請求項6】
前記継目板は、本体の一縁部から櫛歯状に延出したフィンガー部を、向き合った前記継
目板のフィンガー部と噛み合わせるように配置されており、
前記掛止部は、隣り合う前記フィンガー部間に位置する前記一縁部まで端部を延ばして
前記本体に形成されて前記連結部材を収容する肉薄部と、前記肉薄部に突設されて前記連
結部材の掛け止められる掛止突起とから構成されていることを特徴とする請求項5に記載
の跨座式モノレール用軌道桁の落下防止装置。
【請求項7】
前記継目板は、本体よりも肉薄に構成されて前記本体の一主面側の一縁部から櫛歯状に
延出したフィンガー部を、向き合った前記継目板のフィンガー部と噛み合わせるように配
置されており、
前記掛止部は、前記一縁まで両端を延ばして前記本体の他主面に形成された一本の溝か
ら構成されていることを特徴とする請求項5に記載の跨座式モノレール用軌道桁の落下防
止装置。
【請求項8】
前記掛止部は、両前記軌道桁の前記端部の下面に互いに向き合って備えられた一対のソールプレートに形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の跨座式モノレール用軌道桁の落下防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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