説明

路側無線装置、路側無線通信システム、路側無線通信方法

【課題】 マルチパスやフェージング等による影響を受け難く、かつ、走行車線が多い道路でも良好な通信を行って通信エラーの発生及びサービス低下を抑制する。
【解決手段】 通信エリアが異なる複数のアンテナ素子27a〜27nを備える通信アンテナ部27と、アンテナ素子27a〜27nの1つと接続されて、該アンテナ素子27a〜27nを介して走行車両に搭載された車載端末10と通信する無線部23と、車両が走行するエリアを通信エリアとするアンテナ素子27a〜27nを選択して、該アンテナ素子27a〜27nを無線部23に接続するアンテナ接続制御部22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路側無線装置、路側無線通信システム、路側無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、路側無線通信システムの開発が行われている。この路側無線通信システムは、GPS搭載車両の走行データ(ルート、走行所要時間等)を収集して道路状況データを形成し、形成された道路状況データを車両に送信できるようになっている。
【0003】
例えば、特許第4155045号公報においては、システム側に配置される路側無線装置と車両に搭載される搭載端末を主要構成とし、路肩にアンテナが設置されて、このアンテナを介して路側無線装置と搭載端末とが無線通信する路側無線通信システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4155045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許公報にかかる路側無線通信システムでは、以下のような問題があった。即ち、車両が狭い通信エリアを通過する間に大容量のデータを送受信する必要がある。このためマルチパスやフェージング等が生じ、また走行車線が多い道路では通信エリア内で通信に用いる電波の電界強度に差が生じることがある。そして、これらにより通信エラーが発生したり、正常なサービス提供が行えないことがあった。
【0006】
そこで、本発明の主目的は、マルチパスやフェージング等による影響を受け難く、かつ、走行車線が多い道路でも良好な通信が行うことができて通信エラーの発生及びサービス低下を抑制した路側無線装置、路側無線通信システム、路側無線通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる路側無線装置は、通信エリアが異なる複数のアンテナ素子を備える通信アンテナ部と、アンテナ素子の1つと接続されて、該アンテナ素子を介して走行車両に搭載された車載端末と通信する無線部と、車両が走行するエリアを通信エリアとするアンテナ素子を選択して、該アンテナ素子を無線部に接続するアンテナ接続制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、路側無線通信方法は、複数のアンテナ素子の内の1つを介して走行車両に搭載された車載端末と通信する通信手順と、車両が走行するエリアを通信エリアとするアンテナ素子を選択して、該アンテナ素子を介して車両端末と通信できるようにするアンテナ接続制御手順と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両が走行するエリアを通信エリアとするアンテナ素子を選択して、該アンテナ素子を無線部に接続するので、マルチパスやフェージング等による影響を受け難く、かつ、走行車線が多い道路でも良好な通信を行うことが可能になり、通信エラーの発生及びサービス低下が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる路側無線通信システムのブロック図である。
【図2】第1の実施形態にかかる片側3車線の各車線に複数のエリアを設けた場合の通信エリアの説明図である。
【図3】第1の実施形態にかかる片側3車線の道路に、3車線に跨るエリアを複数設けた場合の通信エリアの説明図である。
【図4】第1の実施形態にかかる片側3車線の道路に、3車線に跨る1つのエリアを設けた場合の通信エリアの説明図である。
【図5】第1の実施形態にかかる路側無線通信システムにおけるアンテナ切替手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる路側無線通信システムにおけるアンテナ切替手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、第1の実施形態にかかる路側無線通信システム2のブロック図である。路側無線通信システム2は、車両3に搭載された車載端末10と、路側無線装置20とを備える。また、路側無線装置20は、アンテナ部21、アンテナ接続制御部22、無線部23、制御部24、外部インタフェース25を備える。
【0012】
車載端末10と路側無線装置20とは、無線通信により、プローブ情報及び交通情報の送受信を行う。そして、プローブ情報は、検出アンテナ部26を介して、片方向通信により車載端末10から路側無線装置20に送信される。交通情報は、通信アンテナ部27を介して、双方向通信により車載端末10と路側無線装置20との間で送受信される。
【0013】
なお、このプローブ情報は、GPSを搭載した車両3が通信相手を求める信号で、車両3から常時出力されている。また、交通情報は、車両3の走行履歴に関する情報(車両3の位置、速度、その他の車両制御等に関する情報)、道路状況情報(渋滞情報、所要時間情報、道路誘導情報等に関する情報)、車載端末10が受信した電波の強度を示す電界強度情報である。そして、路側無線通信システム2がプローブ情報を取得することにより、通信を求めている車両3を検出する。これにより、車載端末10と路側無線装置20とは、双方向通信により交通情報を送受信する。
【0014】
アンテナ部21は、検出アンテナ部26と通信アンテナ部27とで構成される。検出アンテナ部26は、1つのアンテナ素子を含み、通信アンテナ部27は、仰角、方位角が異なる複数のアンテナ素子27a〜27nを含んでいる。
【0015】
図2は、片側3車線の道路を想定した場合における、検出アンテナ部26の検出エリアR、及び、通信アンテナ部27の通信エリアR1a〜R1c、R2a〜R2c、R3a〜R3cを示した図である。検出エリアRは、全車線をカバーするように設定されて、車両3は矢印Dの方向に走行する。
【0016】
但し、図2においては、一車線に3つの通信エリアが設けられている場合を示しているが、これは通信アンテナ部27が3つのアンテナ素子27a,27b,27cにより構成されている場合に対応させているためである。即ち、図2の通信エリアの数は、通信アンテナ部27のアンテナ素子数に対応している。しかし、本発明は、通信エリアの数や配置を限定するものではない。例えば、図3及び図4に示すような構成であっても良い。図3は、各通信エリアRka〜Rkcは、全車線をカバーするように、各通信アンテナに対応して設けられている場合を示している。また、図4、1つの通信エリアRtが設けられた場合を示している。以下、図2を例に説明する。
【0017】
なお、車両の検出待ちの状態においては、図2において検出エリアに最も近い通信エリアに対して設定されているアンテナ素子27aが無線部と接続されている。そして、後述するアンテナ選択手順に従い、他のアンテナ素子が選択されて無線部に接続される。
【0018】
無線部23は、通信アンテナ部27を介して交通情報を送受信するために、最も電界強度の高い信号により通信できるように車載端末10とデータの送受信を行うための通信制御を行う。
【0019】
アンテナ接続制御部22は、検出アンテナ部26を介して無線部23から電界強度情報を受信する。そして、アンテナ接続制御部22は、この電界強度情報に基づき無線部23と接続する最適なアンテナ素子27a〜27nの1つを判断して、選択する。これにより選択されたアンテナ素子は、無線部23と接続されて、選択されたアンテナ素子を介して車載端末10と交通情報の送受信が行われる。
【0020】
外部インタフェース25は、車載端末10に交通情報等の各種の情報提供する外部上位装置4とのインタフェースを行う。制御部24は、無線部23及び外部インタフェース25の制御を行う。
【0021】
次に、上述した路側無線通信システム2におけるアンテナ切替手順を図5に示すフローチャートに従い説明する。なお、車両3は図2に示す車線を走行するとする。
【0022】
車載端末10は、車両3の走行ルート、混雑情報、所要時間等を記録すると共に、プローブ情報を出力している。また路側無線装置20は、検出アンテナ部26を介して車両3の検出を行っている。
【0023】
このような状況において、車両3が検知エリアRに進入すると、この車両3から出力されているプローブ情報が検出アンテナ部26を介して無線部23で検知される(ステップSA1)。
【0024】
プローブ情報が検出されると、無線部23は通信アンテナ部27のアンテナ素子27aを介して交通情報の送受信を開始する(ステップSA2)。このとき、無線部は車載端末から送信された交通情報を制御部に出力する。制御部は外部インタフェースを制御して、外部上位装置(例えば、交通情報センタ等)に取得した交通情報を出力する。外部上位装置は、交通情報を解析して、道路状況を更新等する。また、制御部は、この外部上位装置から登録されている道路状況等の情報を取得し、無線部に出力する。無線部は、現在接続されているアンテナ素子を介して車載端末に送信する。
【0025】
その後、無線部は、車載端末10からの電界強度情報の受信待ちとなる(ステップSA3)。
【0026】
電界強度情報が受信されると、無線部23は受信した電界強度情報をアンテナ接続制御部22に転送する。アンテナ接続制御部22は受信した電界強度情報から、車両3が位置する通信エリアを判断する。例えば、図2において車両が通信エリアR1aから通信エリアR1bに移動した場合を考える。このとき、アンテナ素子27aが無線部に接続されているので、通信エリアR1aから通信エリアR1bに車両が移動するに従い、車載端末の受信する電波の電界強度は弱くなる。そこで、アンテナ接続制御部22は、車両3は車両が通信エリアR1bに進入したと判断して、この通信エリアR1bをカバーするアンテナ素子27bを選択して切替える(ステップSA4)。
【0027】
先にも説明したように、車両3の搭載端末は、現時点までの走行ルートや所要時間等の走行履歴情報を路側無線通信システム2に送信し、また道路状況等の道路状況情報を路側無線通信システム2から受信する。これらの交通情報はデータ量が多いため、車両3が1つの通信エリアを走行している間に送受信することができない場合がある。そこで、無線部23は交通情報の送受信が完了したか否かを判断する(ステップSA5)。交通情報の送受信の完了は、例えば車載端末からの走行履歴情報の受信後に道路状況情報を送信することで判断できる。即ち、道路状況情報の送信が完了すると、交通情報の送受信が完了したと判断できる。交通情報の送受信が完了すると、処理は終了する。一方、交通情報の通信が魅了の場合には、ステップSA2に戻り、通信を継続する。
【0028】
このように、複数のアンテナ素子により車線上に複数の通信エリアが形成され、最も大きい電界強度で通信が行えるように、各アンテナ素子を切り替えるので、通信結果に対する信頼性が向上する。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成に関しては同一符号を用いて説明を適宜省略する。第1の実施形態においては、電界強度に基づき通信アンテナ部のアンテナ素子を切り替えることにより、常に最適な通信状態で送受信が行えるようにした。これに対して、本実施形態では、電界強度情報の変化量から車両速度を演算してアンテナ素子の切替を行うようにした。
【0029】
図6は、このような場合のアンテナ切替手順を示すフローチャートである。車載端末は、所定時間でプローブ情報を出力する。そこで、無線部がプローブ情報を検出すると(ステップSB1)、交通情報の送受信が開始される(ステップSB2)。その後、アンテナ接続制御部は、無線部を介して電界強度情報を受信する。このとき、所定の時間間隔で電界強度情報を複数回受信する。そして、電界強度の変化量と時間間隔から車両速度を演算する(ステップSB3,SB4)。
【0030】
複数の通信エリアの間の距離が予め解っているので、アンテナ接続制御部は、車両速度とプローブ情報を検出してから現在までの時間から車両の位置を演算して、車両が隣接する通信エリアに進入したか否かを判断する(ステップSB5)。
【0031】
隣接する通信エリアに進入したと判断した場合には、アンテナ素子を切替る(ステップSB6)。そして交通情報の送受信が完了したか否かを判断し(ステップSB7)、未了の場合にはステップSB2に戻り交通情報の送受信を継続する。
【0032】
一方、交通情報の送受信が完了したと判断した場合には、通信終了となり(ステップSB8)、アンテナ素子切替手順が終了する。以上により、車両速度に基づきアンテナ素子の切替が行うことができて、通信結果に対する信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0033】
2 路側無線通信システム
3 車両
4 外部上位装置
10 車載端末
20 路側無線装置
21 アンテナ部
22 アンテナ接続制御部
23 無線部
24 制御部
25 外部インタフェース
26 検出アンテナ部
27 通信アンテナ部
27a〜27n アンテナ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信エリアが異なる複数のアンテナ素子を備える通信アンテナ部と、
前記アンテナ素子の1つと接続されて、該アンテナ素子を介して走行車両に搭載された車載端末と通信する無線部と、
車両が走行するエリアを前記通信エリアとする前記アンテナ素子を選択して、該アンテナ素子を前記無線部に接続するアンテナ接続制御部と、を備えることを特徴とする路側無線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の路側無線装置であって、
前記車載端末は、前記通信アンテナ部を介して受信した電波の電界強度を示す電界強度情報を、当該通信アンテナ部を介して前記無線部に送信することを特徴とする路側無線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の路側無線装置であって、
前記アンテナ接続制御部は、前記無線部を介して前記電界強度情報を受信して、電界強度が最も大きくなる前記アンテナ素子を選択して前記無線部と接続することを特徴とする路側無線装置。
【請求項4】
請求項2に記載の路側無線装置であって、
前記アンテナ接続制御部は、前記無線部を介して前記電界強度情報を受信し、該電界強度情報に基づき前記車両の走行速度を演算して、当該車両の位置に対応するエリアを通信エリアとする前記アンテナ素子を選択して前記無線部と接続することを特徴とする路側無線装置。
【請求項5】
交通情報を管理する外部上位装置と、
請求項1〜4に記載の路側無線装置と、を備えて、
前記路側無線装置が前記車載端末と通信して、前記車両の走行履歴情報を受信して前記外部上位装置に出力すると共に、当該外部上位装置から交通情報を取得して前記車載端末に送信することを特徴とする路側無線通信システム。
【請求項6】
複数の前記アンテナ素子の内の1つを介して走行車両に搭載された車載端末と通信する通信手順と、
車両が走行するエリアを前記通信エリアとする前記アンテナ素子を選択して、該アンテナ素子を介して前記車両端末と通信できるようにするアンテナ接続制御手順と、を含むことを特徴とする路側無線通信方法
【請求項7】
請求項6に記載の路側無線通信方法であって、
前記車載端末が受信した電波の電界強度を示す電界強度情報を送信する手順を含むことを特徴とする路側無線通信方法。
【請求項8】
請求項7に記載の路側無線通信方法であって、
前記電界強度情報を受信して、電界強度が最も大きくなる前記アンテナ素子を選択する手順を含むことを特徴とする路側無線通信方法。
【請求項9】
請求項7に記載の路側無線通信方法であって、
前記電界強度情報に基づき前記車両の走行速度を演算する手順と、
演算された前記車両の走行速度に基づき、当該車両が位置するエリアを通信エリアとする前記アンテナ素子を選択する手順と、を含むことを特徴とする路側無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−147102(P2012−147102A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2108(P2011−2108)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】