説明

路面を塗布するシステム及び方法

【課題】より高品質の作製路面をより確実に得られるように、路面を塗布する既知のシステム及び方法を改善する。
【解決手段】路面を塗布するシステムは、1つ又は複数の調整パラメタを其々有する複数の操作部品9と、そこから調整パラメタを操作部品9に伝達する開ループ制御装置17を備える。本発明によるシステムは、測定量22を考慮に入れて、少なくとも1つの指定した目標値26を得るために、最適調整パラメタ18を決定し、複数の最適調整パラメタ18を提示する命令データセットを生成し、複数の最適調整パラメタ18を提示する当該命令データセットを開ループ制御装置17に伝達するように構成する閉ループ制御システム25を特徴とする。また、本発明は、路面を塗布するシステム、特に道路仕上げ機を制御する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本願請求項1の前提部分に記載のシステム、及び本願請求項7の前提部分に記載の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路、路地、空地にアスファルトを施工及び塗布するのは、極めて複雑な処理である。この処理中、作業結果、即ち作製した路面の品質は、機械の調整だけでなく、例えば敷設用混合物(例えばアスファルト)の特性や周囲条件によっても決まる。これら全てのパラメタが合わさって、どのような品質、例えば平滑性を路面が実際に有するかが決まってくる。
【0003】
これまで、機械オペレータが、機械に関する調整パラメタを定義してきた。これを行う際に、オペレータは自分の仕事を、境界又は敷設条件を有効とすること又は修正すること、−及び自分の経験にあわせるように行ってきた。関連する機械を扱う際に熟練して経験が豊富な機械オペレータ程、作製する路面の品質が高くなる。しかしながら、一方で機械オペレータの経験が浅い場合、又は以前に扱ったことがない境界条件に遭遇した場合には、この品質も極めて低くなる可能性がある。
【0004】
それほどオペレータの経験に依存せずに、どう機械の調整を行えるかについて、既に幾つかの提案がなされている。例えば、一般的なものとして、欧州特許公開第EP1644354A2号では、有利な運転パラメタ設定用に以前の経験値を保存し、後で機械の基本設定として該経験値を再度使用することが提案されている。この基本設定から始めれば、オペレータは機械の微調整のみを行えばよい。
【0005】
独国特許公報第DE4040029C1号では、道路建設機械用締め固め装置の駆動部の振動数を、所定敷設速度及び敷設する層の所定パラメタに依存して設定することが提案されている。ここでは、敷設速度の時間的経過に従う設定点曲線が指定されている。
【0006】
国際公開第WO00/70150A1号及び独国特許公開第DE102008058481A1号では、作製したばかりの路面の温度を適当なセンサを使用して測定し、測定温度に応じて道路仕上げ機又は付随する締め固め機械を制御することを、提案している。
【0007】
更にまた、道路建設機械のマルチチャンネル制御システムが、独国特許修正公報第DE19537691C5号から知られている。しかしながら、この制御はスムージングバーの温度を測定して、その温度を加熱要素が不具合になった場合でも一定に維持することだけに関与する。他の調整又は敷設パラメタを用いたフィードバックは行われない。
【0008】
最後に、米国特許出願公開第US2004/0260504A1号では、敷設混合物の特性を判定するシステムについて記載されている。しかしながら、これらの特性は道路建設機械の制御に対しては使用されず、品質管理のみに使用されている。
【0009】
本発明の目的は、より高品質の作製路面をより確実に得られるように、路面を塗布する既知のシステム及び方法を改善することである。
【0010】
この目的を、本願請求項1の特徴を有するシステム及び本願請求項7の特徴を有する方法によって解決する。本発明の有利な更なる技術成果については、従属請求項で説明している。
【0011】
本発明による路面を塗布するシステムは、測定量を考慮に入れて、少なくとも1つの指定した目標値を得るように、最適調整パラメタを決定し、複数の最適調整パラメタを提示する命令データセットを生成し、この命令データセットを開ループ制御装置に伝達するように適合された制御装置、好適には閉ループ制御システムを有する。この構成により様々な利点が生じる。
【0012】
−ユーザにとっての、本システムの主な利点は、自分の経験に基づいて機械の操作部品の個々の調整パラメタ、例えばスクリードの傾斜や温度又はタンパ片の振動数を設定する必要がなくなる点である。その代わり、ユーザは、被塗布路面に関する目標値を、端末、データインタフェース又はデータ媒体を使用して、本システムに入力する。これらの目標値(同義語:処理変数)は、得るべき作業結果、即ち作製する路面の記述に関連する。そのため、これらの目標値は、例えば、作製する路面の長さ、幅、勾配、進路等の建設現場データ、又は路面の連続した層についての、個々の層の厚さ等の情報も、含んでも良い。従って、ユーザは、直ちに作業結果を指定でき、その結果、システムが最適調整パラメタを決定し、必要に応じて該パラメタを再調整するという確信を持てる。
【0013】
−通常目標値の個数は調整パラメタよりかなり少ないため、目標値の入力は、個々の調整パラメタの設定をユーザが実行しなければならない場合より迅速に行える。更に、調整パラメタを様々な周囲条件に適合させる手間が不要になる。これら両方の結果、システムを操作する手間が軽減され、従って費用が節約できる。
【0014】
−本発明によるシステムでは、開ループ制御装置から閉ループ制御装置を分離できる。開ループ制御装置は、対応する調整パラメタをシステム操作部品が受付けられるように、指定した命令又は操作変数を実装するタスクを有する。対照的に、閉ループ制御装置を、最適操作変数又は調整パラメタを求めるために使用する。こうして分離することで、開ループ制御装置による調整パラメタの適合が、調整パラメタを最適化し、必要に応じて検査した場合にのみ行われるという利点がある。その結果、システムの操作部品を調整する頻度が少なくなり、一層均等な作業結果に繋がる。
【0015】
−本発明によると、複数の調整パラメタを、閉ループ制御装置によって統合すると共に、ベクトル又は命令データセットで、開ループ制御装置に伝達する。このように命令データセットを統合してブロック又はベクトルにすることを用いて、命令データを伝送するのに必要なエネルギを低減できる。
【0016】
好適には、閉ループ制御装置は、コントローラブロック及び該ブロックに接続したシミュレーションブロックを備える。コントローラブロックは、新たな調整パラメタのセットに関する提案を生成し、該提案は次にシミュレーションブロックに渡される。シミュレーションブロックは、コントローラブロックが提案した調整パラメタを用いて、どのような作業結果が得られるかをシミュレーションする。次に、このシミュレーションした作業結果を、指定した目標作業結果と比較できる。必要であれば、提案された調整パラメタを再度適合させる。
【0017】
好適には、閉ループ制御装置は、特にそのシミュレーションブロックでは、調整パラメタ群から生じた少なくとも1つの目標値の値をシミュレーションするニューラルネットワークを含む。この種のニューラルネットワークは、特に、路面塗布中の複雑な操作環境に適しており、該環境では、殆ど全ての調整パラメタが、複雑で相互依存的な関係で存在するので、1つの調整パラメタを変更すると、他の多数の量についても変更が生じる場合がある。しかしながら、ニューラルネットワークの代わりに、他の類似のアルゴリズムも使用できる。
【0018】
好適には、本システム自体が、ミキサ、現場局、及び/又は互いに相対的に可動な複数の機械、例えば、それら自体で其々1つ又は複数の操作部品を有してもよいトラック、カッタ、ローダ、仕上げ機及び/又はローラを有することができる。
【0019】
測定量を取得するためにセンサを備え、及び、これらのセンサが、自己が取得した測定量を閉ループ制御装置に渡すようにすれば、特に有利である。
【0020】
また、本発明は、路面を塗布する装置又はシステム、特に道路仕上げ機、を制御する方法にも関する。この方法では、閉ループ制御装置において、測定量及び少なくとも1つの指定した目標値からこの少なくとも1つの目標値を得るように最適調整パラメタの群を決定して、該調整パラメタ群を閉ループ制御装置から、共通命令データセットで開ループ制御装置に伝達する。
【0021】
少なくとも1つの目標値を得るための最適調整パラメタの決定を該装置の運転時に繰り返し実行すると、好都合である。このように、調整パラメタの検査を連続して、少なくとも繰り返して実行し、必要であれば、最適な作業結果を達成するために、変化する周囲条件に設定を適合させることもできる。作業結果を目標値で定めた仕様に出来るだけ近づけると、作業結果は最適となる。
【0022】
少なくとも1つの目標値を得るために最適調整パラメタを更新する決定を、測定量が所定量だけ目標値から逸れた場合、及び/又は所定時間間隔が過ぎる毎に、装置の操作中常に実行してもよい。後者は、最適化の更新実行が個々の測定量の決定とは無関係となるため、例えば個々のセンサの不具合とも無関係になるという利点がある。
【0023】
好適には、閉ループ制御装置において、最適調整パラメタを決定するために、調整パラメタ群を使用してシミュレーションを実行して、少なくとも1つの目標値のどの値を、これらの調整パラメタで生成するかを決定できる。こうした目標値又は処理結果のシミュレーションにより、どの程度良好に指定した目標値を得られるかについて、容易に結論を得られる。これから、どの調整パラメタが依然として改善する必要があるかを導き出せる。
【0024】
本発明による方法の「最適」については、かかる調整パラメタについて、これらの調整パラメタを用いてシミュレーションで生成した少なくとも1つの目標値が、該少なくとも1つの目標値の指定した許容差内にある場合、と定義できる。例えば、作製する路面の幅が、指定した目標値から+/−2センチメートル逸脱してもよいと、指定できる。次のシミュレーション又は新たな調整パラメタ群に対する提案では、既に「最適」として決定した調整パラメタを保持できる、或いは、しかしながら、既に「最適」として定義した調整パラメタを検査し、必要であれば、修正した新たな調整パラメタ群に対する提案に従ってもよい。
【0025】
同様に、好適には閉ループ制御装置においても、修正した調整パラメタ群を繰り返し定義でき、これらの修正調整パラメタを用いて、修正調整パラメタで生成した少なくとも1つの目標値に関する値のシミュレーションを実行できる。この繰り返しシミュレーションは、装置の運転中に、調整パラメタを絶えず適合及び最適化できるという利点がある。シミュレーション中に生成した少なくとも1つの目標値に関する値が該少なくとも1つの目標値の指定した許容差内になるまで、繰り返し処理を実行することが考えられる。シミュレーション中全ての目標値を指定した許容差内で取得できると、調整パラメタ群全体を「最適」と見なして、保持できる。
【0026】
指定した目標値を達成できるか否かを、オペレータに示すと、好都合である。こうすれば、オペレータに、所望の作業結果を得られない場合又は少なくとも指定した許容差内ではない場合即座に知らせることができる。これにより、オペレータが目標値の仕様を検査して、必要ならば、目標値を得るために適当な対策を準備できる。
【0027】
調整パラメタ群を、「最適」であるとして認識すると、当該群を、共通ベクトル又は命令データセットで閉ループ制御装置から開ループ制御装置に伝達し、その後直ぐに、開ループ制御装置は、個々の操作部品を指定した調整パラメタへ適合させる。ここでは、全ての可能な調節パラメタの全命令データセットを常に開ループ制御装置に伝達すると考える。しかしながら、変化する調整パラメタだけを開ループ制御装置に伝送すれば、命令データセットの伝送に関する誤りを減少できる。命令データセットで、その後、どの調整パラメタを修正すべきかが命令データセットで開ループ制御装置に知らされる。
【0028】
以下では、本発明の有利な実施形態について、以下に示す図面に基づいてより詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明によるシステムの略構造図。
【図2】本発明によるシステム内の機能部品を表した略図。
【0030】
図面中、同一部品については、全図面を通して同じ参照番号を付している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1では、路面を塗布する本発明によるシステム1について略図で説明している。このシステム1は、道路工事現場又は機械に設置され、或いは外部に設置され、現場局2又は中央の現場事務所2を備えて現場での操作手順を連係させる。また、システム1の一部を、アスファルト設備又は混合設備3、及び該混合設備3と道路工事現場との間で及び/又は道路工事現場で移動可能な複数の機械によって形成する。この機械は、敷設混合物を輸送するトラック4、カッタ5、ローダ6、道路仕上げ機7、締め固めローラ8としてもよい。これら機械の幾つか、又は混合設備3も、本発明によるシステム1では省略してもよく、或いは複数の混合設備3及び/又は特定種類の複数の機械4〜8を存在させてもよい。
【0032】
混合設備3と各機械4〜8は、1つ又は複数の操作部品9を有し、その操作原理又は調整手段は、1つ又は複数の調整パラメタによって決定される。混合設備3では、操作部品9は、例えば敷設混合物を作製する搬送スクリュ4、ミキサ又は加熱装置を含んでもよい。 可動操作部品4〜8では、操作部品は、制御部等の関連機械の駆動部を含んでもよい。トラック4では、更なる操作部品を、積載領域を傾斜させる昇降機構としてもよい。道路仕上げ機7では、操作部品9を、敷設混合物を材料バンカからスクリードまで輸送するコンベアの駆動部に含む。他の操作部品9を、例えばスクリード、押圧片、及び/又は取付角、振動又は揺動を調整できる所謂「タンパ」の他、加熱装置とする。
【0033】
現場局2と混合設備3との間、及び、現場局2と各機械4〜8との間、には、無線データ伝送用チャネル10を存在させる。現場局2、混合設備3、機械4〜8其々には、データ伝送チャネル10に対して利用可能な適当なインタフェースを有する。更なる無線データ伝送チャネル11を、個別の機械6、7、8との間に確立できる。データ伝送チャネル10、11を、例えば、無線リンクとして、赤外線リンクとして、インターネットリンクとして、又は衛星を介して確立できる。
【0034】
図1で説明したシステム1は、携帯式、或いはデータ伝送チャネル13を介して現場局2にリンクできる、例えばラップトップ又はPDAといった、入手可能な入出力装置12も有している。更に、現場局2を、同様なデータ伝送チャネル13を介して、例えば建築又は設計事務所の外部装置14にリンクできる。
【0035】
例えば、キーボード、CD又はDVDドライブ又はメモリカードインタフェースといった入力装置15を、現場局2に設ける。この現場局2にある入力装置15で、作製する路面に関する目標値、例えば、路面の進路及び幅、所望する路面の締め固め程度、敷設厚さ、平坦性及び/又は表面性状を、入力できる。更にまた、ディスプレイ装置16、例えばモニタを現場局2に設けて、該装置で、システム1内から得た入力目標値及び測定量を図示したり、深刻な状況の間システム1のオペレータに警告情報を提示したりする。
【0036】
図1では本発明によるシステム1の構造用部品について説明しているが、図2ではシステム1の機能部品の他、システム1内で伝送するデータについても説明している。(後者は平行四辺形で表す。)
【0037】
図2で説明したように、システム1は、開ループ制御装置17を備える。開ループ制御装置は、操作変数又は調整パラメタ18の仕様uを受取り、それらを機械命令に変換し、個々の操作部品9に分散し、それにより操作部品9を指定した調整パラメタ18に従い調整するタスクを有する。様々な操作部品9の調整と操作から、実際に稼働中の操作処理又は敷設処理19全てを生成する。作製する路面を、この敷設処理19で提供する。敷設処理19は、操作部品9の調整によってだけでなく、例えば、周囲温度、風又は影等の外乱変数の影響によっても、決まる。
【0038】
システム1は、測定量22を取得する複数のセンサ(図示せず)を有する。これらの測定量は、例えば、スクリードの取付角、既に敷設した路面の一部の敷設厚さ又はアスファルト温度、地盤剛性、それに由来する量(加速度)又は敷設アスファルトの測定された密度に関してもよい。
【0039】
測定量22の群yを、出力フィードバック23、24を介して、閉ループ制御システム25に渡すが、該システムの機能は、調整パラメタの最適化によって、敷設処理19を最適化することとする。また、閉ループ制御装置25は、適当なインタフェースを介して、達成する作業結果、即ち作製する路面の特性を定義する目標値26を受取る。これらの目標値26を、例えば、路面の敷設厚さ、スクリードの取付角又は所望する敷設アスファルト厚さとしてもよい。目標値26を、例えば、モバイル情報端末12から、設計事務所14から、又は入力装置15を介して、システム1に入力できる。
【0040】
目標値z、26、及び測定量y、22に加えて、閉ループ制御装置25は、外部から取得し、データ伝送チャネル10、11、13を介して受信機28に伝達された外部データ27を、受取る。これらの外部データ27を、例えば、外部値としてもよく、例えば、Troxierプローブで決定したアスファルト密度、又はローラ8で決定したアスファルト密度の外部値としてもよい。これらの密度値又は他のデータ27を、受信機28によって直接閉ループ制御装置25に提供する。
【0041】
受信機28で既に受信した外部データの第2群27’を、まずモデル化装置29に渡す。この外部データ群27’を、例えば、配達用トラック4の位置、アスファルト温度、混合方法及び混合量についての情報、即ち位置及び材料データとしてもよい。モデル化装置29では、これらの位置及び材料データ27’を、例えば、周囲温度、地温、風向き、風速、太陽放射の強さ及び方向を反映する周囲データ30と結合させる。周囲データ30と位置及び材料データ27’から、モデル化装置29は敷設混合物のコア温度に関する値T_coreを計算する。路面の中心部には直接温度測定するために接近できないため、この温度は計算によってのみ決定できる。ここでは、モデル化装置29については、論文、「道路工事におけるアスファルト混合物の締め固めのためのコア温度予測の利用(Use of core temperature prediction for the compaction of asphalt mixture in road construction)」(ドイツ語原題:“Nutzung der Kerntemperaturvorhersage zur Verdichtung von Asphaltmischgut im Strassenbau”)、ジェイ.ヴェンデバウム(J.Wendebaum)、カールスルーエ大学(University of Karlsruhe)、2004年7月のものを、適用する。
【0042】
最後に、幾つかの定数31を更なるデータとして閉ループ制御装置25に入力する。これらの定数31を、敷設処理中一定のままとなる値、例えば、スクリード幅、道路仕上げ機7のスクリードの質量、又は機械4〜8の幾何学的境界条件とする。
【0043】
閉ループ制御装置25は、シミュレーションブロック33及びコントローラブロック34を備える。コントローラブロック34を、適応閉ループ制御装置として設計できる。測定量y、22と、目標値z、26と、シミュレーションブロック33でシミュレーションしたシミュレーション処理変数y*に基づいて、適応閉ループ制御装置は、1組の新たな調整量u*に関する提案を生成できる。この新調整パラメタu*に関する提案を、シミュレーションブロック33に伝達する。
【0044】
シミュレーションブロック33を、コントローラブロック34が提案する調整パラメタu*及び測定量y、22、定数31、外部データ27、及びモデル化装置29がモデル化した値に基づいて、処理変数y*をシミュレーションするように構成する。このシミュレーションにより、コントローラブロック34が提案する調整パラメタu*で、一般的な境界条件下で達成され得る作業結果を予測する。ニューラルネットワークの形でシミュレーションブロック33を実行できる。或いはまた、分散分析からの線形又は非線形モデル又はアルゴリズムを、シミュレーションブロック33で実行してもよい。
【0045】
図2で説明するシステム1は、伝送インタフェース36も有する。閉ループ制御装置25によって、出力データ37をこの伝送インタフェース36で使用可能にして、出力データ37を伝送インタフェース36からシステム1の他の構成要素まで伝達可能にする。出力データ37を、例えば、計算した若しくはシミュレーションしたアスファルト密度又はアスファルトのコア温度、システムの個々の機械4〜8の位置、機械4〜8用補助及び操作部材の要件に関する予測、混合設備3が必要とする敷設混合物の量若しくは組成等としてもよい。
【0046】
各機械4〜8及び混合設備3にも、システム1において機械識別子を割り当てられる。この機械識別子を、システム1の個々の構成要素間の無線通信中に、送受信機械を識別するのに使用する。
【0047】
図2では、システム1で伝達する全データ又は量を、平行四辺形で表す。これらのデータ又は量(定数31は別として)を、場所及び/又は時間に依存させて決めてもよい点に注意すべきである。
【0048】
以下では、本発明の方法の手順又は路面を塗布する本発明のシステム1の操作について説明する。
【0049】
操作処理の開始には、必要な作業結果、例えば塗布する路面の厚さ及び進路の他、それに必要な締め固めを定義する目標値26を、システムに入力する。更に、許容差範囲を、個々の目標値26に対して指定する。この許容差範囲内で、作業結果を「満足できる」又は「最適である」として評価する。
【0050】
目標値z、26、及び其々の許容差範囲をコントローラブロック34に渡す。既に使用可能な測定量y、22を考慮に入れて、適応閉ループ制御装置34は、システム1の操作部品9用調整パラメタのセットu*を提案する。この調整パラメタu*の提案を、シミュレーションブロック33に使用可能にする。シミュレーションブロック33は、どのような処理結果y*が提案した調整パラメタu*で出るかをシミュレーションする。このシミュレーションした処理結果y*を、今度は、適応閉ループ制御装置34に渡し、該装置で目標値z、26と比較する。シミュレーションした処理結果y*が個々の目標値26に対する許容差範囲内にあれば、提案した調整パラメタの群u*を「最適」と定義する。これらの「最適」調整パラメタから、コントローラブロック34は、ベクトルとして適応閉ループ制御装置34が開ループ制御装置17に伝達する命令データセットuを構成する。ベクトル又は命令データセットu内の操作変数又は調整パラメタ18は、例えば以下の設定を含んでもよい。タンパ回転速度、タンパストローク、タンパ振動の周波数、振動の偏心質量、振動の偏心度、押圧片の周波数、押圧片の圧力、コンベアの回転速度、搬送コンベヤの回転速度、及び/又は敷設速度(制御機械を道路仕上げ機7とする場合)。
【0051】
対照的に、適応閉ループ制御装置34において、シミュレーションした処理変数y*が目標値26の、又は少なくとも1つの目標値26の許容差範囲外にあると認められた場合は、コントローラブロック34は、指定した目標値26に近づけるように調整パラメタを適合させる。その結果生じた新たな調整パラメタu*の提案を、次に、それから生じる処理変数y*をここでシミュレーションするために、シミュレーションブロック33に渡す。この処理を、調整パラメタの全群が「最適」と見なされるまで、或いは、指定したキャンセル基準に達するまで、繰り返す。この種のキャンセル基準では、閉ループ制御装置25内部で閉ループ制御回路が10の代替案を実行した後に、シミュレーション処理のキャンセルに関するメッセージを、伝送インタフェース36を介して、オペレータに出力できる。
【0052】
「最適」操作変数又は調整パラメタ18のベクトルuを、開ループ制御装置17に伝達する。開ループ制御装置17は、指定した操作変数を機械命令に変換して、該機械命令を操作部品9に伝達して、指定したパラメタに応じてそれらを調整する。
【0053】
敷設処理19中、測定量22を取得し、出力フィードバック23、24を介して、コントローラブロック34又はシミュレーションブロック33に渡す。同時に、シミュレーションブロック33は、周囲データ30及び、位置及び材料データ27’から生成したモデル化装置29からの予測値を受取る。
【0054】
閉ループ制御装置25では、処理変数y*の繰り返しシミュレーションを、連続的又はその都度指定した時間間隔後に実行して、新たな調整量を指定する。これらを開ループ制御装置17に渡す前に、提案した調整量u*をシミュレーションブロック33に渡して、処理結果y*を該調整量で生成して予測する。これにより、修正した調整量で良好な作業結果を実際に得られることがシミュレーションにより示されると、該調整量を機械に適合させるよう実行するだけでよいという効果を提供する。
【0055】
システムの操作中、特定の出力データ37を伝送インタフェース36を介してシステム1の他の構成要素に利用可能にできる。同時に、外部データを、受信機28を介して供給できる。
【0056】
本発明によるシステム1の1実施形態では、図2で説明する全ての構成要素を1つの機械、例えば道路仕上げ機7に配置する。インタフェース28、36を使用して、道路仕上げ機7はシステム1の他の構成要素2、3〜6、8、12、14とやり取りする。
【0057】
別の実施形態では、図2で説明した構成要素の、開ループ制御装置17と操作部品9だけを、関連する機械3〜8に配置する。システムの他の部分を、例えば、現場局2に配設する。また、この実施形態の閉ループ制御装置25も現場局2に配置するであろう。この場合、命令データセットu、即ち、操作変数又は調整パラメタ18のベクトルは、閉ループ制御装置25(現場局2の)からチャネル10を介して開ループ制御装置17(関連機械3〜8の)に伝達されることになる。
【0058】
図示した実施形態から始まり、本発明によるシステム1及び本発明による方法は、路面を塗布するために様々に修正できる。勿論、ここでは、選択する目標値及び設定する調整パラメタ18を、関連する操作部品9の構成によって決めてもよい。
【0059】
本発明によるシステムは、オペレータは個々の調整パラメタ18ではなく、敷設処理用目標値26を指定するだけでよいという利点を提供する。これらの調整パラメタ18を、システム1で自動的に決定して、連続的に最適化する。図2では、本発明によるシステム1の制御を、閉ループ制御回路で操作することを示している。シミュレーションを使用して、新たに提案した操作変数u*の作用を予測して、実際の調整パラメタを最適化する。
【0060】
目標値26の入力中に、シミュレーションを既に行えるものと考えられる。その際、後で入力した目標値を、前に入力した目標値で依然として得られる特定範囲の値である場合のみこれを許容可能にする。更に、その際オペレータには、入力した目標値が既存の機械で得られないため、現実的なものでないなら、フィードバックを提供できる。その結果、オペレータは、入力した目標値26を再度チェックする機会を有することになる。
【符号の説明】
【0061】
1 システム
9 操作部品
17 開ループ制御装置
18 最適調整パラメタ
25 閉ループ制御装置
26 目標値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を塗布するシステム(1)であり、前記システム(1)は1つ又は複数の調整パラメタを其々備える複数の操作部品(9)を有し、前記システム(1)は、そこから前記調整パラメタを前記操作部品(9)に伝達する開ループ制御装置(17)を有するシステム(1)であって、前記システム(1)は、測定量(22)を考慮に入れて、少なくとも1つの指定した目標値(26)を達成するように、最適調整パラメタ(18)を決定し、複数の最適調整パラメタ(18)を提示する命令データセット(u)を生成し、複数の最適調整パラメタ(18)を提示する前記命令データセット(u)を前記開ループ制御装置(17)に伝達するよう適合する、閉ループ制御装置(25)を有することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記閉ループ制御装置(25)は、コントローラブロック(34)と、前記ブロックにリンクさせたシミュレーションブロック(33)を有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの目標値(26)の調整パラメタ(18)の群(u*)から生成した前記値をシミュレーションするニューラルネットワークを、前記閉ループ制御システム(25)に設けることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システム(1)は、アスファルトプラント(3)、現場局(2)及び/又は相互に移動可能な複数の機械(4〜8)を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記混合設備(3)、前記現場局(2)及び/又は前記機械(4〜8)間で無線データ伝送するインタフェースを設けることを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記測定量を取得するセンサ(22)を設けることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
路面を塗布するシステム(1、7)、特に道路仕上げ機(7)を制御する方法であり、前記システム(1、7)は、1つ又は複数の調整パラメタ(18)を其々備える複数の操作部品(9)を有し、前記システム(1、7)は、そこから前記調整パラメタを前記操作部品(9)に伝達する開ループ制御装置(17)を有する方法であって、少なくとも1つの目標値(26)を達成するための最適調整パラメタ(22)群を、閉ループ制御装置(25)において、測定量(22)から、及びこの少なくとも1つの指定された目標値(26)から決定すること、及び前記調整パラメタ(18)群を共通の命令データセット(u)で前記閉ループ制御装置(25)から前記開ループ制御装置(17)に伝達することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの目標値(26)を達成するための前記最適調整パラメタ(18)の決定を、前記システム(1、7)の運転中に繰り返し実行することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの目標値(26)を達成するための前記最適調整パラメタ(18)の決定を、前記システム(1、7)の運転中に、指定した時間間隔を過ぎた後にその都度実行することを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
調整パラメタ(18)群(u*)で前記最適調整パラメタ(18)を決定するために、好適には前記閉ループ制御装置(25)において、前記少なくとも1つの目標値(26)に関してどのような値(y*)が前記調整パラメタ(18)で生成されるかを求めるようシミュレーションを実行することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記調整パラメタ(18)を、前記シミュレーション中に得た前記少なくとも1つの目標値(26)に関する前記値(y*)が前記少なくとも1つの目標値(26)の指定した許容差内にある場合に、最適調整パラメタとして定義することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
修正した調整パラメタの群(u*)を、好適には閉ループ制御装置(25)で繰り返し定義し、前記修正調整パラメタで生成した前記少なくとも1つの目標値(26)に関する前記値(y*)のシミュレーションを、これらの修正調整パラメタ(18)で実行することを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記繰り返し処理を、前記シミュレーション中に生成した前記少なくとも1つの目標値(26)に関する前記値(y*)が前記少なくとも1つの目標値(26)の指定した許容差内になるまで実行することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記オペレータには、前記指定した目標値(26)を達成できるか否かの表示を提供することを特徴とする、請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記被修正調整パラメタ(18)のみを、共通の命令データセット(u)で、前記閉ループ制御装置(25)から前記開ループ制御装置(17)に伝達することを特徴とする、請求項7〜14のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−204236(P2011−204236A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−55423(P2011−55423)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(596068349)ヨゼフ フェゲーレ アーゲー (35)
【Fターム(参考)】