説明

路面冷却道路構造

【課題】路面の温度上昇を抑制して清涼感を与えると共に、ヒートアイランド現象を緩和させることができ、また集中豪雨の際には、路面上に溢れる雨水を吸収して冠水を緩和させることができる路面冷却道路構造を提供する。
【解決手段】路床1上に貯水槽2を設置し、その上に舗装層3を敷設する。舗装層3は格子状をなす鋼製のグレーチング4に透水性のアスファルト5を充填すると共に、グレーチング上に同じ透水性のアスファルト層6を設けてなるもので、雨水が舗装層3を通過して貯水桝2に貯水される。グレーチング4には鋼製の複数の脚18が固着されて垂下し、貯水槽2に着床して貯水槽内の雨水に漬かり、グレーチング4を熱伝導により貯水槽内の雨水と同程度の温度にすると共に、雨水の温度を上昇させて蒸発を促進させ、蒸発に伴って奪われる気化熱により舗装層3の温度上昇を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等が走行する一般道や歩道、あるいは商店街、ビル街、建造物周辺の生活道路等の道路構造に関し、特にヒートアイランド現象更には集中豪雨に対する対策を図った路面冷却道路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等が走行する一般道の道路には、アスファルト舗装や、セメントコンクリート舗装があり、前者のアスファルト舗装では、路床上に路盤を敷設し、更にその上にアスファルト混合物を、表層にアスファルトを敷設した構造をなし、また後者のセメントコンクリート舗装では、路盤上にコンクリート盤を形成した構造をなしている。そして道路脇には、路面に降ったり、路面を流れる雨水を排水するための側溝が設けられている。
【0003】
一方、一般道以外の道路、例えば歩道では、路床或いは路床上の路盤に、雨水が浸透しやすい透水性コンクリートブロックを敷設したものが知られ、こうした歩道では、雨水は側溝を介さずに直接地下に浸透するようになっている。また道路や歩道等の路面に対しては、古くからの慣習で清涼感をもたらすために、或いは砂埃が立つのを抑制するために、打ち水や散水することも行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、温暖化、特にヒートアイランド現象の顕著化に伴い、路面の温度上昇を抑制する技術が求められている。側溝を備えた道路構造では、雨水は素早く側溝に流入するため、路面の水はけは良好であるものの、路面の水分が蒸発することによる昇温抑制効果が期待できるのは降雨時のみである。打ち水や散水時においても同様である。また、雨水或いは打ち水、散水等(打ち水や散水等を含めた雨水を以下、単に雨水等ということがある)が地下に浸透するタイプの道路構造では、路床や路盤がある程度貯水機能を発揮するため、ある程度の昇温抑制効果は期待できるものの、昇温抑制効果が持続しにくい。
【0005】
また近年、集中豪雨による冠水がしばしば生じている。降雨時には、前者のタイプの道路構造では、雨水は上述するように路面から側溝に流れ込んで排水されるが、側溝からの排水には限度があり、集中豪雨があると、排水しきれない雨水が側溝から溢れ出て、道路が冠水するようになる。また、後者のタイプの道路構造は、雨水が徐々に浸透するものであるため、水がなかなか地下に浸透できず、長時間にわたって冠水状態が持続するという事態を生ずることがある。
【0006】
本発明の目的は、路面の温度上昇を抑制する効果を長期間持続させることができ、しかも集中豪雨の際にも、雨水を素早く排水し、側溝以外の箇所で貯水できるようにして路面の冠水を生じにくくした路面冷却道路構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、路床と、路面から雨水等が通過する透水性のある舗装層と、該舗装層と路床との間或いは舗装層の中間部に設置され、舗装層を透過した雨水等を受けて貯水する貯水槽を備え、前記舗装層は、雨水等が通過する貫通孔を多数形成した金属板、好ましくは鋼板と、金属板の上下のうち、少なくとも上側に設けられ、透水性アスファルトその他の透水性材よりなる層又は不透水性のアスファルトやコンクリートの不透水性材よりなり、雨水を通す貫通孔を形成した層とを有し、前記金属板は、好ましくは該金属板と同じ金属製で、前記貯水槽内に垂下し、貯水槽に貯水される雨水等に浸漬可能な脚を一体に設けた路面冷却道路構造である。
【0008】
本発明において、路床には、従来の路床と同様の地面を均して固めたものを用いることができ、その上には必要に応じて防水シートを敷設してもよい。以下の発明の路床においても同様である。
【0009】
第2の発明は、路床と、路面から雨水等が通過する透水性のある舗装層と、該舗装層と路床との間或いは舗装層の中間部に設置され、舗装層を透過した雨水等を受けて貯水する貯水槽を備え、前記舗装層は、縦部材と横部材を格子状に組合せた溝蓋用のグレーチングと、該グレーチングに充填される砂利、砂、鉄鋼スラグ、ガラスウール等の繊維状物、透水性アスファルトや透水性コンクリート等の透水性材又は不透水性のアスファルトやコンクリートよりなる不透水性材を有し、前記グレーチングは金属製、好ましくは鋼製で、該グレーチングと好ましくは同じ金属製をなして、前記貯水槽内に垂下し、貯水槽に貯水される雨水等に浸漬可能な脚を一体に設ける一方、前記グレーチングに充填した透水性材又は不透水性材のうち、少なくとも不透水性材には、雨水等を通す貫通孔を多数形成した路面冷却道路構造である。
【0010】
本発明の舗装層は、上述するように、グレーチングを有するが、グレーチングに砂利、砂、鉄鋼スラグ、ガラスウール等の繊維状物等を充填する場合、グレーチング上には透水性のアスファルト層或いは透水性のコンクリート層、コンクリートブロック等を有するか、或いは雨水等を通す貫通孔を多数形成した不透水性のアスファルト層やコンクリート層を有する。こうした透水性のアスファルト層、コンクリート層、コンクリートブロック或いは雨水等を通す貫通孔を形成した不透水性のアスファルト層やコンクリート層、コンクリートブロック等はグレーチングに充填されるのがアスファルトやコンクリートであってもグレーチング上に敷設するのが望ましい。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明の路面冷却道路構造において、金属板又は金属製のグレーチングに一体に設けた脚が貯水槽に着床する路面冷却道路構造である。
貯水槽は、コンクリートで形成されるが、鋼板で形成してもよい。また有底であっても、無底であってもよいが、無底である場合には、路床上に防水シートが敷設される。
【0012】
貯水槽はまた、一ないし複数の貯水桝より構成されていてもよい。貯水槽を複数の貯水桝で構成する場合、各貯水桝の配置の仕方は特に限定されず、例えば、箱型の貯水桝を道路の長さ方向及び幅方向に並設してもよいし、道路の幅と略一致する幅を有する貯水桝を道路の長さ方向に一列に並設してもよく、また貯水槽を仕切りにより仕切って複数の貯水桝を形成するようにしてもよい。
【0013】
第4の発明は、第1〜第3の発明の路面冷却道路構造において、前記路盤に沿って延設される側溝を有し、前記貯水槽には、該貯水槽内の水を前記側溝に徐々に排出する排水孔が、好ましくは貯水槽下部端に形成された路面冷却道路構造である。
【0014】
本発明において、水を徐々に排出する排出孔としては、例えば径を小さくした排水孔、絞り弁やスクリーンを備えた排水孔を例示することができる。これにより流量を絞ることができると共に、水中のごみを捕獲することができる。
【発明の効果】
【0015】
第1及び第2の発明によると、降雨時や路面への打水、散水時に雨水等が路盤を通過して貯水槽に貯水された雨水等には、舗装層を構成する金属板又はグレーチングの脚が漬かることから、金属製の板又はグレーチングが雨水等と同程度の温度の維持されるようになり、これにより舗装層全体の温度上昇を抑制すると共に、貯水槽内の雨水等も温度が上昇して蒸発し易くなり、雨水等の蒸発に伴い気化熱が奪われることよって舗装層の温度上昇をより一層抑制できるようになって、清涼感を与え、ヒートアイランド現象を緩和させることができる。また集中豪雨の際には、路面上を溢れる雨水が金属板又はグレーチングを含む舗装層を通過して貯水槽に貯水されることにより舗装層上の路面の冠水を緩和させることができる。また舗装層は、車両等の重量物が走行するときに変形したり、貯水槽内に落ち込んで撓むおそれがあり、路面がアスファルトで構成される場合においてはことに、日中気温の上昇する夏季に車両の走行により窪みやうねりが発生しやすいが、舗装層が金属板又はグレーチングで補強されることにより上述する舗装層の変形や撓みを防止することができる。
【0016】
第3の発明のように脚を貯水槽に着床させると、貯水槽に雨水等が多少でも貯水されている限り脚が雨水等に漬かって上述する効果を奏することができると共に、路盤が貯水槽の上で脚によって支持され、脚が路盤を補強する効果をもたらすようになる。
【0017】
第4の発明によると、貯水槽内の水の腐食を防ぐことができると共に、貯水槽内の貯水量を徐々に減らして貯水槽の空き容量を確保し、集中豪雨があったときに多くの雨水を貯水できるようにし、また貯水槽内の雨水等を、徐々に排出することにより、貯水槽内の雨水等で舗装層の冷却効果を長期にわたって維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態による道路構造を模式的に示した概略図であり、図2は断面図で、地面をつき固めた路床1上に図示しない防水シートを介してコンクリート製の貯水槽2が設置され、該貯水槽2上に、舗装層3が敷設されている。
【0019】
舗装層3は、格子状をなす鋼製のグレーチング4に透水性材、例えばアスファルト5を充填して、その上に同じ透水性のアスファルト層6を設けてなるもので、舗装層3には、必要によって、格子の升目を通して水を通す多数の通水孔が縦設される。
【0020】
貯水槽2は、舗装層3を通過した雨水等を貯水する複数の貯水桝7と後述の排水通路8からなり、貯水槽2を構成する側壁9a及び9bが舗装層3の幅方向両側端部を支持している。
【0021】
各貯水桝7は、貯水槽2を側壁9a及び9bに沿って歩道の幅方向で仕切る第1、第2及び第3の仕切壁11、12及び13と、歩道の長手方向で仕切る仕切り10によりそれぞれ形成されて平面視で矩形状をなしており、歩道の長手方向及び幅方向に連設されている。そして歩道の長さ方向に連接する各貯水桝7は、高さは等しいが、歩道の幅方向に関しては、貯水桝7が棚田状をなすように、歩道の幅方向一端側(図1の左端側)から他端側(図1の右端側)に向かって、貯水桝7の高さが階段状に低くなっている。
【0022】
詳細には、一端側の第1の仕切壁11の高さは側壁9aの高さよりも低く、中央の第2の仕切壁12の高さは第1の仕切壁11の高さよりも低く、他端側の第3の仕切壁13の高さは第2の仕切壁12の高さよりも低くなっており、各仕切壁11、12及び13には下部に小径の通水孔14が形成されている。この通水孔14は、貯水桝6の底面より若干高い位置に形成され、雨水等が常に通水孔14のレベルまでは貯水されるようになっている。
【0023】
貯水槽2の幅方向他端の側壁9bは第3の仕切壁13と共に排水通路8を構成し、この排水通路8は、下方に傾斜した排水路15によって歩道に沿って敷設される側溝16に通じている。なお、図1には、一つの排水路15のみを示すが、同様の排水路が、歩道の長さ方向に適宜間隔をあけて複数設けられている。
【0024】
舗装層3を構成する上述のグレーチング4には鋼製の複数の脚18が溶接にて固着されて垂下し、各脚18は貯水桝7に着床して舗装層3を貯水槽2上に支持するようになっている。図中、17は歩道と車道との境界に設置される境界ブロックである。
【0025】
図2は、上記舗装層3及び貯水槽2の断面図である。路面に降った雨水、或いは路面にまかれた打ち水や散水時の雨水等は、舗装層3を通過して貯水槽2の各貯水桝7に貯められる。貯められた雨水等は、隣接する貯水桝7、排水通路8、排水路15を経て側溝16に徐々に排水され、貯水桝7に水が澱んで腐食することがないようにしている。なお、貯水桝7の排水は、通水孔14のレベルに達するまで行われ、貯水桝内には最低限でも通水孔14のレベルまで常に水がある状態に維持される。したがってグレーチング4の脚18は常に貯水桝内の水に浸されることから、グレーチング4が脚18からの熱伝導により雨水等と同程度の温度に維持されるようになり、これにより日中の太陽熱による舗装層3の温度上昇を抑制する一方、貯水槽内の雨水等が温度上昇して蒸発しやすくなり、蒸発時に奪われる気化熱によって舗装層3の温度上昇がより一層抑制されるようになる。
【0026】
以上のようにして路面の水はけを良好なものとしながら、舗装層3が冷却され、この結果、日中における舗装層3の蓄熱を抑えることができ、舗装層3が日中に蓄積した熱を夜間に放出することに起因するヒートアイランド現象を緩和することができる。こうした舗装層3の温度上昇抑制効果は、貯水桝7に水が貯えられている限り持続される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る路面冷却道路構造の模式図。
【図2】同断面図。
【符号の説明】
【0028】
1・・路床
2・・貯水槽
3・・舗装層
4・・グレーチング
5・・透水性のアスファルト
6・・アスファルト層
7・・貯水桝
8・・排水通路
9a、9b・・側壁
10・・仕切り
11、12、13・・仕切壁
14・・通水孔
15・・排水路
16・・側溝
17・・境界ブロック
18・・脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路床と、路面から雨水等が透過する透水性のある舗装層と、該舗装層と路床との間或いは舗装層の中間部に設置され、舗装層を透過した雨水等を受けて貯水する貯水槽を備え、前記舗装層は、雨水等が通過する貫通孔を多数形成した金属板と、金属板の上下のうち、少なくとも上側に設けられ、透水性アスファルトその他の透水性材よりなる層又は不透水性のアスファルトやコンクリートの不透水性材よりなり、雨水を通す貫通孔を形成した層とを有し、前記金属板は、前記貯水槽内に垂下し、貯水槽に貯水される雨水等に浸漬可能な金属製の脚を一体に設けた路面冷却道路構造。
【請求項2】
路床と、路面から雨水等が通過する透水性のある舗装層と、該舗装層と路床との間或いは舗装層の中間部に設置され、舗装層を透過した雨水等を受けて貯水する貯水槽を備え、前記舗装層は、縦部材と横部材を格子状に組合せた溝蓋用のグレーチングと、該グレーチングに充填される砂利、砂、鉄鋼スラグ、ガラスウール等の繊維状物、透水性アスファルトや透水性コンクリート等の透水性材又は不透水性のアスファルトやコンクリートよりなる不透水性材を有し、前記グレーチングには、前記貯水槽内に垂下し、貯水槽に貯水される雨水等に浸漬可能な金属製の脚を一体に設ける一方、前記グレーチングに充填した透水性材又は不透水性材のうち、少なくとも不透水性材には、雨水等を通す貫通孔を多数形成した路面冷却道路構造。
【請求項3】
金属板又は金属製のグレーチングに一体に設けた脚が貯水槽に着床する請求項1又は2記載の路面冷却道路構造。
【請求項4】
前記舗装層に沿って延設される側溝を有し、前記貯水槽には、該貯水槽内の水を前記側溝に徐々に排出する排水孔が形成された請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の路面冷却道路構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−51461(P2007−51461A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237052(P2005−237052)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【出願人】(505312338)株式会社カムイネット (6)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】