説明

跳ね上げ式フード構造

【課題】 跳ね上げ式フード構造において、跳ね上げたフードの上下振動の発生を抑制する。
【解決手段】 車体の前部に設けられたフード2の後端部における車幅方向両端部を車体本体で保持するとともに、車両の前端と障害物との衝突を検出してフード2の後端部を跳ね上げる構成において、フード2後端部の車幅方向中央部と車体本体(ダッシュパネル5)とをストラップ31によって連結し、フード2後端部における車幅方向中央部の規定量以上の上方への跳ね上がりを規制するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の車両が障害物に衝突した場合に、障害物がフード上に倒れ込んで車両と二次衝突する際の障害物への反力を抑制する自動車の跳ね上げ式フード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の跳ね上げ式フード構造の機能は、走行中の車両が障害物に衝突した際、フードの後端部を跳ね上げて、エンジンルーム内の構造物とフードとの間にクリアランスを確保し、フード上面に障害物が二次衝突した場合の障害物への反力を抑制するというものである(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
この種の跳ね上げ式フード構造では、例えば、フードの後端部における車幅方向両端部をアクチュエータで押し上げることによって、フードの後端部を跳ね上げている。
【特許文献1】特開11−198860号公報
【特許文献2】特開11−348716号公報
【特許文献3】特開9−315266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような跳ね上げ式フード構造では、フードが跳ね上げられると、アクチュエータなどによって車体本体に連結されているフードの後端部における車幅方向両端部は、規定のフード跳ね上げ量に達したときに止められ位置決めされる。これに対して、フードの後端部における車両幅方向中央部は、車幅方向両端部が止まっても、押し上げられた勢いでさらに上方にたわむ。これにより、フード後端部の中央部に上下振動が発生してしまう。このように振動が発生するので、規定のフード跳ね上げ量を確保するのが困難となってしまう。
【0005】
本発明の目的は、跳ね上げ式フード構造において、跳ね上げたフードの上下振動の発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明、フード後端部の車幅方向中央部と車体本体とを連結し、前記フード後端部における車幅方向中央部の規定量以上の上方への跳ね上がりを規制する連結部材を備えることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、連結部材がフード後端部における車幅方向中央部の規定量以上の上方への跳ね上がりを規制するので、跳ね上げたフードの上下振動の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1の実施形態を図1ないし図7に基づいて説明する。図1は、本実施形態の跳ね上げ式フード構造を備えた自動車を示す概略構成図、図2は、フードの開閉状態を説明するための説明図であって、(a)はフード閉じ状態を、(b)はフード開放状態を、(c)はフード跳ね上げ状態を示している。
【0009】
図1に示すように、車両としての自動車1は、その前部にフード2を備えている。このフード2は、図1及び図2に示すように、フード2における後端部の車幅方向Y両端部に配置されたヒンジ機構11を介して車体本体3に開閉自在に設けられており、エンジンルームE・R(図3参照)の上方を覆う。また、フード2は、自動車1の前部に設けられたフードロック機構12によって、閉じ状態で、その前端部2aを車体本体3にロックされる。
【0010】
このフード2の跳ね上げに係わる構成要素として、自動車1は、図1に示すように、跳ね上げ手段としてのアクチュエータ20、フード防振装置30、バンパセンサ13、速度センサ14、コントローラ15などを備えている。
【0011】
アクチュエータ20は、各ヒンジ機構11の近傍で車体本体3に設けられ、自動車1の前端と障害物との衝突時にフード2の後端部2bを押し上げて、フード2の後端部2bを車体本体3から跳ね上げ保持する。
【0012】
フード防振装置30は、フード2の後端部2bの車幅方向Yの中央部の下方に配置され、フード2跳ね上げ時のフード2の防振を司る。
【0013】
バンパセンサ3は、フロントバンパ4に設けられ車両の前端と障害物との衝突を検出する一方、速度センサ14は、車速を検出する。そして、コントローラ15は、バンパセンサ13及び速度センサ14から入力される検出信号に基づいてアクチュエータ20へ信号を出力して、アクチュエータ20を駆動制御する。
【0014】
この自動車1におけるフード跳ね上げ動作を説明する。車速が規定車速より大きい条件下で、バンパセンサ13が自動車1の前端と障害物との衝突を検出して検出信号をコントローラ15に入力すると、コントローラ15がアクチュエータ20を作動させてフード2を跳ね上げさせる(図2(c))。このとき、ヒンジ機構11においては、アクチュエータ20の作動に伴って、立上げ部材60が起立してアクチュエータ20と共にフード2の後端部2bを跳ね上げ位置に保持する。即ち、本実施形態では、フード2跳ね上げ時においても、フード2の後端部2bにおける車幅方向Y両端部が、ヒンジ機構11を介して車体本体3に保持されている。なお、図2において、符号6はフロントガラスを示している。
【0015】
次に、フード防振装置30について詳しく説明する。図3は、フード防振装置30の取付部分を示す縦断側面図、図4は、フード防振装置30を示す正面図、図5は、フード防振装置30を示す縦断側面図、図6は、フード2開放時のフード防振装置30及びその周囲を示す縦断側面図である。
【0016】
図1及び図3に示すように、フード防振装置30は、連結部材として、可撓性を有する長尺状部材であるストラップ31を備えている。ストラップ31は、例えば、布ベルト、樹脂ベルト又は金属ベルトなどによって形成されている。
【0017】
このストラップ31は、フード2の後端部2bにおける車幅方向Yの中央部と、車体本体3を構成するダッシュパネル5とを連結しており、フード2の後端部2bにおける車幅方向Y中央部の規定量以上の上方への跳ね上がりを規制する。ここで、フード2の跳ね上がりの前記規定量は、所望の量を適宜設定してよく、その量は、ストラップ31の長さによって定まる。この規定量は、フード2の車幅方向Y両端部の跳ね上がり量と同じであることが好適である。
【0018】
図4及び図5に示すように、ストラップ31の上端部には、平板状の第1のブラケット32が結合されており、この第1のブラケット32が、フード2の下面に固定されたハット材33にネジ34により締結されている。また、ストラップ31の下端部には、平板状の第2のブラケット36が結合されており、この第2のブラケット36が固定板35の後面にネジ37によって固定されている。この固定板35は、ダッシュパネル5において車両後方へ凹ませて形成された凹部5aの開口を閉塞する位置で、ダッシュパネル5にネジ38によって固定されている。この固定板35には、ストラップが挿通された貫通孔35aが形成されている。そして、ストラップ31の一部は、折り畳まれた状態で凹部5aの内側に収納され、固定手段としての結束バンド39によって固定板35の後面に固定されている。
【0019】
このように配設されたストラップ31は、図3及び図6に示すように、フード2の開閉を阻害しない長さに形成されており、フード2の通常の開閉においてはその一部が凹部5aに収納された状態が維持される。
【0020】
このような構成において、フード防振装置30の動作を説明する。ここで、図7は、フード2跳ね上げ時のフード防振装置30及びその周囲を示す縦断側面図である。図7に示すように、走行中に自動車1の前端が障害物と衝突して、アクチュエータ20により、フード2の車幅方向Y両端部が押し上げられて、フード2の後端部2bが跳ね上げられたときには、ストラップ31が、フード2によって上方へ引っ張られ、凹部5aから引き出される。このとき、その引き上げ力によって、結束バンド39が破断し、ストラップ31が結束バンド39に引っ掛かることなく引き出される。そして、最終的に伸びきったストラップ31が、フード2の上方への移動を規制する。これにより、フード2の後端部2bにおける車幅方向Y中央部がフード2の車幅方向Y両端部よりも上方へ跳ね上がることを防止することができる。よって、フード2跳ね上げ後のフード2の後端部2bにおける車幅方向Yの中央部の上下振動の発生を抑制することができる。
【0021】
また、本実施形態においては、連結部材として、可撓性を有する長尺状部材であるストラップ31が設けられていることにより、ストラップ31を折り曲げて凹部5aに収納することができるので、フード2の通常の開閉を阻害することがない。また、このようにストラップ31を凹部5aに収納することができるので、見栄えの悪化を防止することができる。
【0022】
また、本実施形態においては、長尺状部材であるストラップ31は、布ベルト、樹脂ベルト、又は金属ベルトによって形成されていることにより、これらの布ベルト、樹脂ベルト、金属ベルトは、入手性が良いので、ストラップ31を容易に製造することができる。
【0023】
次に、本発明の第2の実施形態を図8に基づいて説明する。なお、前述した実施形態と同じ部分は、同一符号で示し説明も省略する(以降の実施形態も同じ)。図8は、本実施形態のフード防振装置30の第1のブラケットを示し、(a)はフード2閉じ時の状態を示し、(b)はフード2跳ね上げ時の状態を示している。
【0024】
本実施形態は、ストラップ31の上端部とフード2とを連結する第1のブラケット42に連結部材及び減速部材としての機能を持たせた点が第1の実施形態に対して異なる。図8に示すように、本実施形態の第1のブラケット42は、板状に形成されるとともにその中央部に切欠き42aが形成されている。第1のブラケット42は、フード2と略平行に設けられている。
【0025】
このような構成において、走行中に自動車1の前端が障害物と衝突した場合には、第1の実施形態と同様に、ストラップ31が上方へ引っ張られ、最終的にストラップ31が伸びきった後、第1のブラケット42がフード2とストラップ31とによって上下折り曲げ方向に引っ張られ、切欠き部42aで折り曲がる。この折り曲げにおいて、第1のブラケット42は、フード2の運動エネルギーを吸収してフード2を減速させる。これにより、フード2がストラップ31及び第1のブラケット42によって上方への移動を規制される直前に、フード2の速度が減速される。よって、フード2跳ね上げ後のフード2の後端部2bにおける車幅方向Yの中央部の上下振動の発生をより抑制することができる。
【0026】
本実施形態においては、フード2の跳ね上がりの規定量は、ストラップ31及び第1のブラケット42の折り曲げ長さによって定まる。よって、本実施形態のストラップ31の長さは、第1のブラケット42の折り曲げ長さ分だけ、第1の実施の形態のストラップ31の長さよりも短くされている。
【0027】
次に、本発明の第3の実施形態を図9に基づいて説明する。図9は、本実施形態のフード防振装置30のダンパー部分を示す縦断側面図である。
【0028】
本実施形態は、ストラップ31と第1のブラケット32との間に連結部材及び減速部材としてのダンパー51を介在して設けた点が第1の実施形態に対して異なる。このダンパー51は、第2の実施形態で説明した第1のブラケット42と同様の機能を奏するものである。
【0029】
図9に示すように、ダンパー51は、ケース52の内部にスライド部材53及びコイルバネ54を収納した構成である。
【0030】
ケース52は、上下方向を軸方向にした両端閉止の円筒状に形成されて、その上部を第1のブラケット32にネジ55によって固定されている。
【0031】
スライド部材53は、上下方向にスライド自在にケース52に収納されている。スライド部材53の下部は、ケース52を貫通して外部に突出しており、ストラップ31の上端部に連結されている。
【0032】
コイルバネ54は、スライド部材53とケース52の底面との間に設けられて、スライド部材53を弾性保持するとともに、圧縮バネとして機能する。
【0033】
このような構成において、走行中に自動車1の前端が障害物と衝突した場合には、第1の実施形態と同様に、ストラップ31が、ダンパー51を介してフード2によって上方へ引っ張られ、最終的にストラップ31が伸びきった後、ダンパー51が動作してフードを減速させる。詳しくは、ストラップ31が引っ張れて伸びきった後、フード2とともにケース52が上方へ移動することにより、ケース52とスライド部材53とから受ける圧縮力によってコイルバネ54が圧縮して、フードを減速させる。即ち、コイルバネ54は、フード2の運動エネルギーを吸収して圧縮する。これにより、フード2がストラップ31及びダンパー51によって上方への移動を規制される直前に、フード2の速度が減速される。よって、フード2跳ね上げ後のフード2の後端部2bにおける車幅方向Yの中央部の上下振動の発生をより抑制することができる。
【0034】
本実施形態においては、フード2の跳ね上がりの規定量は、ストラップ31の長さ及びダンパー51におけるスライド部材53の移動量によって定まる。よって、本実施形態のストラップ31の長さは、スライド部材53の移動量の分だけ、第1の実施の形態のストラップ31の長さよりも短くされている。
【0035】
なお、本発明は、本実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。例えば、第2の実施形態で説明した減速部材としての第1のブラケット42、第3の実施形態で説明した減速部材としてのダンパー51は、ストラップ31とダッシュパネル5との間に介在させて設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態の跳ね上げ式フード構造を備えた自動車を示す概略構成図である。
【図2】フードの開閉状態を説明するための説明図であって、(a)はフード閉じ態を示し、(b)はフード開放の状態を示し、(c)はフード跳ね上げ状態を示している。
【図3】フード防振装置の取付部分を示す縦断側面図である。
【図4】フード防振装置を示す正面図である。
【図5】フード防振装置を示す縦断側面図である。
【図6】フード開放時のフード防振装置及びその周囲を示す縦断側面図である。
【図7】フード跳ね上げ時のフード防振装置及びその周囲を示す縦断側面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態のフード防振装置の第1のブラケットを示し、(a)はフード閉じ時の状態を示し、(b)はフード跳ね上げ時の状態を示している。
【図9】本発明の第3の実施形態のフード防振装置のダンパー部分を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 自動車(車両)
2 フード
2b フード後端部
3 車体本体
31 ストラップ(連結部材、長尺状部材)
42 第1のブラケット(連結部材、減速部材)
51 ダンパー(連結部材、減速部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部に設けられたフードの後端部における車幅方向両端部を車体本体で保持するとともに、車両の前端と障害物との衝突を検出して前記フードの後端部を跳ね上げる跳ね上げ式フード構造において、
前記フード後端部の車幅方向中央部と前記車体本体とを連結し、前記フード後端部における車幅方向中央部の規定量以上の上方への跳ね上がりを規制する連結部材を備えることを特徴とする跳ね上げ式フード構造。
【請求項2】
前記連結部材として、可撓性を有する長尺状部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の跳ね上げ式フード構造。
【請求項3】
前記フードが跳ね上げられて前記長尺状部材が伸びた状態で前記フードの運動エネルギーを吸収して前記フードを減速させる減速部材が、前記連結部材として、前記長尺状部材と前記フード又は前記車体本体との間に介在して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の跳ね上げ式フード構造。
【請求項4】
前記長尺状部材は、布ベルト、樹脂ベルト又は金属ベルトによって形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の跳ね上げ式フード構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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