説明

踏切用標識板

【課題】標識板、特に第4種踏切に使用する標識板の視認性を、遠くからでも認識容易にする。
【解決手段】上部が長方形状で下部が三角形状である五角形状に形成された標識板本体1と、標識板本体1の文字表示側面に貼付された、表面に文字が表された再帰反射性フィルム5と、再帰反射性フィルム5上に表された文字に沿って、標識板本体1の文字表示側面に設けられた発光部7と、標識板本体1に設けた、発光部7を発光制御する電源回路部8とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は標識板、特に、第4種の踏切等に設置される標識板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
標識板の表面縁部に発光ダイオード(LED)を所望の間隔をおいて複数配置して、夜間に点灯又は点滅させて、遠くからでも認識しやすくした標識板としては、例えば、引用文献1がある。
【0003】
また、更に視認性を高めるために、標識板の表面縁部に発光ダイオードを三本以上集約させて、発光輝度を高めた標識板としては、例えば、引用文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−331118号公報
【特許文献2】特開2007−77730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記いずれの標識板も、標識板の表面の縁に発光ダイオードを配置して、その光で、標識板の形状と、標識板の表面に表された文字を見やすくしたものであるが、標識板の形状の視認性は高まっても、文字の視認性までは不十分という欠点があった。
【0006】
特に、第4種踏切等では、踏切周辺が暗く、踏切自体にも遮断機が設置されていないので、踏切警標などの標識板があっても、踏切であることが遠くから認識できない場合がある。また、標識板があることまでは分かったとしても、その標識板に記載された「とまれ」の文字まで認識ができない場合がある。そのため、踏切内への人や車の進入による事故の発生を有効に防止するためにも、「とまれ」の文字を認識させて、踏切であることが遠くからでも簡単に認識できる標識板が要望されていた。
【0007】
また、第4種踏切等に、第1種の踏切などで設置されている保安装置を設置するためには、膨大なコストと機器の維持メンテナンスが必要であるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記従来の標識板の不都合を解消し、遠くからでも標識板の存在の認識を容易にし、そして、文字による注意喚起ができるようにし、かつ、低価格、低メンテナンス性のある標識板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の標識板は、上部が長方形状で下部が三角形状である五角形状に形成された標識板本体と、上記標識板本体の文字表示側面に貼付された、表面に文字が表されたフィルムと、上記フィルム上に表された文字に沿って、上記標識板本体の文字表示側面に設けられた発光部と、上記標識板本体に設けた、上記発光部を発光制御する電源回路部とよりなることを特徴とする。
【0010】
また、上記標識板本体の文字表示側面の縁に沿って、所望の間隔を開けて設けた複数の発光ダイオードと、上記標識板本体に設けた、上記発光ダイオードを発光制御する電源回路部とを更に有することを特徴とする。
【0011】
また、上記電源回路部は、太陽電池と、この太陽電池からの電気を蓄電する二重層コンデンサと、この二重層コンデンサから上記発光部又は発光ダイオードへの電気の流れを制御する発光制御手段とよりなることを特徴とする。
【0012】
また、上記発光部は、複数の光ファイバーと、この複数の光ファイバーの一端に設けた一つの発光ダイオードとよりなり、上記複数の光ファイバーの他端が、上記フィルム上に表された文字に沿って、上記文字表示側面に所望の間隔で設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記フィルムは、蛍光再帰性反射フィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の標識板によれば、従来にない五角形状の形状の標識板を用い、標識板の縁を点灯または点滅させることにより、遠くからでも、その従来にない五角形状を認識させ、更に、文字までも点灯または点滅させることにより、縁部の点灯と相俟って、確実に文字部分の注意喚起ができる。そして、例えば、第4種踏切の存在を飛躍的に知らせることができ、人や車の一時停止を実現し、無理な進入による事故の発生を防止することができる。
【0015】
また、標識板に太陽電池及びコンデンサを一体として設け、標識板を自発光としたので、外部から電線引き込み工事などを不要にでき、それにより、コストや手間を削減できる。また、メンテナンスも容易となる。
【0016】
また、蛍光高輝度再帰性反射フィルムにより、灯火車両に対する視認性を高め、また、薄暮時における視認性を上げ、発光ダイオードが点灯または点滅していない時にも普通の警告標識板としての機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の標識板を支柱に固定した状態の正面図である。
【図2】本発明の標識板を支柱に固定した状態の側面図である。
【図3】本発明の標識板の正面図である。
【図4】本発明の標識板の側面図である。
【図5】本発明の標識板の背面図である。
【図6】本発明の標識板の平面図である。
【図7】本発明の標識板の底面図である。
【図8】本発明の標識板の他の実施例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面によって本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0019】
図1〜図7は本発明の踏切警標などの標識板を示し、1は標識板本体であり、この標識板本体1は、アルミニウム製の筐体からなる。また、この標識板本体1の文字表示側面1aの形状は、上部が長方形状で下部が三角形状である五角形状に形成されている。なお、上記文字表示側面1aの五角形の各角部1bをトリム加工を施し、湾曲状に形成させてもよい。
【0020】
また、上記標識板本体1は、背面1cに固定したリブ2及び取付バンド3により支柱4に固定されている。
【0021】
5は、その表面に文字が表された再帰性反射フィルムであり、この再帰性反射フィルム5は、上記標識板本体1の文字表示側面1aの略全面に貼付される。なお、上記再帰性反射フィルム5は、薄暮時でも視認性が高い蛍光再帰性反射フィルムが好ましい。
【0022】
6は、発光ダイオードであり、この発光ダイオード6は、上記標識板本体1の文字表示側面1a上に縁に沿って、所望の間隔を開けて複数、例えば12個設けられている。なお、上記発光ダイオード6の配線部は、上記文字表示側面1a及び上記フィルム5を貫通して、上記標識板本体1内に収納され、後述する電源回路部8に接続されている。
【0023】
7は、発光部であり、この発光部7は、上記標識板本体1内に設けた複数の光ファイバー(図示せず)と、この光ファイバーの一端に設けた発光ダイオード(図示せず)とよりなる。そして、上記各光ファイバーの他端は、上記文字表示側面1aを貫通して、上記標識板本体1の文字表示側面1a上に、上記フィルム5に表された文字(例えば、「とまれ」)に沿って、所望の間隔を開けて設けられている。また、上記発光ダイオードの配線部は、後述する電源回路部8に接続されている。
【0024】
なお、上記光ファイバーの一端に設けた発光ダイオードは各光ファイバーごとに設ける必要はなく、一つの発光ダイオードで、複数の光ファイバーの他端を点灯または点滅できるようにしてもよい。これにより、発光ダイオードの消費電力を少なくし、長時間にわたって点灯または点滅することができるようになる。
【0025】
また、上記光ファイバーの他端は、更に、上記フィルム5を貫通させても良い。
【0026】
8は、電源回路部を示し、この電源回路部8は、収納ボックス9と、この収納ボックス9上に設けた太陽電池10と、上記収納ボックス9内に収納した上記太陽電池10からの電気を蓄電する二重層コンデンサなどの蓄電装置(図示せず)と、この蓄電装置から上記発光ダイオードへの電気の流れを制御する発光制御手段(図示せず)とよりなる。また、上記収納ボックス9は、上記標識板本体1の上端に固定されている。そして、上記電源回路部8により、太陽光が照射されることで生起される電力のみを用いて上記発光ダイオードが点灯または点滅するようになる。
【0027】
なお、上記太陽電池10は、シリコン太陽電池が好ましい。このシリコン太陽電池は、光−電変換効率が良いので、日照条件の悪い場合でも、正常に作動する。また、上記シリコン太陽電池は、特殊柔軟性シリコン樹脂でモールドし、車両の衝撃・振動から保護されるようにする。これにより、シリコン樹脂が太陽電池の表面のポリカーボネイト板と密着し、太陽光の透過損率が少なくなる。
【0028】
また、上記発光制御手段は、例えば、上記太陽電池により生起される電力の電圧を検知するようにし、予め、標識板付近の明るさが上記発光ダイオードを発光させる必要のある暗さになった時の電圧値をしきい値として設定し、上記電圧がしきい値以上の場合には、上記太陽電池9から蓄電装置に蓄電するようにし、上記蓄電装置から上記発光ダイオードに電力を供給しないようにし、しきい値以下の場合には、上記蓄電装置から発光ダイオードに電力を供給して、上記発光ダイオードを点灯または点滅するように制御する。
【0029】
また、上記蓄電装置を取替可能とするのが好ましく、これによりメンテナンス性を高めることができる。
【0030】
本発明の標識板は上記のような構成であるから、本発明の標識板を支柱4などに固定して、踏切周辺が薄暗く、遮断機が設置されていないような第4種の踏切等の場所に設置する。
【0031】
上記標識板は、明るい昼間は、上記太陽電池10により太陽光を電気エネルギーに変換し、上記蓄電装置に蓄電し、この時は上記発光ダイオードは発光しない。
【0032】
また、周囲が薄暗くなり、上記太陽電池の起電電圧がしきい値以下になると、上記発光ダイオード及び上記発光部が、例えば1分間に60回点滅するようになる。
【0033】
そして、翌朝、太陽電池の起電電圧がしきい値を越えると、自動的に点滅が停止し、上記と同様、上記太陽電池により太陽光を電気エネルギーに変換し、上記蓄電装置に蓄電するようにする。このように、周囲の明るさによって、発光ダイオードの点滅と停止を自動で繰り返すようにする。
【0034】
本発明の標識板は上記のような構成であるから、従来にない五角形状の形状の標識板を用いることにより、歩行者やドライバーなどの踏切通行者に対して注意喚起を促すことができる。
【0035】
また、暗い場所においても、標識板の縁に設けられた発光ダイオード6の点灯または点滅により、点灯または点滅した上記五角形の形状を通じて、踏切の存在を遠方からでも認識できるようになる。
【0036】
さらに、光ファイバーの他端の点灯または点滅により、文字(例えば、「とまれ」)などの危険表示を遠方からでも認識できるようになり、例えば、第4種踏切の存在を飛躍的に知らせることができ、人や車の一時停止を実現し、無理な進入による事故の発生を防止することができる。
【0037】
また、標識板に太陽電池及びコンデンサを一体として設け、標識板を自発光としたので、電線引き込み工事などを不要にでき、それにより、コストや手間を削減できる。また、メンテナンスも容易となる。
【0038】
また、蛍光高輝度再帰性反射フィルムにより、灯火車両に対する視認性を高め、また、薄暮時における視認性を上げ、発光ダイオードが点灯または点滅していない時にも普通の警告標識板としての機能を有する。
【0039】
なお、図8は、本発明の他の実施例を示し、色彩を付加した標識板である。この他の実施例の標識板においても、上記と同様の効果を得られる。
【符号の説明】
【0040】
1 標識板本体
1a 文字表示側面
1b 角部
1c 背面
2 リブ
3 取付バンド
4 支柱
5 再帰性反射フィルム
6 発光ダイオード
7 発光部
8 電源回路部
9 収納ボックス
10 太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が長方形状で下部が三角形状である五角形状に形成された標識板本体と、
上記標識板本体の文字表示側面に貼付された、表面に文字が表されたフィルムと、
上記フィルム上に表された文字に沿って、上記標識板本体の文字表示側面に設けられた発光部と、
上記標識板本体に設けた、上記発光部を発光制御する電源回路部と
よりなることを特徴とする標識板。
【請求項2】
上記標識板本体の文字表示側面の縁に沿って、所望の間隔を開けて設けた複数の発光ダイオードと、上記標識板本体に設けた、上記発光ダイオードを発光制御する電源回路部とを更に有することを特徴とする標識板。
【請求項3】
上記電源回路部は、太陽電池と、この太陽電池からの電気を蓄電する二重層コンデンサと、この二重層コンデンサから上記発光部又は発光ダイオードへの電気の流れを制御する発光制御手段とよりなることを特徴とする請求項1または2記載の標識板。
【請求項4】
上記発光部は、複数の光ファイバーと、この複数の光ファイバーの一端に設けた一つの発光ダイオードとよりなり、上記複数の光ファイバーの他端が、上記フィルム上に表された文字に沿って、上記文字表示側面に所望の間隔で設けられていることを特徴とする請求項1、2または3記載の標識板。
【請求項5】
上記フィルムは、蛍光再帰性反射フィルムであることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の標識板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−188827(P2012−188827A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51712(P2011−51712)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(309037387)株式会社保安サプライ (1)
【Fターム(参考)】