説明

車上/地上間情報伝送装置

【課題】システムの簡易化を図りつつ、ループアンテナ内への列車進入を確実に検知できるようにした車上/地上間情報伝送装置を提供すること。
【解決手段】地上装置3は、ループアンテナ1を介して、全列車に向けたブロードキャスト信号Bと、シーケンス番号である通番とを含む全列車ポーリング信号(B+通番)を送信する。車上装置4はループアンテナ4上に進入したとき、全列車ポーリング信号(B+通番)に応答して、自己の列車識別情報を送信する。地上装置3は列車識別情報を受信したとき、新規列車がループアンテナ1内に進入したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、モノレールや、新交通システムなどにおいて適用される車上/地上間情報伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モノレールや、新交通システムなどにおいては、例えば、特許文献1に開示されているように、列車の走行路に沿って敷設されたループアンテナを介して、車上と地上との間で、必要な情報信号の授受を行なう車上/地上間情報伝送システムが知られている。
【0003】
この従来システムは、1閉塞区間/1列車(列車)の原則を、1ループに1つの列車のみの在線を許容するシステム(1ループ/1列車)を構築することによって実現している。
【0004】
しかし、1ループ/1列車のシステムを採用する限り、地上側では、閉塞区間数と等しい数の送受信装置が必要になるから、高価なシステムになりやすい。また、閉塞区間毎に、独立するループアンテナを敷設する必要があり、この面でもコスト高になる。
【0005】
そこで、この問題を解決する手段として、ループアンテナを長大化するとともに、これに地上子などによる列車位置判定手段を組み合わせ、1ループに複数の列車を在線させるシステムの構築が検討されてきた。
【0006】
しかし、ループアンテナを用いた場合、ループアンテナ間では、原則として、一方のループアンテナにおける列車在線情報を、他方のループアンテナで得ることができないので、列車の安全な運行管理を確保するために、これをどう解決するが問題となる。この問題を解決するもっとも簡易な手法は、隣接するループアンテナにおいて、列車が進出しようとしているループアンテナから、列車が進入しようとしているループアンテナを統括する内方地上装置に列車進入の予測通知を行う一方、列車が進入したときは、列車の進入したループアンテナから、列車の進出したループアンテナを統括する外方地上装置に、列車進出情報を供給する信号授受システムを構築することである。
【0007】
しかし、この場合には、ループアンテナ及び地上装置の間における信号の授受システム及び処理システムが複雑化するという問題を生じる。
【特許文献1】特開2002−160632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、システムの簡易化を図りつつ、ループアンテナ内への列車進入を確実に検知できるようにした車上/地上間情報伝送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明に係る車上/地上間情報伝送装置は、ループアンテナと、地上装置と、車上装置とを含む。前記ループアンテナは、列車の走行路に沿って、複数敷設されている。前記地上装置及び前記車上装置は、前記ループアンテナを介して、情報の授受を行なう。このうち、前記地上装置は、前記ループアンテナを介して、全列車ポーリング信号を送信する。前記全列車ポーリング信号は、全列車に向けた信号に、シーケンス番号である通番を付加した信号である。前記車上装置は、前記ループアンテナ上に進入したとき、前記全列車ポーリング信号に応答して、自己の列車情報を送信する。前記地上装置は、前記列車情報を受信したとき、新規列車が前記ループアンテナ内に進入したと判定する。
【0010】
上述したように、本発明に係る車上/地上間情報伝送装置では、ループアンテナが、列車の走行路に沿って敷設されており、地上装置及び車上装置はこのループアンテナを介して、情報の授受を行なうことになるが、地上装置は、1つのループアンテナに対して一個備えるだけでよい。従って、列車の走行路全長で見た場合、ループアンテナを長大化し、1つのループアンテナでカバーできる距離を増大させることにより、地上装置の数を減少させ、コストダウンを達成することができる。
【0011】
しかも、従来であれば、数個のループアンテナが必要であった距離を、1つのループアンテナでカバーできるので、ループアンテナの敷設数減少によるコストダウンの利益も得ることができる。
【0012】
本発明の更に特徴的な構成として、地上装置は、ループアンテナを介して、全列車ポーリング信号を送信する。全列車ポーリング信号は、全列車に向けた信号である。車上装置は、ループアンテナ上に進入したとき、全列車ポーリング信号に応答して、自己の列車情報(列車識別情報)を送信する。そして、地上装置は、列車識別情報を受信したとき、新規列車がループアンテナ内に進入したと判定する。したがって、隣接するループアンテナにおいて、列車が進出しようとしているループアンテナから、列車が進入しようとしているループアンテナを統括する内方地上装置に対して、列車進入の予測通知を行う必要がなくなる。このため、列車在線の処理システムが簡素化される。
【0013】
全列車ポーリング信号は、具体的には、全列車に向けた信号に、シーケンス番号である通番を付加した信号とする。地上装置は、新規列車がループアンテナ内に進入したと判定したとき、当該列車に向けた信号に通番を付加した個別ポーリング信号を送信する。車上装置は、自己車両に向けられた個別ポーリング信号に応答する。この構成によれば、個別ポーリング信号によって、列車間の信号の衝突を回避することができる。
【0014】
更に具体的には、車上装置は、個別ポーリング信号に応答した後、同一通番内では、全列車ポーリング信号に応答しない。この構成によれば、通番を利用して、応答済みの列車を、選別することができるから、伝送システムを簡素化することができる。
【0015】
追加的な構成として、地上装置は、全列車ポーリング信号を送信した後の次のポーリング時に、通番を変更するものとする。これにより、シーケンスを進行させることができる。
【0016】
別の態様として、地上装置は、ループアンテナ内において列車識別情報を受信していた特定の列車からの応答がなくなったとき、特定の列車が当該ループアンテナから次のループアンテナに進出したと判定し、自ループエリア制御対象リストから、当該列車を削除するチェックアウト方式をとることもできる。これにより、列車の進入したループアンテナを管理・統括する内方地上装置から、列車の進出したループアンテナを管理・統括する外方地上装置に対し、列車進出情報を供給する必要がなくなるから、列車在線の処理システムが簡素化される。
【0017】
更に具体的な態様として、列車位置判定手段を含むことができる。前記列車位置判定手段は、前記ループアンテナ上における前記列車の位置情報を前記車上装置に与える構成をとることができる。
【0018】
この構成によれば、列車位置判定手段から与えられる列車位置情報により、列車側において、自己の位置を知ることができるから、1閉塞区間/1列車の原則を維持することが可能になる。このため、ループアンテナ上に複数の列車を進入させても、1閉塞区間/1列車という原則を維持し、列車運行の安全を確保し得ることになる。
【0019】
列車位置判定手段は、ループアンテナ上における列車の位置情報を車上装置に与えるという機能を満たすものであればよい。具体例としては、GPSを利用する構成、地上側から車上側に列車位置を報知する構成、及び、列車側で自己の列車位置を検知する構成などを挙げることができる。これらのうち、実用性及び実現性の高いものは、後者の2つである。
【0020】
後者の2つについて、まず、地上側から車上側に列車位置を報知する具体例としては、地上子を用い、地上子を、ループアンテナに沿い、間隔を隔てて配置し、地上子から車上装置に位置情報を与える構成が考えられる。この場合は、列車側において、地上子の位置により、自己の位置を知ることができるから、1閉塞区間/1列車の原則を維持することが可能になる。つまり、列車側から見て、地上子が、実質的に、閉塞区間境界を画定する役割を担うことになる。このため、ループアンテナ上に複数の列車を進入させても、1閉塞区間/1列車という原則を維持し、列車運行の安全を確保し得ることになる。
【0021】
次に、列車側で自己の列車位置を検知する具体例としては、列車側に通常備えられる速度発電機(タコジェネレータ)を用い、車上において、自己の列車位置を検出する構成が考えられる。この場合も、同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように、本発明によれば、システムを簡易化しつつ、ループアンテナ内への列車進入を確実に検知できるようにした車上/地上間情報伝送装置を提供することができる。
【0023】
本発明の他の特徴及びそれによる作用効果は、添付図面を参照し、実施例によって更に詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明に係る車上/地上間情報伝送装置の一実施例を説明する図である。図示の車上/地上間情報伝送装置は、例えば、モノレール、ゴムタイヤ式列車、レールバス、浮上式列車(リニアモーターカー)等に用いられるもので、ループアンテナ1と、列車位置判定手段となる地上子20〜2nと、地上装置3と、車上装置4とを含む。
【0025】
ループアンテナ1は、例えば、平行2線式の誘導線であり、♯1列車、♯2列車の走行路5に沿って、設けられている。
【0026】
地上装置3及び車上装置4は、ループアンテナ1を介して、情報の授受を行なうもので、原則的には、従来より知られているものを用いることができる。地上装置3は、送受信機能及び信号処理機能を有し、ループアンテナ1に対して、♯1列車、♯2列車に必要な情報信号を送信する一方、車上装置4から送信された信号を、ループアンテナ1を通して、受信し、解読する。
【0027】
車上装置4も、送受信機能及び信号処理機能を有し、♯1列車、♯2列車のそれぞれに備えられている。車上装置4は、地上装置からループアンテナ1に供給された信号を、ループアンテナ1を通して受信し、解読する。車上装置4は、♯1列車、♯2列車の前部から信号f1を送信し、後部から信号f2を送信する。これらの信号f1、f2は、車上から地上への情報信号として送信され、ループアンテナ1を介して、地上装置3によって受信され、解読される。信号f1、f2は、デジタル信号であっても、アナログ信号であってもよい。信号f1は閉塞区間進入信号として利用され、信号f2は閉塞区間進出信号として利用される他、上記のように、車上情報信号としても利用される。
【0028】
地上装置3は、ループアンテナ1を介して、全列車ポーリング信号を送信する。全列車ポーリング信号は、全列車によって受信応答可能な信号(以下、ブロードキャスト信号Bと称する)、及び、シーケンス番号である通番を含んでいる。この明細書では、全列車ポーリング信号は(B+通番)として表現する。車上装置4は、自己列車がループアンテナ1上に進入したとき、全列車ポーリング信号(B+通番)に含まれるブロードキャスト信号Bに応答して、自己の列車識別情報を送信する。地上装置3は、列車識別情報を受信したとき、新規列車がループアンテナ1内に進入したと判定する。
【0029】
上述したように、本発明に係る車上/地上間情報伝送装置では、ループアンテナ1が、列車の走行路に沿って敷設されており、地上装置3及び車上装置4はこのループアンテナ1を介して、情報の授受を行なうことになるから、地上装置3は、1つのループアンテナ1に対して一個備えるだけでよい。従って、列車の走行路全長で見た場合、ループアンテナ1を長大化し、1つのループアンテナ1でカバーできる距離を増大させることにより、地上装置3の数を減少させ、コストダウンを達成することができる。
【0030】
しかも、従来であれば、数個のループアンテナ1が必要であった距離を、1つのループアンテナ1でカバーできるので、ループアンテナ1の敷設数減少によるコストダウンの利益も得ることができる。
【0031】
本発明の更に特徴的な構成として、地上装置3は、ループアンテナ1を介して、全列車に向けたブロードキャスト信号Bとシーケンス番号である通番とを含む全列車ポーリング信号(B+通番)を送信し、この全列車ポーリング信号(B+通番)を基本として、地上/車上間情報伝送が行われる。次に、その詳細について、図2及び図3を参照して説明する。
【0032】
<列車がループアンテナ内に進入していない場合>
まず、図2に示すように、時刻t11において、地上装置3から全列車に向けたブロードキャスト信号B及び通番1を含む全列車ポーリング信号(B+通番1)を送信する。図3に示すように、時刻t11において、ループアンテナ1に列車が存在しない場合は、車上からの応答はない。
【0033】
上述のようにして全列車ポーリング信号(B+通番1)を送信した後、次にポーリングするときに、地上装置3は、通番1を次の通番2に変更する。これにより、シーケンスを進行させることができる。なお、車上装置2から地上装置3への送信は、信号f1、f2を持って行われる。
【0034】
<♯1列車がループアンテナ1の内部に進入した場合>
次に、図2に示す時刻t21に、図3に示すように、♯1列車がループアンテナ1の上に進入したとすると、地上装置3からループアンテナ1に供給されたブロードキャスト信号Bに応答して、♯1列車は、自己の♯1列車応答信号を送信する。このとき、通番は、通番1から通番2に変わっており、全列車ポーリング信号(B+通番2)が送信される。地上装置3は、♯1列車応答信号を受信したとき、新規の♯1列車がループアンテナ1の内部に進入したと判定し、自己ループ内制御対象リストに登録する。
【0035】
上記構成によれば、一方のループアンテナから他方のループアンテナ1への列車の進入情報を、地上装置3及び車上装置4の間の直接的な送受信によって、地上装置3において把握することができるから、列車の進入したループアンテナ1を管理・統括する地上装置3、つまり列車進行方向で見て内方に位置する内方地上装置3に対し、列車進入情報を供給する必要がない。このため、列車在線の処理システムが簡素化される。
【0036】
ループアンテナ1に入った♯1列車に対しては、通常の伝送制御を与える必要がある。そこで、地上装置3は、♯1列車がループアンテナ1に進入したと判定したときは、次の通番3を送る時刻t31において、♯1列車に向けた信号(♯1)に通番3を付加した個別ポーリング信号(♯1+通番3)を送信する。♯1列車の車上装置2は、これに応答して、♯1列車応答信号を地上装置3に送信する。これにより、地上装置3と♯1列車との間で通常の伝送制御が行われることになる。
【0037】
地上装置3は、車上装置2から♯1列車応答信号を受信した後、時刻t32において、全列車ポーリング信号(B+通番3)を送信する。♯1列車は、既に、自列車に向けられた信号(♯1)に応答して、自己の♯1列車応答信号を送信しているので、更新された通番3に対しては、応答しないようにする。図3の場合、ループアンテナ1には、♯1列車の他に列車は存在しないから、全列車ポーリング信号(B+通番3)に対して、列車応答はない。
【0038】
<♯2列車がループアンテナ1に進入した場合>
次に、地上装置3は、全列車ポーリング信号(B+通番3)を送信した後、次にポーリングするときに、通番3を通番4に変更する。そして、地上装置3は、自己ループ内制御対象リストを参照し、図2に示す時刻t41に、登録されている♯1列車に対し、信号(♯1)に通番4を付加した個別ポーリング信号(♯1+通番4)を送信する。♯1列車の車上装置2は、これに応答して、♯1列車応答信号を地上装置3に送信する。
【0039】
地上装置3は、車上装置2から♯1列車応答信号を受信した後、時刻t42において、全列車ポーリング信号(B+通番4)を送信する。♯1列車は、既に、自列車に向けられた信号(♯1)に応答して、自己の♯1列車応答信号を送信しているので、更新された通番4に対しては、応答しないが、図3に示すように、♯2列車がループアンテナ1の上に進入したとすると、♯2列車の車上装置2が応答し、車上装置2から地上装置3に♯2列車応答信号が送信される。地上装置3は、♯2列車応答信号を受信したとき、新規の♯2列車がループアンテナ1の内部に進入したと判定し、これを自己ループ内制御対象リストに登録する。
【0040】
車上装置2から地上装置3に♯2列車応答信号が送信され、それが地上装置3によって受信された場合、地上装置3は、全列車ポーリング信号(B+通番4)を送信した後、次にポーリングするときに、通番4を通番5に変更する。そして、地上装置3は、自己ループ内制御対象リストを参照し、図2に示す時刻t51に、登録されている♯1列車に対し、信号(♯1)に通番5を付加した個別ポーリング信号(♯1+通番5)を送信する。♯1列車の車上装置2は、これに応答して、♯1列車応答信号を地上装置3に送信する。
【0041】
次に、地上装置3は、自己ループ内制御対象リストを参照し、図2に示す時刻t52に、登録されている♯2列車に対し、信号(♯2)に通番5を付加した個別ポーリング信号(♯2+通番5)を送信する。♯2列車の車上装置2は、これに応答して、♯2列車応答信号を地上装置3に送信する。これにより、♯2列車と地上装置3との間で、通常の情報伝送が行われることになる。
【0042】
地上装置3は、車上装置2から♯2列車応答信号を受信した後、時刻t53において、全列車ポーリング信号(B+通番5)を送信する。♯1列車及び♯2列車は、既に、自列車に向けられた信号(♯1)、(♯2)に応答して、自己の♯1列車応答信号、♯2列車応答信号を送信しているので、更新された通番5に対しては、応答しない。図3の場合、ループアンテナ1には、♯1列車、♯2列車の他に列車は存在しないから、全列車ポーリング信号(B+通番5)に対する列車応答はない。
【0043】
<♯1列車がループアンテナ1から進出した場合>
地上装置3は、全列車ポーリング信号(B+通番5)を送信した後、次にポーリングするときに、通番5を通番6に変更する。そして、地上装置3は、自己ループ内制御対象リストを参照し、図2に示す時刻t61に、登録されている♯1列車に対し、信号(♯1)に通番5を付加した個別ポーリング信号(♯1+通番6)を送信する。この時点では、図3に示すように、♯1列車は、ループアンテナ1から既に進出しているので、♯1列車の車上装置2からは、♯1列車応答信号は送信されない。これにより、♯1列車がループアンテナ1から進出したと判定することができる。地上装置3は、この結果に基づき、自己ループ内制御対象リストから♯1列車の登録を抹消することになる。
【0044】
地上装置3は、自己ループ内制御対象リストを参照し、図2に示す時刻t62に、登録されている♯2列車に対し、信号(♯2)に通番6を付加した個別ポーリング信号(♯2+通番6)を送信する。♯2列車の車上装置2は、これに応答して、♯2列車応答信号を地上装置3に送信する。
【0045】
地上装置3は、車上装置2から♯2列車応答信号を受信した後、時刻t63において、全列車ポーリング信号(B+通番6)を送信する。♯2列車は、既に、自列車に向けられた信号(♯2)に応答して、自己の♯2列車応答信号を送信しているので、更新された通番6に対しては、応答しない。図3の場合、ループアンテナ1には、♯2列車の他に列車は存在しないから、全列車ポーリング信号(B+通番6)に対する列車応答はない。
【0046】
<♯2列車がループアンテナ1から進出した場合>
地上装置3は、全列車ポーリング信号(B+通番6)を送信した後、次にポーリングするときに、通番6を通番7に変更する。そして、地上装置3は、自己ループ内制御対象リストを参照し、図2に示す時刻t71に、登録されている♯2列車に対し、信号(♯2)に通番7を付加した個別ポーリング信号(♯2+通番7)を送信する。この時点では、図3に示すように、♯2列車は、ループアンテナ1から既に進出しているので、♯2列車の車上装置2からは、♯2列車応答信号は送信されない。これにより、♯2列車がループアンテナ1から進出したと判定することができる。地上装置3は、この結果に基づき、自己ループ内制御対象リストから♯2列車の登録を抹消することになる。
【0047】
実施例の場合、通番1〜7を与えた例を示しているので、以上の処理により1サイクルが終了する。なお、車上側で、一時的な電源落ちなどのために、自己の列車位置が不明になったときの対策として、図2において、1サイクルの末尾などの適当な位置に、予備スロットを設けておくとよい。
【0048】
再び、図1を参照して説明する。地上子20〜2nは、ループアンテナ1に沿い、間隔を隔てて配置され、車上装置4に位置情報を与える。地上子20〜2nにより、ループアンテナ1は、2以上の閉そく区間1T〜nTに区切られている。地上子20〜2nは、♯1列車、♯2列車に対して位置情報を与えることができるものであれば、その形式、構造は問わない。変周式自動列車停止装置などにおいて、従来から用いられている無電源型地上子であってもよいし、地上装置3によって駆動される地上子等であってもよい。
【0049】
上述した車上/地上間情報伝送装置において、矢印Fの方向に走行する♯1列車、♯2列車が地上子21の上まで走行したとき、車上装置4は、例えば、車上アンテナが地上子21と電気的、又は磁気的に結合する。車上装置4は、地上子21から与えられる位置情報により、自己の♯2列車の位置を知ることができる。他の地上子においても、同様にして、その上を通過する列車に対して位置情報を与えることができる。
【0050】
このように、地上子20〜2nの位置により、♯2列車の側において、自己の位置を知ることができるから、1閉塞区間/1列車の原則を維持することが可能になる。つまり、♯2列車の側から見て、地上子20〜2nが、実質的に、閉塞区間境界を画定する役割を担うことになるのである。このため、ループアンテナ1に複数の♯1列車、♯2列車を進入させても、1閉塞区間/1列車の原則を維持し、列車運行の安全を確保し得ることになる。
【0051】
また、1閉塞区間/1列車の原則を維持できるから、ループアンテナ1を長大化し、ループアンテナ1に複数の列車を進入させても、列車運行の安全を確保し得る。このため、ループアンテナ1を長大化し、1つのループアンテナ1でカバーできる距離を増大させ、地上装置3の数を減少させ、コストダウンを達成することができる。例えば、ループアンテナ1を従来の5倍の長さ、例えば、1500mにすれば、地上装置3の個数を1/5に低減できる。
【0052】
図示では、2つの♯1列車、♯2列車が示されているだけであるが、閉塞区間1T〜nTの全てに列車が入っていても、1閉塞区間/1列車の原則を維持できる。従って、本発明に係る伝送方式は、ループアンテナ1の上の列車在線数を、零から閉塞区間数nに相当する数nまで許容することになる。
【0053】
列車位置判定手段としては、列車に速度発電機を備え、この速度発電機を用いて、車上において、自己の列車位置を検出することもできる。閉塞区間は、自己の認識した自己列車位置と、地上装置3との間の情報授受によって得られた他の列車の位置とを基礎として、列車側で判断することができる。
【0054】
以上、実施の形態を参照して説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々の変形、変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る車上/地上間情報伝送装置の一実施例を説明する図である。
【図2】本発明に係る車上/地上間情報伝送装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図3】本発明に係る車上/地上間情報伝送装置の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ループアンテナ
20〜2n 地上子
3 地上装置
4 車上装置
1T〜nT 閉塞区間
♯1、♯2 列車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループアンテナと、地上装置と、車上装置とを含む車上/地上間情報伝送装置であって、
前記ループアンテナは、列車の走行路に沿って、複数敷設されており、
前記地上装置及び前記車上装置は、前記ループアンテナを介して、情報の授受を行なうものであり、
前記地上装置は、前記ループアンテナを介して、全列車に向けた信号に通番を付加した信号である全列車ポーリング信号を送信し、
前記車上装置は、前記ループアンテナ上に進入したとき、前記全列車ポーリング信号に応答して、自己の列車情報を送信し、
前記地上装置は、前記列車情報を受信したとき、新規列車が前記ループアンテナ内に進入したと判定する、
車上/地上間情報伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車上/地上間情報伝送装置であって、
前記地上装置は、前記車上装置から、前記列車情報を受信したとき、当該列車に向けた信号に通番を付加した個別ポーリング信号を送信し、
前記車上装置は、前記個別ポーリング信号に応答する、
車上/地上間情報伝送装置。
【請求項3】
請求項2に記載された車上/地上間情報伝送装置であって、
前記車上装置は、前記個別ポーリング信号に応答した後、同一通番内では、前記全列車ポーリング信号に応答しない、
車上/地上間情報伝送装置。
【請求項4】
請求項1に記載された車上/地上間情報伝送装置であって、
前記地上装置は、前記全列車ポーリング信号を送信した後の次のポーリング時に前記通番を変更する、
車上/地上間情報伝送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載された車上/地上間情報伝送装置であって、
前記地上装置は、前記ループアンテナ内において列車情報を受信した特定の列車からの応答がなく、次のループアンテナから当該列車の在線情報を受信したとき、前記特定の列車が当該ループアンテナから次のループアンテナに進出したと判定する、
車上/地上間情報伝送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載された車上/地上間情報伝送装置であって、列車位置判定手段を含み、前記列車位置判定手段は、前記ループアンテナ上における前記列車の位置情報を前記車上装置に与える、
車上/地上間情報伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−306159(P2006−306159A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128334(P2005−128334)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】