説明

車両のアッパーバック構造

【課題】ルーフサイドインナ付近の剛性を確保しつつ、構成を簡素化できると共に軽量化を図れる車両のアッパーバック構造を提供する。
【解決手段】一対のルーフサイドインナ13間にアッパーバックパネル15を架設し、アッパーバックパネル15の前端側に車幅方向に延びる横設補強部17を設け、その両端側をそれぞれ端部補強部19に接合し、車両前後方向に貫通する貫通開口を設けたアッパーバック構造であり、横設補強部17はアッパーバックパネル15を互いに逆方向へ複数回屈曲させて車幅方向に延びる複数の横設壁部29a〜29cを形成し、これをアッパーバックパネル15の頂部横壁部25より貫通開口23側に配置し、端部補強部31a〜31cは複数の横設壁部29a〜29cに対応するように屈曲した複数の端部壁部31a〜31cを備え、横設壁部29a〜29cと端部壁部31a〜31cとを壁面同士で接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セダンタイプなどの車両において車室と荷室との間に配設される車両のアッパーバック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車室と荷室との間をパーティションパネルで仕切ることなく、貫通開口により連通させた所謂、トランクスルー仕様の車両が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両10は、例えば図6乃至10に示すような車両のアッパーバック構造41を備える。この構造では、一対のルーフサイドインナ13間にアッパーバックパネル45が架設され、車幅方向に延びるアッパーバックメンバ43がアッパーバックパネル45の前端に沿って下面に接合されている。アッパーバックメンバ43は一対のルーフサイドインナ13間の全長に対応する長さで形成されており、両端部が各ルーフサイドインナ13に直接接合されている。
【0004】
アッパーバックパネル45と各ルーフサイドインナ13との間にはそれぞれパッケージブラケット47が接合されており、一対のルーフサイドインナ13間がアッパーバックパネル45及びパッケージブラケット47により連結されている。
各ルーフサイドインナ13には、ホイールハウス35の上部となる位置にストレーナ48が接合されており、ストレーナ48の上端にアッパーバックメンバ43の車幅方向両端側が接合されている。
【0005】
アッパーバックメンバ43、ストレーナ48及びフロアクロスメンバ21の間に車両前後方向に貫通する貫通開口23が形成されている。
貫通開口23が設けられていると、車体側方から応力を受けた際、図7に示すように、アッパーバックパネル45とルーフサイドインナ13とが連結される位置付近では、車幅方向一方側の角度θ1が増大し、他方側の角度θ2が減少するような歪み方向の変形が生じ易くなる。さらに車体前後方向の応力を受けた際、車両前後方向に傾倒するような変形が生じ易くなる。そのためアッパーバック構造41においては、ルーフサイドインナ13付近における十分な剛性を確保する必要がある。
【0006】
このアッパーバック構造41では、図8乃至図10に示すように、アッパーバックメンバ43が車幅方向に延びる第1横設壁部49a乃至第3横設壁部49cを備える。第1横設壁部49a及び第3横設壁部49cは車幅方向及び車高方向に広がる壁面を有し、第2横設壁部49bは車両前後方向及び車幅方向に広がる壁面を有する。第1横設壁部49a及び第3横設壁部49cは、第2横設壁部49bに対して同じ方向に屈曲して設けられており、断面形状が略コ字状となっている。この第1横設壁部49a及び第3横設壁部49cにアッパーバックパネル45がスポット溶接されている。
【0007】
ストレーナ48は、第1横設壁部49a乃至第3横設壁部49cに対応する第1端部壁部51a乃至第3端部壁部51cを有する。第1端部壁部51a及び第3端部壁部51cは車高方向及び車幅方向に広がる壁面を有し、第2端部壁部51bは車両前後方向に広がり車高方向に湾曲した壁面を有する。このストレーナ48では、第1端部壁部51a及び第3端部壁部51cが第2端部壁部51bに対して同じ方向に屈曲して設けられ、断面形状が略コ字状となっている。
【0008】
第1端部壁部51a乃至第3端部壁部51cは、それぞれルーフサイドインナ13やホイールハウス35にスポット溶接され、上端側にアッパーバックメンバ43の第1横設壁部49a及び第3横設壁部49cがスポット溶接されている。第2端部壁部51bには、上端側でアッパーバックメンバ43の第2横設壁部49bがスポット溶接されている。
【0009】
このようなアッパーバック構造41の各ルーフサイドインナ13付近では、ストレーナ48の第2端部壁部51bとアッパーバックメンバ43の第2横設壁部49bが車両前後方向の応力を支持するシェア面となる。ストレーナ48の第1横設壁部49a及び第3横設壁部49cと、アッパーバックメンバ43の第1横設壁部49a及び第3横設壁部49cとが車幅方向の応力を支持するシェア面となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−168434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような車両のアッパーバック構造41では、各ルーフサイドインナ13付近で多数の壁部を配置して互いに接合することで車体剛性を確保していた。そのため、アッパーバック構造41が複雑で部品点数が多く、重量が重くなっており、製造に手間を要してコスト高となっていた。
【0012】
そこで、本発明は、ルーフサイドインナ付近の剛性を確保しつつ、構成を簡素化できると共に、軽量化を図れる車両のアッパーバック構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の車両のアッパーバック構造は、一対のルーフサイドインナ間にアッパーバックパネルが架設され、アッパーバックパネルの前端側に車幅方向に延びる横設補強部が設けられ、横設補強部の両端側がそれぞれ端部補強部に接合され、各端部補強部がそれぞれルーフサイドインナに接合され、横設補強部、端部補強部及びフロアクロスメンバの間に車両前後方向に貫通する貫通開口が設けられたアッパーバック構造において、横設補強部は車幅方向に延びる複数の横設壁部を備え、複数の横設壁部は、アッパーバックパネルを車幅方向に沿う複数の屈曲部で互いに逆方向へ複数回屈曲させることで形成され、且つ、アッパーバックパネルの頂部横壁部より貫通開口側に配置され、端部補強部は複数の横設壁部に対応するように屈曲した複数の端部壁部を備え、複数の横設壁部と複数の端部壁部とが壁面同士で接合されていることを特徴とする。
【0014】
複数の横設壁部は、頂部横壁部側の第1横設壁部と、頂部横壁部から離間した第3横設壁部と、第1横設壁部と第3横設壁部の間に配置された第2横設壁部とを備え、第1横設壁部と第3横設壁部とは、第2横設壁部に対して逆方向となるように屈曲して形成され、複数の端部壁部は、第1横設壁部乃至第3横設壁部に対応する第1端部壁部乃至第3端部壁部を備えているのがよい。
【0015】
第2横設壁部は車両前後方向及び車幅方向に広がる壁面を有し、第2端部壁部は車高方向に湾曲した壁面を有するのが好適である。
第2横設壁部はルーフサイドインナと離間して配置されて、第2端部壁部と接合されているのがよい。
ルーフサイドインナとアッパーバックパネルとがパッケージブラケットを介して連結され、パッケージブラケットが頂部横壁部、第1横設壁部及び第1端部壁部の壁面に接合されているのが好適である。
ルーフサイドインナとアッパーバックパネルとは、パッケージブラケットを介して連結され、パッケージブラケットが端部補強部の第1補強壁部に接合されているのがよい。
一対のルーフサイドインナの下端にはホイールハウスが設けられ、各端部補強部はホイールハウスに接合されているのが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両のアッパーバック構造によれば、アッパーバックパネルを車幅方向に沿う複数の屈曲部で互いに逆方向に複数回屈曲させることで横設補強部の複数の横設壁部が形成され、これらの横設壁部と対応するように端部補強部の複数の端部壁部が屈曲して接合されている。そのため、各横設壁部及び端部壁部を複数の向きに配置することで、複数の向きで応力に対する剛性を確保できる。
しかも剛性を確保できる範囲で各横設壁部及び端部壁部の数や大きさを容易に調整できるため、これらを少なく抑えることができ、軽量化が可能である。
【0017】
アッパーバックパネルの前端部側を屈曲させることで横設補強部が形成されているので、横設補強部を別部材として形成して接合する必要がなく、部品点数を少なくできて構成を簡素化できる。横設壁部がアッパーバックパネルの頂部横壁部より貫通開口側に配置されているため、ルーフサイドインナ付近で各横設壁部及び各端部壁部を小さくでき、重量を少なく抑えることができる。
よって、本発明によれば、ルーフサイドインナ付近の剛性を確保しつつ、構成を簡素化できると共に、軽量化を図れる車両のアッパーバック構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る車両のアッパーバック構造を備えた車両の概略側面図である。
【図2】本発明に係る車両のアッパーバック構造を示す図1のC−C概略断面図である。
【図3】本発明に係る車両のアッパーバック構造におけるコーナー部の部分拡大斜視図である。
【図4】本発明に係る車両のアッパーバック構造におけるコーナー部の部分分解斜視図である。
【図5】(a)は本発明に係る車両のアッパーバック構造における図3のA−A端面図、(b)は図3のB−B端面図である。
【図6】従来技術に係る車両のアッパーバック構造を備えた車両の概略側面図である。
【図7】従来技術に係る車両のアッパーバック構造を示す図6のF−F概略断面図である。
【図8】従来技術に係る車両のアッパーバック構造におけるコーナー部の部分拡大斜視図である。
【図9】従来技術に係る車両のアッパーバック構造におけるコーナー部の部分分解斜視図である。
【図10】(a)は従来技術に係る車両のアッパーバック構造における図8のD−D端面図、(b)は図8のE−E端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図1乃至図5を用いて詳細に説明する。各図中では、Upは車高方向の上方、Frは車両前後方向の前方、Rrは後方、Rhは車幅方向の右方、Lhは左方を示している。
【0020】
本実施形態は、図1及び2に示すように、セダンタイプの車両10に本発明に係る車両のアッパーバック構造11を適用した例である。
アッパーバック構造11では、図2乃至図5に示すように、一対のルーフサイドインナ13間にアッパーバックパネル15が架設され、アッパーバックパネル15の前端側に車幅方向に延びる横設補強部17が設けられている。横設補強部17の両端側がそれぞれ端部補強部としてのストレーナ19に接合され、各ストレーナ19がそれぞれルーフサイドインナ13に接合されている。
これらの横設補強部17、ストレーナ19及びフロアクロスメンバ21の間に、車両前後方向に貫通する貫通開口23が形成されている。所謂、トランクスルー仕様の車両10の場合、この貫通開口23が車室と荷室とを連通する開口として使用される。
【0021】
アッパーバックパネル15は板金構造で形成されており、装着状態で車両上方側が略水平方向に配置される頂部横壁部25となっている。アッパーバックパネル15の車両前方側には、前端に沿ってアッパーバックパネル15全長に折り曲げ構造の横設補強部17が形成されている。頂部横壁部25及び横設補強部17は、一対のルーフサイドインナ13間より短く形成されている。
【0022】
横設補強部17には、長手方向に互いに略平行設けられた複数の屈曲部27a,27b,27cにおいてアッパーバックパネル15を複数回屈曲させることで、車幅方向に延びる第1横設壁部29a、第2横設壁部29b,第3横設壁部29cが、頂部横壁部25側から順に設けられている。第1横設壁部29a及び第3横設壁部29cは車幅方向及び車高方向に広がる壁面を有し、第2横設壁部29bは車両前後方向及び車幅方向に広がる壁面を有する。この実施形態では、全ての横設壁部29a〜29cが、アッパーバックパネル15の頂部横壁部25より貫通開口23側に配置されている。
【0023】
屈曲部27a,27b,27cは互いに逆方向に、ここでは交互に逆方向に屈曲している。頂部横壁部25側の第1横設壁部29aと、頂部横壁部25から離間した側の第3横設壁部29cとが、第1横設壁部29aと第3横設壁部29cの間に配置された第2横設壁部29bに対して逆方向に屈曲している。横設補強部17の屈曲部27a,27b,27cと交差する方向に切断した端面形状がクランク状となっている。
【0024】
横設補強部17をこのような形状にすると、互いに配向方向が異なる第1横設壁部29a乃至第3横設壁部29cを屈曲部27a〜27cを介して隣接配置でき、異なる向きの応力をそれぞれ横設壁部29a〜29cで分担して担持でき、横設補強部17全体の剛性を向上できる。
【0025】
特に限定されるものではないが、アッパーバックパネル15を車両10に装着した状態で、第1横設壁部29aを鉛直方向に対して0度〜±5度の傾斜とし、第2横設壁部29bを水平方向に対して0度〜±5度の傾斜とし、第3横設壁部29cを鉛直方向に対して0度〜±25度の傾斜としてもよい。
【0026】
端部補強部としてのストレーナ19は、板金構造で形成され、横設補強部17の各横設壁部29a〜29cに対応するように複数回屈曲させることで、車両後方側から順に第1端部壁部31a、第2端部壁部31b、第3端部壁部31cが屈曲部33b,33cを介して隣接して設けられている。
第1端部壁部31a及び第3端部壁部31cは、車高方向及び車幅方向に広がる壁面を有する。第2端部壁部31bは、車両前後方向及び車高方向に広がる下端側の壁面から車両前後方向及び車幅方向に広がる上端側の壁面まで変化するように、車高方向に弧状に湾曲した曲面形状の壁面を有する。第1端部壁部31aは、第2端部壁部31bとルーフサイドインナ13又はホイールハウス35との間の全幅に設けられている。第3端部壁部31cは、第2端部壁部31bの内側に設けられている。
屈曲部33b,33cは、第2端部壁部31bに対応する弧状の曲線形状となっている。
【0027】
ストレーナ19では、第1端部壁部31a及び第3端部壁部31cが第2端部壁部31bに対して逆方向に設けられており、屈曲部33b,33cは交互に逆方向に屈曲している。ストレーナ19の屈曲部33b,33cと交差する方向の端面形状がクランク状となっている。各屈曲部33b,33cの屈曲角度は横設補強部17の屈曲部27b,27cの屈曲角度と略同じである。屈曲部33b,33c間の距離、即ち、第2端部壁部31bの幅は横設補強部17の第2横設壁部29bの幅と略同じである。これによりストレーナ19の各端部壁部31a〜31cが、横設補強部17の各横設壁部29a〜29cと容易に接合可能となる。
【0028】
ストレーナ19の第1端部壁部31aにはルーフサイドインナ13に対する接合部32aが設けられている。第3端部壁部31cにはルーフサイドインナ13に対する接合部を設ける必要はない。
【0029】
このアッパーバック構造11では、アッパーバックパネル15とストレーナ19とが接合され、ストレーナ19とルーフサイドインナ13とが接合され、アッパーバックパネル15とルーフサイドインナ13との間にパッケージブラケット37が配置され、ストレーナ19と共に接合されている。ルーフサイドインナ13とアッパーバックパネル15とがパッケージブラケット37を介して連結されている。
接合方法は限定されるものではないが、スポット溶接により接合されている。各図において、Xは溶接点の一部を示す。溶接点は適宜設定可能である。
【0030】
ストレーナ19と横設補強部17との接合は、複数の端部壁部31a〜31cと複数の横設壁部29a〜29cとを接合することで行われている。
第1横設壁部29aの壁面と第1端部壁部31aの壁面、第2横設壁部29bの底面側の壁面と第2端部壁部31bの上端側の壁面、第3横設壁部29cの壁面と第3端部壁部31cの壁面が、それぞれ面同士を対向して当接させた状態で接合されている。
【0031】
ここでは、横設補強部17の各横設壁部29a〜29cはそれぞれ大きく湾曲することなく平面状に延びている。一方、ストレーナ19の第2端部壁部31bは大きく湾曲し、第1端部壁部31aは第2端部壁部31bの外側に、第3端部壁部31cは第2端部壁部31bの内側に、大きく湾曲することなく平面状に延びている。そして第2端部壁部31bの上端が横設補強部17のルーフサイドインナ13側の端部より奥まった中央側に挿入されている。
【0032】
そのため、第1横設壁部29aと第1端部壁部31aとが接合されると共に、第3横設壁部29cと第3端部壁部31cとが接合された状態で、第2端部壁部31bが上端側で第2横設壁部29bと当接して接合されることで、下方側で互いに離間し、中空閉断面形状が形成されている。これにより横設補強部17とストレーナ19とが重なる部位に、斜めに傾斜した立体構造が形成されて強度が確保されている。
【0033】
なおこの接合状態では、ルーフサイドインナ13と横設補強部17とが離間した位置に配置されており、第2横設壁部29b及び第3横設壁部29cがルーフサイドインナ13と離間した位置で、第2端部壁部31bと第3端部壁部31cとが接合されている。
【0034】
ストレーナ19とルーフサイドインナ13との接合は、第1端部壁部31aの側方をルーフサイドインナ13に接合し、第1端部壁部31a乃至第3端部壁部31cの下端をホイールハウス35に接合することで行われている。
【0035】
パッケージブラケット37は、次のようにしてアッパーバックパネル15とルーフサイドインナ13との間に接合されている。
パッケージブラケット37の車両前側の壁部とストレーナ19の第1端部壁部31aと横設補強部17の第1横設壁部29aとが連続するように、互いに各壁面同士を当接又は積層した状態で接合され、パッケージブラケット37の車両上側の壁部とアッパーバックパネル15の頂部横壁部25とが連続するように、互いに各壁面同士を当接又は積層した状態で接合されている。さらに車幅方向外側の端部とルーフサイドインナ13とが接合されている。
このようにパッケージブラケット37が各部材と接合されることで、一対のルーフサイドインナ13間の全長がアッパーバックパネル15及びパッケージブラケット37により連結されている。
【0036】
このようなアッパーバック構造11では、車体に各種の応力が負荷されると、ルーフサイドインナ13付近に負荷され、向きに応じて各部で担持される。
各ルーフサイドインナ13付近に車体前後方向に応力が負荷されると、例えばストレーナ19の第2端部壁部31b、横設補強部17の第2横設壁部29bが車両前後方向の応力を支持するためのシェア面として作用する。
各ルーフサイドインナ13付近に車幅方向に応力が負荷されると、例えばストレーナ19の第1端部壁部31a、第3端部壁部31c、横設補強部17の第1横設壁部29a、第3横設壁部29c、パッケージブラケット37の車両前側の壁部が、車幅方向の応力を支持するためのシェア面として作用する。
【0037】
以上のような車両のアッパーバック構造11によれば、横設補強部17の複数の横設壁部29a〜29cが、アッパーバックパネル15を車幅方向に沿う複数の屈曲部で互いに逆方向に複数回屈曲させることで形成され、横設補強部17の各横設壁部29a〜29cと対応するようにストレーナ19の各端部壁部31a〜31cが屈曲して接合されている。ここでは各横設壁部29a〜29c及び端部壁部31a〜31cを複数の向きに配置できるため、複数の向きで応力に対する強度が得られる。そのためルーフサイドインナ13付近の十分な剛性を確保できる。
しかも、各横設壁部29a〜29c及び端部壁部31a〜31cの数や大きさを、剛性を確保できる範囲で容易に調整できるため、これらを少なく抑えることが可能で、軽量化を図ることが可能である。
【0038】
アッパーバックパネル15の前端部側を屈曲させて横設補強部17が形成されているので、従来のように横設補強部17を別部材に設ける必要がない。そのため車両のアッパーバック構造11を構成する部品点数を少なくでき、構成を簡素化できる。
横設壁部29a〜29cがアッパーバックパネル15の頂部横壁部25より貫通開口23側に配置されているので、各横設壁部29a〜29c及び各端部壁部31a〜31cを内側に配置して小さくできる。しかも、横設壁部29cと端部壁部31cとが横設壁部29b及び端部壁部31bよりも内側で接合されるため、外側に大きく横設壁部29cや端部壁部31cを設けて接合する必要がない。そのため、重量をより少なく抑えることができる。
その結果、ルーフサイドインナ13付近の剛性を確保して所望のボディ捩り剛性を実現しつつ、構成を簡素化できると共に軽量化することが可能である。
【0039】
この車両のアッパーバック構造11では、第1横設壁部29aと第3横設壁部29cとが第2横設壁部29bに対して逆方向となるように屈曲され、第1端部壁部31a乃至第3端部壁部31cがこれに対応して接合可能な形状に形成されている。そのため、横設補強部17の構成を簡素化でき、横設補強部17を軽量化できる。
【0040】
この車両のアッパーバック構造11では、第2横設壁部29bが車両前後方向及び車幅方向に広がる壁面を有しており、第2端部壁部31bが車高方向に湾曲した断面円弧状の壁面を有している。そのため、車体に応力が負荷された際、車両前後方向の応力を、連続した第2横設壁部29b及び第2端部壁部31bにより支持でき、車幅方向の応力を、連続した第3横設壁部29c及び第3端部壁部31cにより支持できる。特に、第2横設壁部29b及び第2端部壁部31bの内側で、連続した第3横設壁部29c及び第3端部壁部31cにより車幅方向の応力を張力として支持することができるため、剛性をより向上できる。
【0041】
この車両のアッパーバック構造11では、第2横設壁部29bがルーフサイドインナ13と離間して配置されて、第2端部壁部31bと接合している。そのため第2横設壁部29b及び第3横設壁部29cを過剰に長く形成したり、ルーフサイドインナ13との接続部を設けたりする必要がなく、より軽量化及び構成の簡素化を図れる。
【0042】
この車両のアッパーバック構造11では、ルーフサイドインナ13とアッパーバックパネル15とがパッケージブラケット37を介して連結され、パッケージブラケット37がアッパーバックパネル15の頂部横壁部25、第1横設壁部29a、及びストレーナ19の第1端部壁部31aに接合されている。そのため、パッケージブラケット37をストレーナ19の幅全体に対応する幅に設ける必要がなく、その分軽量化を図れる。しかも、パッケージブラケット37及びアッパーバックパネル15を合わせた全長が十分な強度で連続でき、連続した第1横設壁部29aと第1端部壁部31aとパッケージブラケット37の車両前側の壁部とにより、車幅方向の応力を支持できる。そのためルーフサイドインナ13間の全長で剛性を確保できる。
【0043】
なお、上記実施形態は本発明の範囲内において適宜変更可能である。例えば上記では、第1横設壁部29a乃至第3横設壁部29cが互いに隣接し、第1横設壁部29a乃至第3横設壁部29cが互いに隣接した例について説明した。しかしこれらは互いに離間して設けられていてもよく、複数の屈曲部位や湾曲部位を介して配置されていてもよい。
上記では端部補強部を板金構造のストレーナにより構成したが、支柱等他の構造であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 車両
11 アッパーバック構造
13 ルーフサイドインナ
15 アッパーバックパネル
17 横設補強部
19 ストレーナ
21 フロアクロスメンバ
23 貫通開口
25 頂部横壁部
27a,27b,27c 屈曲部
29a 第1横設壁部
29b 第2横設壁部
29c 第3横設壁部
31a 第1端部壁部
31b 第2端部壁部
31c 第3端部壁部
32a 接合部
33b,33c 屈曲部
35 タイヤハウス
37 パッケージブラケット
43 アッパーバックメンバ
45 アッパーバックパネル
47 パッケージブラケット
48 ストレーナ
49a 第1横設壁部
49b 第2横設壁部
49c 第3横設壁部
51a 第1端部壁部
51b 第2端部壁部
51c 第3端部壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のルーフサイドインナ間にアッパーバックパネルが架設され、該アッパーバックパネルの前端側に車幅方向に延びる横設補強部が設けられ、該横設補強部の両端側がそれぞれ端部補強部に接合され、該各端部補強部がそれぞれ上記ルーフサイドインナに接合され、上記横設補強部、上記端部補強部及びフロアクロスメンバの間に車両前後方向に貫通する貫通開口が設けられた車両のアッパーバック構造において、
上記横設補強部は車幅方向に延びる複数の横設壁部を備え、該複数の横設壁部は、上記アッパーバックパネルを車幅方向に沿う複数の屈曲部で互いに逆方向へ複数回屈曲させることで形成され、且つ、上記アッパーバックパネルの頂部横壁部より上記貫通開口側に配置され、
上記端部補強部は上記複数の横設壁部に対応するように屈曲した複数の端部壁部を備え、
上記複数の横設壁部と上記複数の端部壁部とが壁面同士で接合されていることを特徴とする、車両のアッパーバック構造。
【請求項2】
前記複数の横設壁部は、前記頂部横壁部側の第1横設壁部と、上記頂部横壁部から離間した第3横設壁部と、上記第1横設壁部と上記第3横設壁部の間に配置された第2横設壁部とを備え、上記第1横設壁部と上記第3横設壁部とは上記第2横設壁部に対して逆方向となるように屈曲して形成され、前記複数の端部壁部は、上記第1横設壁部乃至第3横設壁部に対応する第1端部壁部乃至第3端部壁部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の車両のアッパーバック構造。
【請求項3】
前記第2横設壁部は車両前後方向及び車幅方向に広がる壁面を有し、前記第2端部壁部は車高方向に湾曲した壁面を有することを特徴とする、請求項2に記載の車両のアッパーバック構造。
【請求項4】
前記第2横設壁部は前記ルーフサイドインナと離間して配置されて、前記第2端部壁部と接合されていることを特徴とする、請求項3に記載の車両のアッパーバック構造。
【請求項5】
前記ルーフサイドインナと前記アッパーバックパネルとがパッケージブラケットを介して連結され、該パッケージブラケットが前記頂部横壁部、前記第1横設壁部及び前記第1端部壁部の壁面に接合されていることを特徴とする、請求項2乃至4の何れかに記載の車両のアッパーバック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−144102(P2012−144102A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2568(P2011−2568)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】