説明

車両のインスペクションカバーの構造

【課題】インスペクションカバー内部の点検を簡単にしてメインテナンス性を向上し、また、インスペクションカバーの分解を簡単にした車両のインスペクションカバーの構造を提供する。
【解決手段】車両の前部座席の後部に後方室に臨むヘッダボードを設け、該ヘッダボード8に前記後方室に向けて開閉するインスペクションカバー3を設置してなる車両のインスペクションカバーの構造において、インスペクションカバー3には、後方室に向けて開口する開口部15を開閉する点検用小窓12を設け、該点検用小窓12を開けたときタンク類の注入口が該点検用小窓の開口部15に臨むように構成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両において、該車両の前部座席の後部に、後方室に臨むヘッダボードと、該ヘッダボードを前記後方室に向けて開閉するインスペクションカバーとを設置して構成された車両のインスペクションカバーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は従来のダブルキャブ車の後部室近傍の概略側面図である。
図3において、車両の前方室6には、運転席及び助手席からなる前部席1が配置され、該前部席1の後方には後部席2が配置されている。該前部席1の後方と後部席2との間に形成される後方室5の前方の、前記前部席1の下部相当位置には、内部にサージタンク4やパワステタンク等が配置されたヘッダボード8が設けられている。
【0003】
該ヘッダボード8には、前記後方室5に向けて開閉するインスペクションカバー3が取付けられている。該インスペクションカバー3は、薄鋼板からなり周囲に複数個配置されたボルト14により前記ヘッダボード8に、着脱可能に取付けられている。
前記サージタンク4への給水、パワステタンク9への給油時や、サージタンク4やパワステタンク9等の点検整備時には、前記複数個のボルト14を除去して、前記インスペクションカバー3を取り外している。
【0004】
尚、特許文献1(特開平11−301244号公報)には、ダブルキャブ車において、インスペクションカバー部を改良して、後方室を効率的に空調することができ、空調ダクトの配管を容易にしたインスペクションカバー附近の構造が示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−301244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3に示される従来の後部室近傍の配置では、前記サージタンク4への給水、パワステタンク9への給油時や、サージタンク4やパワステタンク9等の点検整備時には、前記複数個のボルト14を取り外して、前記インスペクションカバー3を取り外している。
即ち、前記サージタンク4、パワステタンク9への給水、給油時や点検整備時には、フロアマットを剥がした後、総重量で約1.5kg程度のインスペクションカバー3を取り外している。
【0007】
このため、インスペクションカバー3の取り外しに、総重量で約1.5kg程度のインスペクションカバー3を外すとともに、また複数のボルト14を取り外すことから、取り外しに多くの工数を必要し、外したインスペクションカバー3を作業スペース確保のため室外に出す必要がある。
また、サージタンク4、パワステタンク9への給水、給油時や点検整備時毎に、前記取り外しを行うため、メインテナンス性が悪い。
【0008】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、インスペクションカバー内部の点検を簡単にしてメインテナンス性を向上し、また、インスペクションカバーの分解を簡単にした車両のインスペクションカバーの構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる目的を達成するもので、車両の前部座席の後部に後方室に臨むヘッダボードを設け、該ヘッダボードに前記後方室に向けて開閉するインスペクションカバーを設置してなる車両のインスペクションカバーの構造において、前記インスペクションカバーは、前記後方室に向けて開口する開口部を開閉する点検用小窓を設け、該点検用小窓を開けたときタンク類の注入口が該点検用小窓の開口部に臨むように構成されたことを特徴とする。
【0010】
かかる発明において、好ましくは、前記点検用小窓は、該点検用小窓の下側に開閉用のヒンジを車幅方向に複数個所設けて、該点検用小窓を前記ヒンジを中心に回動可能として、前記点検用小窓を前記ヒンジ回りに回動させて該点検用小窓により前記開口部を開閉するように構成される。
【0011】
また、かかる発明において、好ましくは、前記点検用小窓を開けた時、複数のタンク類の注入口が該開口部に臨むとともに、それぞれの注入口が前記開口部の中央部に寄せて配設されるように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の前部座席の後部に後方室に臨むヘッダボードを設け、該ヘッダボードに前記後方室に向けて開閉するインスペクションカバーを設置してなる車両のインスペクションカバーの構造において、前記インスペクションカバーは、前記後方室に向けて開口する開口部を開閉する点検用小窓を設け、該点検用小窓を開けたときタンク類の注入口が該点検用小窓の開口部に臨むように構成したので、
サージタンクへの給水時やパワステタンクへの給油時に、またはサージタンクやパワステタンク等の点検整備時には、前記後方室に向けて開口する開口部を開閉する点検用小窓を開いて、該開口部を通して、前記サージタンクへの給水時やパワステタンクへの給油時に、またはサージタンクやパワステタンク等の点検整備を行うことができ、従来技術のように、サージタンクへの給水時やパワステタンクへの給油時に、またはサージタンクやパワステタンク等の点検整備時に、フロアマットを剥がしてからインスペクションカバーを取り外す必要がなく、作業スペースの確保も容易である。
また、サージタンクへの給水時やパワステタンクへの給油時に、またはサージタンクやパワステタンク等の点検整備時やサージタンやパワステタンク等の点検整備時には、点検用小窓を開いて開口し、該開口部を利用して簡単に実施でき、これによってメインテナンス性が向上する。
【0013】
しかも、前記点検用小窓にサージタンクの注入口を点検用小窓の開口部に臨むようにしているので、点検用小窓を開くのみでサージタンクの注入作が簡単にできる。
また、前記点検用小窓及び開口部の高さを、適正位置に保持可能となり、これによってサージタンク、パワステタンクへの給水、給油時やサージタンやパワステタンク等の点検整備時の作業性が向上する。
【0014】
また、点検用小窓は、該点検用小窓の下側に開閉用のヒンジを車幅方向に複数個所設けて、該点検用小窓を前記ヒンジを中心に回動可能として、前記点検用小窓を前記ヒンジ回りに回動させて該点検用小窓により前記開口部を開閉するように構成すれば、点検用小窓のヒンジを下側に設置することにより、点検用小窓をヒンジ回りに回動して下側に向けるので、給水、給油作業中または点検作業中に点検用小窓の位置が安定し、すなわち、点検用小窓が自動的に閉まり方向に回動することがなく作業の安全性が向上する。
【0015】
また、前記点検用小窓を開けた時、前記サージタンクの注入口および、パワステタンクの注入口等のタンク類の注入口が該開口部に臨むとともに、それぞれの注入口が前記開口部の中央部に寄せられて配設されているので、すなわち、点検時に必要な部分のみが開口部に臨んでいるため、点検用小窓の開口部分の大きさを極力小さくでき、ヘッダボードの剛性の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0017】
図1は本発明の実施例にかかるダブルキャブ車のインスペクションカバー取付部の後方から見た斜視図である。図2は、図1のA―A断面図である。
図1は、図3のZ矢方向に見た図(矢視図)で、図3において、車両の前方室6には、運転席及び助手席からなる前部席1が配置され、該前部席1の後方には後部席2が配置されている。該前部席1の後方と後部席2との間には、キャブブリッジ7が位置され、そのキャブブリッジ7の側部および上部にはサージタンク4やパワステタンク9等が配置されている。そして、そのサージタンク4やパワステタンク9等の後方で後方室5側に臨む位置には、ヘッダボード8が設けられている。
【0018】
該ヘッダボード8には、前記後方室5に向けて開閉するインスペクションカバー3が取付けられている。該インスペクションカバー3は、薄鋼板からなり周囲に複数個配置されたボルト14により前記ヘッダボード8に、複数のボルト14により着脱可能に取付けられている。
【0019】
前記インスペクションカバー3の、前部中央の上部には、前記後方室5に向けて開口する開口部15(図2参照)が開口され、該開口部15を開閉する点検用小窓12が設置されている。前記点検用小窓12は、ガスケット(図示省略)を介して該開口部15に取付けられ、該ガスケットにより開口部15とのシールを行っている。
従って前記点検用小窓12を設けた部分のインスペクションカバー3は、該点検用小窓12が設置された2重層薄板体となっている。
そして、該点検用小窓12は、前記サージタンク4の注入口4aが該点検用小窓12の開口部15に臨むように設置して、該点検用小窓12を明けたとき、容易に開口部15からサージタンク4への給水、およびパワステタンク9への給油が可能となっている。
【0020】
さらに、図1に示すように前記サージタンク4の注入口4aおよび、パワステタンク9の注入口9aはそれぞれ点検用小窓12の中央部に寄せられて配置されている。
従って、それぞれの注入口4a、9aが開口部15の車幅方向中央部に寄せられて配設されているので、すなわち、点検時、注入時に必要な部分のみが開口部15に臨んでいるため、点検用小窓12の開口部15の大きさを極力小さくでき、ヘッダボード8の剛性の低下を抑えることができる。
【0021】
該点検用小窓12の上部にはつまみ13が固着され、下部の2箇所には該点検用小窓12の開閉用のヒンジ11が車幅方向に2個所(複数個所であれば良い)設けられている。従って、前記点検用小窓12を前記ヒンジ11を中心に回動可能として、前記点検用小窓12を前記ヒンジ11回りに回動させて該点検用小窓12により前記開口部15を開閉する。
また、前記つまみ13は、これをつまんで点検用小窓12をインスペクションカバー3に押し付けて該点検用小窓12により開口部15を閉鎖したときには、点検用小窓12をインスペクションカバー3にロックされて該点検用小窓12からの漏油等を防止する一方、該つまみ13をつまんで点検用小窓12を前記ヒンジ11回りに回動させることにより、容易にインスペクションカバー3から開放可能となっている。
上記のように、点検用小窓12のヒンジ11を下側に設置して該点検用小窓12をヒンジ11回りに回動して下側に向けるので、点検用小窓12の位置が安定し、すなわち、点検用小窓12が開けた後に自動的に閉まり方向に回動することがなく作業の安全性が向上する。
【0022】
従って、かかる実施例によれば、前記開口部15及び点検用小窓12を設けたことにより、サージタンク4、パワステタンク9への給水、給油時やサージタンク4やパワステタンク9等の点検整備時には、前記後方室5に向けて開口する開口部15を、点検用小窓12を開いて開口し該開口部15を通して、前記サージタンク4、パワステタンク9への給水、給油時やサージタンク4やパワステタンク9等の点検整備を行うことができる。
従って、図3に示す従来技術のように、サージタンク4への給油時や点検整備時に、フロアマットを剥がしてからインスペクションカバー3を取り外す必要がないので、該従来技術に比べて取り外し工数が低減され、また、インスペクションカバー3を取り外す必要がないので肉体的な疲労も低減される。
また、サージタンク4、パワステタンク9への給水、給油時やサージタンク4やパワステタンク9等の点検整備時には、点検用小窓12を開いて開口し該開口部15を利用して簡単に実施でき、これによってメインテナンス性が向上する。
【0023】
しかも、前記のように、点検用小窓12にサージタンク4の注入口を前記開口部15に臨むようにしているので、点検用小窓12を開くのみでサージタンク4の注入動作が簡単にできる。
また、前記点検用小窓12及び開口部15の高さを、適正位置に設置可能となり、これによってサージタンク4、パワステタンク9への給水、給油時や給油時やサージタンク4やパワステタンク9等の点検整備時の作業性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、インスペクションカバー内部の点検を簡単にしてメインテナンス性を向上し、また、インスペクションカバーの分解を簡単にした車両のインスペクションカバーの構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例にかかるダブルキャブ車のインスペクションカバー取付部の後方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施例を示す図1のA−A断面図である。
【図3】従来技術にかかるダブルキャブ車の後部室近傍の概略側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 前部席
2 後部席
3 インスペクションカバー
4 サージタンク
4a 注入口
5 後方室
6 前方室
8 ヘッダボード
9 パワステタンク
9a 注入口
11 ヒンジ
12 点検用小窓
14 ボルト
15 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部座席の後部に後方室に臨むヘッダボードを設け、該ヘッダボードに前記後方室に向けて開閉するインスペクションカバーを設置してなる車両のインスペクションカバーの構造において、
前記インスペクションカバーは、前記後方室に向けて開口する開口部を開閉する点検用小窓を設け、該点検用小窓を開けたときタンク類の注入口が該点検用小窓の開口部に臨むように構成されたことを特徴とする車両のインスペクションカバーの構造。
【請求項2】
前記点検用小窓は、該点検用小窓の下側に開閉用のヒンジを車幅方向に複数個所設けて、該点検用小窓を前記ヒンジを中心に回動可能として、前記点検用小窓を前記ヒンジ回りに回動させて該点検用小窓により前記開口部を開閉するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の車両のインスペクションカバーの構造。
【請求項3】
前記点検用小窓を開けた時、複数のタンク類の注入口が該開口部に臨むとともに、それぞれの注入口が前記開口部の中央部に寄せて配設されることを特徴とする請求項1記載の車両のインスペクションカバーの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−137680(P2010−137680A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315164(P2008−315164)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】