説明

車両のスペアタイヤ配置構造

【課題】リヤシートの下方に有効な空間を確保することのできる車両のスペアタイヤ配置構造を提供する。
【解決手段】リヤシート11の後方の後部荷室12に物品を収容する収容凹部19を設け、リヤシート11の下方にスペアタイヤ22と燃料タンク21を上下方向で重なるように配置する。スペアタイヤ22と燃料タンク21は、一部のみが重なるように、燃料タンク21に対してスペアタイヤ22を車両前後方向の後方側にオフセットさせる。燃料タンク21の上方、かつ、スペアタイヤ22の前方の空間をシート収納スペース23とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のスペアタイヤの配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハッチバック車両等においては、リヤシートの後方の後部荷室の下にスペアタイヤを配置したものが知られている。しかし、このスペアタイヤ配置構造においては、後部荷室の下方にスペアタイヤが配置されるため、後部荷室の容量が狭められるうえ、車両後部のクラッシュスペースの確保が難しくなる。
このため、これに対処するスペアタイヤ配置構造として、リヤシートの下方に燃料タンクとスペアタイヤを車幅方向に併設したものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−69862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この従来のスペアタイヤ配置構造においては、後部荷室の容量とクラッシュスペースを充分に確保できるようになるものの、リヤシートの下方にシート収納等に利用可能な有効な空間を確保することが難しい。
【0004】
そこで、この発明は、リヤシートの下方に有効な空間を確保することのできる車両のスペアタイヤ配置構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、リヤシート(例えば、後述の実施形態におけるリヤシート11)の後方の後部荷室(例えば、後述の実施形態における後部荷室12)に物品を収容する収容凹部(例えば、後述の実施形態における収容凹部19)が設けられるとともに、前記リヤシートの下方に燃料タンク(例えば、後述の実施形態における燃料タンク21)が設けられている車両のスペアタイヤ配置構造であって、前記収容凹部の車両前後方向の前方側に、前記スペアタイヤと燃料タンクとを上下方向で重なるように配置したことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記燃料タンクを、前記スペアタイヤの下方側に配置したことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記スペアタイヤと燃料タンクとを、車幅方向中央に位置するように配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記スペアタイヤの車両前後方向の中心(例えば、後述の実施形態における中心C2)と、前記燃料タンクの車両前後方向の中心(例えば、後述の実施形態における中心C1)とが、車両前後方向でオフセットするように配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記燃料タンクに対するスペアタイヤのオーバーラップ領域を、前記燃料タンクの車両前後方向の中心に対してオフセットさせたことを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記スペアタイヤに対する燃料タンクのオーバーラップ領域を、前記スペアタイヤの車両前後方向の中心に対してオフセットさせたことを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記燃料タンクを、前記スペアタイヤの下方側でかつ車両前後方向の前方側に配置するとともに、前記燃料タンクの上方、かつ、前記スペアタイヤの車両前後方向の前方側に、前記リヤシートが収納可能なシート収納スペース(例えば、後述の実施形態におけるシート収納スペース23)を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記スペアタイヤの下方、かつ、前記燃料タンクの車両前後方向の後方側に、リヤデファレンシャルギヤ(例えば、後述の実施形態におけるリヤデファレンシャルギヤ25)を配置したことを特徴とする。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記スペアタイヤの下方、かつ、前記燃料タンクの車両前後方向の後方で、車幅方向両側に配置されたリヤサイドフレーム(例えば、後述の実施形態におけるリヤサイドフレーム14)に掛け渡され、前記スペアタイヤの後部を下方から支持する第1クロスメンバ(例えば、後述の実施形態における第1クロスメンバ15)を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、リヤデファレンシャルギヤを、前記スペアタイヤの下方、かつ、前記燃料タンクの車両前後方向の後方側に配置し、前記第1クロスメンバを、前記リヤデファレンシャルギヤよりも後方に配置したことを特徴とする。
【0015】
請求項11に記載の発明は、請求項7〜10のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記スペアタイヤの上方で、車幅方向両側に配置されたリヤサイドフレームに掛け渡され、前記リヤシートの後部を支持するとともに、前記スペアタイヤの前部を上方から支持する第2クロスメンバ(例えば、後述の実施形態における第2クロスメンバ15)を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項12に記載の発明は、請求項7〜11のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記スペアタイヤの車両前後方向の前方、かつ、前記リヤシートと前記燃料タンクの間で、車幅方向両側に配置されたリヤサイドフレームに掛け渡され、前記リヤシートの前部を支持するとともに、前記スペアタイヤの前端部を位置決めする第3クロスメンバ(例えば、後述の実施形態における第3クロスメンバ17)を設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項13に記載の発明は、請求項7〜11のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記スペアタイヤの下方、かつ、前記燃料タンクの車両前後方向の後方で、車幅方向両側に配置されたリヤサイドフレームに掛け渡され、前記スペアタイヤの後部を下方から支持する第1クロスメンバを設け、前記スペアタイヤの上方で前記リヤサイドフレームに掛け渡され、前記リヤシートの後部を支持するとともに、前記スペアタイヤの前部を上方から支持する第2クロスメンバを設け、前記スペアタイヤの車両前後方向の前方、かつ、前記リヤシートと前記燃料タンクの間で、前記リヤサイドフレームに掛け渡され、前記リヤシートの前部を支持するとともに、前記スペアタイヤの前端部を位置決めする第3クロスメンバを設け、前記第1,第2および第3クロスメンバにより、前記スペアタイヤが格納されるスペアタイヤ格納部(例えば、後述の実施形態におけるスペアタイヤ格納部26)を形成したことを特徴とする。
【0018】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記スペアタイヤと燃料タンクは、車幅方向両側に配置されたリヤサイドフレームよりも車幅方向中央側で、かつ、少なくとも一部が前記リヤサイドフレームと上下方向でラップする高さに配置されていることを特徴とする。
【0019】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜14のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造において、前記収納凹部は、前記スペアタイヤの厚みと略同等またはそれ以上の高さに形成されるとともに、車両前方側の壁部に、前記スペアタイヤを引き出し可能とする開閉蓋(例えば、後述の実施形態における開閉蓋28)を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、収容凹部の車両前後方向の前方側に、スペアタイヤと燃料タンクとを上下方向で重なるように配置したため、スペアタイヤや燃料タンクの車両前後方向の前方側に高さのある有効スペースを確保することができるうえ、スペアタイヤや燃料タンクの車両前後方向の後方側に充分な物品収納容量とクラッシュスペースを確保することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、重量の重い燃料タンクをスペアタイヤの下方側に配置したため、車両の低重心化を図り、走行安定性を向上させることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、重量物であるスペアタイヤと燃料タンクを車幅方向中央に配置したため、車両の幅方向の重量バランスを良好にすることができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、スペアタイヤと燃料タンクの車両前後方向のオフセット領域に、利用可能な有効スペースを確保することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、燃料タンクに対するスペアタイヤのオーバーラップ領域を、燃料タンクの車両前後方向の中心に対してオフセットさせたため、燃料タンクの上面側若しくは下面側に、燃料タンクの車両前後方向の長さの半分よりも広い利用可能なスペースを確保することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、スペアタイヤに対する燃料タンクのオーバーラップ領域を、スペアタイヤの車両前後方向の中心に対してオフセットさせたため、スペアタイヤの下面側若しくは上面側に、スペアタイヤの車両前後方向の長さの半分よりも広い利用可能なスペースを確保することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、燃料タンクを、スペアタイヤの下方側でかつ車両前後方向の前方側に配置するとともに、前記燃料タンクの上方、かつ、スペアタイヤの車両前後方向の前方側に、リヤシートが収納可能なシート収納スペースを設けたため、リヤシートを前方に倒し込んで効率良く収納することができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、燃料タンクを、スペアタイヤの下方側でかつ車両前後方向の前方側に配置するとともに、スペアタイヤの下方、かつ、前記燃料タンクの車両前後方向の後方側にリヤデファレンシャルギヤを配置したため、車両後部のスペース効率を向上させることができる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、スペアタイヤの下方、かつ、燃料タンクの車両前後方向の後方で、車幅方向両側のリヤサイドフレームに第1クロスメンバを掛け渡し、スペアタイヤの後部を第1クロスメンバで下方から支持するようにしたため、スペアタイヤの支持安定性を高めることができる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、前記第1クロスメンバをリヤデファレンシャルギヤよりも後方に配置したため、側面衝突時や後面衝突時に、リヤデファレンシャルギヤを第1クロスメンバによって保護することができる。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、スペアタイヤの上方で車幅方向両側のリヤサイドフレームに第2クロスメンバを掛け渡し、第2クロスメンバによってリヤシートの後部を支持し、かつ、スペアタイヤの前部を上方から支持するようにしたため、スペース効率の低下を招くことなく、第2クロスメンバによってリヤシートとスペアタイヤを高い剛性で安定的に支持することができる。
【0031】
請求項12に記載の発明によれば、スペアタイヤの車両前後方向の前方、かつ、リヤシートと燃料タンクの間で、車幅方向両側のリヤサイドフレームに第3クロスメンバを掛け渡し、第3クロスメンバによってリヤシートの前部を支持し、かつ、スペアタイヤの前端部を位置決めするようにしたため、リヤシートの支持安定性を高めることができるとともに、スペアタイヤを高い精度で位置決めすることができる。
【0032】
請求項13に記載の発明によれば、第1,第2および第3クロスメンバを設け、剛性の高いこれらのクロスメンバによってスペアタイヤ格納部を形成したため、スペアタイヤをより安定的に保持することができる。
【0033】
請求項14に記載の発明によれば、スペアタイヤと燃料タンクを、車幅方向両側のリヤサイドフレームよりも車幅方向中央側で、かつ、少なくとも一部がリヤサイドフレームと上下方向でラップする高さに配置したため、側面衝突時に、燃料タンクとスペアタイヤをリヤサイドフレームによって保護することができる。
【0034】
請求項15に記載の発明によれば、収納凹部を、スペアタイヤの厚みと略同等またはそれ以上の高さに形成し、収納凹部の車両前方側の壁部に、スペアタイヤを引き出し可能とする開閉蓋を設けたため、収納凹部側から開閉蓋を開いてスペアタイヤを容易に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、この発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。なお、以下の説明において、前後や上下については特別に断らない限り、車両の前後方向や上下方向と合致する方向を意味するものとする。
図1は、この発明にかかるスペアタイヤ配置構造を採用した車両1を側方側から見た概略構成図であり、図2,図3は、車両1を上方側と後方側からそれぞれ見た概略構成図、図4は、車両1の後部側の主要な構成部材を後部斜め上方側から見た斜視図である。
この実施形態の車両1は、車体後部に跳ね上げ式のテールゲート10を備えたハッチバック式の車両であり、車室内のリヤシート11の後方側に後部荷室12が設けられている。なお、図2,図3においては、リヤシート11の一部のみを仮想線で示している。また、図1中50は、フロントシートである。
【0036】
車両1の両側の側部下端にはサイドシル13(図2〜図4参照)が設けられ、両側のサイドシル13の後端部にはそれぞれリヤサイドフレーム14が結合されている。リヤサイドフレーム14は、前縁部がサイドシル13から斜め上方に立ち上がり、車幅方向に若干に窄まって車体後方側にほぼストレートに延出している。両側のリヤサイドフレーム14,14には、後に詳述する第1,第2,第3クロスメンバ15,16,17が掛け渡すかたちで結合されている。また、リヤサイドフレーム14,14には、リヤフロアパネル18の車幅方向両側の縁部が支持されている。リヤフロアパネル18の後縁部は車体前後方向に亙って凹状に形成され、この凹状部分が工具や小物等の物品を収容するための収容凹部19とされている。
【0037】
リヤシート11は、シートバック11aがシートクッション11bに対して前倒し方向に傾動可能とされるとともに、シートバック11aを前方に二つ折りに倒した状態で全体を斜め前方下に移動させるいわゆるダイブダウン収納が可能となっている。
【0038】
リヤシート11の基準設置位置の下方にはセンターフロアパネル20を挟んで燃料タンク21が設置されている。燃料タンク21は全体の高さを低く抑えた薄型形状で、かつ車両前後方向の長さに対して車幅方向の長さが長い形状とされている。燃料タンク21は、リヤサイドフレーム14,14の離間幅とほぼ同幅に形成されている。なお、センターフロアパネル20の後縁部とリヤフロアパネル18の前縁部は相互に重合されている。また、センターフロアパネル20の下面側の燃料タンク21の前方位置にはエンジンの排気系のサイレンサー51が配置されている。
【0039】
リヤフロアパネル18の前縁部の上面側には、スペアタイヤ22が横向きに寝かせたかたちで配置されている。こうして配置されたスペアタイヤ22は、前側の縁部が燃料タンク21の上方において、同タンク21と車体前後方向でオーバーラップしている。
【0040】
燃料タンク21とスペアタイヤ22は、リヤフロアパネル18を間を挟んで上下で重なるように配置されているが、このとき両者は、それぞれの幅方向の中心が車両の幅方向の中心とほぼ合致するようになっている(図2,図3参照)。また、図1に示すように、燃料タンク21の車両前後方向の中心C1と、スペアタイヤ22の車両前後方向の中心C2とは車両前後方向でオフセットされている。さらに詳しくは、燃料タンク21とスペアタイヤ22は、燃料タンク21に対するスペアタイヤ22のオーバーラップ領域が燃料タンク21の車両前後方向の中心C1に対して車両後方側にオフセットし、かつ、スペアタイヤ22に対する燃料タンク21のオーバーラップ領域がスペアタイヤ22の車両前後方向の中心C2に対して車両前方側にオフセットしている。
したがって、燃料タンク21の上方で、かつ、スペアタイヤ22の前方側の領域と、スペアタイヤ22の下方で、かつ、燃料タンク22の後方側の領域には、それぞれ大きなスペースが確保されている。このうちのスペアタイヤ22の前方側のスペースは、リヤシート11を前述のダイブダウン方式で収納するシート収納スペース23とされ、スペアタイヤ22の下方側のスペースには、プロペラシャフト24に伝達された駆動力を後輪に分配伝達するリヤデファレンシャルギヤ25が配置されるようになっている。
【0041】
ここで、左右のリヤサイドフレーム14,14を連結する上記の第1,第2,第3クロスメンバ15,16,17について説明する。
第1クロスメンバ14は、リヤデファレンシャルギヤ25の後方(燃料タンク21の後方)かつ収容凹部19の前方に配置され、リヤフロアパネル18を挟んでスペアタイヤ22の後部側下面を下方側から支持するようになっている。
また、第2クロスメンバ16は、スペアタイヤ22の上方を跨ぎ、かつ、車両前後方向の中心位置C2よりも前方側位置に配置されている。そして、この第2クロスメンバ16は、スペアタイヤ22の前部を上方側から押さえ込むように支持するとともに、基準設置位置にあるリヤシート11の後部を支持するようになっている。
第3クロスメンバ17は、スペアタイヤ22の前方側のリヤシート11と燃料タンク21の間に配置され、スペアタイヤ22の前端部と当接して同タイヤ22を位置決めするとともに、リヤシート11のシートクッション11bの前部(第2クロスメンバ17による支持位置よりも前部)を支持するようになっている。
以上のようにスペアタイヤ22は、リヤフロアパネル18を介して第1クロスメンバ15によって後部側下面を支持され、前部側上面を第2クロスメンバ16によって押さえ込まれて支持されるとともに、第3クロスメンバ17によって前端部を位置決めされている。これらのクロスメンバ15〜17によって囲まれた空間部はスペアタイヤ22を格納するスペアタイヤ格納部26とされている。
【0042】
また、収容凹部19はスペアタイヤ格納部26の後部に連続して形成され、スペアタイヤ格納部26の下面側のタイヤ支持面に対して下方に窪むかたちとなっている。そして、スペアタイヤ格納部26と収容凹部19の上方は荷室フロア27によって覆われている。荷室フロア27は、収容凹部19の上方に位置される後縁部27aが上方側に跳ね上げ開閉可能にされている。収納凹部19の荷室フロア27までの高さはスペアタイヤ22の厚み以上の高さに設定され、収納凹部19とスペアタイヤ格納部26の間には開閉蓋28が設けられている。開閉蓋28は後部上方側に回動可能にされ、スペアタイヤ22をスペアタイヤ格納部26から引き出す際、若しくは、スペアタイヤ22をスペアタイヤ格納部26に格納する際に、荷室フロア27の後縁部27aとともに上方に開くようになっている。
【0043】
また、燃料タンク21とスペアタイヤ22は、左右両側のリヤサイドフレーム14,14の間に設けられ、これらの少なくとも各一部がリヤサイドフレーム14と上下方向でラップする高さに配置されている。
【0044】
以上のように、この発明にかかるスペアタイヤ配置構造を採用した車両1は、後部荷室12の収容凹部19の前方側に、スペアタイヤ22と燃料タンク21が上下方向で重なるようにリヤシート11の下方で配置されているため、スペアタイヤ22の前方側に高さのある有効スペースを確保することができるうえ、リヤシート11の後方側に充分な容量の収容凹部19を確保し、さらにこのスペースを後面衝突時における充分なクラッシュスペースとして利用することができる。
【0045】
さらに、この車両1においては、スペアタイヤ22と燃料タンク21が車体前後方向でオフセットして配置されているため、両者のオフセット領域を有効利用することができる。特に、この実施形態においては、燃料タンク21に対するスペアタイヤ22のオーバーラップ領域が燃料タンク21の車両前後方向の中心C1に対して車両後方側にオフセットし、かつ、スペアタイヤ22に対する燃料タンク21のオーバーラップ領域がスペアタイヤ22の車両前後方向の中心C2に対して車両前方側にオフセットするように配置されているため、燃料タンク21の上方側と後方側に大きな有効スペースを確保することができる。
【0046】
そして、この車両1においては、燃料タンク21の上方、かつ、スペアタイヤ22の前方に確保された広いスペースがシート収納スペース23とされているため、リヤシート11を折り畳んで前方に倒し、シート収納スペース23にダイブダウン収納することができる。したがって、この車両においては荷室をフラットに広く拡張することができる。
【0047】
また、この車両1では、燃料タンク21の後方、かつ、スペアタイヤ22の下方に確保された広いスペースにリヤデファレンシャルギヤ25が配置されているため、車両後部のスペース効率が向上するという利点がある。さらに、この実施形態の場合、リヤデファレンシャルギヤ25の後方側には、左右のリヤサイドフレーム14,14に結合された第1クロスメンバ15が配置されているため、車両1の側面衝突時や後面衝突時には、リヤデファレンシャルギヤ25を第1クロスメンバ15によって確実に保護することができる。
【0048】
また、この車両1においては、重量物である燃料タンク21とスペアタイヤ22が車幅方向の中心に配置されているため、車幅方向の重量バランスを良好に維持することができる。さらに、スペアタイヤ22に対してより重量の重い燃料タンク21が下方に配置されているため、車両の低重心化を図り、走行安定性を向上させることができるという利点もある。
【0049】
また、この車両1では、スペアタイヤ22と燃料タンク21が、車幅方向両側に配置されたリヤサイドフレーム14,14よりも車幅方向中央側で、かつ、各一部がリヤサイドフレーム14,14と上下方向でラップする高さに配置されているため、側面衝突時に、燃料タンク21とスペアタイヤ22をリヤサイドフレーム14,14によって保護することができる。
【0050】
さらに、この車両1においては、左右のリヤサイドフレーム14,14に結合される第1クロスメンバ15によってスペアタイヤ22の後部を下方から支持するため、スペアタイヤ22の支持安定性を高めることができる。
【0051】
また、この車両1においては、左右のリヤサイドフレーム14,14に結合される第2クロスメンバ16によってリヤシート11の後部を支持し、かつ、スペアタイヤ22の前部を上方から支持するため、第2クロスメンバ16によってリヤシート11とスペアタイヤ22を高い剛性で安定的に支持することができる。
【0052】
また、この車両1においては、左右のリヤサイドフレーム14,14に結合される第3クロスメンバ17によってリヤシート11の前部を支持し、かつ、スペアタイヤ22の前端部を位置決めするため、リヤシート11の支持安定性の向上と、スペアタイヤ22の位置決め精度の向上を図ることができる。
【0053】
そして、この車両1では、左右のリヤサイドフレーム14,14に結合される強度部材である上記の第1,第2,第3クロスメンバ15,16,17によってスペアタイヤ格納部26が形成されているため、スペアタイヤ22をより安定的に保持できるという利点がある。
【0054】
また、この車両1の場合、スペアタイヤ格納部26の後方に連設される収納凹部19がスペアタイヤ22の厚み以上の高さに形成され、スペアタイヤ格納部26と収納凹部19の間に開閉蓋28が設けられているため、荷室フロア27の後縁部27aを開いて収納凹部19を利用する状況では、開閉蓋28によってスペアタイヤ格納部26の後方側を覆い外観品質の向上を図ることができるとともに、スペアタイヤ22の取り外し時や再収納時には、開閉蓋28を開き収納凹部19を通して容易に作業を行なうことができる。
【0055】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、燃料タンク21の長手方向が車幅方向に沿うように燃料タンク21をリヤシート11の下方に配置したが、図5に示す車両101のように、燃料タンク121の後部領域がスペアタイヤ22の下方で同タイヤ22と上下方向で重なるように配置されるのであれば、燃料タンク121は、長手方向が車体前後方向に沿うように配置するようにしても良い。なお、図5においては、図1〜図4に示す実施形態と同一部分に同一符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の一実施形態の車両を側方側から見た概略構成図。
【図2】同実施形態の車両を上方側から見た概略構成図。
【図3】同実施形態の車両を後面側から見た概略構成図。
【図4】同実施形態の車両の概略構成を示す斜視図。
【図5】この発明の他の実施形態の車両を上方側から見た概略構成図。
【符号の説明】
【0057】
1,101…車両
11…リヤシート
12…後部荷室
14…リヤサイドフレーム
15…第1クロスメンバ
16…第2クロスメンバ
17…第3クロスメンバ
19…収容凹部
21,121…燃料タンク
22…スペアタイヤ
23…シート収納スペース
25…リヤデファレンシャルギヤ
26…スペアタイヤ格納部
28…開閉蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤシートの後方の後部荷室に物品を収容する収容凹部が設けられるとともに、前記リヤシートの下方に燃料タンクが設けられている車両のスペアタイヤ配置構造であって、
前記収容凹部の車両前後方向の前方側に、スペアタイヤと前記燃料タンクとを上下方向で重なるように配置したことを特徴とする車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項2】
前記燃料タンクを、前記スペアタイヤの下方側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項3】
前記スペアタイヤと燃料タンクとを、車幅方向中央に位置するように配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項4】
前記スペアタイヤの車両前後方向の中心と、前記燃料タンクの車両前後方向の中心とが、車両前後方向でオフセットするように配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項5】
前記燃料タンクに対するスペアタイヤのオーバーラップ領域を、前記燃料タンクの車両前後方向の中心に対してオフセットさせたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項6】
前記スペアタイヤに対する燃料タンクのオーバーラップ領域を、前記スペアタイヤの車両前後方向の中心に対してオフセットさせたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項7】
前記燃料タンクを、前記スペアタイヤの下方側でかつ車両前後方向の前方側に配置するとともに、前記燃料タンクの上方、かつ、前記スペアタイヤの車両前後方向の前方側に、前記リヤシートが収納可能なシート収納スペースを設けたことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項8】
前記スペアタイヤの下方、かつ、前記燃料タンクの車両前後方向の後方側に、リヤデファレンシャルギヤを配置したことを特徴とする請求項7に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項9】
前記スペアタイヤの下方、かつ、前記燃料タンクの車両前後方向の後方で、車幅方向両側に配置されたリヤサイドフレームに掛け渡され、前記スペアタイヤの後部を下方から支持する第1クロスメンバを設けたことを特徴とする請求項7または8に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項10】
リヤデファレンシャルギヤを、前記スペアタイヤの下方、かつ、前記燃料タンクの車両前後方向の後方側に配置し、前記第1クロスメンバを、前記リヤデファレンシャルギヤよりも後方に配置したことを特徴とする請求項9に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項11】
前記スペアタイヤの上方で車幅方向両側に配置されたリヤサイドフレームに掛け渡され、前記リヤシートの後部を支持するとともに、前記スペアタイヤの前部を上方から支持する第2クロスメンバを設けたことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項12】
前記スペアタイヤの車両前後方向の前方、かつ、前記リヤシートと前記燃料タンクの間で、車幅方向両側に配置されたリヤサイドフレームに掛け渡され、前記リヤシートの前部を支持するとともに、前記スペアタイヤの前端部を位置決めする第3クロスメンバを設けたことを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項13】
前記スペアタイヤの下方、かつ、前記燃料タンクの車両前後方向の後方で、車幅方向両側に配置されたリヤサイドフレームに掛け渡され、前記スペアタイヤの後部を下方から支持する第1クロスメンバを設け、
前記スペアタイヤの上方で前記リヤサイドフレームに掛け渡され、前記リヤシートの後部を支持するとともに、前記スペアタイヤの前部を上方から支持する第2クロスメンバを設け、
前記スペアタイヤの車両前後方向の前方、かつ、前記リヤシートと前記燃料タンクの間で、前記リヤサイドフレームに掛け渡され、前記リヤシートの前部を支持するとともに、前記スペアタイヤの前端部を位置決めする第3クロスメンバを設け、
前記第1,第2および第3クロスメンバにより、前記スペアタイヤが格納されるスペアタイヤ格納部を形成したことを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項14】
前記スペアタイヤと燃料タンクは、車幅方向両側に配置されたリヤサイドフレームよりも車幅方向中央側で、かつ、少なくとも一部が前記リヤサイドフレームと上下方向でラップする高さに配置されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。
【請求項15】
前記収納凹部は、前記スペアタイヤの厚みと略同等またはそれ以上の高さに形成されるとともに、車両前方側の壁部に、前記スペアタイヤを引き出し可能とする開閉蓋を備えていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の車両のスペアタイヤ配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−30563(P2010−30563A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197780(P2008−197780)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】