説明

車両のバッテリ交換システム

【課題】ラックにおける所定の格納位置にバッテリを格納することができる車両のバッテリ交換システムを提供する。
【解決手段】搬送装置14には、走行台14aに載置されたバッテリBの位置を測定する測距センサ15が設けられるとともに、CPUは、測距センサ15により測定されたバッテリBの位置と脱着基準位置とのずれ量Xを算出して、このずれ量Xに基づいてバッテリBが移載基準位置に位置するように搬送装置14をずれ量X分だけずれた位置に停止させるように制御する。これにより、走行台14aに載置されたバッテリBの位置を移載基準位置に位置させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリ交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッドカーのように動力源として大型のバッテリ(バッテリユニット)を搭載した車両のうち、電気自動車においては、バッテリの充電量が所定量以下になると、電気自動車のバッテリ交換装置を用いてバッテリを満充電された新たなバッテリに交換することが考えられる。このような電気自動車のバッテリ交換装置としては、例えば特許文献1のものがある。
【0003】
特許文献1の電気自動車のバッテリ交換装置は、電気自動車が停止した状態において、バッテリが収納されたバッテリ車体収納部の下方に配置される昇降手段を備えている。昇降手段は、バッテリユニットを載置可能な交換テーブルと、交換テーブルを昇降させる昇降装置とから構成されている。また、昇降手段の近傍には、バッテリユニットを保管するラックが設けられている。
【0004】
そして、バッテリ交換時において、昇降装置により交換テーブルをバッテリ車体収納部側に向けて上昇させて、バッテリユニットの下面に交換テーブルの上面を当接させる。そして、バッテリ車体収納部内に設けられたロック装置によりバッテリユニットがバッテリ車体収納部に対してロックされた状態を解除することで、バッテリユニットが交換テーブル上に載置されて、バッテリユニットがバッテリ車体収納部から取り外される。その後、昇降手段とラックとの間にキャリヤを位置させ、消耗したバッテリユニットをキャリヤを介してラックに移動する。
【0005】
また、新たなバッテリユニットをバッテリ車体収納部に装着する際には、ラックからバッテリユニットをキャリヤに搬入し、キャリヤから昇降手段の交換テーブル上に搬送する。そして、昇降装置により交換テーブルをバッテリ車体収納部側に向けて上昇させるとともに、新たなバッテリユニットをバッテリ車体収納部内に収納して、ロック装置により新たなバッテリユニットをロックする。これにより、新たなバッテリユニットがバッテリ車体収納部に装着され、バッテリ交換作業が完了する。
【0006】
また、バッテリユニットを保管する棚とバッテリ交換装置とが離れている場合には、バッテリユニットの受け渡しをより効率的なものとするために、搬送装置を用いてバッテリユニットを棚とバッテリ交換装置との間で搬送することが考えられる。搬送装置としては、例えば、特許文献2に記載のパレット搬送装置がある。
【0007】
特許文献2のパレット搬送装置は、パレットを複数格納可能なラックを有する自動倉庫に装備されるとともに、パレットをスタッカクレーンと板材加工機との間で搬送するものである。パレット搬送装置は、パレットを載せる可動フレームを備えるとともに、可動フレームを位置ずれ自在に支持する固定フレームを備えている。さらに、固定フレームは、パレットを移動させる走行体を備えている。また、走行体は、パレットと連結するためのパレット連結装置を備えている。そして、パレット搬送装置は、スタッカクレーンからパレットを受け取る際、又はスタッカクレーンにパレットを戻す際に、可動フレームを自由に動かして、スタッカクレーン等の位置ずれを吸収して、走行体に連結されたパレットをレールに引き込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−262951号公報
【特許文献2】特開平7−196104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1においては、バッテリ車体収納部に収納されているバッテリユニットを取り出す際に、昇降手段における交換テーブル上の所定位置(脱着基準位置)に対してバッテリ車体収納部の中心がずれた状態で電気自動車が停止してしまう場合がある。この場合、昇降手段を用いてバッテリユニットを取り出したときに、バッテリユニットが交換テーブル上において脱着基準位置からずれた状態で載置されることになる。
【0010】
そして、バッテリユニットの受け渡しを容易とするため、例えば、特許文献2のパレット搬送装置を用いて、バッテリユニットに走行体を連結するとともに走行体を可動フレームにより走行させて、バッテリユニットをスタッカクレーンまで搬送させる。このとき、特許文献2の可動フレームは長さが一定であるため、走行体が可動フレームの終端で停止したとき、脱着基準位置からのずれが原因で、バッテリユニットは、ラックの所定の格納位置とずれた状態で格納されてしまう。
【0011】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、ラックにおける所定の格納位置にバッテリを格納することができる車両のバッテリ交換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、バッテリを格納するラックと、車両下部に設けられたバッテリ収納部に対して下方から前記バッテリの脱着を行うために前記バッテリを昇降させる昇降手段と、前記ラックと前記昇降手段との間で前記バッテリを搬送するとともに前記バッテリを前記昇降手段から授受可能な搬送手段と、前記搬送手段により予め定められた移載基準位置に搬送された前記バッテリを移載して前記ラックに格納する移載装置と、前記昇降手段から受け渡されて前記搬送手段に載置された前記バッテリの位置を測定する測定手段と、前記測定手段により測定された前記バッテリの位置と、予め定められた前記搬送手段上での前記バッテリの脱着基準位置とのずれ量に基づいて、前記搬送手段の停止位置を制御し、前記バッテリを前記移載基準位置に位置させる制御手段と、を備えたことを要旨とする。
【0013】
例えば、バッテリ交換の際に、脱着基準位置に対してバッテリ収納部の中心がずれた状態で車両が停止してしまう場合がある。この場合、昇降手段を用いてバッテリを取り出したときに、バッテリが搬送手段において脱着基準位置からずれた状態で載置されることになる。このとき、測定手段は搬送手段上でのバッテリの位置を測定するとともに、制御手段は、測定手段により測定されたバッテリの位置と脱着基準位置とのずれ量を算出して、このずれ量に基づいてバッテリが移載基準位置に位置するように、搬送手段をずれ量分だけ補正した位置に停止させるように制御する。これにより、搬送手段に載置されたバッテリの位置を移載基準位置に位置させることができ、移載装置は、移載基準位置に存在するバッテリをすくいあげて、ラックにおける所定の格納位置にバッテリを格納することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記測定手段は、前記搬送手段に設けられていることを要旨とする。
例えば、測定手段を搬送手段に設けずに地上に設けて搬送手段上のバッテリの位置を測定する場合、搬送手段が走行中に振動すると、搬送手段に載置されているバッテリが振動してしまい、正確にバッテリの位置を測定できない場合がある。しかし、測定手段を搬送手段に設けることで、搬送手段が走行中に振動して搬送手段に載置されているバッテリが振動しても、測定手段もバッテリの振動に追従して振動するため、バッテリの位置を正確に測定することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ずれ量に基づいて設定された停止位置に前記搬送手段が停止した状態において、前記測定手段は、前記停止位置での前記バッテリのずれ量の変化量を検出し、前記制御手段は、前記搬送手段を前記変化量に基づく新たな停止位置に制御することを要旨とする。
【0016】
この発明によれば、ずれ量に基づいて設定された停止位置に搬送手段が停止した状態において、バッテリのずれ量が変化したとしても、制御手段がその変化量に基づく新たな停止位置まで搬送手段を制御するため、バッテリを移載基準位置に位置させることができ、バッテリ交換作業を継続して行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、ラックにおける所定の格納位置にバッテリを格納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態におけるバッテリ交換システムを示す模式図。
【図2】電気自動車とリフタとの関係を示す模式図。
【図3】バッテリ交換システムの電気的構成を示すブロック図。
【図4】搬送装置がリフタ側停止位置に停止した状態を示す模式図。
【図5】搬送装置が目標停止位置に停止した状態を示す模式図。
【図6】搬送装置がクレーン側停止位置に停止した状態を示す模式図。
【図7】搬送装置が目標停止位置に停止した状態を示す模式図。
【図8】第2の実施形態における搬送装置がリフタ側停止位置に停止した状態を示す模式図。
【図9】一方の走行台上の新たなバッテリが脱着基準位置よりもずれ量分だけずれた位置に存在する状態を示す模式図。
【図10】他方の走行台上のバッテリが移載基準位置に存在する状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明を電気自動車のバッテリ交換システムに具体化した第1の実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
【0020】
まず、バッテリ交換システムSの全体構成について説明する。図1に示すように、バッテリ交換システムSは、車両としての電気自動車11を支持する支持台12と、支持台12の下方に設けられる昇降手段としてのリフタ13と、バッテリBを格納するバッテリ用自動倉庫20とを備えている。さらに、バッテリ交換システムSは、バッテリ用自動倉庫20とリフタ13との間でバッテリBを搬送するとともに、リフタ13からバッテリBを授受可能な搬送手段としての搬送装置14を備えている。
【0021】
図2に示すように、電気自動車11には、バッテリBを車体の下方から出し入れ可能に収納するバッテリ収納部11aが設けられるとともに、バッテリ収納部11aの周囲には、バッテリ収納部11aに収納されたバッテリBの落下を防止するロック装置11bが設けられている。ロック装置11bは、ピストンロッド11cがバッテリBに形成された掛止孔(図示せず)に進入、離脱可能に配設されたシリンダで構成され、バッテリBを4箇所でロック可能になっている。そして、電気自動車11では、バッテリBの充電量が所定量以下になると、そのバッテリBはバッテリ用自動倉庫20内に格納された満充電状態の新たなバッテリBと交換される。
【0022】
次に、支持台12について説明する。
支持台12は、バッテリ交換の際に電気自動車11が水平状態で停止するように設けられるとともに、図示しないスロープから電気自動車11が予め定められたバッテリ交換位置に停止するように構成されている。さらに、支持台12には、電気自動車11がバッテリ交換位置に停止した状態において、バッテリ収納部11aとリフタ13との間におけるバッテリBの移動に支障を来たさない大きさの開口12aが形成されている。なお、この開口12aは、電気自動車11がバッテリ交換位置に対して車幅方向にずれた位置に停止した状態であっても、バッテリ収納部11aとリフタ13との間におけるバッテリBの移動に支障を来たさない大きさに形成されている。
【0023】
次に、バッテリ用自動倉庫20について説明する。
図1に示すように、バッテリ用自動倉庫20は、ラック21と、スタッカクレーン25とを備えている。ラック21は、床面に対して直交する上下方向に延びるとともに通路の長手方向(図1の紙面と垂直方向)に沿って立設される複数本の支柱22と、隣り合う支柱22で対をなすように上下方向に沿って等間隔おきに配設された棚板23とから構成されている。そして、ラック21には、支柱22と棚板23との枠組みにより、回収された使用済みのバッテリBを一時格納するとともに、充電された新たなバッテリBを格納可能な格納部24が上下方向及び通路の長手方向にそれぞれ複数ずつ区画形成されている。
【0024】
スタッカクレーン25は、通路の長手方向に沿って通路の底部に敷設された図示しない走行レール上を走行可能に配置されている。スタッカクレーン25は、走行レール上を走行可能な走行輪26aを有する走行台26と、走行台26上に立設された一対のマスト27と、一対のマスト27間に上下動(昇降動作)可能に配設された昇降キャリッジ28とを備えている。昇降キャリッジ28は、図示しないワイヤを介してマスト27間に吊り下げられている。
【0025】
また、昇降キャリッジ28上には移載装置としてのフォーク装置29が設けられている。フォーク装置29は、予め定められた移載基準位置に搬送されたバッテリBをすくい上げたり、格納部24に格納されている新たなバッテリBをすくい上げて新たなバッテリBを移載基準位置に移送したりする。ここで、移載基準位置とは、フォーク装置29によりバッテリBをすくうのに適した位置である。また、この移載基準位置は、スタッカクレーン25の走行により移動可能な位置であれば自由に設定できるようになっている。
【0026】
次に、リフタ13について説明する。
図2に示すように、リフタ13は、バッテリBが載置されるテーブル13aを有するとともに、テーブル13aを昇降可能な2組のリンク31,32を備えたパンタグラフ式の構成になっている。両リンク31,32は、同じ長さで中央部が軸により回動可能に連結されるとともに、上端がテーブル13aに固定された一対の上側支持部材33に連結され、下端が一対の下側支持部材34に連結されている。第1リンク31は下端が下側支持部材34に回動可能に連結されるとともに、上端が上側支持部材33に形成された長孔33aに沿って移動可能に設けられた上側支軸35に回動可能に連結されている。第2リンク32は下端が下側支持部材34に形成された長孔34aに沿って移動可能に設けられた下側支軸36に回動可能に連結されるとともに、上端が上側支持部材33に回動可能に連結されている。
【0027】
リフタ13には、テーブル13aを昇降させるために2組のリンク31,32を駆動させるための昇降用モータ13b(図3参照)が設けられている。そして、昇降用モータ13bの正転駆動時には第1リンク31及び第2リンク32の端部の間隔が狭くなってテーブル13aが上昇し、昇降用モータ13bの逆転駆動時には第1リンク31及び第2リンク32の端部の間隔が広くなってテーブル13aが下降するようになっている。
【0028】
このようにして、テーブル13aは、昇降用モータ13bの駆動により2組のリンクが駆動されて、バッテリ収納部11aに対してバッテリBを取り外すため、あるいはバッテリ収納部11aに対してバッテリBを装着するために昇降されるようになっている。
【0029】
次に、搬送装置14について説明する。
搬送装置14は、バッテリ交換位置に停止した電気自動車11の前後方向と直交する方向(以下、「搬送方向」とする。)に移動可能になっている。また、搬送装置14は、搬送方向に沿うように床面に敷設された図示しないレール上を走行可能な走行輪14bを有する走行台14aを備えるとともに、走行台14aにバッテリBが載置されるようになっている。走行台14aには、走行輪14bを回転駆動するための走行用モータ14c(図3参照)が設けられている。そして、搬送装置14は、走行用モータ14cの駆動により走行輪14bが回転駆動されて、搬送方向に沿って走行するようになっている。搬送装置14は、レールの一端と他端との間を走行するが、レール上において予め定められたクレーン側停止位置とリフタ側停止位置に停止するようになっている。
【0030】
また、搬送装置14は、走行台14aが、下降状態におけるリフタ13のテーブル13aよりも上方に位置するように、支持台12の下まで移動可能になっている。そして、電気自動車11が正確なバッテリ交換位置に停止したときに、バッテリBを降ろして走行台14aに載せたときの走行台14aでのバッテリBの位置が、搬送装置14上でのバッテリBの脱着基準位置になる。
【0031】
また、走行台14aの略中央部には、リフタ13のテーブル13aが通過可能な貫通孔(図示せず)が形成されている。この貫通孔は、バッテリBが走行台14aに載置されたときに、バッテリBが貫通孔を介して落下してしまうことのない開口面積となるように形成されている。
【0032】
走行台14aには、走行台14aに載置されたバッテリBの位置を測定する測定手段としての光学式の測距センサ15が設けられている。測距センサ15は、投受光型の光センサで構成されるとともに、図示しない投光部と受光部とを備えている。投光部と受光部とは一体で構成されるとともに、投光部及び受光部は、適宜、切換可能である。また、測距センサ15のレーザ光における出射方向と対向するバッテリBの一側面には、投光部から出射された光を受光部に反射可能な反射板(図示せず)が設けられている。
【0033】
投光部から出射されたレーザ光は、反射板に入射するとともに反射板により反射され、反射板により反射された一定の方向性を持ったレーザ光が受光部へ受光されるようになっている。測距センサ15は、受光部でのレーザ光の受光に基づき、測距センサ15と反射板との距離を測定する機能を有している。
【0034】
また、バッテリ交換システムSは、搬送装置14の位置を測定するための測距センサ16を備えている。この測距センサ16は、搬送装置14がリフタ側停止位置に位置したときに、搬送装置14までの距離が0になる位置に設けられている。なお、測距センサ16の構成は、既に説明した測距センサ15の構成とほぼ同一であるため、その詳細な説明を省略する。また、測距センサ16のレーザ光における出射方向と対向する搬送装置14の一側面には、投光部から出射された光を受光部に反射可能な反射板(図示せず)が設けられている。そして、測距センサ16は、受光部でのレーザ光の受光に基づき、リフタ側停止位置からの搬送装置14の走行距離を測定するようになっている。
【0035】
次に、本実施形態におけるバッテリ交換システムSの電気的構成について説明する。
図3に示すように、バッテリ交換システムSは、中央演算装置であるCPU(CENTRAL PROCESSING UNIT)19a及びメモリ19bを有する制御装置19を備えている。メモリ19bには、リフタ13の昇降及び搬送装置14の走行を制御するための各種制御用プログラムが記憶されるとともに、各種演算処理結果や各種制御データ等が記憶される。
【0036】
また、制御装置19は、昇降用モータ13b及び走行用モータ14cと電気的に接続されている。そして、CPU19aは、メモリ19bに記憶された各制御用プログラムに従ってバッテリ交換作業時に、昇降用モータ13b及び走行用モータ14cを制御する。また、制御装置19は測距センサ16と電気的に接続されるとともに、測距センサ16の検出信号は、CPU19aへ出力されるようになっている。そして、CPU19aは、測距センサ16の検出信号に基づいて搬送装置14の位置を算出するようになっている。なお、メモリ19bには、搬送装置14のリフタ側停止位置からクレーン側停止位置までの距離に関する距離データが予め記憶されている。
【0037】
また、制御装置19は測距センサ15と信号接続されるとともに、測距センサ15の検出信号は、CPU19aへ出力されるようになっている。そして、CPU19aは、測距センサ15の検出信号から得られる距離データと、メモリ19bに予め記憶されている脱着基準位置から移載基準位置までの距離データとを照合して、搬送装置14の走行距離を算出するようになっている。この算出された走行距離に関するデータはメモリ19bに記憶されるようになっている。
【0038】
次に、上記構成のバッテリ交換システムSのバッテリ交換方法について説明する。
電気自動車11が支持台12上に停止した状態において、まず、CPU19aは、搬送装置14がリフタ側停止位置に停止するように走行用モータ14cを制御する。搬送装置14がリフタ側停止位置に停止すると、CPU19aは、昇降用モータ13bを制御してテーブル13aを上昇させる。そして、テーブル13aが搬送装置14の開口及び支持台12の開口12aを介してバッテリBの下面まで到達するとともに、テーブル13aの上面がバッテリBの下面に当接した状態になる。
【0039】
テーブル13aの上面とバッテリBの下面とが当接した状態になると、ロック装置11bのピストンロッド11cがバッテリBの掛止孔から離脱して、バッテリBのロック状態が解除されるとともに、バッテリBがバッテリ収納部11aから取り出されて、バッテリBがテーブル13aに載置される。
【0040】
テーブル13aにバッテリBが載置された状態において、CPU19aは、昇降用モータ13bを制御してテーブル13aを下降させる。そして、テーブル13aが搬送装置14の開口を通過する際に、テーブル13aに載置されていたバッテリBは、搬送装置14の走行台14aに授受されて、走行台14aに載置される。
【0041】
このとき、図4に示すように、電気自動車11が、正確なバッテリ交換位置に対してスタッカクレーン25側へずれた位置に停止しているとする。すると、バッテリBが走行台14aに載置された状態において、バッテリBは、搬送装置14上でのバッテリBの脱着基準位置から搬送装置14の搬送方向に沿ってずれた位置に載置される。
【0042】
ここで、例えば、走行台14a上において、バッテリBが脱着基準位置に載置されたとき(図4において二点鎖線で示す)の搬送装置14における搬送方向に沿ったバッテリBの中心を基準点B1とし、バッテリBが脱着基準位置からずれた位置に載置されたときの搬送装置14における搬送方向に沿ったバッテリBの中心を基準点B2とする。
【0043】
バッテリBが走行台14aに載置された状態において、測距センサ15によりバッテリBの位置が検出される。そして、CPU19aは、測距センサ15により検出された距離データと、メモリ19bに予め記憶された脱着基準位置に関する距離データとを照合して、バッテリBにおける脱着基準位置からのずれ量Xを算出する。このずれ量Xは、メモリ19bに記憶される。
【0044】
次に、CPU19aは、リフタ側停止位置からクレーン側停止位置までの距離データとずれ量Xとから、搬送装置14の補正走行距離を算出する。すなわち、リフタ側停止位置からクレーン側停止位置までの距離データからずれ量Xを差し引いて走行距離を算出する。
【0045】
次に、CPU19aは、搬送装置14が移載基準位置に向かって補正走行距離を走行するように走行用モータ14cを制御する。搬送装置14の位置は、測距センサ16によって測定され、搬送装置14の走行距離が補正走行距離に達すると、CPU19aは、測距センサ16からの検出信号に基づき、走行用モータ14cの駆動を停止させるよう制御する。
【0046】
搬送装置14が補正走行距離を走行した状態において、測距センサ15によりバッテリBの位置が測定される。そして、CPU19aは、測距センサ15により検出された距離データと、メモリ19bに予め記憶された移載基準位置に関する距離データとを照合して、バッテリBにおける移載基準位置からのずれ量Xを算出する。そして、CPU19aは、バッテリBにおける移載基準位置からのずれ量Xが、搬送装置14の走行前に算出したずれ量Xと同じが否かを判定する。
【0047】
この判定結果が否定の場合、CPU19aは、搬送装置14によりバッテリBを搬送する際に、走行台14a上でバッテリBが移動してしまったとして異常と判断し、バッテリ交換作業を強制終了させる。一方、判定結果が肯定の場合は、バッテリBが走行台14aから移動せずに、搬送装置14によりバッテリBが移載基準位置に搬送されたと判断する。
【0048】
また、測距センサ16により、リフタ側停止位置からの搬送装置14の走行距離が測定される。そして、CPU19aは、測距センサ16からの検出信号に基づき、実際の走行距離が目標停止位置の許容範囲内か否かを判定する。この判断結果が否定の場合は、CPU19aは、搬送装置14を目標停止位置に停止するように走行用モータ14cを制御する。一方、判定結果が肯定の場合、CPU19aは、搬送装置14が目標停止位置に停止したと判断する。
【0049】
ここで、例えば、搬送装置14がクレーン側停止位置に停止したとき(図5において二点鎖線で示す)の搬送装置14における搬送方向に沿った走行台14aの中心を基準点T1とし、搬送装置14が目標停止位置に停止したときの搬送装置14における搬送方向に沿った走行台14aの中心を基準点T2とする。基準点T2は基準点T1に対してずれ量Xずれている。
【0050】
これにより、使用済みのバッテリBが移載基準位置に搬送されるとともに、フォーク装置29により使用済みのバッテリBをすくい上げて、使用済みのバッテリBを格納部24における所定の格納位置に一時格納することができる。
【0051】
次に、CPU19aは、格納部24に格納されている満充電状態の新たなバッテリBを電気自動車11に取り付けるための処理を行う。
まず、図6に示すように、CPU19aは、搬送装置14が、クレーン側停止位置よりもずれ量X分だけずれた目標停止位置からクレーン側停止位置に停止するように走行用モータ14cを制御する。そして、搬送装置14がクレーン側停止位置に停止した状態において、格納部24に格納された新たなバッテリBをフォーク装置29により走行台14a上に移載する。
【0052】
次に、CPU19aは、リフタ側停止位置に対してスタッカクレーン25側へずれ量Xを足した搬送装置14の補正走行距離を算出する。この補正走行距離の値は、リフタ側停止位置とクレーン側停止位置との間の距離からずれ量Xを差し引いた値となっている。そして、図7に示すように、CPU19aは、メモリ19bに記憶されたずれ量Xに基づいて、搬送装置14がリフタ停止位置よりもずれ量X分だけスタッカクレーン25側へずれた目標停止位置に停止するように走行用モータ14cを制御する。
【0053】
このとき、搬送装置14の位置は測距センサ16により測定され、搬送装置14の走行距離が補正走行距離に達すると、CPU19aは、測距センサ16からの検出信号に基づき、走行用モータ14cの駆動を停止させるよう制御する。そして、搬送装置14が目標停止位置に停止すると、走行台14aに載置されている新たなバッテリBも脱着基準位置よりもずれ量X分だけずれた位置に存在することになる。
【0054】
次に、CPU19aは、昇降用モータ13bを制御してテーブル13aを上昇させる。また、テーブル13aが搬送装置14の開口を通過する際には、走行台14aに載置された新たなバッテリBは、テーブル13aに授受されて、テーブル13aに載置される。そして、新たなバッテリBがバッテリ収納部11a内における所定の装着位置に位置すると、ロック装置11bのピストンロッド11cがバッテリBの掛止孔に進入して新たなバッテリBがロックされる。これにより、新たなバッテリBがバッテリ収納部11aに装着されて、バッテリ交換作業が完了する。
【0055】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)搬送装置14には、走行台14aに載置されたバッテリBの位置を測定する測距センサ15が設けられている。そして、CPU19aは、測距センサ15により測定されたバッテリBの位置と脱着基準位置とのずれ量Xを算出して、このずれ量Xに基づいてバッテリBが移載基準位置に位置するように搬送装置14をずれ量X分だけずれた位置に停止させるように制御する。よって、走行台14aに載置されたバッテリBの位置を移載基準位置に位置させることができ、フォーク装置29は、移載基準位置に存在するバッテリBをすくいあげて、ラック21における所定の格納位置にバッテリBを格納することができる。
【0056】
(2)測距センサ15は、搬送装置14の走行台14aに設けられている。例えば、測距センサ15を走行台14aに設けずに地上に設けて走行台14a上のバッテリBの位置を測定する場合、搬送装置14が走行中に振動すると、走行台14aに載置されているバッテリBが振動してしまい、正確にバッテリBの位置を測定できない場合がある。しかし、測距センサ15を走行台14aに設けることで、搬送装置14が走行中に振動して走行台14aに載置されているバッテリBが振動しても、測距センサ15もバッテリBの振動に追従して振動するため、バッテリBの位置を正確に測定することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
以下、本発明を電気自動車のバッテリ交換装置に具体化した第2の実施形態を図8〜図10にしたがって説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0058】
図8に示すように、搬送装置41は、二つの走行台14aが搬送方向に沿って一体的に並設されることで構成されており、一方の走行台14aには新たなバッテリBが載置されるとともに、他方の走行台14aにはバッテリ収納部11aから取り出されたバッテリBが載置されるようになっている。
【0059】
一方の走行台14aにはガイド42が四つ設けられている。この四つのガイド42は、新たなバッテリBが走行台14aに載置された状態で、新たなバッテリBの四隅が各ガイド42に当接して、新たなバッテリBが走行台14a上で移動することを規制している。また、ガイド42により新たなバッテリBの移動が規制されて、搬送装置41がクレーン側停止位置に停止した状態では、バッテリBは移載基準位置に位置している。
【0060】
上記構成のバッテリ交換システムSにおけるバッテリ交換方法について説明する。なお、電気自動車11は、バッテリ交換の際に、正確なバッテリ交換位置に対してスタッカクレーン25側へずれた位置に停止しているとする。また、一方の走行台14aには、予め新たなバッテリBが載置されているものとする。
【0061】
まず、CPU19aは、搬送装置41がリフタ側停止位置で停止するように走行用モータ14cを制御する。そして、第1の実施形態と同様にして、リフタ13によりバッテリBをバッテリ収納部11aから取り出す。
【0062】
バッテリBが他方の走行台14aに載置された状態において、測距センサ15によりバッテリBの位置が検出される。そして、CPU19aは、測距センサ15により検出された距離データと、メモリ19bに予め記憶された脱着基準位置に関する距離データとを照合して、バッテリBにおける脱着基準位置からのずれ量Xを算出する。この得られたずれ量Xは、メモリ19bに記憶される。
【0063】
次に、図9に示すように、CPU19aは、メモリ19bに記憶されたずれ量Xに基づいて、一方の走行台14a上の新たなバッテリBが脱着基準位置よりもずれ量X分だけずれた位置に存在するように搬送装置41が停止するように走行用モータ14cを制御する。そして、第1の実施形態と同様にして、リフタ13により新たなバッテリBをバッテリ収納部11aに装着する。
【0064】
次に、図10に示すように、CPU19aは、メモリ19bに記憶されたずれ量Xに基づいて、他方の走行台14a上のバッテリBが移載基準位置に位置するように走行用モータ14cを制御する。これにより、使用済みのバッテリBが移載基準位置に搬送されるとともに、フォーク装置29により使用済みのバッテリBをすくい上げて、使用済みのバッテリBを格納部24における所定の格部位置に一時格納することができる。
【0065】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)及び(2)と同様の効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(3)CPU19aは、メモリ19bに記憶されたずれ量Xに基づいて、一方の走行台14a上の新たなバッテリBが脱着基準位置よりもずれ量X分だけずれた位置に存在するように搬送装置41が停止するように走行用モータ14cを制御する。よって、一方の走行台14aに載置されている新たなバッテリBが脱着基準位置よりもずれ量X分だけずれた位置に存在することになり、新たなバッテリBをバッテリ収納部11aに装着することができる。
【0066】
(4)上記構成の搬送装置41によれば、一方の走行台14aに予め新たなバッテリBを載置した状態で、リフタ側停止位置側に搬送装置41を一度走行させるだけで、バッテリ収納部11aからのバッテリBの取り出し作業と、新たなバッテリBをバッテリ収納部11aへ装着する装着作業との双方を行うことができる。よって、第1の実施形態における搬送装置14を用いたバッテリ交換に比べて、バッテリ交換にかかる時間を短くすることができる。
【0067】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第1の実施形態において、搬送装置14が目標停止位置に停止した状態において、CPU19aは、バッテリBのずれ量Xを算出し、このずれ量Xが、搬送装置14の走行前に算出したずれ量Xと同じか否かを判定し、その判定結果が否定の場合はバッテリ交換作業を強制終了させたが、これに限らない。例えば、CPU19aは、搬送装置14が目標停止位置に停止したときのバッテリBのずれ量Xが、搬送装置14の走行前に算出したずれ量Xに対して変化した場合に、その変化量に基づいて走行用モータ14cを制御するようにしてもよい。これによれば、バッテリB取り外し時のずれ量Xに基づいて設定された目標停止位置に搬送装置14が停止した状態においてバッテリBのずれ量Xが変化していたとしても、CPU19aがその変化量に基づく新たな停止位置へ搬送装置14を制御するため、バッテリBを移載基準位置に位置させることができる。その結果、バッテリ交換作業を継続して行うことができる。
【0068】
○ 第1の実施形態において、搬送装置14上に新たなバッテリBを移載する前に、CPU19aは、搬送装置14が、クレーン側停止位置よりもずれ量X分だけずれた目標停止位置からクレーン側停止位置に停止するように走行用モータ14cを制御したが、この制御を省略してもよい。これによれば、搬送装置14上に新たなバッテリBを移載する際に、搬送装置14がクレーン側停止位置よりもずれ量X分だけずれた位置に停止した状態で、搬送装置14上に新たなバッテリBが移載されることになる。そして、この場合、CPU19aは、搬送装置14をリフタ側停止位置に停止するように走行用モータ14cを制御すればよくなるため、搬送装置14の位置制御を簡素化させることができる。
【0069】
○ 上記各実施形態において、測距センサ15は、搬送装置14の走行台14aに設けられていたが、これに限らず、例えば、地上に設けてもよい。この場合、測距センサ15は、地上において、測距センサ15から出射されるレーザ光が、バッテリBの一側面に設けられた反射板に反射可能な位置に設けられている。
【0070】
○ 上記各実施形態において、リフタ13はパンタグラフ式の構成であったが、これに限らず、例えば、鉛直方向に延びるボールねじを利用してテーブル13aを昇降させる構成としてもよい。
【0071】
○ 本発明を、電気自動車のバッテリ交換システムに具体化したが、これに限らず、例えば、モータ及びエンジンの両方を備えたハイブリッドカーのバッテリ交換システムに具体化してもよい。
【0072】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記車両は電気自動車であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両のバッテリ交換システム。
【符号の説明】
【0073】
B…バッテリ、S…バッテリ交換システム、11…車両としての電気自動車、11a…バッテリ収納部、13…昇降手段としてのリフタ、14…搬送手段としての搬送装置、15…測定手段としての測距センサ、19a…制御手段としてのCPU、21…ラック、29…移載装置としてのフォーク装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを格納するラックと、
車両下部に設けられたバッテリ収納部に対して下方から前記バッテリの脱着を行うために前記バッテリを昇降させる昇降手段と、
前記ラックと前記昇降手段との間で前記バッテリを搬送するとともに前記バッテリを前記昇降手段から授受可能な搬送手段と、
前記搬送手段により予め定められた移載基準位置に搬送された前記バッテリを移載して前記ラックに格納する移載装置と、
前記昇降手段から受け渡されて前記搬送手段に載置された前記バッテリの位置を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記バッテリの位置と、予め定められた前記搬送手段上での前記バッテリの脱着基準位置とのずれ量に基づいて、前記搬送手段の停止位置を制御し、前記バッテリを前記移載基準位置に位置させる制御手段と、を備えたことを特徴とする車両のバッテリ交換システム。
【請求項2】
前記測定手段は、前記搬送手段に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両のバッテリ交換システム。
【請求項3】
前記ずれ量に基づいて設定された停止位置に前記搬送手段が停止した状態において、前記測定手段は、前記停止位置での前記バッテリのずれ量の変化量を検出し、前記制御手段は、前記搬送手段を前記変化量に基づく新たな停止位置に制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両のバッテリ交換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−189910(P2011−189910A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59974(P2010−59974)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】