説明

車両のフロントピラー構造

【課題】フロントピラーアッパ部に効率良く車両前面衝突時の衝突荷重を伝達する。
【解決手段】車両のフロントピラー構造10は、車両に設けられたフロントピラーPのベルトライン部P1を構成するベルトライン構成部29を備えたアウタリインフォースメント20と、ベルトライン構成部29の車両前側に配置されたエプロンアッパメンバ30と、ベルトライン構成部29に設けられると共に、エプロンアッパメンバ30の車両後側にエプロンアッパメンバ30と対向して配置されたバルクヘッド70と、車両前後方向に延びると共に、後端部が前端部よりも車両上側に位置されるように車両前後方向に対して傾斜して配置されて、フロントピラーPにおけるフロントピラーアッパ部P2を構成し、且つ、前端部50Aがバルクヘッド70に結合されたピラー補強パイプ50と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントピラーを構成する中空部材と、この中空部材の前端部を挟み込むフロントボディサイドインナ及びスティフナーとを備えた車両のフロントピラー構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−213120号公報
【特許文献2】特開2005−153800号公報
【特許文献3】特開2009−61991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような車両のフロントピラー構造において、フロントピラーの上部(フロントウィンドウガラスの縦枠部)を構成するフロントピラーアッパ部に効率良く車両前面衝突時の衝突荷重を伝達できるようにするためには改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、フロントピラーアッパ部に効率良く車両前面衝突時の衝突荷重を伝達できる車両のフロントピラー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両のフロントピラー構造は、車両に設けられたフロントピラーのベルトライン部を構成するベルトライン構成部を備えたアウタリインフォースメントと、前記ベルトライン構成部の車両前側に配置されたエプロンアッパメンバと、前記ベルトライン構成部に設けられると共に、前記エプロンアッパメンバの車両後側に該エプロンアッパメンバと対向して配置されたバルクヘッドと、車両前後方向に延びると共に、後端部が前端部よりも車両上側に位置されるように車両前後方向に対して傾斜して配置されて、前記フロントピラーにおける前記ベルトライン部よりも車両上側のフロントピラーアッパ部を構成し、且つ、前端部が前記バルクヘッドに結合されたピラー補強パイプと、を備えている。
【0007】
この車両のフロントピラー構造では、フロントピラーのベルトライン部を構成するベルトライン構成部の車両前側に、エプロンアッパメンバが配置されており、このエプロンアッパメンバの車両後側には、このエプロンアッパメンバと対向してバルクヘッドが配置されている。従って、車両前面衝突時には、エプロンアッパメンバに入力された衝突荷重がバルクヘッドを通じて車両後側に伝達される。
【0008】
ここで、フロントピラーアッパ部を構成するピラー補強パイプは、その前端部がバルクヘッドに結合されている。従って、上述の如く車両前面衝突時にバルクヘッドに伝達された衝突荷重の一部は、ピラー補強パイプに伝達される。これにより、フロントピラーアッパ部に効率良く車両前面衝突時の衝突荷重を伝達することができる。
【0009】
請求項2に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項1に記載のフロントピラー構造において、前記バルクヘッドが、車両前側且つ上側を向く傾斜壁部を有し、前記ピラー補強パイプの前端部が、前記傾斜壁部に結合された構成とされている。
【0010】
この車両のフロントピラー構造によれば、ピラー補強パイプの前端部と結合される傾斜壁部は、車両前側且つ上側を向いている。従って、ピラー補強パイプと傾斜壁部とが同様の傾斜とされているので、ピラー補強パイプの前端部をバルクヘッドに容易に結合することができる。
【0011】
請求項3に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項2に記載のフロントピラー構造において、前記バルクヘッドを有するピラーアウタパネルを備え、前記アウタリインフォースメントが、車両幅方向を板厚方向として車両上下方向に延びる内壁部と、前記内壁部における車両上側の端部から車両幅方向外側に向けて延出された上壁部と、を有し、前記ピラーアウタパネルが、前記内壁部の車両幅方向外側に該内壁部と対向して配置された外壁部と、前記外壁部における車両下側の端部から車両幅方向内側に向けて延出されると共に、前記傾斜壁部が形成され、且つ、前記内壁部、前記上壁部、及び、前記外壁部と共に閉断面部を構成する下壁部と、を有し、前記ピラー補強パイプの前端部が、前記閉断面部の内側に配置されると共に、前記内壁部及び前記外壁部にそれぞれ結合された構成とされている。
【0012】
この車両のフロントピラー構造によれば、アウタリインフォースメントにおける内壁部及び上壁部と、ピラーアウタパネルにおける外壁部及び下壁部とによって閉断面部が構成されている。そして、ピラー補強パイプの前端部は、この閉断面部の内側に配置されると共に、内壁部及び外壁部にそれぞれ結合されている。このように、ピラー補強パイプの前端部が閉断面部を構成する内壁部及び外壁部に結合されていると、この閉断面部の変形(断面崩れ)を抑制することができる。これにより、ピラー補強パイプ、ひいては、フロントピラーアッパ部により一層効率良く車両前面衝突時の衝突荷重を伝達することができる。
【0013】
請求項4に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項2又は請求項3に記載のフロントピラー構造において、前記ピラー補強パイプの前端面が、車両上下方向に沿って形成され、前記ピラー補強パイプの前端部と前記傾斜壁部とが、前記ピラー補強パイプの前端面に開口された開口部の上縁部を通り且つ前記傾斜壁部に対して垂直な仮想線よりも車両前側に形成されたスポット溶接による溶接部により結合された構成とされている。
【0014】
この車両のフロントピラー構造によれば、ピラー補強パイプの前端面は、車両上下方向に沿って形成されている。また、ピラー補強パイプの前端面に開口された開口部の上縁部を通り且つ傾斜壁部に対して垂直な仮想線を設定した場合に、ピラー補強パイプの前端部と傾斜壁部とを結合するスポット溶接による溶接部は、この仮想線よりも車両前側に形成されている。従って、傾斜壁部に対して垂直な方向から一対のスポットガンによりピラー補強パイプの前端部と傾斜壁部とをスポット溶接する際には、この一対のスポットガンのうちピラー補強パイプの前端部に対して接離されるスポットガンが上述の開口部の上縁部と干渉することを抑制することができる。これにより、ピラー補強パイプの前端部と傾斜壁部とをスポット溶接する際の作業性を良好にすることができる。
【0015】
請求項5に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のフロントピラー構造において、前記アウタリインフォースメントが、車両前後方向を板厚方向として車両上下方向に延び前記ベルトライン構成部を構成する前壁部を有し、前記エプロンアッパメンバが、前記前壁部の車両前側に該前壁部と対向して配置された荷重伝達部を有し、前記ピラー補強パイプの前端面が、車両上下方向に沿って形成されると共に、前記前壁部の車両後側に該前壁部と対向して配置された構成とされている。
【0016】
この車両のフロントピラー構造によれば、エプロンアッパメンバは、ベルトライン構成部に形成された前壁部の車両前側にこの前壁部と対向して配置された荷重伝達部を有している。また、ピラー補強パイプの前端面は、車両上下方向に沿って形成されており、上述の前壁部の車両後側にこの前壁部と対向して配置されている。従って、車両前面衝突時には、エプロンアッパメンバに入力された衝突荷重が、荷重伝達部、前壁部、及び、ピラー補強パイプの前端面を通じてフロントピラーアッパ部に伝達されるので、フロントピラーアッパ部への荷重伝達効率を向上させることができる。
【0017】
請求項6に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のフロントピラー構造において、前記アウタリインフォースメントが、車両前後方向を板厚方向として車両上下方向に延び前記ベルトライン構成部を構成する前壁部を有し、前記バルクヘッドが、前記前壁部の車両後側に該前壁部と対向して配置された荷重受け部を有する構成とされている。
【0018】
この車両のフロントピラー構造によれば、バルクヘッドは、ベルトライン構成部に形成された前壁部の車両後側にこの前壁部と対向して配置された荷重受け部を有している。従って、車両前面衝突時には、エプロンアッパメンバに入力された衝突荷重が、前壁部及び荷重受け部を通じてバルクヘッドに伝達されるので、バルクヘッドへの荷重伝達効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上詳述したように、本発明によれば、フロントピラーアッパ部に効率良く車両前面衝突時の衝突荷重を伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造の斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】図1に示される車両のフロントピラー構造の第一変形例を示す斜視図である。
【図6】図1に示される車両のフロントピラー構造の第二変形例を示す斜視図である。
【図7】図1に示される車両のフロントピラー構造の第三変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0022】
なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側(右側)をそれぞれ示している。
【0023】
はじめに、本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造10の構成について説明する。
【0024】
図1に示されるように、車両に設けられたフロントピラーPは、ベルトライン部P1と、このベルトライン部P1よりも車両上側のフロントピラーアッパ部P2と、ベルトライン部P1よりも車両下側のフロントピラーロア部P3とを有している。
【0025】
本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造10は、このフロントピラーPに適用されており、アウタリインフォースメント20と、エプロンアッパメンバ30と、ピラーアウタパネル40と、ピラー補強パイプ50とを備えている。
【0026】
アウタリインフォースメント20は、上述のフロントピラーアッパ部P2の下部、ベルトライン部P1、及び、フロントピラーロア部P3に亘って設けられている。このアウタリインフォースメント20は、内壁部21、上壁部22、前壁部23、及び、後壁部24を有している。
【0027】
内壁部21は、車両幅方向を板厚方向として車両上下方向に延びており、上壁部22は、この内壁部21における車両上側の端部から車両幅方向外側に向けて延出されている。上壁部22は、後述するピラー補強パイプ50の上壁部51に沿って形成されており、後端部が前端部よりも車両上側に位置されるように車両前後方向に対して傾斜されている。
【0028】
前壁部23は、車両前後方向を板厚方向として車両上下方向に延びており、内壁部21における車両前側の端部から車両幅方向外側に向けて延出されている。後壁部24は、車両前後方向を板厚方向として車両上下方向に延びており、内壁部21における車両後側の端部から車両幅方向外側に向けて延出されている。前壁部23と後壁部24とは、車両前後方向に対向されている。
【0029】
上壁部22の前部には、車両幅方向外側に向けて延出されたフランジ26が形成されており、前壁部23における車両幅方向外側の端部には、車両前側に向けて延出されたフランジ27が形成されている。後壁部24の上部は、車両上側に向かうに従って車両後側に向かうように湾曲して形成されている。この後壁部24における車両幅方向外側の端部には、車両後側に向けて延出された延出壁部28が形成されている。
【0030】
このアウタリインフォースメント20において、フロントピラーPのベルトライン部P1を構成する部分は、ベルトライン構成部29とされている。このベルトライン構成部29は、上述の内壁部21、前壁部23、及び、後壁部24によって構成されている。
【0031】
エプロンアッパメンバ30は、上述のベルトライン構成部29の車両前側に配置されている。このエプロンアッパメンバ30は、本体部31、上壁部32、及び、下壁部33を有している。
【0032】
本体部31は、車両幅方向を板厚方向として車両上下方向に延びており、上壁部32は、この本体部31における車両上側の端部から車両幅方向外側に向けて延出されている。下壁部33は、本体部31における車両下側の端部から車両幅方向外側に向けて延出されている。この下壁部33は、後端部が前端部よりも車両下側に位置されるように車両前後方向に対して傾斜されている。
【0033】
また、本体部31における車両後側の端部の上部には、車両後側に向けて延出された結合壁部34が形成されている。この結合壁部34は、車両幅方向を板厚方向として形成されており、上述の内壁部21の上部に車両幅方向内側から重ね合わされている。そして、この結合壁部34は、内壁部21の上部と例えばスポット溶接による溶接部35によって結合されている。この溶接部35は、後述するバルクヘッド70に形成された孔部74を通じてスポット溶接されたものであり、この孔部74の内側に形成されている(図2も参照)。
【0034】
また、上壁部32における車両後側の端部には、車両上側に向けて延出された荷重伝達部36が形成されている。この荷重伝達部36は、車両前後方向を板厚方向としており、前壁部23の上部の車両前側にこの前壁部23の上部と対向して配置されている。さらに、下壁部33における車両幅方向外側の端部には、車両下側に向けて延出されたフランジ37が形成されている。このフランジ37は、車両のエプロン部を構成する図示しない他の部材と結合される。
【0035】
ピラーアウタパネル40は、フロントピラーアッパ部P2を構成するフロントピラーアッパ構成部60と、フロントピラーPのベルトライン部P1に設けられたバルクヘッド70とを有している。
【0036】
フロントピラーアッパ構成部60は、外壁部61と後壁部62を有している。外壁部61は、車両幅方向を板厚方向として形成されており、内壁部21の上部の車両幅方向外側にこの内壁部21の上部と対向して配置されている。この外壁部61における車両上側の縁部61Aは、上述の上壁部22(若しくは後述するピラー補強パイプ50)に沿って傾斜して形成されている。つまり、この外壁部61における車両上側の縁部61Aは、後端部が前端部よりも車両上側に位置されるように車両前後方向に対して傾斜して形成されている。
【0037】
この外壁部61における車両上側の端部の前部には、車両幅方向外側に向けて延出されたフランジ63が形成されている。このフランジ63は、上述のフランジ26に車両下側から重ね合わされた状態で、このフランジ26と例えばスポット溶接による溶接部64によって結合されている。
【0038】
後壁部62は、外壁部61に対して折り曲げられて形成されており、車両前後方向に延びている。この後壁部62は、後述するピラー補強パイプ50の下壁部52に沿って形成されており、後端部が前端部よりも車両上側に位置されるように車両前後方向に対して傾斜されている。この後壁部62の前部は、車両前側に向かうに従って車両下側に向かうように湾曲して形成されており、外壁部61における車両後側の端部と接続されている。
【0039】
後壁部62における車両幅方向内側の端部には、フランジ65が形成されている。このフランジ65の前部65Aは、後壁部62における車両幅方向内側の端部から車両後側へ向けて延出されており、このフランジ65の前部65Aよりも後側の部分65Bは、後壁部62における車両幅方向内側の端部から車両下側且つ後側へ向けて延出されている。フランジ65の前部65Aは、上述の延出壁部28の上部に車両幅方向外側から重ね合わされた状態で、この延出壁部28の上部と例えばスポット溶接による溶接部66によって結合されている。
【0040】
バルクヘッド70は、上述のベルトライン構成部29に設けられており、エプロンアッパメンバ30の車両後側にこのエプロンアッパメンバ30と対向して配置されている。このバルクヘッド70は、車両幅方向を板厚方向として車両上下方向に延びる本体部71と、車両上下方向に対向する一対の対向壁部72,73とを有している。
【0041】
本体部71には、板厚方向に貫通する孔部74が形成されている。また、本体部71における車両前側の端部には、車両幅方向外側に延出するフランジ75が形成されており、本体部71における車両後側の端部には、車両幅方向外側に延出するフランジ76が形成されている。
【0042】
フランジ75は、上述の前壁部23の上部に車両後側から重ね合わされた状態で、この前壁部23の上部と例えばスポット溶接による溶接部77によって結合されている。一方、フランジ76は、上述の後壁部24の上部に車両前側から重ね合わされた状態で、この後壁部24の上部と例えばスポット溶接による溶接部78によって結合されている(図3も参照)。
【0043】
車両下側の対向壁部72は、本体部71における車両下側の端部から車両幅方向外側に向けて延出されている。この対向壁部72における車両幅方向外側の端部には、車両下側に向けて延出されたフランジ79が形成されている。このフランジ79は、ベルトライン部P1を構成する図示しない他の部材と結合される。
【0044】
車両上側の対向壁部73は、外壁部61における車両下側の端部から車両幅方向内側に向けて延出されており、本体部71における車両上側の端部と接続されている。この対向壁部73における車両後側の端部には、車両下側に向けて延出されたフランジ81が形成されている。このフランジ81は、上述の後壁部24の上部に車両前側から重ね合わされた状態で、この後壁部24の上部と例えばスポット溶接による溶接部82によって結合されている。
【0045】
また、この対向壁部73における前部には、傾斜壁部83が形成されている(図2,図4も参照)。この傾斜壁部83は、車両前側且つ上側を向いている。つまり、この傾斜壁部83は、後述するピラー補強パイプ50の前端部50A(下壁部52の前端部)に沿って形成されており、後端部が前端部よりも車両上側に位置されるように車両前後方向に対して傾斜されている。この傾斜壁部83における車両前側の端部には、車両下側に向けて延出されたフランジ84が形成されている。このフランジ84は、上述の前壁部23の上部に車両後側から重ね合わされた状態で、この前壁部23の上部と例えばスポット溶接による溶接部85によって結合されている。
【0046】
このバルクヘッド70に形成されたフランジ75,84は、本発明における荷重受け部の一例であり、上述の如く前壁部23の上部に車両後側から重ね合わされることで、前壁部23の車両後側にこの前壁部23と対向して配置されている(図4も参照)。
【0047】
また、上述の傾斜壁部83が形成された車両上側の対向壁部73は、本発明における下壁部の一例であり、上述の内壁部21、上壁部22、及び、外壁部61と共に閉断面部90を構成している(図2も参照)。つまり、この閉断面部90は、内壁部21の上部、上壁部22、外壁部61、及び、対向壁部73によって構成されており、車両幅方向に沿って切断した断面が閉断面状を成している。
【0048】
ピラー補強パイプ50は、フロントピラーアッパ部P2を構成している。このピラー補強パイプ50は、車両前後方向に延びており、後端部が前端部よりも車両上側に位置されるように車両前後方向に対して傾斜して配置されている。このピラー補強パイプ50は、車両幅方向に沿って切断した断面が四角形状を成す角パイプとされている。つまり、このピラー補強パイプ50は、上壁部51、下壁部52、及び、一対の側壁部53,54を有している。また、このピラー補強パイプ50は、高周波焼入れされたパイプとされており、その長手方向の全長に亘って略一定の断面で形成されている。
【0049】
このピラー補強パイプ50の前端部50Aは、上述の閉断面部90の内側に配置されている。そして、このピラー補強パイプ50の前端部50A、つまり、より具体的には、下壁部52の前端部は、上述のバルクヘッド70に形成された傾斜壁部83に車両上側から重ね合わされた状態で、この傾斜壁部83と例えばスポット溶接による溶接部55によって結合されている(図2,図4も参照)。
【0050】
また、図2に示されるように、このピラー補強パイプ50の前端部50A、つまり、より具体的には、一対の側壁部53,54の前端部は、内壁部21及び外壁部61とそれぞれ車両幅方向に重ね合わされた状態で、この内壁部21及び外壁部61とそれぞれ例えばスポット溶接による溶接部56,57によって結合されている。
【0051】
図4に示されるように、このピラー補強パイプ50の前端面50A1は、車両上下方向に沿って形成されており、上述の前壁部23の上部の車両後側にこの前壁部23の上部と対向して配置されている。また、ピラー補強パイプ50の前端面50A1に開口された開口部58の上縁部58Aを通り且つ傾斜壁部83に対して垂直な仮想線Lを設定した場合に、上述のスポット溶接による溶接部55は、この仮想線Lよりも車両前側(前端面50A1側)に形成されている。
【0052】
さらに、図1に示されるように、このピラー補強パイプ50の前端部50Aよりも車両後側の部分50Bは、例えばアーク溶接による溶接部101,102によって、上壁部22の後部及び後壁部62とそれぞれ結合されている。
【0053】
次に、本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造10の作用及び効果について説明する。
【0054】
この車両のフロントピラー構造10では、フロントピラーPのベルトライン部P1を構成するベルトライン構成部29の車両前側に、エプロンアッパメンバ30が配置されており、このエプロンアッパメンバ30の車両後側には、このエプロンアッパメンバ30と対向してバルクヘッド70が配置されている。従って、車両前面衝突時には、エプロンアッパメンバ30に入力された衝突荷重がバルクヘッド70を通じて車両後側に伝達される。
【0055】
ここで、フロントピラーアッパ部P2を構成するピラー補強パイプ50は、その前端部50Aがバルクヘッド70に結合されている(より具体的には、下壁部52の前端部が傾斜壁部83に結合されている)。従って、上述の如く車両前面衝突時にバルクヘッド70に伝達された衝突荷重の一部は、ピラー補強パイプ50に伝達される。これにより、フロントピラーアッパ部P2に効率良く車両前面衝突時の衝突荷重を伝達することができる。
【0056】
しかも、アウタリインフォースメント20における内壁部21及び上壁部22と、ピラーアウタパネル40における外壁部61及び対向壁部73とによって閉断面部90が構成されている。そして、ピラー補強パイプ50の前端部50Aは、この閉断面部90の内側に配置されると共に、内壁部21及び外壁部61にそれぞれ結合されている。
【0057】
このように、ピラー補強パイプ50の前端部50Aが閉断面部90を構成する内壁部21及び外壁部61に結合されていると、この閉断面部90の変形(断面崩れ)を抑制することができる。これにより、ピラー補強パイプ50、ひいては、フロントピラーアッパ部P2により一層効率良く車両前面衝突時の衝突荷重を伝達することができる。
【0058】
また、エプロンアッパメンバ30は、ベルトライン構成部29に形成された前壁部23の車両前側にこの前壁部23と対向して配置された荷重伝達部36を有している。また、ピラー補強パイプ50の前端面50A1は、車両上下方向に沿って形成されており、上述の前壁部23の車両後側にこの前壁部23と対向して配置されている。従って、車両前面衝突時には、エプロンアッパメンバ30に入力された衝突荷重が、荷重伝達部36、前壁部23、及び、ピラー補強パイプ50の前端面50A1を通じてフロントピラーアッパ部P2に伝達されるので、フロントピラーアッパ部P2への荷重伝達効率を向上させることができる。
【0059】
また、バルクヘッド70は、ベルトライン構成部29に形成された前壁部23の車両後側にこの前壁部23と対向して配置された荷重受け部としてのフランジ75,84を有している。従って、車両前面衝突時には、エプロンアッパメンバ30に入力された衝突荷重が、前壁部23及びフランジ75,84を通じてバルクヘッド70に伝達されるので、バルクヘッド70への荷重伝達効率を向上させることができる。
【0060】
また、ピラー補強パイプ50の前端部50Aと結合される傾斜壁部83は、車両前側且つ上側を向いている。従って、ピラー補強パイプ50と傾斜壁部83とが同様の傾斜とされているので、ピラー補強パイプ50の前端部50Aをバルクヘッド70に容易に結合することができる。
【0061】
また、ピラー補強パイプ50の前端面50A1に開口された開口部58の上縁部58Aを通り且つ傾斜壁部83に対して垂直な仮想線Lを設定した場合に、ピラー補強パイプ50の前端部50Aと傾斜壁部83とを結合するスポット溶接による溶接部55は、この仮想線Lよりも車両前側に形成されている。
【0062】
従って、図4に示される如く、傾斜壁部83に対して垂直な方向から一対のスポットガン120,121によりピラー補強パイプ50の前端部50Aと傾斜壁部83とをスポット溶接する際には、この一対のスポットガン120,121のうちピラー補強パイプ50の前端部50A(下壁部52の前端部)に対して接離されるスポットガン120が上述の開口部58の上縁部58Aと干渉することを抑制することができる。これにより、ピラー補強パイプ50の前端部50Aと傾斜壁部83とをスポット溶接する際の作業性を良好にすることができる。
【0063】
また、フロントピラーアッパ部P2にパイプ状のピラー補強パイプ50が用いられているので、剛性(強度)を確保しつつフロントピラーアッパ部P2の断面を小さくすることができる。これにより、フロントピラーアッパ部P2を細幅化することができる。
【0064】
また、ピラー補強パイプ50の前端部50Aがバルクヘッド70に直に結合されているので、余分なブラケット等が不要になり、車両の軽量化を図ることができる。
【0065】
次に、本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造10の変形例について説明する。
【0066】
上記実施形態において、ピラー補強パイプ50の前端部50A(下壁部52の前端部)と傾斜壁部83とは、スポット溶接による溶接部55によって結合されていたが、図5に示されるように、例えばアーク溶接による溶接部135や、図6に示されるように、レーザ溶接による溶接部145等によって結合されていても良い。
【0067】
また、ピラー補強パイプ50の前端部50Aは、下壁部52の前端部が傾斜壁部83に結合されることで、バルクヘッド70に結合されていたが、次のようにしてバルクヘッド70に結合されても良い。
【0068】
つまり、図7に示される変形例において、下壁部52の前端部には、開口部58側から切り欠かれた切欠き151が形成されており、この切欠き151の内側には、バルクヘッド70の上部が配置されている。そして、車両幅方向内側の側壁部53の前端部が、本体部71の車両前側且つ上側の隅部に例えばスポット溶接による溶接部155によって結合されている。
【0069】
このように構成されていても、車両前面衝突時にバルクヘッド70に伝達された衝突荷重の一部は、ピラー補強パイプ50に伝達されるので、フロントピラーアッパ部P2に効率良く車両前面衝突時の衝突荷重を伝達することができる。
【0070】
また、ピラー補強パイプ50は、車両幅方向に沿って切断した断面が四角形状を成す角パイプとされていたが、車両幅方向に沿って切断した断面が円形状(若しくは楕円)を成す丸パイプや、その他の断面形状を有するパイプとされていても良い。
【0071】
また、バルクヘッド70は、荷重受け部の一例として、前壁部23に重ね合わされた状態で結合されたフランジ75,84を有していたが、このフランジ75,84以外に、前壁部23の車両後側にこの前壁部23と隙間を有して対向して配置された荷重受け部を有していても良い。
【0072】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
10 フロントピラー構造
20 アウタリインフォースメント
21 内壁部
22 上壁部
23 前壁部
29 ベルトライン構成部
30 エプロンアッパメンバ
36 荷重伝達部
40 ピラーアウタパネル
50 ピラー補強パイプ
50A 前端部
50A1 前端面
55 溶接部
58 開口部
58A 上縁部
61 外壁部
70 バルクヘッド
73 対向壁部(下壁部)
75,84 フランジ(荷重受け部)
83 傾斜壁部
90 閉断面部
L 仮想線
P フロントピラー
P1 ベルトライン部
P2 フロントピラーアッパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられたフロントピラーのベルトライン部を構成するベルトライン構成部を備えたアウタリインフォースメントと、
前記ベルトライン構成部の車両前側に配置されたエプロンアッパメンバと、
前記ベルトライン構成部に設けられると共に、前記エプロンアッパメンバの車両後側に該エプロンアッパメンバと対向して配置されたバルクヘッドと、
車両前後方向に延びると共に、後端部が前端部よりも車両上側に位置されるように車両前後方向に対して傾斜して配置されて、前記フロントピラーにおける前記ベルトライン部よりも車両上側のフロントピラーアッパ部を構成し、且つ、前端部が前記バルクヘッドに結合されたピラー補強パイプと、
を備えた車両のフロントピラー構造。
【請求項2】
前記バルクヘッドは、車両前側且つ上側を向く傾斜壁部を有し、
前記ピラー補強パイプの前端部は、前記傾斜壁部に結合されている、
請求項1に記載の車両のフロントピラー構造。
【請求項3】
前記バルクヘッドを有するピラーアウタパネルを備え、
前記アウタリインフォースメントは、車両幅方向を板厚方向として車両上下方向に延びる内壁部と、前記内壁部における車両上側の端部から車両幅方向外側に向けて延出された上壁部と、を有し、
前記ピラーアウタパネルは、前記内壁部の車両幅方向外側に該内壁部と対向して配置された外壁部と、前記外壁部における車両下側の端部から車両幅方向内側に向けて延出されると共に、前記傾斜壁部が形成され、且つ、前記内壁部、前記上壁部、及び、前記外壁部と共に閉断面部を構成する下壁部と、を有し、
前記ピラー補強パイプの前端部は、前記閉断面部の内側に配置されると共に、前記内壁部及び前記外壁部にそれぞれ結合されている、
請求項2に記載の車両のフロントピラー構造。
【請求項4】
前記ピラー補強パイプの前端面は、車両上下方向に沿って形成され、
前記ピラー補強パイプの前端部と前記傾斜壁部とは、前記ピラー補強パイプの前端面に開口された開口部の上縁部を通り且つ前記傾斜壁部に対して垂直な仮想線よりも車両前側に形成されたスポット溶接による溶接部により結合されている、
請求項2又は請求項3に記載の車両のフロントピラー構造。
【請求項5】
前記アウタリインフォースメントは、車両前後方向を板厚方向として車両上下方向に延び前記ベルトライン構成部を構成する前壁部を有し、
前記エプロンアッパメンバは、前記前壁部の車両前側に該前壁部と対向して配置された荷重伝達部を有し、
前記ピラー補強パイプの前端面は、車両上下方向に沿って形成されると共に、前記前壁部の車両後側に該前壁部と対向して配置されている、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両のフロントピラー構造。
【請求項6】
前記アウタリインフォースメントは、車両前後方向を板厚方向として車両上下方向に延び前記ベルトライン構成部を構成する前壁部を有し、
前記バルクヘッドは、前記前壁部の車両後側に該前壁部と対向して配置された荷重受け部を有している、
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の車両のフロントピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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