説明

車両のラジエータグリル構造

【課題】エンジンルーム内への空気の導入量を制御することができると共に、ラジエータグリルの見栄えを良好にすることができる。
【解決手段】アッパーグリル12では、複数の回動羽根32、34、36が、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させてグリル開口部20を開放したアッパーグリル開状態では、回動羽根32、34、36の先端が、後方延出片28A及びグリル格子部24、26によって車体外側から遮蔽される。また、複数の回動羽根32、34、36が、隣接同士で先端部と基端部を重合させてグリル開口部20を閉鎖するアッパーグリル閉状態では、回動羽根32、34、36の先端が車体前方視によるグリル格子部24、26及び下壁部44の投影面内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のラジエータグリル構造に関し、特にラジエータグリルのグリル開口部を開閉するシャッタ装置を備えたラジエータグリル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のラジエータグリル構造(例えば、特許文献1参照)では、ラジエータグリルの車体後方側に設けられた空気通路内にシャッタ装置が設置されている。このシャッタ装置は、平行に並んだ複数の羽根部材を支持軸周りに回動させることで上記空気通路を開閉する。これにより、エンジンルーム内への空気の導入量を制御するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−1503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の如きラジエータグリル構造では、車体前方側からラジエータグリルを観察した際に、ラジエータグリルの格子部の隙間からシャッタ装置の複数の羽根部材を視認し得る。このため、ラジエータグリルの格子部と複数の羽根部材とに形態的な統一感がない場合などには、観察者に雑然とした印象を与え、ラジエータグリルの見栄えが悪くなってしまう。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、エンジンルーム内への空気の導入量を制御することができると共に、ラジエータグリルの見栄えを良好にすることができる車両のラジエータグリル構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両のラジエータグリル構造は、車体前部に設けられ、エンジンルーム内に空気を導入するためのグリル開口部を有すると共に、長尺状に形成された複数のグリル格子部が前記グリル開口部内に並んで設けられることで格子状に形成されたラジエータグリルと、前記複数のグリル格子部の各々の車体後方側に設けられ、各基端部が前記各グリル格子部と平行な支持軸を介して車体に支持されると共に、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させて前記グリル開口部を開放する開状態、及び隣接同士で先端部と基端部を重合させて前記グリル開口部を閉鎖する閉状態へ回動可能とされた複数の回動羽根を有し、前記開状態で前記各回動羽根の先端が前記ラジエータグリルによって車体外側から遮蔽されるシャッタ装置と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の車両のラジエータグリル構造では、ラジエータグリルの複数のグリル格子部の車体後方側に、シャッタ装置を構成する複数の回動羽根が設けられている。複数の回動羽根は、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させてラジエータグリルのグリル開口部を開放する開状態、及び隣接同士で先端部と基端部を重合させてグリル開口部を閉鎖する閉状態へと回動可能とされている。これにより、エンジンルーム内への空気の導入量を制御することができる。
【0008】
しかも、複数の回動羽根が、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させた開状態では、各回動羽根の先端がラジエータグリルによって車体外側から遮蔽される。すなわち、回動羽根の先端がグリル格子部などの背後に隠れて車体外側から視認できなくなる。これにより、ラジエータグリルが車体外側から観察された際には、グリル格子部と回動羽根とが車体前後方向に連続するような一体的な外観を呈するため、ラジエータグリルの見栄えを良好にすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両のラジエータグリル構造は、車体前部に設けられ、エンジンルーム内に空気を導入するためのグリル開口部を有すると共に、長尺状に形成された複数のグリル格子部が前記グリル開口部内に並んで設けられることで格子状に形成されたラジエータグリルと、前記複数のグリル格子部の各々の車体後方側に設けられ、各基端部が前記各グリル格子部と平行な支持軸を介して車体に支持されると共に、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させて前記グリル開口部を開放する開状態、及び隣接同士で先端部と基端部を重合させて前記グリル開口部を閉鎖する閉状態へ回動可能とされた複数の回動羽根を有し、前記開状態及び前記閉状態のうち少なくとも一方で前記各回動羽根の先端が車体前方視による前記ラジエータグリルの投影面内に配置されるシャッタ装置と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の車両のラジエータグリル構造では、ラジエータグリルの複数のグリル格子部の車体後方側に、シャッタ装置を構成する複数の回動羽根が設けられている。複数の回動羽根は、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させてラジエータグリルのグリル開口部を開放する開状態、及び隣接同士で先端部と基端部を重合させてグリル開口部を閉鎖する閉状態へと回動可能とされている。これにより、エンジンルーム内への空気の導入量を制御することができる。
【0011】
しかも、上記開状態及び上記閉状態のうち少なくとも一方では、各回動羽根の先端が車体前方視によるラジエータグリルの投影面内に配置される。これにより、ラジエータグリルの見栄えを良好にすることができる。
【0012】
すなわち、上記開状態で各回動羽根の先端が車体前方視によるラジエータグリル(グリル格子部など)の投影面内に配置される場合には、回動羽根の先端がグリル格子部の背後に隠れて車体前方側から視認し難くなる。これにより、グリル格子部と回動羽根とが車体前後方向に連続するような一体的な外観を呈するため、ラジエータグリルの見栄えを良好にすることができる。
【0013】
一方、上記閉状態で各回動羽根の先端が車体前方視によるラジエータグリル(グリル格子部など)の投影面内に配置される場合には、一の回動羽根の先端部と隣の回動羽根の基端部との重合部分に生じる段差などがグリル格子部の背後に隠れて車体前方側から視認し難くなる。これにより、ラジエータグリルの見栄えを良好にすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明に係る車両のラジエータグリル構造は、車体前部に設けられ、エンジンルーム内に空気を導入するためのグリル開口部を有すると共に、長尺状に形成された複数のグリル格子部が前記グリル開口部内に並んで設けられることで格子状に形成されたラジエータグリルと、前記複数のグリル格子部の各々の車体後方側に設けられ、各基端部が前記各グリル格子部と平行な支持軸を介して車体に支持されると共に、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させて前記グリル開口部を開放する開状態、及び隣接同士で先端部と基端部を重合させて前記グリル開口部を閉鎖する閉状態へ回動可能とされた複数の回動羽根を有し、前記開状態で前記各回動羽根の先端部が前記各グリル格子部の後端下部に当接するシャッタ装置と、を備えたことを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の車両のラジエータグリル構造では、ラジエータグリルの複数のグリル格子部の車体後方側に、シャッタ装置を構成する複数の回動羽根が設けられている。複数の回動羽根は、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させてラジエータグリルのグリル開口部を開放する開状態、及び隣接同士で先端部と基端部を重合させてグリル開口部を閉鎖する閉状態へと回動可能とされている。これにより、エンジンルーム内への空気の導入量を制御することができる。
【0016】
しかも、複数の回動羽根が、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させた開状態では、各回動羽根の先端部が各グリル格子部の後端下部に当接する。これにより、各回動羽根の先端が各グリル格子部の背後に隠れて車体前方側から視認し難くなり、グリル格子部と回動羽根とが車体前後方向に連続するような一体的な外観を呈する。これにより、ラジエータグリルの見栄えを良好にすることができる。特に、ラジエータグリルが斜め上方から見下ろされたときの見栄えを良好にすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明に係る車両のラジエータグリル構造は、請求項1又は請求項2に記載の車両のラジエータグリル構造において、前記各グリル格子部の後端面は、各々の車体後方側に配置された前記各回動羽根の先端の回動軌跡に沿った曲面状に形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項4に記載の車両のラジエータグリル構造では、各グリル格子部の後端面が各回動羽根の先端の回動軌跡に沿った曲面状に形成されている。このため、複数の回動羽根の開状態において各回動羽根の先端を各グリル格子部の後端面に近接して配置させることができる。これにより、各回動羽根の先端を車体外側から良好に遮蔽することができるため、ラジエータグリルの見栄えを一層良好なものにすることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明に係る車両のラジエータグリル構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両のラジエータグリル構造において、前記各グリル格子部の後端部及び前記各回動羽根の先端部には、段差部又は傾斜部が設けられると共に、車体前後方向に並ぶグリル格子部と回動羽根とが前記開状態で各々の表面を同一面状に配置させることを特徴としている。
【0020】
請求項5に記載の車両のラジエータグリル構造では、複数の回動羽根の開状態において、車体前後方向に並ぶグリル格子部と回動羽根とが各々の表面を同一面上に配置させる。このため、開状態におけるグリル格子部と回動羽根との一体感を向上させることができる。これにより、ラジエータグリルの見栄えを一層良好なものにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る車両のラジエータグリル構造では、エンジンルーム内への空気の導入量を制御することができると共に、ラジエータグリルの見栄えを良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両のラジエータグリル構造が適用されて構成された車両の車体前部の構成を示す概略的な斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2に示されるアッパーグリルを拡大した断面図であり、回動羽根が開位置に配置された状態の図である。
【図4】回動羽根が閉位置に配置された状態を示す図3に対応する断面図である。
【図5】図2に示されるロアグリルを拡大した断面図であり、回動羽根が開位置に配置された状態の図である。
【図6】回動羽根が閉位置に配置された状態を示す図5に対応する断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る車両のラジエータグリル構造が適用されて構成された車両の車体前部の構成を示す概略的な斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るグリル格子部及び回動羽根の構成を示す横断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る車両のラジエータグリル構造の部分的な構成を示す縦断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る車両のラジエータグリル構造の部分的な構成を示す縦断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る車両のラジエータグリル構造の部分的な構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図6に基づいて説明する。なお、図中矢印FRは車体前方向を示し、矢印UPは車体上方向を示し、矢印INは車幅内側方向を示している。
【0024】
図1に示されるように、本第1実施形態に係る車両10の車体前部には、ラジエータグリルとしてのアッパーグリル12及びロアグリル14が設けられている。アッパーグリル12は、エンジンフード16の前端部の車体下方側に配置されており、ロアグリル14は、アッパーグリル12の車体下方側においてバンパカバー17と一体に形成されている。アッパーグリル12及びロアグリル14は、エンジンルーム18内に外気を導入するためのグリル開口部20、22を備えている。
【0025】
図2〜図4に示されるように、アッパーグリル12のグリル開口部20内には、複数(本実施形態では2つ)のグリル格子部24、26が設けられている。これらのグリル格子部24、26は、長尺な板状に形成されており、板厚方向が略車体上下方向に沿い、長手方向が車幅方向に沿う状態で上下に平行に並んで配置されている。各グリル格子部24、26の長手方向両端部は、開口部20の車幅方向両側の内壁(アッパーグリル12の側壁)に結合されており、アッパーグリル12は全体として格子状に形成されている。
【0026】
グリル格子部24、26の車体上方側には、アッパーグリル12の上壁部28が配置されている。上壁部28は、車体下方側へ向けて開口した開断面形状に形成されており、上壁部28の前端下部からは、車体後方側へ向けて後方延出片28Aが延出されている。この後方延出片28Aは、車幅方向に沿って長尺な板状に形成されており、板厚方向が車体上下方向に沿う状態で各グリル格子部24、26と平行に配置されている。
【0027】
後方延出片28A及びグリル格子部24、26の車体後方側には、シャッタ装置30を構成する複数(本第1実施形態では3つ)の回動羽根32、34、36が配置されている。回動羽根32、34、36は、長尺な板状に形成されており、長手方向が車幅方向に沿う状態で上下に平行に並んで配置されている。なお、図2〜図4では、説明の都合上、回動羽根32、34、36の断面のハッチングを省略してある。
【0028】
各回動羽根32、34、36の短手方向一端部(基端部。図2及び図3では右側の端部)には、支持軸38、40、42が設けられている。これらの支持軸38、40、42は、軸線方向が車幅方向に沿う状態、すなわち各グリル格子部24、26と平行な状態で上下に平行に並んで配置されている。
【0029】
一番上に配置された支持軸38は、後方延出片28Aの車体後方側に配置されており、この支持軸38の軸心は、後方延出片28Aの断面の中心線αと同じ高さに配置されている。また、中央に配置された支持軸40は、グリル格子部24の車体後方側に配置されており、この支持軸40の軸心は、グリル格子部24の断面の中心線βと同じ高さに配置されている。また、一番下に配置された支持軸42は、グリル格子部26の車体後方側に配置されており、この支持軸42の軸心は、グリル格子部26の断面の中心線γと同じ高さに配置されている。
【0030】
これらの支持軸38、40、42は、軸線方向両端部が開口部20の車幅方向両側の内壁(アッパーグリル12の側壁)に回転可能に軸支されており、これにより、各回動羽根32、34、36が各支持軸38、40、42を介して車体に支持されている。また、各支持軸38、40、42には、図示しない駆動力伝達機構を介して図示しない駆動源(例えばモータ)の駆動力が伝達されるようになっており、各回動羽根32、34、36は、当該駆動源の駆動力によって、図3に示される開位置と図4に示される閉位置との間で連動して回動されるようになっている。
【0031】
図3に示されるように、各回動羽根32、34、36が開位置に配置された状態(以下、「アッパーグリル開状態」という)では、各回動羽根32、34、36が先端部を基端部の車体前方側に配置させてグリル開口部20を開放する。このため、このアッパーグリル開状態では、車両走行時の走行風がグリル開口部20を通過してエンジンルーム18内に導入されるようになっており、エンジンルーム18内に設けられた図示しないラジエータが当該走行風によって冷却される。
【0032】
一方、図4に示されるように、各回動羽根32、34、36が閉位置に配置された状態(以下、「アッパーグリル閉状態」という)では、各回動羽根32、34、36が隣接同士で先端部と基端部を重合(当接)させるようになっている。なお、一番下の回動羽根36の先端部は、アッパーグリル12の下壁部44の後端側に設けられた凹部44A内に挿入され、下壁部44の後端部に設けられたストッパ部44Bに当接する。このアッパーグリル閉状態では、グリル開口部20が回動羽根32、34、36によって閉鎖され、エンジンルーム18内への走行風の導入が遮断される。
【0033】
ここで、本第1実施形態では、図3に示されるアッパーグリル開状態では、回動羽根32の先端が後方延出片28Aの後端面46に対向且つ近接して配置される。この状態では、回動羽根32の先端は、車体前方視による後方延出片28Aの投影面内に配置され、後方延出片28Aによって車体外側から遮蔽されるようになっている。
【0034】
また、図3に示されるアッパーグリル開状態では、回動羽根34の先端がグリル格子部24の後端面48に対向且つ近接して配置される。この状態では、回動羽根34の先端が車体前方視によるグリル格子部24の投影面内に配置され、グリル格子部24によって車体外側から遮蔽されるようになっている。
【0035】
さらに、図3に示されるアッパーグリル開状態では、回動羽根36の先端がグリル格子部26の後端面50に対向且つ近接して配置される。この状態では、回動羽根36の先端が車体前方視によるグリル格子部26の投影面内に配置され、グリル格子部26によって車体外側から遮蔽されるようになっている。
【0036】
なお、後方延出片28Aの後端面46は、回動羽根32の先端の回動軌跡に沿った曲面状に形成され、グリル格子部24の後端面48は、回動羽根34の先端の回動軌跡に沿った曲面状に形成され、グリル格子部26の後端面50は、回動羽根36の先端の回動軌跡に沿った曲面状に形成されている。
【0037】
また、本第1実施形態では、図3に示されるように、支持軸38の軸心から回動羽根32の先端までの長さL1は、後方延出片28Aとグリル格子部24との間の距離H1と同じ寸法に設定されている(L1=H1)。このため、図4に示されるアッパーグリル閉状態では、回動羽根32の先端は、車体前方視によるグリル格子部24の投影面内(図4の領域X参照)において、グリル格子部24の断面中心線βと同じ高さに配置されるようになっている。
【0038】
また同様に、図3に示されるように、支持軸40の軸心から回動羽根34の先端までの長さL2は、グリル格子部24とグリル格子部26との間の距離H2と同じ寸法に設定されている(L2=H2)。このため、図4に示されるアッパーグリル閉状態では、回動羽根34の先端は、車体前方視によるグリル格子部26の投影面内(図4の領域Y参照)において、グリル格子部26の断面中心線γと同じ高さに配置されるようになっている。
【0039】
また、図3に示されるように、支持軸42の軸心から回動羽根36の先端までの長さL3は、グリル格子部26と下壁部44との間の距離H3よりも僅かに長く設定されている(L3>H3)。このため、図4に示されるアッパーグリル閉状態では、回動羽根36の先端は、車体前方視による下壁部44の投影面内(図4の領域Z参照)において、下壁部44の断面中心線δよりも車体下方側に配置されるようになっている。
【0040】
なお、本第1実施形態では、アッパーグリル閉状態において、回動羽根32、34、36が支持軸38、40、42の下方に垂下するように、支持軸38、40、42が車両前後方向にオフセットして配置されている。
【0041】
一方、図2、図5、図6に示されるように、ロアグリル14のグリル開口部22内には、複数(本実施形態では3つ)のグリル格子部52、54、56が設けられている。これらのグリル格子部52、54、56は、長尺な板状に形成されており、板厚方向が略車体上下方向に沿い、長手方向が車幅方向に沿う状態で上下に平行に並んで配置されている。各グリル格子部52、54、56の長手方向両端部は、開口部22の車幅方向両側の内壁(ロアグリル14の側壁)に結合されており、ロアグリル14は全体として格子状に形成されている。
【0042】
一番上のグリル格子部52の車体上方側には、ロアグリル14の上壁部58が配置されており、上壁部58及びグリル格子部52、54、56の車体後方側には、シャッタ装置60を構成する複数(本第1実施形態では4つ)の回動羽根62、64、66、68が配置されている。これらの回動羽根62、64、66、68は、前述した回動羽根32、34、36と基本的に同様の構成とされており、車幅方向に沿って長尺な板状に形成され、上下に平行に並んで配置されている。なお、図2、図5、図6では、説明の都合上、回動羽根62、64、66、68の断面のハッチングを省略してある。
【0043】
回動羽根62、64、66、68の短手方向一端部(基端部。図2及び図5では右側の端部)には、支持軸70、72、74、76が設けられている。これらの支持軸70、72、74、76は、軸線方向が車幅方向に沿う状態、すなわち各グリル格子部52、54、56と平行な状態で上下に平行に並んで配置されている。
【0044】
一番上に配置された支持軸70は、上壁部58の車体後方側に配置されている。また、上から二番目の支持軸72は、グリル格子部52の車体後方側に配置されている。また、上から三番面の支持軸74は、グリル格子部54の車体後方側に配置されており、一番下の支持軸76は、グリル格子部56の車体後方側に配置されている。
【0045】
これらの支持軸70、72、74、76は、軸線方向両端部が開口部22の車幅方向両側の内壁(ロアグリル14の側壁)に回転可能に軸支されており、これにより、各回動羽根62、64、66、68が各支持軸70、72、74、76を介して車体に支持されている。
また、各支持軸70、72、74、76には、図示しない駆動力伝達機構を介して図示しない駆動源(例えばモータ)の駆動力が伝達されるようになっており、各回動羽根62、64、66、68は、当該駆動源の駆動力によって、図5に示される開位置と図6に示される閉位置との間で連動して回動されるようになっている。
【0046】
ここで、図5に示されるように、回動羽根62、64、66、68が開位置に配置された状態(以下、「ロアグリル開状態」という)では、回動羽根62、64、66、68が先端部を基端部の車体前方側に配置させてグリル開口部22を開放する。このため、このロアグリル開状態では、車両走行時の走行風がグリル開口部22を通過してエンジンルーム18内に導入されるようになっており、エンジンルーム18内に設けられた図示しないラジエータが当該走行風によって冷却される。
【0047】
また、図5に示されるように、ロアグリル開状態では、回動羽根64、66、68が各先端部をグリル格子部52、54、56の後端下部に当接させるようになっている。なお、一番上に配置された回動羽根62は、上壁部58の後端側に形成された凹部58A内に収容される。
【0048】
一方、図6に示されるように、回動羽根62、64、66、68が閉位置に配置された状態(以下、「ロアグリル閉状態」という)では、回動羽根62、64、66、68が隣接同士で先端部と基端部を重合(当接)させるようになっている。なお、一番下の回動羽根68の先端部は、ロアグリル14の下壁部78の後端側に設けられた凹部78A内に挿入され、下壁部78の後端部に設けられたストッパ部78Bに当接する。このロアグリル閉状態では、グリル開口部22が回動羽根62、64、66、68によって閉鎖され、エンジンルーム18内への走行風の導入が遮断される。
【0049】
また、このロアグリル閉状態では、回動羽根62、64、66の各先端は、車体前方視によるグリル格子部52、54、56の投影面内(図6の領域S、T、U参照)に配置され、回動羽根68の先端は、車体前方視による下壁部78の投影面内(図6の領域V参照)に配置されるようになっている。
【0050】
次に、本第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0051】
本第1実施形態では、アッパーグリル12に設けられたシャッタ装置30は、複数の回動羽根32、34、36によってアッパーグリル12のグリル開口部20を開閉可能とされている。また、ロアグリル14に設けられたシャッタ装置60は、複数の回動羽根62、64、66、68によってロアグリル14のグリル開口部22を開閉可能とされている。これにより、エンジンルーム18内への空気の導入量を制御することができる。
【0052】
しかも、図3に示されるように、アッパーグリル12の複数の回動羽根32、34、36が、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させたアッパーグリル開状態では、回動羽根32、34、36の先端が車体前方視による後方延出片28A及びグリル格子部24、26の投影面内に配置されて車体外側から遮蔽される。換言すれば、回動羽根32、34、36の先端が後方延出片28Aやグリル格子部24、26の背後に隠れて車体外側から視認できなくなる(図3の矢印A及び矢印B参照)。
【0053】
このため、アッパーグリル開状態においてアッパーグリル12が車体外側から観察された際には、後方延出片28A及びグリル格子部24、26と回動羽根32、34、36とが車体前後方向に連続するような一体的な外観を呈する。これにより、アッパーグリル開状態におけるアッパーグリル12の見栄えを良好にすることができる。
【0054】
しかも、本第1実施形態では、後方延出片28Aの後端面46及びグリル格子部24、26の後端面48、50が回動羽根32、34、36の先端の回動軌跡に沿った曲面状に形成されている。このため、アッパーグリル開状態において回動羽根32、34、36の先端を後方延出片28A及びグリル格子部24、26の後端面46、48、50に近接して配置させることができる。これにより、回動羽根32、34、36の先端を車体外側から良好に遮蔽することができるため、アッパーグリル12の見栄えを一層良好なものにすることができる。
【0055】
また、本第1実施形態では、図4に示されるように、アッパーグリル12の複数の回動羽根32、34、36が、隣接同士で先端部と基端部を重合させたアッパーグリル閉状態では、回動羽根32、34、36の先端が車体前方視によるグリル格子部24、26及び下壁部44の投影面内(図4の領域X、Y、Z参照)に配置される。
【0056】
このため、回動羽根32の先端部と回動羽根34の基端部との重合部分に生じる段差や、回動羽根34の先端部と回動羽根36の基端部との重合部分に生じる段差がグリル格子部24、26の背後に隠れて車体前方側から視認し難くなる(図4の矢印B参照)。これにより、アッパーグリル閉状態におけるアッパーグリル12の見栄えを良好にすることができる。
【0057】
さらに、図5に示されるように、ロアグリル14の回動羽根62、64、66、68が、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させたロアグリル開状態では、回動羽根62が上壁部58の凹部58A内に収容されると共に、回動羽根64、66、68の先端部がグリル格子部52、54、56の後端下部に当接する。これにより、回動羽根62が上壁部58の背後に隠れて車体前方側から視認し難くなると共に、回動羽根64、66、68の先端がグリル格子部52、54、56の背後に隠れて車体前方側から視認し難くなり、グリル格子部52、54、56と回動羽根64、66、68とが車体前後方向に連続するような一体的な外観を呈する。これにより、ロアグリル開状態におけるロアグリル14の見栄えを良好にすることができる。特に、ロアグリル14が斜め上方から見下ろされたときの見栄えを良好にすることができる(図5の矢印A参照)。
【0058】
また、図6に示されるように、ロアグリル14の複数の回動羽根62、64、66、68が、隣接同士で先端部と基端部を重合させたロアグリル閉状態では、回動羽根62、64、66、68の先端が車体前方視によるグリル格子部52、54、56及び下壁部78の投影面内(図4の領域S、T、U、V参照)に配置される。
【0059】
このため、回動羽根62の先端部と回動羽根64の基端部との重合部分に生じる段差、回動羽根64の先端部と回動羽根66の基端部との重合部分に生じる段差、及び回動羽根66の先端部と回動羽根68の重合部分に生じる段差がグリル格子部52、54、56の背後に隠れて車体前方側から視認し難くなる(図6の矢印B参照)。これにより、ロアグリル閉状態におけるロアグリル14の見栄えを良好にすることができる。
【0060】
なお、上記第1実施形態では、図3において、L1=H1、L2=H2、L3>H3に設定された構成にしたが、本発明はこれに限らず、これらの寸法は適宜変更することができる。
【0061】
また、上記第1実施形態では、アッパーグリル閉状態において、回動羽根32、34の先端がそれぞれグリル格子部24、26の断面の中心線β、γと同じ高さに配置される構成にしたが、これに限らず、回動羽根32、34の先端がそれぞれグリル格子部24、26の断面の中心線β、γよりも車体下方側に配置される構成にしてもよい。この場合、アッパーグリル12が斜め上方から見下ろされたときの見栄えを良好にすることができる。
【0062】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前記第1実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
<第2の実施形態>
図7には、本発明の第2実施形態に係るラジエータグリル構造が適用されて構成された車両80の車体前部の構成が概略的な斜視図にて示されている。この車両80は、前記第1実施形態に係る車両10と基本的に同様の構成とされているが、この車両80のアッパーグリル82のグリル開口部84内には、長尺な板状に形成された複数のグリル格子部86が略車体上下方向に沿って配置されている。
【0063】
これらのグリル格子部86の車体後方側には、図8に示されるように、複数の回動羽根88が設けられている。これらの回動羽根88は、長尺な板状に形成されており、略車体上下方向に沿って配置されている。これらの回動羽根88の基端部(図8では上側の端部)は、各グリル格子部86と平行な支持軸90を介して車体に支持されており、各回動羽根88は、図8に実線で示される開位置と図8に二点鎖線で示される閉位置との間で回動可能とされている。なお、図8において、L4とW4とは同じ寸法に設定されている(L4=W4)。また、ロアグリル92もアッパーグリル82と基本的に同様の構成とされている。この実施形態においても、上記第1実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
<第3の実施形態>
図9には、本発明の第3実施形態に係るラジエータグリル構造の部分的な構成が概略的な縦断面図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされている。但し、この実施形態では、グリル格子部94の後端部及び回動羽根96の先端部にそれぞれ段部98、100が形成されており、回動羽根96が開位置に配置された状態(図9図示状態)では、グリル格子部94の表面と回動羽根96の表面とが同一面上に配置されるようになっている。なお、図9では説明の都合上、グリル格子部94及び回動羽根96の断面のハッチングを省略してある。また、図9において102は支持軸である。
【0064】
この実施形態では、開状態(図9図示状態)におけるグリル格子部94と回動羽根96との一体感を向上させることができるため、ラジエータグリルの見栄えを一層良好なものにすることができる。
<第4の実施形態>
図10には、本発明の第4実施形態に係るラジエータグリル構造の部分的な構成が概略的な縦断面図にて示されている。この実施形態は、前記第3実施形態と基本的に同様の構成とされている。但し、この実施形態では、グリル格子部94の後端部及び回動羽根96の先端部にそれぞれ傾斜部104、106が形成されており、回動羽根96が開位置に配置された状態(図10図示状態)では、グリル格子部94の表面と回動羽根96の表面とが同一面上に配置されるようになっている。
この実施形態においても、開状態(図10図示状態)におけるグリル格子部94と回動羽根96との一体感を向上させることができるため、ラジエータグリルの見栄えを一層良好なものにすることができる。
【0065】
なお、上記第3実施形態及び第4実施形態では、回動羽根96が開位置に配置された状態(図9及び図10図示状態)で、回動羽根96の先端部がグリル格子部94の後端下部に当接する構成にしてもよいし、当接せずに近接して配置される構成にしてもよい。
<第5の実施形態>
図11には、本発明の第5実施形態に係るラジエータグリル構造の部分的な構成が概略的な縦断面図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされている。但し、この実施形態では、回動羽根108の先端部及び基端部にそれぞれ傾斜部110、112が形成されており、回動羽根108が閉位置に配置された状態(図11に実線で示される状態)では、隣り合う回動羽根108の表面が同一面上に配置されるようになっている。なお、図11において、114はグリル格子部であり、116は支持軸である。また、図11では説明の都合上、グリル格子部114及び回動羽根108の断面のハッチングを省略してある。
この実施形態では、閉状態(図11図示状態)における複数の回動羽根108の一体感を向上させることができるため、ラジエータグリルの見栄えを一層良好なものにすることができる。
【0066】
なお、上記第1〜第5実施形態では、グリル格子部24、26、52、54、56、86、94、114及び回動羽根32、34、36、62、64、66、68、88、96、108が車幅方向又は車体上下方向に沿って配置された構成にしたが、本発明はこれに限らず、グリル格子部及び回動羽根が車幅方向及び車体上下方向に対して斜めに配置された構成にしてもよい。また、グリル格子部や回動羽根の数や形状についても適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 車両
12 アッパーグリル(ラジエータグリル)
14 ロアグリル(ラジエータグリル)
20、22 グリル開口部
24、26、 グリル格子部
32、34、36 回動羽根
38、40、42 支持軸
52、54、56 グリル格子部
62、64、66、68 回動羽根
70、72、74、76 支持軸
80 車両
84 グリル開口部
86 グリル格子部
88 回動羽根
90 支持軸
94 グリル格子部
96 回動羽根
98、100 段部
102 支持軸
104、106 傾斜部
108 回動羽根
114 グリル格子部
116 支持軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に設けられ、エンジンルーム内に空気を導入するためのグリル開口部を有すると共に、長尺状に形成された複数のグリル格子部が前記グリル開口部内に並んで設けられることで格子状に形成されたラジエータグリルと、
前記複数のグリル格子部の各々の車体後方側に設けられ、各基端部が前記各グリル格子部と平行な支持軸を介して車体に支持されると共に、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させて前記グリル開口部を開放する開状態、及び隣接同士で先端部と基端部を重合させて前記グリル開口部を閉鎖する閉状態へ回動可能とされた複数の回動羽根を有し、前記開状態で前記各回動羽根の先端が前記ラジエータグリルによって車体外側から遮蔽されるシャッタ装置と、
を備えた車両のラジエータグリル構造。
【請求項2】
車体前部に設けられ、エンジンルーム内に空気を導入するためのグリル開口部を有すると共に、長尺状に形成された複数のグリル格子部が前記グリル開口部内に並んで設けられることで格子状に形成されたラジエータグリルと、
前記複数のグリル格子部の各々の車体後方側に設けられ、各基端部が前記各グリル格子部と平行な支持軸を介して車体に支持されると共に、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させて前記グリル開口部を開放する開状態、及び隣接同士で先端部と基端部を重合させて前記グリル開口部を閉鎖する閉状態へ回動可能とされた複数の回動羽根を有し、前記開状態及び前記閉状態のうち少なくとも一方で前記各回動羽根の先端が車体前方視による前記ラジエータグリルの投影面内に配置されるシャッタ装置と、
を備えた車両のラジエータグリル構造。
【請求項3】
車体前部に設けられ、エンジンルーム内に空気を導入するためのグリル開口部を有すると共に、長尺状に形成された複数のグリル格子部が前記グリル開口部内に並んで設けられることで格子状に形成されたラジエータグリルと、
前記複数のグリル格子部の各々の車体後方側に設けられ、各基端部が前記各グリル格子部と平行な支持軸を介して車体に支持されると共に、各先端部を各基端部の車体前方側に配置させて前記グリル開口部を開放する開状態、及び隣接同士で先端部と基端部を重合させて前記グリル開口部を閉鎖する閉状態へ回動可能とされた複数の回動羽根を有し、前記開状態で前記各回動羽根の先端部が前記各グリル格子部の後端下部に当接するシャッタ装置と、
を備えた車両のラジエータグリル構造。
【請求項4】
前記各グリル格子部の後端面は、車体後方側に対向する前記回動羽根の先端の回動軌跡に沿った曲面状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両のラジエータグリル構造。
【請求項5】
前記各グリル格子部の後端部及び前記各回動羽根の先端部には、段差部又は傾斜部が設けられると共に、車体前後方向に並ぶ前記グリル格子部と前記回動羽根とが前記開状態で各々の表面を同一面状に配置させることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両のラジエータグリル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−167942(P2010−167942A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13201(P2009−13201)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】