説明

車両のラジエータシュラウド装置

【課題】 スペースが比較的狭い場合であっても、ラジエータユニットを車両に搭載することのできる車両のラジエータシュラウド装置を提供する。
【解決手段】 前方に張り出すサイドシールプレート部材12の下端縁に開放した下端スリット27は、サイドシールプレート部材12の下端縁に開放した開口27aを有し、開口27aは下方に向けて末広がりの形状に作られている。開口27aから垂直方向に延びる入口部分27bと、上方に向けて斜め後方に延びる傾斜部分27cとを有する。更に、下端スリット27は、入口部分27bと傾斜部分27cとの境界の前側縁にストッパ部27dを有する。ファンシュラウド11の側面には、下端スリット27に受けられる下側突起24を有し、また、上側突起23を有する。上側突起23は、サイドシールプレート12のフック26によって係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のラジエータシュラウド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水冷式エンジンを搭載した車両には、エンジン冷却水の熱を排出するためにラジエータが搭載されている。ラジエータには、これに隣接して冷却ファンが配設され、冷却ファンにより強制的にラジエータを通過するエアによってラジエータ内部のエンジン冷却水の熱が外部に排出される。
【0003】
ラジエータの回りには、ラジエータを通過した熱気が再びラジエータを通過するリサーキュレーションを防止するためにラジエータシュラウドが配設される。ラジエータシュラウドは、冷却ファンの外周に設けられるファンシュラウドと、ファンシュラウドの側縁に沿って配設されるサイドシールプレートとを含み、サイドシールプレートによってラジエータの側方からのリサーキュレーションが防止される。特許文献1は、ファンシュラウドとサイドシールプレートとを一体成型した樹脂製のラジエータシュラウドを開示している。
【0004】
ところで、車両の製造工程では、一般的に、ラジエータにラジエータシュラウドを組み付けたラジエータユニットを用意し、エンジンルームにエンジンを搭載した後にラジエータユニットがマウントされる。例えば、車体前部にエンジンルームを備えた自動車にあっては、エンジンルーム前端の車体シュラウドフレームにラジエータユニットが取り付けられる。
【0005】
特許文献2、3は、ファンシュラウドとサイドシールプレートとを別体構造にした樹脂製のラジエータシュラウドを開示している。特許文献2は、従来例としてファンシュラウドに対してサイドシールプレートを水平方向に挿入することによりファンシュラウドにサイドシールプレートを連結する例を開示し、その問題点として、車両に搭載した後にファンシュラウドからサイドシールプレートを取り外すのが困難であることを指摘している。
【0006】
特許文献2は、更に、ファンシュラウドの両側縁の縦溝にサイドシールプレートを挿入することによりファンシュラウドにサイドシールプレートを連結する従来例を開示し、この問題点として、ファンシュラウドにサイドシールプレートを組み付けた状態で車両に搭載するときに、サイドシールプレートの下端が車体側の部材に衝突するとサイドシールプレートが相対的に上方に向けて変位してしまうという問題点を指摘している。
【0007】
この問題を解決するために、特許文献2は、サイドシールプレートをファンシュラウドの側縁に沿って下方移動させることにより係合突起とこれを受け入れる係止部とが係合すると共にサイドシールプレートの上端の爪がファンシュラウドの上端の係止部に嵌合し、これによりサイドシールプレートをファンシュラウドに連結させることを提案し、この提案の構造によれば、ファンシュラウドにサイドシールプレートを取り付けた状態で車両に搭載する際に、サイドシールプレートの下端が車体側の部材に衝突しても上方に変位することを防止できる利点を挙げている。
【0008】
特許文献3は、サイドシールプレートとしてゴム製の長方形のプレートを用意し、このプレートをファンシュラウドの側縁の縦溝に嵌合させることを提案している。
【特許文献1】特開平4−58011号公報(特許第2574932号公報)
【特許文献2】特開平7−332089号公報(特許第3159233号公報)
【特許文献3】特開平11−36866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示の一体成型のラジエータシュラウドは、ラジエータユニットを搭載する際に比較的広いスペースで搭載できる車両には有効であるものの、車両の前端に冷却ファンが接近しているような場合には、ラジエータユニットの側部から張り出したサイドシールプレート部材が邪魔になってラジエータユニットを搭載するときの作業性が悪いという問題がある。
【0010】
このことは、ファンシュラウドとサイドシールプレート部材とを別体にした特許文献2についても同様であり、特許文献2はファンシュラウドにサイドシールプレートを予め組み付けた状態で車両に搭載することを前提にして発明の開示を行っている。
【0011】
特許文献3に開示のゴム製のサイドシールプレートは風圧を受けると撓み変形してしまうことから、特許文献3に開示のようなリアエンジン形式のバス等のような特別な車両に限定して採用可能な発明であり、車両の前端にラジエータを搭載する一般的な車両に採用することは難しい。
【0012】
本発明の目的は、ラジエータユニットを車両に搭載するためのスペースが比較的狭い場合であっても、ラジエータユニットを車両に搭載することのできる車両のラジエータシュラウド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の技術的課題を達成するために、請求項1の発明によれば、
ラジエータのコア面のファン外周部分を覆うファンシュラウドと、前記ラジエータの側方からの熱気のリサーキュレーションを防止するためのサイドシールプレート部材とが別体に作られ、前記ラジエータに前記ファンシュラウドを組み付けたラジエータユニットを車両に搭載した後に、ラジエータ側の部材に対して前記サイドシールプレート部材の組み付けが行われる車両のラジエータシュラウド装置であって、
前記ラジエータ側の部材又は前記サイドシールプレート部材のいずれか一方の部材の下部に設けられた突起であって、上下方向に延びる軸部と、該軸部の自由端に設けられたフランジとを備えた突起と、
前記ラジエータ側の部材又は前記サイドシールプレート部材の他方の部材の下端縁に開放し、上方に且つ傾斜して延びる下端スリットであって、該下端スリットの延び方向の途中にストッパ部を備えた下端スリットと、
前記ラジエータ側の部材又は前記サイドシールプレート部材のいずれか一方の部材の上部に設けられた係合部材と、
前記ラジエータ側の部材又は前記サイドシールプレート部材の他方の部材の上部に設けられ、前記係合部材を係止するフックとを有することを特徴とする車両のラジエータシュラウド装置が提供される。
【0014】
請求項1の発明は、サイドシールプレート部材無しのラジエータユニットを車両に搭載した後にサイドシールプレート部材の組み付けが行われる。サイドシールプレート部材の組付けは、上記突起と下端スリットとを整合させた後にサイドシールプレート部材を押し下げることで、上記突起が下端スリットの深部に進入しながらサイドシールプレート部材が正規位置まで案内され、そして、下端スリットが傾斜しているために、サイドシールプレート部材の上端部が前後に揺動しながら位置決めされる。更に、サイドシールプレート部材を前後に揺動させることで係合部材とフックとが係合し、これによりサイドシールプレート部材をラジエータユニットに連結することができる。
【0015】
したがって、請求項1の発明によれば、第1段階で、サイドシールプレート部材無しのラジエータユニットを車両に搭載することから比較的狭いスペースであってもラジエータユニットを車両に搭載することができる。更に、サイドシールプレート部材無しのラジエータユニットに対してサイドシールプレート部材を組み付ける際に、サイドシールプレート部材が上記下端スリットにより正規位置まで案内されるため設置作業が容易であり、更に、サイドシールプレート部材を前後に揺動させることでサイドシールプレート部材がラジエータユニットに連結されるため、後付けのサイドシールプレート部材の組み付け作業を容易化することができる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の発明を前提として、
前記サイドシールプレート部材が樹脂製であり且つ前記ラジエータユニットから前方に張り出すように前記ファンシュラウドの側面に連結され、
前記ファンシュラウドの側面の下部に前記突起が設けられ、該突起は、前記軸部が鋭角で斜め後方に延びる傾斜した突起であり、
前記サイドシールプレート部材の下部に、前記傾斜した突起の軸部を受け入れる前記下端スリットが設けられ、
該下端スリットが、前記サイドシールプレート部材の下端縁に開放して上方に延びる入口部分と、該入口部分から車体後方に傾斜して延びる傾斜部分とを備えている。
【0017】
この請求項2の発明によれば、前方に張り出したサイドシールプレート部材の上端部が前方に変位しながら正規位置に位置決めされる。そして、下端スリットの入口部分と傾斜部分との間で下端スリットの側縁と突起の軸部とが摺接することにより、サイドシールプレート部材には前方に向かう付勢力が作用することになることから、この付勢力によりサイドシールプレート部材の組み付けを助成することができ、したがってサイドシールプレート部材の組み付け作業が容易になる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項2の発明を前提として、前記ストッパ部が前記入口部分と前記傾斜部分との境界に設けられている。この請求項3の発明によれば、サイドシールプレート部材を組み付けたときに、下端スリットが突起を完全に受け入れたときには、ストッパ部から突起が解放されることから、作業者の手に加わる感触により、下端スリットが突起を完全に受け入れたことを確認することができ、また、サイドシールプレート部材を組み付けた後にはストッパ部により突起が下端スリットから抜け出るのを防止することができる。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明を前提として、前記サイドシールプレート部材の前端縁に車体部材に当接する弾性シール材が設けられている。この請求項4の発明によれば、サイドシールプレート部材を組み付けることで、サイドシールプレート部材の前端と車体部材との間に弾性シール材を介装することができるため、これらの間のシールを確実に行うことができ、これによろ熱気のリサーキュレーションを確実に防止することができる。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明を前提として、前記ラジエータのコア面の後方に冷却ファンを有し、該冷却ファンがエンジンのクランクシャフトにより駆動され、該エンジンはクランクシャフトを車体前後方向に向けた縦置きで車両に搭載されている。縦置きエンジンのクランクシャフトで冷却ファンを駆動する形式の車両では、電動式のファンに比べて、ラジエータユニットを搭載するために作業スペースが極めて小さいのであるが、本発明のラジエータシュラウド装置によれば、このような場合にあっても何らの支障もなくラジエータユニットを車両に搭載することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0022】
図1は、車体前部のエンジンルームの一部を示す説明図である。エンジンルーム1の前端は、車体シュラウド2によって規定され、この車体シュラウド2にラジエータユニット3が組み付けられる。車体シュラウド2はアッパフレーム2aとロアフレーム2bとを含み、ラジエータユニット3の上端とアッパフレーム2aとの間及びラジエータユニット3の下端とロアフレーム2bとの間には、例えばウレタンシール材からなる弾性シール材4が介装されている。ラジエータユニット3のコア面(図面には現れていない)の後方には、ラジエータユニット3に隣接して冷却ファン5が配設され、この冷却ファン5は、縦置きエンジン6のクランクプーリ(図示せず)との間に張り渡されたファンベルト7を介してエンジン6のクランクシャフトによって駆動される。
【0023】
図2は、ラジエータユニット3を車体後方側から見た背面図であり、図3はラジエータユニット3の側面図である。ラジエータユニット3は、ラジエータ10と、ラジエータ10のコア面のファン外周部分を覆う樹脂製のファンシュラウド11と、ファンシュラウド11の両側面から前方に張り出した左右一対の樹脂製のサイドシールプレート部材12R、12Lとを含む。
【0024】
ラジエータユニット3は、ラジエータ10の下側タンク10aから下方に垂下する左右一対のピン13を車体シュラウドのロアフレーム2bに挿入した後に、ラジエータ10の上側タンク10bにラバーを介してボルト止めされた左右一対の取付ブラケット14を介して車体シュラウドのアッパフレーム2aに取り付けられる。
【0025】
図4は、ファンシュラウド11を車体前方側から見た正面図であり、図5はファンシュラウド11の平面図である。ファンシュラウド11は、冷却ファン5の外周を包囲する周囲壁16を有し、上半分の周囲壁16aはファンシュラウド11と一体成型され、下半分の周囲壁16b(図6、図7)は脱着可能に組み付けられる。図6は下半分の周囲壁16bの正面図であり、図7は下半分の周囲壁16bの平面図である。
【0026】
ファンシュラウド11は、冷却ファン5用の開口11aの下側周縁に沿って離間した3つの係止孔17を有し、他方、下半分の周囲壁16bには、上記係止孔17に対応した3つの爪18が形成されている。下半分の周囲壁16bは3つの爪18を、ファンシュラウド11の対応する係止孔17に嵌合させることによりファンシュラウド11に組み付けられる。
【0027】
図4を参照して、ファンシュラウド11は、その下縁の左右両端から下方に垂下するピン20と、上縁から上方に延びる左右一対の取付ブラケット21とを有し、取付ブラケット21にはボルト挿通孔21aが形成されている。ファンシュラウド11のラジエータ10に対する取り付けは、ピン20をラジエータ11の下側タンク10aに設けられたピン受け入れ孔(図示せず)に嵌入し、次いで、取付ブラケット21に挿通したボルト(図示せず)を使ってラジエータ11の上側タンク10bに固定することにより行われる。
【0028】
ファンシュラウド11には、その両側面から横方向外方に向けて突出した上側突起23と下側突起24とを有する。ファンシュラウド11の上端部に設けられた上側突起23は、図8に拡大して示すように、断面T字状の形状を有し、軸部23aと、軸部23aの自由端に形成された上下に延びる上、下フランジ23b、23cとを備えている。この上側突起23は、横方向(図4の紙面に対して鉛直方向)に一定の長さを有している。
【0029】
図9を参照して、ファンシュラウド11の下端部に設けられた下側突起24は、上側突起23と同様に断面T字状の形状を有し、軸部24aと、軸部24aの自由端に形成された前後方向に延びる前フランジ24bと後フランジ24c(図13)とを備えている。なお、図9では、作図上の関係で、後フランジ24cが図面に現れていない。下側突起24は、上下方向(図4の紙面に沿った方向)に一定の長さを有している。
【0030】
図10〜図12はサイドシールプレート部材12に関する図である。図10は、右側のサイドシールプレート部材12Rを示す図である。図11は、サイドシールプレート部材12Rの下端部の部分拡大図(図10の矢印XIで示す部位)である。図12は、図10のXII−XII線に沿った断面図である。
【0031】
サイドシールプレート部材12Rの上端部には、その後端縁に隣接して横方向に延びるフック26が形成されている。また、サイドシールプレート部材12Rの下端には、その後端縁に隣接して上下方向に延びる下端スリット27が形成されている。
【0032】
図11は、下端スリット27を拡大した図である。下端スリット27は、サイドシールプレート部材12Rの下端縁に開放した開口27aを有し、開口27aは下方に向けて末広がりの形状に作られている。開口27aから垂直方向に延びる入口部分27bと、上方に向けて斜め後方に延びる傾斜部分27cとを有する。すなわち、傾斜部分27cは、入口部分27bから鋭角の角度θ後方に傾斜している。下端スリット27は、また、入口部分27bと傾斜部分27cとの境界の前側縁に段部からなるストッパ部27dを有し、ストッパ部27dと傾斜部分27cの上端縁との間の距離L1は、前述した下側突起24の軸部24aの長さL2(図9)と実質的に等しい。
【0033】
図10、図12を参照して、サイドシールプレート部材12Rの上端部に設けられたフック26は、後方に向けて横方向に延びるスリット26aと、スリット26aの前方に位置するリップ26bと、スリット26aとリップ26bとの間に位置する縦長の開口26cとを有し、スリット26aとリップ26bとには段差Gが設けられている。リップ26bの先端つまりスリット26aと対向する部位には爪26dが形成され、また、縦長の開口26cの後端縁つまりスリット26bの入口側の縁にはテーパ面26eが形成されている。
【0034】
以上、図10〜図12を参照して右側のサイドシールプレート部材12Rを説明したが、左側サイドシールプレート部材12Lも実質的に同じ構造を有する。なお、図10の参照符号29は弾性シール材を示し、この弾性シール29は、サイドシールプレート部材12の前端縁に沿って接着されている。
【0035】
ラジエータユニット3を車両に搭載する際には、サイドシールプレート部材12を省いた状態で行われ、サイドシールプレート部材12無しのラジエータユニット3を車両に組み付けた後に、サイドシールプレート部材12が組み付けられる。
【0036】
図13は、サイドシールプレート部材12を下方に移動させて、ファンシュラウド11の下側突起24にサイドシールプレート部材12の下端スリット27を挿入する過程を説明するための図である。
【0037】
ファンシュラウド11の下側突起24の軸部24aは、図13から理解できるように、鋭角で斜め後方に傾斜しているのが好ましい。これにより、ラジエータユニット3(ファンシュラウド11)に対してサイドシールプレート部材12を位置決めして、サイドシールプレート部材12を斜め前方に押し下げることにより下端スリット27の中にファンシュラウド11の下側突起24の軸部24aを挿入させることができる。なお、サイドシールプレート部材12の位置決めは、下端スリット27の開口27aが下方に向けて末広がりの形状を有しているため、開口27aを下側突起24の軸部24aに容易に整合させることができる。
【0038】
下端スリット27には、その深部に傾斜部分27cが形成されているため、この傾斜部分27cまで下側突起24の軸部24aが進入すると、サイドシールプレート部材12は、後述する図14に矢印で示すように、前方に揺動することになるが、傾斜角度が変化する入口部分27bと傾斜部分27cとの間では、下側突起24の軸部24aがスリット27の側縁、特に、傾斜部分27cと入口部分27bとの境界に位置する段部つまりストッパ部27dや入口部分27bと傾斜部分27cとのコーナ部分と摺接して、スリット27の側縁の弾性変形によりサイドシールプレート部材12には、これを前方に向けて付勢する力が作用することになる。そして、サイドシールプレート部材12を更に下方に押し下げて下側突起24の軸部24aが下端スリット27の深部まで進入すると、下側突起24の軸部24aがストッパ部27dから解放されるため、作業員は手に加わる感触で、下側突起24が下端スリット27によって完全に受け入れられたことを確認することができる。サイドシールプレート部材12を組み付けた後には、ストッパ部27dは、サイドシールプレート部材12が上方に変位して軸部24aが下端スリット27から抜け出るのを防止する。
【0039】
ラジエータユニット3(ファンシュラウド11)に対してサイドシールプレート部材12を斜め前方に押し下げる段階では、図14に仮想線で示すように、サイドシールプレート部材12の上端部は後方に変位した状態にあり、図15に示すように、ファンシュラウド11の上側突起23は、サイドシールプレート部材12のフック26のリップ26bの部分に位置している。サイドシールプレート部材12を更に下方に押し下げることにより、前述したようにサイドシールプレート部材12の上端部が自動的に前方に変位し、また、上述した樹脂による付勢力がサイドシールプレート部材12に作用することから、サイドシールプレート部材12の上端部分を若干前方に押し付けることだけで、上側突起23の軸部23aがフック26の横スリット26aの中に進入して、上側突起23がフック26により係止される。図14の実線は、サイドシールプレート部材12をラジエータユニット3(ファンシュラウド11)に対して組み付けた後の状態を示している。サイドシールプレート部材12のフック26は、リップ26bの先端に爪26dを備えているため、サイドシールプレート部材12の上端部が後方に変位して上側突起23が相対的に前方移動しようとしても、上側突起23が爪26dによって係止されるため、上側突起23がフック26から脱出してしまうのを防止することができる。
【0040】
ラジエータユニット3は、サイドシールプレート部材12無しの状態で車両に搭載される。したがって、車体シュラウド2と冷却ファン5との間のスペースが僅かであったとしても、サイドシールプレート部材12無しのラジエータユニット3を挿入して、これを車両に組み付けることができる。ラジエータユニット3を車両に組み付けた後に、ラジエータユニット3の両側のスペースにサイドシールプレート部材12を挿入して、上述の要領でサイドシールプレート部材12をラジエータユニット3に連結することができる。この作業の際、サイドシールプレート部材12を下方且つ斜め前方に押し下げることになることから、比較的スペースに余裕のあるラジエータユニット3の後方のスペースを利用してサイドシールプレート部材12の組み付け作業を行うことができる。
【0041】
また、サイドシールプレート部材12を押し下げるだけで、サイドシールプレート部材12は前方に向けて揺動して正規の状態に位置決めされることから、作業員の注意は、専らサイドシールプレート部材12の下端スリット27をファンシュラウド11の下側突起24の軸部24aに整合させることに集中させることでき、その後は、サイドシールプレート部材12を押し下げた後に前方に押すだけで自動的にサイドシールプレート部材12の位置決めが行われる。そして、サイドシールプレート部材12を組み付けた後は、下端スリーブ27のストッパ部27d及びフック26のリップ先端の爪26dによってサイドシールプレート部材12が変位するのを防止することができる。なお、サイドシールプレート部材12を組み付けた後は、サイドシールプレート部材12の前端縁に沿って接着された弾性シール材29が車体部材と当接してサイドシールプレート部材12の前端縁と車体部材との間が遮蔽される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】車体前部のエンジンに搭載した縦置きエンジンのクランクシャフトにより駆動される冷却ファンと、これに隣接して配置されるラジエータユニットとを説明するための図である。
【図2】サイドシールプレート部材を組み付けたラジエータユニットの背面図である。
【図3】図2のラジエータユニットの側面図である。
【図4】ファンシュラウドの背面図である。
【図5】ファンシュラウドの平面図である。
【図6】ファンシュラウドのファン開口の下半分の周囲壁の正面図である。
【図7】図6の下半分の周囲壁の平面図である。
【図8】ファンシュラウドの側面の上部に設けられた上側突起を説明するための図である。
【図9】ファンシュラウドの側面の下部に設けられた下側突起を説明するための図である。
【図10】下端スリット及び上部のクリップを備えたサイドシールプレート部材を車幅方向から見た図である。
【図11】図10の矢印XIに示す部分の拡大図である。
【図12】図10のXII−XII線に沿った断面図である。
【図13】下端スリットと、これに受け入れる下側突起の形状及び作用を説明するための図である。
【図14】サイドシールプレート部材の上部に設けられたクリップを説明するための図である。
【図15】サイドシールプレート部材のクリップに上側突起が係止される直前の状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0043】
1 エンジンルーム
3 ラジエータユニット
5 冷却ファン
6 縦置きエンジン
10 ラジエータ
11 ファンシュラウド
12 サイドシールプレート部材
23 ファンシュラウドの側面の上側突起
23a 上側突起の軸部
23b 上側突起の上フランジ
23c 上側突起の下フランジ
24 ファンシュラウドの側面の下側突起
24a 下側突起の軸部
24b 下側突起の前フランジ
24c 下側突起の後フランジ
26 フック
27 下端スリット
27a 下端スリットの開口
27b 下端スリットの入口部分
27c 下端スリットの傾斜部分
27d 下端スリットのストッパ部
29 サイドシールプレート部材の弾性シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータのコア面のファン外周部分を覆うファンシュラウドと、前記ラジエータの側方からの熱気のリサーキュレーションを防止するためのサイドシールプレート部材とが別体に作られ、前記ラジエータに前記ファンシュラウドを組み付けたラジエータユニットを車両に搭載した後に、ラジエータ側の部材に対して前記サイドシールプレート部材の組み付けが行われる車両のラジエータシュラウド装置であって、
前記ラジエータ側の部材又は前記サイドシールプレート部材のいずれか一方の部材の下部に設けられた突起であって、上下方向に延びる軸部と、該軸部の自由端に設けられたフランジとを備えた突起と、
前記ラジエータ側の部材又は前記サイドシールプレート部材の他方の部材の下端縁に開放し、上方に且つ傾斜して延びる下端スリットであって、該下端スリットの延び方向の途中にストッパ部を備えた下端スリットと、
前記ラジエータ側の部材又は前記サイドシールプレート部材のいずれか一方の部材の上部に設けられた係合部材と、
前記ラジエータ側の部材又は前記サイドシールプレート部材の他方の部材の上部に設けられ、前記係合部材を係止するフックとを有することを特徴とする車両のラジエータシュラウド装置。
【請求項2】
前記サイドシールプレート部材が樹脂製であり且つ前記ラジエータユニットから前方に張り出すように前記ファンシュラウドの側面に連結され、
前記ファンシュラウドの側面の下部に前記突起が設けられ、該突起は、前記軸部が鋭角で斜め後方に延びる傾斜した突起であり、
前記サイドシールプレート部材の下部に、前記傾斜した突起の軸部を受け入れる前記下端スリットが設けられ、
該下端スリットが、前記サイドシールプレート部材の下端縁に開放して上方に延びる入口部分と、該入口部分から車体後方に傾斜して延びる傾斜部分とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両のラジエータシュラウド装置。
【請求項3】
前記ストッパ部が前記入口部分と前記傾斜部分との境界に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両のラジエータシュラウド装置。
【請求項4】
前記サイドシールプレート部材の前端縁に車体部材に当接する弾性シール材が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両のラジエータシュラウド装置。
【請求項5】
前記ラジエータのコア面の後方に冷却ファンを有し、該冷却ファンがエンジンのクランクシャフトにより駆動され、該エンジンはクランクシャフトを車体前後方向に向けた縦置きで車両に搭載されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両のラジエータシュラウド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−97545(P2006−97545A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284096(P2004−284096)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】