説明

車両の制御装置

【課題】エンジンの自動停止機能を長期間に亘って保持する。
【解決手段】車両の制御装置(ECU7)は、スタータモータ5の累積作動回数Nをカウントするカウント部71と、累積作動回数Nが予め設定された閾値回数N1(例えば、10万回)に到達したか否かを判定する回数判定部72と、累積作動回数Nが閾値回数N1に到達したと判定された場合に、「エンジン停止条件」を、初期の条件である第1停止条件から、エンジン1がより停止し難い条件である第2停止条件に変更する停止条件変更部74と、を備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン停止条件が成立したときに、エンジンを停止すると共に、エンジン再起動条件が成立したときに、エンジンを再起動する車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃費性能を向上するために、予め設定されたエンジン停止条件が満たされる場合に、エンジンを停止させ(以下、エンジンのこのような「停止」を「自動停止」という。)、エンジンが停止された後、予め設定された再起動条件が満たされる場合に、エンジンの再起動を行う車両が知られている。
【0003】
このような車両では、バッテリ等の蓄電装置に蓄積された電力で作動するスタータモータによってエンジンの始動が行われるため、エンジンの停止及び再起動が繰り返されると、蓄電装置、スタータモータ等にかかる負担が増大する。そして、再起動回数が増大する程、蓄電装置、スタータモータ等の劣化が進行して故障が誘発され、再起動時にエンジンを確実に始動することが難しくなってくる。
【0004】
この課題を解消するために、スタータモータの使用頻度に応じて自動停止を禁止する内燃機関の自動停止・始動装置が開示されている(特許文献1参照)。この内燃機関の自動停止・始動装置によれば、スタータモータの使用頻度に応じてエンジンの自動停止制御が禁止されるため、スタータモータの使用頻度が多い場合であっても、エンジンが始動不能状態に陥ることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3596324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の内燃機関の自動停止・始動装置では、エンジンの自動停止制御の禁止条件が成立すると、エンジンの自動停止が一切禁止されるため、運転者からは、エンジンの自動停止機能を保持したいとの要望があった。
【0007】
すなわち、運転者としては、エンジンの自動停止が一切禁止されるよりは、例え、初期状態と比較してエンジンが自動停止される頻度が低下することになったとしても、エンジンの自動停止機能を保持したいのである。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、エンジンの自動停止機能を長期間に亘って保持することの可能な車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両の制御装置は、以下のように構成されている。
【0010】
すなわち、本発明に係る車両の制御装置は、エンジン停止条件が成立したときに、エンジンを停止すると共に、エンジン再起動条件が成立したときに、エンジンを再起動する車両の制御装置であって、スタータモータの累積作動回数をカウントするカウント手段と、前記累積作動回数が予め設定された閾値回数に到達したか否かを判定する回数判定手段と、前記累積作動回数が前記閾値回数に到達したと判定された場合に、前記エンジン停止条件を、エンジンがより停止し難い条件に変更する停止条件変更手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
かかる構成を備える車両の制御装置によれば、スタータモータの累積作動回数がカウントされ、カウントされた前記累積作動回数が予め設定された閾値回数に到達したか否かが判定される。そして、前記累積作動回数が前記閾値回数に到達したと判定された場合に、前記エンジン停止条件が、エンジンがより停止し難い条件に変更されるため、エンジンの自動停止機能を長期間に亘って保持することができる。
【0012】
すなわち、例えば、スタータモータの累積作動回数が第1閾値回数(例えば、10万回)到達した場合に、初期のエンジン停止条件である第1条件から、エンジンがより停止し難いエンジン停止条件である第2条件に変更し、スタータモータの累積作動回数が第1閾値回数より大きい第2閾値回数(例えば、30万回)に到達した場合に、前記第2条件から、エンジンの自動停止を禁止するエンジン停止条件である第3条件に変更する場合には、スタータモータの累積作動回数が第2閾値回数に到達するまでは、エンジンの自動停止機能を保持することができるのである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両の制御装置によれば、スタータモータの累積作動回数がカウントされ、カウントされた前記累積作動回数が予め設定された閾値回数に到達したか否かが判定される。そして、前記累積作動回数が前記閾値回数に到達したと判定された場合に、前記エンジン停止条件が、エンジンがより停止し難い条件に変更されるため、エンジンの自動停止機能を長期間に亘って保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る車両の制御装置が搭載される車両のパワートレーンの一例を示す構成図である。
【図2】図1に示す車両に搭載されるエンジンの一例を示す構成図である。
【図3】図1に示す車両の変速制御に用いる変速マップの一例を示す図である。
【図4】図1に示す車両に搭載される車両の制御装置の一例を示す機能構成図である。
【図5】図4示す停止条件記憶部に記憶された停止条件の一例を示す図表である。
【図6】図4に示す停止条件変更部の動作の一例を示すグラフである。
【図7】図4に示す車両の制御装置の動作の一例を示す全体フローチャートである。
【図8】図7に示すフローチャートのステップS109で実行される停止条件変更処理の動作の一例を示す詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る車両の制御装置が搭載される車両のパワートレーンの一例を示す構成図である。本実施形態に係る車両は、エンジンで駆動されるオートマチックトランスミッション(自動変速)の車両であって、エンジン1、自動変速機2、シフト装置3、アクセルペダル4、スタータモータ5、バッテリ6、及び、ECU7を備えている。
【0017】
−エンジン1−
まず、図2を参照して、本実施形態に係るエンジン1について説明する。図2は、図1に示す車両に搭載されるエンジン1の一例を示す構成図である。エンジン1は、例えば、多気筒ガソリンエンジンであって、燃焼室1aを形成するピストン1b、及び、出力軸であるクランクシャフト15を備えている。ピストン1bは、コネクティングロッド16を介して、クランクシャフト15に連結されている。また、ピストン1bの往復運動は、コネクティングロッド16によって、クランクシャフト15の回転運動へと変換される。
【0018】
クランクシャフト15には、シグナルロータ17が配設されている。シグナルロータ17の外周面には、複数の突起17aが等間隔で形成されている。シグナルロータ17の側方近傍には、エンジン回転数センサ124が配置されている。エンジン回転数センサ124は、例えば電磁ピックアップであって、クランクシャフト15が回転する際に、エンジン回転数センサ124に対向する位置を通過する突起17aの個数分のパルス状信号(出力パルス)を発生する。
【0019】
エンジン1の燃焼室1aには、点火プラグ103が配設されている。点火プラグ103の点火タイミングは、イグナイタ104によって調整される。イグナイタ104は、ECU200によって制御される。エンジン1のシリンダブロック1cには、エンジン水温(冷却水の水温)を検出する水温センサ121が配設されている。
【0020】
エンジン1の燃焼室1aには、吸気通路11と排気通路12とが接続されている。吸気通路11と燃焼室1aとの間には、吸気バルブ13が設けられている。吸気バルブ13を開閉駆動することによって、吸気通路11と燃焼室1aとが連通又は遮断される。また、排気通路12と燃焼室1aとの間には、排気バルブ14が設けられている。排気バルブ14を開閉駆動することによって、排気通路12と燃焼室1aとが連通又は遮断される。
【0021】
エンジン1の吸気通路11には、エアクリーナ107、エアフローメータ122、吸気温センサ123、及び、スロットルバルブ105等が配設されている。ここで、スロットルバルブ105は、エンジン1の吸入空気量を調整する。また、エンジン1の排気通路12には、O2センサ127、三元触媒108等が配設されている。ここで、O2センサ127は、排気ガス中の酸素濃度を検出する。
【0022】
エンジン1の吸気通路11に配設されたスロットルバルブ105は、スロットルモータ106によって駆動される。スロットルバルブ105の開度は、スロットル開度センサ125によって検出される。なお、スロットルバルブ105の開度(スロットル開度)は、スロットル開度センサ125によって検出される。
【0023】
また、吸気通路11には、インジェクタ(燃料噴射弁)102が配設されている。インジェクタ102には、燃料ポンプによって燃料タンクから燃料(ここでは、ガソリン)が供給され、インジェクタ102によって吸気通路11に燃料が噴射される。噴射された燃料は、吸入空気と混合されて混合気となって、エンジン1の燃焼室1aに導入される。燃焼室1aに導入された混合気(燃料+空気)は、点火プラグ103によって点火されて燃焼、爆発する。混合気が燃焼室1a内で燃焼、爆発することによって、ピストン1bが図の上下方向に往復運動して、クランクシャフト15が回転駆動される。
【0024】
また、図1に示すように、エンジン1にはスタータモータ5が接続され、スタータモータ5にはバッテリ6が接続されている。スタータモータ5は、ECU7からの指示信号に基づいて、バッテリ6から電力が供給されて、エンジン1を起動させるモータである。バッテリ6は、スタータモータ5に電力を供給するバッテリであって、例えば、リチウムイオンバッテリである。また、バッテリ6には、バッテリ温度を検出するバッテリ温度センサ601が配設されている。
【0025】
更に、図1に示すように、車両の運転席の下側前方にはアクセルペダル4が配設され、アクセルペダル4には、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ401が配設されている。
【0026】
−自動変速機2−
次に、図1を参照して、自動変速機2の構成について説明する。自動変速機2は、エンジン1から入力軸24に入力される回転動力を変速し、出力軸25を介して駆動輪に出力するものであって、トルクコンバータ(流体継手:流体式トルク伝達装置)21、変速機構部22、及び、油圧制御装置23を備えている。
【0027】
トルクコンバータ21は、エンジン1のクランクシャフト15及び入力軸24に回転連結されるもので、図略のロックアップクラッチを含んで構成され、必要に応じて、クランクシャフト15と入力軸24とを、継合状態、解放状態、及び、継合状態と解放状態との中間の半継合状態(スリップ状態)の間で切り換える。また、エンジン1のクランクシャフト15の駆動力は、トルクコンバータ21を介して、入力軸24へ伝達される。
【0028】
変速機構部22は、例えば、図略のクラッチ及びブレーキを個別に継合、解放させることにより前進6段、後進1段の変速が可能に構成されている。また、エンジン1から入力軸24へ伝達された駆動力は、変速機構部22を介して、出力軸25へ伝達される。更に、エンジン1からの駆動力は、出力軸25から、図略の差動歯車装置、及び、図略の車軸を介して、図略の駆動輪へ伝達される。
【0029】
油圧制御装置23は、変速機構部22における図略のクラッチ及びブレーキを個別に継合、解放させることにより適宜の変速段(前進1〜6速段、後進段)を成立させるものである。
【0030】
なお、トルクコンバータ21、変速機構部22、及び、油圧制御装置23の基本構成は公知であるので、ここでは詳細な図示及び説明を省略する。また、変速機構部22の入力軸24及び出力軸25の回転数をそれぞれ検出するセンサである入力軸回転数センサ241及び出力軸回転数センサ251が配設されている。
【0031】
−シフト装置3−
次に、図1を参照して、シフト装置3の構成について説明する。本実施形態に係る車両の運転席の近傍にはシフト装置3が配置されている。このシフト装置3にはシフトレバー31が変位操作可能に設けられている。また、このシフト装置3には、パーキング(P)位置、リバース(R)位置、ニュートラル(N)位置、及び、ドライブ(D)位置、を有するシフトゲートが形成されており、ドライバが所望の変速位置へシフトレバー31を変位させることが可能となっている。これらパーキング(P)位置、リバース(R)位置、ニュートラル(N)位置、及び、ドライブ(D)位置の各変速位置は、シフトポジションセンサ301によって検出される。
【0032】
シフトレバー31が「ドライブ(D)位置」に操作されている状態では、自動変速機2は「自動変速モード(オートマチックモード)」とされ、図3を参照して後述する変速マップに従って変速段が選定されて自動変速動作が行われる。
【0033】
−変速マップ−
「自動変速モード」における自動変速機2の変速制御は、例えば、図3に示すような変速マップ(変速条件)に従って行われる。この変速マップは、車速V及びアクセル開度θTHをパラメータとし、車速V及びアクセル開度θTHに応じて、適正な変速段を求めるための複数の領域が設定されたマップである。変速マップの各領域は複数の変速線(変速段の切り換えライン)によって区画されている。なお、図3に示す変速マップにおいて、アップシフト線(変速線)を実線で示し、ダウンシフト線(変速線)を破線で示している。また、アップシフト及びダウンシフトの各切り換え方向を図中に数字と矢印とを用いて示している。
【0034】
−自動変速機2の変速制御動作−
次に、上述の如く構成された自動変速機2の変速制御動作について説明する。ここでは、シフトレバー31が「ドライブ(D)位置」に操作されている「自動変速モード」について説明する。
【0035】
出力軸回転数センサ251の出力信号から車速Vが算出されるとともに、アクセル開度センサ401の出力信号からアクセル開度θTHが算出され、車速V及びアクセル開度θTHに基づいて図3の変速マップを参照して目標変速段が求められる。更に、入力軸回転数センサ241及び出力軸回転数センサ251の出力信号から得られる回転数の比(出力回転数/入力回転数)が求められて現在の変速段が判定され、現在の変速段と目標変速段とが比較されて、変速操作が必要であるか否かが判定される。
【0036】
その判定結果により、変速の必要がない場合(現在変速段と目標変速段とが同じで、変速段が適切に設定されている場合)には、現在変速段を維持するソレノイド制御信号(油圧指令信号)が自動変速機2の油圧制御装置23に出力される。
【0037】
一方、現在変速段と目標変速段とが異なる場合には変速制御が行われる。例えば、自動変速機2の変速段が「4速」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、例えば図3に示す点Aから点Bに変化した場合、アップシフト変速線[4→5]を跨ぐ変化となった場合には、変速マップから算出される目標変速段が「5速」となり、その5速の変速段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)が自動変速機2の油圧制御装置23に出力されて、変速機構部22は、4速の変速段から5速の変速段への変速(4→5アップ変速)を行う。
【0038】
また、例えば、自動変速機2の変速段が「6速」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、例えば図3に示す点Cから点Dに変化した場合、ダウンシフト変速線[6→5]を跨ぐ変化となるので、変速マップから算出される目標変速段が「5速」となり、その5速の変速段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)が自動変速機2の油圧制御装置23に出力されて、変速機構部22は、6速の変速段から5速の変速段への変速(6→5ダウン変速)を行う。
【0039】
−ECU7−
次に、図4を参照してECU7の構成について説明する。図4は、図1に示す車両に搭載される車両の制御装置の一例を示す機能構成図である。ECU(Electronic Control Unit)7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バックアップRAM等を備えている。
【0040】
ROMは、種々の制御プログラム等を記憶する。CPUは、ROMに記憶された種々の制御プログラムを読み出して各種処理を実行する。RAMは、CPUでの演算結果等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは、エンジン1の停止時に保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0041】
また、ECU7には、水温センサ121、エアフローメータ122、吸気温センサ123、エンジン回転数センサ124、スロットル開度センサ125、O2センサ127、車両に作用する加速度を検出する加速度センサ128、車速を検出するセンサである車速センサ129、シフトポジションセンサ301、アクセルペダル4の踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ401、及び、バッテリ温度センサ601等が通信可能に接続されている。
【0042】
更に、ECU7には、制御対象として、インジェクタ102、点火プラグ103のイグナイタ104、スタータモータ5等が通信可能に接続されている。そして、ECU7は、上記各種センサの出力に基づいて、インジェクタ102の燃料噴射制御、点火プラグ103の点火時期制御、スタータモータ5の駆動制御等を含むエンジン1の各種制御を実行する。
【0043】
−車両の制御装置の構成−
次に、図4を参照して本発明に係る車両の制御装置の構成について説明する。ECU7は、ROMに記憶された制御プログラムを読み出して実行することによって、カウント部71、回数判定部72、停止条件記憶部73、停止条件変更部74、停止条件判定部75、停止実行部76、再起動条件判定部77、及び、再起動実行部78として機能する。ここで、カウント部71、回数判定部72、停止条件記憶部73、及び、停止条件変更部74は、本発明に係る車両の制御装置の一部に相当する。
【0044】
カウント部71は、スタータモータ5の累積作動回数Nをカウントする機能部である。カウント部71は、特許請求の範囲の「カウント手段」に相当する。ここで、イグニッションが「ON」されたとき、及び、エンジン1を停止する条件である「エンジン停止条件」が成立してエンジン1が停止された後に、エンジン1を再起動する条件である「エンジン再起動条件」が成立してエンジン1が再起動されたときに、スタータモータ5が作動されてエンジン1が起動されるが、カウント部71は、このようにスタータモータ5が作動される回数を積算して累積作動回数Nをカウントする。なお、累積作動回数Nは、車両が生産されて出荷される際に「0回」に初期化されているものとする。また、図7に示すフローチャートでは、イグニッションが「ON」されたときに累積作動回数Nをカウントする動作についての記載を、便宜上、省略している。
【0045】
回数判定部72は、カウント部71によってカウントされたスタータモータ5の累積作動回数Nが、予め設定された閾値回数N1(例えば、10万回)及び予め設定された閾値回数N2(例えば、30万回)に到達したか否かを判定する機能部である。回数判定部72は、特許請求の範囲の「回数判定手段」に相当する。
【0046】
停止条件記憶部73は、エンジン1を停止する条件である「エンジン停止条件」を記憶する機能部である。ここで、停止条件変更部74は、特許請求の範囲の「停止条件変更手段」の一部に相当する。また、停止条件記憶部73に記憶される「エンジン停止条件」(ここでは、便宜上、「第2停止条件」という場合もある。)は、初期の「エンジン停止条件」(ここでは、便宜上、「第1停止条件」という場合もある。)と比較して、エンジン1がより停止し難い条件である。更に、停止条件記憶部73に記憶された「エンジン停止条件」は、停止条件変更部74によって読み出される。
【0047】
ここで、図5を参照して、「第1停止条件」及び「第2停止条件」について説明する。図5は、図4示す停止条件記憶部73に記憶された停止条件(第2停止条件)の一例を示す図表である。図5の左端欄は、「エンジン停止条件」を構成する各条件を示す項目であって、中央欄及び右端欄は、それぞれ、「エンジン停止条件」を構成する各条件を示す項目に関する「第1停止条件」及び「第2停止条件」の具体的な条件である。
【0048】
例えば、図5の上から2行目に記載されているように、シフト操作後の経過時間の条件は、「第1停止条件」及び「第2停止条件」において、それぞれ、「2秒以上」、「5秒以上」と設定されている。
【0049】
すなわち、初期の「エンジン停止条件」(第1停止条件)では、シフト操作から2秒以上経過すれば、「第1停止条件」の他の全ての項目を満たせば、エンジン1が停止されるのに対して、「第2停止条件」では、「第1停止条件」の他の全ての項目が満たされていても、シフト操作から5秒以上経過しなければエンジン1が停止されないことになる。このように、「第1停止条件」から「第2停止条件」に変更することによって、エンジン1が停止され難くなる。
【0050】
また、例えば、図5の上から4行目に記載されているように、加速度センサ128の検出値に基づいて求められた路面(ここでは、登坂)の傾きの条件は、「第1停止条件」及び「第2停止条件」において、それぞれ、「10°以下」、「5°以下」と設定されている。
【0051】
すなわち、初期の「エンジン停止条件」(第1停止条件)では、路面の傾きが10°以下であれば、「第1停止条件」の他の全ての項目を満たせば、エンジン1が停止されるのに対して、「第2停止条件」では、「第2停止条件」の他の全ての項目が満たされていても、路面の傾きが5°以下でなければエンジン1が停止されないことになる。このように、「第1停止条件」から「第2停止条件」に変更することによって、エンジン1が停止され難くなる。
【0052】
再び、図4に戻って、ECU7の機能構成について説明する。停止条件変更部74は、カウント部71によってカウントされたスタータモータ5の累積作動回数Nが、予め設定された閾値回数N1(例えば、10万回)に到達したと、回数判定部72によって判定された場合に、「エンジン停止条件」を、エンジンがより停止し難い条件に変更する機能部である。停止条件変更部74は、特許請求の範囲の「停止条件変更手段」の一部に相当する。
【0053】
具体的には、停止条件変更部74は、累積作動回数Nが閾値回数N1(例えば、10万回)に到達したと判定された場合に、停止条件記憶部73に記憶された停止条件(第2停止条件)を読み出して、「エンジン停止条件」を第1停止条件から第2停止条件へ変更する。
【0054】
ここで、図6を参照して、停止条件変更部74によって「エンジン停止条件」がどのように変更されるかについて説明する。図6は、図4に示す停止条件変更部74の動作の一例を示すグラフである。グラフの横軸は、スタータモータ5の累積作動回数Nであり、縦軸は、「エンジン停止条件」の成立のし易さである。縦軸は、具体的な指標ではなく、概念的な指標であるが、例えば、標準的な走行条件において、所定距離(例えば、1000km)走行する場合に、エンジン1が自動停止される回数である。
【0055】
図6に示すように、スタータモータ5の累積作動回数Nが閾値回数N1(例えば、10万回)に到達すると、停止条件変更部74によって、「エンジン停止条件」が第1停止条件から第2停止条件へ変更されて、「エンジン停止条件」が成立し難くなる。
【0056】
更に、スタータモータ5の累積作動回数Nが閾値回数N2(例えば、30万回)に到達すると、停止条件変更部74によって「エンジン停止条件」が成立しないように変更される。具体的には、例えば、累積作動回数Nが閾値回数N2に到達すると、停止条件変更部74が停止実行部76によるエンジン1の停止動作の実行を禁止する。
【0057】
再び、図4に戻って、ECU7の機能構成について説明する。停止条件判定部75は、「エンジン停止条件」が成立するか否かを判定する機能部である。ここで、「エンジン停止条件」は、停止条件変更部74によって第2停止条件へ変更されるまでは、第1停止条件であって、停止条件変更部74によって第2停止条件へ変更された後は、第2停止条件である。
【0058】
停止実行部76は、停止条件判定部75によって「エンジン停止条件」が成立すると判定された場合に、インジェクタ102の燃料噴射の停止、及び、点火プラグ103の点火の停止、のうち少なくとも一方を実行することによって、エンジン1を停止する機能部である。なお、インジェクタ102の燃料噴射の停止、及び、点火プラグ103の点火の停止、を実行することによって、エンジン1を停止することが好ましい。この場合には、エンジン1を確実に停止することができる。
【0059】
再起動条件判定部77は、エンジン1を再起動する条件である「再起動条件」が成立するか否かを判定する機能部である。「再起動条件」は、例えば、シフトポジションセンサ301によって自動変速機2の変速位置が「ドライブ(D)位置」であることが検出され、且つ、アクセル開度センサ401によってアクセル開度が所定開度(例えば、10%)以上であることが検出されたとの条件である。
【0060】
再起動実行部78は、再起動条件判定部77によって、「再起動条件」が成立すると判定された場合に、スタータモータ5、インジェクタ102、及び、点火プラグ103等に対して、エンジン1の起動動作を行わせる機能部である。
【0061】
−車両の制御装置(ECU7)の動作−
次に、図7、図8を参照して、本発明に係る車両の制御装置の動作を説明する。図7は、図4に示す車両の制御装置(ECU7)の動作の一例を示す全体フローチャートである。ここでは、回数判定部72が、スタータモータ5の累積作動回数Nが閾値回数N2(例えば、30万回)以上であるか否かの判定を行い、累積作動回数Nが閾値回数N2以上であるときに、停止条件変更部74が、図7に示す処理を終了する場合について説明する。
【0062】
図7に示すように、まず、停止条件判定部75によって、「エンジン停止条件」が成立するか否かの判定が行われる(ステップS101)。ステップS101でNOの場合には、処理が待機状態とされる。ステップS101でYESの場合には、処理がステップS103へ進められる。
【0063】
そして、停止実行部76によって、エンジン1が停止される(ステップS103)。次に、再起動条件判定部77によって、「エンジン再起動条件」が成立するか否かの判定が行われる(ステップS105)。ステップS105でNOの場合には、処理が待機状態とされる。ステップS105でYESの場合には、処理がステップS107へ進められる。
【0064】
次いで、再起動実行部78によって、エンジン1が再起動される(ステップS107)。そして、停止条件変更部74等によって、「エンジン停止条件」を変更する処理である「停止条件変更処理」が実行される(ステップS109)。次に、回数判定部72によって、スタータモータ5の累積作動回数Nが、閾値回数N2(例えば、30万回)以上であるか否かの判定が行われる(ステップS111)。ステップS111でYESの場合には、停止条件変更部74によって、処理が終了される。ステップS111でNOの場合には、処理がステップS101へ戻され、ステップS101以降の処理が繰り返し実行される。
【0065】
次に、図8を参照して、図7に示すフローチャートのステップS109で実行される「停止条件変更処理」における図4に示す車両の制御装置(ECU7)の動作の詳細についてついて説明する。図8は、図7に示すフローチャートのステップS109で実行される停止条件変更処理の動作の一例を示す詳細フローチャートである。
【0066】
図8に示すように、まず、カウント部71によって、スタータモータ5の累積作動回数Nが、「1」だけインクリメントされる(ステップS201)。そして、回数判定部72によって、スタータモータ5の累積作動回数Nが、閾値回数N1(例えば、10万回)以上であるか否かの判定が行われる(ステップS203)。ステップS203でNOの場合には、処理が図7に示すフローチャートのステップS101へ戻され、ステップS101以降の処理が繰り返し実行される。ステップS203でYESの場合には、処理がステップS205へ進められる。
【0067】
次に、停止条件変更部74によって、停止条件記憶部73に記憶された停止条件(第2停止条件)が読み出されて、「エンジン停止条件」が第1停止条件から第2停止条件へ変更される(ステップS205)。そして、処理が図7に示すフローチャートのステップS101へ戻され、ステップS101以降の処理が繰り返し実行される。
【0068】
このようにして、スタータモータ5の累積作動回Nがカウントされ、カウントされた累積作動回数Nが予め設定された閾値回数N1に到達したか否かが判定される。そして、累積作動回数Nが閾値回数N1に到達したと判定された場合に、「エンジン停止条件」が、エンジン1がより停止し難い条件に変更されるため、エンジン1の自動停止機能を長期間に亘って保持することができる。
【0069】
すなわち、例えば、スタータモータ5の累積作動回数Nが第1閾値回数N1(例えば、10万回)到達した場合に、初期の「エンジン停止条件」である第1条件から、エンジン1がより停止し難い「エンジン停止条件」である第2条件に変更し、スタータモータ5の累積作動回数Nが第1閾値回数N1より大きい第2閾値回数N2(例えば、30万回)に到達した場合に、エンジン1の自動停止が禁止されるため、スタータモータ5の累積作動回数Nが第2閾値回数N2に到達するまでは、エンジン1の自動停止機能を保持することができるのである。
【0070】
−他の実施形態−
本実施形態では、車両の制御装置が、ECU7におけるカウント部71、回数判定部72、停止条件記憶部73、及び、停止条件変更部74として機能的に構成されている場合について説明したが、カウント部71、回数判定部72、停止条件記憶部73、及び、停止条件変更部74のうち、少なくとも1つが、電子回路等のハードウェアで構成されている形態でもよい。
【0071】
本実施形態では、累積作動回数Nが、車両が生産されて出荷される際に「0回」に初期化されている場合について説明したが、スタータモータ5及びバッテリ6を新品に交換した場合には、累積作動回数Nが「0回」に初期化されることが好ましい。
【0072】
この場合には、スタータモータ5及びバッテリ6を新品に交換したときにも、適正なタイミングで「エンジン停止条件」を第1条件から第2条件に変更することができ、更に、適正なタイミングでエンジン1の自動停止を禁止することができる。
【0073】
本実施形態では、閾値回数N1及び閾値回数N2が予め設定されている場合について説明したが、スタータモータ5又はバッテリ6を新品に交換した場合(又は、オーバーホールした場合)には、作業者が閾値回数N1及び閾値回数N2の少なくとも一方を設定可能に構成されていることが好ましい。
【0074】
この場合には、スタータモータ5又はバッテリ6を新品に交換したとき(又は、オーバーホールしたとき)にも、適正なタイミングで「エンジン停止条件」を第1条件から第2条件に変更することができ、更に、適正なタイミングでエンジン1の自動停止を禁止することができる。
【0075】
本実施形態では、エンジン1が停止され難くなるように「エンジン停止条件」が1回だけ変更される場合について説明したが、エンジン1が停止され難くなるように「エンジン停止条件」が複数回変更される形態でもよい。「エンジン停止条件」が変更される回数が多い程、エンジン1が徐々に停止され難くなるため、運転者にとって違和感が少なくなる。この場合には、スタータモータ5及びバッテリ6を交換するべきタイミングが判り難いため、スタータモータ5及びバッテリ6を交換するべきタイミングを運転者に報知することが好ましい。
【0076】
本実施形態では、本発明に係る車両の制御装置が搭載される車両が、自動変速の車両である場合について説明したが、本発明に係る車両の制御装置が搭載される車両が、手動変速の車両である形態でもよいし、エンジンとモータとで駆動する、いわゆる「ハイブリッド」の車両である形態でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、エンジン停止条件が成立したときに、エンジンを停止すると共に、エンジン再起動条件が成立したときに、エンジンを再起動する車両の制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 エンジン
102 インジェクタ
103 点火プラグ
104 イグナイタ
121 水温センサ
122 エアフローメータ
123 吸気温センサ
124 エンジン回転数センサ
125 スロットル開度センサ
127 O2センサ
128 加速度センサ
129 車速センサ
2 自動変速機(オートマチックトランスミッション)
21 トルクコンバータ
22 変速機構部
23 油圧制御装置
24 入力軸
241 入力軸回転数センサ
25 出力軸
251 出力軸回転数センサ
3 シフト装置
31 シフトレバー
301 シフトポジションセンサ
4 アクセルペダル
401 アクセル開度センサ
5 スタータモータ
6 バッテリ
601 バッテリ温度センサ
7 ECU(車両の制御装置)
71 カウント部(カウント手段)
72 回数判定部(回数判定手段)
73 停止条件記憶部(停止条件変更手段の一部)
74 停止条件変更部(停止条件変更手段の一部)
75 停止条件判定部
76 停止実行部
77 再起動条件判定部
78 再起動実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン停止条件が成立したときに、エンジンを停止すると共に、エンジン再起動条件が成立したときに、エンジンを再起動する車両の制御装置であって、
スタータモータの累積作動回数をカウントするカウント手段と、
前記累積作動回数が予め設定された閾値回数に到達したか否かを判定する回数判定手段と、
前記累積作動回数が前記閾値回数に到達したと判定された場合に、前記エンジン停止条件を、エンジンがより停止し難い条件に変更する停止条件変更手段と、を備えることを特徴とする車両の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−60856(P2013−60856A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199193(P2011−199193)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】