車両の挙動データ記憶制御システム、電子制御装置、データ記憶装置
【課題】「予期せぬ挙動」に対応した挙動データのみの利用が可能なように記憶させることができるようにする。
【解決手段】記憶制御装置30は、取得した挙動データが「予期せぬ挙動」を示すものであるか否かを判断し、「予期せぬ挙動」であると判断したときにはその時点で不揮発性メモリ34に当該「予期せぬ挙動」を示す挙動データを記憶する。クルーズECU4は自身の制御に起因する挙動変化が有ったと判定したときには、当該判定結果をCAN2に送信し、さらに前記記憶制御装置30は、記憶した挙動データの内容とクルーズECU4から送信された判定結果の内容とが一致するか否かを判断し、一致すれば不揮発性メモリ34で記憶した前記挙動データを削除又は上書き許可する。
【解決手段】記憶制御装置30は、取得した挙動データが「予期せぬ挙動」を示すものであるか否かを判断し、「予期せぬ挙動」であると判断したときにはその時点で不揮発性メモリ34に当該「予期せぬ挙動」を示す挙動データを記憶する。クルーズECU4は自身の制御に起因する挙動変化が有ったと判定したときには、当該判定結果をCAN2に送信し、さらに前記記憶制御装置30は、記憶した挙動データの内容とクルーズECU4から送信された判定結果の内容とが一致するか否かを判断し、一致すれば不揮発性メモリ34で記憶した前記挙動データを削除又は上書き許可する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、必要な挙動データを効率よく記憶可能な車両の挙動データ記憶制御システム、電子制御装置、データ記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両においては、異常挙動を検出したときにその際の車両の挙動を示す車両情報や制御情報といった挙動データを、事後の解析用としてメモリに記憶する記憶制御装置がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−205368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記記憶制御装置のみで挙動データが所定条件を満たした際に異常挙動であると判定する構成では、異常挙動と判定される原因となった挙動データがドライバの指示に基づき他のECUが行った正常な制御に起因するものであったとしても、異常挙動であるとしてメモリに記憶されてしまう。一具体例としては、加速度が所定値以上となることを記憶制御装置が異常挙動と判定する条件とし、ドライバが追い越しを行う為にアクセルペダルを意図して踏み込んだ場合、記憶制御装置ではないスロットル制御ECUがスロットルを開く制御を行ってドライバが予期した通りの加速を発生させたにも関わらず、記憶制御装置が異常挙動と判定すると考えられる。しかしながら、このようなドライバが予期した正常な挙動までも記憶してしまうと、ドライバにとって予期した挙動(正常挙動)と本来記憶すべきドライバにとって予期せぬ挙動(異常挙動)とが混在してしまい、後に「予期せぬ挙動」の原因が適正に解析できない可能性が考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、「予期せぬ挙動」であるか否かの判定精度を向上し、後々の解析がし易くなるようにメモリに挙動データを記憶させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は次の点を考慮してなされている。記憶制御装置が「予期せぬ挙動」が発生したか否かを判定しメモリに記憶した場合に、当該記憶制御装置が、車内ネットワークを介して他のECUからの判定結果を取得し、前記判定結果が、挙動の変化は当該他のECUがドライバの指示に基づき制御処理を行った結果発生したものであるということを示す内容であれば、前記記憶制御装置でメモリに記憶させた対応する挙動データはドライバの指示に基づき正常に制御された結果を示すものであると判断することができ、当該記憶データを削除すれば、メモリには真に「予期せぬ挙動」に対応した挙動データのみを記憶できると推測できる。
【0007】
この点を考慮した本発明の車両の挙動データ記憶制御システムにおいては、車内ネットワーク上に、自身が取得した挙動データに基づき「予期せぬ挙動」が発生したか否かを判断する挙動判断手段を有すると共に前記「予期せぬ挙動」に関連する挙動データを記憶するメモリを備えた記憶制御装置と、所定の制御対象を制御するためのECUとを接続し、前記ECUが、挙動データに変化が有ったときに当該挙動データの変化が自身が行った制御の結果によるものであるか否かを判定し、当該挙動データの変化が自身が行った制御の結果によるものであると判定された場合には前記車内ネットワークにその判定結果を送信する判定結果提供手段を備え、前記記憶制御装置が「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときにはその時点で前記メモリにその際の挙動データを記憶する記憶制御手段と、前記「予期せぬ挙動」の内容が、前記判定結果に関連するものであるか否かを判断し、判定結果に関連するものであると判断されれば前記メモリで記憶した前記挙動データを削除又は上書き許可する修正手段を備えた構成とした。
【0008】
この構成によれば、記憶制御装置の挙動判断手段が「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときには、一旦、メモリにその際の挙動データを記憶するが、修正手段が、当該「予期せぬ挙動」の内容が他のECUから提供される判定結果に関連するものであると判断すれば、当該記憶した挙動データを削除又は上書き許可できる。この場合、上書き許可とは、読み出しは禁止であって且つ上書きが許可されることをいう。従って、前記メモリ内には、実質、解析に適した挙動データのみが読み出し可能に(利用可能に)記憶されることとなり、予期せぬ挙動の解析を適正に行うことが可能となる。
【0009】
さらに、ECUにおける判定結果提供手段は、入力される挙動データに変化が有ったときに、その変化が自身が行った制御の結果によるものであるか否かを判定し、自身が行った制御の結果によるものであるならばその判定結果を前記車内ネットワークに送信するから、つまり、自身に関する挙動データに変化があったときにのみ判定結果を送信するから、当該車内ネットワークの通信が混み合うことがなく、他のECU間や各挙動センサ及び各ECU間の通信に支障を来すことがない。
【0010】
請求項2の車両の挙動データ記憶制御システムにおいては、前記記憶制御装置及びECUは共通の時間情報を有し、前記記憶装置は前記「予期せぬ挙動」に対応する挙動データに当該時間情報を付帯させ、前記ECUは前記車内ネットワークに送信する判定結果に前記時間情報を付帯させ、前記修正手段は、記憶した挙動データが前記判定結果に関連するものであり且つ該両データの時間情報が一致すれば前記メモリで記憶した前記「予期せぬ挙動」に対応する挙動データを削除又は上書き許可することを特徴としている。
【0011】
この請求項2によれば、前記記憶制御装置が記憶した「予期せぬ挙動」に対応する挙動データとECUの判定結果とが関連するか否かに加えて両データの時間情報も一致するか否かを判断することで前記記憶装置が検出した「予期せぬ挙動」が真に「予期せぬ挙動」であるか否かの判断が正確となる。
【0012】
請求項3の車両の挙動データ記憶制御システムにおいては、前記ECUが車内ネットワークに送信する前記判定結果は、前記記憶制御装置にのみ宛てて送信されるところに特徴を有する。これによれば、車内ネットワーク上の関係の無い別のECUが自身に関係のない判定結果を取得処理せずに済む。
【0013】
請求項4の車両の挙動データ記憶制御システムは、前記ECUが複数あって、この複数のECUに、挙動センサからのデータを入力してアクチュエータを制御する第1のECUと、前記挙動センサからの入力がなくこの第1のECUからのみデータを前記車内ネットワークを介して取得し当該第1のECUに要求を出す第2のECUとが含まる場合には、前記第1のECUが、前記判定結果提供手段を備えるところに特徴を有する。この請求項4によれば、直接アクチュエータを制御する第1のECUから判定結果を送信することになるから、判定結果の提供精度を高めることができる。
【0014】
請求項5の車両の挙動データ記憶制御システムは、前記記憶制御装置が、前記ECUとは別の種類のECUに設けられているところに特徴を有する。これによれば、記憶制御装置における判定手段や記憶制御手段及び修正手段が前記別の種類のECUにより兼用することが可能となる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、メモリは、第1メモリと、第2メモリとを備え、記憶制御手段は、「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときには、第1メモリに挙動データを記憶するとともに、「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に判定結果を受信しなかった場合には、挙動データを第2メモリに書き込み、修正手段は「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に判定結果を受信した場合には、少なくとも第1メモリに記憶した挙動データを削除又は上書き許可の状態にすることを特徴とする。
【0016】
これにより少なくとも第2メモリに、他のECUが行った制御の結果によるものであると判定されなかった挙動データを記憶することができる。
請求項7に記載の発明は、自身が取得した実際の車両挙動を示す実挙動データに基づき「予期せぬ挙動」が発生したか否かを判断し、「予期せぬ挙動」であると判定された場合には実挙動データを記憶する記憶装置が接続されたネットワークに接続される電子制御装置であって、電子制御装置は、電子制御装置が行う制御の制御量に基づき将来の予想挙動データを予想するとともに、予想挙動データが、実挙動データに対して所定値以内の乖離である場合に、ネットワークに対して、実挙動データは該電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を出力することを特徴とする。
【0017】
これによれば電子制御装置は、自身がドライバの指示に基づいて行った制御処理に起因して挙動が変化した場合、その旨をネットワークに接続された他の装置に対して送信することができる。
【0018】
請求項8に記載の発明は、自身が実挙動データを記憶するメモリを備え、予想挙動データが、実挙動データに対して所定値よりも乖離している場合には、実挙動データをメモリに記憶することを特徴とする。
【0019】
これによれば、電子制御装置自身でも、自身がドライバの指示に基づいて行った制御処理とは異なる挙動変化が発生した場合、その実挙動データを記憶することができる。
請求項9に記載の発明は、ネットワークを介して、実挙動データは該電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を受信すると、メモリに実挙動データを記憶している場合には、当該メモリから実挙動データを削除、又は、上書き可能な状態に変更することを特徴とする。
これにより、ドライバの指示に基づいて別の電子制御装置が正常に制御を行ったにも関わらず、その結果発生した挙動データを電子制御装置に無駄に記憶することを防止できる。
【0020】
請求項10に記載の発明は、ネットワークに対して、実挙動データは電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を出力する際に、さらに実挙動データに対応する時間情報を付帯して出力することを特徴とする。
これにより前述の請求項2と同様の効果を奏することができる。
【0021】
請求項11に記載の発明は、メモリは、第1メモリと、第2メモリとを備え、電子制御装置は、予想挙動データが実挙動データに対して所定値よりも乖離していると判断したときには、第1メモリに実挙動データを記憶するとともに、乖離の発生から所定時間以内に当該実挙動データは該電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を受信しなかった場合には、当該実挙動データを前記第2メモリに書き込み、予想挙動データが実挙動データに対して所定値よりも乖離していると判断したときから所定時間以内に実挙動データは電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を受信した場合には、少なくとも第1メモリに記憶した実挙動データを削除又は上書き許可の状態にすることを特徴とする。
【0022】
これにより第2メモリに、この第2メモリを備える電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因しない実挙動データを記憶することができる。
請求項12に記載の発明は、アクチュエータを制御する制御指令を出力し、かつ、実際に発生した車両挙動を示す実挙動データが自身の制御指令によるものである場合には修正指令を出力する電子制御装置が接続された車両用ネットワークに接続される、データ記憶装置であって、データ記憶装置は、メモリを備え、実挙動データに基づき「予期せぬ挙動」が発生したと判定した場合にはメモリに実挙動データを記憶し、修正指令を受信した場合には、当該修正指令に対応する実挙動データをメモリから削除、又は、上書き可能な状態に変更することを特徴とする。
【0023】
これにより電子制御装置がドライバの指示に基づいて行った制御処理に起因して挙動が変化した場合、その旨を修正指令により受け取ることで、データ記憶装置はドライバの指示に基づいて行った制御処理に起因して発生した挙動データを無駄にメモリに記憶することがない。
【0024】
請求項13に記載の発明は、メモリは、第1メモリと、第2メモリとを備え、データ記憶装は、「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときには、第1メモリに実挙動データを記憶するとともに、「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に修正指令を受信しなかった場合には、実挙動データを第2メモリに書き込み、「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に修正指令を受信した場合には、少なくとも第1メモリに記憶した実挙動データを削除又は上書き許可の状態にすることを特徴とする。
これにより第2メモリに、車両用ネットワークに接続された電子制御装置の制御に起因しない実挙動データを記憶することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、車両の挙動データ記憶制御システムの機能ブロック図
【図2】クルーズECUの制御内容を示すフローチャート
【図3】記憶制御装置の制御内容を示すフローチャート(その1)
【図4】記憶制御装置の制御内容を示すフローチャート(その2)
【図5】本発明の第2実施形態を示す図2相当図
【図6】図4相当図
【図7】本発明の第3実施形態を示し、車両の挙動データ記憶制御システムの機能ブロック図
【図8】本発明の第4実施形態を示し、車両の挙動データ記憶制御システムの機能ブロック図
【図9】車間制御ECUの制御内容を示すフローチャート
【図10】記憶制御装置の制御内容を示すフローチャート(その3)
【図11】本発明の第5実施形態を示し、車両の挙動データ記憶制御システムの機能ブロック図
【図12】記憶制御装置の制御内容を示すフローチャート(その4)
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図4を参照して説明する。第1実施形態の車両の挙動データ記憶制御システム1は、車内ネットワークである例えばCAN(Controller Area Network)2を介して、いずれも電子制御装置であるエアバッグECU3と、クルーズECU4と、エンジンECU5とを接続している。
【0027】
エアバッグECU3は、CPU、ROM、RAM(いずれも図示せず)を備えたマイクロコンピュータ3aを備えて構成されており、前記エアバッグECU3のマイクロコンピュータ3aは、周知の通り、車体の衝突が検知されたときに、エアバッグを膨張させる着火装置(制御対象)を制御するエアバック制御手段3bを備えて構成されている。
【0028】
さらに、前記マイクロコンピュータ3aは記憶制御装置30も兼用しており、この記憶制御装置30は、マイクロコンピュータ3aのソフトウエア構成によって構成される後述する挙動判断手段31、記憶制御手段32及び修正手段33を含み、さらに当該マイクロコンピュータ3aに接続されたメモリとしての不揮発性メモリ34を含んで構成されている。前記不揮発性メモリ34は、データ書き換え可能なフラッシュメモリなどから構成される。
【0029】
さらに前記エアバッグECU3は、エンジンECU5からCAN2を介してアクセル開度センサ6及び車速センサ7からのセンサ信号が与えられるようになっている。
クルーズECU4は、図示はしないが、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータを備えて構成されており、図示しない制御開始スイッチがオンされると、クルーズ制御を開始可能状態にする。このクルーズ制御では、前記車速センサ7からのセンサ信号などに基づいて、制御上の演算処理を行い、制御対象であるエンジンECU5に定速走行制御や加減速制御のための要求指令を出す。また、このクルーズECU4は、不揮発性メモリ44を有する記憶制御装置41としての機能も備えており、さらに記憶制御装置41には後述する判定結果提供手段40も備えている。
【0030】
エンジンECU5では、各ECUから送られる前記要求指令に基づき、前記アクセル開度センサ6や車速センサ7からのセンサ信号に応じて、制御対象であるスロットルバルブ(アクチュエータ)の開閉量を調整する。なお、クルーズECU4は、図示しない変速機やブレーキ装置なども制御する。
【0031】
さて、上記クルーズECU4は、図2に示す処理を行う。図2の処理は、ドライバからの指示に基づき車速を目標値に近づけるクルーズ制御処理と、車速の変化率が自身のクルーズ制御処理に起因するものであるか否かを判定する判定処理と、判定処理の結果に基づき判定結果を出力する、又は、クルーズECU4内で車両情報・制御情報を記憶する後処理とからなる。ここで車両情報とは各センサの検出値などに基づく自ECUに入力されて来る情報であって、制御情報とはアクチュエータや他ECUに対する制御指令といった自ECUから出力する情報である。
【0032】
なお、上記判定処理で判定対象とされる「車速の変化率が自身のクルーズ制御処理に起因する」とは、「クルーズECU4自身が予期した通りの変化率が得られる」と同義である。逆の言い方をすれば、あるECUにとっての予期せぬ挙動とは「そのECU自身が有する情報からはその原因が特定できない挙動」を示す。ここで、ECU自身が有する情報とは、他のECUに対して制御指令を出力する制御処理を行うECUの場合には、制御指令、及び、センサ情報、及び、他ECUからの判定結果である。クルーズECU4は制御処理を行うECUであるので、制御指令が後述する要求指令に相当し、センサ情報が車速センサ7からのセンサ信号に相当する。
【0033】
一方、他のECUに対して制御指令を出力するような制御処理を行わないECUの場合には、ECU自身が有する情報とは、センサ情報、及び、他ECUからの判定結果である。前述のエアバッグECU3の場合には、センサ情報が車速センサ7からのセンサ信号に相当する。
【0034】
再び、図2の処理の説明に戻る。この図2の処理は、Δt秒(例えばΔt=1秒)毎といった所定周期で行われる。また、ドライバからは、制御開始スイッチを操作する際、または、操作から所定時間内に目標車速が入力される構成となっている。なお簡略化のため、図2において目標車速は、ドライバが制御開始スイッチをON状態に操作した際に設定されるものとする。
【0035】
図2のステップS1では、制御開始スイッチの状態がOFFからONに遷移したか否かを判定する。もし、ドライバにより制御開始スイッチが操作され、ON状態になったのであれば、ステップS2に進む。一方、ドライバにより制御開始スイッチが操作されず、OFF状態のままであれば、ON状態になるまで待つ。
【0036】
ステップS1より続くステップS2では、経過カウンタtを初期化(=0にする)する。なお、経過カウンタtとは、制御開始スイッチの状態がONに遷移したタイミングを基準(t=0)とした時刻、と言い換えることもできる。
【0037】
ステップS3では、制御開始スイッチがON状態のままであるか否かを判定する。制御開始スイッチがON状態であるならステップS4へ進み、制御開始スイッチがON状態でないならステップS1へ戻る。
【0038】
ステップS4では、クルーズ制御処理を行う。クルーズ制御処理とは、ドライバが設定した目標車速に車速を近づける制御である。その一例は、ドライバが設定した目標車速が現在の車速よりも高ければエンジントルクを増加させる要求指令を、ドライバが設定した目標車速が現在の車速よりも低ければエンジントルクを減少させる要求指令をエンジンECU5に出力する制御である。
【0039】
ステップS4より続くステップS5では、要求指令と、現在の車速V(t)とから、Δt秒後の予想車速VE(t+1)を演算する。なお、この予想車速VE(t+1)とは、ドライバの指示に基づいてクルーズECU4が正常に制御をおこない、かつ、突然斜度が変わった等の外乱がない、という前提で、予想される所定時間Δt後の状態である。
【0040】
ステップS5より続くステップS6では、予想変化率RE(t+1)を演算する。ここで、予想変化率RE(t+1)とは、現在時刻tから所定時間Δtだけ経過した時点(t+1)での予想車速VE(t+1)と、現在車速V(t)との差である。換言すれば、予想変化率RE(t+1)とは、現在時刻tから所定時間Δt内に、加減速する度合いを示している。
【0041】
ステップS6より続くステップS7では、制御開始スイッチの状態がONに遷移したタイミングを基準(t=0)として、現在の経過カウンタtが0よりも大きいか否かを判定している。換言すれば、制御開始スイッチの状態がONに遷移したタイミングから、所定時間Δtを経過したか否かを判定している。そして、現在の経過カウンタtが0よりも大きいと判定された場合はステップS8へ進み、現在の経過カウンタtが0よりも大きくないと判定された場合はステップS13へ進む。つまり、このステップS7は、制御開始スイッチの状態がONに遷移した直後の1回目は、後述する実変化率を演算しない為に設けられた分岐処理である。なお、ステップS13では経過カウンタtを1つ進め(インクリメントし)、その後ステップS3へ戻る。
【0042】
ステップS8では、現在の車速V(t)からΔt前の車速V(t−1)を減ずることにより実変化率RR(t)を演算する。なお、ステップS8の処理は、経過カウンタtが0よりも大きい場合(言い換えると経過カウンタtが1以上)に実行されるため、車速V(t−1)は、必ずクルーズ制御の開始以降の車速となる。
【0043】
ステップS8より続くステップS9では、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満(所定値内の乖離)であるか否かを判定する。もし、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満であるならばステップS10へ進み、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満でない(所定値よりも乖離)ならばステップS12へ進む。ここで、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満である、とは、Δt前に出力した要求指令に基づいてクルーズ制御が実行された結果、その際(Δt前)にクルーズECU4が予想した通りの挙動が発生していることを示す。一方で、予想変化率と実変化率の差分の絶対値が判定値未満でない、とは、Δt前に要求指令を出力したが、その際(Δt前)にクルーズECU4が予想したものとは異なる挙動、つまり予期せぬ挙動が発生していることを示す。
【0044】
そこで、ステップS10では、クルーズECU4が予期(予想)した通りの挙動が発生しているため、実変化率RR(t)のランク分けを実行する。
このランク分けは、「+1」、「+2」、「+3」、「−1」、「−2」、「−3」のランクに分けるものであり、ランク「+1」は、5km/h以上〜10km/h未満の増速変化、ランク「+2」は、10km/h以上〜15km/h未満の増速変化、ランク「+3」は15km/h以上の増速変化であり、また、ランク「−1」は、5km/h以上〜10km/h未満の減速変化、ランク「−2」は、10km/h以上〜15km/h未満の減速変化、ランク「−3」は15km/h以上の減速変化である。
【0045】
ステップS10より続くステップS11では、このランク分けの結果を判定結果としてCAN2上に送信する(判定結果提供手段40)。そして、ステップS13で経過カウンタtを1つ進め(インクリメントし)、その後ステップS3へ戻る。
【0046】
一方、ステップS12では、クルーズECU4にとって予期せぬ挙動が発生しているため、後述する図4と同様のデータ処理を行う。そして、ステップS12にて、予期せぬ挙動が他ECUの制御に起因するものであるか否かを判定し、他ECUの制御に起因するものでない場合には、図示しない不揮発性RAMに車両情報や制御情報を記憶し、ステップS13では経過カウンタtを1つ進め(インクリメントし)、その後ステップS3へ戻る。
【0047】
クルーズECU4は、上述のようにクルーズ制御を実行中に予期せぬ挙動が発生したか否かを判定し、クルーズECU4にとって予期した挙動であった場合にはその際の実変化率RR(t)をランク分けし、このランク分けした結果を判定結果としてCAN2上に送信する。つまり、速度が変化(実変化率)するという挙動の変化は、クルーズECU4自身の制御に起因する、ということを他のECUに対して知らせるべく、判定結果を出力するのである。
【0048】
又、前記エアバッグECU3は、図3、図4に示す記憶制御を実行する。図3はメインルーチンを示している。まず、削除待ち時間についてカウンタを所定時間例えば5秒に初期化する(ステップT1)。そして、アクセル開度センサ6及び車速センサ7からのセンサ信号をCAN2を介して取得し(ステップT2)、データ処理を行う(ステップT3)。
【0049】
このデータ処理の制御内容は図4にサブルーチンとして示している。まず、車速センサ7からのセンサ情報に基づき、Δt前からの車速の増速又は減速の変化率を算出する(ステップU1)。そして、この変化率が、「予期せぬ挙動」判定のための所定判定条件(例えば、アクセル開度が「0」で、且つ変化率が、所定値(増速方向で5km/h以上)であるか否かを判断する(ステップU2、挙動判断手段31)。
【0050】
変化率が「予期せぬ挙動」を示すものであれば、削除待ち時間カウンタによるカウントを開始し(ステップU3)、そして車速変化率(車両情報)をランク分けして不揮発性メモリ34に記憶する(ステップU4、記憶制御手段32)。この場合の車速変化率のランク分けは、「+1」、「+2」、「+3」のランクに分けるものであり、ランク「+1」は、5km/h以上〜10km/h未満の増速変化、ランク「+2」は、10km/h以上〜15km/h未満の増速変化、ランク「+3」は15km/h以上の増速変化である。なお、ステップU4の処理は、増速変化が発生している際にのみ行われるものであるため、増速変化に対応したランクに分けられている。
【0051】
なお、上記不揮発性メモリ34における車両情報の記憶領域は例えばデータ3個分としており、最も古い記憶データに上書きして記憶させる。
そしてCAN2を介して他のECUから判定結果を受信したか否かを判断し(ステップU5)、受信していれば、当該判定結果の内容(前述のステップS10でのランク)と前記記憶データの内容(前述のステップU4でのランク)と一致するか否かを判断し(ステップU7)、同じであれば、前記記憶した車両情報を削除する(ステップU8)。ステップU7とステップU8とが修正手段33に相当する。
【0052】
前記ステップU5で他のECUから判定結果を受信していなければ(同ステップU5の「NO」)、このフローチャートを抜けてメインルーチンに戻る。つまり、前記記憶した車両情報は削除せず、読み出し可能とする。このメインルーチンに戻ると、前述のステップT2を実行したうえで、このサブルーチンのステップU1に移行する。次のステップU2で「NO」、つまり「予期せぬ挙動」と判定されなければ、ステップU6で削除待ち時間カウンタのカウント時間が所定時間である5秒未満か否かの判断をし、5秒以上であれば何もせずにメインルーチンに戻る。5秒未満であれば(「YES」)、ステップU5に移行する。
【0053】
このように記憶制御装置30において、「予期せぬ挙動」であると判定されたときには、その際の車両情報(速度変化率)を不揮発性メモリ34に記憶し、そして所定時間のうちに、他のECUから他のEUCにとっては予期された挙動であったことを示す判定結果を受ければ(提供があれば)、記憶制御装置30にとって「予期せぬ挙動」に対応する情報として記憶した車両情報を削除する。なお、他のEUCにとって予期された挙動とは、ドライバからの指示に基づき他のEUCが自ら行った制御処理の結果得られるはずの挙動が現れた、ということである。
【0054】
上述した実施形態によれば、記憶制御装置30の挙動判断手段31が「予期せぬ挙動」であると判断したときには、一旦、不揮発性メモリ34にその際の車両情報を記憶するが、当該「予期せぬ挙動」がクルーズECU4によって実行された制御処理に起因するものであれば、実際にはドライバからの指示に基づき制御処理がなされただけであって車両全体としては正常であると判断して、当該記憶した「予期せぬ挙動」に対応する情報として記憶した車両情報を削除するから、不揮発性メモリ34内には、実質、解析に適した車両情報のみが記憶されることとなり、予期せぬ挙動の解析を適正に行うことが可能となる。つまり、最終的に不揮発性メモリ34には、ドライバからの指示に基づかない、つまり車両内の正常なECUのいずれの制御処理にも起因しない挙動(車両内のいずれのECUも予期せぬ挙動)に対応した車両情報が記憶されることになる。
【0055】
さらに、クルーズECU4における判定結果提供手段40は、クルーズECU4自身の制御処理に起因する挙動の変化が有ったときに当該制御処理に対応する判定結果をCAN2に送信するから、常時決められた時間周期で自身の制御処理に起因する判定結果であったか無かったかを送信する場合に比べて、当該CAN2の通信が混み合うことがなく、他のECU間や各挙動センサ及び各ECU間の通信に支障を来すことがない。
【0056】
なお、前記ステップU8における削除処理は、上書き許可処理としても良い。この場合、上書き許可処理とは、読み出しは禁止であって且つ上書きは許可する処理である。従って、上書き許可された車両情報が「予期せぬ挙動」に対応する車両情報として使用されることはない。
【0057】
又、この実施形態によれば、記憶制御装置30を、クルーズECU4及びエンジンECU5とは別の種類のECUであるエアバッグECU3に設けたから、記憶制御装置30における挙動判断手段31や記憶制御手段32及び修正手段33を当該エアバッグECU3により兼用することができる。
【0058】
ただし、この記憶制御装置30は各ECU3、4、5とは別に単独に設ける構成としても良い。
又、前記第1実施形態では、「予期せぬ挙動」に対応する車両情報をランク分けし、クルーズECU4から送信する判定結果もランク分けしたが、どちらか一方のデータをランク分けし、他方のデータはランク分けせず、ランク分けしたデータの範囲内に、他方のデータが入るか否かをもって両データが一致するか否かを判断するようにしても良い。更に、両データをランク分けしなくても両データが一致するか否かの判断は可能である。
【0059】
又、不揮発性メモリ34に記憶する「予期せぬ挙動」に対応する車両情報はランク分けしないデータ値として記憶し、送信されて来る判定結果と比較するときにランク分けしても良い。
【0060】
また、エアバッグECU3に設けた記憶制御装置30を例に説明を行ったため、不揮発性メモリ34には制御情報ではなく車両情報を記憶するとした。しかし、言うまでも無く他ECUに対して制御指令を出力するクルーズECU4の記憶制御装置41の不揮発性メモリ44には、車両情報だけでなく、自身がエンジンECU5に対して出力した要求指令(制御指令)を記憶するようにしても良い。また、制御処理を行う際の学習値といった制御情報を記憶するようにしても良い。
【0061】
また、図2で示したクルーズECU4の処理は、ステップS4のクルーズ制御がなされる度にステップS9の予期せぬ挙動であるか否かの判定を行っていたが、必ずしもステップS4のクルーズ制御がなされる度にステップS9の判定を行う必要はない。数回に1度、ステップS9の判定が行われるようにしても良い。
【0062】
また、図2で示したクルーズECU4の処理は、特にステップS9で予想変化率と実変化率の差分を求めていたが、単に、前回周期(t−1)にステップS5で演算した予想車速VE(t)と、現在の車速VE(t)との差分を求めても良い。さらには、予想変化率を予想車速VE(t+1)から現在車速V(t)を減じたものをΔtで割り算した値とし、実変化率も車速V(t)から車速V(t−1)を減じたものをΔtで割ったものとしても良い。また、必ずしも現在の車速と前回周期の車速との引き算をする必要もなく、現在から所定時間前の車速から現在の車速を減じ、これを所定時間で割り算すれば、予想変化率と実変化率とが異なる時間幅の変化率であってもこれらを比較することができる。同様に、クルーズECU4の判定結果(つまり実変化率)と、エアバッグECU3の変化率とは、一部の時間が重複する範囲であれば異なる時間幅の変化率であって良い。
【0063】
<第2実施形態>
次に、図5及び図6は第2実施形態を示している。この第2実施形態では、記憶制御装置30とクルーズECU4とが共通の時間情報を有しており、判定結果に時間情報を付帯させた点が第1実施形態と異なる。以下、前記第1実施形態と異なる部分について説明する。図5に示すように、クルーズECU4が行う制御において、ステップS10´では、ランク分けされた判定結果に時間情報を付帯させる。そして、ステップS11´では、この時間情報を付帯した判定結果をCAN2に送信する。
【0064】
図6に示すように、記憶制御装置30が行うデータ処理の制御において、ステップU4´では、「予期せぬ挙動」に対応したランク分けした車両情報に時間情報を付帯させて記憶する。さらにステップU7´では、両データの内容が一致し且つ両時間情報が一致すると判断すれば、ステップU8で、u4´において記憶した車両情報を削除する。
【0065】
この第2実施形態によれば、前記記憶制御装置30が記憶した「予期せぬ挙動」に対応する車両情報とクルーズECU4の提供データである判定結果との内容が一致するか否かに加えて両データの時間情報も一致するか否かを判断することでエアバッグECU3にとっての「予期せぬ挙動」が、車両全体(つまり全ECUにとって)の観点でも真に「予期せぬ挙動」であるか否かを判断することができ、ひいては車両全体の視点で「予期せぬ挙動」であったか否かの判断を正確に行うことができる。
【0066】
また、不揮発性メモリ34へ記憶する車両情報に時間情報を付帯させるとともに、他ECUから受信した判定結果(車両情報)にも時間情報を付帯させることで、車両情報と判定結果とを同じ時間情報同士で比較することができる。この場合、不揮発性メモリ34に同じ車両情報が複数回記憶されているような状況においても、判定結果に対応する車両情報を正確に削除することが可能となる。
【0067】
<第3実施形態>
図7は第3実施形態を示しており、次の点が第1実施形態と異なる。記憶制御装置30以外のECUとして、第1実施形態と同様に、複数のECU、つまりクルーズECU4及びエンジンECU5を備えているが、エンジンECU5が請求項4でいう第1のECUに相当し、クルーズECU4が第2のECUに相当する。つまり、エンジンECU5は、挙動センサであるアクセル開度センサ6及び車速センサ7からのデータ(センサ信号)を入力してアクチュエータであるスロットバルブを制御するものであり、クルーズECU4は、前記挙動センサである車速センサ7からの入力がなくエンジンECU5からのみ車速センサ7のデータ(センサ信号)を前記CAN2を介して取得し当該エンジンECU5に要求を出すものである。
【0068】
この場合には、クルーズECU4には、前記記憶制御装置41、不揮発性メモリ44、判定結果提供手段40は設けず、前記エンジンECU5に、前記記憶制御装置41と同様の記憶制御装置51、不揮発性メモリ44と同様の不揮発性メモリ54、前記判定結果提供手段40と同様の判定結果提供手段50を備え、このエンジンECU5から判定結果をCAN2に送信している。ここでエンジンECU5は、クルーズECU4や他のECU(例えばエアコンECU)からのトルク要求指令を鑑みて、図示しない電子制御スロットルの目標開度を決定し、電子制御スロットルに制御指令を出力する。
【0069】
このためエンジンECU5は、電子制御スロットルに出力した制御指令から予想される所定時間後の車速から予想変化率を演算している。一方で、車速センサ7からのセンサ信号に基づき、所定時間内の実変化率を演算し、これを先の予想変化率と比較することにより、エンジンECU5にとって予期せぬ挙動が発生しているか否かを判定している。
この第3実施形態によれば、直接アクチュエータを制御するエンジンECU5から判定結果を送信するから、判定結果の提供精度を高めることができる。
【0070】
<第4実施形態>
次に図8〜10を用いて、電子制御装置である車間制御ECU8が車内ネットワークのCAN2に接続されている場合の実施例について示す。
車間制御ECU8は、ステレオカメラ9からの画像情報に基づき、前方を走行している車両までの車間距離を検出する。そして、その車間距離が所定値よりも短い場合には、衝突を回避するために、同じくCAN2に接続されたブレーキECU10に対して制動指令を出力することでブレーキを作動させるものである。また、前述のクルーズECUと同様に、記憶制御装置41を備えている。
【0071】
ブレーキECU10は、図示しないブレーキペダルの踏量を検出するブレーキペダルセンサ11と電気的に接続されているとともに、ブレーキ踏量をCAN2に出力する。またブレーキECU10は、ABSに代表されるようなブレーキフルードの加圧源(ポンプ)、減圧弁、増圧弁等を備えたハイドロリックユニットの制御も行う。このようにブレーキECU10は、ハイドロリックユニットを介して各車輪のブレーキキャリパのピストンへの油圧制御を行うため、図8においては便宜上ブレーキECU10が各輪ブレーキ12と接続されているように表記している。また、車間制御ECU8から制動指令を受信した場合には、ブレーキECU10はハイドロリックユニットを介して各輪ブレーキ12を作動させ車両を減速させる。
【0072】
次に、車間制御ECU8が行う制御ロジックについて図9を用いて説明を行う。図9のステップS1aでは、ステレオカメラ9からの画像情報に基づき得られた車間距離が所定値以内であるか否かを判定する。もし、車間距離が所定値以下であるのであれば、ステップS2に進む。一方、車間距離が所定値以下でないのであれば、所定値以下になるまで待つ。
【0073】
ステップS1より続くステップS2では、経過カウンタtを初期化(=0にする)する。なお、経過カウンタtとは、車間距離が所定値以下になったタイミングを基準(t=0)とした時刻、と言い換えることもできる。
【0074】
ステップS3aでは、車間距離が所定値以内であるか否かを判定する。車間距離が所定値以下であるのであれば、ステップS4aへ進み、車間距離が所定値以下でないならステップS1aへ戻る。
【0075】
ステップS4aでは、ブレーキ制御を行う。ブレーキ制御とは、前述のようにブレーキECU10に対して制動指令を出力することで、ドライバがブレーキペダルを踏んでいなかったとしても車両を強制的に減速させる制御である。
【0076】
ステップS4aより続くステップS5aでは、制動指令と、現在の車速V(t)とから、Δt秒後の予想車速VE(t+1)を演算する。なお、この予想車速VE(t+1)とは、ドライバの指示に基づいて車間制御ECU8が正常に制御をおこない、かつ、突然斜度が変わった等の外乱がない、という前提で、予想される所定時間Δt後の状態である。
【0077】
ステップS5aより続くステップS6では、予想変化率RE(t+1)を演算する。ここで、予想変化率RE(t+1)とは、現在時刻tから所定時間Δtだけ経過した時点(t+1)での予想車速VE(t+1)と、現在車速V(t)との差である。換言すれば、予想変化率RE(t+1)とは、現在時刻tから所定時間Δt内に、減速する度合いを示している。
【0078】
ステップS6より続くステップS7では、車間距離が所定値以下でない状態から車間距離が所定値以下になったタイミングを基準(t=0)として、現在の経過カウンタtが0よりも大きいか否かを判定している。そして、現在の経過カウンタtが0よりも大きいと判定された場合はステップS8へ進み、現在の経過カウンタtが0よりも大きくないと判定された場合はステップS13へ進む。つまり、このステップS7は、車間距離が所定値以下に変化した直後の1回目は、後述する実変化率を演算しない為に設けられた分岐処理である。なお、ステップS13では経過カウンタtを1つ進め(インクリメントし)、その後ステップS3へ戻る。
【0079】
ステップS8では、現在の車速V(t)からΔt前の車速V(t−1)を減ずることにより実変化率RR(t)を演算する。なお、ステップS8の処理は、経過カウンタtが0よりも大きい(言い換えると経過カウンタtが1以上)で実行されるため、車速V(t−1)は、必ず車間距離が所定値以下になって以降の車速となる。
【0080】
ステップS8より続くステップS9では、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満であるか否かを判定する。もし、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満であるならばステップS10aへ進み、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満でないならばステップS12へ進む。ここで、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満である、とは、Δt前に出力した制動指令に基づいてブレーキ制御が実行された結果、その際(Δt前)に車間制御ECU8が予想した通りの挙動が発生していることを示す。一方で、予想変化率と実変化率の差分の絶対値が判定値未満でない、とは、Δt前に制動指令を出力したが、その際(Δt前)に車間制御ECU8が予想したものとは異なる挙動、つまり予期せぬ挙動が発生していることを示す。
【0081】
そこで、ステップS10aでは、車間制御ECU8が予期(予想)した通りの挙動が発生しているため、実変化率RR(t)のランク分けを実行する。
このランク分けは「−1」、「−2」、「−3」のランクに分けるものであり、ランク「−1」は、5km/h以上〜10km/h未満の減速変化、ランク「−2」は、10km/h以上〜15km/h未満の減速変化、ランク「−3」は15km/h以上の減速変化である。
【0082】
ステップS10aより続くステップS11では、このランク分けの結果を判定結果としてCAN2上に送信する(判定結果提供手段40)。そして、ステップS13で経過カウンタtを1つ進め(インクリメントし)、その後ステップS3へ戻る。
【0083】
一方、ステップS12では、車間制御ECU8にとって予期せぬ挙動が発生しているため、後述する図10と同様のデータ処理を行う。そして、ステップS12にて、予期せぬ挙動が他ECUの制御に起因するものであるか否かを判定し、他ECUの制御に起因するものでない場合には、図示しない不揮発性RAMに車両情報や制御情報を記憶し、ステップS13では経過カウンタtを1つ進め(インクリメントし)、その後ステップS3aへ戻る。
【0084】
車間制御ECU8は、上述のように車間距離の制御を実行中に予期せぬ挙動が発生したか否かを判定し、車間制御ECU8にとって予期した挙動であった場合にはその際の実変化率RR(t)をランク分けし、このランク分けした結果を判定結果としてCAN2上に送信する。つまり、速度が変化(実変化率)するという挙動の変化は、車間制御ECU8自身の制御に起因する、ということを他のECUに対して知らせるべく、判定結果を出力するのである。
【0085】
又、前記エアバッグECU3は、図3に示した記憶制御を実行するが、ステップT3のデータ処理においては、前述の図4の処理とは別に、図10に示す処理を行う。なお、図4の処理が完了した後に引き続いて図10の処理を行っても良いし、その逆の順番であっても良い。
【0086】
図10に示すデータ処理のサブルーチンでは、まず、車速センサ7からのセンサ情報に基づき、Δt前からの車速の増速又は減速の変化率を算出する(ステップU1)。そして、この変化率が、「予期せぬ挙動」判定のための所定判定条件である、ブレーキ踏量が「0」で、且つ変化率が所定値(加速方向で5km/h)以上であるか否かを判断する(ステップU2a、挙動判断手段31)。
【0087】
変化率が「予期せぬ挙動」を示すものであれば、削除待ち時間カウンタによるカウントを開始し(ステップU3)、そして車速変化率(車両情報)をランク分けして不揮発性メモリ34に記憶する(ステップU4、記憶制御手段32)。この場合の車速変化率のランク分けは、「−1」、「−2」、「−3」のランクに分けるものであり、ランク「−1」は、5km/h以上〜10km/h未満の減速変化、ランク「−2」は、10km/h以上〜15km/h未満の減速変化、ランク「−3」は15km/h以上の減速変化である。なお、ステップU4の処理は、減速変化が発生している際にのみ行われるものであるため、減速変化に対応したランクに分けられている。
【0088】
なお、上記不揮発性メモリ34における車両情報の記憶領域は例えばデータ3個分としており、最も古い記憶データに上書きして記憶させる。
そしてCAN2を介して他のECUから判定結果を受信したか否かを判断し(ステップU5)、受信していれば、当該判定結果の内容(前述のステップS10でのランク)と前記記憶データの内容(前述のステップU4でのランク)と一致するか否かを判断し(ステップU7)、同じであれば、前記記憶した車両情報を削除する(ステップU8)。ステップU7とステップU8とが修正手段33に相当する。
【0089】
前記ステップU5で他のECUから判定結果を受信していなければ(同ステップU5の「NO」)、このフローチャートを抜けてメインルーチンに戻る。つまり、前記記憶した車両情報は削除せず、読み出し可能とする。このメインルーチンに戻ると、前述のステップT2を実行したうえで、このサブルーチンのステップU1に移行する。次のステップU2で「NO」、つまり「予期せぬ挙動」と判定されなければ、ステップU6で削除待ち時間カウンタのカウント時間が所定時間である5秒未満か否かの判断をし、5秒以上であれば何もせずにメインルーチンに戻る。5秒未満であれば(「YES」)、ステップU5に移行する。
【0090】
このように「予期せぬ挙動」であるか否かを判定する条件は、第1実施形態や第2実施形態で示したアクセル開度が「0」であるか否かに限定されるものではなく、ブレーキ踏量に基づいたものであっても良い。また、「予期せぬ挙動」とは、例えば加速といった唯一の挙動に限ったものではなく、加速又は減速といったように複数の「予期せぬ挙動」が存在しても良い。
【0091】
<第5実施形態>
次に図11及び図12は第5実施形態を示している。メモリ35には、第1メモリとしての仮記憶用メモリ35aと、第2メモリとしての本記憶用メモリ35bとが含まれている点で、第1実施形態と異なる。前記仮記憶用メモリ35aは例えばSRAMなどの劣化の小さい揮発性メモリから構成され、本記憶用メモリ35bは、電源がオフしても記憶内容を保持できるフラッシュメモリなどの不揮発性メモリから構成されている。なお、不揮発性メモリの所定領域を第1メモリとして構成し、他の所定領域を第2メモリとして構成しても良い。
【0092】
図12で示す処理は、エアバッグECU3によりなされる記憶制御のサブルーチンである。すなわち図3を用いて前述したメインルーチンから呼び出されて実行されるものであって、制御処理としては図12が第1実施形態の図4に対応する。
【0093】
ステップV1では、図4のステップU1と同様に、車速変化率を演算する。ステップV1より続くステップV2では、図4のステップU2と同様に、この変化率が、「予期せぬ挙動」判定のための所定判定条件(例えば、アクセル開度が「0」で、且つ変化率が、所定値(増速方向で5km/h以上)であるか否かを判断する。そして、変化率が「予期せぬ挙動」判定のための所定判定条件を満たすと判定された場合にはステップV3へ進み、満たさないと判定された場合にはステップV6へ進む。
【0094】
ステップV3では、図4のステップU3と同様に、変化率が「予期せぬ挙動」を示すものであれば、削除待ち時間カウンタによるカウントを開始する。ステップV3より続くステップV4では、車速変化率(車両情報)をランク分けして、仮記憶用メモリ35aに記憶する(既に過去の車両情報が記憶されている場合には上書きして記憶)。ステップV4より続くステップV5では、仮記憶用メモリ35aに設けられた仮記憶済フラグをONにする。ステップV5より続くステップV8では、クルーズECU4といった他のECUから判定結果を受信しているか否かに基づく分岐判定を行う。そして、他のECUから判定結果を受信していると判定された場合にはステップV9へ進み、他のECUから判定結果を受信していないと判定された場合には本サブルーチンを終了する。
【0095】
一方、ステップV2にて、変化率が「予期せぬ挙動」判定のための所定判定条件を満たさないと判定された場合に進むステップV6では、前述の仮記憶済フラグがONであるか否かに基づく分岐判定を行う。もし、仮記憶済フラグがONであると判定された場合にはステップV7へ進み、仮記憶済フラグがONでない(=OFFである)と判定され場合には本サブルーチンを終了する。
【0096】
ステップV7では、削除待ち時間カウンタが所定時間未満であるか否かに基づく分岐判定を行う。もし、削除待ち時間カウンタが所定時間未満であると判定された場合には、ステップV8へ進み、削除待ち時間カウンタが所定時間未満でない(つまり削除待ち時間カウンタが所定時間を越えた)と判定された場合には、ステップV11へ進む。
【0097】
ステップV11では、削除待ち時間カウンタが所定時間を越えるまで、仮記憶用メモリ35bに記憶した「予期せぬ挙動」に対応する車両情報が、他のECUによる正常な制御処理に起因する車両情報であった旨を示す判定結果を受信しなかったとして、仮記憶用メモリ35bに記憶した車両情報(一例としてランク分けされた車速変化率)を本記憶用メモリ35bにコピー(又は移動)する。また更に、次に「予期せぬ挙動」と判定されるまでステップV11の処理が行われない様に、仮記憶済フラグをOFFに設定する。
【0098】
削除待ち時間カウンタが所定時間未満であると判定された場合(ステップV7で肯定判定)、又は、ステップV5より進むステップV8では、他ECUから判定結果を受信したか否かに基づく分岐判定を行う。もし、他ECUから判定結果を受信したと判定された場合にはステップV9へ進み、他ECUから判定結果を受信していないと判定された場合には本サブルーチンを終了する。
【0099】
ステップV9では、受信した判定結果と、仮記憶用メモリ35aに記憶した「予期せぬ挙動」に対応する車両情報とが一致するか否かに基づく分岐判定を行う。もし、判定結果と車両情報とが一致すると判定された場合にはステップV10へ進み、判定結果と車両情報とが一致しないと判定された場合には本サブルーチンを終了する。
【0100】
ステップV10では、「予期せぬ挙動」と判定した車両情報は他ECUが行った制御処理に起因するものであると前段のステップV9で判定された為、次にステップV2で「予期せぬ挙動」と判定されるまでステップV11の処理が行われない様に、仮記憶済フラグをOFFに設定する。
【0101】
この第5実施形態によれば、本記憶用メモリ35bには、「予期せぬ挙動」に対応する車両情報のみが記憶されることになり、本記憶用メモリ35bの記憶領域を、解析に活用可能な「予期せぬ挙動」に対応する車両情報でフルに使用することができ、当該本記憶用メモリ35bの記憶容量が少ない場合に好適する。つまり、本記憶用メモリ35bとしてはコスト面や、他の記憶すべきデータ量が多いことを考慮すると、当該本記憶用メモリ35bの記憶容量は制約され、記憶できるデータ数も制約される。この場合には、本記憶用メモリ35bにおいて「予期せぬ挙動」に対応しない車両情報が一つでも記憶されてしまうと、もともと記憶できるデータ数が少ないのに解析に活用可能な「予期せぬ挙動」に対応する車両情報を記憶するためのデータ領域がさらに少なくなってしまい、データ活用効率が落ちる。この点、この実施形態によれば、真に「予期せぬ挙動」であることを確認してから本記憶用メモリ35bに車両情報を記憶させるから、本記憶用メモリ35bの記憶容量が少なくて記憶可能なデータ数が少ない場合でも、「予期せぬ挙動」に対応する車両情報をフルに記憶できて、データ活用効率を高めることができる。
【0102】
又、前記仮記憶用メモリ35aのデータを本記憶用メモリ35bにコピーした場合には、本記憶用メモリ35bに記憶された最新のデータを使用する際に何らかの理由で削除してしまったとしてもコピー元の前記仮記憶用メモリ35aに同じデータが残っているから、データ保存に有利となる。
【0103】
この他にも仮記憶済フラグを用いることで、本記憶用メモリ35bに車両情報を記憶するとしても、「予期せぬ挙動」の検出から所定時間を経過した際に1度だけ本記憶用メモリ35bに車両情報をコピーするようにできる。つまり、所定時間内または所定時間後に、何度も同じ車両情報を本記憶用にコピーすることが無い。そのため、本記憶用メモリ35bに、書き込み速度や書き込み回数が制限されるフラッシュROMや、EEPROMを使用することができる。また、所定時間と仮記憶済フラグとを併用することにより、例えば割り込み処理が多発して記憶制御の処理周期が長くなるような場合であっても、判定結果を受信していなければ所定時間経過後に本記憶用メモリ35bに車両情報をコピーすることができる。
なお、仮記憶用メモリ35aの車両情報用の記憶容量としては、車両情報一つ相当の容量があれば良い。
【0104】
<その他の実施形態>
なお、本発明の実施形態は上述した実施形態に限られるものではなく、次のようにしても良い。前記第1実施形態におけるクルーズECU4がCAN2に送信する判定結果は、記憶制御装置30に限定する(記憶制御装置30を提供先に指定する)ようにしても良い(請求項3)。これによれば、CAN2上の関係の無い別のECUが自身に関係のない判定結果を取得処理せずに済む。
【0105】
又、車内ネットワークに接続された複数のECUが、夫々記憶制御装置及び判定結果提供手段の両方を備え、夫々各ECUの記憶制御装置は自身が判断した「予期せぬ挙動」との判定結果が、他のECUの判定結果提供手段から送信される判定結果と一致するか否かを判断するようにしても良く、このようにすると、各ECU相互に自身の判定結果を送信し合って車両全体(つまり全ECUにとって)の観点でも真に「予期せぬ挙動」であったか否かを判断できるようになる。
【0106】
又、前述の各実施形態では、ドライバがアクセル操作を行っていない、つまりアクセルが全閉であるにも関わらず車両が加速する状態、を予期せぬ挙動の例として説明した。しかし、予期せぬ挙動はこの例に限定されない。例えば、ドライバがアクセルペダルを一定に保っておりエンジン回転数も一定に保たれている定常状態において、ドライバがアクセルペダルを踏み増していないにも関わらずエンジン回転数が上昇する、といった状態を予期せぬ挙動としても良い。この場合、エアバッグECU3は予期せぬ挙動と判定し一時的に不揮発性メモリ34に車両情報を記憶する。しかし、ドライバによってエアコンパネルが操作され、図示しないエアコンECUがコンプレッサを作動させたことが、エンジン回転数の上昇の原因であったとするならば、エアコンECUが回転数の上昇は自身の制御処理が原因である旨の判定結果をCANに送信する。すると、エアバッグECU3は、エアコンECUからの判定結果に基づいて、不揮発性メモリ34に記憶した車両情報を削除、または上書き可能な状態にする。つまり、予期せぬ挙動は、アクセルが全閉であるにも関わらず車両が加速する状態や、エンジン回転数の上昇に限定されるものではない。また、判定結果を出力するECUも、クルーズECU4や、エアコンECUに限定されるものではない。
【0107】
なお、車両情報、制御情報、制御指令が、特許請求の範囲の挙動データに対応する。
また、判定結果が、請求項13の修正指令に対応する。又、エアバッグ3の記憶制御装置30がデータ記憶装置に対応する。
【符号の説明】
【0108】
図面中、1は車両の挙動データ記憶制御システム、2はCAN(車内ネットワーク)、3はエアバッグECU、4はクルーズECU、5はエンジンECU、30は記憶制御装置、31は挙動判断手段、32は記憶制御手段、33は修正手段、40は判定結果提供手段を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、必要な挙動データを効率よく記憶可能な車両の挙動データ記憶制御システム、電子制御装置、データ記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両においては、異常挙動を検出したときにその際の車両の挙動を示す車両情報や制御情報といった挙動データを、事後の解析用としてメモリに記憶する記憶制御装置がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−205368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記記憶制御装置のみで挙動データが所定条件を満たした際に異常挙動であると判定する構成では、異常挙動と判定される原因となった挙動データがドライバの指示に基づき他のECUが行った正常な制御に起因するものであったとしても、異常挙動であるとしてメモリに記憶されてしまう。一具体例としては、加速度が所定値以上となることを記憶制御装置が異常挙動と判定する条件とし、ドライバが追い越しを行う為にアクセルペダルを意図して踏み込んだ場合、記憶制御装置ではないスロットル制御ECUがスロットルを開く制御を行ってドライバが予期した通りの加速を発生させたにも関わらず、記憶制御装置が異常挙動と判定すると考えられる。しかしながら、このようなドライバが予期した正常な挙動までも記憶してしまうと、ドライバにとって予期した挙動(正常挙動)と本来記憶すべきドライバにとって予期せぬ挙動(異常挙動)とが混在してしまい、後に「予期せぬ挙動」の原因が適正に解析できない可能性が考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、「予期せぬ挙動」であるか否かの判定精度を向上し、後々の解析がし易くなるようにメモリに挙動データを記憶させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は次の点を考慮してなされている。記憶制御装置が「予期せぬ挙動」が発生したか否かを判定しメモリに記憶した場合に、当該記憶制御装置が、車内ネットワークを介して他のECUからの判定結果を取得し、前記判定結果が、挙動の変化は当該他のECUがドライバの指示に基づき制御処理を行った結果発生したものであるということを示す内容であれば、前記記憶制御装置でメモリに記憶させた対応する挙動データはドライバの指示に基づき正常に制御された結果を示すものであると判断することができ、当該記憶データを削除すれば、メモリには真に「予期せぬ挙動」に対応した挙動データのみを記憶できると推測できる。
【0007】
この点を考慮した本発明の車両の挙動データ記憶制御システムにおいては、車内ネットワーク上に、自身が取得した挙動データに基づき「予期せぬ挙動」が発生したか否かを判断する挙動判断手段を有すると共に前記「予期せぬ挙動」に関連する挙動データを記憶するメモリを備えた記憶制御装置と、所定の制御対象を制御するためのECUとを接続し、前記ECUが、挙動データに変化が有ったときに当該挙動データの変化が自身が行った制御の結果によるものであるか否かを判定し、当該挙動データの変化が自身が行った制御の結果によるものであると判定された場合には前記車内ネットワークにその判定結果を送信する判定結果提供手段を備え、前記記憶制御装置が「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときにはその時点で前記メモリにその際の挙動データを記憶する記憶制御手段と、前記「予期せぬ挙動」の内容が、前記判定結果に関連するものであるか否かを判断し、判定結果に関連するものであると判断されれば前記メモリで記憶した前記挙動データを削除又は上書き許可する修正手段を備えた構成とした。
【0008】
この構成によれば、記憶制御装置の挙動判断手段が「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときには、一旦、メモリにその際の挙動データを記憶するが、修正手段が、当該「予期せぬ挙動」の内容が他のECUから提供される判定結果に関連するものであると判断すれば、当該記憶した挙動データを削除又は上書き許可できる。この場合、上書き許可とは、読み出しは禁止であって且つ上書きが許可されることをいう。従って、前記メモリ内には、実質、解析に適した挙動データのみが読み出し可能に(利用可能に)記憶されることとなり、予期せぬ挙動の解析を適正に行うことが可能となる。
【0009】
さらに、ECUにおける判定結果提供手段は、入力される挙動データに変化が有ったときに、その変化が自身が行った制御の結果によるものであるか否かを判定し、自身が行った制御の結果によるものであるならばその判定結果を前記車内ネットワークに送信するから、つまり、自身に関する挙動データに変化があったときにのみ判定結果を送信するから、当該車内ネットワークの通信が混み合うことがなく、他のECU間や各挙動センサ及び各ECU間の通信に支障を来すことがない。
【0010】
請求項2の車両の挙動データ記憶制御システムにおいては、前記記憶制御装置及びECUは共通の時間情報を有し、前記記憶装置は前記「予期せぬ挙動」に対応する挙動データに当該時間情報を付帯させ、前記ECUは前記車内ネットワークに送信する判定結果に前記時間情報を付帯させ、前記修正手段は、記憶した挙動データが前記判定結果に関連するものであり且つ該両データの時間情報が一致すれば前記メモリで記憶した前記「予期せぬ挙動」に対応する挙動データを削除又は上書き許可することを特徴としている。
【0011】
この請求項2によれば、前記記憶制御装置が記憶した「予期せぬ挙動」に対応する挙動データとECUの判定結果とが関連するか否かに加えて両データの時間情報も一致するか否かを判断することで前記記憶装置が検出した「予期せぬ挙動」が真に「予期せぬ挙動」であるか否かの判断が正確となる。
【0012】
請求項3の車両の挙動データ記憶制御システムにおいては、前記ECUが車内ネットワークに送信する前記判定結果は、前記記憶制御装置にのみ宛てて送信されるところに特徴を有する。これによれば、車内ネットワーク上の関係の無い別のECUが自身に関係のない判定結果を取得処理せずに済む。
【0013】
請求項4の車両の挙動データ記憶制御システムは、前記ECUが複数あって、この複数のECUに、挙動センサからのデータを入力してアクチュエータを制御する第1のECUと、前記挙動センサからの入力がなくこの第1のECUからのみデータを前記車内ネットワークを介して取得し当該第1のECUに要求を出す第2のECUとが含まる場合には、前記第1のECUが、前記判定結果提供手段を備えるところに特徴を有する。この請求項4によれば、直接アクチュエータを制御する第1のECUから判定結果を送信することになるから、判定結果の提供精度を高めることができる。
【0014】
請求項5の車両の挙動データ記憶制御システムは、前記記憶制御装置が、前記ECUとは別の種類のECUに設けられているところに特徴を有する。これによれば、記憶制御装置における判定手段や記憶制御手段及び修正手段が前記別の種類のECUにより兼用することが可能となる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、メモリは、第1メモリと、第2メモリとを備え、記憶制御手段は、「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときには、第1メモリに挙動データを記憶するとともに、「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に判定結果を受信しなかった場合には、挙動データを第2メモリに書き込み、修正手段は「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に判定結果を受信した場合には、少なくとも第1メモリに記憶した挙動データを削除又は上書き許可の状態にすることを特徴とする。
【0016】
これにより少なくとも第2メモリに、他のECUが行った制御の結果によるものであると判定されなかった挙動データを記憶することができる。
請求項7に記載の発明は、自身が取得した実際の車両挙動を示す実挙動データに基づき「予期せぬ挙動」が発生したか否かを判断し、「予期せぬ挙動」であると判定された場合には実挙動データを記憶する記憶装置が接続されたネットワークに接続される電子制御装置であって、電子制御装置は、電子制御装置が行う制御の制御量に基づき将来の予想挙動データを予想するとともに、予想挙動データが、実挙動データに対して所定値以内の乖離である場合に、ネットワークに対して、実挙動データは該電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を出力することを特徴とする。
【0017】
これによれば電子制御装置は、自身がドライバの指示に基づいて行った制御処理に起因して挙動が変化した場合、その旨をネットワークに接続された他の装置に対して送信することができる。
【0018】
請求項8に記載の発明は、自身が実挙動データを記憶するメモリを備え、予想挙動データが、実挙動データに対して所定値よりも乖離している場合には、実挙動データをメモリに記憶することを特徴とする。
【0019】
これによれば、電子制御装置自身でも、自身がドライバの指示に基づいて行った制御処理とは異なる挙動変化が発生した場合、その実挙動データを記憶することができる。
請求項9に記載の発明は、ネットワークを介して、実挙動データは該電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を受信すると、メモリに実挙動データを記憶している場合には、当該メモリから実挙動データを削除、又は、上書き可能な状態に変更することを特徴とする。
これにより、ドライバの指示に基づいて別の電子制御装置が正常に制御を行ったにも関わらず、その結果発生した挙動データを電子制御装置に無駄に記憶することを防止できる。
【0020】
請求項10に記載の発明は、ネットワークに対して、実挙動データは電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を出力する際に、さらに実挙動データに対応する時間情報を付帯して出力することを特徴とする。
これにより前述の請求項2と同様の効果を奏することができる。
【0021】
請求項11に記載の発明は、メモリは、第1メモリと、第2メモリとを備え、電子制御装置は、予想挙動データが実挙動データに対して所定値よりも乖離していると判断したときには、第1メモリに実挙動データを記憶するとともに、乖離の発生から所定時間以内に当該実挙動データは該電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を受信しなかった場合には、当該実挙動データを前記第2メモリに書き込み、予想挙動データが実挙動データに対して所定値よりも乖離していると判断したときから所定時間以内に実挙動データは電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を受信した場合には、少なくとも第1メモリに記憶した実挙動データを削除又は上書き許可の状態にすることを特徴とする。
【0022】
これにより第2メモリに、この第2メモリを備える電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因しない実挙動データを記憶することができる。
請求項12に記載の発明は、アクチュエータを制御する制御指令を出力し、かつ、実際に発生した車両挙動を示す実挙動データが自身の制御指令によるものである場合には修正指令を出力する電子制御装置が接続された車両用ネットワークに接続される、データ記憶装置であって、データ記憶装置は、メモリを備え、実挙動データに基づき「予期せぬ挙動」が発生したと判定した場合にはメモリに実挙動データを記憶し、修正指令を受信した場合には、当該修正指令に対応する実挙動データをメモリから削除、又は、上書き可能な状態に変更することを特徴とする。
【0023】
これにより電子制御装置がドライバの指示に基づいて行った制御処理に起因して挙動が変化した場合、その旨を修正指令により受け取ることで、データ記憶装置はドライバの指示に基づいて行った制御処理に起因して発生した挙動データを無駄にメモリに記憶することがない。
【0024】
請求項13に記載の発明は、メモリは、第1メモリと、第2メモリとを備え、データ記憶装は、「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときには、第1メモリに実挙動データを記憶するとともに、「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に修正指令を受信しなかった場合には、実挙動データを第2メモリに書き込み、「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に修正指令を受信した場合には、少なくとも第1メモリに記憶した実挙動データを削除又は上書き許可の状態にすることを特徴とする。
これにより第2メモリに、車両用ネットワークに接続された電子制御装置の制御に起因しない実挙動データを記憶することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、車両の挙動データ記憶制御システムの機能ブロック図
【図2】クルーズECUの制御内容を示すフローチャート
【図3】記憶制御装置の制御内容を示すフローチャート(その1)
【図4】記憶制御装置の制御内容を示すフローチャート(その2)
【図5】本発明の第2実施形態を示す図2相当図
【図6】図4相当図
【図7】本発明の第3実施形態を示し、車両の挙動データ記憶制御システムの機能ブロック図
【図8】本発明の第4実施形態を示し、車両の挙動データ記憶制御システムの機能ブロック図
【図9】車間制御ECUの制御内容を示すフローチャート
【図10】記憶制御装置の制御内容を示すフローチャート(その3)
【図11】本発明の第5実施形態を示し、車両の挙動データ記憶制御システムの機能ブロック図
【図12】記憶制御装置の制御内容を示すフローチャート(その4)
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図4を参照して説明する。第1実施形態の車両の挙動データ記憶制御システム1は、車内ネットワークである例えばCAN(Controller Area Network)2を介して、いずれも電子制御装置であるエアバッグECU3と、クルーズECU4と、エンジンECU5とを接続している。
【0027】
エアバッグECU3は、CPU、ROM、RAM(いずれも図示せず)を備えたマイクロコンピュータ3aを備えて構成されており、前記エアバッグECU3のマイクロコンピュータ3aは、周知の通り、車体の衝突が検知されたときに、エアバッグを膨張させる着火装置(制御対象)を制御するエアバック制御手段3bを備えて構成されている。
【0028】
さらに、前記マイクロコンピュータ3aは記憶制御装置30も兼用しており、この記憶制御装置30は、マイクロコンピュータ3aのソフトウエア構成によって構成される後述する挙動判断手段31、記憶制御手段32及び修正手段33を含み、さらに当該マイクロコンピュータ3aに接続されたメモリとしての不揮発性メモリ34を含んで構成されている。前記不揮発性メモリ34は、データ書き換え可能なフラッシュメモリなどから構成される。
【0029】
さらに前記エアバッグECU3は、エンジンECU5からCAN2を介してアクセル開度センサ6及び車速センサ7からのセンサ信号が与えられるようになっている。
クルーズECU4は、図示はしないが、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータを備えて構成されており、図示しない制御開始スイッチがオンされると、クルーズ制御を開始可能状態にする。このクルーズ制御では、前記車速センサ7からのセンサ信号などに基づいて、制御上の演算処理を行い、制御対象であるエンジンECU5に定速走行制御や加減速制御のための要求指令を出す。また、このクルーズECU4は、不揮発性メモリ44を有する記憶制御装置41としての機能も備えており、さらに記憶制御装置41には後述する判定結果提供手段40も備えている。
【0030】
エンジンECU5では、各ECUから送られる前記要求指令に基づき、前記アクセル開度センサ6や車速センサ7からのセンサ信号に応じて、制御対象であるスロットルバルブ(アクチュエータ)の開閉量を調整する。なお、クルーズECU4は、図示しない変速機やブレーキ装置なども制御する。
【0031】
さて、上記クルーズECU4は、図2に示す処理を行う。図2の処理は、ドライバからの指示に基づき車速を目標値に近づけるクルーズ制御処理と、車速の変化率が自身のクルーズ制御処理に起因するものであるか否かを判定する判定処理と、判定処理の結果に基づき判定結果を出力する、又は、クルーズECU4内で車両情報・制御情報を記憶する後処理とからなる。ここで車両情報とは各センサの検出値などに基づく自ECUに入力されて来る情報であって、制御情報とはアクチュエータや他ECUに対する制御指令といった自ECUから出力する情報である。
【0032】
なお、上記判定処理で判定対象とされる「車速の変化率が自身のクルーズ制御処理に起因する」とは、「クルーズECU4自身が予期した通りの変化率が得られる」と同義である。逆の言い方をすれば、あるECUにとっての予期せぬ挙動とは「そのECU自身が有する情報からはその原因が特定できない挙動」を示す。ここで、ECU自身が有する情報とは、他のECUに対して制御指令を出力する制御処理を行うECUの場合には、制御指令、及び、センサ情報、及び、他ECUからの判定結果である。クルーズECU4は制御処理を行うECUであるので、制御指令が後述する要求指令に相当し、センサ情報が車速センサ7からのセンサ信号に相当する。
【0033】
一方、他のECUに対して制御指令を出力するような制御処理を行わないECUの場合には、ECU自身が有する情報とは、センサ情報、及び、他ECUからの判定結果である。前述のエアバッグECU3の場合には、センサ情報が車速センサ7からのセンサ信号に相当する。
【0034】
再び、図2の処理の説明に戻る。この図2の処理は、Δt秒(例えばΔt=1秒)毎といった所定周期で行われる。また、ドライバからは、制御開始スイッチを操作する際、または、操作から所定時間内に目標車速が入力される構成となっている。なお簡略化のため、図2において目標車速は、ドライバが制御開始スイッチをON状態に操作した際に設定されるものとする。
【0035】
図2のステップS1では、制御開始スイッチの状態がOFFからONに遷移したか否かを判定する。もし、ドライバにより制御開始スイッチが操作され、ON状態になったのであれば、ステップS2に進む。一方、ドライバにより制御開始スイッチが操作されず、OFF状態のままであれば、ON状態になるまで待つ。
【0036】
ステップS1より続くステップS2では、経過カウンタtを初期化(=0にする)する。なお、経過カウンタtとは、制御開始スイッチの状態がONに遷移したタイミングを基準(t=0)とした時刻、と言い換えることもできる。
【0037】
ステップS3では、制御開始スイッチがON状態のままであるか否かを判定する。制御開始スイッチがON状態であるならステップS4へ進み、制御開始スイッチがON状態でないならステップS1へ戻る。
【0038】
ステップS4では、クルーズ制御処理を行う。クルーズ制御処理とは、ドライバが設定した目標車速に車速を近づける制御である。その一例は、ドライバが設定した目標車速が現在の車速よりも高ければエンジントルクを増加させる要求指令を、ドライバが設定した目標車速が現在の車速よりも低ければエンジントルクを減少させる要求指令をエンジンECU5に出力する制御である。
【0039】
ステップS4より続くステップS5では、要求指令と、現在の車速V(t)とから、Δt秒後の予想車速VE(t+1)を演算する。なお、この予想車速VE(t+1)とは、ドライバの指示に基づいてクルーズECU4が正常に制御をおこない、かつ、突然斜度が変わった等の外乱がない、という前提で、予想される所定時間Δt後の状態である。
【0040】
ステップS5より続くステップS6では、予想変化率RE(t+1)を演算する。ここで、予想変化率RE(t+1)とは、現在時刻tから所定時間Δtだけ経過した時点(t+1)での予想車速VE(t+1)と、現在車速V(t)との差である。換言すれば、予想変化率RE(t+1)とは、現在時刻tから所定時間Δt内に、加減速する度合いを示している。
【0041】
ステップS6より続くステップS7では、制御開始スイッチの状態がONに遷移したタイミングを基準(t=0)として、現在の経過カウンタtが0よりも大きいか否かを判定している。換言すれば、制御開始スイッチの状態がONに遷移したタイミングから、所定時間Δtを経過したか否かを判定している。そして、現在の経過カウンタtが0よりも大きいと判定された場合はステップS8へ進み、現在の経過カウンタtが0よりも大きくないと判定された場合はステップS13へ進む。つまり、このステップS7は、制御開始スイッチの状態がONに遷移した直後の1回目は、後述する実変化率を演算しない為に設けられた分岐処理である。なお、ステップS13では経過カウンタtを1つ進め(インクリメントし)、その後ステップS3へ戻る。
【0042】
ステップS8では、現在の車速V(t)からΔt前の車速V(t−1)を減ずることにより実変化率RR(t)を演算する。なお、ステップS8の処理は、経過カウンタtが0よりも大きい場合(言い換えると経過カウンタtが1以上)に実行されるため、車速V(t−1)は、必ずクルーズ制御の開始以降の車速となる。
【0043】
ステップS8より続くステップS9では、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満(所定値内の乖離)であるか否かを判定する。もし、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満であるならばステップS10へ進み、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満でない(所定値よりも乖離)ならばステップS12へ進む。ここで、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満である、とは、Δt前に出力した要求指令に基づいてクルーズ制御が実行された結果、その際(Δt前)にクルーズECU4が予想した通りの挙動が発生していることを示す。一方で、予想変化率と実変化率の差分の絶対値が判定値未満でない、とは、Δt前に要求指令を出力したが、その際(Δt前)にクルーズECU4が予想したものとは異なる挙動、つまり予期せぬ挙動が発生していることを示す。
【0044】
そこで、ステップS10では、クルーズECU4が予期(予想)した通りの挙動が発生しているため、実変化率RR(t)のランク分けを実行する。
このランク分けは、「+1」、「+2」、「+3」、「−1」、「−2」、「−3」のランクに分けるものであり、ランク「+1」は、5km/h以上〜10km/h未満の増速変化、ランク「+2」は、10km/h以上〜15km/h未満の増速変化、ランク「+3」は15km/h以上の増速変化であり、また、ランク「−1」は、5km/h以上〜10km/h未満の減速変化、ランク「−2」は、10km/h以上〜15km/h未満の減速変化、ランク「−3」は15km/h以上の減速変化である。
【0045】
ステップS10より続くステップS11では、このランク分けの結果を判定結果としてCAN2上に送信する(判定結果提供手段40)。そして、ステップS13で経過カウンタtを1つ進め(インクリメントし)、その後ステップS3へ戻る。
【0046】
一方、ステップS12では、クルーズECU4にとって予期せぬ挙動が発生しているため、後述する図4と同様のデータ処理を行う。そして、ステップS12にて、予期せぬ挙動が他ECUの制御に起因するものであるか否かを判定し、他ECUの制御に起因するものでない場合には、図示しない不揮発性RAMに車両情報や制御情報を記憶し、ステップS13では経過カウンタtを1つ進め(インクリメントし)、その後ステップS3へ戻る。
【0047】
クルーズECU4は、上述のようにクルーズ制御を実行中に予期せぬ挙動が発生したか否かを判定し、クルーズECU4にとって予期した挙動であった場合にはその際の実変化率RR(t)をランク分けし、このランク分けした結果を判定結果としてCAN2上に送信する。つまり、速度が変化(実変化率)するという挙動の変化は、クルーズECU4自身の制御に起因する、ということを他のECUに対して知らせるべく、判定結果を出力するのである。
【0048】
又、前記エアバッグECU3は、図3、図4に示す記憶制御を実行する。図3はメインルーチンを示している。まず、削除待ち時間についてカウンタを所定時間例えば5秒に初期化する(ステップT1)。そして、アクセル開度センサ6及び車速センサ7からのセンサ信号をCAN2を介して取得し(ステップT2)、データ処理を行う(ステップT3)。
【0049】
このデータ処理の制御内容は図4にサブルーチンとして示している。まず、車速センサ7からのセンサ情報に基づき、Δt前からの車速の増速又は減速の変化率を算出する(ステップU1)。そして、この変化率が、「予期せぬ挙動」判定のための所定判定条件(例えば、アクセル開度が「0」で、且つ変化率が、所定値(増速方向で5km/h以上)であるか否かを判断する(ステップU2、挙動判断手段31)。
【0050】
変化率が「予期せぬ挙動」を示すものであれば、削除待ち時間カウンタによるカウントを開始し(ステップU3)、そして車速変化率(車両情報)をランク分けして不揮発性メモリ34に記憶する(ステップU4、記憶制御手段32)。この場合の車速変化率のランク分けは、「+1」、「+2」、「+3」のランクに分けるものであり、ランク「+1」は、5km/h以上〜10km/h未満の増速変化、ランク「+2」は、10km/h以上〜15km/h未満の増速変化、ランク「+3」は15km/h以上の増速変化である。なお、ステップU4の処理は、増速変化が発生している際にのみ行われるものであるため、増速変化に対応したランクに分けられている。
【0051】
なお、上記不揮発性メモリ34における車両情報の記憶領域は例えばデータ3個分としており、最も古い記憶データに上書きして記憶させる。
そしてCAN2を介して他のECUから判定結果を受信したか否かを判断し(ステップU5)、受信していれば、当該判定結果の内容(前述のステップS10でのランク)と前記記憶データの内容(前述のステップU4でのランク)と一致するか否かを判断し(ステップU7)、同じであれば、前記記憶した車両情報を削除する(ステップU8)。ステップU7とステップU8とが修正手段33に相当する。
【0052】
前記ステップU5で他のECUから判定結果を受信していなければ(同ステップU5の「NO」)、このフローチャートを抜けてメインルーチンに戻る。つまり、前記記憶した車両情報は削除せず、読み出し可能とする。このメインルーチンに戻ると、前述のステップT2を実行したうえで、このサブルーチンのステップU1に移行する。次のステップU2で「NO」、つまり「予期せぬ挙動」と判定されなければ、ステップU6で削除待ち時間カウンタのカウント時間が所定時間である5秒未満か否かの判断をし、5秒以上であれば何もせずにメインルーチンに戻る。5秒未満であれば(「YES」)、ステップU5に移行する。
【0053】
このように記憶制御装置30において、「予期せぬ挙動」であると判定されたときには、その際の車両情報(速度変化率)を不揮発性メモリ34に記憶し、そして所定時間のうちに、他のECUから他のEUCにとっては予期された挙動であったことを示す判定結果を受ければ(提供があれば)、記憶制御装置30にとって「予期せぬ挙動」に対応する情報として記憶した車両情報を削除する。なお、他のEUCにとって予期された挙動とは、ドライバからの指示に基づき他のEUCが自ら行った制御処理の結果得られるはずの挙動が現れた、ということである。
【0054】
上述した実施形態によれば、記憶制御装置30の挙動判断手段31が「予期せぬ挙動」であると判断したときには、一旦、不揮発性メモリ34にその際の車両情報を記憶するが、当該「予期せぬ挙動」がクルーズECU4によって実行された制御処理に起因するものであれば、実際にはドライバからの指示に基づき制御処理がなされただけであって車両全体としては正常であると判断して、当該記憶した「予期せぬ挙動」に対応する情報として記憶した車両情報を削除するから、不揮発性メモリ34内には、実質、解析に適した車両情報のみが記憶されることとなり、予期せぬ挙動の解析を適正に行うことが可能となる。つまり、最終的に不揮発性メモリ34には、ドライバからの指示に基づかない、つまり車両内の正常なECUのいずれの制御処理にも起因しない挙動(車両内のいずれのECUも予期せぬ挙動)に対応した車両情報が記憶されることになる。
【0055】
さらに、クルーズECU4における判定結果提供手段40は、クルーズECU4自身の制御処理に起因する挙動の変化が有ったときに当該制御処理に対応する判定結果をCAN2に送信するから、常時決められた時間周期で自身の制御処理に起因する判定結果であったか無かったかを送信する場合に比べて、当該CAN2の通信が混み合うことがなく、他のECU間や各挙動センサ及び各ECU間の通信に支障を来すことがない。
【0056】
なお、前記ステップU8における削除処理は、上書き許可処理としても良い。この場合、上書き許可処理とは、読み出しは禁止であって且つ上書きは許可する処理である。従って、上書き許可された車両情報が「予期せぬ挙動」に対応する車両情報として使用されることはない。
【0057】
又、この実施形態によれば、記憶制御装置30を、クルーズECU4及びエンジンECU5とは別の種類のECUであるエアバッグECU3に設けたから、記憶制御装置30における挙動判断手段31や記憶制御手段32及び修正手段33を当該エアバッグECU3により兼用することができる。
【0058】
ただし、この記憶制御装置30は各ECU3、4、5とは別に単独に設ける構成としても良い。
又、前記第1実施形態では、「予期せぬ挙動」に対応する車両情報をランク分けし、クルーズECU4から送信する判定結果もランク分けしたが、どちらか一方のデータをランク分けし、他方のデータはランク分けせず、ランク分けしたデータの範囲内に、他方のデータが入るか否かをもって両データが一致するか否かを判断するようにしても良い。更に、両データをランク分けしなくても両データが一致するか否かの判断は可能である。
【0059】
又、不揮発性メモリ34に記憶する「予期せぬ挙動」に対応する車両情報はランク分けしないデータ値として記憶し、送信されて来る判定結果と比較するときにランク分けしても良い。
【0060】
また、エアバッグECU3に設けた記憶制御装置30を例に説明を行ったため、不揮発性メモリ34には制御情報ではなく車両情報を記憶するとした。しかし、言うまでも無く他ECUに対して制御指令を出力するクルーズECU4の記憶制御装置41の不揮発性メモリ44には、車両情報だけでなく、自身がエンジンECU5に対して出力した要求指令(制御指令)を記憶するようにしても良い。また、制御処理を行う際の学習値といった制御情報を記憶するようにしても良い。
【0061】
また、図2で示したクルーズECU4の処理は、ステップS4のクルーズ制御がなされる度にステップS9の予期せぬ挙動であるか否かの判定を行っていたが、必ずしもステップS4のクルーズ制御がなされる度にステップS9の判定を行う必要はない。数回に1度、ステップS9の判定が行われるようにしても良い。
【0062】
また、図2で示したクルーズECU4の処理は、特にステップS9で予想変化率と実変化率の差分を求めていたが、単に、前回周期(t−1)にステップS5で演算した予想車速VE(t)と、現在の車速VE(t)との差分を求めても良い。さらには、予想変化率を予想車速VE(t+1)から現在車速V(t)を減じたものをΔtで割り算した値とし、実変化率も車速V(t)から車速V(t−1)を減じたものをΔtで割ったものとしても良い。また、必ずしも現在の車速と前回周期の車速との引き算をする必要もなく、現在から所定時間前の車速から現在の車速を減じ、これを所定時間で割り算すれば、予想変化率と実変化率とが異なる時間幅の変化率であってもこれらを比較することができる。同様に、クルーズECU4の判定結果(つまり実変化率)と、エアバッグECU3の変化率とは、一部の時間が重複する範囲であれば異なる時間幅の変化率であって良い。
【0063】
<第2実施形態>
次に、図5及び図6は第2実施形態を示している。この第2実施形態では、記憶制御装置30とクルーズECU4とが共通の時間情報を有しており、判定結果に時間情報を付帯させた点が第1実施形態と異なる。以下、前記第1実施形態と異なる部分について説明する。図5に示すように、クルーズECU4が行う制御において、ステップS10´では、ランク分けされた判定結果に時間情報を付帯させる。そして、ステップS11´では、この時間情報を付帯した判定結果をCAN2に送信する。
【0064】
図6に示すように、記憶制御装置30が行うデータ処理の制御において、ステップU4´では、「予期せぬ挙動」に対応したランク分けした車両情報に時間情報を付帯させて記憶する。さらにステップU7´では、両データの内容が一致し且つ両時間情報が一致すると判断すれば、ステップU8で、u4´において記憶した車両情報を削除する。
【0065】
この第2実施形態によれば、前記記憶制御装置30が記憶した「予期せぬ挙動」に対応する車両情報とクルーズECU4の提供データである判定結果との内容が一致するか否かに加えて両データの時間情報も一致するか否かを判断することでエアバッグECU3にとっての「予期せぬ挙動」が、車両全体(つまり全ECUにとって)の観点でも真に「予期せぬ挙動」であるか否かを判断することができ、ひいては車両全体の視点で「予期せぬ挙動」であったか否かの判断を正確に行うことができる。
【0066】
また、不揮発性メモリ34へ記憶する車両情報に時間情報を付帯させるとともに、他ECUから受信した判定結果(車両情報)にも時間情報を付帯させることで、車両情報と判定結果とを同じ時間情報同士で比較することができる。この場合、不揮発性メモリ34に同じ車両情報が複数回記憶されているような状況においても、判定結果に対応する車両情報を正確に削除することが可能となる。
【0067】
<第3実施形態>
図7は第3実施形態を示しており、次の点が第1実施形態と異なる。記憶制御装置30以外のECUとして、第1実施形態と同様に、複数のECU、つまりクルーズECU4及びエンジンECU5を備えているが、エンジンECU5が請求項4でいう第1のECUに相当し、クルーズECU4が第2のECUに相当する。つまり、エンジンECU5は、挙動センサであるアクセル開度センサ6及び車速センサ7からのデータ(センサ信号)を入力してアクチュエータであるスロットバルブを制御するものであり、クルーズECU4は、前記挙動センサである車速センサ7からの入力がなくエンジンECU5からのみ車速センサ7のデータ(センサ信号)を前記CAN2を介して取得し当該エンジンECU5に要求を出すものである。
【0068】
この場合には、クルーズECU4には、前記記憶制御装置41、不揮発性メモリ44、判定結果提供手段40は設けず、前記エンジンECU5に、前記記憶制御装置41と同様の記憶制御装置51、不揮発性メモリ44と同様の不揮発性メモリ54、前記判定結果提供手段40と同様の判定結果提供手段50を備え、このエンジンECU5から判定結果をCAN2に送信している。ここでエンジンECU5は、クルーズECU4や他のECU(例えばエアコンECU)からのトルク要求指令を鑑みて、図示しない電子制御スロットルの目標開度を決定し、電子制御スロットルに制御指令を出力する。
【0069】
このためエンジンECU5は、電子制御スロットルに出力した制御指令から予想される所定時間後の車速から予想変化率を演算している。一方で、車速センサ7からのセンサ信号に基づき、所定時間内の実変化率を演算し、これを先の予想変化率と比較することにより、エンジンECU5にとって予期せぬ挙動が発生しているか否かを判定している。
この第3実施形態によれば、直接アクチュエータを制御するエンジンECU5から判定結果を送信するから、判定結果の提供精度を高めることができる。
【0070】
<第4実施形態>
次に図8〜10を用いて、電子制御装置である車間制御ECU8が車内ネットワークのCAN2に接続されている場合の実施例について示す。
車間制御ECU8は、ステレオカメラ9からの画像情報に基づき、前方を走行している車両までの車間距離を検出する。そして、その車間距離が所定値よりも短い場合には、衝突を回避するために、同じくCAN2に接続されたブレーキECU10に対して制動指令を出力することでブレーキを作動させるものである。また、前述のクルーズECUと同様に、記憶制御装置41を備えている。
【0071】
ブレーキECU10は、図示しないブレーキペダルの踏量を検出するブレーキペダルセンサ11と電気的に接続されているとともに、ブレーキ踏量をCAN2に出力する。またブレーキECU10は、ABSに代表されるようなブレーキフルードの加圧源(ポンプ)、減圧弁、増圧弁等を備えたハイドロリックユニットの制御も行う。このようにブレーキECU10は、ハイドロリックユニットを介して各車輪のブレーキキャリパのピストンへの油圧制御を行うため、図8においては便宜上ブレーキECU10が各輪ブレーキ12と接続されているように表記している。また、車間制御ECU8から制動指令を受信した場合には、ブレーキECU10はハイドロリックユニットを介して各輪ブレーキ12を作動させ車両を減速させる。
【0072】
次に、車間制御ECU8が行う制御ロジックについて図9を用いて説明を行う。図9のステップS1aでは、ステレオカメラ9からの画像情報に基づき得られた車間距離が所定値以内であるか否かを判定する。もし、車間距離が所定値以下であるのであれば、ステップS2に進む。一方、車間距離が所定値以下でないのであれば、所定値以下になるまで待つ。
【0073】
ステップS1より続くステップS2では、経過カウンタtを初期化(=0にする)する。なお、経過カウンタtとは、車間距離が所定値以下になったタイミングを基準(t=0)とした時刻、と言い換えることもできる。
【0074】
ステップS3aでは、車間距離が所定値以内であるか否かを判定する。車間距離が所定値以下であるのであれば、ステップS4aへ進み、車間距離が所定値以下でないならステップS1aへ戻る。
【0075】
ステップS4aでは、ブレーキ制御を行う。ブレーキ制御とは、前述のようにブレーキECU10に対して制動指令を出力することで、ドライバがブレーキペダルを踏んでいなかったとしても車両を強制的に減速させる制御である。
【0076】
ステップS4aより続くステップS5aでは、制動指令と、現在の車速V(t)とから、Δt秒後の予想車速VE(t+1)を演算する。なお、この予想車速VE(t+1)とは、ドライバの指示に基づいて車間制御ECU8が正常に制御をおこない、かつ、突然斜度が変わった等の外乱がない、という前提で、予想される所定時間Δt後の状態である。
【0077】
ステップS5aより続くステップS6では、予想変化率RE(t+1)を演算する。ここで、予想変化率RE(t+1)とは、現在時刻tから所定時間Δtだけ経過した時点(t+1)での予想車速VE(t+1)と、現在車速V(t)との差である。換言すれば、予想変化率RE(t+1)とは、現在時刻tから所定時間Δt内に、減速する度合いを示している。
【0078】
ステップS6より続くステップS7では、車間距離が所定値以下でない状態から車間距離が所定値以下になったタイミングを基準(t=0)として、現在の経過カウンタtが0よりも大きいか否かを判定している。そして、現在の経過カウンタtが0よりも大きいと判定された場合はステップS8へ進み、現在の経過カウンタtが0よりも大きくないと判定された場合はステップS13へ進む。つまり、このステップS7は、車間距離が所定値以下に変化した直後の1回目は、後述する実変化率を演算しない為に設けられた分岐処理である。なお、ステップS13では経過カウンタtを1つ進め(インクリメントし)、その後ステップS3へ戻る。
【0079】
ステップS8では、現在の車速V(t)からΔt前の車速V(t−1)を減ずることにより実変化率RR(t)を演算する。なお、ステップS8の処理は、経過カウンタtが0よりも大きい(言い換えると経過カウンタtが1以上)で実行されるため、車速V(t−1)は、必ず車間距離が所定値以下になって以降の車速となる。
【0080】
ステップS8より続くステップS9では、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満であるか否かを判定する。もし、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満であるならばステップS10aへ進み、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満でないならばステップS12へ進む。ここで、予想変化率RE(t)と実変化率RR(t)の差分の絶対値が判定値未満である、とは、Δt前に出力した制動指令に基づいてブレーキ制御が実行された結果、その際(Δt前)に車間制御ECU8が予想した通りの挙動が発生していることを示す。一方で、予想変化率と実変化率の差分の絶対値が判定値未満でない、とは、Δt前に制動指令を出力したが、その際(Δt前)に車間制御ECU8が予想したものとは異なる挙動、つまり予期せぬ挙動が発生していることを示す。
【0081】
そこで、ステップS10aでは、車間制御ECU8が予期(予想)した通りの挙動が発生しているため、実変化率RR(t)のランク分けを実行する。
このランク分けは「−1」、「−2」、「−3」のランクに分けるものであり、ランク「−1」は、5km/h以上〜10km/h未満の減速変化、ランク「−2」は、10km/h以上〜15km/h未満の減速変化、ランク「−3」は15km/h以上の減速変化である。
【0082】
ステップS10aより続くステップS11では、このランク分けの結果を判定結果としてCAN2上に送信する(判定結果提供手段40)。そして、ステップS13で経過カウンタtを1つ進め(インクリメントし)、その後ステップS3へ戻る。
【0083】
一方、ステップS12では、車間制御ECU8にとって予期せぬ挙動が発生しているため、後述する図10と同様のデータ処理を行う。そして、ステップS12にて、予期せぬ挙動が他ECUの制御に起因するものであるか否かを判定し、他ECUの制御に起因するものでない場合には、図示しない不揮発性RAMに車両情報や制御情報を記憶し、ステップS13では経過カウンタtを1つ進め(インクリメントし)、その後ステップS3aへ戻る。
【0084】
車間制御ECU8は、上述のように車間距離の制御を実行中に予期せぬ挙動が発生したか否かを判定し、車間制御ECU8にとって予期した挙動であった場合にはその際の実変化率RR(t)をランク分けし、このランク分けした結果を判定結果としてCAN2上に送信する。つまり、速度が変化(実変化率)するという挙動の変化は、車間制御ECU8自身の制御に起因する、ということを他のECUに対して知らせるべく、判定結果を出力するのである。
【0085】
又、前記エアバッグECU3は、図3に示した記憶制御を実行するが、ステップT3のデータ処理においては、前述の図4の処理とは別に、図10に示す処理を行う。なお、図4の処理が完了した後に引き続いて図10の処理を行っても良いし、その逆の順番であっても良い。
【0086】
図10に示すデータ処理のサブルーチンでは、まず、車速センサ7からのセンサ情報に基づき、Δt前からの車速の増速又は減速の変化率を算出する(ステップU1)。そして、この変化率が、「予期せぬ挙動」判定のための所定判定条件である、ブレーキ踏量が「0」で、且つ変化率が所定値(加速方向で5km/h)以上であるか否かを判断する(ステップU2a、挙動判断手段31)。
【0087】
変化率が「予期せぬ挙動」を示すものであれば、削除待ち時間カウンタによるカウントを開始し(ステップU3)、そして車速変化率(車両情報)をランク分けして不揮発性メモリ34に記憶する(ステップU4、記憶制御手段32)。この場合の車速変化率のランク分けは、「−1」、「−2」、「−3」のランクに分けるものであり、ランク「−1」は、5km/h以上〜10km/h未満の減速変化、ランク「−2」は、10km/h以上〜15km/h未満の減速変化、ランク「−3」は15km/h以上の減速変化である。なお、ステップU4の処理は、減速変化が発生している際にのみ行われるものであるため、減速変化に対応したランクに分けられている。
【0088】
なお、上記不揮発性メモリ34における車両情報の記憶領域は例えばデータ3個分としており、最も古い記憶データに上書きして記憶させる。
そしてCAN2を介して他のECUから判定結果を受信したか否かを判断し(ステップU5)、受信していれば、当該判定結果の内容(前述のステップS10でのランク)と前記記憶データの内容(前述のステップU4でのランク)と一致するか否かを判断し(ステップU7)、同じであれば、前記記憶した車両情報を削除する(ステップU8)。ステップU7とステップU8とが修正手段33に相当する。
【0089】
前記ステップU5で他のECUから判定結果を受信していなければ(同ステップU5の「NO」)、このフローチャートを抜けてメインルーチンに戻る。つまり、前記記憶した車両情報は削除せず、読み出し可能とする。このメインルーチンに戻ると、前述のステップT2を実行したうえで、このサブルーチンのステップU1に移行する。次のステップU2で「NO」、つまり「予期せぬ挙動」と判定されなければ、ステップU6で削除待ち時間カウンタのカウント時間が所定時間である5秒未満か否かの判断をし、5秒以上であれば何もせずにメインルーチンに戻る。5秒未満であれば(「YES」)、ステップU5に移行する。
【0090】
このように「予期せぬ挙動」であるか否かを判定する条件は、第1実施形態や第2実施形態で示したアクセル開度が「0」であるか否かに限定されるものではなく、ブレーキ踏量に基づいたものであっても良い。また、「予期せぬ挙動」とは、例えば加速といった唯一の挙動に限ったものではなく、加速又は減速といったように複数の「予期せぬ挙動」が存在しても良い。
【0091】
<第5実施形態>
次に図11及び図12は第5実施形態を示している。メモリ35には、第1メモリとしての仮記憶用メモリ35aと、第2メモリとしての本記憶用メモリ35bとが含まれている点で、第1実施形態と異なる。前記仮記憶用メモリ35aは例えばSRAMなどの劣化の小さい揮発性メモリから構成され、本記憶用メモリ35bは、電源がオフしても記憶内容を保持できるフラッシュメモリなどの不揮発性メモリから構成されている。なお、不揮発性メモリの所定領域を第1メモリとして構成し、他の所定領域を第2メモリとして構成しても良い。
【0092】
図12で示す処理は、エアバッグECU3によりなされる記憶制御のサブルーチンである。すなわち図3を用いて前述したメインルーチンから呼び出されて実行されるものであって、制御処理としては図12が第1実施形態の図4に対応する。
【0093】
ステップV1では、図4のステップU1と同様に、車速変化率を演算する。ステップV1より続くステップV2では、図4のステップU2と同様に、この変化率が、「予期せぬ挙動」判定のための所定判定条件(例えば、アクセル開度が「0」で、且つ変化率が、所定値(増速方向で5km/h以上)であるか否かを判断する。そして、変化率が「予期せぬ挙動」判定のための所定判定条件を満たすと判定された場合にはステップV3へ進み、満たさないと判定された場合にはステップV6へ進む。
【0094】
ステップV3では、図4のステップU3と同様に、変化率が「予期せぬ挙動」を示すものであれば、削除待ち時間カウンタによるカウントを開始する。ステップV3より続くステップV4では、車速変化率(車両情報)をランク分けして、仮記憶用メモリ35aに記憶する(既に過去の車両情報が記憶されている場合には上書きして記憶)。ステップV4より続くステップV5では、仮記憶用メモリ35aに設けられた仮記憶済フラグをONにする。ステップV5より続くステップV8では、クルーズECU4といった他のECUから判定結果を受信しているか否かに基づく分岐判定を行う。そして、他のECUから判定結果を受信していると判定された場合にはステップV9へ進み、他のECUから判定結果を受信していないと判定された場合には本サブルーチンを終了する。
【0095】
一方、ステップV2にて、変化率が「予期せぬ挙動」判定のための所定判定条件を満たさないと判定された場合に進むステップV6では、前述の仮記憶済フラグがONであるか否かに基づく分岐判定を行う。もし、仮記憶済フラグがONであると判定された場合にはステップV7へ進み、仮記憶済フラグがONでない(=OFFである)と判定され場合には本サブルーチンを終了する。
【0096】
ステップV7では、削除待ち時間カウンタが所定時間未満であるか否かに基づく分岐判定を行う。もし、削除待ち時間カウンタが所定時間未満であると判定された場合には、ステップV8へ進み、削除待ち時間カウンタが所定時間未満でない(つまり削除待ち時間カウンタが所定時間を越えた)と判定された場合には、ステップV11へ進む。
【0097】
ステップV11では、削除待ち時間カウンタが所定時間を越えるまで、仮記憶用メモリ35bに記憶した「予期せぬ挙動」に対応する車両情報が、他のECUによる正常な制御処理に起因する車両情報であった旨を示す判定結果を受信しなかったとして、仮記憶用メモリ35bに記憶した車両情報(一例としてランク分けされた車速変化率)を本記憶用メモリ35bにコピー(又は移動)する。また更に、次に「予期せぬ挙動」と判定されるまでステップV11の処理が行われない様に、仮記憶済フラグをOFFに設定する。
【0098】
削除待ち時間カウンタが所定時間未満であると判定された場合(ステップV7で肯定判定)、又は、ステップV5より進むステップV8では、他ECUから判定結果を受信したか否かに基づく分岐判定を行う。もし、他ECUから判定結果を受信したと判定された場合にはステップV9へ進み、他ECUから判定結果を受信していないと判定された場合には本サブルーチンを終了する。
【0099】
ステップV9では、受信した判定結果と、仮記憶用メモリ35aに記憶した「予期せぬ挙動」に対応する車両情報とが一致するか否かに基づく分岐判定を行う。もし、判定結果と車両情報とが一致すると判定された場合にはステップV10へ進み、判定結果と車両情報とが一致しないと判定された場合には本サブルーチンを終了する。
【0100】
ステップV10では、「予期せぬ挙動」と判定した車両情報は他ECUが行った制御処理に起因するものであると前段のステップV9で判定された為、次にステップV2で「予期せぬ挙動」と判定されるまでステップV11の処理が行われない様に、仮記憶済フラグをOFFに設定する。
【0101】
この第5実施形態によれば、本記憶用メモリ35bには、「予期せぬ挙動」に対応する車両情報のみが記憶されることになり、本記憶用メモリ35bの記憶領域を、解析に活用可能な「予期せぬ挙動」に対応する車両情報でフルに使用することができ、当該本記憶用メモリ35bの記憶容量が少ない場合に好適する。つまり、本記憶用メモリ35bとしてはコスト面や、他の記憶すべきデータ量が多いことを考慮すると、当該本記憶用メモリ35bの記憶容量は制約され、記憶できるデータ数も制約される。この場合には、本記憶用メモリ35bにおいて「予期せぬ挙動」に対応しない車両情報が一つでも記憶されてしまうと、もともと記憶できるデータ数が少ないのに解析に活用可能な「予期せぬ挙動」に対応する車両情報を記憶するためのデータ領域がさらに少なくなってしまい、データ活用効率が落ちる。この点、この実施形態によれば、真に「予期せぬ挙動」であることを確認してから本記憶用メモリ35bに車両情報を記憶させるから、本記憶用メモリ35bの記憶容量が少なくて記憶可能なデータ数が少ない場合でも、「予期せぬ挙動」に対応する車両情報をフルに記憶できて、データ活用効率を高めることができる。
【0102】
又、前記仮記憶用メモリ35aのデータを本記憶用メモリ35bにコピーした場合には、本記憶用メモリ35bに記憶された最新のデータを使用する際に何らかの理由で削除してしまったとしてもコピー元の前記仮記憶用メモリ35aに同じデータが残っているから、データ保存に有利となる。
【0103】
この他にも仮記憶済フラグを用いることで、本記憶用メモリ35bに車両情報を記憶するとしても、「予期せぬ挙動」の検出から所定時間を経過した際に1度だけ本記憶用メモリ35bに車両情報をコピーするようにできる。つまり、所定時間内または所定時間後に、何度も同じ車両情報を本記憶用にコピーすることが無い。そのため、本記憶用メモリ35bに、書き込み速度や書き込み回数が制限されるフラッシュROMや、EEPROMを使用することができる。また、所定時間と仮記憶済フラグとを併用することにより、例えば割り込み処理が多発して記憶制御の処理周期が長くなるような場合であっても、判定結果を受信していなければ所定時間経過後に本記憶用メモリ35bに車両情報をコピーすることができる。
なお、仮記憶用メモリ35aの車両情報用の記憶容量としては、車両情報一つ相当の容量があれば良い。
【0104】
<その他の実施形態>
なお、本発明の実施形態は上述した実施形態に限られるものではなく、次のようにしても良い。前記第1実施形態におけるクルーズECU4がCAN2に送信する判定結果は、記憶制御装置30に限定する(記憶制御装置30を提供先に指定する)ようにしても良い(請求項3)。これによれば、CAN2上の関係の無い別のECUが自身に関係のない判定結果を取得処理せずに済む。
【0105】
又、車内ネットワークに接続された複数のECUが、夫々記憶制御装置及び判定結果提供手段の両方を備え、夫々各ECUの記憶制御装置は自身が判断した「予期せぬ挙動」との判定結果が、他のECUの判定結果提供手段から送信される判定結果と一致するか否かを判断するようにしても良く、このようにすると、各ECU相互に自身の判定結果を送信し合って車両全体(つまり全ECUにとって)の観点でも真に「予期せぬ挙動」であったか否かを判断できるようになる。
【0106】
又、前述の各実施形態では、ドライバがアクセル操作を行っていない、つまりアクセルが全閉であるにも関わらず車両が加速する状態、を予期せぬ挙動の例として説明した。しかし、予期せぬ挙動はこの例に限定されない。例えば、ドライバがアクセルペダルを一定に保っておりエンジン回転数も一定に保たれている定常状態において、ドライバがアクセルペダルを踏み増していないにも関わらずエンジン回転数が上昇する、といった状態を予期せぬ挙動としても良い。この場合、エアバッグECU3は予期せぬ挙動と判定し一時的に不揮発性メモリ34に車両情報を記憶する。しかし、ドライバによってエアコンパネルが操作され、図示しないエアコンECUがコンプレッサを作動させたことが、エンジン回転数の上昇の原因であったとするならば、エアコンECUが回転数の上昇は自身の制御処理が原因である旨の判定結果をCANに送信する。すると、エアバッグECU3は、エアコンECUからの判定結果に基づいて、不揮発性メモリ34に記憶した車両情報を削除、または上書き可能な状態にする。つまり、予期せぬ挙動は、アクセルが全閉であるにも関わらず車両が加速する状態や、エンジン回転数の上昇に限定されるものではない。また、判定結果を出力するECUも、クルーズECU4や、エアコンECUに限定されるものではない。
【0107】
なお、車両情報、制御情報、制御指令が、特許請求の範囲の挙動データに対応する。
また、判定結果が、請求項13の修正指令に対応する。又、エアバッグ3の記憶制御装置30がデータ記憶装置に対応する。
【符号の説明】
【0108】
図面中、1は車両の挙動データ記憶制御システム、2はCAN(車内ネットワーク)、3はエアバッグECU、4はクルーズECU、5はエンジンECU、30は記憶制御装置、31は挙動判断手段、32は記憶制御手段、33は修正手段、40は判定結果提供手段を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身が取得した挙動データに基づき「予期せぬ挙動」が発生したか否かを判断する挙動判断手段を有すると共に前記「予期せぬ挙動」に関連する挙動データを記憶するメモリを備えた記憶制御装置と、所定の制御対象を制御するためのECUとを、車内ネットワークを介してデータ送受可能に接続した車両の挙動データ記憶制御システムであって、
前記ECUは、
自身の挙動データに変化が有ったときに当該挙動データの変化が自身が行った制御の結果によるものであるか否かを判定し、当該挙動データの変化が自身が行った制御の結果によるものであると判定された場合には前記車内ネットワークにその判定結果を送信する判定結果提供手段を備え、
前記記憶制御装置は、
「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときにはその時点で前記メモリに当該「予期せぬ挙動」が発生したと判断した際の前記挙動データを記憶する記憶制御手段と、
前記「予期せぬ挙動」の内容が、前記ECUから車内ネットワークに送信された前記判定結果に関連するものであるか否かを判断し、前記判定結果に関連するものであると判断されれば前記メモリで記憶した前記挙動データを削除又は上書き許可する修正手段を備えたことを特徴とする車両の挙動データ記憶制御システム。
【請求項2】
前記記憶制御装置及びECUは共通の時間情報を有し、前記記憶装置は前記「予期せぬ挙動」に対応する挙動データに当該時間情報を付帯させ、前記ECUは前記車内ネットワークに送信する前記判定結果に前記時間情報を付帯させ、前記修正手段は、記憶した前記挙動データが前記判定結果に関連するものであり且つ該両データの時間情報が一致すれば前記メモリで記憶した前記「予期せぬ挙動」に対応する挙動データを削除又は上書き許可することを特徴とする請求項1に記載の車両の挙動データ記憶制御システム。
【請求項3】
前記ECUが車内ネットワークに送信する判定結果は、前記記憶制御装置にのみ宛てて送信されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の挙動データ記憶制御システム。
【請求項4】
前記ECUが複数あって、この複数のECUに、挙動センサからのデータを入力してアクチュエータを制御する第1のECUと、前記挙動センサからの入力がなくこの第1のECUからのみデータを前記車内ネットワークを介して取得し当該第1のECUに要求を出す第2のECUとが含まる場合には、前記第1のECUが、前記判定結果提供手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両の挙動データ記憶制御システム。
【請求項5】
前記記憶制御装置は、前記ECUとは別の種類のECUに設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両の挙動データ記憶制御システム。
【請求項6】
前記メモリは、第1メモリと、第2メモリとを備え、
前記記憶制御手段は、「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときには、前記第1メモリに前記挙動データを記憶するとともに、前記「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に前記判定結果を受信しなかった場合には、当該挙動データを前記第2メモリに書き込み、
前記修正手段は、前記「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に前記判定結果を受信した場合には、少なくとも前記第1メモリに記憶した当該挙動データを削除又は上書き許可の状態にすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車両の挙動データ記憶制御システム。
【請求項7】
自身が取得した実際の車両挙動を示す実挙動データに基づき「予期せぬ挙動」が発生したか否かを判断し、前記「予期せぬ挙動」であると判定された場合には前記実挙動データを記憶する記憶装置が接続されたネットワークに接続される、電子制御装置であって、
前記電子制御装置は、
該電子制御装置が行う制御の制御量に基づき将来の予想挙動データを予想するとともに、
前記予想挙動データが、前記実挙動データに対して所定値以内の乖離である場合に、前記ネットワークに対して、前記実挙動データは該電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を出力することを特徴とする電子制御装置。
【請求項8】
前記電子制御装置は、自身が実挙動データを記憶するメモリを備え、
前記予想挙動データが、前記実挙動データに対して所定値よりも乖離している場合には、前記実挙動データを前記メモリに記憶することを特徴とする請求項7に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記電子制御装置は、
前記ネットワークを介して、前記実挙動データは該電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を受信すると、
前記メモリに前記実挙動データを記憶している場合には、当該メモリから前記実挙動データを削除、又は、上書き可能な状態に変更することを特徴とする請求項8に記載の電子制御装置。
【請求項10】
前記電子制御装置は、前記ネットワークに対して、前記実挙動データは該電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を出力する際に、さらに前記実挙動データに対応する時間情報を付帯して出力することを特徴とする請求項7ないし9のいずれか1つに記載の電子制御装置。
【請求項11】
前記メモリは、第1メモリと、第2メモリとを備え、
前記電子制御装置は、前記予想挙動データが前記実挙動データに対して所定値よりも乖離していると判断したときには、前記第1メモリに前記実挙動データを記憶するとともに、前記乖離の発生から所定時間以内に当該実挙動データは該電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を受信しなかった場合には、当該実挙動データを前記第2メモリに書き込み、
前記予想挙動データが前記実挙動データに対して所定値よりも乖離していると判断したときから所定時間以内に当該実挙動データは該電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を受信した場合には、少なくとも前記第1メモリに記憶した当該実挙動データを削除又は上書き許可の状態にすることを特徴とする請求項8または9に記載の電子制御装置。
【請求項12】
アクチュエータを制御する制御指令を出力し、かつ、実際に発生した車両挙動を示す実挙動データが自身の前記制御指令によるものである場合には修正指令を出力する電子制御装置が接続された車両用ネットワークに接続される、データ記憶装置であって、
前記データ記憶装置は、メモリを備え、
前記実挙動データに基づき「予期せぬ挙動」が発生したと判定した場合には前記メモリに前記実挙動データを記憶し、
前記修正指令を受信した場合には、当該修正指令に対応する実挙動データを前記メモリから削除、又は、上書き可能な状態に変更することを特徴とするデータ記憶装置。
【請求項13】
前記メモリは、第1メモリと、第2メモリとを備え、
前記データ記憶装は、「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときには、前記第1メモリに前記実挙動データを記憶するとともに、前記「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に前記修正指令を受信しなかった場合には、当該実挙動データを前記第2メモリに書き込み、
前記「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に前記修正指令を受信した場合には、少なくとも前記第1メモリに記憶した当該実挙動データを削除又は上書き許可の状態にすることを特徴とする請求項12に記載のデータ記憶装置。
【請求項1】
自身が取得した挙動データに基づき「予期せぬ挙動」が発生したか否かを判断する挙動判断手段を有すると共に前記「予期せぬ挙動」に関連する挙動データを記憶するメモリを備えた記憶制御装置と、所定の制御対象を制御するためのECUとを、車内ネットワークを介してデータ送受可能に接続した車両の挙動データ記憶制御システムであって、
前記ECUは、
自身の挙動データに変化が有ったときに当該挙動データの変化が自身が行った制御の結果によるものであるか否かを判定し、当該挙動データの変化が自身が行った制御の結果によるものであると判定された場合には前記車内ネットワークにその判定結果を送信する判定結果提供手段を備え、
前記記憶制御装置は、
「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときにはその時点で前記メモリに当該「予期せぬ挙動」が発生したと判断した際の前記挙動データを記憶する記憶制御手段と、
前記「予期せぬ挙動」の内容が、前記ECUから車内ネットワークに送信された前記判定結果に関連するものであるか否かを判断し、前記判定結果に関連するものであると判断されれば前記メモリで記憶した前記挙動データを削除又は上書き許可する修正手段を備えたことを特徴とする車両の挙動データ記憶制御システム。
【請求項2】
前記記憶制御装置及びECUは共通の時間情報を有し、前記記憶装置は前記「予期せぬ挙動」に対応する挙動データに当該時間情報を付帯させ、前記ECUは前記車内ネットワークに送信する前記判定結果に前記時間情報を付帯させ、前記修正手段は、記憶した前記挙動データが前記判定結果に関連するものであり且つ該両データの時間情報が一致すれば前記メモリで記憶した前記「予期せぬ挙動」に対応する挙動データを削除又は上書き許可することを特徴とする請求項1に記載の車両の挙動データ記憶制御システム。
【請求項3】
前記ECUが車内ネットワークに送信する判定結果は、前記記憶制御装置にのみ宛てて送信されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の挙動データ記憶制御システム。
【請求項4】
前記ECUが複数あって、この複数のECUに、挙動センサからのデータを入力してアクチュエータを制御する第1のECUと、前記挙動センサからの入力がなくこの第1のECUからのみデータを前記車内ネットワークを介して取得し当該第1のECUに要求を出す第2のECUとが含まる場合には、前記第1のECUが、前記判定結果提供手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両の挙動データ記憶制御システム。
【請求項5】
前記記憶制御装置は、前記ECUとは別の種類のECUに設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両の挙動データ記憶制御システム。
【請求項6】
前記メモリは、第1メモリと、第2メモリとを備え、
前記記憶制御手段は、「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときには、前記第1メモリに前記挙動データを記憶するとともに、前記「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に前記判定結果を受信しなかった場合には、当該挙動データを前記第2メモリに書き込み、
前記修正手段は、前記「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に前記判定結果を受信した場合には、少なくとも前記第1メモリに記憶した当該挙動データを削除又は上書き許可の状態にすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車両の挙動データ記憶制御システム。
【請求項7】
自身が取得した実際の車両挙動を示す実挙動データに基づき「予期せぬ挙動」が発生したか否かを判断し、前記「予期せぬ挙動」であると判定された場合には前記実挙動データを記憶する記憶装置が接続されたネットワークに接続される、電子制御装置であって、
前記電子制御装置は、
該電子制御装置が行う制御の制御量に基づき将来の予想挙動データを予想するとともに、
前記予想挙動データが、前記実挙動データに対して所定値以内の乖離である場合に、前記ネットワークに対して、前記実挙動データは該電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を出力することを特徴とする電子制御装置。
【請求項8】
前記電子制御装置は、自身が実挙動データを記憶するメモリを備え、
前記予想挙動データが、前記実挙動データに対して所定値よりも乖離している場合には、前記実挙動データを前記メモリに記憶することを特徴とする請求項7に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記電子制御装置は、
前記ネットワークを介して、前記実挙動データは該電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を受信すると、
前記メモリに前記実挙動データを記憶している場合には、当該メモリから前記実挙動データを削除、又は、上書き可能な状態に変更することを特徴とする請求項8に記載の電子制御装置。
【請求項10】
前記電子制御装置は、前記ネットワークに対して、前記実挙動データは該電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を出力する際に、さらに前記実挙動データに対応する時間情報を付帯して出力することを特徴とする請求項7ないし9のいずれか1つに記載の電子制御装置。
【請求項11】
前記メモリは、第1メモリと、第2メモリとを備え、
前記電子制御装置は、前記予想挙動データが前記実挙動データに対して所定値よりも乖離していると判断したときには、前記第1メモリに前記実挙動データを記憶するとともに、前記乖離の発生から所定時間以内に当該実挙動データは該電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を受信しなかった場合には、当該実挙動データを前記第2メモリに書き込み、
前記予想挙動データが前記実挙動データに対して所定値よりも乖離していると判断したときから所定時間以内に当該実挙動データは該電子制御装置以外の電子制御装置の制御に起因するものである旨の情報を受信した場合には、少なくとも前記第1メモリに記憶した当該実挙動データを削除又は上書き許可の状態にすることを特徴とする請求項8または9に記載の電子制御装置。
【請求項12】
アクチュエータを制御する制御指令を出力し、かつ、実際に発生した車両挙動を示す実挙動データが自身の前記制御指令によるものである場合には修正指令を出力する電子制御装置が接続された車両用ネットワークに接続される、データ記憶装置であって、
前記データ記憶装置は、メモリを備え、
前記実挙動データに基づき「予期せぬ挙動」が発生したと判定した場合には前記メモリに前記実挙動データを記憶し、
前記修正指令を受信した場合には、当該修正指令に対応する実挙動データを前記メモリから削除、又は、上書き可能な状態に変更することを特徴とするデータ記憶装置。
【請求項13】
前記メモリは、第1メモリと、第2メモリとを備え、
前記データ記憶装は、「予期せぬ挙動」が発生したと判断したときには、前記第1メモリに前記実挙動データを記憶するとともに、前記「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に前記修正指令を受信しなかった場合には、当該実挙動データを前記第2メモリに書き込み、
前記「予期せぬ挙動」の発生から所定時間以内に前記修正指令を受信した場合には、少なくとも前記第1メモリに記憶した当該実挙動データを削除又は上書き許可の状態にすることを特徴とする請求項12に記載のデータ記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図12】
【公開番号】特開2012−140053(P2012−140053A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292718(P2010−292718)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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