説明

車両の物入れ装置

【課題】車室の物入れ空間内に収納されたテイッシュペーパー用紙箱が車両の走行時に無用にがたつくことを防止し、かつ、紙箱からのテイッシュペーパーの取り出しが容易かつ円滑にできるようにする。
【解決手段】車両の物入れ装置において、車室3に向かって開口する物入れ空間12を設ける。物入れ空間12に直方体形状のティッシュペーパー21用紙箱22を収納したとき、紙箱22に当接してこの紙箱22が物入れ空間12の底部に向かってそれ以上入り込むことを阻止するストッパ32を設ける。物入れ空間12の内壁面に係止突起34を形成し、ストッパ32に当接するまで物入れ空間12内に紙箱22を収納したとき、紙箱22の下面板28近傍の壁板23〜26の部分に係止突起34が圧接するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テイッシュペーパー用紙箱をがたつきなく収納できるようにするための車両の物入れ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両の物入れ装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両の物入れ装置には、車室に向かって開口する物入れ空間が設けられ、この物入れ空間に直方体形状のティッシュペーパー用紙箱を収納したとき、この紙箱に当接してこの紙箱が上記物入れ空間の底部に向かってそれ以上入り込むことを阻止するストッパが設けられている。
【0003】
通常、上記紙箱内にはテイッシュペーパーが積層状に収容されており、これらテイッシュペーパーは、上記紙箱の上面板に形成された長孔を通し一枚ずつ引き出して取り出し可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−22167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の技術におけるストッパは、その上面に上記紙箱を単に載置させるようになっている。
【0006】
このため、第1に、上記紙箱はストッパの上面の面方向に多少ながら自由に移動すると考えられることから、車両の走行時には、その振動により上記物入れ空間内で上記紙箱が無用にがたつくおそれがある。
【0007】
また、第2に、上記紙箱内から上記長孔を通しテイッシュペーパーを引き出すとき、上記長孔を通り抜けるテイッシュペーパーからの摩擦力により、このテイッシュペーパーと共に上記紙箱が上記ストッパから浮き上りがちとなり、これはテイッシュペーパーの取り出しを煩雑にさせるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車室の物入れ空間内に収納されたテイッシュペーパー用紙箱が車両の走行時に無用にがたつくことを防止し、かつ、上記紙箱からのテイッシュペーパーの取り出しが容易かつ円滑にできるようにすることである。
【0009】
請求項1の発明は、車室3に向かって開口する物入れ空間12を設け、この物入れ空間12に直方体形状のティッシュペーパー21用紙箱22を収納したとき、この紙箱22に当接してこの紙箱22が上記物入れ空間12の底部に向かってそれ以上入り込むことを阻止するストッパ32を設けた車両の物入れ装置において、
上記物入れ空間12の内壁面に係止突起34を形成し、上記ストッパ32に当接するまで上記物入れ空間12内に紙箱22を収納したとき、この紙箱22の下面板28近傍の壁板23〜26の部分に上記係止突起34が圧接するようにしたことを特徴とする車両の物入れ装置である。
【0010】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明による効果は、次の如くである。
【0012】
請求項1の発明は、車室に向かって開口する物入れ空間を設け、この物入れ空間に直方体形状のティッシュペーパー用紙箱を収納したとき、この紙箱に当接してこの紙箱が上記物入れ空間の底部に向かってそれ以上入り込むことを阻止するストッパを設けた車両の物入れ装置において、
上記物入れ空間の内壁面に係止突起を形成し、上記ストッパに当接するまで上記物入れ空間内に紙箱を収納したとき、この紙箱の下面板近傍の壁板の部分に上記係止突起が圧接するようにしている。
【0013】
ここで、上記紙箱の下面板は紙材で形成されてはいるが、その面方向での剛性は大きいものである。このため、上記したようにストッパに当接するまで物入れ空間内に紙箱を収納することにより、この紙箱の下面板近傍の壁板の部分に係止突起が圧接するときには、その圧接力は、上記した下面板の面方向の大きい剛性によって強固に担時される。
【0014】
よって、上記紙箱は物入れ空間内で強固に支持された収納状態が維持されることから、上記紙箱が車両の走行時に無用にがたつくことは防止される。また、上記紙箱内からテイッシュペーパーを引き出すとき、このテイッシュペーパーからの摩擦力大きいとしても、上記した紙箱の強固な支持により、この紙箱が上記ストッパから浮き上ることは防止される。よって、上記紙箱からのテイッシュペーパーの取り出しが容易かつ円滑にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】物入れ装置の側面断面図である。
【図2】物入れ装置を含むインスツルメントパネルの全体斜視図である。
【図3】物入れ装置の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の車両の物入れ装置に関し、車室の物入れ空間内に収納されたテイッシュペーパー用紙箱が車両の走行時に無用にがたつくことを防止し、かつ、上記紙箱からのテイッシュペーパーの取り出しが容易かつ円滑にできるようにすることである。、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0017】
即ち、車両の物入れ装置には、車室に向かって開口する物入れ空間が設けられる。この物入れ空間に直方体形状のティッシュペーパー用紙箱を収納したとき、この紙箱に当接してこの紙箱が上記物入れ空間の底部に向かってそれ以上入り込むことを阻止するストッパが設けられている。上記物入れ空間の内壁面に係止突起が形成され、上記ストッパに当接するまで上記物入れ空間内に紙箱を収納したとき、この紙箱の下面板近傍の壁板の部分に上記係止突起が圧接することとされている。
【実施例】
【0018】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0019】
図中、実線と二点鎖線図示のものにおいて、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の幅方向をいうものとする。
【0020】
上記車両1の車体の内部が車室3とされる。上記車体の内部の前端部には、車両1の幅方向に延びて上記車室3の前面を形成する樹脂製のインスツルメントパネル4が設けられ、このインスツルメントパネル4は車体側に支持されている。
【0021】
上記車室3の前部の左側部が助手席とされ、この助手席に対応するよう上記インスツルメントパネル4の左側部に小物類を収容可能とする物入れ装置9が設けられている。この物入れ装置9には、その内部が物入れ空間12とされ、上記車室3に向かって開口するよう上記インスツルメントパネル4に一体的に形成される物入れ箱13が設けられている。
【0022】
上記物入れ箱13は、上記インスツルメントパネル4から前下方に向かって突出し、前後方向で互いに離れて平行に対面する前、後壁16,17と、これら前、後壁16,17の各側端縁部同士を連結し、左右方向で互いに離れて平行に対面する左、右壁18,19と、これら各壁16〜19で囲まれた下端開口を閉じる底板20とを備えている。上記インスツルメントパネル4、各壁16〜19、および底板20は互いに一体的に形成されている。
【0023】
上記各壁16〜19、および底板20で囲まれた空間が前記物入れ空間12とされ、この物入れ空間12の深さ方向の各部断面は左右に長い長方形状をなして、互いに同形同大とされている。上記物入れ空間12は、後上方に向かって車室3内に開口している。
【0024】
上記物入れ空間12にはテイッシュペーパー21用の紙箱22が嵌脱可能に嵌入されて収納される。この紙箱22は左右に長い直方体形状をなしている。
【0025】
上記紙箱22は、前後方向で互いに離れて平行に対面する前、後壁板23,24と、これら前、後壁板23,24の各側端縁部同士を連結し、左右方向で互いに離れて平行に対面する左、右壁板25,26と、これら各壁板23〜26で囲まれた上、下端開口をそれぞれ閉じる上、下面板27,28と、上記上面板27の中央部に形成され、左右に長く延びる長孔29とを備えている。上記各壁板23〜26と上、下面板27,28とは、一枚の厚紙材を屈曲することにより互いに一体的に形成されている。
【0026】
上記紙箱22内にテイッシュペーパー21が積層状に収容されており、これらテイッシュペーパー21は、上記長孔29を通し一枚ずつ引き出して取り出し可能とされている。
【0027】
上記紙箱22は、上記物入れ空間12に対しわずかのがたつきで平行移動するよう収納可能とされている。そして、上記物入れ空間12に紙箱22を収納したとき、この紙箱22の下面板28に当接してこの紙箱22が上記物入れ空間12の底部に向かってそれ以上入り込むことを阻止するストッパ32が設けられている。実線図示のものによれば、このストッパ32は上記物入れ箱13の底板20に相当している。
【0028】
上記物入れ空間12の前、後内壁面を形成する上記物入れ箱13の前、後壁16,17の各内面のそれぞれに、上記物入れ空間12内に向かって突出する左右一対の係止突起34が一体的に形成されている。これら各係止突起34の側面視(図1)で、これら各係止突起34における上記物入れ空間12の開口側に位置する上辺と底部側に位置する下辺とのうち、上記上辺が上記前、後壁16,17の各内面に対しなす傾斜角度は、上記下辺がなす傾斜角度よりも小さくなることとされている。また、上記各係止突起34は、上記物入れ空間12の深さ方向で、上記物入れ箱13の底板20の近傍に形成されている。
【0029】
また、上記各係止突起34の左右各外側方の近傍に置ける上記前、後壁16,17の各部分にそれぞれ上下に長いスリット35が形成されている。つまり、上記各係止突起34をそれぞれ左右から挟むように上記前、後壁16,17の各部分に上記各スリット35が形成されている。そして、このスリット35により上記前、後壁16,17に対し、その厚さ方向で上記各係止突起34がわずかに弾性的に変位可能とされている。
【0030】
そして、上記ストッパ32(底板20)に当接するまで上記物入れ空間12内に紙箱22を収納するとき、この紙箱22が上記ストッパ32に当接する直前で、上記紙箱22の下面板28の前、後端縁部が上記各係止突起34の上辺を摺動してこれら各係止突起34を乗り越えることとされる。そして、その後、上記紙箱22の下面板28が上記ストッパ32に当接して、上記紙箱22の収納が終了したとき、上記紙箱22の下面板28近傍の前、後壁板23,24の部分に上記各係止突起34の突出部が圧接することとされている。また、この際、上記各係止突起34が圧接した上記前、後壁板23,24の各部分は、上記各係止突起34からの圧接力により凹み変形することとされている。
【0031】
ここで、前記したように、各係止突起34の上辺がなす傾斜角度は、より小さくされ、かつ、上記各係止突起34をそれぞれ左右から挟むように上記前、後壁16,17の各部分にスリット35が形成されて上記各係止突起34が弾性的に変位可能とされている。
【0032】
このため、上記したように物入れ空間12内に紙箱22を収納する際、この紙箱22の下面板28の前、後端縁部が上記各係止突起34を乗り越えるときには、上記紙箱22の下面板28の前、後端縁部は上記各係止突起34の上辺を円滑に摺動すると共に、この摺動時の外力により上記各係止突起34が弾性的に逃げるよう変位する。よって、上記した乗り越えは円滑に達成されることから上記物入れ空間12内への紙箱22の収納は円滑に達成される。
【0033】
一方、前記したように、各係止突起34の下辺がなす傾斜角度は、より大きくされている。このため、上記物入れ空間12内への紙箱22の収納が終了したとき、この紙箱22が上記物入れ空間12内から自由に抜け出そうとすることは、上記各係止突起34の突出端部との強い係止によって、より確実に阻止される。よって、上記物入れ空間12内への紙箱22の安定した収納状態が、より確実に維持される。
【0034】
上記物入れ空間12を車室3側から開閉可能に閉じるカバー体38が設けられている。このカバー体38はその上部側が上下に回動Aするよう下端部が上記インスツルメントパネル4に枢支具39により枢支されている。
【0035】
図1中一点鎖線で図示するように、上記物入れ空間12の底部を深くし、その深さ方向の中途部にストッパ32を一体的、もしくは別体として突設してもよい。
【0036】
また、図3中一点鎖線で示すように、上記係止突起34に代え、もしくは、これら係止突起34に加えて、上記物入れ空間12の左、右内壁面を形成する上記物入れ箱13の左、右壁18,19の各内面のうち、少なくともいずれか一方の内面に上記係止突起34を形成してもよい。
【0037】
なお、以上は図示の例によるが、上記係止突起34は、物入れ空間12の内壁面に単一のみ設けてもよく、左右一対のみ設けてもよく、前後一対のみ設けてもよい。また、上記係止突起34はその側面視で正三角形状でもよく、半円形状でもよい。また、上記スリット35は形成しなくてもよい。
【0038】
また、上記カバー体38は設けなくてもよいが、このカバー体38に上記物入れ箱13を一体的に形成してもよい。
【0039】
上記構成によれば、物入れ空間12の内壁面に係止突起34を形成し、ストッパ32に当接するまで上記物入れ空間12内に紙箱22を収納したとき、この紙箱22の下面板28近傍の壁板23〜26の部分に上記係止突起34が圧接するようにしている。
【0040】
ここで、上記紙箱22の下面板28は紙材で形成されてはいるが、その面方向での剛性は大きいものである。このため、上記したようにストッパ32に当接するまで物入れ空間12内に紙箱22を収納することにより、この紙箱22の下面板28近傍の壁板23〜26の部分に係止突起34が圧接するときには、その圧接力は、上記した下面板28の面方向の大きい剛性によって強固に担時される。
【0041】
よって、上記紙箱22は物入れ空間12内で強固に支持された収納状態が維持されることから、上記紙箱22が車両1の走行時に無用にがたつくことは防止される。また、上記紙箱22内から上記長孔29を通してテイッシュペーパー21を引き出すとき、上記長孔29を通り抜けるテイッシュペーパー21からの摩擦力大きいとしても、上記した紙箱22の強固な支持により、この紙箱22が上記ストッパ32から浮き上ることは防止される。よって、上記紙箱22からのテイッシュペーパー21の取り出しは容易かつ円滑にできる。
【0042】
また、上記各係止突起34は、上記物入れ空間12の底部側に形成されるため、車室3側から容易に見えることは防止される。よって、上記各係止突起34を設けたとしても、車室3の見栄えは良好に維持される。また、上記各係止突起34を小さい突出量としてやれば、上記物入れ空間12に他の小物を収納するときに、上記係止突起34が邪魔になることは防止される。
【符号の説明】
【0043】
1 車両
3 車室
4 インスツルメントパネル
9 物入れ装置
12 物入れ空間
13 物入れ箱
16 前壁
17 後壁
18 左壁
19 右壁
20 底板
21 テイッシュペーパー
22 紙箱
23 前壁板
24 後壁板
25 左壁板
26 右壁板
27 上面板
28 下面板
29 長孔
32 ストッパ
34 係止突起
35 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室に向かって開口する物入れ空間を設け、この物入れ空間に直方体形状のティッシュペーパー用紙箱を収納したとき、この紙箱に当接してこの紙箱が上記物入れ空間の底部に向かってそれ以上入り込むことを阻止するストッパを設けた車両の物入れ装置において、
上記物入れ空間の内壁面に係止突起を形成し、上記ストッパに当接するまで上記物入れ空間内に紙箱を収納したとき、この紙箱の下面板近傍の壁板の部分に上記係止突起が圧接するようにしたことを特徴とする車両の物入れ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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