説明

車両の牽引装置

【課題】牽引フックの取付位置の制約を緩和する。
【解決手段】車両前後方向に延びる左右一対のサイドレール12の前端部を相互に連結するクロスメンバ16の前面に、少なくともボルト及びナットからなる締結部材50を用いて、左右一対のブラケット46を取り付ける。そして、左右一対のブラケット46に挟持された状態で、少なくともボルト及びナットからなる締結部材52を用いて、故障時などに牽引してもらうための牽引フック48の基部48Aを固定する。このようにすれば、サイドレール12が存在する位置に限らず、クロスメンバ16の任意の位置に牽引フック48を取り付けることが可能となり、その取付位置の制約を緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の牽引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックなどの商用車では、故障時などに牽引してもらう牽引装置として、特開2006−248292号公報(特許文献1)に記載されるように、車両前後方向に延びる左右一対のサイドレールの前端若しくはその近傍に牽引フックが取り付けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−248292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の牽引装置では、牽引フックの取付位置がフレームの幅、即ち、左右のサードレールの位置で決まってしまうため、その前方に位置するフロントバンパーの開口部面積が大きくなり、フロントバンパーの強度が低下したり、その見栄えが損なわれてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は従来技術の問題点に鑑み、左右一対のサイドレールの前端部を相互に連結するクロスメンバの前面に、ブラケットを介して牽引フックを取り付けることで、牽引フックの取付位置の制約を緩和した車両の牽引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明に係る車両の牽引装置では、車両前後方向に延びる左右一対のサイドレールの前端部を相互に連結するクロスメンバの前面に、ブラケットを介して牽引フックの基部を取り付けた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、左右一対のサイドレールの最前方に位置するクロスメンバの前面に、ブラケットを介して牽引フックの基部が取り付けられることから、サイドレールが存在する位置に限らず、クロスメンバの任意の位置に牽引フックを取り付けることができる。このため、牽引フックの取付位置の制約が緩和され、フロントバンパーの開口部面積が大きくなることがなく、フロントバンパーの強度が低下したり、その見栄えが損なわれてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の適用対象の一例を示すトラックのシャーシ構成図
【図2】クロスメンバに対する牽引フックの取付構造を示す斜視図
【図3】クロスメンバに対する牽引フックの取付構造を示す側面図
【図4】クロスメンバを補強するための補強部材の取付構造を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
図1は、本発明の適用対象の一例として、商用車たるトラックのシャーシ構成を示す。
トラックの骨格となるフレーム10は、車両前後方向に延びる左右一対のサイドレール12及び14と、これらを車両左右方向に亘って相互に連結する複数のクロスメンバ16〜26と、を含んで構成される。フレーム10の前部には、エンジン28,クラッチ30及び変速機32が搭載され、変速機32の出力が、プロペラシャフト34及びディファレンシャルギヤ36を介して、駆動輪たる後輪38に伝達される。また、エンジン28が搭載されるフレーム10の近傍には、ステアリングホイール40により操舵される前輪42が取り付けられる。さらに、サイドレール12及び14の前端部を相互に連結するクロスメンバ16の車両前方には、バンパーステーを介してフロントバンパー44が取り付けられる。
【0010】
フレーム10の最前方に位置するクロスメンバ16の前面には、図2及び図3に示すように、車両左右方向に所定間隔だけ離間して取り付けられる左右一対のブラケット46を介して、故障時などに車両を牽引してもらうための牽引フック48の基部48Aが取り付けられる。
【0011】
ブラケット46は、具体的には、クロスメンバ16の前面に固定される略矩形形状の板材からなる第1の板部材46Aと、これから車両前方に向かって延びる略ハット形状の板材からなる第2の板部材46Bと、第1の板部材46A及び第2の板部材46Bとは異なる面上で、これらの上端及び下端の少なくとも一部を夫々連結する略矩形形状の板材からなる第3の板部材46Cと、を含んで構成される。ここで、第1の板部材46Aは、少なくともボルト及びナットからなる締結部材50によりクロスメンバ16に固定される。また、第2の板部材46Bの板面は、車両の前後方向及び上下方向で規定される面上に延びる一方、第3の板部材46Cの板面は、車両の前後方向及び左右方向で規定される面上に延びる。そして、牽引フック48の基部48Aは、左右一対のブラケット46の第2の板部材46Bの間に挟持された状態で、少なくともボルト及びナットからなる締結部材52により固定される。
【0012】
このような牽引装置によれば、フレーム10の最前方に位置するクロスメンバ16の前面に、ブラケット46を介して牽引フック48の基部48Aが取り付けられることから、サイドレール12及び14が存在する位置に限らず、クロスメンバ16の任意の位置に牽引フック48を取り付けることができる。このため、牽引フック48の取付位置の制約が緩和され、フロントバンパー44の開口部面積が大きくなることがなく、フロントバンパー44の強度が低下したり、その見栄えが損なわれてしまうことを抑制できる。このとき、牽引フック48は、ブラケット46を介してクロスメンバ16に取り付けられるため、クロスメンバ16に牽引フック48を直接取り付けるものと比較して、牽引による応力が小さくなり、クロスメンバ16に対する牽引フック48の取付強度を確保することができる。
【0013】
また、ブラケット46は、各板面が相互に異なる面上に延びる第1の板部材46A,第2の板部材46B及び第3の板部材46Cを適宜組み合わせて構成されるため、軽量でありながら多方向に対して十分な強度を持ったものとすることができる。さらに、牽引フック48の基部48Aは、左右一対のブラケット46の第2の板部材46Bに挟持された状態で固定されるため、ブラケット46と牽引フック48との結合強度を確保することができる。このとき、牽引フック48の基部48Aは、少なくともボルト及びナットからなる締結部材52によりブラケット46の第2の板部材46Bに固定されるため、同一のブラケット46を用いて、各車種に応じた固有の牽引フック48を取り付けることが可能となり、部品共通化による部品点数の削減を図ることができる。
【0014】
ここで、牽引フック48を取り付ける部位のクロスメンバ16の強度が不足する場合には、図3及び図4に示すように、クロスメンバ16の後面であって、その板材を挟んでブラケット46の反対側に位置する部分に、クロスメンバ16を補強する補強部材54を取り付けることが望ましい。
【0015】
補強部材54は、具体的には、クロスメンバ16の内面形状に倣った略コ字形状(チャンネル形状)をなす固定板材54Aと、車両の前後方向及び上下方向で規定される面上に板面が延びつつ、固定板材54Aの車両左右方向の略中央においてその内面全体に亘って固着される略矩形形状をなす補強板材54Bと、を含んで構成される。
【0016】
ブラケット46の第1の板部材46Aと補強部材54の固定板材54Aとは、部品点数削減の観点から、共通する締結部材50を用いてクロスメンバ16に共締めされることが望ましい。また、補強部材54の固定板材54Aの上下に位置する板材は、フレーム10に対する取付強度を向上させる観点から、少なくともボルト及びナットからなる締結部材56を用いて、クロスメンバ16又はサイドレール12若しくは14に結合することが望ましい。
【0017】
なお、クロスメンバ16の前面に牽引フック48を取り付けるためのブラケット46は、その強度が確保できるのであれば、車両左右方向に所定距離だけ離間して一対取り付ける構成ではなく、1つのみ取り付ける構成であってもよい。また、車両牽引時のバランスを考慮し、クロスメンバ16の前面に、2つのブラケット46を用いて、2つの牽引フック48を取り付けるようにしてもよい。
【0018】
さらに、ブラケット46,牽引フック48及び補強部材54は、図2〜図4に記載される形状に限らず、公知の形状としてもよい。また、ブラケット46,牽引フック48及び補強部材54は、少なくともボルト及びナットからなる締結部材に限らず、溶接などで固定されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0019】
12 サイドレール
14 サイドレール
16 クロスメンバ
46 ブラケット
46A 第1の板部材
46B 第2の板部材
46C 第3の板部材
48 牽引フック
48A 基部
52 締結部材
54 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる左右一対のサイドレールの前端部を相互に連結するクロスメンバの前面に、ブラケットを介して牽引フックの基部を取り付けたことを特徴とする車両の牽引装置。
【請求項2】
前記ブラケットは、
前記クロスメンバの前面に固定される第1の板部材と、
前記第1の板部材から車両前方に向かって延び、前記牽引フックの基部が固定される第2の板部材と、
前記第1の板部材及び前記第2の板部材とは異なる面上で、該第1の板部材と第2の板部材を連結する第3の板部材と、
を含んで構成されたことを特徴とする請求項1記載の車両の牽引装置。
【請求項3】
前記ブラケットは、車両左右方向に離間して一対設けられ、左右一対の第2の板部材の間に牽引フックの基部が挟持されつつ固定されることを特徴とする請求項2記載の車両の牽引装置。
【請求項4】
前記牽引フックの基部は、少なくともボルト及びナットからなる締結部材を介して、前記第2の板部材に固定されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両の牽引装置。
【請求項5】
前記クロスメンバの後面であって、その板材を挟んでブラケットの反対側に位置する部分には、前記クロスメンバを補強する補強部材が取り付けられたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の車両の牽引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−221841(P2010−221841A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71171(P2009−71171)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(504334865)日産ライトトラック株式会社 (60)
【Fターム(参考)】