説明

車両の荷重伝達構造

【課題】横転時や側突時において、ルーフサイドレールに入力された荷重を効率よく伝達できる車両の荷重伝達構造の提供を課題とする。
【解決手段】ルーフサイドレール20の車体外側部を構成するアウタパネル22と、アウタパネル22よりも車体内方側に設けられ、ルーフサイドレール20の車体内側部を構成するインナパネル24と、アウタパネル22とインナパネル24の間に設けられたリインフォースメント26と、アウタパネル22の車体内方側面22Aに設けられるとともに、車幅方向外側端部に車体下方側へ突出形成された突出部44がドアフレーム32の車体上方側端部32Aよりも車幅方向外側に配置された補強部材40と、を備えた車両10の荷重伝達構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷重伝達構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ルーフサイドレールの車体外側部を構成するアウタパネルと、ルーフサイドレールの車体内側部を構成するインナパネルと、ルーフサイドレールの内部に配設されたリインフォースメントと、を備えた車両のルーフ構造は、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−306884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなルーフ構造を備えた車両が横転したときや側面衝突したときには、ルーフサイドレールに荷重が入力されることがあるが、その荷重は効率よく他の部材、特に剛性の高い部材へ伝達されることが、車室の変形を抑制する上で望ましい。
【0004】
そこで、本発明は、横転時や側突時において、ルーフサイドレールに入力された荷重を効率よく伝達できる車両の荷重伝達構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車両の荷重伝達構造は、ルーフサイドレールの車体外側部を構成するアウタパネルと、前記アウタパネルよりも車体内方側に設けられ、前記ルーフサイドレールの車体内側部を構成するインナパネルと、前記アウタパネルと前記インナパネルの間に設けられたリインフォースメントと、前記アウタパネルの車体内方側面に設けられるとともに、車幅方向外側端部に車体下方側へ突出形成された突出部がドアフレームの車体上方側端部よりも車幅方向外側に配置された補強部材と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、横転時や側突時の入力荷重により、ルーフサイドレールが車体下方側へ変形すると、アウタパネルの車体内方側面に設けられた補強部材の車幅方向外側端部に車体下方側へ突出形成された突出部が、そのアウタパネルを介してドアフレームの車体上方側端部に車幅方向外側から係合する。したがって、ドアの面外変形が抑制され、横転時や側突時にルーフサイドレールのアウタパネルに入力された荷重は、補強部材を介してドアフレームに効率よく伝達される。また、補強部材は、アウタパネルの車体内方側面に設けられているので、アウタパネルの強度を向上させることができる。
【0007】
また、請求項2に記載の車両の荷重伝達構造は、請求項1に記載の車両の荷重伝達構造において、前記補強部材が、前記リインフォースメントの車体外方側面と一定の間隙を有して対面する凸面部を備えていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、横転時や側突時の入力荷重により、ルーフサイドレールが車体下方側及び車体内方側へ変形すると、アウタパネルの車体内方側面に設けられた補強部材の凸面部が、リインフォースメントの車体外方側面に圧接する。したがって、横転時や側突時にルーフサイドレールのアウタパネルに入力された荷重は、補強部材の凸面部を介してリインフォースメントに効率よく伝達される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、横転時や側突時において、ルーフサイドレールに入力された荷重を効率よく伝達できる車両の荷重伝達構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。図1はルーフサイドレールに補強部材が設けられた車両の概略側面図であり、図2は補強部材の概略斜視図である。また、図3は車両のルーフサイドレール付近の構造を示す概略断面図であり、図4は車両の横転時(又は側突時)におけるルーフサイドレール付近の構造を示す概略断面図である。なお、各図において、車体上方向を矢印UP、車体前方向を矢印FRで示し、車幅方向内側を矢印INで示す。
【0011】
図1、図3で示すように、自動車(車両)10のルーフ部12には、車室のルーフを構成するルーフパネル14が備えられている。そして、ルーフパネル14の車幅方向両側部には、車体前後方向に延在する剛性の高い骨格部材である左右一対のルーフサイドレール20が設けられている。
【0012】
ルーフサイドレール20は、車体外側部を構成するアウタパネルとしてのサイメンアウタ22と、サイメンアウタ22よりも車体内方側に配置され、車体内側部を構成するインナパネルとしてのレールインナ24と、サイメンアウタ22とレールインナ24の間(ルーフサイドレール20の内部)に車体前後方向に沿って配設されたリインフォースメントとしてのレールアウタリインフォースメント26と、を備えている。
【0013】
レールインナ24とレールアウタリインフォースメント26は、その車体上方側端部及び車体下方側端部が互いに接合されており、車体前後方向に沿った閉断面構造とされている。そして、レールアウタリインフォースメント26とサイメンアウタ22も、その車体上方側端部及び車体下方側端部が互いに接合されており、車体前後方向に沿った閉断面構造とされている。つまり、レールインナ24とサイメンアウタ22は、レールアウタリインフォースメント26を介して、その車体上方側端部及び車体下方側端部が互いに接合されている。
【0014】
なお、レールインナ24とレールアウタリインフォースメント26とサイメンアウタ22の車体下方側端部の接合部分(以下、この接合部分を接合部19という)は、車体下方側へ向けてフランジ状に突出しており、この接合部19には、ゴム材等からなるウエザストリップ28が嵌着されている。
【0015】
また、レールインナ24とレールアウタリインフォースメント26とサイメンアウタ22の車体上方側端部の接合部分(以下、この接合部分を接合部17という)は、車幅方向内側へ向けてフランジ状に突出しており、この接合部17には、ルーフパネル14の車幅方向外側端部14Aが重ね合わされて接合されている。
【0016】
そして、その接合部17よりも車幅方向内側のルーフパネル14は、車体上方側へ屈曲形成されるとともに、そこから連続的に車幅方向外側へ突き出るように更に屈曲形成され、その車幅方向外側へ突き出た部位が突出部14Bとされている。また、接合部17よりも車幅方向外側のサイメンアウタ22は、車体上方側へ屈曲形成されている。
【0017】
したがって、ルーフ部12の車幅方向両側部には、接合部17を底壁とする溝部18が車体前後方向に形成され、その溝部18(接合部17)の車体上方側の車幅方向における開口18Aの幅は、底壁(接合部17)の幅よりも狭くなっている。この開口18Aの幅を狭くするルーフパネル14の突出部14Bに、樹脂材等からなるルーフモール16の車幅方向内側壁面に形成された凹部16Aが嵌合され、かつルーフモール16自体の車幅方向における弾性反発力により、そのルーフモール16がルーフ部12に取り付けられている。
【0018】
一方、ルーフサイドレール20の車体下方側には、ドア30が配設されている。ドア30はドアフレーム32とサイドガラス34等を備え、ドアフレーム32の車体上方側には、ゴム材等からなるウエザストリップ36が設けられている。そして、そのウエザストリップ36の車体下方側のドアフレーム32には、サイドガラス34の車体上方側端部が出入可能に挿入されるゴム材等からなるウエザストリップ38が設けられている。
【0019】
また、サイメンアウタ22の車体内方側面(車幅方向内側を向く面であり、以下、内面22Aという)には、補強部材としてのパッチ40が配設されている。このパッチ40は、例えば所定厚さの鋼材で構成され、図1で示すように、フロントピラー(Aピラー)52とセンターピラー(Bピラー)54の間のサイメンアウタ22の内面22Aに、車体前後方向に延在するように配置されるとともに、少なくともその車体上方側で車幅方向内側へ延在するフランジ部42と、車体下方側で、その車体下方側へ向けて突出形成されているフランジ部(突出部)44が、スポット溶接によって固着されている(図3参照)。
【0020】
また、図2、図3で示すように、このパッチ40の長手方向(車体前後方向)と直交する方向における略中央部には、レールアウタリインフォースメント26の車体外方側面(車幅方向外側を向く面であり、以下、外面26Aという)と一定の間隙Sを有して対面する座面46Aを備えた凸面部46が、長手方向(車体前後方向)に所定間隔を隔てて(例えば等間隔に)複数形成されている。
【0021】
すなわち、各凸面部46は、パッチ40の長手方向(車体前後方向)と直交する方向における略中央部を、車体内方側から見て凸状(図2で示す車体外方側から見て凹状)に形成することで構成されており、その車体内方側面(車幅方向内側を向く面)が、レールアウタリインフォースメント26の外面26Aに一定の間隙Sを有して対面する座面46Aとされている。
【0022】
なお、サイメンアウタ22とレールアウタリインフォースメント26との隙間は、前突や側突の対応要件により、一定でないことがある。そのため、パッチ40の長手方向(車体前後方向)における各凸面部46の突出高さは、それぞれ異なることがある。また、各凸面部46の車体下方側面は、ドアフレーム32の車体上方側端部である上縁部32Aに対向する支持面46Bとされている。
【0023】
また、図3で示すように、パッチ40の車幅方向外側端部に形成されたフランジ部44(特にその先端で車幅方向内側を向くエッジ部44A)は、ドアフレーム32の上縁部32Aよりも車幅方向外側に配置されるように構成されている。換言すれば、パッチ40のフランジ部44におけるエッジ部44Aとドアフレーム32の上縁部32Aとの間には、図3で示す車幅方向の断面視で、所定の間隔Lが形成される構成になっている。
【0024】
以上のような構成とされたルーフサイドレール20を備えた自動車10において、次にその作用を説明する。自動車10が横転(ロールオーバ)したときなどのルーフクラッシュ時には、図5で示すように、ルーフサイドレール20に路面G等から荷重が入力される。すると、例えばフロントピラー52とセンターピラー54の間のルーフサイドレール20のサイメンアウタ22が車体下方側及び車体内方側へ変形する。
【0025】
ここで、そのサイメンアウタ22の内面22Aには、図1〜図4で示すように、車体前後方向に延在するパッチ40が、スポット溶接等の固着手段によって固着され、サイメンアウタ22の強度が向上(補強)されている。したがって、サイメンアウタ22に入力された荷重は、パッチ40を介して、フロントピラー52及びセンターピラー54に効率よく伝達される。
【0026】
また、サイメンアウタ22が車体下方側及び車体内方側へ変形すると、図4で示すように、パッチ40に形成されている各凸面部46の各座面46Aが、それぞれレールアウタリインフォースメント26の外面26Aに圧接する。したがって、ルーフサイドレール20のサイメンアウタ22に入力された荷重は、パッチ40の各凸面部46(各座面46A)を介して、レールアウタリインフォースメント26の外面26Aで受け止められ、レールアウタリインフォースメント26に効率よく伝達される。
【0027】
そして、更にサイメンアウタ22が車体下方側へ変形すると、図4で示すように、パッチ40のフランジ部44におけるエッジ部44Aが、サイメンアウタ22を介して、ドアフレーム32の上縁部32Aに車幅方向外側から係合する。したがって、ルーフサイドレール20のサイメンアウタ22に入力された荷重は、初期の段階でパッチ40を介して、ドアフレーム32(上縁部32A)に効率よく伝達される。
【0028】
つまり、パッチ40のフランジ部44におけるエッジ部44Aが、ドアフレーム32の上縁部32Aに車幅方向外側から係合することにより、図6の実線で示すように、ドア30の車幅方向外側への面外変形(外れ)を、フランジ部44(エッジ部44A)がドアフレーム32に係合しない比較例の場合(2点鎖線で示す)よりも抑制することができるため、ドア30(ドアフレーム32)を、ルーフサイドレール20に入力された荷重をロッカ50に伝達する荷重伝達部材として活用することができる。
【0029】
また、このとき、図4で示すように、パッチ40の各凸面部46における各支持面46Bが、サイメンアウタ22を介して、ドアフレーム32の上縁部32Aに圧接する構成にすると、ルーフサイドレール20のサイメンアウタ22に入力された荷重は、パッチ40の各凸面部46(各支持面46B)を介して、ドアフレーム32(上縁部32A)に更に受け止められる。したがって、この場合には、ドアフレーム32に対して、より一層効率よく入力荷重を伝達させることができる。
【0030】
以上により、横転時又は側突時(ルーフクラッシュ時)にルーフサイドレール20のサイメンアウタ22に入力された荷重は、レールアウタリインフォースメント26とドアフレーム32に効率よく分散されて伝達されることになる。したがって、横転時又は側突時(ルーフクラッシュ時)における車室(図示省略)の変形を効果的に抑制することができる。
【0031】
なお、ドアフレーム32は、図7で示すような形状に形成してもよい。図7はドアフレーム32の変形例を示す概略断面図である。この図7で示すように、ドアフレーム32に、車体内方側へ所定長さ延在するストッパー部48を一体に形成し、ルーフクラッシュ時の入力荷重により、ルーフサイドレール20が車体下方側へ相対的に移動したときに、その接合部19(ウエザストリップ28)が、ストッパー部48と係合する構成にしてもよい。
【0032】
すなわち、このストッパー部48は、図7(A)で示すように、車体内方側端部が車体上方側へ向かって屈曲形成されてなる係止部48Aを有しており、この係止部48Aが、図7(B)で示すように、相対的に車体下方側へ移動して来たルーフサイドレール20の接合部19(ウエザストリップ28)に係止されることによって、ドアフレーム32が車幅方向外側へ移動するのが規制されるようになっている。
【0033】
つまり、このようなストッパー部48(係止部48A)を設ければ、ルーフクラッシュ時に、ドアフレーム32が車幅方向外側へ移動しようとするのを抑制することができるので、パッチ40のフランジ部44におけるエッジ部44Aを、より確実にドアフレーム32の上縁部32Aに車幅方向外側から係合させることができるようになり、更にはパッチ40の各凸面部46における各支持面46Bを、より確実にドアフレーム32の上縁部32Aに圧接させることができるようになる。
【0034】
以上、本実施形態に係る車両の荷重伝達構造について説明したが、本実施形態に係る車両の荷重伝達構造は、図示の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、パッチ40をサイメンアウタ22に固着する固着手段は、スポット溶接に限定されるものではなく、車体外方側から見えない(外観を損なわない)ような固着手段であれば、例えば接着剤等で固着する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ルーフサイドレールに補強部材が設けられた車両の概略側面図
【図2】補強部材の概略斜視図
【図3】車両のルーフサイドレール付近の構造を示す概略断面図
【図4】車両の横転時におけるルーフサイドレール付近の構造を示す概略断面図
【図5】車両の横転時におけるルーフサイドレールの変形状態を模式的に示す説明図
【図6】ドアの面外変形を模式的に示す説明図
【図7】ドアフレームの変形例を示す概略断面図
【符号の説明】
【0036】
10 自動車(車両)
12 ルーフ部
14 ルーフパネル
19 接合部
20 ルーフサイドレール
22 サイメンアウタ(アウタパネル)
22A 内面(車体内方側面)
24 レールインナ(インナパネル)
26 レールアウタリインフォースメント(リインフォースメント)
26A 外面(車体外方側面)
28 ウエザストリップ
30 ドア
32 ドアフレーム
32A 上縁部(車体上方側端部)
34 サイドガラス
40 パッチ(補強部材)
42 フランジ部
44 フランジ部(突出部)
44A エッジ部
46 凸面部
46A 座面
46B 支持面
48 ストッパー部
48A 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフサイドレールの車体外側部を構成するアウタパネルと、
前記アウタパネルよりも車体内方側に設けられ、前記ルーフサイドレールの車体内側部を構成するインナパネルと、
前記アウタパネルと前記インナパネルの間に設けられたリインフォースメントと、
前記アウタパネルの車体内方側面に設けられるとともに、車幅方向外側端部に車体下方側へ突出形成された突出部がドアフレームの車体上方側端部よりも車幅方向外側に配置された補強部材と、
を備えたことを特徴とする車両の荷重伝達構造。
【請求項2】
前記補強部材は、前記リインフォースメントの車体外方側面と一定の間隙を有して対面する凸面部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両の荷重伝達構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−196448(P2009−196448A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38585(P2008−38585)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】