説明

車両の車体用補強装置

車体の二箇所の被補強部分どうしを剛直に接続する棒体(11)を備える。被補強部分どうしの間に棒体(11)と平行に架け渡された油圧式減衰器(12)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に二つの被補強部分どうしを接続するように取付けることにより車体を補強する車両の車体用補強装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体は、軽量化を図りながら、強度が可及的高くなるように形成されている。この種の車体において、車輪懸架装置を取付ける部分などのように他の部位に較べてより一層大きな強度が必要とされる部位には、補強部材が二箇所の被補強部分どうしを接続するように取付けられている。この補強部材としては、剛体によって棒状に形成されたものや、例えば特開2002−211437号公報に示されているように減衰力発生手段を備えたものがある。
【0003】
この公報に示されている補強部材は、長尺状に形成されており、その長手方向の途中に油圧式減衰器やゴムなどの減衰力発生手段が介装されている。この補強部材は、車体の二つの被補強部分どうしの間、すなわち車体左側のサスペンション取付部分と、車体右側のサスペンション取付部分との間に架け渡されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の車体は、走行中に急なハンドル操作を行ったりしたときに二箇所の被補強部分どうしの間隔が短縮される方向や、これとは逆方向に弾性変形することがある。このとき、被補強部分どうしを接続する補強部材にも圧縮方向や伸長方向に荷重が加えられる。補強部材として剛体のみによって形成されたものを使用した場合は、上述したように車体が変形するときに加えられる荷重によって補強部材が圧縮方向または伸長方向に弾性変形する。
【0005】
そして、この補強部材は、荷重から開放されて弾性変形させる力が消失したときに自らの弾性によって伸び、または収縮する。このように長手方向に伸縮するようになるため、剛体からなる従来の補強部材は、急ハンドル時などで長手方向に振動するようになる。このため、この剛体製の補強部材を使用した車体は、弾性変形し難くなる反面、不必要な振動が補強部材から発生するようになるという問題があった。
【0006】
このような不具合は、特開2002−211437号公報に示されているような、減衰力発生手段を有する補強部材を使用することによってある程度は解消することができる。これは、減衰力発生手段によって補強部材自体の振動が減衰されるからである。
しかしながら、減衰力発生手段が設けられた補強部材は、圧縮方向または伸長方向に荷重が加えられたときの反発力が小さくなるから、剛体製の補強部材に較べると車体の変形を抑える能力は低いものであった。
【0007】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、車体の変形を確実に抑制することができるとともに振動発生源となることがない車両の車体用補強装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明に係る車両の車体用補強装置は、車体の二箇所の被補強部分どうしを剛直に接続する補強部材と、前記被補強部分どうしの間に前記補強部材に沿って架け渡された粘性的減衰力を発生する減衰力発生手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、請求項1ないし請求項3記載の発明によれば、両端部に圧縮方向または伸長方向に荷重が加えられたときに補強部材が実質的に梁として機能し、車体を補強する。このとき、補強部材は、荷重が両端部に加えられることによって圧縮方向または伸長方向に弾性変形し、この荷重から開放されたときに自らの弾性によって伸び、または収縮するために、長手方向に振動するようになる。しかし、本発明による車体用補強装置は、補強部材が取付けられる二箇所の被補強部分どうしの間に減衰力発生手段が架設されているから、この減衰力発生手段によって補強部材の長手方向の変位が小さく抑えられ、これにより振動が減衰される。
したがって、本発明によれば、車体の変形を確実に抑制することができるとともに振動が発生することがない車両の車体用補強装置を提供することができる。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、補強部材と減衰力発生手段とにおける取付用ブラケットに取付けられる各々の一端部は、取付用ブラケットを介して互いに剛直に接続される。このため、補強部材の振動を一端部から取付用ブラケットを介して減衰力発生手段の一端部に直接伝達させることができ、振動を減衰力発生手段によってより一層確実に減衰させることができる。また、取付用ブラケットを被補強部分に取付けることによって、補強部材と減衰力発生手段の一端部を一度に被補強部分に取付けることができる。このため、この車体用補強装置は、補強部材と減衰力発生手段とを個々に車体に取付ける場合に較べて車体に容易に取付けることができる。
【0011】
請求項5記載の発明によれば、補強部材と減衰力発生手段のうち一つだけ設けられる部材を車体の二箇所の被補強部分を結ぶ仮想線と同一軸線上に位置付け、複数設けられる部材を仮想線に対して対称になる位置に位置付けることができる。
このため、この発明に係る車体用補強装置は、車体の被補強部分から荷重が加えられたときに反力によるモーメントが生じることはなく、反力を長手方向(仮想線に沿う方向)に作用させて車体をより一層強固に補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係る車両の車体用補強装置を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明に係る補強装置を車体に取付けた状態を示す斜視図である。
【図3A】図3Aは、他の実施の形態を示す側面図である。
【図3B】図3Bは、他の実施の形態を示す平面図である。
【図4】図4は、補強装置を車体に取付けた状態を示す斜視図である。
【図5A】図5Aは、他の実施の形態を示す側面図である。
【図5B】図5Bは、他の実施の形態を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る車両の車体用補強装置の一実施の形態を図1および図2によって詳細に説明する。
図1は本発明に係る車両の車体用補強装置を示す平面図、図2は本発明に係る補強装置を車体に取付けた状態を示す斜視図である。
これらの図において、符号1で示すものは、この実施の形態による車体用補強装置2を二つ使用して形成された補強装置組立体を示す。この補強装置組立体1は、図2に示すように、自動車のシャーシ3における前輪懸架装置4が取付けられる部分を補強するためのものである。
【0014】
前輪懸架装置4は、従来からよく知られているように、シャーシ3の一部を構成するフロントサスペンションメンバ5と、このフロントサスペンションメンバ5の車幅方向の両端部から車体の側方へ延びる左右一対のロアアーム6,6と、これらのロアアーム6,6の先端部にナックル(図示せず)を介して連結された左右一対のアッパーアーム(図示せず)と、これら両アームの一方の揺動部分とシャーシ3のボディ3aとの間に介装されたクッションユニット(図示せず)などによって構成されている。
【0015】
フロントサスペンションメンバ5は、図示していないエンジンの一部と、ロアアーム6の前側ピボット部7とを支持しており、シャーシ3のボディ3aにラバーマウントあるいはリジッドマウントされている。
ロアアーム6は、図2に示すように、前側ピボット部7と後述する後側ピボット部8とによってシャーシ3に対して上下方向に揺動自在に支持されている。後側ピボット部8は、図示していない内筒と、この内筒を内側に収容するとともにロアアーム6のアーム本体6aが溶接された外筒8aと、これら両筒体どうしの間に介装されたクッションゴム(図示せず)とを備え、シャーシ3のボディ3aに突設された取付座9に取付用ボルト10によって取付けられている。
【0016】
この後側ピボット部8の取付座9への取付けは、後側ピボット部8を軸線方向が上下方向を指向する状態で取付座9の下端部に重ね、内筒に挿通させた取付用ボルト10によってこの内筒を取付座9に締め付けることによって行う。すなわち、この後側ピボット部8を取付座9に取付けた状態では、クッションゴムが弾性変形して外筒8aが内筒に対して変位することによって、アーム本体6aが揺動する。
【0017】
補強装置組立体1は、フロントサスペンションメンバ6の車幅方向の中央部と、左右の取付座9とを接続してシャーシ3を補強することができるように、二つの車体用補強装置2,2を平面視においてV字状に組合わせることによって形成されている。
車体用補強装置2は、図1に示すように、1本の金属製の丸棒によって形成された棒体11と、この棒体11に沿って棒体11と平行に並ぶように配設された油圧式減衰器12と、これら両部材の一端部(図1においては左側端部)どうしを接続する第1の取付用ブラケット13と、両部材の他端部どうしを接続する第2の取付用ブラケット14とによって構成されている。この実施の形態においては、棒体11によって本発明でいう補強部材が構成され、油圧式減衰器12によって本発明でいう減衰力発生手段が構成されている。
【0018】
この実施の形態による第1の取付用ブラケット13は、第2の取付用ブラケット14に較べて大型に形成されて二つの補強装置2の一端部がそれぞれ取付けられており、車体の被補強部分に2本の固定用ボルト15,15よって固定されている。この第1の取付用ブラケット13が取付けられる車体の被補強部分とは、フロントサスペンションメンバ6の車幅方向の中央部のことである。
【0019】
上述した二つの補強装置2の各々の棒体11は、中央部が両端部より太くなるように形成された中空の丸棒からなり、この棒体11の他端部には、連結用のボス16と第2の取付用ブラケット14とが溶接されている。
この棒体11の一端部と第1の取付用ブラケット13との接続は、第1の取付用ブラケット13に形成された取付孔13aに棒体11の一端部を挿入し、この取付孔13aの開口部分に一端部を溶接することによって行われている。取付孔13aは、第1の取付用ブラケット13に2本の棒体11が平面視においてV字状に取付けられるように、その軸線が車体の後方(図1においては右方)に向かうにしたがって次第に車体の外側に位置するように斜めに形成されている。
【0020】
この実施の形態による棒体11の他端部は、取付用ボルト10によって第2の取付用ブラケット14とともに車体の被補強部分に固定されている。この被補強部分とは、図2に示すように、ロアアーム7の後側ピボット部8が取付けられる取付座9のことである。すなわち、取付用ボルト10は、後側ピボット部と第2の取付用ブラケット14とを共締めにしている。
この実施の形態による棒体11は、図2に示すように、他方の補強装置2の棒体11にクロスメンバ17を介して接続されている。
【0021】
油圧式減衰器12は、シリンダ21と、このシリンダ21に挿抜自在に取付けられたピストンロッド22と、シリンダ21内におけるピストンロッド22とは反対側に移動自在に嵌合されたフリーピストン23と、ピストンロッド22の先端部に固定された絞り付きピストン24と、この絞り付きピストンをピストンロッド22とは反対方向へ付勢する圧縮コイルばね25などによって構成されている。
【0022】
シリンダ21は、ピストンロッド22とは反対側の端部にボス12aが設けられ、このボス12aと固定用ボルト26とを介して取付金具26aに固定されている。この取付金具26aは、第1の取付用ブラケット13をフロントサスペンションメンバ5に固定する固定用ボルト15によって第1の取付用ブラケット13に固定されている。なお、この取付金具26aは、第1の取付用ブラケット13に溶接することもできる。
【0023】
このシリンダ21の内部は、フリーピストン23によって高圧ガス室27と油室28とに画成されている。油室28は、ピストンロッド22側に位置する第1の油室29と、フリーピストン23側に位置する第2の油室30とに絞り付きピストン24によって画成されている。高圧ガス室27は高圧のN2 ガスが充填され、第1および第2の油室28,29は作動油で満たされている。
【0024】
ピストンロッド22は、シリンダ21とは反対側の端部にボス12bが設けられ、このボス12bと固定用ボルト31とを介して取付金具32が固定されている。取付金具32は、固定用ボルト33によって第2の取付用ブラケット14に固定されている。なお、取付金具32は、第2の取付用ブラケット14に溶接することもできる。
【0025】
このピストンロッド22に取付けられた絞り付きピストン24は、第1の油室29と第2の油室30とを連通する絞り(図示せず)が設けられている。すなわち、この油圧式減衰器12は、作動油が絞りを通って第1の油室29から第2の油室に、または第2の油室30から第1の油室29に流入することによって、減衰力(粘性的減衰力)が発生するように構成されている。
【0026】
圧縮コイルばね25は、絞り付きピストン24とシリンダ21のピストンロッド側カバー21aとの間に弾装されている。この圧縮コイルばね25の弾発力は、高圧ガス室27内のガスの圧力を相殺するような大きさに設定されている。すなわち、フリーピストン23は、高圧ガス室27内のガスの圧力によって第2の油室30内の作動油を押す。しかし、絞り付きピストン24は、圧縮コイルばね25の弾発力により付勢されることによって、その位置が変わることがなく中立位置に保持される。
【0027】
また、圧縮コイルばね25は、その略全体が形状記憶合金またはバイメタルによって形成されている。これらの材料によって圧縮コイルばね25を形成するに当たっては、圧縮コイルばね25の温度が高く(または低く)なることにより、その特性に基づき、シリンダ21の軸線方向に対する自由長が長く(または短く)なって、上記付勢力が増大(または減少)するように構成されている。
【0028】
この構成を採ることにより、この油圧式減衰器12においては、例えばエンジンの熱によって油圧式減衰器12の温度が上昇し、高圧ガス室27内のガスの圧力が増大したとしても、絞り付きピストン24を中立位置に止めておくことができる。これは、この油圧式減衰器12は、絞り付きピストン24を付勢する圧縮コイルばね25の弾発力も温度上昇により増大するからである。このため、温度変化によって補強装置2から車体の二つの被補強部分に荷重が加えられるようなことはない。なお、フリーピストン23は、シリンダ21内のピストンロッド22の体積の増減分に相当する長さだけ軸線方向に移動する。
【0029】
このように形成された油圧式減衰器12は、軸線が棒体11の軸線と平行になるように第1の取付用ブラケット13と第2の取付用ブラケット14とに取付けられている。この実施の形態のように、二つの補強装置2を平面視においてV字状に組合わせて補強装置組立体1を形成するに当たっては、両棒体11,11とクロスメンバ17との接続の関係から、油圧式減衰器12は、棒体11の車体外側に隣接するように位置付けられている。
【0030】
上述したように構成された車体用補強装置2は、第1の取付用ブラケット13をサスペンションメンバ14の車幅方向中央部に固定するとともに、第2の取付用ブラケット14をロアアーム7の後側ピボット部8に固定することによって車体に取付けられる。このように補強装置2を車体に取付けることにより、車体の二箇所の被補強部分(サスペンションメンバ14と後側ピボット部8)が棒体11によって互い剛直に接続される。
【0031】
このため、この車体用補強装置2は、例えば急なハンドル操作が行われたりして車体(シャーシ3)が弾性変形し、両端部に圧縮方向または伸長方向に荷重が加えられたときに棒体11が実質的に梁として機能するようになって車体を補強する。この結果、この補強装置2を装備することによって、車体の変形を少なく抑えることができる。
このように車体用補強装置2が車体の弾性変形を抑制するときには、棒体11は、荷重が両端部に加えられることによって圧縮方向または伸長方向に弾性変形し、この荷重が消失したときに自らの弾性によって伸び、または収縮する。このため、このときには棒体11は長手方向に振動するようになる。
【0032】
しかし、この補強装置2においては、棒体11に第1の取付用ブラケット13と第2の取付用ブラケット14とを介して油圧式減衰器12が接続されており、棒体11が長手方向に振動する場合には油圧式減衰器12によって減衰力が生じるから、この油圧式減衰器12によって棒体11の振動が減衰される。すなわち、この車体用補強装置2によって補強されたシャーシ3は、棒体11が振動発生源となって振動が生じることはない。
したがって、この車体用補強装置2は、棒体11の振動を小さく抑えながら車体の変形を少なく抑えることができる。
【0033】
また、この実施の形態による車体用補強装置2は、棒体11と油圧式減衰器12の一端部どうしが第1の取付用ブラケット13を介して互いに剛直に接続され、棒体11と油圧式減衰器12の他端部どうしが第2の取付用ブラケット14を介して互いに剛直に接続されている。このため、この車体用補強装置2においては、棒体11の振動を第1の取付用ブラケット13と第2の取付用ブラケット14とを介して油圧式減衰器12に直接伝達させることができる。したがって、この車体用補強装置2においては、棒体11の振動を油圧式減衰器12によってより一層確実に減衰させることができる。
【0034】
また、棒体11と油圧式減衰器12の端部どうしが一つの取付用ブラケット13,14に取付けられていることにより、棒体11と油圧式減衰器12の端部を一度に被補強部分に取付けることができる。このため、補強装置2の取付作業を容易に行うことができる。この実施の形態では、一つの第1の取付用ブラケット13を車体左側の車体用補強装置2と車体右側の車体用補強装置2とで共有しているから、補強装置2を二つ有する補強装置組立体1を車体に容易に取付けることができる。しかも、上記構成を採ることにより、車体左側の車体用補強装置2と、車体右側の車体用補強装置2とをそれぞれ別個に上述した位置に取付ける場合に較べて高い強度が得られる。
【0035】
(第2の実施の形態)
本発明に係る車両の車体用補強装置は図3A、図3Bおよび図4に示すように形成することができる。
図3Aは他の実施の形態を示す側面図、図3Bは他の実施の形態を示す平面図である。図4は補強装置を車体に取付けた状態を示す斜視図である。これらの図において、図1および図2よって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0036】
図3A、図3Bおよび図4に示す車体用補強装置40は、1本の油圧式減衰器12と、この油圧式減衰器12の両側方に位置する2本の帯体41,41と、これら油圧式減衰器12と帯体41の端部どうしを互いに接続する第1および第2の取付用ブラケット42,43とから構成されている。油圧式減衰器12は、第1の実施の形態を採るときに用いたものと同等の構造のものが使用されている。この実施の形態においては、帯体41によって本発明でいう補強部材が構成されている。
【0037】
帯体41は、細帯状に形成された鋼板からなり、両端部に固定用ボルト44によって第1および第2の取付用ブラケット42,43が固定されている。なお、帯体41は、第1および第2の取付用ブラケット42,43に溶接してもよい。
第1および第2の取付用ブラケット42,43は、断面コ字状に形成されたブラケット本体45と、このブラケット本体45の内側に一端部が挿入されて溶接された取付片46とによって構成されている。この取付片46は、幅方向(帯体41が並ぶ方向)の中央部にボルト孔46aが穿設されている。
【0038】
ブラケット本体45は、内側に油圧式減衰器12の端部のボス12a,12bが嵌合するとともに、両外側面に帯体41の端部が重ねられており、これらを貫通する固定用ボルト44によって帯体41と油圧式減衰器12とに固定されている。
このように第1および第2の取付用ブラケット42,43を帯体41と油圧式減衰器12とに取付けることによって、油圧式減衰器12の両側方に帯体41が互いに平行に配設された状態で車体用補強装置40が形成される。
【0039】
この車体用補強装置40は、図4に示すように、自動車の後輪懸架装置47におけるシャーシ3に取付けられるマウント部分48と、このマウント部分48の近傍に位置するシャーシ3の下面とに両端部の取付片46,46が取付けられることにより、二箇所の被補強部分どうしの間に架け渡されている。
【0040】
この実施の形態による車体用補強装置40においては、車体の二箇所の被補強部分(マウント部分48とシャーシ3の下面)を結ぶ仮想線L{図3(b)参照}と同一軸線上に油圧式減衰器12を位置付けることができる。また、この車体用補強装置40においては、2本の帯体41,41を仮想線Lに対して対称になる位置に位置付けることができる。
【0041】
このため、この実施の形態による車体用補強装置40は、両端部に車体の被補強部分から加えられた荷重が2本の帯体41,41に均等に分配されるとともに油圧式減衰器12にその軸線方向に沿って作用するから、荷重が加えられたときに反力によるモーメントが生じることはなく、反力を長手方向(仮想線Lに沿う方向)に作用させて車体を強固に補強することができる。
【0042】
(第3の実施の形態)
本発明に係る車両の車体用補強装置は図5A、図5Bに示すように形成することができる。
図5Aは他の実施の形態を示す側面図、図5Bは他の実施の形態を示す平面図で、図5Bは要部を破断した状態で描いてある。図4は補強装置を車体に取付けた状態を示す斜視図である。これらの図において、図1ないし図4によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0043】
図5Aおよび図5Bに示す車体用補強装置50は、粘性的減衰力を発生する減衰力発生手段としてゴム製の粘弾性部材51を備えている。この粘弾性部材51は、帯板41と平行に延びる帯状に形成されており、一対の支持用バー52,53の間に挟まれ保持された状態で帯板41と結合されている。
【0044】
支持用バー52,53は、金属材料によって形成されており、粘弾性部材51の一方の主面に沿って帯板41の長手方向に延びる板状部52a,53aと、ブラケット本体45に固定用ボルト44によって帯板41とともに固定されたボス52b,53bとから構成されている。粘弾性部材51の一方の主面は、一方の支持用バー52の板状部52aに固着し、粘弾性部材51の他方の主面は、他方の支持用バー53の板状部53aに固着している。
【0045】
これらの支持用バー52,53のうち一方の支持用バー52のボス52bは、車体用補強装置50の一端部の第1の取付用ブラケット42に取付けられ、他方の支持用バー53のボス53bは、車体用補強装置50の他端部の第2の取付用ブラケット43に取付けられている。
板状部52aと板状部53aとは、図5Bに示すように、仮想線Lに対して一側方と他側方とに偏る位置であって、仮想線Lに対して対称になる位置に位置付けられており、粘弾性部材51を仮想線Lがその中心を通る状態で支持している。
【0046】
このように構成された車体用補強装置50は、帯体41が実質的に梁として機能するようになって車体を補強し、帯体41が長手方向に振動する場合には粘弾性部材51が面方向に弾性変形することによって減衰力が生じる。この結果、この車体用補強装置50によって補強されたシャーシ3は、帯体41が振動発生源となって振動が生じることはない。したがって、この車体用補強装置50は、帯体41の振動を小さく抑えながら車体の変形を少なく抑えることができる。
【0047】
上述した第1ないし第3の実施の形態においては、棒体11または帯体41と油圧式減衰器12の両端部どうしまたは支持用バー52,53の先端部を第1または第2の取付用ブラケット13,14,42,43に取付ける例を示したが、取付用ブラケットは、補強装置2,40,50の一方の端部にのみ取付けることができる。この構成を採る場合は、補強装置2,40の他方の端部は、棒体11または帯体41と油圧式減衰器12の両方が車体の被補強部分に直接取付けられる。この構成を採る場合、車体用補強装置50の他方の端部は、帯体41と、支持用バー52,53のうち他方の端部側の部材とが車体の被補強部分に直接取付けられる。なお、車体への取付工数は増加するが、棒体11または帯体41の両端部と、油圧式減衰器12の両端部、支持用バー52,53の先端部をそれぞれ車体の被補強部分に直接取付ける構成を採ってもよく、この場合でも実施の形態と同様に振動の発生を阻止しながら車体を補強することができる。
【0048】
また、第2の実施の形態および第3の実施の形態においては、減衰力発生手段(油圧式減衰器12、粘弾性部材51)の両側方に帯体41を配設する例を示したが、本発明はこのような限定にとらわれることはなく、1本の補強部材(棒体11または帯体41)の両側方に減衰力発生手段を配設することもできる。さらに、第2の実施の形態および第3の実施の形態では板状の帯体41を使用する例を示したが、補強部材は、第1の実施の形態で示したように棒状のものを使用することができる。さらにまた、本発明に係る補強装置は、第1の実施の形態で示した棒体11と第2または第3の実施の形態で示した補強装置40,50を直列に接続して構成することもできる。これらの部材を直列に並べるに当たっては、例えば補強装置40,50の両端部に棒体11をそれぞれ同一軸線上に位置するように溶接する。
【0049】
加えて、上述した各実施の形態においては、本発明に係る車体用補強装置2,40,50によってシャーシ3に前輪懸架装置4または後輪懸架装置47を取付ける部分を補強する例を示したが、本発明に係る補強装置は、車体の他の部分を補強するために使用することができる。例えば、本発明に係る補強装置は、車体前部にエンジンが搭載されている自動車において、エンジン室の上部に開口部分を車幅方向に横切るように設けることができる。この構成を採るに当たっては、例えば、第2または第3の実施の形態で示した補強装置40,50の両端部に棒体11を直列に並べて溶接することによって形成した補強装置を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る車体用補強装置は、乗用車やトラック、バスなどの車両の車体を補強するものとして使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の二箇所の被補強部分どうしを剛直に接続する補強部材と、前記被補強部分どうしの間に前記補強部材に沿って架け渡された粘性的減衰力を発生する減衰力発生手段とを備えたことを特徴とする車両の車体用補強装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の車体用補強装置において、減衰力発生手段が油圧式減衰器であることを特徴とする車両の車体用補強装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両の車体用補強装置において、減衰力発生手段がゴム製の粘弾性部材であることを特徴とする車両の車体用補強装置。
【請求項4】
請求項1記載の車両の車体用補強装置において、補強部材と減衰力発生手段の少なくとも一方の端部どうしを一つの取付用ブラケットを介して被補強部分に固定したことを特徴とする車両の車体用補強装置。
【請求項5】
請求項1記載の車両の車体用補強装置において、補強部材と減衰力発生手段のいずれか一方の部材を複数形成して他方の部材の両側方に互いに平行になるように並べて配設したことを特徴とする車両の車体用補強装置。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【国際公開番号】WO2005/077738
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【発行日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517934(P2005−517934)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001768
【国際出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】