説明

車両の運転支援装置

【課題】自車両に搭載した装備のみで他車両のルートを適切に予測し、精度の良い運転支援を行う。
【解決手段】制御ユニット5は、移動する立体物毎に、移動する立体物を基準とする座標系を設定し、移動する立体物がこの座標系で移動する際のリスクを演算し、このリスクが最小となる走行ルートを回避ルートとして推定し、回避ルートのリスクに応じて、自車両1のディスプレイ21により警報を行うと共に、自動ブレーキ制御装置22に信号を出力して自動ブレーキ制御を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオカメラ、単眼カメラ、ミリ波レーダ等で検出した自車両周辺の白線や立体物に対してリスクを設定し、警報制御や制動制御等の運転支援を行う車両の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、ITS(Intelligent Transport Systems)、車車間通信システム、車載の画像処理システム、レーダ装置等から得られる情報を基に、前方環境を認識し、安全な走行ができるように運転を支援する様々な運転支援装置が提案され、実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、自車両の位置データおよび自車両の車両動向を示すデータより、逐次シミュレーションを行い、現在から数秒後の自車両の四隅の一座標を演算し、この位置座標に位置誤差を加え、自車両の走行時空間内での存在確立分布を求め、この結果を他車両に送信すると共に、他車両から位置データ及び存在確率分布を受信して、自車両と他車両のデータより衝突確立を演算する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−276696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1で開示される技術では、現在の車両の運動状態を維持することを前提に、シミュレーションを行って衝突予測を行い警報するものであり、他車両と自車両との距離が近くならなければ精度の良い衝突確立を演算できないという問題がある。例えば、対向車等の他車両は、実際には回避行動をとるため、当初衝突する可能性が高い位置に存在、或いは、運動をしていたとしても、衝突に至らない場合が多く、不必要に警報を発してしまうことがある。逆に、当初衝突する可能性が低い位置に存在、或いは、運動をしていたとしても、対向車側に路側物がある場合等、実際には危険な状況であるにも拘わらず警報がなされない場合もある。また、車車間通信の装備を備えていない車両については適用できないという問題もある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自車両に搭載した装備のみで他車両のルートを適切に予測し、精度の良い運転支援を行うことができる車両の運転支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両の周辺環境を認識する周辺環境認識手段と、上記周辺環境から移動する立体物を抽出する移動立体物抽出手段と、上記移動する立体物毎に、当該移動する立体物の今後のリスクを演算するとともに、該リスクに応じて当該立体物の今後の走行ルートを推定する走行ルート推定手段と、上記走行ルートのリスクに応じて自車両の運転支援制御を行う制御実行手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明による車両の運転支援装置によれば、自車両に搭載した装備のみで他車両のルートを適切に予測し、精度の良い運転支援を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1乃至図5は本発明の実施の一形態を示し、図1は車両に搭載した運転支援装置の概略構成図、図2は運転支援制御プログラムのフローチャート、図3は図2から続くフローチャート、図4は自車両を基準とする座標を動く立体物kを基準とする座標系に変換する際のリスク関数の一例を示す説明図、図5は立体物kに対し生成される回避ルートとしての走行ルートの一例を示す説明図である。
【0009】
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)で、この車両1には、運転支援装置2が搭載されている。この運転支援装置2は、ステレオカメラ3、ステレオ画像認識装置4、制御ユニット5等を主要部として構成されている。
【0010】
また、自車両1には、自車速Vを検出する車速センサ11等が設けられており、自車速Vはステレオ画像認識装置4と制御ユニット5に入力される。
【0011】
ステレオカメラ3は、ステレオ光学系として、例えば1組の(左右の)CCDカメラで構成される。これら左右のCCDカメラは、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔をもって取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、画像データをステレオ画像認識装置4に入力する。
【0012】
ステレオ画像認識装置4における、ステレオカメラ3からの画像の処理は、例えば以下のように行われる。まず、ステレオカメラ3で撮像した自車両1の進行方向の1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から距離情報を求め、距離画像を生成する。そして、このデータを基に、周知のグルーピング処理を行い、予め記憶しておいた3次元的な道路形状データ、側壁データ、立体物データ等の枠(ウインドウ)と比較し、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データを抽出すると共に、立体物を、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出する。この際、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者は、動く立体物として認識され、電柱等その他の立体物は静止物として認識される。
【0013】
上述の認識した各データは、自車両1を原点とし、自車両1の前後方向をX軸、幅方向をY軸とする座標系におけるそれぞれの位置が演算され、特に、2輪車、普通車両、大型車両の車両データにおいては、その前後方向長さが、例えば、3m、4.5m、10m等と予め推定されて、また、幅方向は検出した幅の中心位置を用いて、その車両の現在存在する中心位置が(xobstacle[i],yobstacle[i])の座標で演算される。尚、車車間通信等により、車両の前後方向長さが精度良く得られる場合には、その長さデータを用いて、上述の中心位置を演算するようにしても良い。また、歩行者のデータにおいては、その前後方向長さが、例えば、前後方向0.5m等と予め推定されて、幅方向は検出した幅の中心位置を用いて、その歩行者の現在存在する中心位置が(xobstacle[i],yobstacle[i])の座標で演算される。尚、座標の値の添字[i]は、立体物の識別符号(ID)であり、後述するように、座標変換された場合には、自車両1のIDは[0]で示す。
【0014】
更に、立体物データにおいては、自車両1からの距離のX軸方向変化及びY軸方向変化から自車両1に対する相対速度が演算され、この相対速度に自車両1の速度Vをベクトル量を考慮して演算することにより、それぞれの立体物のX軸方向速度、Y軸方向速度(vxobstacle[i],vyobstacle[i])が演算される。また、それぞれの立体物のX軸方向速度、Y軸方向速度(vxobstacle[i],vyobstacle[i])に基づき、それそれの立体物のヨーレート(dψ[i]/dt)が演算される(例えば、横加速度を車速で除算する等)。
【0015】
こうして得られた各情報、すなわち、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、及び、立体物データの各データは制御ユニット5に入力される。このように、本実施の形態においては、ステレオカメラ3及びステレオ画像認識装置4は、周辺環境認識手段、移動立体物抽出手段として設けられている。
【0016】
制御ユニット5は、車速センサ11から自車速V、ステレオ画像認識装置4から白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、及び、立体物データの各データが入力される。そして、後述する運転支援制御プログラムに従って、上述の各入力信号に基づき、移動する立体物毎に、移動する立体物を基準とする座標系を設定し、移動する立体物がこの座標系で移動する際のリスクを演算し、このリスクが最小となる走行ルートを回避ルートとして推定し、回避ルートのリスクに応じて、ディスプレイ21により警報を行うと共に、自動ブレーキ制御装置22に信号を出力して自動ブレーキ制御を実行させる。すなわち、制御ユニット5は、走行ルート推定手段、制御実行手段としての機能を有して構成されている。
【0017】
次に、運転支援装置2で実行される運転支援制御プログラムを図2、図3のフローチャートで説明する。
まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で必要パラメータ、具体的には、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、及び、立体物データ(種別、自車両1からの距離、中心位置(xobstacle[i],yobstacle[i])、速度(vxobstacle[i],vyobstacle[i])、ヨーレート(dψ[i]/dt)等)の各データを読み込む。
【0018】
次に、S102に進み、白線(ガードレール、側壁も白線と同等に扱うものとする)を対象とする現在のリスク関数Rlineを、以下の(1)式により、演算する。
Rline=Kline・(y−ylinec) …(1)
ここで、Klineは、予め設定したゲイン、ylinecは白線中央座標である。すなわち、白線を対象とする現在のリスク関数Rlineは、図4に示すように、左右の白線(ガードレール、側壁も白線と同等に扱う)で認識される走行路の中心を、中心軸とする2次関数で与えられる。尚、本実施の形態では、リスク関数Rlineを2次の関数としているが、リスク関数Rlineは、走行路の中心から白線に近いほど、より大きなリスク値を導く関数であれば良く、例えば、4次或いは6次の関数とすることもできる。また、本実施の形態では、ガードレール、側壁も白線と同等に扱って2次関数のリスク関数Rlineを与えるようにしているが、ガードレール、側壁の場合は、白線に対するリスク関数Rlineとは異なる関数に変更し、白線の場合よりも大きなリスク値を導くようにしても良い。例えば、左右の白線に対するリスク関数Rlineを2次関数で与えた場合、カードレール、側壁に対しては4次或いは6次の関数に変更する。また、同じ2次関数であっても、ゲインKlineの値を大きな値に変更するようにしても良い。更に、白線に対するリスク関数Rlineは、走行路の中心を中心軸とする例に限らず、中心軸をオフセットさせて、左側と右側の白線とでリスク値を互いに異ならせるようにしても良い。
【0019】
次いで、S103に進み、i個の立体物の中で、自車両1を除く動く立体物の一つを立体物kとして選択し、この立体物kを基準とする座標系に座標変換する。以下、選択した立体物kの各立体物データは、添字[i]に代えて[k]で示す。
【0020】
この座標変換により、立体物kの位置は原点、すなわち、(xobstacle[k]k、yobstacle[k]k)=(0、0)となり、自車両位置は、
(xobstacle[0]k、yobstacle[0]k)=(−xobstacle[k]、−yobstacle[k])…(2)
となる。
【0021】
また、立体物iの位置は、
(xobstacle[i]k、yobstacle[i]k)
=(xobstacle[i]−xobstacle[k]、yobstacle[i]−yobstacle[k]) …(3)
となる。
【0022】
更に、S102で演算された、白線に対するリスク関数Rlineは、
Rlinek=Kline・(y−(ylinec−yobstacle[k])) …(4)
となる。
【0023】
ここで、変換された座標及びリスク関数の最後の添字kは、立体物kを基準に座標変換された値であることを示すものである。
【0024】
次いで、S104に進み、立体物kを基準とする自車両1も含む各立体物iを対象とする現在のリスク関数Robstacle[i]kを、以下の(5)式により演算する。
Robstacle[i]k=Kobstacle・exp(−((xobstacle[i]k−x)
/(2・σxobstacle[i]))−((yobstacle[i]k−y)
/(2・σyobstacle[i]))) …(5)
ここで、Kobstacleは、予め設定したゲインである。また、σxobstacle[i]は予め設定しておいた対象のX軸方向の分散を示し、σyobstacle[i]は、予め設定しておいた対象のY軸方向の分散を示し、これら分散σxobstacle[i]、σyobstacle[i]は、例えば、ステレオカメラ3による認識精度が低いほど大きく設定するようにしても良い。また、分散σxobstacle[i]、σyobstacle[i]は、対象の種別が、普通車両及び大型車両の場合を基準として、歩行者、2輪車である場合は大きく設定し、それ以外の立体物の場合は小さく設定するようにしても良い。更に、自車両1と対象となる立体物の幅方向のラップ率に応じて設定するようにしても良い。図4中、立体物iは、上述の(5)式により演算した立体物iを対象とする立体物kを基準とする現在のリスク関数Robstacle[i]kの一例である。
【0025】
次に、S105に進み、立体物kを基準とする現在のトータルリスク関数Rkを、以下の(6)式により、演算する。
Rk=Rlinek+ΣRobstacle[i]k …(6)
【0026】
次いで、S106に進み、立体物kを基準とするt秒後の各立体物位置(xobstacle[i]k(t),yobstacle[i]k(t))を、以下の(7)式により推定する。
(xobstacle[i]k(t),yobstacle[i]k(t))=(xobstacle[i]k+vxobstacle[i]・t,
yobstacle[i]k+vyobstacle[i]・t)…(7)
【0027】
次に、S107に進み、(xobstacle[i]k、yobstacle[i]k)=(xobstacle[i]k(t),yobstacle[i]k(t))を、上述の(6)式のトータルリスク関数Rkを幅方向(y方向)で偏微分した以下の(8)式に代入し、(8)式により、求めたyの値をリスク極小点ymink(x,t)とする。
【0028】
すなわち、
∂Rk/∂y=0(但し、(xobstacle[i]k、yobstacle[i]k)=(xobstacle[i]k(t),yobstacle[i]k(t))) …(8)
【0029】
次に、S108に進み、t秒後の立体物kの位置(Xk(t),Yk(t))を、以下の(9)式により推定する。
(Xk(t),Yk(t))=(Vxobstacle[k]・t,Vxobstacle[k]・∫sinψ[k](τ)dτ;積分範囲は0≦τ≦t)
…(9)
ここで、ψ[k](t)は、立体物kのヨー角であり、以下の(10)式により、演算される。
ψ[k](t)=(dψ[k]/dt)・t
+(1/2)・((dψ[k]/dt)+(uk(t)/Iz))・t …(10)
ここで、Izは、ヨー慣性モーメントである。また、uk(t)は旋回制御量であり、付加ヨーモーメントである。
【0030】
次いで、S109に進み、上述のS107で演算したy方向の極小点ymink(x,t)に、上述のS108で推定したt秒後の立体物kの位置を代入し、t秒後の立体物kの位置Xk(t)における極小点ymink(Xk(t),t)を演算する。
【0031】
次に、S110に進み、各時間毎の立体物kの横位置Yk(t)と極小点ymink(Xk(t),t)の偏差と旋回制御量uk(t)で各目的関数Jkを作成し、それぞれの目的関数Jkについて目的関数Jkを最少とする各時間毎の旋回制御量uk(t)を求める。
【0032】
例えば、図5に示すように、立体物kが時刻0(現在)〜Δtまで移動する範囲を制御対象領域と考え、この間を、dtで分割し、1dt、2dt、3dt、…、mdt、…、(n−2)dt、(n−1)dt、ndt(=Δt)とする例を考える。
【0033】
時刻0〜1dtの間には、例えば、以下(11)式の目的関数Jk0~1dtを設定し、この目的関数Jk0~1dtを最少とする旋回制御量uk(0)を周知の最適化計算により求める。
Jk0~1dt=Wy・(ymink(Xk(1dt),1dt)−Yk(1dt))
+Wu・uk(0)…(11)
ここで、Wy、Wuは予め設定する重み値である。
【0034】
また、時刻1dt〜2dtの間には、例えば、以下(12)式の目的関数Jk1dt~2dtを設定し、この目的関数Jk1dt~2dtを最少とする旋回制御量uk(1dt)を周知の最適化計算により求める。
Jk1dt~2dt=Wy・(ymink(Xk(2dt),2dt)−Yk(2dt))
+Wu・uk(1dt)…(12)
【0035】
更に、時刻2dt〜3dtの間には、例えば、以下(13)式の目的関数Jk2dt~3dtを設定し、この目的関数Jk2dt~3dtを最少とする旋回制御量uk(2dt)を周知の最適化計算により求める。
Jk2dt~3dt=Wy・(ymink(Xk(3dt),3dt)−Yk(3dt))
+Wu・uk(2dt)…(13)
尚、時刻3dtには極小点が2つ存在するため、旋回制御量uk(2dt)も2つの値が得られる。
【0036】
以下、時刻3dt以降も同様の目的関数を設定し、旋回制御量を求め、時刻(n−1)dt〜ndtの間には、例えば、以下(14)式の目的関数Jk(n-1)dt~ndtを設定し、この目的関数Jk(n-1)dt~ndtを最少とする旋回制御量uk((n-1)dt)を周知の最適化計算により求める。
Jk(n-1)dt~ndt=Wy・(ymink(Xk(ndt),ndt)−Yk(ndt))
+Wu・uk((n-1)dt) …(14)
【0037】
次いで、S111に進み、以下の(15)式により、立体物kが各時間毎の旋回制御量uk(t)で移動したときの各ルート毎のリスク関数Rk(t)を設定する。
【0038】
Rk(t)=Rlinek+ΣRobstacle[i]k …(15)
ここで、Rlinek、及び、Robstacle[i]kは、前述の(4)式、及び、(5)式に、立体物kが各時間毎の旋回制御量uk(t)で移動したときの値で与えられるものであり、
Rlinek=Kline・(Yk[t]−(ylinec−yobstacle[k])) …(16)
Robstacle[i]k=Kobstacle・exp(−((xobstacle[i]k(t)−Xk(t))
/(2・σxobstacle[i]))−((yobstacle[i]k(t)−Yk(t))
/(2・σyobstacle[i]))) …(17)
次いで、S112に進み、S111で設定した各ルート毎のリスク関数Rk(t)から最終的な回避ルートをRk(t)fとして選択する。
【0039】
具体的には、S111で設定した各ルート毎にその最大値Rmaxkを求める。すなわち、
Rmaxk=max(Rk(t))(0≦t≦Δt) …(18)
そして、最大値Rmaxkの最も小さなルートを最終的な回避ルートRk(t)fとして選択する。
【0040】
尚、各ルート毎にリスクの累積値Rsumk(=∫Rk(t)dt;積分範囲は0≦t≦Δt)を求め、その値が最も小さなルートを最終的な回避ルートRk(t)fとして選択するようにしても良い。
【0041】
また、上述のS112において、S111で設定されたルートが1つのみしか存在しない場合は、そのルートが最終的な回避ルートRk(t)fとして設定される。
【0042】
例えば、図5に示す例では、S111の処理により、実線で示すルート1と破線で示すルート2とが設定され、S112の処理により、これらルート1,2から最大値Rmaxkが小さなルート、或いは、リスクの累積値Rsumkが小さなルートが最終的な回避ルートRk(t)fとして選択される。
【0043】
そして、S113に進み、最終的な回避ルートRk(t)fに予め定めておいた最大許容リスク値Rlim以上(Rk(t)f≧Rlim)となる領域が有るか否か判定し、Rk(t)f≧Rlimとなる領域がS114に進み、Rk(t)f≧Rlimとなる自車両1にとって最も早い時間を基に制動開始地点Xbrakek、制動開始時間Tbrakekを演算する。
【0044】
最終的な回避ルートRk(t)fにおいて、Rk(t)f≧Rlimとなる自車両1にとって最も早い時間をTmとすると、制動開始地点Xbrakekは、以下の(19)式により、演算される。
Xbrakek=X(Tm)−Bx …(19)
ここで、Bxは予め設定しておいた減速度Gによる制動距離であり、以下の(20)式により演算される。
Bx=(V/(2・G))+Bx0 …(20)
ここで、Bx0は、予め設定しておいた停止時における障害物までの距離であり、例えば、2m程度の値である。
【0045】
また、制動開始時間Tbrakekは、上述の制動開始地点Xbrakekから逆算することにより演算される。
【0046】
次いで、S115に進み、全ての動く立体物kについて演算が処理しているか否か判定し、処理していれば、S116に進み、処理していないのであれば、動く立体物の演算対象を変更して、S103からの処理を繰り返す。
【0047】
一方、S113の判定の結果、Rk(t)f≧Rlimとなる領域がない場合は、S114の処理を行うことなく、S115にジャンプして、上述の判定処理を実行する。
【0048】
そして、S115で全ての動く立体物kについて処理完了と判定してS116に進むと、それぞれの動く立体物kについて演算された制動開始時間Tbrakekの最も早い時間に基づいて所定の警報制御、及び、制動制御が実行され、プログラムを抜ける。例えば、制動開始時間Tbrakekに達するよりも予め設定した時間前にディスプレイ21上に警報の対象となる車両を映し出し、音声警報と共に点滅させる等して警報を行う。
【0049】
このように本発明の実施の形態によれば、移動する立体物毎に、移動する立体物を基準とする座標系を設定し、移動する立体物がこの座標系で移動する際のリスクを演算し、このリスクが最小となるルートを移動する立体物の走行ルートとして推定し、走行ルートのリスクに応じて、自車両1のディスプレイ21により警報を行うと共に、自動ブレーキ制御装置22に信号を出力して警報制御と自動ブレーキ制御を実行させる。このため、自車両1に搭載した装備のみで他車両のルートを適切に予測し、精度の良い運転支援を行うことができる。
【0050】
尚、本実施の形態では、衝突回避のための自動ブレーキ制御と警報制御の2つが行える例を説明しているが、どちらか1つを行うものであっても良い。
【0051】
また、本実施の形態で説明したブレーキ制御は、あくまでもその一例であり、他の周知のブレーキ制御、例えば、スロットル開度の閉鎖や自動変速機におけるシフトダウンと併用するようにしても良い。
【0052】
更に、本実施の形態では、周辺環境をステレオカメラ3からの撮像画像を基に認識するようになっているが、他に、単眼カメラ、ミリ波レーダ等で検出するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】車両に搭載した運転支援装置の概略構成図
【図2】運転支援制御プログラムのフローチャート
【図3】図2から続くフローチャート
【図4】自車両を基準とする座標を動く立体物kを基準とする座標系に変換する際のリスク関数の一例を示す説明図
【図5】立体物kに対し生成される回避ルートとしての走行ルートの一例を示す説明図
【符号の説明】
【0054】
1 自車両
2 運転支援装置
3 ステレオカメラ(周辺環境認識手段、移動立体物抽出手段)
4 ステレオ画像認識装置(周辺環境認識手段、移動立体物抽出手段)
5 制御ユニット(走行ルート推定手段、制御実行手段)
11 車速センサ
21 ディスプレイ
22 自動ブレーキ制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺環境を認識する周辺環境認識手段と、
上記周辺環境から移動する立体物を抽出する移動立体物抽出手段と、
上記移動する立体物毎に、当該移動する立体物の今後のリスクを演算するとともに、該リスクに応じて当該立体物の今後の走行ルートを推定する走行ルート推定手段と、
上記走行ルートのリスクに応じて自車両の運転支援制御を行う制御実行手段と、
を備えたことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
上記走行ルート推定手段は、上記移動する立体物毎に、当該移動する立体物を基準とする座標系を設定するとともに当該移動する立体物が上記座標系で移動する際のリスクを演算し、このリスクが最小となるルートを上記走行ルートとして推定することを特徴とする請求項1記載の車両の運転支援装置。
【請求項3】
上記リスクは、道路上に標示された白線を対象にリスクを設定する場合、走行路の略中心から白線に近いほど該白線によるリスクを高く設定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の運転支援装置。
【請求項4】
上記リスクは、立体物を対象にリスクを設定する場合、該立体物のリスクを確率分布で設定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−76504(P2010−76504A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244532(P2008−244532)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】