説明

車両の防音構造

【課題】高電圧機器装置で発生した騒音が座席の乗員側に伝わることを防止する。
【解決手段】車両の車室内に設置したセンターシートバック3とサイドシートバック6とを有する座席2と、車両を駆動するために用いる高電圧制御機器ユニット40を収納した高電圧機器装置10とを備えた車両において、センターシートバック3の背面側に配置された高電圧機器装置10のケース60は、高電圧制御機器ユニット40を収納した本体部61と、本体部61の端部60eよりも外側に延長された板状の延長部64とを備えている。そして、延長部64がセンターシートバック3の背面側におけるサイドシートバック6との境界部8に面して配置されており、延長部64で境界部8が塞がれた状態になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を駆動するために用いる高電圧機器装置で発生した騒音が車室内に伝わることを防止するための車両の防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータを併用して走行する自動車(以下、「ハイブリッド自動車」と称す。)、又は、モータのみを用いて走行する自動車(以下、「電気自動車」と称す。)には、車両を駆動するために用いる高電圧機器装置が搭載されている。この高電圧機器装置は、電力を蓄えると共に電動装置に電力を供給するための蓄電池を有する蓄電池ユニットと、蓄電池の電力を所定電圧に制御するインバータなどの高電圧制御機器を有する高電圧制御機器ユニットとを備えている。特許文献1には、この種の高電圧機器装置を搭載した車両の従来構成例が記載されている。特許文献1の高電圧機器装置は、蓄電池ユニットと高電圧制御機器ユニットを略直方体形状のケースに収容した構成であり、車両の乗員スペースを広く確保するための手法として、高電圧機器装置を後部座席の背凭れ(シートバック)の背面側に設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−82803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような高電圧機器装置は、高電圧高周波用途での仕様が要望されるため、例えば、高電圧機器装置に内蔵したインバータ回路のコンデンサから動作音が発生し、これが騒音としてケースの外部に漏れるという問題がある。また、高電圧機器装置では、蓄電池ユニットや高電圧制御機器ユニットを冷却するために、送風ファンの運転で吸入した冷却用空気をケース内の通気路に流通させる冷却構造を備えている。しかしながら、送風ファンの動作音や、ケース内の通気通路に冷却用空気が流通する際の通風音(風切音)が発生することで、これらが騒音としてケースの外部に伝わるおそれがある。
【0005】
特に、特許文献1に示すように、高電圧機器装置を車両の後部座席の背面側に設置している場合、後部座席に座る乗員の耳元から高電圧機器装置が近い位置にあるため、上記のような騒音が無視できないレベルになるおそれがある。なお、座席のシートバックのクッション材によって、当該騒音が座席側に伝わることをある程度は抑制することが可能である。しかしながら、シートバックのクッション材の隙間から車室側へ騒音が漏れるおそれがある。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハイブリッド自動車や電機自動車において、車両を駆動するための高電圧機器装置で発生した騒音が座席の乗員側に伝わることを効果的に抑制できる防音構造を備えた車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、車両の車室(9)内に設置された第1座席用部材(3)と第2座席用部材(6)とを少なくとも含んで構成された座席(2)と、車両を駆動するために用いる高電圧機器(40)と、高電圧機器(40)を収納するケース(60)とからなる高電圧機器装置(10)と、を有する車両において、高電圧機器装置(10)で発生した騒音が車室(9)内に伝わることを防止するための防音構造であって、高電圧機器装置(10)は、第1座席用部材(3)における座面(3a)と反対の背面(3b)側に設置されており、第1座席用部材(3)と第2座席用部材(6)は、互いに隣接して配置され、それらの間の境界部(8)において接しているか又は近接して対向しており、ケース(60)は、高電圧機器(40)を収納した本体部(61)と、本体部(61)の端部(61e)よりも外側に延長された延長部(64)とを備えており、延長部(64)は、第1座席用部材(3)の背面(3b)側における境界部(8)に面して配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる車両の防音構造によれば、高電圧機器装置のケースに設けた延長部が第1、第2座席用部材間の境界部に面して配置されていることで、この延長部によって、境界部とケースの本体部及び該本体部に収納した高電圧機器とを隔離することができる。したがって、高電圧機器で発生した騒音が境界部から座席の乗員側へ伝わることを効果的に抑制でき、高電圧機器装置で発生した騒音が車室内へ伝わることを抑制できる。
【0009】
また、上記の車両の防音構造では、ケース(60)は、本体部(61)の一面に設けた開口部(61a)に被せられた板状の蓋部材(63)を備えており、延長部(63)は、蓋部材(63)の端辺(63e)を本体部(61)の端部(61e)よりも外側に突出させた部分であってよい。この構成によれば、ケースの部品点数を従来と同等に少なく抑えた簡単な構成でありながら、ケースに防音構造のための延長部を設けることが可能となる。また、蓋部材の端辺が本体部の端部よりも外側に突出するように蓋部材の寸法及び形状を設定するだけで延長部を形成できるので、ケースの組立工程などが煩雑にならずに済む。
【0010】
また、上記の車両の防音構造では、第1座席用部材(3)は、座席(2)の背凭れ部分を構成するセンターシートバック(3)であり、第2座席用部材(6)は、センターシートバック(3)の側部に設置したサイドシートバック(6)であってよい。この構成によれば、高電圧機器装置を座席のシートバックの背面側に設置することで車両の乗員スペースを広く確保しながらも、高電圧機器装置から発生した騒音が座席の乗員に届くおそれを低減できる。
【0011】
また、上記の車両の防音構造では、延長部(63)の先端部(63e)をサイドシートバック(6)に当接させて設置するとよい。この構成によれば、ケースの延長部の先端部でサイドシートバックを押えて保持することができる。したがって、簡単な構成で、サイドシートバックの立て付け(組み付け)の安定性を向上させることができる。
【0012】
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる車両の防音構造によれば、部品点数を少なく抑えた簡単な構成で、高電圧機器装置で発生した騒音が座席の乗員側に伝わることを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる防音構造を備えた車両の座席及びその背面側に設置した高電圧機器装置の分解斜視図である。
【図2】高電圧機器装置を正面側から見た概略の斜視図である。
【図3】シートバック及び高電圧機器装置を示す図で、図2のZ−Z矢視に対応する断面を示す切断平面図である。
【図4】シートバック及び高電圧機器装置を示す図で、図3のX−X矢視に対応する概略断面図である。
【図5】第1実施形態にかかる高電圧機器装置の配置構成を説明するための概略図で、(a)は、座席の正面図、(b)は、座席の側面図である。
【図6】防音構造の作用を説明するための図で、センターシートバックとサイドシートバックの境界部及びその周辺を上方から見た部分拡大断面図である。
【図7】蓋部材の延長部とサイドシートバックとが当接する当接部を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる高電圧機器装置の配置構成を説明するための概略図で、(a)は、座席の正面図、(b)は、座席の側面図、(c)は、座席の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態にかかる防音構造を備えた車両の座席2及びその背面側に設置した高電圧機器装置10の分解斜視図である。図2は、高電圧機器装置10を正面側から見た概略の斜視図である。図3及び図4は、センターシートバック3及び高電圧機器装置10を示す図で、図3は、図2のZ−Z矢視に対応する断面を示す切断平面図、図4は、図3のX−X矢視に対応する概略断面図である。また、図5は、第1実施形態にかかる高電圧機器装置10の配置構成を説明するための概略図で、(a)は、座席2の正面図、(b)は、座席2の側面図である。
【0016】
これらの図に示す高電圧機器装置10は、エンジンとモータで走行するハイブリッド自動車の車両に搭載される装置である。この高電圧機器装置10は、バッテリ(蓄電池)を含むバッテリユニット(蓄電池ユニット)20と、バッテリの電力を所定電圧に制御するための高電圧制御機器であるインバータユニット41及びDC/DCコンバータ43を内蔵した高電圧制御機器ユニット40と、バッテリユニット20及び高電圧制御機器ユニット40を収容した箱型のケース60とを備えて構成されている。なお、以下の説明で前側又は正面側というときは、後述する高電圧機器装置10のケース60の蓋板63及び前壁60a側を指し、後側又は背面側というときは、ケース60の後壁60b側を指すものとする。また、左右というときは、図2に示すように、高電圧機器装置10のケース60を正面側(蓋板63側)から見た状態での左右を指すものとする。
【0017】
図1に示すように、本実施形態における座席2は、車両の後部座席(リアシート)である。座席2は、乗員が着席する座部4と、座部4の後方に立設された背凭れ部分を構成するセンターシートバック(第1座席用部材)3と、センターシートバック3の両側部それぞれに設置されたサイドシートバック(第2座席用部材)6,6とを備えて構成されている。座席2は、図4に示すように、座部4の座面4a及びセンターシートバック3の座面(正面)3aが車室9内を向いており、センターシートバック3の背面3b側は、リアトレイ7の下方における車体の下部フレーム1との間に設けたトランクルーム5に面している。したがって、センターシートバック3及びサイドシートバック6によって、車室9とトランクルーム5とが仕切られている。そして、高電圧機器装置10は、センターシートバック3の背面3b側のトランクルーム5内に設置されている。
【0018】
また、図1及び図3に示すように、センターシートバック3とその両側に配置したサイドシートバック6,6とは、互いに隣接して配置されており、それらの間の境界部8,8において互いに接している。センターシートバック3は、内部にクッション材3cを備えており、サイドシートバック6は、合成樹脂製の成型品からなるカバー部材である。
【0019】
高電圧機器装置10は、図3及び図4に示すように、センターシートバック3の背面3b側に沿う位置に設置されており、リアトレイ7の下側のトランクルーム5内に設置されている。高電圧機器装置10のケース60は、図1に示すように、前側の全面に開口部61aを有する長方形状の箱型の本体部61と、本体部61の開口部61aを塞ぐ平板状の蓋板63とで構成されている。蓋板63は、ケース60の前壁60aを構成している。本体部61は、後壁60bとその周囲に設けた上壁60c及び下壁60dと一対の側壁60e,60eとで囲まれた有底の容器状に形成されている。高電圧機器装置10は、ケース60の前壁60aがセンターシートバック3の背面3bに沿うように、若干後方に傾斜した状態で設置されている。そして、ケース60の前壁60aの左右両端にはそれぞれ、本体部61の側壁(端部)60eよりも外側に延長された延長部64が設けられている。この延長部64は、蓋板63の左右の端辺63eを本体部61の側壁60eよりも外側に突出させてなる板状の部分である。
【0020】
図1及び図3に示すように、バッテリユニット20は、ケース60内の横方向の中央より右側の部分(右半分)に設置した箱型のバッテリボックス21と、バッテリボックス21内に装着した複数のバッテリ(蓄電池)22と、バッテリボックス21の前面側に被せて取り付けた板状のフレーム23とを備えている。バッテリボックス21は、アルミニウムやマグネシウム等の剛性の高い材料で形成されている。また、バッテリボックス21の内部に装着したバッテリ22を構成するセル電池同士の隙間には、冷却用空気を流通させるための冷却流路65が形成されている。
【0021】
高電圧制御機器ユニット40は、ケース60内の横方向の中央より左側の部分(左半分)に配置されており、インバータを含むインバータユニット41とDC/DCコンバータ43、及びそれらを設置するための板状のトレイ44及び配線類42などがユニット化された装置である。トレイ44の前側及び後側には、インバータユニット41の構成部品が設置されており、トレイ44の前側には、DC/DCコンバータ43が設置されている。トレイ44とインバータユニット41及びDC/DCコンバータ43との間には、冷却用空気を流通させるための冷却流路80が形成されている。
【0022】
また、ケース60内に冷却用空気を導入するための吸気ダクト45が設置されている。吸気ダクト45は、バッテリユニット20の右側部に設置されており、正面側を向いて開口する吸気口46を備えている。吸気口46は、サイドシートバック6に設けた開口部6aに接続されており、開口部6aを介して車室9内の空気が吸入されてケース60内に導入されるようになっている。
【0023】
ケース60内には、送風ファン90が設置されている。送風ファン90は、ケース60内の左側の端部における高電圧制御機器ユニット40の後側に設置されている。また、ケース60内の冷却用空気を外部へ導出するための排気ダクト55が設置されている。排気ダクト55は、図2に示すように、送風ファン90から出てケース60の後側の左上方に延伸している。排気ダクト55の先端(下流端)には、排気口56が設けられている。排気口56は、トランクルーム5内に開口している。
【0024】
送風ファン90を回転させると、吸気ダクト45の吸気口46からケース60内に冷却用空気が導入される。この冷却用空気が冷却流路65,80を流通することで、バッテリユニット20及び高電圧制御機器ユニット40が冷却される。送風ファン90から排出された冷却用空気は、排気ダクト55を介して排気口56からトランクルーム5に排出される。
【0025】
上記構成の高電圧機器装置10では、ケース60内に設置した高電圧制御機器であるインバータユニット41が有するコンデンサの動作音(高周波音)や、送風ファン90の動作音及び冷却用空気がケース60内を流通する際の通風音(風切音)などが発生する。これらの音は、その一部がケース60の外部に騒音として漏れ出す。そこで、本実施形態の車両は、高電圧機器装置10で発生した上記の動作音などによる騒音が車室9側に伝わることを防止するための防音構造を備えている。この防音構造は、高電圧機器装置10のケース60に設けた延長部64をセンターシートバック3とサイドシートバック6の境界部8に面した位置に配置したものである。すなわち、ケース60の本体部61の幅寸法(両側壁60e,60e間の寸法)は、センターシートバック3の幅寸法よりも若干小さな寸法であり、ケース60の両側壁60e,60eは、境界部8,8より僅かに内側に位置している。そして、蓋板63の両端に設けた延長部64,64は、両側壁60e,60eの位置から左右外側に突出しており、この延長部64,64によって、センターシートバック3の背面3b側のサイドシートバック6との境界部8が覆われた(塞がれた)状態になっている。これにより、ケース60の本体部61側と境界部8とが延長部64で隔離されている。
【0026】
図6は、上記構成の防音構造の作用を説明するための図で、センターシートバック3とサイドシートバック6の境界部8及びその周辺を上方から見た部分拡大断面図である。高電圧機器装置10内のコンデンサを含むインバータユニット41で発生した動作音は、同図に矢印で示すように、その一部が高電圧機器装置10の側壁60eを通過してケース60の外部に騒音として漏れ出す。この経路で伝わる騒音は、センターシートバック3の背面3b側におけるサイドシートバック6との境界部8にも達する。ここで、本実施形態の防音構造では、高電圧機器装置10のケース60に設けた延長部64がセンターシートバック3の背面3b側のサイドシートバック6との境界部8に面しており、当該延長部64で境界部8が覆われた状態になっている。これにより、高電圧機器装置10のケース60の側壁60eを通過してケース60の外部に漏れ出した騒音が境界部8から座席2の乗員側(車室9側)へ伝わることを防止できる。したがって、高電圧制御機器ユニット40で発生した動作音による騒音を座席2の乗員が感知することを効果的に抑制でき、騒音のレベルを無視できる程度にまで低減することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態では、図3のY部分に示すように、蓋板63の右側の延長部64の先端部(蓋板63の端辺)63eをサイドシートバック6の内側面6bに当接させている。図7は、延長部64の先端部63eがサイドシートバック6の内側面6bに当接する当接部15を示す図で、図5のY部分の詳細構成を示す斜視図である。なお、同図では、センターシートバック3を取り外した状態を示している。同図に示すように、サイドシートバック6は、その上下端などの複数箇所が車体の下部フレーム1にボルト17の締結で固定されている。しかしながら、センターシートバック3との境界部8に面するサイドシートバック6の内側面6bは、他の部材に固定されていない自由端になっている。したがって、車体からサイドシートバック6に伝わる振動で内側面6bが僅かであるが振れるおそれがある。そこで、このような振れを防止するため、本実施形態では、当接部15において、蓋板63の延長部64の先端部63eをサイドシートバック6の内側面6bに突き当てた状態で高電圧機器装置10及びサイドシートバック6を取り付けている。これにより、延長部64でサイドシートバック6の内側面6bを押えて保持できるので、サイドシートバック6の立て付けの安定性を向上させることができる。したがって、サイドシートバック6が振動によって振れることを防止できる。なお、図3では、右側の延長部64の先端部63eをサイドシートバック6の内側面6bに当接させた場合を示したが、右側の延長部64の先端部63eもサイドシートバック6の内側面6bに当接させてよい。
【0028】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。
【0029】
図8は、本発明の第2実施形態にかかる高電圧機器装置10の配置構成を説明するための概略図で、(a)は、座席2の正面図、(b)は、側面図、(c)は、平面図である。第1実施形態では、高電圧機器装置10を座席2のセンターシートバック3の背面3b側に設置していたが、本実施形態では、高電圧機器装置10を座席2の座部4の下面4b側(座部4の下面4bと車室9の床面9bとの間)に設置している。
【0030】
座部4の左右両側にはそれぞれ、サイドカバー19,19が設置されている。座部4とその両側に配置したサイドカバー19,19とは、互いに隣接して配置されており、境界部18,18において互いに接している。サイドカバー19,19は、座部4と同様のクッション材を内部に有する部材であってもよいし、合成樹脂製のカバー部材であってもよい。そして、図8(a)及び(b)に示すように、高電圧機器装置10のケース60は、蓋板63が座部4の下面4b側に面するように、蓋板63側を上方に向けた状態で設置されている。
【0031】
そして、本実施形態においても、高電圧機器装置10のケース60内で発生した動作音による騒音が車室9側に伝わることを防止するための防音構造として、高電圧機器装置10のケース60に設けた延長部64,64を座部4とサイドカバー19との境界部18に面して配置している。これにより、延長部64で座部4の下面4b側のサイドカバー19との境界部18が覆われた状態になっている。したがって、この延長部64によって、高電圧機器装置10のケース60の外部に漏れた騒音が座部4とサイドカバー19との境界部18から座席2の乗員側(車室9側)へ伝わることを防止できる。すなわち、本実施形態では、座席2の座部4が本発明にかかる第1座席用部材に相当し、その両側に設置したサイドカバー19,19が第2座席用部材に相当する。なお、本実施形態では、座席2は、後部座席には限らず、車室9内に設けた他の座席であってもよい。
【0032】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明にかかる第1座席用部材がセンターシートバック3又は座部4であって、第2座席用部材がサイドシートバック6又はサイドカバー19である場合を説明したが、第1、第2座席用部材は、境界部の両側で互いに隣接して配置されている部材であれば、座席を構成する他の部材であってもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、第1座席用部材であるセンターシートバック3又は座部4と、第2座席用部材であるサイドシートバック6又はサイドカバー19とは、境界部8,18において互いが接した状態で設置されている場合を示したが、本発明にかかる第1座席用部材と第2座席用部材は、境界部において互いが必ずしも接している必要はなく、互いが近接して(若干の隙間を有して)対向するように設置されていてもよい。
【0034】
また、上記実施形態における自動車はハイブリッド自動車であったが、本発明にかかる高電圧機器装置を備えた車両の防音構造は、モータのみで走行する電気自動車にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0035】
2 座席(後部座席)
3 センターシートバック(第1座席用部材)
3b 背面
4 座部(第1座席用部材)
4b 下面
5 トランクルーム
6 サイドシートバック(第2座席用部材)
6b 内側面
8 境界部
9 車室
10 高電圧機器装置
15 当接部
18 境界部
19 サイドカバー(第2座席用部材)
20 バッテリユニット
21 バッテリボックス
22 バッテリ
40 高電圧制御機器ユニット
41 インバータユニット
45 吸気ダクト
55 排気ダクト
60 ケース
61 本体部
63 蓋板(蓋部材)
63e 端辺(先端部)
64 延長部
90 送風ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に設置された第1座席用部材と第2座席用部材とを少なくとも含んで構成された座席と、
前記車両を駆動するために用いる高電圧機器と、前記高電圧機器を収納するケースとからなる高電圧機器装置と、を有する車両において、前記高電圧機器装置で発生した騒音が前記車室内に伝わることを防止するための防音構造であって、
前記高電圧機器装置は、前記第1座席用部材における座面と反対の背面側に設置されており、
前記第1座席用部材と前記第2座席用部材は、互いに隣接して配置され、それらの間の境界部において接しているか又は近接して対向しており、
前記ケースは、前記高電圧機器を収納した本体部と、前記本体部の端部よりも外側に延長された延長部とを備えており、
前記延長部は、前記第1座席用部材の背面側における前記境界部に面して配置されている
ことを特徴とする車両の防音構造。
【請求項2】
前記ケースは、前記本体部の一面に設けた開口部に被せられた板状の蓋部材を備えており、
前記延長部は、前記蓋部材の端辺を前記本体部の端部よりも外側に突出させた部分である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の防音構造。
【請求項3】
前記第1座席用部材は、前記座席の背凭れ部分を構成するセンターシートバックであり、前記第2座席用部材は、前記センターシートバックの側部に設置したサイドシートバックである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の防音構造。
【請求項4】
前記延長部の先端部を前記サイドシートバックに当接させて設置した
ことを特徴とする請求項3に記載の車両の防音構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−148583(P2012−148583A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6401(P2011−6401)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】