説明

車両の電源制御装置

【課題】発電機に接続されてその発電電力を蓄える蓄電装置から車両の電気負荷に適正かつ効率よく電力を供給する。
【解決手段】車両の減速時等に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する発電機4と、該発電機の4発電電力を蓄える蓄電装置6とを備えた車両の電源制御装置であって、上記蓄電装置6と電気軽負容量の小さい第一電気負荷物15および電気負荷容量の大きい第二電気負荷物23とを、DC/DCコンバータ16を有する第一給電回路17により接続するとともに、該DC/DCコンバータ16と並列に設置されたバイパスリレー18を有する第二給電回路19により上記蓄電装置6と第二電気負荷物23とを接続し、上記第二給電回路19を介した電力の供給を行う際に、上記第一給電回路17を介した給電状態を維持しつつ、第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態からオン状態に移行させるように制御する通電制御手段30を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに駆動されて発電するとともに、車両の減速時等に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する発電機と、該発電機に接続されてその発電電力を蓄える蓄電装置とを備え、該蓄電装置から車両の電気負荷に対して電力を供給する車両の電源制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の燃費をより向上させることを目的として、車両の減速時にオルタネータで集中的に発電を行うことにより、減速時のエネルギーを回生電力として回収するいわゆる減速回生システムという技術が普及しつつある。例えば、下記特許文献1に示されるように、車両に搭載される発電機と、ランプ類やオーディオ装置等の一般負荷が接続される主電源と、発電機に接続され、減速などの運動エネルギー、あるいは排熱などの熱エネルギー等を用いて発電機にて発電される回生電力の回収、及び前記発電機の発電電力を蓄える副電源と、副電源と主電源及び一般負荷とをDC/DCコンバータを介して接続する第1の給電回路と、この第1の給電回路と並列に、副電源と主電源及び一般負荷とをスイッチを介して接続する第2の給電回路と、DC/DCコンバータ及びスイッチの作動を制御する制御手段とを備え、この制御手段により、DC/DCコンバータを起動し、かつスイッチを開く第1の制御状態、またはDC/DCコンバータを停止し、かつスイッチを閉じる第2の制御状態を選択可能に構成することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−173385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された車両用電源システムでは、車両の減速時等に回生エネルギーを発電機からDC/DCコンバータを介することなく、直接副電源に回収できるので、効率良くエネルギーを回収することができる。また、上記特許文献1には、上記発電機の発電電力を蓄える副電源の電圧が、一般負荷が接続される主電源よりも高く設定された車両用電源システムにおいて、副電源から主電源および一般負荷に供給される電力供給量が所定値よりも大きいときには、最初に第1の給電回路を介して電力を供給する第1の制御状態を選択し、副電源の電圧が一般負荷の許容定格電圧以下まで低下したときに第2の給電回路を介して電力を供給する第2の制御状態に切り替えることにより、一般負荷に過電圧が印加されるのを防止しつつ、第2の給電回路に設けられたスイッチにより効率のいい電力供給が可能となる旨の開示がある。
【0005】
しかし、上記のように副電源の電圧が一般負荷の許容定格電圧以下まで低下した時点で上記第1の制御状態から第2の制御状態に切り替えるように構成した場合においても、主電源機と負荷との入力インピーダンスの状態如何によっては、第2の給電回路に設けられたリレーに大電流が流れて該リレーの損傷を招く虞があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、発電機に接続されてその発電電力を蓄える蓄電装置から車両の電気負荷に対して適正に、かつ効率よく電力を供給することができる車両の電源制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、エンジンに駆動されて発電するとともに、車両の減速時等に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する発電機と、該発電機に接続されてその発電電力を蓄える蓄電装置とを備え、該蓄電装置から車両の電気負荷に対して電力を供給する車両の電源制御装置であって、上記蓄電装置とオーディオ類やメータ類等からなる電気軽負容量の小さい第一電気負荷物およびエンジン始動用のスタータ等からなる電気負荷容量の大きい第二電気負荷物とを、DC/DCコンバータを有する第一給電回路により接続するとともに、該DC/DCコンバータと並列に設置されたバイパスリレーを有する第二給電回路により、上記蓄電装置と第二電気負荷物とを接続し、上記第二給電回路を介した電力の供給を行う際に、上記第一給電回路を介した給電状態を維持しつつ、第二給電回路のバイパスリレーをオフ状態からオン状態に移行させるように制御する通電制御手段を備えたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の電源制御装置において、通電制御手段は、上記第一電気負荷物の消費電力と第二電気負荷物の消費電力との合計値がDC/DCコンバータの出力性能を超えると判定された場合に、上記第二給電回路を介した電力の供給を行うように構成されたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の電源制御装置において、通電制御手段は、上記蓄電装置の蓄電量が所定値以下に低下したことが確認された時点で、上記第二給電回路のバイパスリレーをオフ状態からオン状態に移行させるように構成されたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の電源制御装置において、上記蓄電装置の他に上記第二電気負荷物に電力を供給する補助蓄電装置を備え、該補助蓄電装置の蓄電量が所定値以下となった場合に、上記通電制御手段により第二給電回路を介した電力の供給を行うように構成されたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、通常時に、上記第一給電回路のDC/DCコンバータにより所定電圧に低下させた電力を第一電気負荷物および第二電気負荷物にそれぞれ供給することにより、最高電圧が例えば28V程度に設定された構成の主蓄電装置を使用した場合においても、上記第一電気負荷物および第二電気負荷物に過大な電圧が印加されるのを防止して、これらを適正に作動させることができる。また、上記第二給電回路を介した電力の供給を行う際には、上記主蓄電装置の電圧および発電機の発電電圧を適正値に調節した状態で、上記第一給電回路を介した給電状態を維持しつつ、第二給電回路のバイパスリレーをオフ状態からオン状態に移行させて、第一給電回路および第二給電回路の両方を介して電力を供給することにより、上記DC/DCコンバータの出力電流が大きくなるのを防止するとともに、上記バイパスリレーに過大な電流が急激に流れることを効果的に防止しつつ、第一電気負荷物および第二電気負荷物に必要電力を供給することができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、上記第一電気負荷物の消費電力と第二電気負荷物の消費電力との合計値がDC/DCコンバータの出力性能を超えると判定された場合に、上記第二給電回路を介した電力の供給を行うように構成したため、上記第一給電回路に設けられたDC/DCコンバータの出力電流が過度に大きくなるのを防止するとともに、上記第二給電回路に設けられたバイパスリレーに過大な電流が急激に流れることを効果的に防止しつつ、第一電気負荷物および第二電気負荷物に必要電力を供給することができる。したがって、上記第一電気負荷物の消費電力と第二電気負荷物の消費電力との合計値がDC/DCコンバータの出力性能を超えると判定された時点で、上記第一給電回路による給電状態から、第二給電回路による給電状態に切り替えるように構成した場合のように、第二給電回路のバイパスリレーに過大な電流が急激に流れるという事態が生じることはなく、該バイパスリレーの損傷を効果的に防止することができる。しかも、上記DC/DCコンバータの出力容量および体積等をそれ程大きく設定する必要がなく、比較的安価なDC/DCコンバータを使用した場合においても、第一電気負荷物および第二電気負荷物をそれぞれ適正に作動させることができるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明では、上記蓄電装置の蓄電量が所定値以下に低下したことが確認された時点で、上記第二給電回路のバイパスリレーをオフ状態からオン状態に移行させるように構成したため、バイパスリレーに過大な負荷を与えることなく、その接続制御を実行できるという利点がある。
【0014】
請求項4に係る発明では、上記蓄電装置の他に上記第二電気負荷物に電力を供給する補助蓄電装置を設け、該補助蓄電装置の蓄電量が所定値以下となった場合に、上記通電制御手段により第二給電回路を介した電力の供給を行うように構成したため、該給電状態の切替操作時に、第二給電回路のバイパスリレーに過大な電流が急激に流れて該バイパスリレーが損傷するという事態の発生を効果的に防止しつつ、上記第二給電回路から第二電気負荷物に電力を供給することができる。したがって、上記補助蓄電装置の電力不足に起因した作動不良が上記スタータ等からなる第二電気負荷物に生じることを確実に防止して、これらを適正に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電源制御装置を備えた車両の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る電源制御装置を備えた車両の概略構成を示す側面図である。
【図3】本発明に係る電源制御装置の実施形態を示すブロック図である。
【図4】接続リレーをオン状態としつつ、バイパスリレーをオン状態としたブロック図である。
【図5】接続リレーおよびバイパスリレーをオフ状態としたブロック図である。
【図6】バイパスリレーに接続要求信号を出力するか否かの判定制御動作を示すフローチャートである。
【図7】バイパスリレーに接続要求信号を出力するか否かの判定制御動作の他の例を示すフローチャートである。
【図8】バイパスリレーの接続制御動作を示すフローチャートである。
【図9】バイパスリレーの開放制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および図2は、本発明の実施形態に係る車両の電源制御装置を備えた車両の前部構造を示している。該車両の前部に位置するエンジンルーム1内には、図示を省略したエンジン(内燃機関)およびトランスミッションが配設され、エンジンルーム1内の一方側(当実施形態では左側)には、長期に亘り電力を保持可能な鉛蓄電池等からなる補助蓄電装置3が配設されるとともに、上記エンジンルーム1内の他方側(右側)には、車両の減速時等に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収するオルタネータからなる発電機4が配設されている。
【0017】
また、上記エンジンルーム1内の他方側であってフロントタイヤ2の前方側には、第一ハーネス5により上記発電機4に接続された主蓄電装置6が配設されている。該主蓄電装置6は、複数の電気二重層キャパシタセルが直列に接続されてなるキャパシタからなり、上記補助蓄電装置3よりも急速な充放電が可能であるという特性を有している。そして、車両の減速時等にオルタネータからなる発電機4が駆動されることにより発生した電力が上記第一ハーネス5を介して主蓄電装置6に供給され、該主蓄電装置6が発電機4の発電電圧に応じた適宜の電圧、例えば14V〜25V程度に充電されるようになっている。
【0018】
上記エンジンルーム1の後方側に位置する車室内には、後述の自動停止制御手段29および通電制御手段30を構成するCPUや各種メモリ等を備えた制御ユニット7が、運転席または助手席の下方に位置するフロアパネル上に設置されている。そして、フロントタイヤ2の上方に形成されホイールアーチに沿って上記補助蓄電装置3と制御ユニット7等とを接続する第二ハーネス8が配策されている。
【0019】
図3は、本発明に係る車両の電源制御装置の具体的構成を示すブロック図であり、該車両の電源制御装置には、上記補助蓄電装置3の電圧を検出する補助電圧検出手段9と、主蓄電装置6の電圧を検出する主電圧検出手段10とが設けられるとともに、ナビゲーション装置11、オーディオ装置12、メータユニット13および車室内照明装置14等の電気負荷容量が比較的小さい第一電気負荷物15と、上記主蓄電装置6とをDC/DCコンバータ16を介して接続する第一給電回路17が設けられている。上記DC/DCコンバータ16は、主蓄電装置6から給電電圧を上記第一電気負荷物15の作動電圧に対応した値、例えば14V程度に降下させる機能を有するものである。
【0020】
上記補助蓄電装置3と主蓄電装置6とは、第一給電回路17のDC/DCコンバータ16と並列に設置されたバイパスリレー18を有する第二給電回路19により接続されている。また、エンジン始動用のスタータ20、パワーステアリング装置21およびABS・DSC装置22等からなる電気負荷容量が比較的大きい第二電気負荷物23と、上記主蓄電装置6とが、上記第二給電回路19を介して接続されている。
【0021】
上記主蓄電装置6には、その電力を放電させる抵抗回路を備えた放電手段25が接続されている。該放電手段25は、イグニッションスイッチがオフ操作されてエンジンが停止状態なった時点で、上記主電圧検出手段10により主蓄電装置6の電圧が予め設定された基準値(例えば16V程度)以上であることが検出されたときに上記制御ユニット7から出力される制御信号に応じて主蓄電装置6に蓄えられた電力を、車体を介してアースすることにより放電させるように構成されている。
【0022】
また、上記第一給電回路17と第二給電回路19とは、DC/DCコンバータ16およびバイパスリレー18の下流部において、接続リレー26を有する接続ライン27により互いに接続されている。そして、上記制御ユニット7には、ブレーキスイッチ、アクセルスイッチおよび車輪速センサ等からなる運転状態検出手段28の検出信号に応じてエンジンを自動停止させるとともに該エンジンを再始動させる制御を実行する自動停止制御手段29と、上記バイパスリレー18および接続リレー26のオンオフ制御を実行する等により、上記第一給電回路17、第二給電回路19および接続ライン27を流れる電力を制御し、かつ上記発電機4および放電手段25を必要に応じて作動させるように制御する通電制御手段30とが設けられている。
【0023】
自動停止制御手段29は、上記運転状態検出手段28の検出信号に応じてエンジンの自動停止条件が成立したことが検出された時点、例えば交差点等において車両を一時的に停止させる状態となったと判定された時点で、燃料噴射を停止してエンジンを自動的に停止させるとともに、その後に車両の発進操作が行われる等によりエンジンの再始動条件が成立した時点で、上記スタータ20を作動させてエンジンを自動的に再始動させる制御を実行するように構成されている。
【0024】
通常の運転時には、図3に示すように、上記第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態とするとともに、上記接続ライン27の接続リレー26をオン状態とする制御が、上記通電制御手段30において実行される。この状態で車両の減速時または下り坂の走行時に、上記発電機4により25V程度の電圧で発電が行われ、該発電電流が主蓄電装置6に供給されて充電される。該主蓄電装置6に充電された電力は、上記DC/DCコンバータ16を介して14V程度に降下された状態で、上記第二給電回路19を通ってナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に供給されるとともに、上記接続ライン27を通って補助蓄電装置3および第二電気負荷物23に供給されることにより有効に利用される。
【0025】
そして、エンジンの作動状態で、多数の電気負荷が作動状態となって第一電気負荷物15の消費電流と第二電気負荷物23の消費電流との合計値が上記DC/DCコンバータ16の定格出力電流以上であると判定された場合、または補助蓄電装置3の電力が消費されてその蓄電量が所定値以下となった場合には、上記通電制御手段30において、上記第一給電回路17から第一電気負荷物15への給電状態を維持しつつ、上記第二給電回路19を介して補助蓄電装置3および第二電気負荷物23に電力を供給する制御が実行される。
【0026】
例えば、上記第一電気負荷物15の消費電流と第二電気負荷物23の消費電流との合計値が上記DC/DCコンバータ16の定格出力電流である50A以上であると判定された場合に、DC/DCコンバータ16を作動状態に維持しつつ、図4に示すように、第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態からオン状態に移行させるとともに、接続ライン27の接続リレー26をオン状態からオフ状態に移行させる制御が、上記通電制御手段30により実行されるようになっている。
【0027】
上記のようにして第二給電回路19のバイパスリレー18をオン状態とするとともに、接続ライン27の接続リレー26をオフ状態とした後に、車両のエンジンにより発電機4を駆動して12V〜14V程度の電圧で発電を行うことにより、この発電電流が上記主蓄電装置6に供給されて充電されるとともに、上記発電機4の発電電流が、第一給電回路17を通ってナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に供給され、かつ上記発電電流が第二給電回路19を通って上記パワーステアリング装置21等からなる第二電気負荷物23および補助蓄電装置3に供給されることにより、必要に応じて該補助蓄電装置3に対する充電が行われるように構成されている。
【0028】
また、上記自動停止制御手段29によりエンジンを自動停止させる制御が実行された後、上記スタータ20を作動させてエンジンを再始動させる際には、図5に示すように、第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態としつつ、接続ライン27の接続リレー26をオフ状態とする制御が上記通電制御手段30により実行されるようになっている。これより、上記接続ライン27を介した主蓄電装置6から第二電気負荷物23への電力の供給が停止され、該第二電気負荷物23には、補助蓄電装置3から電力が供給されることになる。
【0029】
上記補助蓄電装置3の蓄電量に応じてバイパスリレー8に接続要求信号を出力するか否かの判定制御動作を、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。上記制御動作がスタートすると、まず上記補助電圧検出手段9の出力信号等に応じて補助蓄電装置3が必要とする電力を保持可能な保持可能最小時間T1を算出する(ステップS1)。具体的には、車両の消費電力および上記DC/DCコンバータ18の出力電力を監視しつつ、上記補助蓄電装置3の充電電力および劣化状態を計算により求め、これらの値に基づいて、補助蓄電装置3が電力不足に至るまでの最小時間T1を演算により求める。
【0030】
また、主蓄電装置6の電圧V2を補助蓄電装置3の電圧降下最大時間T2を、上記主電圧検出手段10の出力信号等に基づいて算出する(ステップS2)。具体的には、上記DC/DCコンバータ18の出力電力を監視しつつ、上記主蓄電装置3の蓄電量等を計算により求めるとともに、その値に基づき、主蓄電装置3の電圧V2を、例えば14V程度に設定された補助蓄電装置3の定格電圧まで降下させるのに要する最大時間T2を演算により求める。
【0031】
次いで、上記補助蓄電装置3が必要とする電力の保持可能最小時間T1が、上記主蓄電装置6の電圧降下最大時間T2と、予め行った実験等により求められて設定された上記バイパスリレー18の切替時間T3とを加算した値(T2+T3)よりも大きいか否かを判定し(ステップS3)、YESと判定された場合には、ステップS1に戻って上記制御動作を繰り返す。そして、上記ステップS3でNOと判定され、補助蓄電装置3の蓄電量が低下して必要電力を確保できなくなると判断された時点で、上記バイパスリレー18を接続状態とすることを要求する制御信号を出力する(ステップS4)。
【0032】
次に、上記DC/DCコンバータ16の出力性能に応じてバイパスリレー18に接続要求信号を出力するか否かの判定制御動作を、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。上記制御動作がスタートすると、まず上記DC/DCコンバータ16の出力電流αが、その定格電流、例えば50A以上であるか否かを判定し(ステップS11)、YESと判定された場合には、上記DC/DCコンバータ16の出力電圧βを調整して、その出力電流αを定格電流(50A)まで低下させる制御を実行する(ステップS12)。
【0033】
上記ステップS12における調整が行われた後のDC/DCコンバータ16の出力電圧βが、例えば12V程度に設定された定格出力電圧下限値以上であるか否かを判定し(ステップS13)、NOと判定された場合には、上記第一電気負荷物15および第二電気負荷物23の多くが作動状態となることにより、両者の消費電力の合計値がDC/DCコンバータ16の出力性能を超える状態にあると判断し、上記バイパスリレー18を接続状態とすることを要求する制御信号を出力する(ステップS14)。
【0034】
上記ステップS13でYESと判定され、DC/DCコンバータ16の出力電流αを定格電流まで低下させれば、出力電圧βが定格出力電圧下限値以上となることが確認された場合には、上記補助蓄電装置3の放電電流γが0Aよりも大きいか否かを判別することにより、補助蓄電装置3が放電状態にあるか否かを判定する(ステップS15)。該ステップS15でNOと判定され場合には、上記ステップS11にリターンする。
【0035】
上記ステップS15でYESと判定された場合には、上記補助蓄電装置3の放電電流γが過渡判定電力量Kよりも大きいか否かを判定し(ステップS16)、NOと判定され場合には、上記ステップS15にリターンする。そして、上記ステップS16でYESと判定されることにより補助蓄電装置3の放電電流γが過渡判定電力量Kよりも大きいことが確認された時点で上記ステップS14に移行し、上記バイパスリレー18を接続状態とすることを要求する制御信号を出力する。
【0036】
また、上記接続要求信号の出力に応じて実行されるバイパスリレー18の接続制御動作を、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。上記制御動作がスタートすると、まずバイパスリレー18の接続要求信号が出力されたか否かを判定し(ステップS21)、YESと判定された時点で、上記発電機4の作動を停止させる作動停止信号を出力した後(ステップS22)、該発電機4が作動停止状態となったか否かを判定する(ステップS23)。
【0037】
上記ステップS23でYESと判定されて発電機4が作動停止状態となったことが確認された時点で、主蓄電装置6の電圧V2と補助蓄電装置3の電圧V1との差の絶対値|V2−V1|が、バイパスリレー18の入出力間許容電位差KV以下であるか否かを判定する(ステップS24)。該ステップS24でNOと判定されてバイパスリレー18が接続可能状態にないことが確認された場合には、上記DC/DCコンバータ16の出力電流αを調節することにより、上記絶対値|V2−V1|をバイパスリレー18の入出力間許容電位差KV以下とする制御を実行する(ステップS25)。
【0038】
例えば、主蓄電装置6の電圧V1が補助蓄電装置3の電圧V2よりも所定値以上大きい場合には、上記DC/DCコンバータ16の出力電流αを増大させて主蓄電装置6の蓄電量を低減することにより、主蓄電装置6の電圧V2と補助蓄電装置3の電圧V1との差を所定値以下に減少させる制御を実行する。
【0039】
そして、ステップS24でYESと判定され、上記主蓄電装置6の電圧V1と補助蓄電装置3の電圧V2との差V2−V1が所定値以下となって、バイパスリレー18を接続状態としても該バイパスリレー18に上記主蓄電装置6から大電流が流れる状態にないことが確認された場合には、上記DC/DCコンバータ16を作動状態に保持することにより第一給電回路17を介した給電状態を維持しつつ、バイパスリレー18をオフ状態からオン状態に移行させる(ステップS26)。
【0040】
次いで、上記接続ライン27の接続リレー26をオン状態からオフ状態に移行させることにより、上記主蓄電装置6の電流が第一給電回路17から接続ライン27を介して第二電気負荷物23等に供給されるのを停止する(ステップS27)。また、上記発電機4を駆動するとともに、その発電電圧を上記DC/DCコンバータ16の定格出力電圧(例えば14V)に調節する制御を実行する(ステップS28)。これにより、図4に示すように、上記発電機4の発電電流が、第一給電回路17を介してナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物14に供給されるとともに、第二給電回路19を介して上記補助蓄電装置3およびパワーステアリング装置21等からなる第二電気負荷物23に供給されることになる。
【0041】
また、上記補助蓄電装置3の蓄電量に応じたバイパスリレー18の接続要求信号の出力が停止され、かつ上記DC/DCコンバータ16の出力性能に応じたバイパスリレー18の接続要求信号の出力が停止された場合には、該バイパスリレー18を開放状態とすることを要求する制御信号が出力される。該開放要求信号に応じて実行されるバイパスリレー18の開放制御動作を、図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0042】
上記制御動作がスタートすると、まずバイパスリレー18の開放要求信号が出力されたか否かを判定し(ステップS31)、YESと判定された時点で、上記第二給電回路19を介して上記第一電気負荷物15および第二電気負荷物23等に供給されるDC/DCコンバータ16の出力電流αが、その定格出力電流(50A)以下となるように上記発電機4の発電電圧を調整する(ステップS32)。すなわち、上記発電機4から主蓄電装置6に供給される電力に応じて該主蓄電装置6の蓄電量を調節することにより、該主蓄電装置6からDC/DCコンバータ16を介して上記第一電気負荷物15および第二電気負荷物23等に印加される電圧が適正値となるように制御する。
【0043】
そして、上記DC/DCコンバータ16の出力電流αが、その定格出力電流以下となったか否かを判定し(ステップS33)、YESと判定された時点で、上記接続ライン27の接続リレー26をオフ状態からオン状態に移行させるとともに(ステップS34)、上記第二給電回路19のバイパスリレー17をオン状態からオフ状態とする制御信号を出力する(ステップS35)。これにより、図3に示す通常状態において、上記DC/DCコンバータ16の出力電流が第一給電回路17を介してナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物14に供給されるとともに、接続ライン27を介して第二電気負荷物23等に供給されることになる。
【0044】
上記のようにエンジンにより駆動されて発電するとともに、車両の減速時等に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する発電機4と、該発電機4に接続されてその発電電力を蓄える主蓄電装置6とを備え、該主蓄電装置6から車両の電気負荷に対して電力を供給する車両の電源制御装置において、上記主蓄電装置6と、オーディオ装置12、メータユニット13および車室内照明装置14等からなる電気軽負容量の小さい第一電気負荷物15およびエンジン始動用のスタータ20等からなる電気負荷容量の大きい第二電気負荷物23とを、DC/DCコンバータ16を有する第一給電回路17により接続するとともに、該DC/DCコンバータ16と並列に設置されたバイパスリレー18を有する第二給電回路19により、上記主蓄電装置6と第二電気負荷物23とを接続し、上記第二給電回路19を介した電力の供給を行う際に、上記第一給電回路17を介した給電状態を維持しつつ第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態からオン状態に移行させるように制御する通電制御手段30を設けたため、簡単な構成で車両に設けられた種々の電気負荷に対して適正に電力を供給できるという利点がある。
【0045】
すなわち、上記のように鉛蓄電池等からなる補助蓄電装置3に比べて急速な充放電が可能なキャパシタ等からなる主蓄電装置6を設け、車両の減速時または下り坂の走行時には、上記発電機4により25V程度の電圧で発電を行い、該発電電流を主蓄電装置6に供給して充電し、該主蓄電装置6に充電された電力を、上記第一給電回路17のDC/DCコンバータ16を介して14V程度に降下させた状態で、上記ナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に供給するとともに、補助蓄電装置3および第二電気負荷物23に供給するように構成したため、車両の減速時等における回生エネルギーを有効に利用して車両の燃費を効果的に向上することができる。
【0046】
そして、上記第一電気負荷物15および第二電気負荷物23の電力消費量が比較的少ない状態では、図3に示すように、上記第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態とするとともに、上記接続ライン27の接続リレー26をオン状態とし、上記第一給電回路17のDC/DCコンバータ16により所定電圧に低下させた電力を第一電気負荷物15および第二電気負荷物23にそれぞれ供給するように構成したため、最高電圧が例えば28V程度に設定された高性能の主蓄電装置6を使用した場合においても、上記第一電気負荷物15および第二電気負荷物23に過大な電圧が印加されるのを防止して、これらを適正に作動させることができる。
【0047】
また、上記実施形態では、通電制御手段30おいて第一電気負荷物15の消費電力と第二電気負荷物23の消費電力との合計値がDC/DCコンバータ16の出力性能を超えると判定された場合に、上記主蓄電装置6の電圧および発電機8の発電電圧を適正値に調節した状態で、上記第一給電回路17を介した給電状態を維持しつつ第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態からオン状態に移行させることにより、第一給電回路17および第二給電回路18の両方を介して電力を供給するように構成したため、上記DC/DCコンバータ16の出力電流が大きくなるのを防止するとともに、上記バイパスリレー18に過大な電流が急激に流れることを効果的に防止しつつ、第一電気負荷物15および第二電気負荷物23に必要電力を供給することができる。
【0048】
したがって、上記第一電気負荷物15の消費電力と第二電気負荷物23の消費電力との合計値がDC/DCコンバータ16の出力性能を超えると判定された時点で、上記第一給電回路17による給電状態から、第二給電回路19による給電状態に切り替えるように構成した場合のように、第二給電回路19のバイパスリレー18に過大な電流が急激に流れるという事態が生じることはなく、該バイパスリレー18の損傷を効果的に防止することができる。しかも、上記DC/DCコンバータ16の出力容量および体積等をそれ程大きく設定する必要がなく、比較的安価なDC/DCコンバータ16を使用した場合においても、第一電気負荷物15および第二電気負荷物23をそれぞれ適正に作動させることができるという利点がある。
【0049】
さらに、上記実施形態に示すように、通電制御手段30において、上記主蓄電装置6の蓄電量が所定値以下に低下したこと、例えば上記主蓄電装置6の電圧が補助蓄電装置3の定格電圧以下に低下したことが確認された時点で、上記第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態からオン状態に移行させるように構成した場合には、該バイパスリレー18に過大な負荷が与えられるのを確実に防止して、その接続制御を適正に実行できるという利点がある。
【0050】
また、上記実施形態では、エンジンのスタータ20等からなる第二電気負荷物23に電力を供給する鉛バッテリ等からなる補助蓄電装置3を上記主蓄電装置6の他に設け、該補助蓄電装置3の蓄電量が所定値以下となった場合に、第一給電回路17を介した給電状態を維持しつつ、第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態からオン状態に移行させることにより、上記第二給電回路19を介した電力の供給を行うように構成したため、該給電状態の切替操作時に、第二給電回路19のバイパスリレー18に過大な電流が急激に流れて該バイパスリレー18が損傷するという事態の発生を効果的に防止しつつ、上記第二給電回路19から第二電気負荷物23に電力を供給することができる。したがって、上記補助蓄電装置3の電力不足に起因した作動不良が上記スタータ20等からなる第二電気負荷物23に生じることを確実に防止して、これらを適正に作動させることができる。
【0051】
さらに、上記実施形態に示すように、鉛蓄電池等からなる補助蓄電装置3よりも急速な充放電が可能なキャパシタにより主蓄電装置6を形成した場合には、上記発電機4の発電電流を主蓄電装置6に供給して迅速に充電することができるとともに、該主蓄電装置6に充電された電力を、上記DC/DCコンバータ16を介して14V程度に降下させた状態で、上記ナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に供給することにより電力の有効利用を図ることができる。
【0052】
なお、複数の電気二重層キャパシタからなる主蓄電装置6を設けてなる上記実施形態に代え、リチイムイオンキャパシタ等のハイブリッドキャパシタや、高出力リチイムイオン電池を用いることも可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、イグニッションスイッチ検出手段24の出力信号に応じてイグニッションスイッチのオフ操作が行われたことが確認された時点で、主電圧検出手段10により検出された主蓄電装置6の電圧が予め設定された基準値(16V)以上であることが確認された場合に、上記放電手段25による放電制御を実行するように構成したため、鉛蓄電池等に比べて充電電圧の上限値を極めて高い値に設定可能であって、蓄電電圧が高い値に維持された状態で放置されることに起因して早期に劣化し易い傾向があるキャパシタ等からなる上記主蓄電装置6の早期劣化を効果的に防止できるという利点がある。
【符号の説明】
【0054】
3 補助蓄電装置
4 発電機
6 蓄電装置(主蓄電装置)
15 第一電気負荷物
23 第二電気負荷物
30 通電制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに駆動されて発電するとともに、車両の減速時等に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する発電機と、該発電機に接続されてその発電電力を蓄える蓄電装置とを備え、該蓄電装置から車両の電気負荷に対して電力を供給する車両の電源制御装置であって、上記蓄電装置とオーディオ類やメータ類等からなる電気軽負容量の小さい第一電気負荷物およびエンジン始動用のスタータ等からなる電気負荷容量の大きい第二電気負荷物とを、DC/DCコンバータを有する第一給電回路により接続するとともに、該DC/DCコンバータと並列に設置されたバイパスリレーを有する第二給電回路により、上記蓄電装置と第二電気負荷物とを接続し、上記第二給電回路を介した電力の供給を行う際に、上記第一給電回路を介した給電状態を維持しつつ、第二給電回路のバイパスリレーをオフ状態からオン状態に移行させるように制御する通電制御手段を備えたことを特徴とする車両の電源制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の電源制御装置において、通電制御手段は、上記第一電気負荷物の消費電力と第二電気負荷物の消費電力との合計値がDC/DCコンバータの出力性能を超えると判定された場合に、上記第二給電回路を介した電力の供給を行うように構成されたことを特徴とする車両の電源制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両の電源制御装置において、通電制御手段は、上記蓄電装置の蓄電量が所定値以下に低下したことが確認された時点で、上記第二給電回路のバイパスリレーをオフ状態からオン状態に移行させるように構成されたことを特徴とする車両の電源制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の電源制御装置において、上記蓄電装置の他に上記第二電気負荷物に電力を供給する補助蓄電装置を備え、該補助蓄電装置の蓄電量が所定値以下となった場合に、上記通電制御手段により第二給電回路を介した電力の供給を行うように構成されたことを特徴とする車両の電源制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−240593(P2012−240593A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114366(P2011−114366)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】