説明

車両のBピラー構造

【課題】乗員の体格差による傷害値低減効果の変動を抑制することができる。
【解決手段】本Bピラー構成では、車両販売時に、車両用シートに着座した乗員24(お客様)の腰部の位置を確認し、ビード22A、22B、22Cのうち乗員24の腰部と同程度の高さのビード22を選択する。例えば、乗員24の腰部が中央のビード22Bと同程度の高さの場合には、当該ビード22Bを選択する。そして、当該車両の製造時に、選択されたビード22Bを除く他のビード22A、22Cに嵌込部材26を嵌め込んで固定する。嵌込部材26が嵌め込まれたビード22A、22Cは嵌込部材26によって補強されるため、当該車両の側面衝突時には、嵌込部材26が嵌め込まれていないビード22Bに応力が集中し、当該ビード22Bの高さでBピラー12が折れ曲る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のBピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のセンターピラー構造(例えば、特許文献1参照)では、センターピラーの下方部分に強度的不連続部を設け、側面衝突時にセンターピラーが下方部分で折れ曲るように変形コントロールすることで、センターピラーの中央部分及び上方部分の折れ曲りを抑制し、乗員の傷害値を低減するようにしている。
【特許文献1】特開平8−72740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、センターピラーの折れ位置は、センターピラーの断面形状やセンターピラーへの他部材の接触などにより決定(固定)される。また、センターピラーの折れ位置は、標準的な体格の人間を模擬した衝突実験用ダミーへの影響を少なくすることを目標とし、車両用シートに着座させたダミーの腰部の位置に対応して設定される。
【0004】
しかしながら、車両用シートに着座した乗員の腰部の位置(高さ)は、乗員の体格などによって異なるため、センターピラー(Bピラー)の折れ位置が固定されている場合には、乗員の体格差に対応することができず、傷害値低減効果を十分に発揮することができない場合が生じ得る。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、乗員の体格差による傷害値低減効果の変動を抑制することができるBピラー構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両のBピラー構造は、車両の側面衝突時にBピラーの一部に応力を集中させると共に前記応力集中部の位置を車両上下方向に変更可能とされた応力集中手段を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の車両のBピラー構造では、車両の側面衝突時には、応力集中手段がBピラーの一部に応力を集中させる。これにより、当該応力集中部においてBピラーを折り曲げることができる。また、応力集中手段は応力集中部の位置を車両上下方向に変更可能とされている。このため、Bピラーの折れ位置を乗員の体格(腰部の位置)などに応じて車両上下方向に変更することができる。これにより、乗員の体格差による傷害値低減効果の変動を抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る車両のBピラー構造は、請求項1に記載の車両のBピラー構造において、前記応力集中手段は、前記Bピラーのアウタパネルに車両上下方向に並んで形成された複数の凹部と、前記複数の凹部のうち任意に選択された凹部を除く他の凹部に嵌め込まれる一乃至複数の嵌込部材とを有することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の車両のBピラー構造では、Bピラーのアウタパネルに形成された複数の凹部のうち任意に選択された凹部には嵌込部材が嵌め込まれない。このため、車両の側面衝突時には当該選択された凹部に応力が集中する。また、複数の凹部は車両上下方向に並んで設けられているため、これらの凹部のうち嵌込部材を嵌め込まない凹部を変更することで、応力集中部の位置を車両上下方向に変更することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係る車両のBピラー構造は、請求項1に記載の車両のBピラー構造において、前記応力集中手段は、前記Bピラーのアウタパネルに取り付けられると共に、複数の棒部材取付部が車両上下方向に並んで設けられたブラケットと、前記複数の棒部材取付部のうち任意に選択された棒部材取付部に取り付けられる棒部材とを有することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の車両のBピラー構造では、Bピラーのアウタパネルに取り付けられたブラケットには、複数の棒部材取付部が設けられており、これらの棒部材取付部のうち任意に選択された棒部材取付部に棒部材が取り付けられる。このため、車両の側面衝突時には棒部材が取り付けられた位置(高さ)でBピラーに応力が集中する。また、複数の棒部材取付部は車両上下方向に並んで設けられているため、これらの棒部材を取り付ける高さを変更することで、応力集中部の位置を車両上下方向に変更することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る車両のBピラー構造では、乗員の体格差による傷害値低減効果の変動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<第1の実施形態>
図1には、本発明の第1の実施形態に係る車両のBピラー構造が適用されて構成された車両10の部分的な構成が概略的な斜視図にて示されている。また、図2〜図4には、この車両10に設けられたBピラー12の構成が概略的な斜視図にて示されており、図5には、このBピラー12の部分的な構成が概略的な斜視図にて示されている。なお、図中矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印INは車幅内側方向を示している。
【0014】
本第1の実施形態に係る車両10は、Bピラー12を備えている。Bピラー12は、Bピラー12の車幅方向外側部を構成するBピラーアウタパネル14と、Bピラー12の車幅方向内側部を構成するBピラーインナパネル16とを有している。
【0015】
Bピラーアウタパネル14は、開口部が車幅方向内側を向いた開断面形状とされている。また、Bピラーインナパネル16は、開口部が車幅方向外側を向いた開断面形状とされており、両者は開口側の端部に設けられた図示しないフランジ部において結合されている。このため、Bピラー12は、車体上下方向へ延びる閉断面構造となっている。このBピラー12の下端部は、車両10のロッカ18に結合されており、Bピラー12の上端部は、車両10のルーフサイドレール20に結合されている。
【0016】
図2に示されるように、Bピラーアウタパネル14の下部には、複数(ここでは3つ)のビード22A、22B、22C(凹部)が形成されている。これらのビード22A、22B、22Cは、Bピラーアウタパネル14の車幅方向外側面において車両上下方向に等間隔に並んで配置されている。また、これらのビード22A、22B、22Cは、車両前後方向に沿って長尺に形成されており、車両前後方向から見た断面形状が車幅方向外側へ向けて開口する半円形状に形成されている。
【0017】
中央のビード22Bは、図示しない車両用シートに着座した乗員24(図2参照)の腰部の位置が標準的な高さの場合(図2の一点鎖線S1参照)に、当該乗員24の腰部と略同じ高さ(図2の一点鎖線S2参照)に配置される構成になっている。
【0018】
また、上のビード22Aは、図示しない車両用シートに着座した乗員24の腰部の位置が標準よりも高い場合(図3の一点鎖線U1参照)に、当該乗員24の腰部と略同じ高さ(図3の一点鎖線U2参照)に配置される構成になっている。
【0019】
さらに、下のビード22Cは、図示しない車両用シートに着座した乗員24の腰部の位置が標準よりも低い場合(図4の一点鎖線L1参照)に、当該乗員24の腰部と略同じ高さ(図4の一点鎖線L2参照)に配置される構成になっている。これらのビード22A、22B、22Cは、嵌込部材26に対応している。
【0020】
嵌込部材26は、ビード22A、22B、22Cを埋めるための部材であり、図5に示されるように、断面形状が半円形の棒状に形成されている(なお、図2〜図5では説明の都合上、嵌込部材26にハッチングを付してある)。この嵌込部材26は、ビード22A、22B、22Cの何れに対しても装着(嵌め込み)可能とされており、当該嵌め込み状態で締結具又は溶接などによりBピラー12に固定される。
【0021】
次に、本第1の実施形態の作用・効果について説明する。なお、図6には、本第1の実施形態に係るBピラー構造の使用方法及び作用・効果がフローチャートにて示されている。
【0022】
本第1の実施形態では、車両10の販売時に、図示しない車両用シートに着座した乗員24(お客様)の腰部の位置を確認し、ビード22A、22B、22Cのうち乗員24の腰部と同程度の高さのビード22を選択する。例えば、図2に示されるように、乗員24の腰部が中央のビード22Bと同程度の高さの場合には、当該ビード22Bを選択する。そして、この車両10の製造時に、選択されたビード22Bを除く他のビード22A、22Cに嵌込部材26を嵌め込んで固定する。
【0023】
嵌込部材26が嵌め込まれたビード22A、22Cは嵌込部材26によって補強されるため、上述の車両10が側面衝突した際には、嵌込部材26が嵌め込まれていないビード22Bに応力が集中し、当該ビード22Bの高さでBピラー12が折れ曲る。このため、乗員24の身体において比較的強度が高い腰部にBピラー12の上記折れ曲り部分を干渉させることができ、Bピラー12によって乗員24の腰部を車幅方向内側へ押すことができる。これにより、乗員24を車幅方向内側へ退避させることができ、乗員24の傷害値を良好に低減することができる。
【0024】
一方、車両10の販売時に、図示しない車両用シートに着座した乗員24(お客様)の腰部が上のビード22Aと同程度の高さの場合(図3参照)には、当該ビード22Aを選択する。そして、この車両10の製造時に、選択されたビード22Aを除く他のビード22B、22Cに嵌込部材26を嵌め込んで固定する。これにより、当該車両10の側面衝突時に、上のビード22Aに応力集中させることができ、乗員24の腰部に対向する高い位置でBピラー12を折り曲げることができる。これにより、乗員24の傷害値を良好に低減することができる。
【0025】
また一方、車両10の販売時に、図示しない車両用シートに着座した乗員24(お客様)の腰部が下のビード22Cと同程度の高さの場合(図4参照)には、当該ビード22Cを選択する。そして、この車両10の製造時に、選択されたビード22Cを除く他のビード22A、22Bに嵌込部材26を嵌め込んで固定する。これにより、当該車両10の側面衝突時に、下のビード22Cに応力集中させることができ、乗員24の腰部に対向する低い位置でBピラー12を折り曲げることができる。これにより、乗員24の傷害値を良好に低減することができる。
【0026】
このように、本第1の実施形態では、乗員24(お客様)の体格に応じてBピラー12の折れ位置を変更することができるため、乗員24の体格差による傷害値低減効果の変動を抑制することができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前記第1の実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1の実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0027】
図7には、本発明の第2の実施形態に係るBピラー構造が適用されて構成されたBピラー30の構成が概略的な斜視図にて示されている。このBピラー30は、前記第1の実施形態に係るBピラー12と基本的に同様の構成とされているが、このBピラー30では、前記第1の実施形態に係るビード22A、22B、22Cが省略されており、その代わりに一対のブラケット32、34が設けられている。
【0028】
これらのブラケット32、34は、長尺な平板状に形成されており、長手方向が車両上下方向に沿い且つ板厚方向が車両前後方向に沿う状態で配置されている。
【0029】
一方のブラケット32は、Bピラーアウタパネル14の車幅方向外側面における車両前方側端部に結合されており、Bピラー30の車幅方向外側へ突出している。このブラケット32には、複数(ここでは3つ)の円形の貫通孔36A、36B、36C(棒部材取付部)が形成されている。これらの貫通孔36A、36B、36Cは、車両上下方向に等間隔に並んで配置されている。
【0030】
また、他方のブラケット34は、Bピラーアウタパネル14の車幅方向外側面における車両後方側端部に結合されており、Bピラー30の車幅方向外側へ突出している。このブラケット34には、複数(ここでは3つ)の円形の貫通孔38A、38B、38C(棒部材取付部)が形成されている。これらの貫通孔38A、38B、38Cは、車両上下方向に等間隔に並んで配置されている。
【0031】
貫通孔36Aと貫通孔38Aとは車両上下方向において同じ高さに配置されており、車両前後方向に対向している。これらの貫通孔36A、38Aは、車両用シートに着座した乗員(図7では何れも図示省略)の腰部の高さが標準よりも高い場合に、当該乗員の腰部と略同じ高さに配置される構成になっている。
【0032】
また、貫通孔36Bと貫通孔38Bとは車両上下方向において同じ高さに配置されており、車両前後方向に対向している。これらの貫通孔36B、38Bは、車両用シートに着座した乗員の腰部の高さが標準的な高い場合に、当該乗員の腰部と略同じ高さに配置される構成になっている。
【0033】
さらに、貫通孔36Cと貫通孔38Cとは車両上下方向において同じ高さに配置されており、車両前後方向に対向している。これらの貫通孔36C、38Cは、車両用シートに着座した乗員の腰部の高さが標準よりも低い場合に、当該乗員の腰部と略同じ高さに配置される構成になっている。
【0034】
ここで、本第2の実施形態では、車両販売時に、車両用シートに着座した乗員の腰部が上の貫通孔36A、38Aと同程度の高さの場合には、これらの貫通孔36A、38Aを選択する。そして、車両製造時に、選択した貫通孔36A、38Aに丸棒40(棒部材)を挿入して固定する(図7図示状態)。これにより、当該車両の側面衝突時には、丸棒40が取り付けられた高さでBピラー30に応力が集中し、この丸棒40の高さ(貫通孔36A、38Aが設けられた高い位置)でBピラー12が折れ曲る。
【0035】
一方、車両販売時に、車両用シートに着座した乗員の腰部が中央の貫通孔36B、38Bと同程度の高さの場合には、これらの貫通孔36B、38Bを選択する。そして、車両製造時に、選択した貫通孔36B、38Bに丸棒40(棒部材)を挿入して固定する。これにより、当該車両の側面衝突時には、丸棒40が取り付けられた高さでBピラー30に応力が集中し、この丸棒40の高さ(貫通孔36B、38Bが設けられた標準的な位置)でBピラー12が折れ曲る。
【0036】
また一方、車両販売時に、車両用シートに着座した乗員の腰部が下の貫通孔36C、38Cと同程度の高さの場合には、これらの貫通孔36C、38Cを選択する。そして、車両製造時に、選択した貫通孔36C、38Cに丸棒40(棒部材)を挿入して固定する。これにより、当該車両の側面衝突時には、丸棒40が取り付けられた高さでBピラー30に応力が集中し、この丸棒40の高さ(貫通孔36C、38Cが設けられた低い位置)でBピラー12が折れ曲る。
【0037】
このように、本第2の実施形態では、Bピラー12の折れ位置を車両上下方向に変更することができる。したがって、乗員の体格差による傷害値低減効果の変動を抑制することができ、前記第1の実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両のBピラー構造が適用されて構成された車両の部分的な構成を示す概略的な斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るBピラーの構成を示す概略的な斜視図であり、上と下のビードに嵌込部材が嵌め込まれた状態の図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るBピラーの構成を示す概略的な斜視図であり、中央と下のビードに嵌込部材が嵌め込まれた状態の図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るBピラーの構成を示す概略的な斜視図であり、上と中央のビードに嵌込部材が嵌め込まれた状態の図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る車両のBピラーの部分的な構成を示す斜視図である。
【図6】本第1の実施形態に係るBピラー構造の使用方法及び作用・効果を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るBピラーの構成を示す概略的な斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
10・・・車両、12・・・Bピラー、14・・・Bピラーアウタパネル、22A、22B、22C・・・ビード(凹部、応力集中手段)、26・・・嵌込部材(応力集中手段)、30・・・Bピラー、32、34・・・ブラケット、36A、36B、36C、38A、38B、38C・・・貫通孔(棒部材取付部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側面衝突時にBピラーの一部に応力を集中させると共に前記応力集中部の位置を車両上下方向に変更可能とされた応力集中手段を有する車両のBピラー構造。
【請求項2】
前記応力集中手段は、前記Bピラーのアウタパネルに車両上下方向に並んで形成された複数の凹部と、前記複数の凹部のうち任意に選択された凹部を除く他の凹部に嵌め込まれる一乃至複数の嵌込部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の車両のBピラー構造。
【請求項3】
前記応力集中手段は、前記Bピラーのアウタパネルに取り付けられると共に、複数の棒部材取付部が車両上下方向に並んで設けられたブラケットと、前記複数の棒部材取付部のうち任意に選択された棒部材取付部に取り付けられる棒部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の車両のBピラー構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−111268(P2010−111268A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285453(P2008−285453)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】