説明

車両キャブの液圧式傾動装置及び同傾動装置用弁

傾動装置は、第一及び第二接続口(122、123)を有する複動式傾動シリンダ(120)、液圧流体のリザーバ(102)及び単一の送出方向を有するポンプ(100)を備える。ポンプはリザーバに連通する吸入口(101)と加圧された液圧流体を送出する単一の吐出口(104)を有する。傾動装置は弁(1)を有する。弁(1)は更に閉止部材(20)を付勢する液圧式付勢手段を有する。液圧式付勢手段は、ポンプが入口路(11)に液圧流体を供給することにより、閉止部材をその第一位置又は第二位置へ動かし、またこの液圧流体の供給を停止し又は減少させ次いでこれを再開することにより、閉止部材をそれぞれ第二又は第一位置へ動かすように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、第一面として、車両の通常の運転を可能とする運転位置と、例えばキャブ(運転台)の下方にある車両エンジンの保守の実施を可能とする傾動位置との間において車両のキャブを傾動させる液圧式傾動装置に関する。
【0002】
従来例として米国特許3,985,194に開示された液圧式車両傾動装置がある。この既知の装置は、各々が第一及び第二接続口を有する一対の複動型傾動シリンダを備える。また、一方向に液圧流体を送出するポンプが設けられる。このポンプは、液圧流体のリザーバに連通する吸込口と前記傾動シリンダに液圧流体を送出する吐出口を有する。前記ポンプの吐出口に接続された入口路を有する手動式弁が、前記傾動シリンダのピストンロッドを押出し又は引込めるために設けられる。この弁は閉止部材を有し、その第一位置において前記ポンプの吐出口は前記傾動シリンダの第一接続口に接続され、またその第二位置において前記ポンプの吐出口は前記傾動シリンダの第二接続口に接続される。
【0003】
また、別の例として二方向に液圧流体を送出するポンプを有する車両傾動システムが知られている。このポンプは、通常的には電気駆動式モータの回転方向に応じて吸込口又は吐出口となる2つのポンプ入出口を有する。これらのポンプ入出口は、それぞれ液圧ラインを介してシリンダの接続口に直接接続される。駆動モータを一方向に回転させることにより、例えば前記シリンダのピストンロッドを引込め、また、駆動モータを逆方向に回転させることにより前記ピストンロッドを外方に摺動させ押出す。それ故、このようなポンプの回転駆動の方向が制御パラメータとして機能する。
【0004】
一般に一つの送出方向を有する一方向ポンプに比べて二つの送出方向を有するニ方向ポンプの問題点として、二方向ポンプのポンプ効率がより低いこと及び二方向ポンプがより高価であることが挙げられる。このため、二方向ポンプを用いても、一方向ポンプの場合に必要とされる追加の制御弁によるコストアップ並びにこの制御弁のための追加の付勢手段の必要性を相殺するのみという事態が生じる。
【0005】
従って本発明の第一面は、改良されたキャブ傾動装置、特に一方向ポンプを使用するキャブ傾動装置を提供することを課題とする。
【0006】
この課題を達成するため、本発明の第一面は、次の液圧式傾動装置を提供する。即ち、請求項1の導入部に記載された液圧式傾動装置において、弁は、閉止部材を付勢する液圧式付勢手段を備え、この液圧式付勢手段は、ポンプが入口路への液圧流体の供給を実施することにより、閉止部材をその第一位置又は第二位置へ動かし、また液圧流体の供給を停止し又は減少させ次いでこれを再開することにより、前記閉止部材をそれぞれ前記第二位置又は第一位置へ動かすように設けられてなることを特徴とする。
【0007】
これにより、弁の一方の出口路と他方の出口路は確実に交互に入口路に接続される。それぞれの出口路は傾動シリンダの対応する接続口に連通し、弁に対する液圧流体の供給を停止し、次いでこれを再開することによってこの連通の切換を実施することができる。従って、単一のポンプ方向を有するポンプを組合わせて使用した場合に、ポンプの駆動モータを停止しまたこれを再起動することによって、ポンプの吐出口を他方の出口路に接続することが可能である。これにより、加圧された液圧液体はこの他方の出口路を介して傾動シリンダに供給することができる。従って本発明によれば、弁に対する液圧流体の供給を中断しまたこれを再開することが弁の閉止部材を切換えるための制御信号及びエネルギー源として機能する。
【0008】
好ましくは、液圧式付勢手段は休止位置と付勢位置との間において変位することのできる(摺動する)変位部材を備える。この変位部材はハウジング内に収納され、液圧流体が入口路に供給されることによって上記の休止位置から付勢位置に向って変位することができる。
【0009】
好ましくは、上記の変位部材はハウジングの穿孔部内を摺動することのできる摺動体である。この摺動体は、液圧流体が入口路に供給された時、ハウジングの穿孔部内を上記の休止位置から付勢位置に摺動可能である。また、液圧式付勢手段は、変位部材に連動してその動きを回復させる位置回復組立体を有する。
【0010】
好ましくは、上記の(摺動する)変位部材は貫通路を備え、これにより、液圧流体がポンプから入口路及び貫通路を通って弁の出口路に流れる時、この流れが上記位置回復組立体による回復作用に反して、変位部材をその付勢位置に向って動かすようにする。
【0011】
好ましくは、上記の(摺動する)変位部材と閉止部材との間に切換部材が設けられ、上記変位部材がその付勢位置に向って動く第一変位の間に閉止部材はその第一又は第二位置に動かされ、また、液圧流体の供給を停止し又は減少させ次いでこれを再開することによりこの閉止部材はそれぞれ上記第二又は第一位置に動かされるように切換が行われる。
【0012】
本発明による液圧式傾動装置の更なる有利な実施の形態は、本発明の諸従属請求項並びに添付の図を参照する以下の記述により説明される。
【0013】
また、本発明の第一面は、傾動式キャブ付車両であって、上記の液圧式傾動装置を備えたものに関する。
【0014】
本発明の第二面は、上述のような液圧式弁であって、単一の入口路と2つの出口路を備えたものに関する。この弁は、容易に理解されるように、この入口路を出口路の一方又は他方へと交互に接続する。本発明の第二面による弁は、上述の車両の分野を含む広範な液圧システムに取入れることが可能である。
【0015】
本発明の第三面は、液圧流体を送出するポンプを有する液圧式ポンプ組立体に関する。このポンプは、液圧流体を吸入する単一の吸入口と加圧された液圧流体を送出する単一の吐出口を有する。ここに使用される液圧式弁は、この吐出口に接続された入口路と同じくこの吐出口に接続された2つの出口路を有する。ここにおいて、この弁は本発明の第一面に従って構成され、そのポンプ装置は、加圧された液圧流体を交互に弁の2つの出口路の一方を介して送出することが可能である。
【0016】
本発明による液圧式傾動装置の好ましい実施の形態について、添付の図を参照して以下に説明する。
【0017】
本発明による第一の実施の形態に関わる弁を有する液圧式傾動装置の液圧回路が図8に示されている。本説明の出発点は弁1であり、この弁1の詳細は図1A〜図1Dに関して説明するので、必要に応じてその詳細説明を参照されたい。
【0018】
図8は、車両の通常の運転を可能とする運転位置と、例えばキャブの下方にある車両エンジンの保守の実施を可能とする傾動位置との間において車両のキャブを傾動させる液圧式傾動装置の液圧回路図である。この型式の車両は、通常シャシとこのシャシに傾動可能に取付けられたキャブを有する。キャブの傾動は、通常車両の前方に向って実施される。必要以上の傾動を防止するために通常係止機構が設けられ、この係止機構によりキャブの後方側において係止作用を実施するようになっている。
【0019】
図8において、符号100は液圧ポンプを示す。このポンプ100は、これに接続された駆動モータMにより駆動され、吸入口101を有し、かつ、単一のポンプ方向を有する型式のものである。吸入口101は液圧流体のリザーバ102に接続される。また、ポンプ100は、加圧された液圧流体を送出するための一つの吐出口104を有する。吐出口104には圧力逃がし弁103が接続され、これによりシステムが過大な液圧に曝されることを防止する。更に、ポンプ100の下流側には吐出口104に向って液圧流体を閉止する逆止弁105が設けられる。ポンプ100、駆動モータM及び圧力逃がし弁103を取囲む2点鎖線部分は、これらの構成品が一つの構造部分として一体化されていることを示している。
【0020】
符号120は複動型液圧式傾動シリンダを示し、この傾動シリンダ120は、ピストンロッド121、第一接続口122及び第二接続口123を有する。第一接続口122の上流側には、液圧で付勢される逆止弁124が設けられる。傾動シリンダ120は、通常シャシとキャブとの間に配置され、時に互いに平行に接続された対の傾動シリンダとして設計される。
【0021】
符号130は係止シリンダを示す。この係止シリンダ130は、係止機構を付勢するように設計され、これによりキャブをその運転位置においてシャシに対して係止させることができる。係止シリンダ130は単動型のものであり、ピストンロッド131及び1つの液圧接続口132を有する。一般に知られているように、多くのキャブはその内部の乗員の快適性のためにシャシに対してばね弾性状に取付けられる。このばね弾性のために適宜の手段が設けられることに加えて、必要に応じてキャブ傾動装置に、例えば「から動き」手段を付加するように改善がなされる。
【0022】
本発明の液圧式傾動装置における弁1は、弁本体140の内部に設けられる。ねじ込み式ニップル141が弁1の入口路11を形成している。また、液圧ライン143を介してリザーバ102に連通するリザーバ接続口142が設けられる。液圧ライン143には、リザーバ接続口142に向って流体を閉止する逆止弁144が設けられる。弁本体140は、更に接続口145、146を有する。接続口145は、液圧ライン147を介して傾動シリンダ120の第一接続口122及び係止シリンダ130の接続口132に連通している。接続口146は、液圧ライン148を介して傾動シリンダ120の第二接続口123に連通している。弁1の第一出口路13は接続口145と直接連通しており、また同じく弁1の第二出口路14は接続口146と直接連通している。更に、弁本体140内には閉止弁150が設けられる。閉止弁150は第一及び第二出口路13、14の間に配され、いずれの場合にも第一及び第二出口路13、14の一方がリザーバ102に接続されるようになっている。
【0023】
図8に示す液圧式傾動装置は、次のように運転される。
【0024】
先ずキャブの傾動のためにポンプ100が駆動され、これにより液圧流体が弁1に向って送出される。弁1の変位部材としての摺動体6がその付勢位置に向って移動し、これに応じて変位の動きを回復させ、かつ、流体の流れを切換える機能を有する組立体としての切換組立体25が図1Bに示す傾斜位置をとる。この位置において、第二出口路14は出口室10から遮断され、入口路11を介して供給された流体は第一出口路13を介して接続口145へ、更に液圧ライン147を介して傾動シリンダ120の第一接続口122へと流れる。これによりピストンロッド121は押出され、キャブが傾動される。流体は傾動シリンダ120内の他方の部屋から液圧ライン148及び閉止弁150を介して流出する。
【0025】
キャブが前方に傾動され傾動位置に達すると、ポンプ100は停止される。これにより、摺動体6の貫通路17を通る流体は停止され、摺動体6は切換組立体25により摺動体6の休止位置に回復される。この時、図1に関して説明するように、切換組立体25は図1Cに示す位置に傾斜している。
【0026】
キャブの傾動を運転位置に戻す時は、ポンプ100を再び駆動する。液圧流体が改めて入口路11を介して供給され、摺動体6は図1Dに示すその付勢位置に向って摺動する。この摺動体6の付勢位置において、第一出口路13は出口室10から遮断され、出口室10は第二出口路14と連通するようになる。加圧流体は、第二出口路14を介して傾動シリンダ120の第二接続口123に達する。第一接続口122は、この時開放された逆止弁124を介してリザーバ102に連通する。こうして、ピストンロッド121を再び引込むことができる。
【0027】
上記の説明から、ポンプ100を停止し、かつ、再起動することによって弁1が切換作用を実施することが明らかである。従って、切換のための制御信号を創出することは不要である。
【0028】
弁1のサイズを適宜に選定することによって、弁1の応答速度を調整することが可能である。例えば、流体の流れが短時間停止した場合に弁1が直ちに切換を実施することがないように、流体の流れの停止に対して弁1がゆっくりと反応するようにすることができる。また、必要に応じて素早く反応する弁1を設けることも可能である。
【0029】
明白ではあるが、ポンプ100には適宜の駆動装置、例えば電気モータ又は空気圧モータを取付け、液圧流体を実質的に連続して送出できるようにすることが好ましい。手動式の多くのポンプでは、蝶番式に取付けられたポンプハンドルを上下に動かして操作するため、流体の流れには操作の都度停止しまた作動する脈動が大きく発生する。このような手動式ポンプでは、弁1がポンプの動きの都度好ましくない切換を実施してしまう。従って、このように不連続的に流体を送出する手動式ポンプを本発明の場合に使用することは不適である。又は、これを使用する場合は、例えばポンプと弁1との間に蓄圧器を配するなどにより、流体流れの圧力と弁における圧力を等しくする手段を併用することが必要である。
【0030】
図9は、図8に関して説明された傾動装置に接続される電気システムの一例に関わる電気回路図である。
【0031】
図9において、符号170は第一リレーを、また符号171は第二リレーを示す。更に、ポンプ100の吐出口104には圧力スイッチ172が接続される。図9には、更に主スイッチ173、キャブの係止位置において付勢されるスイッチ174、制御ランプスイッチ175及び起動/停止スイッチ176が示される。
【0032】
圧力スイッチ172は、キャブが傾動される間の液圧システムの正常な作動圧よりも高い切換圧に調整される。但し、この切換圧は、傾動シリンダ120のピストンロッド121がその限界位置の1つに達した時の液圧よりも低く設定される。従って、ポンプ100は、例えば切換圧を350バールとした場合に、それよりも高い圧力を創出できるものであることが必要である。ピストンロッド121がその限界位置の1つに達した時は、圧力スイッチ172が付勢され、ポンプ100のスイッチが切られる。実際には、この状態では圧力逃がし弁103を作動させることは不要である。即ち、図9に示す電気回路は、ピストンロッド121がその限界位置に達し、圧力スイッチ172がポンプ100のスイッチを切った状態では、起動/停止スイッチ176が付勢状態にあってもポンプ100を不用意に再び起動させることを防止している。
【0033】
図1Aないし図1Dは、流体の弁1の長手方向断面を示す略式図である。
【0034】
弁1はハウジング2を有し、ハウジング2内には円筒状の穿孔部3が設けられる。穿孔部3は、図1Aに示す弁1の軸線Lに相当する仮想軸線を有し、この軸線上の両端をハウジング2の基部4、5により限界されている。
【0035】
また、弁1は摺動体6を有する。この摺動体6は、穿孔部3内を軸線方向に往復式に摺動することができる。摺動体6は、環状壁7及び横壁8を有してほぼカップ形状に作られる。環状壁7の外径は、摺動体6が穿孔部3内にシール状態で摺動可能に挿入されるように選定される。摺動体6の周囲には、1つ又はそれ以上のシールリング又は類似のものを適宜取付けることができる。
【0036】
摺動体6は、穿孔部3内に入口室9及び出口室10が形成可能なように穿孔部3内に挿入される。摺動体6は、図1A及び図1Cに示す休止位置及び図1B及び図1Dに示す付勢位置の間を摺動することができる。
【0037】
ハウジング2には、入口路11が設けられる。入口路11はその入口開口12において入口室9に接続される。同じくハウジング2には、第一出口路13及び第二出口路14が設けられる。第一及び第二出口路13、14は、それぞれの第一及び第二出口開口15、16において、出口室10に接続される。第一及び第二出口開口15、16は、ハウジング2の基部5の互いに隣接した位置に設けられる。
【0038】
摺動体6の横壁8の中央部には、入口室9と出口室10との間を貫通させる貫通路17が設けられる。
【0039】
出口室10内には、球体に形成された可動な閉止部材20が設けられる。この閉止部材20は、図1C及び図1Dに示す第一位置と図1A及び図1Bに示す第二位置との間において変位可能である。閉止部材20は、その第一位置において第一出口開口15を閉止し、この時第二出口開口16は開放される。また、閉止部材20は、その第二位置において第二出口開口16を閉止し、この時第一出口開口15は開放される。
【0040】
更に、一方では摺動体6に作用し他方では閉止部材20に作用する切換組立体25が出口室10内に設けられる。切換組立体25は、第一本体26及び第二本体27からなる切換部材を有する。第一及び第二本体26、27は、互いに関して入れ子式に伸縮するように案内される。切換部材の内部には、第一及び第二本体26、27を互いに関して押し離す圧縮ばね28が設けられる。
【0041】
本実施の形態においては、第一本体26は第二本体27内のスペース内に摺動可能に挿入される。圧縮ばね28もこのスペース内に配される。球体の閉止部材20は第二本体27内に保持されるように取付けられる。
【0042】
切換組立体25は、摺動体6がその休止位置から付勢位置に向って摺動することによって、弾性的に圧縮される。一方、摺動体6の貫通路17は、液圧流体が入口室9から貫通路17を通って出口室10に流れることによって、摺動体6をその付勢位置に向って摺動させるように機能する。
【0043】
切換組立体25は、入口室9から出口室10に向う液圧流体の流れが停止した時に摺動体6をその休止位置に回復させる。
【0044】
切換組立体25は、弁1の軸線Lに関して最も傾斜する図1Dに示す第一限界傾斜位置及び図1Bに示す第二限界傾斜位置をとることができる。
【0045】
摺動体6がその休止位置から付勢位置に向って摺動すると、切換組立体25は、液圧流体が貫通路17を通って摺動体6内に流れることにより、第一限界傾斜位置をとり、その結果切換組立体25は閉止部材20をその第一位置に保持する。この第一位置において、閉止部材20は基部5に設けられた第一出口開口15にシール状態で当接する。これにより、液圧流体は入口室9から第二出口路14に向って流れる。
【0046】
貫通路17を通って摺動体6内に入る液圧流体の流れが停止すると、切換組立体25の作用により摺動体6はその休止位置に向って摺動し、これと共に切換組立体25は傾斜の動きを実施する。この場合、伸縮自在の切換組立体25が第一限界傾斜位置にあった時は、この傾斜は第二限界傾斜位置に向って実施される。
【0047】
貫通路17を通って摺動体6内に入る液圧流体の流れが再び開始されて、摺動体6がその付勢位置に向って摺動すると、切換組立体25はその第二限界傾斜位置をとり、この時切換組立体25は閉止部材20をその第二位置に移動させる。この第二位置において、閉止部材20は基部5内に設けられた第二出口開口16に当接してこれを閉止する。これによって、入口路11からくる液圧流体は第一出口路13に向って流れる。
【0048】
切換組立体25は、伸縮し傾斜する動きの都度、径方向における対向位置において切換組立体25の支点となる傾斜点30、31を形成するように、摺動体6に係合することができる。即ち、摺動体6がその休止位置に回復されて、第一又は第二限界傾斜位置にある切換組立体25は、それぞれ第二又は第一限界傾斜位置の方向に動くべく、対応する傾斜点30、31に関して傾斜の動きを実施する。
【0049】
また、図1A及び図1Cに示すように、切換組立体25は、伸縮し傾斜移動する時に、径方向において対向する傾斜点30、31において、摺動体6との間にフック係合を形成するように摺動体6に係合することができる。即ち、第一又は第二限界傾斜位置にあった切換組立体25は、摺動体6がその休止位置に戻ることによって、それぞれ他方の限界傾斜位置の方向に傾斜し、切換組立体25の中間位置(図1A及び図1C参照)に達する。
【0050】
図1Aないし図1Dに示すように、別の球体の閉止部材として、摺動体6の休止位置において摺動体6の貫通路17を閉止する第二閉止部材32が設けられる。
【0051】
第二閉止部材32は、切換組立体25の第一本体26に取付けられる。第二閉止部材32は、切換組立体25の第一及び第二限界傾斜位置において貫通路17を開放し、また切換組立体25の各中間位置において貫通路17を閉止するように機能する。
【0052】
更にハウジング2には、第一及び第二バイパス路34、35が設けられる。第一及び第二バイパス路34、35は、共に出口室10内に開口し、かつ、それぞれが出口開口15、16を経由しない第一及び第二出口路13、14に対する連通を形成する。摺動体6は、その付勢位置において第一及び第二バイパス路34、35の開口を閉止し、また付勢位置以外において、第一及び第二バイパス路34、35の開口は開放される。この目的のために、可撓なシールリング36が環状壁7の底部に取付けられる。
【0053】
図1Bから図1Cへの摺動体6及び切換組立体25の位置の変化により、第一及び第二バイパス路34、35の機能が理解される。即ち、切換組立体25が長く伸びて、摺動体6が上昇するとシールリング36も上昇し、第一及び第二バイパス路34、35は出口室10に連通する。この状態は、第一又は第二出口路13、14の閉じられていた開口15、16が開放される時点よりも充分早く実現される。第一及び第二出口路13、14及び第一及び第二バイパス路34、35が加圧されていないリザーバに連通している時は、第一及び第二バイパス路34、35が存在することにより出口室10内の圧力の素早い降下が確保される。
【0054】
図1Aないし図1Dに示すように、切換組立体25の第二本体27には外方に突出し下方にフック形状を形成する周縁37が設けられる。また、摺動体6の環状壁7の内側には、径方向において対向する位置に、上方にフック形状を形成する傾斜点部材38、39が設けられる。これにより、第二本体27の周縁37が傾斜点部材38、39の一方と係合する時、切換組立体25は傾斜点30、31を形成し、これにより摺動体6との係合を形成する。この結果、摺動体6が付勢位置から休止位置に向って摺動する時、対応する傾斜点30、31を支点として切換組立体25は、その中間位置に向って傾斜し、この中間位置に保持される。摺動体6が引続き付勢位置に向って変位する間に、第二本体27の周縁37は対応する傾斜点部材38、39との係合からはずれ、切換組立体25は他方の限界傾斜位置をとる。
【0055】
図2Aないし図2Dは、本発明の液圧式傾動装置の弁の第二の実施の形態としての弁40を示す。ここにおいて、図1Aないし図1Dに示す弁1の構成部材と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0056】
この第二の実施の形態においても、弁40は、ハウジング2の穿孔部内を休止位置と付勢位置との間で摺動することのできる摺動体6を有する。
【0057】
弁40は伸縮する切換組立体41を有する。この切換組立体41は、第一の実施の形態の弁1の切換組立体25と相当程度類似した形状を有する。図6は、この弁40の摺動体6及び切換組立体41を部分的に断面により示す斜視図である。切換組立体25では第二本体27に一体に取付けられた球体の閉止部材20が設けられていたが、切換組立体41ではこのような閉止部材20は設けられていない。代りに、切換組立体41の第二本体42の先端に凹部が形成され、この凹部に切換組立体41とは別体の第一閉止部材50の球体が係合することができる。この第一閉止部材50は、以下において一部は図7Aないし図7Cに関して説明される。
【0058】
切換組立体41とは別体の第一閉止部材50は、ハウジング2の基部5に設けられた第一及び第二出口路13、14の2つの開口の間に位置する傾斜点51の周りに基部5に関して傾斜することができる。
【0059】
第一閉止部材50は、共通の支持体55内に取付けられた第一及び第二球体53、54を有する。支持体55は、第一及び第二球体53、54の間に傾斜の動きができる突出部56を有する。突出部56は、傾斜点51において、ハウジング2の基部5に傾斜可能に支持される。本実施の形態においては、第一及び第二球体53、54は金属で作られ、また支持体55は樹脂で作られる。更に、支持体55には、位置決め凹部57が設けられ、この凹部57にハウジング2の一部(図示省略)がはめ込まれ、これによって支持体55はハウジング2に関して回転することなく傾斜することができる。
【0060】
図7Bに示すように、第一及び第二球体53、54は、一方においてそれぞれ第一及び第二出口開口15、16の閉止面を形成し、また他方において切換組立体41との係合を実施する。切換組立体41との係合は、基部5側とは反対の側における第一及び第二球体53、54のそれぞれの面により、傾斜点51の左右両側において実施される。
【0061】
第一限界傾斜位置において、切換組立体41は第一球体53に係合し、この第一球体53を第一出口開口15に当接するように押下げる。これによって、第一出口路13は閉止される。第一閉止部材50のこの第一限界傾斜位置において、第二球体54は第二出口開口16から所定の距離をもって離され、これにより第二出口路14は開放される。
【0062】
第二限界傾斜位置において、切換組立体41は第二球体54に係合し、これによって第二出口路14は閉止され、他方第一出口路13は開放される。
【0063】
切換組立体41の傾斜の動きは、図1Aないし図1Dに関して説明したものと同様に実施されるので、更なる説明は省略する。
【0064】
切換組立体41の2つの中間位置において、切換組立体41の第一本体26に一体に取付けられた球体32は摺動体6の貫通路17を閉止する。
【0065】
図3Aないし図3Dは、本発明の液圧式傾動装置の弁の第三の実施の形態としての弁60を示す。
【0066】
ハウジング61には、その内部の穿孔部に連通する入口路11及び第一及び第二出口路62、63が設けられる。実質的に円筒状のスリーブ部材64がハウジング61の穿孔部に、例えばはめ込みにより取付けられる。スリーブ部材64は、穿孔部の軸線方向長さの一部をカバーするように取付けられる。
【0067】
摺動体73がスリーブ部材64内に軸線方向に摺動可能に挿入される。摺動体73には、入口室9と出口室10とを貫通させる貫通路17が設けられる。
【0068】
スリーブ部材64とハウジング61の基部65との間には、可動リング66が設けられる。可動リング66は、この弁60において、第一及び第二出口路62、63を閉止する第一閉止部材として機能する。
【0069】
可動リング66の外径はハウジング61の穿孔部の内径よりも小さく作られ、これにより可動リング66は穿孔部内を所定の遊びをもって動くことができる。更に、可動リング66には、ハウジング61の基部65に面する側に、液体が通過することのできる後述する開口67が設けられる。
【0070】
スリーブ部材64には、可動リング66に面する側の径方向に対向する位置に、切換組立体70が係合する係合部68、69が設けられる。係合部68、69は、切換組立体70がこれに係合した時その係合が第一及び第二出口路62、63の開口の軸線上にあるように設けられる。
【0071】
係合部68、69は、スリーブ部材64の環状壁に関して穿孔部の内方に突出するように設けられ、かつ、摺動体73をその付勢位置において停止させる停止部材を形成する。
【0072】
切換組立体70は、上述の第一の実施の形態の切換組立体25と実質的に同じ形状に作られるが、その配置は上下逆にされている。この実施の形態において切換組立体70の第一本体71には周縁72が設けられ、この周縁72が動きの都度係合部68、69の一方に係合することができる。
【0073】
図3Aは、切換組立体70が係合部69と係合しており、この時切換組立体70はその中間位置に保持されていることを示す。
【0074】
図3Bでは、切換組立体70が第一出口路62の開口位置において可動リング66を穿孔部の内周壁に押しつけ、これによって第一出口路62は閉じられている。
【0075】
図3Cでは、切換組立体70は他方の中間位置にあり、この状態において切換組立体70はハウジング61に関して静止している係合部68と係合している。
【0076】
図3Dでは、切換組立体70は他方の限界傾斜位置にあって、第二出口路63の開口位置において可動リング66を穿孔部の内周壁に押しつけ、これによって第二出口路63は閉じられている。
【0077】
球体の閉止部材32は、ハウジング61の基部65に沿って摺動し、これによってガイド部材として機能する。同じく球体の閉止部材20も摺動体73に沿って摺動し、これによってガイド部材として機能する。切換組立体70がその中間位置にある時、上述の第一及び第二の実施の形態の弁とは異なり、摺動体73の貫通路17のシールは行われていない。
【0078】
図4Aないし図4Dに示す第四の実施の形態の弁80は、図1Aないし図1Dに示す第一の実施の形態の弁1に相当程度類似しているため、対応する構成部材には同じ符号を付してある。また、作用についても上述の説明と基本的に同じである。
【0079】
球体の閉止部材20は、この場合においても切換組立体25の第二本体27に一体に取付けられている。
【0080】
弁1との相異点としては、切換組立体25の他方の球体の閉止部材32が、切換組立体25の中間位置において、弁1の摺動体6の貫通路17をシールするのではなく、むしろこの貫通路17を開放のままとしている。即ち、閉止部材32は貫通路17の開閉機能でなく切換組立体25のガイド機能を有し、これによって切換組立体25は摺動体6の横壁8に沿って案内される。
【0081】
更に弁80の大きな特徴は、第一及び第二出口路13、14が出口室10に接続される領域の形態にある。即ち、ハウジング2の基部5には、この基部5に当接可能な可撓なディスク部材81が設けられる。このディスク部材81の周縁部は、ハウジング2の穿孔部の内周壁内に締付け状態で押込まれ保持される。第一及び第二出口路13、14に対応するディスク部材81のそれぞれの位置には、開口が設けられる。これらの開口には第一及び第二出口路13、14に対応するスリーブ部材83、84が設けられ、更にこれらのスリーブ部材83、84内にはそれぞれ球体85、86が配される。これらの球体85、86は出口室10に向って第一及び第二出口路13、14を閉じる逆止弁として作用する。
【0082】
ハウジング2の基部5から遠い方のスリーブ部材83、84の端部は、球体の閉止部材20が個々に当接する当接部を形成している。
【0083】
切換組立体25の各限界傾斜位置において、閉止部材20はスリーブ部材83、84の一方に当接し、このスリーブ部材83、84は対応する基部5の第一及び第二出口路13、14の周辺部にしっかりと押付けられる。これにより、対応するこの出口路は出口室10から閉じられ、出口室10は他方の出口路と連通するようになる。
【0084】
摺動体6の休止位置において、即ち、液圧流体が入口路11に供給されていない時には、第一及び第二出口路13、14の一方内に過大な圧力が残存もしくは存在しないことが好ましい。これらの第一及び第二出口路13、14は、逆止弁を形成する球体85、86によって閉じられている。例えば第一出口路13内に過大な圧力が生じた場合、ディスク部材81が図の上方に脹らむ凸位置をとるという効果が達成される。これによって、基部5内に形成される第一及び第二出口路13、14の出口開口と、ディスク部材81の下面との間の領域には連通が形成され、これに沿ってこの過大な圧力は一方の出口路(この例では第一出口路13)から他方の出口路(同じく第二出口路14)に逃げることができる。従って、ディスク部材81は事実上第一及び第二出口路13、14の間の弾性による圧力逃がし弁を形成する。次いで、この圧力逃がし弁は、摺動体6がその付勢位置にある時は、切換組立体25によって付勢されてその圧力を逃がす接続が閉じられる。
【0085】
図5は、本発明による液圧傾動装置の弁の第四の実施の形態を示す断面図である。図5に示す弁200は、図3に示す第三の実施の形態の弁60の変形である。この弁200の作用は、既に説明した実施の形態の弁と同じであるので重複する説明は省略し、図5に関わる部分のみ説明する。
【0086】
ハウジング201には、共にハウジング201の穿孔部に連通する入口路202及び第一及び第二出口路203、204が設けられる。実質的に円筒状のスリーブ部材205が、例えばはめ込みによりハウジング201の穿孔部内にしっかりと取付けられる。スリーブ部材205は、穿孔部の軸線方向長さの一部をカバーするように取付けられる。摺動体206はハウジング201の穿孔部内に軸線方向に摺動可能に挿入される。摺動体206には入口室208と出口室209との間を貫通させる貫通穴207が設けられる。
【0087】
スリーブ部材205とハウジング201の基部210との間には、環状壁211a及び基部211bを有する環状体としての可動リング211が配される。弁200において、この可動リング211は第一及び第二出口路203、204のための閉止部材として機能する。
【0088】
可動リング211はその外径がハウジング201の穿孔部の内径よりも小さく作られており、これにより穿孔部内を所定の遊びをもって動くことができる。更に、可動リング211には、そのハウジング201の基部210に向う面に開口232が設けられる。この開口232は、突出部212によって周囲を限界され、内部を流体が通過することができる。
【0089】
スリーブ部材205には、可動リング211に面する側に径方向に対向する係合部215、216が設けられ、これらの係合部に剛体の切換部材220が係合することができる。係合部215、216は、切換部材220がこれに係合した時その係合が第一及び第二出口路203、204の開口の軸線上にあるように設けられる。
【0090】
係合部215、216は環状壁211aに関して穿孔部の内方に突出し、これによって環状壁211aの頂部周縁は半径方向に遊びをもって係合部215、216の周囲に摺動するように案内される。
【0091】
剛体の切換部材220には周縁221が設けられ、この周縁221が係合部215、216のいずれの一方とも係合することができる。
【0092】
図5は、切換部材220が係合部216と係合している状態を示している。この場合、液圧流体が貫通路207を通って流れるため、摺動体206はその付勢位置にある。
【0093】
図5において切換部材220は、第二出口路204の開口位置において可動リング211をハウジング201の穿孔部の内周壁に押しつけ、これによって第二出口路204は閉じられている。
【0094】
切換部材220の両端220a、220bは共に先が尖った形状に作られ、弁の稼働中はそれぞれ対向する摺動体206の壁及び可動リング211の壁に沿って摺動する。
【0095】
ハウジング201の基部210と可動リング211との間にはばね230が配され、これにより可動リング211は切換部材220に押しつけられる。従って、可動リング211はハウジング201に関してその軸線方向に摺動することができる。
【0096】
可動リング211の外周壁において、その底部233はその頂部234よりも小さな外径を有する。これにより、底部233とハウジング201の穿孔部の内周壁との間の隙間が第一及び第二出口路203、204に連通し次第、流体は第一及び第二出口路203、204に向って流れることができる。このような構成により、上述の第一の実施の形態におけるバイパス路と同じ効果が得られる。従って、本実施の形態では特段のバイパス路は設けられていない。可動リング211の基部211bの壁には、流体が弁200を通って流れるための上述の開口232が設けられる。
【0097】
流体の閉止効果を良好にするため、可動リング211、特に可動リング211の環状壁211aは可撓に作られることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の液圧式傾動装置に関わる弁の第一の実施の形態を示す長手方向断面図で、図1A〜図1Dにより部材の連続する変位を示している。
【図2】本発明の液圧式傾動装置に関わる弁の第二の実施の形態について図1と同じ概念の長手方向断面図。
【図3】本発明の液圧式傾動装置に関わる弁の第三の実施の形態について図1と同じ概念の長手方向断面図。
【図4】図1の第一の実施の形態の弁の変形について図1と同じ概念の長手方向断面図。
【図5】本発明の液圧式傾動装置に関わる弁の第四の実施の形態を示す長手方向断面図。
【図6】図2の第二の実施の形態の弁を部分的に断面により示す斜視図。
【図7】図2の第二の実施の形態の弁に関わる閉止部材の説明図で、図7Aは平面図、図7Bは球体をはずした状態の断面図、及び図7Cは作動を示す断面図。
【図8】図1の第一の実施の形態の弁を有する本発明の液圧式傾動装置に関わる液圧回路図。
【図9】図8の液圧回路に接続される電気システムの一例に関わる電気回路図。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の通常の運転を可能とする運転位置と、例えばキャブの下方にある車両エンジンの保守の実施を可能とする傾動位置との間において車両のキャブを傾動させる液圧式傾動装置であって、前記傾動装置は、第一及び第二接続口を有する傾動シリンダと、液圧流体のリザーバと、単一の流体送出方向を有し、前記リザーバに連通する吸入口と加圧流体を送出する吐出口とを有するポンプと、前記ポンプの吐出口に接続された入口路並びに第一及び第二出口路を有し、付勢可能な閉止部材を有する弁とを備えてなり、かつ、前記傾動装置は、前記閉止部材の第一位置において前記吐出口が前記第一出口路を介して前記傾動シリンダの第一接続口に接続され、また前記閉止部材の第二位置において前記吐出口が前記第二出口路を介して前記傾動シリンダの第二接続口に接続されるように構成されてなるものにおいて、
前記弁は、前記閉止部材を付勢する液圧式付勢手段を備え、かつ、前記液圧式付勢手段は、前記ポンプが前記入口路への液圧流体の供給を実施することにより、前記閉止部材を前記第一位置又は第二位置へ動かし、また前記液圧流体の供給を停止し又は減少させ次いでこれを再開することにより、前記閉止部材をそれぞれ前記第二位置又は第一位置へ動かすように設けられてなることを特徴とする液圧式傾動装置。
【請求項2】
前記液圧式付勢手段は、ハウジング内に収納されて休止位置と付勢位置との間で変位可能な変位部材、好ましくは、液圧流体が前記入口路に供給された時前記ハウジング内の穿孔部内を前記休止位置から付勢位置に摺動可能な摺動体と、前記変位部材に連動してその動きを回復させる位置回復組立体とを有してなることを特徴とする請求項1記載の液圧式傾動装置。
【請求項3】
前記変位部材は貫通路を備え、これにより、液圧流体が前記ポンプから前記入口路及び貫通路を通って前記弁の出口路に流れる時、この流れが前記位置回復組立体による回復作用に反して、前記変位部材を前記付勢位置に向って動かすようにしてなることを特徴とする請求項2記載の液圧式傾動装置。
【請求項4】
前記変位部材と閉止部材との間に切換部材が設けられ、前記変位部材が前記付勢位置に向って動く第一変位の間に前記閉止部材は前記第一又は第二位置に動かされ、また、前記液圧流体の供給を停止し又は減少させ次いでこれを再開することにより前記閉止部材はそれぞれ前記第二又は第一位置に動かされるように切換が行われてなることを特徴とする請求項2又は3記載の液圧式傾動装置。
【請求項5】
前記弁は、ハウジングと、前記ハウジング内に設けられて仮想軸線を有し、前記仮想軸線上の両端を前記ハウジングの基部によって限界された穿孔部と、前記穿孔部内を前記仮想軸線に沿って休止位置と付勢位置との間で往復式に摺動可能とされて前記穿孔部内に入口室と出口室を形成する摺動体と、前記ハウジングに設けられて入口開口を有し、前記入口開口において前記入口室に接続された入口路と、前記ハウジングに設けられてそれぞれ第一及び第二出口開口を有し、前記第一及び第二出口開口において前記出口室に接続された第一及び第二出口路と、前記摺動体に設けられて前記入口室と出口室との間を貫通させる貫通路と、前記出口室内に設けられて第一位置において前記第一出口開口を閉じると共に前記第二出口開口を開き、また第二位置において前記第一出口開口を開くと共に前記第二出口開口を閉じる付勢可能とされた閉止部材と、前記出口室内に設けられて前記閉止部材を付勢する切換組立体とを備え、かつ、
前記切換組立体は一方では前記摺動体に作用すると共に他方では前記閉止部材に作用し、
前記摺動体の貫通路は、前記入口室から前記出口室へ流れる液圧流体が前記摺動体を前記付勢位置に向って摺動させ、前記液圧流体の流れが停止した時、前記摺動体が前記休止位置に回復するように設けられ、
前記切換組立体は、液圧流体が前記摺動体の貫通路を通って流れることにより前記摺動体が前記休止位置から前記付勢位置に向って摺動する時に、前記第一閉止部材を前記第一位置に保持し、これにより液圧流体は前記入口路から前記第二出口路に向って流れるように設けられ、かつ、
前記切換組立体は、前記液圧流体の流れが停止され次いでこれが回復されて前記摺動体が前記付勢位置に戻るように摺動する時、前記第一閉止部材を前記第二位置へ動かし、これによって液圧流体が前記入口路から前記第一出口路へ流れるように設けられてなる、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液圧式傾動装置。
【請求項6】
前記切換組立体は、前記出口室内において前記摺動体と前記閉止部材との間に配された切換部材と、前記摺動体が前記休止位置から前記付勢位置に向って摺動することにより弾性圧縮可能なばね部材とを備え、これにより前記切換組立体は、前記入口室から前記出口室へ流れる液圧流体が停止した時、前記摺動体を前記休止位置に回復させるように設けられ、かつ、
前記切換部材は、前記弁の軸線に関して第一限界傾斜位置及び第二限界傾斜位置をとることが可能であり、ここにおいて、
液圧流体が前記摺動体の貫通路を通って流れることにより前記摺動体が前記休止位置から前記付勢位置に向って摺動している間に、前記切換部材は、前記第一の限界傾斜位置をとって前記閉止部材を前記第一位置に保持し、これによって液圧流体が前記入口路から前記第二出口路に流れ、
前記摺動体の貫通路を通る液圧流体の流れが停止した時は、前記切換部材の作用により前記摺動体が前記休止位置に向って摺動する間に、前記切換部材は、前記第二限界傾斜位置の方向に傾斜し、
前記貫通路を通って前記摺動体内へ流れる液圧流体が回復されることにより前記摺動体が再び前記付勢位置に向って摺動する間に、前記切換部材は、前記第二限界傾斜位置をとって前記閉止部材を前記第二位置に動かし、これによって液圧流体が前記入口路から前記第一出口路に向って流れる、
ようにしてなることを特徴とする請求項5記載の液圧式傾動装置。
【請求項7】
前記切換組立体は、互いに関して伸縮自在に案内可能な第一及び第二本体を有する伸縮式切換部材を備え、かつ、前記切換組立体のばね部材は、前記第一本体が前記摺動体に作用し前記第二本体が前記閉止部材に作用するように前記第一及び第二本体を互いに離隔方向に押すように配されてなることを特徴とする請求項5又は6記載の液圧式傾動装置。
【請求項8】
前記切換組立体は、それぞれ前記摺動体及び前記閉止部材に作用する第一及び第二端を有する剛体の切換部材を備え、かつ、前記ばね部材は前記ハウジングと前記閉止部材との間に配されてなることを特徴とする請求項5又は6記載の液圧式傾動装置。
【請求項9】
前記切換部材は、径方向の対向位置において前記ハウジング又は前記摺動体に作用して、前記切換部材のために次のように定義される傾斜点を形成可能であり、ここにおいて、
前記摺動体が前記休止位置に回復される間に、前記第一又は第二限界傾斜位置にある前記切換部材は、対応する前記傾斜点に関してそれぞれ第二又は第一限界傾斜位置の方向に傾斜する動きを実施する、
ようにしてなることを特徴とする請求項5又は6記載の液圧式傾動装置。
【請求項10】
前記切換部材は、径方向の対向位置において、前記ハウジングと前記摺動体との間にフック係合を形成するように前記ハウジング又は前記摺動体との係合を実施可能であり、ここにおいて、
前記摺動体が前記休止位置へ回復される間に、前記第一又は第二限界傾斜位置にある前記切換部材は他方の前記限界傾斜位置の方向に傾斜して中間位置に達する、
ようにしてなることを特徴とする請求項9記載の液圧式傾動装置。
【請求項11】
前記摺動体の休止位置において前記摺動体の貫通路を閉じる第二閉止部材が設けられてなることを特徴とする請求項5ないし10のいずれかに記載の液圧式傾動装置。
【請求項12】
前記第二閉止部材は前記切換部材によって付勢可能とされ、ここにおいて、前記第二閉止部材は、前記第一及び第二限界傾斜位置において前記貫通路を開き、また前記切換部材のいずれかの中間位置において前記貫通路を閉じるようにしてなり、好ましくは前記第二閉止部材は、例えば単一の球体として、前記切換部材に一体的に取付けられてなることを特徴とする請求項5ないし11のいずれかに記載の液圧式傾動装置。
【請求項13】
前記第一閉止部材は前記切換部材に一体的に取付けられ、前記第一及び第二出口路の出口開口は前記ハウジングの基部に設けられ、ここにおいて、前記第一閉止部材は、前記切換部材の第一限界傾斜位置において前記第一出口路の出口開口にシール状態で当接し、また前記切換部材の第二限界傾斜位置において前記第二出口路の出口開口に当接するようにしてなり、好ましくは前記第一閉止部材は単一の球体でなることを特徴とする請求項5ないし12のいずれかに記載の液圧式傾動装置。
【請求項14】
開口を前記出口室に接続されて前記第一及び第二出口路に対して前記出口開口を介する以外の連通を形成する第一及び第二バイパス路が前記ハウジングに設けられ、かつ、前記摺動体は、前記付勢位置において前記バイパス路の開口を閉じ、また前記付勢位置からはずれた位置において前記バイパス路の開口を開くようにしてなることを特徴とする請求項5ないし13のいずれかに記載の液圧式傾動装置。
【請求項15】
前記第一閉止部材は、前記切換部材とは別体に作られて前記ハウジングの基部に設けられた第一及び第二出口路に対応する第一及び第二出口開口の間に位置する傾斜点の周りに前記基部に関して傾斜可能とされ、かつ、前記第一閉止部材には、前記傾斜点の両側部において前記第一及び第二開口を閉じる対応する閉止面が設けられ、ここにおいて、前記第一閉止部材の第一位置において前記第一出口開口は閉じられ、また前記第一閉止部材の第二位置において前記第二出口開口は閉じられるようにしてなり、好ましくは、前記第一閉止部材には、前記傾斜点の両側部における互いに離隔した位置に前記切換部材が係合する第一及び第二係合部が設けられ、ここにおいて、前記切換部材は前記第一限界傾斜位置において前記第一係合部に係合し、また前記第二限界傾斜位置において前記第二係合部に係合するようにしてなることを特徴とする請求項5ないし14のいずれかに記載の液圧式傾動装置。
【請求項16】
前記第一閉止部材は共通の支持体内に収納された第一及び第二球体を備え、かつ、前記支持体は前記第一及び第二球体の間で前記ハウジングの基部に傾斜可能に支持されるようにしてなり、好ましくは前記第一及び第二球体の各々は、一方で前記第一及び第二出口開口のための前記閉止面を形成し、他方で前記切換部材が係合する前記第一及び第二係合部を形成してなることを特徴とする請求項15記載の液圧式傾動装置。
【請求項17】
前記第一及び第二出口開口は、前記ハウジングの穿孔部の周壁内の径方向に対向する位置に形成され、前記第一閉止部材は前記穿孔部内に半径方向に遊びを有して挿入される環状体であり、前記環状体は前記穿孔部の第一及び第二出口開口の位置に関するその第一位置において前記第一出口開口をシール状態にカバーし、またその第二位置において前記第二出口開口をシール状態にカバーしてなり、かつ、前記切換部材は前記環状体に作用するように設けられてなることを特徴とする請求項5ないし16のいずれかに記載の液圧式傾動装置。
【請求項18】
前記切換部材は、前記環状体の近辺において前記ハウジングの基部に摺動可能に支持された伸縮自在の切換部材でなることを特徴とする請求項17記載の液圧式傾動装置。
【請求項19】
前記切換部材は、前記環状体、好ましくは前記環状体の基部壁、に支持された剛体の切換部材であり、かつ、前記ばね部材は前記ハウジングと前記環状体との間に配されてなることを特徴とする請求項17記載の液圧式傾動装置。
【請求項20】
前記環状体内に液圧流体が通過する1つ又はそれ以上の貫通路が設けられてなることを特徴とする請求項18又は19記載の液圧式傾動装置。
【請求項21】
前記弁の出口開口の各々に前記出口室に向って流体の流れを閉じる逆止弁が設けられてなることを特徴とする請求項1ないし20のいずれかに記載の液圧式傾動装置。
【請求項22】
前記出口路同志の間に弾性閉止部材で作られたバイパス路が設けられ、前記弾性閉止部材は、前記出口路の一方が他方よりも過大な圧力となった時に前記バイパス路を開くようにしてなり、好ましくは前記切換部材はその各々の限界傾斜位置において前記バイパス路が前記閉止部材によって閉じられるように前記弾性閉止部材を付勢するようにしてなることを特徴とする請求項1ないし21のいずれかに記載の液圧式傾動装置。
【請求項23】
前記弾性閉止部材は、前記ハウジングの基部に当接するように前記ハウジングの穿孔部の内周縁に取付けられて内部に前記逆止弁を収納するディスク体であり、かつ、前記ディスク体は前記ハウジングの基部の前記出口路の開口同志の間の領域において、少くとも前記弁の摺動体の休止位置において前記出口路の一つが過大圧となった時に、前記ハウジングの基部から離隔するように弾性変形するようにしてなることを特徴とする請求項22記載の液圧式傾動装置。
【請求項24】
前記摺動体は、中央に貫通路を設けられた横壁を有する環状体でなることを特徴とする請求項2ないし23のいずれかに記載の液圧式傾動装置。
【請求項25】
前記切換部材には切込みを有して外方に突出する周縁が設けられ、前記ハウジング又は摺動体の径方向の対向位置には対応する切込みを有する傾斜点部材が設けられ、前記周縁が前記傾斜点部材の1つと係合することにより、前記切換部材は前記ハウジング又は摺動体に関する傾斜点及び接続を形成し、これにより、前記摺動体が前記付勢位置から前記休止位置に向って摺動する時、前記切換部材は対応する前記傾斜点の周りに中間位置に向って傾斜してこの中間位置に保持され、かつ、前記摺動体が再び前記付勢位置に向って摺動する時、前記周縁は前記傾斜点部材から離れて前記切換部材がその他方の限界傾斜位置をとるようにしてなることを特徴とする請求項3ないし24のいずれかに記載の液圧式傾動装置。
【請求項26】
前記傾斜点部材は前記摺動体に設けられ、かつ、前記周縁は前記切換部材の第二本体に設けられてなることを特徴とする請求項25記載の液圧式傾動装置。
【請求項27】
前記傾斜点部材は前記ハウジングに設けられ、かつ、前記周縁は前記切換部材の第一本体に設けられてなることを特徴とする請求項25記載の液圧式傾動装置。
【請求項28】
前記傾斜点部材は、前記摺動体に内周縁を設け、次いでこの内周縁の高さ位置において、径方向に対向する2つの傾斜点部材が残るように2つの細長い凹部を形成することによって形成されてなることを特徴とする請求項26記載の液圧式傾動装置。
【請求項29】
請求項21に記載された弁において、前記逆止弁は、少くとも前記出口路同志の間の接続領域において、前記ハウジングの基部にシール状態で当接することのできる弾性変形可能な部材の内部に収納されてなることを特徴とする弁。

【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−509983(P2006−509983A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560708(P2004−560708)
【出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000859
【国際公開番号】WO2004/055388
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(501372330)アクチュアント コーポレーション (14)
【Fターム(参考)】